以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、この発明に係る電子音楽装置を含んでなる楽音発生システムの全体構成の一実施例を示すシステムブロック図である。本発明に係る電子音楽装置DMは、ユーザによる例えば押鍵操作などの所定の演奏操作子の操作に応じて、ドラムパターンや分散和音の楽音を発生する演奏データ(例えばMIDIデータ等)を自動的に生成する「アルペジオ自動生成機能」を備えた電子音楽機器(アルペジエータ)である。こうした電子音楽装置DMの具体例を挙げると、例えば電子音楽装置DM自体が音源を内蔵しており、自機のみで演奏データを発生することができると共に、該演奏データに基づいて楽音を発生することが可能なシンセサイザーや電子ピアノなどの電子楽器、あるいは自機のみで演奏データを発生することができるが、電子音楽装置DM自体は音源を内蔵しておらず自機のみでは該演奏データに基づいて楽音を発生することができず、そのために前記演奏データを本電子音楽装置DMに接続した外部音源装置Xに対して出力することで、該外部音源装置Xから楽音を発生させることができる、所謂コントロールキーボードやブレス(ウィンド)コントローラなどと呼ばれる音源制御機器である。なお、内蔵音源を有する電子楽器であっても、任意に自機に接続された外部音源装置Xに対して演奏データを出力することにより、該演奏データに基づく楽音を外部音源装置Xから発生させることができるようになっていてよいことは言うまでもない。
上記電子音楽装置DMと有線あるいは無線の通信ラインを介して接続される外部音源装置Xは、複数のチャンネルで楽音信号の同時発生が可能であって、接続されている電子音楽装置DMから通信ラインを経由して受信した演奏データに基づいて楽音信号を生成する音源を少なくとも有する、専用の音源機器あるいは音源を内蔵した電子楽器、ソフトウェア音源がインストールされたパーソナルコンピュータなどである。外部音源装置Xでは音源で生成した楽音信号を元に、アンプやスピーカなどを含むサウンドシステムSPから楽音を発音する。ただし、外部音源装置Xは電子音楽装置DMと異なり、アルペジオ自動生成機能を搭載していない。あるいは、搭載していても、本発明の電子音楽装置DMと共に使用する際には、アルペジオ自動生成機能を動作させないものとする。したがって、外部音源装置Xは電子音楽装置DMから受信した演奏データに含まれる音高情報(ノート情報)に基づき、さらにドラムパターンの楽音を発生するための演奏データを自動生成することなく、個々の音高情報に基づいて対応する楽音を順次に発生する。
上記した外部音源装置Xの音源における楽音信号発生方式はいかなるものを用いてもよい。例えば、発生すべき楽音の音高に対応して変化するアドレスデータに応じて波形メモリに記憶した楽音波形サンプル値データを順次読み出す波形メモリ読み出し方式、又は上記アドレスデータを位相角パラメータデータとして所定の周波数変調演算を実行して楽音波形サンプル値データを求めるFM方式、あるいは上記アドレスデータを位相角パラメータデータとして所定の振幅変調演算を実行して楽音波形サンプル値データを求めるAM方式等の公知の方式を適宜採用してよい。このように、音源の楽音合成方式は波形メモリ方式、FM方式、物理モデル方式、高調波合成方式、フォルマント合成方式、VCO+VCF+VCAのアナログシンセサイザ方式、アナログシミュレーション方式等、どのような方式であってもよい。また、共通の回路を時分割で使用することによって複数の発音チャンネルを形成するようなものでもよいし、各発音チャンネルがそれぞれ専用回路で構成されるようなものであってもよい。さらに、専用のハードウェアを用いて音源を構成するものに限らず、DSPとマイクロプログラム、あるいはCPUとソフトウェアを用いて音源を構成するようにしてもよい(所謂ソフトウェア音源)。すなわち、外部音源装置Xはソフトウェア音源を記憶する記憶手段を有してなり、該記憶手段に記憶されたソフトウェア音源の動作に従って楽音を発生可能な、例えばパーソナルコンピュータなどの装置であってよい。
次に、図1に示した電子音楽装置DM、外部音源装置Xのハード構成の一実施例について説明する。ただし、上記各装置は同じようなハード構成を用いるものとして説明することができることから、ここでは代表として電子音楽装置DMについてのブロック図を用いて説明する。図2は、この発明に係る電子音楽装置DMの全体構成の一実施例を示したハード構成ブロック図である。なお、以下の説明では、電子音楽装置DMとして内蔵音源を有していないコントロールキーボード、外部音源装置Xとしてソフトウェア音源により楽音を発生するパーソナルコンピュータを用いた場合を例に説明する。
本実施例に示す電子音楽装置DMは、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータによって制御される。CPU1は、この電子音楽装置DM全体の動作を制御する。このCPU1に対して、通信バス1D(例えばデータ及びアドレスバス)を介してROM2、RAM3、記憶装置4、検出回路5,6、表示回路7、通信インタフェース(I/F)8がそれぞれ接続されている。ROM2は、CPU1により実行あるいは参照される各種制御プログラムや各種データ等を格納する。RAM3は、CPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データなどを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを一時的に記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。
記憶装置4は、各種データやCPU1が実行する各種制御プログラム等を記憶する。この実施例においては、例えばドラムキットの音色マッピング(キーマップ,後述する図3参照)を1乃至複数記憶する他、アルペジオパターンデータ(後述する図4参照)、当該電子音楽装置DMで発生したノート番号や制御パラメータ値等を、接続された外部音源装置Xを制御するためのデータに変換する変換テーブルを定義した制御テンプレートなどを記憶する(後述する図5参照)。なお、上述したROM2に制御プログラムが記憶されていない場合、この記憶装置4(例えばハードディスク)に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM3に読み込むことにより、ROM2に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU1にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。なお、記憶装置4はハードディスク(HD)に限られず、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD‐ROM・CD‐RAM)、光磁気ディスク(MO)、あるいはDVD(Digital Versatile Disk)等の着脱自在な様々な形態の外部記憶媒体を利用する記憶装置であればどのようなものであってもよい。あるいは、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよい。
演奏操作子5Aは楽音の音高を選択するための複数の鍵を備えた例えば鍵盤等のようなものであり、各鍵に対応してキースイッチを有しており、この演奏操作子5A(鍵盤等)はユーザ自身の手弾きによるマニュアル演奏に使用することができるのは勿論のこと、当該電子音楽装置DMを「アルペジオ演奏モード」に機器設定するための手段、キーマップやドラムパターン(アルペジオパターンデータ)あるいは制御テンプレート等を選択する手段などとして使用することもできる。検出回路5は、演奏操作子5Aの各鍵の押圧及び離鍵を検出することによって検出出力を生じる。設定操作子(スイッチ等)6Aは、例えばアルペジオ自動生成機能を起動した状態の「アルペジオ演奏モード」に当該電子音楽装置DMを機器設定するモード指定スイッチ、本電子音楽装置DMで使用するキーマップや「アルペジオ演奏モード」時に発生させるドラムパターン(アルペジオパターンデータ)、さらには制御テンプレート等を選択する選択スイッチ、外部音源装置Xにて選択されたソフトウェア音源に対応付けられているキーマップを特定する特定スイッチ、音量(ゲイン)やテンポあるいはピッチベンド等を制御するノブやスライダなどのコントローラ類である。勿論、設定操作子6Aはこれら以外にも、数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボードなどの各種操作子を含んでいてもよい。検出回路6は、上記設定操作子6Aの操作状態を検出し、その操作状態に応じたスイッチ情報等をデータ及びアドレスバス1Dを介してCPU1に出力する。
ユーザが上記モード設定スイッチを操作して、当該電子音楽装置DMを「アルペジオ演奏モード」に機器設定した場合には、鍵盤の予め指定された固定鍵域あるいはユーザ設定に応じた任意の鍵域を「アルペジオ鍵域」に設定する。公知のように、この「アルペジオ鍵域」内に含まれるいずれかの鍵に対する押鍵操作に応じて、予めユーザが選択済みのアルペジオパターンデータに従って、ドラム音色に対応付けられた固定的なノート情報及び/又はユーザが押鍵操作した鍵に対応付けられたノート情報と、ベロシティ及びノートオン等の各種イベント情報とを多数含んでなる演奏データ、すなわちドラムパターンの楽音を発生するための演奏データが自動的に生成される。
なお、上記「アルペジオ鍵域」以外の各鍵に対する押鍵(あるいは離鍵)操作に従って生成される、ノート情報やベロシティ及びノートオン(あるいはノートオフ)等を含む演奏データは、通常の鍵盤演奏としての楽音発生のための演奏データとして用いられることは従来と同様である。
なお、上記「アルペジオ鍵域」の設定としては、鍵盤を低音側と高音側の2つに分割する分割点(所謂スプリットポイント)を選択してこの分割点から低音域側を「アルペジオ鍵域」とする、あるいは全ての鍵域から「アルペジオ鍵域」とする音高範囲をユーザが直接選択して設定するなどの従来知られた適宜のどのような方法であってもよい。
表示回路7は例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成されるディスプレイ7Aに、ROM2に記憶されているキーマップや制御テンプレートあるいはアルペジオパターンデータの一覧表示、選択された制御テンプレートやアルペジオパターンデータに定義されているデータ内容、あるいはCPU1の制御状態などを表示する。ユーザはディスプレイ7Aに表示されるこれらの各種画面を参照することで、ユーザ所望のデータを容易に選択することができる。
通信インタフェース(I/F)8は、外部音源装置Xに対して当該電子音楽装置DMからMIDI形式の演奏データを送信するMIDI入出力インタフェース、及び制御パラメータを送信するデータ入出力インタフェースとしての機能を備えた、例えばRS-232C、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)、無線LAN、ブルートゥース(商標)、赤外線送受信器等のインタフェースである。あるいは、LAN(Local Area Network)やインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークを介して、電子音楽装置DMとネットワーク上の外部音源装置X(例えば、ソフトウェア音源を有するサーバ装置)とを接続することができ、電子音楽装置DMとサーバ装置との間でMIDIデータや制御パラメータさらには各種情報等を送受信することができるネットワークインタフェースであってもよい。こうした通信インタフェース8は、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を具えていてよい。
なお、上述した電子音楽装置DMにおいて、演奏操作子5Aとしては鍵盤等の鍵盤楽器の形態に限らず、弦を備えたネック等の弦楽器の形態のもの、息を吹き込む管楽器の形態のもの(ブレスコントローラ)など、音高を選択できる演奏操作子であればどのようなものであってもよい。また、電子音楽装置DMは、演奏操作子5A,設定操作子6Aやディスプレイ7Aなどを1つの本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別々に構成され、MIDIインタフェースや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各機器を接続するように構成されたものであってもよいことは言うまでもない。
なお、本発明に係る電子音楽装置DMは内蔵音源を有していないコントロールキーボード(音源制御機器)の形態に限らず、内蔵音源を有する電子楽器、ソフトウェア音源を有するパーソナルコンピュータ、あるいはPDAや携帯電話等の携帯型通信端末、さらにはカラオケ装置やゲーム装置など、どのような形態の装置・機器に適用してもよい。携帯型通信端末に適用した場合、端末のみで所定の機能が完結している場合に限らず、機能の一部をサーバ装置側に持たせ、端末とサーバ装置とからなるシステム全体として所定の機能を実現するようにしてもよい。
外部音源装置Xにおいては、上記した電子音楽装置DMの構成に加えて、図中において点線で示すように、CPU1に対して通信バス1D(例えばデータ及びアドレスバス)を介して、図示しない外部のオーディオ機器からオーディオ信号を取得するオーディオ入力回路9、ソフトウェア音源の処理に従って発生した演奏データをコーディングして楽音信号を生成するコーデック回路10(ソフトウェア音源に機能として含まれていてよい)が接続される。また、コーデック回路10が生成した楽音信号に基づき楽音を発音するために、アンプやスピーカ等からなるサウンドシステムSPを有する。外部音源装置Xの記憶装置4はキーマップを1乃至複数記憶する他にも、複数種類(複数アルゴリズム、複数メーカなど)のソフトウェア音源を記憶しており、該ソフトウェア音源の種類毎に異なるキーマップが割り当てられている。したがって、ユーザによるソフトウェア音源の選択に応じて、該選択されたソフトウェア音源に最適なキーマップが1つ外部音源装置Xに設定される。
外部音源装置Xにおけるソフトウェア音源の選択にあわせて、ユーザは電子音楽装置DM側において、外部音源装置Xにて選択したソフトウェア音源に対応付けられているキーマップを後述の制御テンプレートを選択することにより特定する。勿論、ユーザ自らがスイッチ等を操作して特定することに限らず、外部音源装置Xからキーマップを特定する情報(例えば、ソフトウェア音源の種類あるいはキーマップ種類など)を受信し、自動的にキーマップを特定できるようにしてよい。なお、図示していないが、楽音信号に対して所定の効果を付与する効果回路を具備していてもよい。また、電子音楽装置DMから出力された演奏データ等を記憶装置4に記憶できたり、電子音楽装置DMから出力された演奏データに基づき楽譜等をディスプレイ7Aに表示できたりしてあってもよい。
上記したように、電子音楽装置DMは1つのキーマップを記憶している。また、外部音源装置Xは1乃至複数のキーマップを記憶しうるものであって、外部音源装置Xにおけるソフトウェア音源を選択するユーザ操作に応じて該記憶したキーマップの中からいずれか1つを特定することができるようになっている。キーマップは、例えば「C4」や「E4」などの特定の音高情報(ノート情報)と複数のドラム音色とを対応付けているデータであり、電子音楽装置DMの場合はこのキーマップに沿ってドラム演奏用のアルペジオパターンが制作されており、外部音源装置Xの場合にはこのキーマップに沿ってドラム音色が発音される。このキーマップは、メーカが本電子音楽装置DM(あるいは外部音源装置X)を出荷する前などに、任意のノート情報と多数のドラム音色とを組み合わせ、その組み合わせをROM2や記憶装置4等に予め書き込んで記憶してある。こうしたキーマップのデータ構造の一実施例を、図3に示す。この明細書では、データ内容(音高に対応付けられるドラム音色の種類や、音高とドラム音色との対応関係など)が異なるキーマップには異なる「タイプ」名を割り当てて区別するようにしている。
図3左端に示すキーマップ「タイプA」では「C4」,「E4」,「G5」,「A5」,「B5」,「C6」の各ノートに対して、それぞれバスドラム,スネアドラム,ロータム,ハイタム,ハイハットオープン,ハイハットクローズの各ドラム音色を対応付けている。一方、図3中央に示すキーマップ「タイプB」では「C3」,「E3」,「G4」,「A4」,「B4」,「C4」の各ノートに対して、それぞれバスドラム,スネアドラム,ロータム,ハイタム,ハイハットオープン,ハイハットクローズの各ドラム音色を対応付けている。すなわち、「タイプA」と「タイプB」とを比べると、「タイプA」に比べて「タイプB」では1オクターブ低い音高に対して「タイプA」と同様に各ドラム音色が対応付けされている。さらに、図3右端に示すキーマップ「タイプC」では「C4」,「E4」,「G5」,「A5」,「B5」,「C6」の各ノートに対して、それぞれハイハットクローズ,ハイハットオープン,ロータム,ハイタム,スネアドラム,バスドラムの各ドラム音色を対応付けている。すなわち、「タイプA」と「タイプC」とを比べると、「タイプA」に比べて「タイプC」では各ドラム音色を対応付けている音高は同じであるが、各音高に対応付けられるドラム音色が一部異なっている。
次に、ROM2やRAM3あるいは記憶装置4などに記憶されるアルペジオパターンデータ及び制御テンプレートについて説明する。図4は、アルペジオパターンデータのデータ構造の一実施例を示す概念図である。アルペジオパターンデータは大きく分けてヘッダと発音パターンデータとからなり、予めプリセットされたものやユーザが設定したものなどが複数のタイプ(例えば、ピアノやドラムなどの楽器タイプや音楽ジャンルのタイプ)別に記憶されている。ヘッダは、タイプ及び楽音パターンを示すパターン名と、「Normal」又は「Fixed Note」のいずれかを指定する変換モードとを含む。ユーザはパターン名を指定することで、演奏したい楽器や音楽ジャンルに適したドラムパターンの楽音を発生するパターンデータを1つ選択することができる。
変換モードは、発音パターンデータに基づき自動生成する演奏データを、ユーザの手弾きを反映した演奏パターンのデータとする「Normal」、ユーザの手弾きを反映することなく予め決められた固定の演奏パターンのデータとする「Fixed Note」のいずれかを指定する。この変換モードに従って、外部音源装置Xに対して発音パターンデータに基づき自動生成した演奏データの出力態様が異なる。
変換モードが「Normal」である場合には、ユーザによる押鍵操作に応じて発生された押鍵ノートを所定ルール(例えば押鍵順、音高順など)に従い番号付けし、発音パターンデータ内の各タイミングで、キー番号に合致した押鍵ノートをMIDI出力する。つまり、ユーザが押鍵操作した鍵の音高を反映する。この変換モード「Normal」は音階音によるアルペジオ演奏や、演奏の都度、発音させるドラム音を変化させたいときのドラム演奏に適している。他方、変換モードが「Fixed Note」である場合には、押鍵操作に応じて発生された押鍵ノートが何であっても、発音パターンデータ内の各タイミングで発音パターンデータに定義されたノート番号に該当するノートをMIDI出力し、予め決まったドラム音からなるドラムパターンを発音させるのに適する。つまり、ユーザが押鍵操作した鍵の音高を反映しない。このように、変換モード「Normal」のパターンデータはユーザによる手弾きを反映した音階音の演奏パターンやドラムパターンの演奏データを生成するのに適したデータであり、一方、変換モード「Fixed Note」のパターンデータはユーザによる手弾きを反映しないで予め決められた固定のドラムパターンの演奏データを生成するのに適したデータである。なお、変換モードは、上記のようにアルペジオパターンデータ全体に対して一括して指定する場合の他に、発音パターンデータに含まれる複数のアルペジオ構成音全てをトラック毎に一括して指定する場合、あるいは発音パターンデータに含まれる個々のアルペジオ構成音毎に指定する場合(この場合、1つの発音パターンデータ内に「Normal」と「Fixed Note」が混在する)があってよい。例えば、ユーザによる同時押鍵数が所定数(例えば3)までは「Fixed Note」であり、それを超える押鍵に対しては「Normal」などとしてもよい。
発音パターンデータは複数のトラック毎に、タイミング、キー番号、ノート番号データの3つの要素からなる1音分のデータを1小節分記憶する。タイミングは、楽音の発音開始タイミングに対応するクロック値を表すデータである。キー番号は変換モードが「Normal」の場合に用いられるデータで、アルペジオを発音する際の楽音の音高を実際の押鍵音に基づいて決めるためのデータである。すなわち、RAM3にはこのキー番号に対応するレジスタが予め設定され、アルペジオ鍵域内の各鍵の押鍵操作に従って検出されたノートナンバーを該レジスタに格納することにより、所定のルールでキー番号のデータに対してノートナンバーを割り当てる。例えば、アルペジオ鍵域内の各鍵の押鍵操作に従って検出可能とする押鍵数を4つに設定した場合、キー番号は1〜4の数値であり、このキー番号の値はアルペジオの音高変化パターンに対応して各1音分のデータ毎に予め割り当てられている。そして、アルペジオ生成処理において、発音パターンデータ中のキー番号に対して割り当てられたノートナンバーをレジスタから読み出し、このノートナンバーを発音する楽音の音高を定めるノートナンバーとする。なお、従来知られているように、このノートナンバーは、オクターブシフト等の処理もあるので楽音の音高そのものとなるとは限らない。
ノート番号データは変換モードが「Fixed Note」の場合に用いられるデータで、電子音楽装置DMに記憶されている上記キーマップのいずれかに定義されているドラム音色に対応付けられたノート情報のうちの、任意のノート情報を指定するデータである。このノート情報は、通常の鍵盤演奏の楽音を発生する際の楽音の音高を決定するためのデータとして用いられるものではなく、ドラムパターンの楽音を発生する際のドラム音色を決めるためのデータとして用いられるものである。なお、アルペジオパターンデータは上記した以外のその他のデータを含んでいてよい。
なお、キー番号とノート番号の双方を記憶するものに限らず、変換モードが「Fixed Note」の場合はノート番号のみを記憶し、変換モードが「Normal」の場合はキー番号のみを記憶するようにしてもよい。
図5は、制御テンプレートのデータ構造の一実施例を示す概念図である。制御テンプレートは、電子音楽装置DMが記憶するソフトウェア音源種類毎に記憶される。図5(a)に示すように、制御テンプレートは、外部音源(ソフトウェア音源)の種類毎に「制御変換テーブル」と「ノート変換テーブル」とが組み合わされて定義されている。したがって、接続した外部音源装置Xにおいて起動するソフトウェア音源の種類の指定に応じて、「制御変換テーブル」と「ノート変換テーブル」の組み合わせが1つ特定される。
図5(b)に示す「制御変換テーブル」は、設定操作子6Aのうち外部音源装置X(詳しくはソフトウェア音源)を制御するよう割り当てられた操作子(これを便宜的に制御操作子と呼ぶ)と、外部音源装置Xにおける制御対象のパラメータ種類と、操作に応じて発生される操作量(パラメータ値)を対応付けるためのデータである。すなわち、「制御操作子種類」には電子音楽装置DMにおける制御操作子が、「パラメータ種類」には外部音源装置Xにおける制御対象パラメータがそれぞれ定義される。また、「パラメータ値」には、制御操作子の操作に応じて発生される操作量に対応したパラメータ値の変化範囲が定義される。勿論、「パラメータ値」に定義される変化範囲内での値の変化特性は、操作子の操作量に対してリニアに変化するものに限らない。
一方、「ノート変換テーブル」は、電子音楽装置DMのキーマップと、外部音源装置Xに設定済みのキーマップとが異なる場合に、電子音楽装置DMで選択済みのアルペジオパターンデータに基づき生成される演奏データのノートを、外部音源装置Xに設定済みのキーマップにあわせて変換するためのデータである。上述したように、電子音楽装置DMのキーマップと外部音源装置Xにおいて設定済みのキーマップとが異なる場合、電子音楽装置DMでアルペジオパターンデータに基づいて自動生成した演奏データを外部音源装置Xで再生してドラムパターンの楽音を発生させようとすると、各装置のキーマップのマッピングが異なることを原因として、アルペジオパターン制作者及びユーザが意図したとおりのドラムパターンの楽音を外部音源装置Xから発生させることができないことが生ずる。そこで、電子音楽装置DMのキーマップと外部音源装置Xのキーマップとが異なる場合には、電子音楽装置DMにおいて自動生成された演奏データを、外部音源装置Xのキーマップにあわせて変換する必要がある。「ノート変換テーブル」はそのために用意されたデータであって、電子音音楽装置DMのキーマップと外部音源装置Xに用意されたマッピングが異なる複数のキーマップとの組み合わせに応じて1乃至複数記憶される。
例えば、電子音楽装置DMのキーマップが図3右端に示した「タイプC」であり、外部音源装置Xが2種類のソフトウェア音源A,Bのいずれかを起動できて、各ソフトウェア音源A,Bが使用するキーマップが図3右端に示した「タイプA」又は図3中央に示した「タイプB」のいずれかであるものとした場合、「ノート変換テーブル」は図5(c)に示す2種類のものが用意される。外部音源装置Xのキーマップが「タイプA」である場合、これらのキーマップにおける音高とドラム音色の対応付け関係を見ると、「タイプC」の「C4」と「C6」及び「E4」と「B5」における音高とドラム音色の対応付け関係をそれぞれ入れ替えると「タイプA」と同じになることから、「ノート変換テーブル」の変換内容として図示のように「C4⇔C6,E4⇔B5(互いに変換)」と定義される。一方、外部音源装置Xのキーマップが「タイプB」である場合には、「タイプC」の全てにおける音高とドラム音色の対応付け関係を変更しないと「タイプB」と同じにならないことから、「ノート変換テーブル」の変換内容として図示のように「C4→C5,E4→B4,G5→G4,A5→A4,B5→E3,C6→C3(一方的に変換)」と定義される。
なお、「制御変換テーブル」と「ノート変換テーブル」の内容は上記したものに限らない。また、これらのテーブルもキーマップと同様に、メーカが本電子音楽装置DMを出荷する前に予め書き込んで保存しておくとよい。勿論、ユーザが適宜に生成/変更することができてよい。
なお、制御テンプレートは上記した以外に、外部音源装置Xを制御するための制御操作子に割り当てる設定操作子6Aに関する設定情報などを含んでいてもよく、そうした場合には該設定情報に従って設定操作子6Aのうちのいずれかを制御操作子として自動的に割り当てるようにしてもよい。
次に、図1に示した楽音発生システムにおいて、電子音楽装置DMで生成した演奏データに基づき外部音源装置Xから楽音を発生させる動作の概要について、図6を用いて説明する。図6は、電子音楽装置DM及び外部音源装置Xそれぞれの動作概要を示す機能ブロック図である。
電子音楽装置DMにおいて、演奏操作子5Aは操作に応じて発生する演奏データ(MIDIノートイベント)をアルペジエータ部A及びMIDI出力部Oに出力する。この際に、演奏操作子5Aの操作がアルペジオ鍵域内の鍵に対する操作である場合には演奏データをアルペジエータ部Aに、演奏操作子5Aの操作がアルペジオ鍵域以外の鍵に対する操作である場合には演奏データをMIDI出力部Oにそれぞれ分けて出力する。制御操作子6Aは、操作に応じて発生する制御パラメータを制御パラメータ変換部Pに出力する。
アルペジエータ部Aは、供給された演奏データと予め選択済みのアルペジオパターンデータとに基づきドラムパターンからなる演奏データを自動的に生成し、該生成した演奏データをノート番号変換部Nに順次に送る。ノート番号変換部Nは、予め選択済みのアルペジオパターンデータの変換モードが「Fixed Note」である場合には、テンプレート設定部Tにより設定されたノート変換テーブル(図5(c)参照)に従って、演奏データ内のノート番号を外部音源装置Xのキーマップにあわせて変換してから、演奏データをMIDI出力部Oに出力する。他方、アルペジオパターンデータの変換モードが「Normal」である場合には、演奏データ内のノート番号を外部音源装置Xのキーマップにあわせて変換することなく、演奏データをそのままMIDI出力部Oに出力する。すなわち、ノート番号変換部Nは変換モードに従い、アルペジオパターンデータに固定ノートとして定義されているアルペジオ構成音のみについてそのノートの変換を行う。ここで、図7に、ノート番号変換部Nによるノート番号変換の一例を示す。図7(a)はユーザによる演奏操作のノート番号がそのまま採用される場合つまり変換モードが「Normal」である場合の例を示し、図7(b)はアルペジオパターンデータ内のノート番号が採用される場合つまり変換モードが「Fixed Note」である場合の例を示す。
図7(a)に示すように、変換モードが「Normal」である場合には、外部音源装置Xのキーマップに関わらず、アルペジエータ部Aで生成された演奏データであってもノート番号を変換しない。この場合、アルペジオ鍵域以外の鍵に対する操作に応じて発生される楽音と同様に、ユーザによる手弾きがそのまま反映されることから、ユーザは外部音源装置Xで使用するキーマップを意識した上で、所望のドラム音に対応するノートを発生するアルペジオ鍵域の鍵を操作することで、ユーザは所望のドラムパターンの楽音を意図したとおりに外部音源装置Xから発生させることができる。例えば、図示のように「バスドラム」と「スネアドラム」を発生させたい場合、外部音源装置Xのキーマップが「タイプA」(図3参照)であることを前提とすると、ユーザは「C4」「E4」を操作すればよい。他方、外部音源装置Xのキーマップが「タイプC」(図3参照)であることを前提とすると、ユーザは「C6」「B5」を操作すればよい。
他方、図7(b)に示すように、変換モードが「Fixed Note」である場合には、アルペジエータ部Aで生成された演奏データのノート番号を変換する。「Fixed Note」の場合、アルペジエータ部Aはユーザによる手弾きによるノート番号を反映することなく、予め記憶されたアルペジオパターン内のノート番号を発生させので、アルペジエータ部Aから発生されたドラム音(例えば、「バスドラム」や「スネアドラム」)がどのノート番号に対応するものかをユーザが知るのは困難であり、かつ手弾きが反映される時のように、ユーザの意識によりどのドラム音を発生させるかを制御することもできない。このため、手弾き時のようにユーザが外部音源装置Xのキーマップを知っていて、該キーマップを想定しながらアルペジオ鍵域の鍵を操作するだけでは、正しいドラムパターンの演奏ができない。そこで、「Fixed Note」の場合には、電子音楽装置DMのキーマップと外部音源装置Xのキーマップとの対応関係に基づき、アルペジエータ部Aで生成された演奏データのノート番号を変換することにより、正しいドラムパターンの演奏を可能にしている。例えば、図示のように「バスドラム」と「スネアドラム」のノート番号からなるアルペジオパターンを正しく「バスドラム」と「スネアドラム」で発音させるために、ユーザは電子音楽装置DMのキーマップや外部音源装置Xのキーマップキーマップがどのタイプであるかを意識せずとも、アルペジオ鍵域のいずれかの鍵を操作すればよい。
図6の説明に戻って、制御パラメータ変換部Pは、予めテンプレート設定部Tにより設定された制御変換テーブル(図5(b)参照)に従って、供給された制御パラメータを外部音源装置X(詳しくはソフトウェア音源)を制御するのに適したパラメータ種類のパラメータ値に変換して、MIDI出力部Oに出力する。MIDI出力部Oは、演奏データや制御パラメータを外部音源装置Xに供給する。
一方、外部音源装置Xにおいて、MIDI入力部Iは、電子音楽装置DMから供給された演奏データや制御パラメータを、ソフトウェア音源C、シーケンサS、レコーダR等に入力する。シーケンサSはMIDI入力された演奏データ(MIDIノートイベント)を記録し、該記録した演奏データを再生に応じて音源Cへと供給することができる。また、シーケンサSは複数のトラックを有してなり、トラック毎に音色が設定されるようになっている。したがって、各トラックには、電子音楽装置DMにおいて演奏操作子5Aの操作に応じて発生された演奏データや、アルペジエータ部Aにより自動生成された演奏データを記録することができ、そのうちの或るトラックに対してはドラムパートを再生するためのドラムキット音色を設定することができる。これにより、ドラムパターンの演奏を簡単に記録することができる。なお、シーケンサSにおいて「MIDIスルー」設定がなされている場合には、入力された演奏データを記録するだけでなくそのまま音源Cへも供給する。
レコーダRは、オーディオ入力部OIを介して外部のオーディオ機器から入力されたオーディオ信号を記録する。また、音源Cによる演奏データの再生に伴い、音源Cから出力されるオーディオ信号を記録してもよい。該レコーダRに記録されたオーディオ信号を再生する場合、シーケンサSと同期再生される。ミキサーMXは、音源CとレコーダRから出力される各出力信号をミキシングしてサウンドシステムSPへと供給する。なお、上記シーケンサS、音源C、レコーダR及びミキサーMXは電子音楽装置DMから供給される制御パラメータによりその動作が制御される、つまり電子音楽装置DMから外部音源装置Xをリモート制御することができるようになっている。既に述べた通り、ユーザは電子音楽装置DMにおける制御操作子を操作して、外部音源装置Xをリモート制御する。
次に、電子音楽装置DMから外部音源装置Xをリモート制御し、外部音源装置Xに楽音を発生させる「外部音源制御処理」について、具体例を用いて説明する。図8は、「外部音源制御処理」の一実施例を示すフローチャートである。当該処理は、電子音楽装置DMの電源がオンされることに伴って、電子音楽装置DMのCPU1において実行される処理である。
ステップS1は、初期化を実行する。初期化としては、例えば制御パラメータのクリア、通信インタフェース8を介した外部音源装置Xとの接続の確立、制御パラメータ変換部Pとノート番号変換部N(図6参照)にデフォルトの制御テンプレート又は前回選択した制御テンプレートを設定するなどの初期設定がある。ステップS2は、「演奏操作子の処理」を実行する(後述する図9参照)。ステップS3は、「制御操作子の処理」を実行する(後述する図10参照)。ステップS4は、「テンプレート変更処理」を実行する(後述する図11参照)。ステップS5は、「アルペジオ演奏処理」を実行する(後述する図12参照)。ステップS6は、その他の処理を実行する。その他の処理としては電子音楽装置DMを制御する処理、つまり制御操作子として割り当てられた以外の設定操作子6Aの操作に基づく音色変更などの処理がある。
図9は、「演奏操作子の処理」(図8のステップS2参照)の一実施例を示すフローチャートである。ステップS11は、演奏操作子5Aの操作状態をチェックする。ステップS12は、演奏操作子5Aのオン操作又はオフ操作が行われたか否かを判定する。演奏操作子5Aの操作が行われていないと判定した場合には(ステップS12のNO)、ここでは特に何もせずに当該処理を終了する。一方、演奏操作子5Aの操作が行われたと判定した場合には(ステップS12のYES)、当該操作された演奏操作子5Aが所定のアルペジオ鍵域内の鍵であるか否かを判定する(ステップS13)。
操作された演奏操作子5Aがアルペジオ鍵域内の鍵でない場合には(ステップS13のNO)、操作された演奏操作子5Aに予め対応付けられている所定のノート番号を含むノートイベントデータ(ノートオン/ノートオフ等)を、ノート番号を変換することなく外部音源装置Xに対してそのままMIDI出力する(ステップS15)。すなわち、アルペジオ鍵域以外の鍵が操作された場合には、ノート番号を変換することなく操作に応じて発生した演奏データをそのまま外部音源装置Xに送信する。これにより、外部音源装置Xから、電子音楽装置DM側で操作された演奏操作子に対応付けられているノート番号に対応した音高で、送信MIDIチャンネルに設定されている所定の音色(例えば、ギター音色やピアノ音色等、ドラム音色であってもよい)の楽音、つまりユーザが意図したとおりの楽音が発生される。なお、アルペジオ鍵域以外の鍵が操作されたことに応じて発生されるノートイベントデータを外部音源装置Xに対して送信する送信MIDIチャンネルは、外部音源装置X側でアルペジエータ部Aからのノートイベントデータを受けるための、ドラムキット音色が設定されているチャンネル以外であればどのチャンネルを利用してもよい。
他方、操作された演奏操作子5Aがアルペジオ鍵域内の鍵である場合には(ステップS13のYES)、操作された演奏操作子5Aに予め対応付けられている所定のノート番号を登録/削除することにより、キー番号リストを更新する(ステップS14)。すなわち、アルペジオ鍵域内の鍵が操作された場合には、選択済みのアルペジオパターンデータに基づいて、ドラムパターンからなる演奏データを発生する必要があり、そのためにキー番号リストの更新を行う。こうした処理については公知であることから、ここでの詳細な説明は省略する。
図10は、「制御操作子の処理」(図8のステップS3参照)の一実施例を示すフローチャートである。ステップS21は、制御操作子6Aの状態をチェックする。ステップS22は、制御操作子6Aへの操作が行われたか否かを判定する。制御操作子6Aの操作が行われていないと判定した場合には(ステップS22のNO)、外部音源装置Xを制御するための制御パラメータを生成することなく、当該処理を終了する。
一方、制御操作子6Aの操作が行われたと判定した場合には(ステップS22のYES)、設定されている制御テンプレートのうちの制御変換テーブルに従い、当該操作された制御操作子6Aの操作(操作量)に応じて、外部音源装置X制御用のパラメータを生成する(ステップS33)。そして、該生成された制御パラメータを外部音源装置Xに対してMIDI出力する(ステップS24)。すなわち、電子音楽装置DMにおいて外部音源装置Xを制御する操作子として割り当てられた制御操作子6Aが操作されると、外部音源装置Xにおいて設定された音源種類に応じて適切な制御パラメータが生成されて出力される。
図11は、「テンプレート変更処理」(図8のステップS4参照)の一実施例を示すフローチャートである。ステップS31は、テンプレート変更指示が行われたか否かを判定する。テンプレート変更指示としては、例えば外部音源装置Xの音源種類(キーマップ)の変更にあわせて、ユーザが明示的に変更指示するようにしてもよいし、自動的に変更指示されてもよい。テンプレート変更指示が行われていないと判定した場合には(ステップS31のNO)、当該処理を終了する。一方、テンプレート変更指示が行われたと判定した場合には(ステップS31のYES)、記憶済みの多数の制御テンプレートをテンプレートリストとしてディスプレイ7Aに一覧表示して、ユーザに提示する(ステップS32)。ステップS33は、ディスプレイ7Aに表示されたテンプレートリストの中から、何れかの制御テンプレートの選択を受け付ける。ステップS34は、選択された制御テンプレートを読み出し、該読み出した制御テンプレートを制御パラメータ変換部Pとノート番号変換部N(図6参照)に設定する。具体的には、制御テンプレートのうち、制御変換テーブルを制御パラメータ変換部Pへ、ノート変換テーブルをノート番号変換部Nへとそれぞれ設定する。
なお、アルペジオパターンデータを選択する際に、ユーザは自身による手弾きを反映するか否かを予め指定することで、手弾きを反映すると指定した場合には変換モード「Normal」のアルペジオパターンデータのみを、手弾きを反映しないと指定した場合には変換モード「Fixed Note」のアルペジオパターンデータのみをそれぞれ抽出し、該抽出したデータのみを一覧提示させることができるようにしてもよい。
図12は、「アルペジオ演奏処理」(図8のステップS5参照)の一実施例を示すフローチャートである。ステップS41は、選択済みのアルペジオパターンデータの発音タイミングが到来したか否かを、所定の時間間隔毎に判定する。アルペジオパターンデータの発音タイミングが到来していないと判定した場合には(ステップS41のNO)、当該処理を終了する。アルペジオパターンデータの発音タイミングが到来したと判定した場合には(ステップS41のYES)、本アルペジオパターンデータに含まれる変換モードが「Normal」であるか否かを判定する(ステップS42)。変換モードが「Normal」である場合には(ステップS42のYES)、更新したキー番号リスト(図6のステップS14参照)とアルペジオパターンデータのキー番号とに基づき、ノート番号を決定する(ステップS43)。 一方、変換モードが「Normal」でない、つまり変換モードが「Fixed Note」である場合には(ステップS42のNO)、設定されている制御テンプレート(詳しくはノート変換テーブル)に従い、アルペジオパターンデータのノート番号をノート番号変換し、外部音源装置Xのキーマップに適したノート番号を決定する(ステップS44)。その様子を図12(b)に示す。ステップS45は、決定されたノート番号のノートイベントを外部音源装置DMに対してMIDI出力する。すなわち、外部音源装置Xにおいても電子音楽装置DM側と同様のドラムパターンで楽音が発生されるよう、外部音源装置Xに設定済みのキーマップにあわせたノート番号に変換されたドラムパターンからなる演奏データが出力される。
なお、変換モードが「Fixed Note」の場合、演奏操作子5Aで操作された鍵の数に応じて、アルペジオパターン中の発音すべきノート番号の数を増減させてもよいし、鍵の数とは無関係にすべてのノート番号を発音させてもよい。また、押鍵中のみアルペジオパターンに基づく発音を行ってもよいし(所謂「ゲート」モード)、離鍵されても発音を続けてもよい(所謂「ホールド」モード)。
このようにして、電子音楽装置DMに接続された外部音源装置Xから楽音を発生させる場合に、アルペジエータ部Aで生成された演奏データは、ノート番号変換部Nにより、変換モードが「Fixed Note」である場合にのみノート番号を変換するようにした。これにより、電子音楽装置DMとは異なるキーマップが設定されている外部音源装置Xからであっても、アルペジオパターンの制作者及びユーザが電子音楽装置DM 側で意図したとおりのドラムパターンの楽音を発生させることが容易にできるようになる。特に、ユーザは手弾きを反映したい場合にのみ、意識的に外部音源装置X側のキーマップに沿って演奏操作を行えばよく、演奏操作時にキーマップの違いによる混乱を生じることがない。
なお、電子音楽装置DMと外部音源装置Xの各キーマップが異なる場合に実行するノート番号の変換は、ノート変換テーブルによる方法に限らない(図12のステップS43参照)。例えば、電子音楽装置DMと外部音源装置Xの各キーマップの組み合わせ毎にパターンデータを変換するためのアルゴリズムを予め用意しておき、該当のアルゴリズムに応じてパターンデータを変換するようにしてもよい。
なお、電子音楽装置DMが内蔵音源を有している場合には、ユーザが外部音源装置Xのみを利用する、電子音楽装置DMの内蔵音源のみを利用する、あるいは電子音楽装置DMと外部音源装置Xの両方を利用する、のいずれかを切り替えることができるようにしておき、この切り替えに応じて少なくとも電子音楽装置DM及び外部音源装置Xのいずれかからドラムパターンの楽音及び鍵操作に応じた通常の演奏楽音を発生できるようになっていてよい。
なお、電子音楽装置DMは、予め記憶された所定のアルペジオパターンデータに従って、ユーザにより押鍵操作された1乃至複数の鍵に対応する音高(ノート)を基にしてアルペジオの演奏データを自動生成し、これに基づき内蔵音源を動作させることにより、操作された1乃至複数の鍵に対応する押鍵音を所定のリズムで刻みながら1音ずつ時間的に分散したフレーズ楽音、つまりアルペジオ音(分散和音)を発生することができるものであってもよい。そうした場合、電子音楽装置DMは、上記したドラムパターンの楽音を発生する演奏データを自動生成することと、アルペジオの楽音を発生する演奏データを自動生成することとを、選択できるようになっていてよい。
また、電子音楽装置DM内にキーマップを記憶するものに限らない。つまり、電子音楽装置DMが音源を内蔵していない場合には、ノート番号からドラム音色を求める必要もないので、キーマップ自体記憶する必要がない。その場合であっても、ドラムパターン演奏用のアルペジオパターンデータ内に含まれるノート番号データは、あるキーマップを想定して制作されたものとされる。すなわち、本発明に適用できる電子音楽装置は、あるキーマップを想定して制作されたノート番号データを含むドラムパターン演奏用のアルペジオパターンデータを含むものである。
1…CPU、2…ROM、3…RAM、4…記憶装置、5,6…検出回路、5A…演奏操作子、6A…設定操作子(制御操作子)、7…表示回路、7A…ディスプレイ、8…通信インタフェース、9…オーディオ入力回路、10…コーデック回路、1D…通信バス、DM…電子音楽装置、X…外部音源装置、SP…サウンドシステム、A…アルペジエータ部、T…テンプレート設定部、N…ノート番号変換部、O…MIDI出力部、P…制御パラメータ変換部、I…MIDI入力部、OI…オーディオ入力部、C…音源、S…シーケンサ、R…レコーダ、MX…ミキサー