JPH07300777A - シート状複合材料及びその製造方法 - Google Patents

シート状複合材料及びその製造方法

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JPH07300777A
JPH07300777A JP9177194A JP9177194A JPH07300777A JP H07300777 A JPH07300777 A JP H07300777A JP 9177194 A JP9177194 A JP 9177194A JP 9177194 A JP9177194 A JP 9177194A JP H07300777 A JPH07300777 A JP H07300777A
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elastic polymer
polymer substance
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fibrous base
composite material
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JP9177194A
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Inventor
Shinichi Okajima
真一 岡嶋
Minoru Fukui
実 福井
Minoru Yoshida
実 吉田
Tomoko Takahashi
朋子 高橋
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 繊維質基材に弾性高分子物質の層が形成され
てなる複合材料において、柔軟でありながら弾性高分子
物質の層の剥離強力などの力学的強力に優れ、かつ弾性
高分子物質の繊維質基材からの染み出しの無い複合材料
を製造する。 【構成】 繊維質基材の少なくとも片面に弾性高分子物
質の層を設けてなるシート状の複合材料において、
(i)該弾性高分子物質の該繊維質基材への浸透度合い
が該繊維質基材の厚みの1/2以内であり、かつ(ii)
該複合材料の切断面において、該弾性高分子物質が該繊
維質基材の単繊維間隙に入り込んでおり、該弾性高分子
物質の層が設けられた側で該繊維質基材の表面に存在す
る全繊維断面数Ntのうち繊維断面の円周上で該弾性高
分子物質と全く接着していない繊維断面数NnのNtに
対する比Nn/Ntが0.3〜0.95であることを特
徴とするシート状の複合材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、糸、編織物、不織布な
どの繊維質基材に弾性高分子物質の層を設けて成り、柔
軟性を有しながら弾性高分子物質の層の剥離強力などの
力学的強力に優れ、かつ弾性高分子物質の染み出しのな
いシート状複合材料及びその製造方法に関する。
【0002】本発明は、また、抗菌、消臭、蓄熱、吸水
などの機能性微粒子を添加した弾性高分子物質の層が繊
維質基材に形成されたシート状複合材料において、優れ
た柔軟性と、着用後や洗濯後にも機能を維持する耐久性
に優れかつ弾性高分子物質の染み出しのないシート状複
合材料に関する。
【0003】
【従来の技術】近年、特に衣料、生活資材用途を中心に
快適性や、健康への関心が高まると共に、(a)抗菌・
防臭・消臭や紫外線防止、蓄熱などの高機能性、(b)
透湿、防水、撥水、ムレ無いなどの快適な機能が布帛に
求められている。上記(a)の機能を実現する方法とし
て繊維自身に上述の機能を有する微粒子を紡糸段階で練
り込む方法(特開平2−182902号公報参照)や微
粒子を添加したウレタンなどの樹脂を布帛に含浸叉はコ
ーティング等の後加工法で付与する方法(特開平2−2
64074号公報参照)が一般的に用いられる。
【0004】しかるに、前者の糸への練り込み方法で
は、紡糸可能な程度までのサブミクロンオーダーの粒径
の微粒子が必要であり、かかる微粒子の添加が可能とな
ってもその微粒子が紡糸条件(特に熱)によってその機
能を失活したり、糸の強度劣化や紡糸収率の低下が起き
たり、小ロットに対応できなかったりするなどの理由
で、樹脂加工方法など後加工法での機能付与がより簡便
な方法として用いられている。しかしながら、このよう
な後加工法では、樹脂が繊維を拘束するため、繊維質基
材の風合いが著しく損なわれるという欠点がある。ま
た、使用時や洗濯時に繊維から樹脂自身が脱落してその
機能を失うという欠点があった。
【0005】一方、前記(b)の機能、即ち透湿・防水
・撥水機能を有する布帛としては、ウインドブレーカー
などスポーツ用途に多く用いられる。これは一般に凝固
時に発泡するウレタンを布帛にコーティングして得られ
る。しかし、この場合も繊維組織内部に樹脂が入り込
み、かつ繊維を拘束するため繊維の自由度が著しく低く
なり、風合いが硬くなるという問題がある。この風合い
が硬くなるということはウレタン等のソフトな樹脂を用
いても避けられない。
【0006】そこで、上記の問題点を解決するために、
ウインドブレーカー用などの透湿防水性の弾性高分子物
質のコーティング布帛の場合では、弾性高分子物質の布
帛への浸透をコントロールして風合いを改善することが
考えられる。そのような方法として、布帛に熱カレンダ
ー処理を施し、布帛の表面を押圧して平滑化する方法
や、フッ素化合物等の撥液剤を予め布帛に付与しておい
て浸透を防止する方法がある(特開昭58−14417
8号公報参照)。
【0007】しかしながら、この方法では、布帛を熱カ
レンダーによって平滑化するため、布帛全体がペーパー
ライクな硬い風合いとなる。更に、弾性高分子物質の浸
透が少なくなるので、弾性高分子物質の皮膜の剥離強力
の低下など問題点が残されている。布帛を撥水処理する
場合においても、同様に弾性高分子物質の浸透が少なく
なるために、弾性高分子物質の皮膜の剥離強力が低下す
るという問題がある。
【0008】次に不織布と、弾性高分子物質(主にウレ
タン)の複合材料である人工皮革においては、不織布に
弾性高分子物質を含浸した含浸基体の表面に弾性高分子
物質の被覆層が形成された銀付人工皮革や前記含浸基体
をバフがけして繊維立毛層を形成したスウェード調もし
くはヌバック調の製品が靴材やコートなどの衣料用や家
具用に用いられている。これらの用途では、より天然皮
革に近い風合いが求められ、より柔軟な人工皮革の研究
が進められている。これらは、繊維とウレタンの接着を
妨げることで柔軟性を得ようとするものである。
【0009】例えば、(I)予め、含浸する弾性高分子
物質と溶剤を異にする糊剤高分子物質を不織布に含浸
し、不織布の構成繊維表面を被覆し、あるいは構成繊維
のつくる空間の一部を充填して、弾性高分子物質を含
浸、凝固せしめた後、糊剤高分子物質を除去して繊維と
弾性高分子物質の間に空隙を形成せしめた人工皮革(例
えば特公昭45−18745号公報、特開昭49−10
9697号公報参照)。
【0010】(II)不織布を予めシリコーン樹脂で処理
した後、弾性高分子物質を含浸せしめることにより繊維
と弾性高分子物質との接着を妨げた人工皮革(特公昭4
5−33797号公報参照)。
【0011】(III) 不織布にコロイダルシリカを主成
分とする前処理液を付与し、乾燥時にコロイダルシリカ
をマイグレーションさせて不織布表面に偏在させた後、
弾性高分子物質を含浸、凝固させ、その後コロイダルシ
リカを機械的方法で粉砕、除去したもので、不織布に含
浸される弾性高分子物質の量を不織布の厚み方向に変化
させることができるとの記載がある人工皮革(特公昭5
8−9191号公報参照)。
【0012】(IV)不織布を、予め界面活性剤で処理す
ることにより繊維表面を親水化し、ついで界面活性剤を
添加した溶剤系弾性高分子物質の溶液を含浸した後、水
中で弾性高分子物質を凝固させることによって繊維と弾
性高分子物質との界面に水が浸透しやすくし、繊維と弾
性高分子物質との接着を阻害する製造方法(特公昭61
−42033号公報参照)によって得られる人工皮革。
【0013】(V)海島繊維からなる不織布に弾性高分
子物質溶液を含浸せしめた後、水中で弾性高分子物質を
凝固させ、しかる後、海島繊維の海成分を溶媒で溶出さ
せる事により残留した島成分の繊維と弾性高分子物質と
の間をほぼ完全に非接着状態とする方法(特開昭64−
85377号公報参照)によって得られる人工皮革。
【0014】しかし、これらの公知の人工皮革には、そ
れぞれ次のような問題があった。即ち、(I)の人工皮
革については、(a)前処理になる糊剤高分子物質が繊
維全体を充分被覆しないために充分な柔軟性が得られな
い。
【0015】又、充分な柔軟性を得ようと大量に糊剤高
分子物質を使用すると、(b)弾性高分子物質の含浸性
が悪くなり、充分な力学的強力が発現されず、(c)生
産性が低下し、そして(d)廃液回収処理コストが高騰
する。
【0016】(II)の人工皮革については、(a)シリ
コーン樹脂を付与した不織布は強力が低下し加工工程中
に形態変化が起こり易く、断布などの加工上のトラブル
が発生し易く、又(b)シリコーンの離型性を利用した
だけでは、繊維と弾性高分子物質の接着防止が不充分で
柔軟性に劣る。
【0017】一方、(III)の人工皮革については、
(a)前処理に用いるコロイダルシリカがマイグレーシ
ョンにより不織布の表層部に集中するため不織布中心部
において繊維と弾性高分子物質は接着している。又表層
部においても、繊維と弾性高分子物質の接合比率は少な
くなっているが、大部分の繊維については部分的な接合
をしている。(b)残留コロイダルシリカの脱落や染色
ムラ等の問題を有している。
【0018】(IV)の人工皮革については、(a)柔軟
ではあるが、繊度の小さい島成分が残るため、耐摩耗性
などの力学的強度に劣り、(b)海島繊維という特殊な
繊維に限定され、そして(c)海成分を溶出・回収する
のに手間がかかる。
【0019】以上のように、いずれの人工皮革も、柔軟
でかつ高い力学的強力の相反する特性を同時に満たすも
のが得られていないのが現状である。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、前記した従来技術の欠点を解決し、柔軟で
ありながら弾性高分子物質の剥離強力が高くかつ、弾性
高分子物質の染み出しの無い複合材料及びその製造方法
を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意検討を進め、繊維質基材に撥水性シリ
コーン処理を行い、親水性シリコーンを添加した弾性高
分子物質の溶液をコーティングした後、湿式凝固せしめ
ることで、弾性高分子物質と繊維との間の接着が阻害さ
れた構造(以下、非接着構造と略称)を実現し、従来技
術ではなし得なかった極めて柔軟で高剥離強力のコーテ
ィング層を有する複合材料を得た(特願平5−1033
72号出願明細書参照)。しかしながら、上記発明にお
いては、コーティング時に弾性高分子物質が繊維質基材
へ深く浸透するために、加工機のバックロールを汚した
り、コーティング面と反対側に弾性高分子物質が染み出
すため、例えばコーティング面を裏側に用いるウインド
ブレーカーのような場合、繊維質基材の厚みが薄いと表
側に弾性高分子物質が染み出し、色欠点や白ぼけの原因
となる恐れがあった。
【0022】そこで本発明者らは、更に鋭意検討を進
め、柔軟でかつ弾性高分子物質の層の剥離強力が大きく
弾性高分子物質の染み出しの無い複合材料とその製造方
法を発明するに至った。
【0023】即ち、本発明に従えば、繊維質基材の少な
くとも片面に弾性高分子物質の層を設けてなるシート状
の複合材料において、(i)該弾性高分子物質の該繊維
質基材への浸透度合いが該繊維質基材の厚みの1/2以
内であり、かつ(ii)該複合材料の切断面において、該
弾性高分子物質の層が設けられた側で、該繊維質基材の
表面に存在する全繊維断面数Ntのうち繊維断面の円周
上で該弾性高分子物質と全く接着していない繊維断面数
NnのNtに対する比Nn/Ntが0.3〜1であるシ
ート状の複合材料によって達成される。
【0024】本発明の理解を進めるために、図面を参照
しながら本発明を詳しく説明する。図1は、本発明の一
例の弾性高分子物質2(例えばポリウレタン)を繊維質
基材3(織物)にコーティングして得られた、柔軟で音
鳴りが少なく、かつコーティング層の剥離強力の大き
い、ウインドブレーカーに用いられる、シート状の複合
材料の拡大断面構造を示す図面である。図1から(a)
繊維質基材の表面の繊維の大部分はポリウレタンとの接
着が防止されており、かつ(b)ポリウレタンは表面の
繊維1を取り囲むように浸透していながら裏側への染み
出しが抑えられていることがわかる。このような(a)
と(b)の構造により柔軟性とポリウレタン層の剥離強
力の相反する特性が満たされると共にポリウレタンの染
み出し等の欠点が抑えられる。
【0025】これに対し、図2には従来のウインドブレ
ーカーの構造を示す。弾性高分子物質(例えばポリウレ
タン)2は内部に浸透せず(繊維質基材を熱カレンダー
で平滑化し撥水処理するため)、繊維質基材3の表面の
繊維1と接着しているのがわかる。このような構造で
は、繊維とポリウレタンの接着面積の程度により柔軟
性、剥離強力が大きく左右され、両者を同時に満足する
ことはできない。
【0026】また、図3には、非接着構造は形成してい
るが、弾性高分子物質が裏側へ染み出している比較例を
示す(図中4がその部分)。この場合は、裏側からみる
と(着用時には表側になる)繊維質基材の色欠点とな
り、このままでは実用に供することはできない。
【0027】本発明でいう弾性高分子物質とは、ポリエ
ステル系、ポリエーテル系、ポリエステル・ポリエーテ
ル共重合系、ポリカーボネート系ポリウレタンやポリ塩
化ビニル系や、ポリアクリル酸エステル系、ブタジエン
−スチレン系、ニトリル系、クロロプレン系などの合成
ゴムや天然ゴム等のゴム状弾性を有する高分子物質、ま
たはこれらを主体とする混合物である。このうちポリウ
レタン系弾性高分子物質が柔軟性の点で好ましい。
【0028】本発明でいう繊維質基材とは、紙や合成繊
維からなる合成紙、平織、綾織、朱子織などの織物、平
編、ゴム編、パール編などのよこ編やシングルトリコッ
ト編やシングルアトラス編、シングルコード編、ハーフ
トリコット編、プレーントリコット編、クイーンズコー
ド編、綴れ編などのたて編、やエアレイ法、カード法で
得られる短繊維ウェブをニードルパンチや液体柱状流で
交絡して作成されるニーパン不織布やスパンレース不織
布、短繊維または長繊維ウェブを熱エンボスロールで接
合して得られる、スパンボンドなどのサーマルボンド不
織布、フラッシュ紡糸不織布、ケミカルボンド不織布、
フィルムを引き裂いて得られる割り布や、これらの不織
布と織物あるいは編物の複合体、または、これらの繊維
集合体と樹脂との複合素材をいう。
【0029】このうち、平織はコストも安く好ましい
が、経糸、緯糸は一般にきつく収束しているためフィラ
メント間に隙間が得られず、特にコーティング時にポリ
ウレタンが繊維を取り囲みにくい。そのため、部分的に
捲縮のかかった加工糸や極細繊維(繊度1d以下)を混
繊してあると改良され、剥離強力が大きくなり好まし
い。
【0030】人工皮革に供される不織布としては、抄造
法でウェブ化したシートに高速流体処理を施す事によっ
て不織布化した抄造不織布が極めてしなやかな風合いを
有する上、繊維分散の均一性、等方性に優れるため表面
タッチ感に優れかつ経緯の物性バランスが良好である事
から好ましい。また単糸の直径が7〜25μmで繊維長
Lと単糸直径Dの比L/Dが0.8×103〜2.0×
103の短繊維が相互に三次元交絡しており、その平均
繊維交絡点間距離が300μm以下である不織布を用い
る事が耐摩耗性、剥離強力の点で好ましい。
【0031】ここでいう繊維平均交絡点間距離とは、特
開昭58−191280号公報にて公知の以下の方法で
測定した値の事を言い、繊維間相互の交絡密度を示す1
つの尺度として値が小さいほど交絡が緻密であることを
示すものである。
【0032】本発明で言う複合材料とは、上述の繊維質
基材の少なくとも片面に弾性高分子物質の層が形成(当
然一部含浸されているものも含む)されている繊維/弾
性高分子物質複合体をいう。 弾性高分子物質の繊維質
基材への浸透度合いは、以下のように決定される。
【0033】(1)鋭利な刃で切断したシート状の複合
材料の任意の5箇所の位置で350倍の倍率で撮影した
断面電子顕微鏡写真を複合材料のシート面に垂直に50
0μm単位に分割し、多数の分割写真を得る。
【0034】(2)この中から任意の10個の写真の分
割写真を抽出し、この写真それぞれについて繊維質基材
の厚み(t1 、t2 、…ti 、…t10と記号化)と弾性
高分子物質の浸透度合い(x1 、x2 、…xi 、…x10
と記号化)を調べる。
【0035】(3)ti は各々の分割写真で見られる繊
維質基材の表裏面の各々で最外に位置する繊維から順番
に3本除き、4番目の繊維と80ミクロン以上離れた繊
維の中心を結んだ表裏の2本の基準線(図4において線
分ABと線分CD)と分割写真の分割線がつくる線分の
長さの平均で表される(図4で(a+b)/2)。
【0036】尚、繊維質基材の厚みは、各t1 、t2
…ti 、…t10の相加平均値(平均ti )で表される。
またxi は、電顕の分割写真で得られた上述の繊維質基
材の裏面の線に平行に繊維質基材弾性高分子物質が入り
込んだ全ての部分で、その稜線に接線を引いて得られる
各接点と上述の繊維質基材の表面の線との距離xi1、x
i2、…xin(図5でxi1、xi2がその一例。図中xi2
負の値)から最大値と最小値を除いた全距離の相加平均
である。
【0037】(4)(3)で得られた10個のxi の相
加平均(平均xi )を繊維質基材の厚み(平均ti )で
除算した値が浸透度合いである。弾性高分子物質の繊維
質基材への浸透度合いが該繊維質基材の厚み(平均
i )の1/2以下即ち0.5以下であると、弾性高分
子物質のコーティング面裏側への染み出しによる色ムラ
や白く色がぼけてくすむ、いわゆる白ぼけが無く、また
コーティング加工時にバックロール等を汚し、長尺の加
工が出来ないといった加工トラブルが防止される事がわ
かった。浸透度合いが0.5を超えると、上述の色ムラ
や白ぼけ、加工トラブルが急激に発生しやすくなる。
【0038】前記浸透度合いが0.1〜0.5であると
繊維質基材の最外層の繊維を取り囲むように弾性高分子
物質が浸透する部分が多くなり、コーティング層の剥離
強力が極めて大きくなるため好ましい。この弾性高分子
物質が繊維を取り囲んでいる頻度が、電顕写真でシート
面と平行方向で1000μmの距離に1つ以上有ること
が好ましい。500μm以上に1つ以上あればより好ま
しい。
【0039】本発明において、上述の10枚の分割写真
の観察で、弾性高分子物質がコーティングされている側
で、繊維質基材の表面に存在する全繊維断面数Ntとそ
の中で、繊維断面の円周上で弾性高分子物質が全く接触
していないように観察される繊維の数Nnと全繊維断面
数Ntとの比Nn/Ntが0.3〜0.95の必要が有
り、好ましくは、0.5〜0.9である。
【0040】即ち、本発明者らは、弾性高分子物質の層
と繊維質基材との界面に存在する繊維の、弾性高分子物
質との非接着の程度が複合材料の柔軟性と弾性高分子物
質の層の剥離強力に極めて深く関係している事を見い出
し、上述のNn/Ntの範囲で優れた柔軟性と相反する
コーティング層の剥離強力が達成される本発明物を得た
ものである。Nn/Ntが0.3より小さいと、実質大
部分が弾性高分子物質と接着した構造となるため風合い
が硬くなる。
【0041】本発明でいう弾性高分子物質のコーティン
グ層の厚みには、特に限定はないが、特に衣料用の場合
は1〜500μmが好ましい。1μm未満では、耐水圧
が必要とされる用途(例えば、ウインドブレーカーやジ
ャケットなど)では耐水圧が低下する恐れがある。ま
た、500μmを超えると、繊維の柔らかい風合いが生
きずにゴムライクな風合いとなるので好ましくない。
【0042】羽毛布団側地用には、1〜50μm程度の
コーティング層の厚みが好ましい。1μm未満では、樹
脂によるフィラメント間の間隙が大きすぎて、羽毛やダ
ニの通り抜けが起こるので好ましくない。また、50μ
mを超えると通気性の低下が起こり、羽毛を袋詰めする
際や羽毛布団をたたむ際の空気抜けが起こりづらく好ま
しくない。
【0043】上述の繊維質基材の少なくとも片面に弾性
高分子物質の層が形成されてなる本発明の複合材料は、
以下に述べる従来にない製造方法によって十分な非接着
構造が形成されることではじめて実現可能なものとな
る。
【0044】即ち、繊維質基材の少なくとも片面に弾性
高分子物質の層が形成されてなる複合材料の製造方法に
おいて、(I)該繊維質基材にフッ素系撥水剤を主成分
とする疎水性前処理剤を付着させ、(II)その基材に親
水性シリコーンを添加した該弾性高分子物質の溶液、も
しくはエマルジョンをコーティングし、そして(III)
その基材を該弾性高分子物質の貧溶媒に浸漬するか、ま
たは乾燥時に良溶媒を先に飛散させ、貧溶媒を残留させ
て凝固せしめることからなる複合材料の製造方法によっ
て達成される。
【0045】本発明でいう疎水化前処理剤の主成分とし
て用いられるフッ素系撥水剤としては、例えば炭素数3
〜20のアルキル化合物の一部または全部のHをフッ素
に置き替えたフルオロアルキル化合物叉はパーフルオロ
アルキル化合物から誘導されるアクリレート叉はメタク
リレートとビニル化合物との共重合体からなるフッ素系
撥水剤があげられる。このフッ素系撥水剤で処理した表
面の臨界表面張力は30ダイン/cm以下であるのが好
ましい。
【0046】上述のフッ素系撥水剤に併用する形で、撥
水性シリコーンを柔軟性を向上させるために副添加剤と
して主成分のフッ素系撥水剤の成分量未満の範囲で用い
ても良い。疎水化前処理剤として併用される撥水性シリ
コーンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ア
ルキル変性ポリシロキサン、ハイドロジェン変性ポリシ
ロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポ
リシロキサンや、これらの共重合シリコーンが使用され
る。中でも、メチルハイドロジェンポリシロキサンや、
ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシ
ロキサンの共重合体は、繊維表面の疎水化効果が高く好
ましい。
【0047】フッ素系撥水剤の繊維質基材に対する付着
量は、繊維重量に対し0.1〜2重量%であることが好
ましい。さらに好ましくは0.3〜1重量%である。付
着量が0.1重量%より少ないと後述する弾性高分子物
質との疎水、親水性の反発作用による結合防止効果が小
さい。一方、付着量が2重量%より多いと、過剰量とな
り無駄になるばかりでなく5重量%以上では染色時の染
色ムラとなる恐れがある。
【0048】本発明において、繊維質基材に疎水化前処
理剤を付与した場合、繊維質基材が短繊維交絡不織布の
時、繊維質基材の強力低下を招くことがある。この場
合、疎水化前処理剤に糊剤高分子物質ないしスリップ防
止剤を併用することが好ましい。
【0049】本発明で用いられる疎水化前処理剤に添加
するスリップ防止剤とは、例えば、コロイダルシリカ
系、シリコーン系、無機酸化物系、パラフィン系、エス
テル系など通常用いられるスリップ防止剤をいい、柔軟
性の観点から、シリコーン系のスリップ防止剤が好まし
く、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製の
商品名BY22−839等が、好ましく用いられる。
【0050】本発明でいう弾性高分子物質に添加する親
水性シリコーンは、親水基をその構造の中に有するシリ
コーンで例えば、アルコキシ変性ポリシロキサン、カル
ボキシル変性ポリシロキサンや、これらの共重合体及
び、これらとジメチルポリシロキサンなどのアルキルポ
リシロキサンとの共重合体が使用される。なかでも、メ
チルエトキシポリシロキサン等、アルキルアルコキシポ
リシロキサンが弾性高分子物質に、より親水性を与える
上で好ましい。
【0051】親水性シリコーンの弾性高分子物質に対す
る添加量は、0.1〜10重量%であることが好まし
い。添加量が0.1重量%より少ないと不織布構成繊維
との疎水、親水性の反発作用による、弾性高分子物質と
繊維との接着防止効果が小さい。一方、添加量が10重
量%より多くても接着防止効果に差異はなく無駄になる
だけである。また、弾性高分子物質の層が繊維質基材上
に形成された複合材料の耐水圧の低下という問題を生じ
る。また、副成分として、通常用いられるソルビタン系
やポリオキシエチレン系等の親水化剤を併用しても良
い。
【0052】親水性シリコーンの添加方法としては、予
め、弾性高分子物質を良溶媒に溶解させた湿式凝固タイ
プの溶液か貧溶媒とそれより低沸点の良溶媒との混合溶
媒中に分散させたエマルジョンへ添加する方法が、均一
に添加されるので好ましい。
【0053】例えば、ポリウレタンの場合における弾性
高分子物質の溶液に用いられる良溶媒としては、ジメチ
ルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチル
ケトン、アルコール系/芳香族系溶剤等があげられる。
また、弾性高分子物質のエマルジョンとは、例えば弾
性高分子物質有機溶剤溶液又はスラリー中に水が分散し
ているタイプのエマルジョンをいい、良溶媒としては、
低温で水より蒸気圧の高いメチルエチルケトン、ジエチ
ルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢
酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどが上げられ
る。貧溶媒としては、水及び水より蒸気圧の低いトルエ
ン、キシレン、ミネラルスピリットもしくはこれらの混
合溶剤などが上げられる。
【0054】弾性高分子物質の繊維質基材への付与方法
としては、弾性高分子物質の溶液もしくはエマルジョン
をフローティングナイフコーター、ナイフオーバーロー
ルコーター、リバースロールコーター、ロールドクター
コーター、グラビアロールコーター、キスロールコータ
ー、ニップロールコーターなど通常の方式でダイレクト
に織編地にコーティングするか、離型紙などへコーティ
ングしておき、織編地を積層し転写する方式が適用され
る。
【0055】弾性高分子物質をコーティングする際の溶
液粘度としては、500〜50,000cps程度であ
ると、本発明の複合材料の特徴である、弾性高分子物質
が裏抜けせずに、且つ、繊維質基材の表に弾性高分子物
質の層が形成され易いので好ましい。
【0056】次に、これら繊維質基材に付着された良溶
媒に溶解された弾性高分子物質の溶液は、貧溶媒中に浸
漬することによって湿式凝固される。また、良溶媒と貧
溶媒の混合溶媒に溶解されている場合は、低温で蒸気圧
のより高い良溶媒を加熱などの方法により、先に飛ば
し、貧溶媒比率を多くすることでゲル化させ、次に貧溶
媒も蒸発する高温で乾燥させる乾式凝固法で凝固させ
る。このように湿式・乾式いずれも弾性高分子物質の貧
溶媒を介在して繊維上のフッ素系撥水剤の撥水基と弾性
高分子物質中の親水性シリコンの親水基との反発作用に
よって良好な繊維とウレタンの非接着構造が形成され
る。
【0057】本発明による製造方法で、繊維と弾性高分
子物質の接着防止効果が極めて高く、かつ弾性高分子物
質の染み出しがない理由は、以下の2つのメカニズムが
相乗効果的に作用しているためだと考えられる。
【0058】(I)繊維、弾性高分子物質がそれぞれ、
フッ素系撥水剤の特有の撥水、撥油性によって、弾性高
分子物質の染み出しが防止されていると共に離型性が向
上されている。
【0059】(II)繊維表面が疎水化され、かつ弾性高
分子物質が親水化されているため、凝固時に貧溶媒を介
して反発作用が働き繊維と弾性高分子物質との間に積極
的に空隙を形成する。
【0060】公知方法におけるように、単に繊維や弾性
高分子物質の離型性を向上させただけでは、凝固時には
まだ、繊維と弾性高分子物質とは離型しておらず、追っ
て揉み処理などの物理的な離型作業を施さなければなら
ない。たとえ、揉み処理等を施しても充分に離型され
ず、本発明によって得られる構造の様に、凝固時から、
弾性高分子物質と繊維が接着防止された場合のような柔
軟性は得られない。
【0061】本発明の製造方法で得られる弾性高分子物
質のコーティング布帛は、極めて柔軟となり、繊維質基
材のボリューム感や風合いを落とすことが無い。加え
て、繊維質基材を裏抜けせずに弾性高分子物質が浸透
し、繊維を取り囲みながら、繊維質基材の作る連続した
空間内に存在するので、弾性高分子物質の層の剥離強力
も高い。
【0062】このため、弾性高分子物質中に例えば銅や
銀系化合物などの抗菌剤や消臭剤、炭化ジルコニウム等
の蓄熱剤などの高機能微粒子を添加しておくと、着用耐
久性や洗濯耐久性があり、柔軟な高機能加工布帛として
衣料用以外に靴資材、家具、メディカル用途など巾広い
用途に応用することが可能となる。 また、もちろん、
機能性微粒子を本発明の疎水化前処理剤で予め処理して
おくと、該機能性微粒子と弾性高分子物質とは非接着構
造を取り易く、多量に機能性微粒子を添加しても強度劣
化や柔軟性の低下を起こさず好ましい。また、弾性高分
子物質と機能性微粒子が非接着構造をとるため、機能性
微粒子の機能(例えば、抗菌性、保水性など)も発現さ
れやすいので好ましい。
【0063】
【実施例】以下、本発明を実施例に従って、更に具体的
に説明するが、本発明をこれらの実施例に限定するもの
でないことはいうまでもない。なお、以下の例におい
て、全ての量は特に断らない限り重量を基準としたもの
である。また、実施例で示した測定項目は、下記により
測定したものである。
【0064】(a)曲げ弾性 KES(Kawabata Evolution Sy
stem)純曲げ試験による。値が小さいほど柔軟であ
ることを示す。
【0065】(b)剥離強力 JIS L−1086に準ずる。
【0066】(c)耐水圧 JIS L−1092に準ずる。
【0067】(d)透湿性 JIS L−1099に準ずる。
【0068】(e)通気性 JIS L−1096に準ずる。
【0069】(f)音鳴り防止性 ウインドブレーカーを作成し、10人による着用試験
(一日着用)で、音鳴り防止性を官能評価した。全く気
にならない場合を1点、動作の度に気になる場合を0点
として各人に評価してもらい、その総点数の1/2を級
とした。
【0070】(g)耐摩耗性 JIS L−1096テーバ形法に準ずる。摩耗輪H−
22、1kg荷重で行い、試験片に穴が開いた摩耗回数
を耐摩耗性とする。
【0071】(h)耐洗濯性 JIS L−0217耐洗濯性法に準ずる。40℃の水
温で洗濯5分、すすぎ4分を1サイクルとし、10サイ
クル行った後に所定の物性評価を行った。
【0072】(i)裏抜け防止性の判定 目視判定と共に既に記述した弾性高分子物質の繊維質基
材への浸透度合いによって評価判定した。
【0073】(j)羽毛の抜け出し性 15cm×15cm角の試料を2枚重ね、周りを縫い合
わせ、内部に12gの羽毛を詰めて試料を作製し、この
試料をJIS L−1096法のピリング試験A法に基
づき、ICI試験機の中の3個の硬質ゴムボール(直径
4cm、重さ45g)と共に入れ、60rpm 5時間
回転して試料表面からの羽毛の抜け出しを調べた。
【0074】実施例1、2及び3 緯糸に繊度0.5dのナイロン66極細繊維のマルチフ
ィラメント(50d/100f)を用い、経糸に繊度1
dのレギュラーナイロン66繊維のマルチフィラメント
(70d/70f)を用いた染色上がりのタフタ(目付
80g/m2 )を、パーフルオロアルキル系のフッ素系
撥水剤(明成化学(株)製 AG−710)と水の組成
比が、それぞれ、1/99、3/97及び10/90の
疎水化前処理液に浸漬し、その後ニップロールで絞り率
60%になるように均一に絞液した後、160℃で3分
間、熱風乾燥機中で乾燥し、フッ素系撥水剤の有効成分
を該織物に対しそれぞれ固形分で、それぞれ、0.1
0、0.30及び1.0%付着させた、3つの疎水化前
処理反を作成した。
【0075】次に、ポリエステル・ポリエーテル共重合
系ソフトセグメントを有するポリウレタン20部、メチ
ルエトキシシロキサン約60%及びジメチルシロキサン
約40%よりなる共重合シリコーンであるメチルエトキ
シポリシロキサン1.6部並びにジメチルホルムアミド
78.4部からなるポリウレタン溶液を、前記前処理後
の織物にナイフコーターにて100g/m2 コーティン
グし、6分間水中凝固させ、続いて60〜70℃の温水
中で20分間、洗浄し、乾燥した。その後、さらに浸漬
法で溶剤系のフッ素系撥水剤(大日本インキ(株)製
NH−10)を純分で約0.3g/m2 付着させ、本発
明物の複合材料の一例である実施例1、2及び3を得
た。表1にその構造と物性を示す。
【0076】この複合材料のNn/Ntは高く、またい
ずれも浸透度合い平均xi /平均t i が0.5未満であ
るため、極めて柔軟な風合いにもかかわらず、繊度0.
5dの繊維を中心にウレタンが取り囲んでいるため、ポ
リウレタンのコーティング層の剥離強力が高く、なおか
つポリウレタンの裏抜けがないので、肉眼で見て織物の
色を全く損なう事の無い良好なものとなった。
【0077】ウインドブレーカーを試作し、10人で1
日着用し音鳴りを評価した。その結果、音鳴りが10人
ともほとんど気にならず5級の評価となった。また、表
1から耐水圧、透湿性も良好で、いずれもウインドブレ
ーカーとして優れたものであることがわかる。
【0078】比較例1及び2 実施例1〜3で用いた染め上がり織物には、実施例1〜
3と同一の親水性シリコーンを含むポリウレタン溶液
を、実施例1で用いた前処理後の織物には親水性シリコ
ーンを含まない前記ポリウレタンを20部、ジメチルホ
ルムアミド80部からなるポリウレタン溶液を、それぞ
れナイフコーターにて100g/m2 コーティングし、
6分間水中凝固させ、続いて60〜70℃の温水中で2
0分間、洗浄し、乾燥した。その後、さらにフッ素系撥
水剤を浸漬法により純分で約0.3g/m2 付着させて
比較例1、2を作成した。得られたシート状の複合材料
の曲げ弾性、剥離強力を表1に示す。Nn/Ntは0.
2であり、曲げ弾性は大きく、実施例1に示す本発明の
ものより、いずれも硬い風合いである。さらに、比較例
1ではウレタンの浸透度合い平均xi /平均ti は0.
9であり、ほとんど全面にわたってポリウレタンが裏抜
けした。このため、織物の色が著しく損なわれ、白ぼけ
たものとなった。
【0079】また、実施例1と比較してウインドブレー
カーを試作し、10人で1日着用し音鳴りを評価した
が、10人中8人が音鳴りが気になるということで1級
の評価となった。
【0080】
【表1】
【0081】実施例4及び5 繊度1dで目付130g/m2 のナイロン長繊維スパン
ボンド(ピンポイントエンボスタイプ…融着面積比率8
%)を実施例2と同一のフッ素系撥水剤の加工液に浸漬
し、その後ニップロールで絞り率60%になるように均
一に絞液した後、160℃で3分間、熱風乾燥機中で乾
燥し、フッ素系撥水剤の有効成分をスパンボンドの基材
に対して固形分で約0.30%付着させ、前処理反を作
成した。次にメチルエチルケトン52部、トルエン16
部、水20部に直径1μm前後の微粒子状の疎水性のポ
リエーテル系ポリウレタン8部が親水性のポリウレタン
界面活性剤2部で分散・乳化したW/O型のエマルジョ
ン(I)を調合した。次に、このエマルジョン(I)に
メチルエトキシシロキサン約60%及びジメチルシロキ
サン約40%よりなる共重合シリコーンであるメチルエ
トキシポリシロキサン1部を添加しコーティング用の乾
式ポリウレタンエマルジョン(II)を調合した。このエ
マルジョン(II)にポリウレタン固形分に対して約10
%の炭化ジルコニウム(平均粒径2μm)を添加してエ
マルジョン(III)を調合した。
【0082】前処理反にエマルジョン(II)、(III)を
ナイフコーターで各々100g/m 2 コーティングし、
60℃で1分間、80℃で2分間、次に120℃で2分
間乾燥して本発明に係る複合材料の一例である実施例4
及び5の複合材料を作成した。
【0083】比較例3 実施例4で用いた繊度1dで目付130g/m2 のナイ
ロン長繊維スパンボンドにフッ素系撥水剤を付与せず
に、実施例4に記述した乾式ポリウレタンエマルジョン
(I)にポリウレタン固形分に対して約10%の炭化ジ
ルコニウムを添加したエマルジョン(IV)をナイフコー
ターで100g/m2 コーティングし、60℃で2分
間、80℃で2分間、次に120℃で2分間乾燥して比
較例3を作成した。
【0084】表2に実施例4及び5と比較例3の構造と
物性を比較して示す。
【0085】
【表2】
【0086】表2の結果から、本発明物の実施例4及び
5は比較例3に比べ、(1)Nn/Ntの値が大きいた
め、曲げ硬さが小さく柔軟であること、(2)平均xi
/平均ti が0.50以下で裏抜けが無いことがわか
る。また、テーバー摩耗による耐摩耗性を調べると、炭
化ジルコニウムを添加しているにもかかわらず、実施例
5は無添加の実施例4に対してあまり低下していないの
に比べ、実施例5と同量の炭化ジルコニウムを添加して
いる比較例3は大きく低下している。
【0087】これは、本発明では、繊維とポリウレタン
とが非接着の構造を形成しているため、ポリウレタンの
多数の微粒子同志の凝集が起こりやすく炭化ジルコニウ
ムが存在しても力学的な構造欠陥になりにくくなってい
るためと思われる。
【0088】炭化ジルコニウムは白色光を当てると発熱
するが、実施例5の複合材料で温度センサーを包み白色
光を当てると、約1分で5℃上昇した。この性能はJI
SL−0217の耐洗濯性試験10回後も約90%保持
されたが、比較例3では、40%しか保持されなかっ
た。
【0089】実施例6 経糸に、銅/アンモニアレーヨン溶液から紡糸して酸水
溶液中で凝固して得られる75d/45fの再生セルロ
ース繊維(旭化成(株)製 ベンベルグ登録商標)を用
い、緯糸に40番単糸の銅/アンモニアレーヨン糸を用
いて作成した密度がインチ当たり経140本、緯100
本の綾織物を、実施例2で用いたフッ素系撥水剤2部
と、メチルハイドロジェンシロキサン約55%とジメチ
ルシロキサン約45%からなる共重合ポリシロキサン1
部及び水97部からなる疎水化前処理液に浸漬し、絞液
後乾燥して、疎水化前処理剤が固形分で約0.30%付
着した前処理反を得た。次にこの前処理反に実施例1で
使用したポリウレタンをフローティング方式のナイフコ
ーターでコーティングし、その直後に水中凝固させるこ
とで、約10gのポリウレタンを有する本発明の複合材
料である実施例6を得た。得られた複合材料は、Nn/
Ntが0.88、平均xi /平均ti が0.42で極め
て柔軟(KES曲げ硬さ0.05gfcm2 /cm)
で、音鳴りも気にならず、樹脂の裏抜けもないものとな
った。尚、この複合材料で羽毛布団袋を作成し、羽毛の
抜け出し性を評価した所、洗濯10回後も羽毛が全く出
ず、柔軟で通気性も高く(2cc/cm2 ・秒)、ムレ
のない良好な羽毛布団袋となることがわかった。
【0090】
【発明の効果】上述のように、本発明で得られる複合材
料は柔軟で繊維質基材上に形成された弾性高分子物質の
層は裏抜けせずにかつ剥離強力が強いため、例えば、織
物に応用すると柔軟で音鳴りがしない上に極めて高い剥
離強力を有し、透湿性と耐水圧も優れたスキーウェアー
やゴルフ、ジョギング用などの各種ウインドブレーカー
や、通気性があり、羽毛が使用時はもちろん洗濯後も出
ないダウンプルーフ性に優れた音鳴りの少ない布団外地
や、ダニやダニの糞を通さない防ダニシーツ、防ダニ枕
カバー、防ダニ布団カバーに使用する事ができる。ま
た、編物に応用する事でストレッチバック性に優れ、ス
ポーツウェアーに用いた場合、膝や肘部などの関節部分
のたるみの少ないジャージやサポート用パンストなど身
体にフィット性の良いパンティストッキング、スパッツ
などに用いることができる。さらにアクリル紡績糸や羊
毛、レーヨンなどの嵩高加工糸に応用すると、ストレッ
チバック性や保型性の改善が可能となり有用である。
【0091】また、不織布に応用する事で、柔軟で耐摩
耗性などの耐久性や引裂強力などの力学的強力にも優れ
た合成皮革、人工皮革となり、衣料用、家具用、靴用、
カーシートなど産業資材用に用いる事ができる。さらに
上記弾性高分子物質中に抗菌性、透湿性、蓄熱性、消臭
性などの機能性物質を添加する事で、柔軟で耐摩耗性、
着用、洗濯耐久性のある機能性加工布として各種スポー
ツウェアー、スポーツ観戦用ウェアー、靴資材、メディ
カル用途(例えば、抗MRSAシーツやガウンなど)な
ど幅広い用途への応用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の弾性高分子物質2が裏抜けせずに、繊
維質基材3(織物)にコーティングされた複合材料の拡
大断面図である。1は繊維質基材と弾性高分子物質の界
面に存在する繊維のうち、弾性高分子物質に非接着で取
り囲まれている繊維を表す。
【図2】従来技術で製造された、繊維質基材3(織物)
に弾性高分子物質2がコーティングされた複合材料の拡
大断面図である。1は繊維質基材と弾性高分子物質の界
面に存在する繊維のうち、弾性高分子物質と接着してい
る繊維を表す。
【図3】本発明で比較例として取り上げられた弾性高分
子物質2がコーティングされた複合材料の拡大断面図で
ある。1は繊維質基材3と弾性高分子物質2の界面に存
在する繊維のうち、弾性高分子物質に非接着で取り囲ま
れている繊維を表す。また、弾性高分子物質は、その一
部4が繊維質基材の裏側へ染み出している。
【図4】本発明の複合材料の断面電子顕微鏡の分割写真
の解析方法を表す図である。図中、線分AB及びCD
は、繊維質基材の表裏面近傍に引かれた基準線を表す。
【図5】図4の点線部分を拡大した図を表す。図中、x
i1、xi2は、弾性高分子物質の浸透している部分の繊維
質基材の基準線からの距離を表す。
【符号の説明】
1…繊維 2…弾性高分子物質 3…繊維質基材 4…弾性高分子物質が裏側へ染み出している部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 朋子 大阪府高槻市八丁畷町11番7号 旭化成工 業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維質基材の少なくとも片面に弾性高分
    子物質の層を設けてなるシート状の複合材料において、
    (i)該弾性高分子物質の該繊維質基材への浸透度合い
    が該繊維質基材の厚みの1/2以内であり、かつ(ii)
    該複合材料の切断面において、該弾性高分子物質が該繊
    維質基材の単繊維間隙に入り込んでおり、該弾性高分子
    物質の層が設けられた側で該繊維質基材の表面に存在す
    る全繊維断面数Ntのうち繊維断面の円周上で該弾性高
    分子物質と全く接着していない繊維断面数NnのNtに
    対する比Nn/Ntが0.3〜0.95であることを特
    徴とするシート状の複合材料。
  2. 【請求項2】 編織物の片面に設けられた弾性高分子物
    質の層厚が1〜500μmである請求項1に記載の複合
    材料からなる衣料用透湿防水布。
  3. 【請求項3】 編織物の片面に設けられた弾性高分子物
    質の層厚が1〜50μmである請求項1に記載の複合材
    料からなる寝装品。
  4. 【請求項4】 繊維質基材の少なくとも片面に弾性高分
    子物質層を設けてなるシート状複合材料の製造方法にお
    いて、(i)該繊維質基材にフッ素系撥水剤を主成分と
    する疎水化前処理剤を付着させ、(ii)その基材に、親
    水性シリコーンを添加した弾性高分子物質の溶液もしく
    はエマルジョンをコーティングし、そして(iii)その基
    材を該弾性高分子物質の貧溶媒に浸漬するか、または乾
    燥時に良溶媒を先に飛散させ、貧溶媒を残留させて凝固
    せしめることからなる複合材料の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1060782A (ja) * 1996-08-20 1998-03-03 Asahi Chem Ind Co Ltd 合成皮革
JP2008539997A (ja) * 2005-05-19 2008-11-20 キルツ オブ デンマーク アクティーゼルスカブ ダウン層と組み合わせた活性熱吸収/放出層を備えるマットレス
JP2009096194A (ja) * 2007-09-28 2009-05-07 Seiren Co Ltd 透湿防水性布帛

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