JP2009086281A - レンズ用吸熱シートおよびプラスチックレンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コーティング溶液の硬化時におけるレンズの温度上昇を抑えることにより、熱変形を防止するようにしたレンズ用吸熱シートおよびプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックレンズ2の被コーティング面2aに塗布されたコーティング溶液3を光硬化または熱硬化させるときに用いられるレンズ用吸熱シート7を、冷却媒体11と、この冷却媒体11を収容する可撓性シート10とで構成し、プラスチックレンズ2の凹面2bに密着させる。冷却媒体11としては、水と吸水性ポリマーとからなる含水ゲルが用いられる。吸水性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコールが用いられる。
【選択図】 図1
【解決手段】プラスチックレンズ2の被コーティング面2aに塗布されたコーティング溶液3を光硬化または熱硬化させるときに用いられるレンズ用吸熱シート7を、冷却媒体11と、この冷却媒体11を収容する可撓性シート10とで構成し、プラスチックレンズ2の凹面2bに密着させる。冷却媒体11としては、水と吸水性ポリマーとからなる含水ゲルが用いられる。吸水性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコールが用いられる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、プラスチックレンズの製造に用いて好適なレンズ用吸熱シートおよびこれを用いたプラスチックレンズの製造方法に関するものである。
光学レンズ、特に眼鏡レンズの製造においては、遮光性、防眩性、調光性、耐擦傷性等を向上させるために、眼鏡レンズの表面にその目的に応じた材質のコーティング被膜を形成することが行われている(例えば、非特許文献1参照)。また、このようなコーティング被膜を自動的に形成する装置も従来から種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
前記特許文献1、2に記載された眼鏡レンズ用のレンズコーティング装置は、プラスチックレンズに塗布された光硬化性コーティング被膜を紫外線(UV)の照射によって硬化させるようにしている。
光硬化性コーティング溶液の硬化工程において、プラスチックレンズにUVを照射すると、チャンバー内の温度上昇や紫外線を吸収することによりレンズの表面温度がレンズ基材の熱変形温度よりも高くなるため(110〜120℃)、レンズが熱変形する。そこで、前記特許文献3に記載されているプラスチックレンズの製造方法は、光照射を断続的に行なうか、または光照射の初期に強度の強い光を照射し、徐々にまたは段階的に光の強度を弱くすることにより、光照射時におけるレンズの温度上昇を低く抑え、熱変形を防止するようにしている。プラスチックレンズの表面温度が100℃以下、より好ましくは80℃以下であれば、プラスチックレンズを熱で変形させることなくコーティング層を付与することができることが確認されている。
「眼鏡」メディカル葵出版、1986年5月22日発行 p.81〜83
特開2002−177852号公報
特表2000−508981号公報
特開2004−12857号公報
上記したように、特許文献3に記載の製造装置は、光照射を断続的に行なうか、または光照射の初期に強度の強い光を照射し、徐々にまたは段階的に光の強度を弱くすることにより、レンズの温度上昇を抑え、熱変形を防止するようにしている。
しかしながら、このような光照射を断続的または光の強度を徐々にまたは段階的に変えてコーティング溶液を硬化させる方法は、硬化に要する時間が長時間になるため、生産性を低下させるという問題があった。
また、強強度の光の調整と弱強度の光の調整が必要であったり、冷水循環チューブやコールドリフレクターによる冷却、赤外線吸収または反射物質を光源とプラスチックレンズとの間に設けるなどしてレンズの温度上昇を抑える必要があるため、装置の構造が複雑化して高価になるという問題もあった。
しかしながら、このような光照射を断続的または光の強度を徐々にまたは段階的に変えてコーティング溶液を硬化させる方法は、硬化に要する時間が長時間になるため、生産性を低下させるという問題があった。
また、強強度の光の調整と弱強度の光の調整が必要であったり、冷水循環チューブやコールドリフレクターによる冷却、赤外線吸収または反射物質を光源とプラスチックレンズとの間に設けるなどしてレンズの温度上昇を抑える必要があるため、装置の構造が複雑化して高価になるという問題もあった。
本発明は、上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、コーティング溶液の硬化時におけるレンズの温度上昇を抑えることにより、熱変形を防止するようにしたレンズ用吸熱シートおよびプラスチックレンズの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明に係るレンズ用吸熱シートは、プラスチックレンズの被コーティング面に塗布されたコーティング溶液を硬化させる最、前記プラスチックレンズが熱を持つ硬化を行なうときに用いられるレンズ用吸熱シートであって、冷却媒体と、この冷却媒体を収容する可撓性シートとからなり、前記冷却媒体を水と吸水性ポリマーとからなる含水ゲルで構成したものである。
また、本発明に係るレンズ用吸熱シートは、上記発明において、前記吸水性ポリマーが、デンプンやセルロースなどの天然高分子に、アクリル酸やスチレンスルホン酸などのグラフト共重合体や合成高分子のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミド、ポリアミン、ポリアクリル酸塩を架橋処理したポリマー、ポリエチレングリコール系ポリマーのうちのいずれか1つである。
さらに、本発明に係るプラスチックレンズの製造方法は、上記発明に係るレンズ用吸熱シートにコーティング溶液が塗布されたプラスチックレンズを密着させる工程と、前記コーティング溶液を光硬化または熱硬化させる工程とを備えているものである。
本発明において、コーティング溶液を光硬化させると、UVランプの熱と樹脂の硬化エネルギーにより、また熱硬化させると、チャンバー内の温度上昇によりレンズ自体の温度が上昇する。冷却媒体は、水と吸水性ポリマーとからなる含水ゲルからなり、レンズの温度が上昇すると、その熱を水が吸収してレンズの温度上昇を抑えるため、レンズの熱変形を防止することができる。したがって、コーティング溶液の硬化時に、光照射を断続的に行なったり、徐々にまたは段階的に光の強度を弱くしたりする必要がなく、硬化処理工程を短時間に行なうことができる。更に対象レンズの凹面側に前記含水ゲルが密着していることからレンズ全体を満遍なく冷却することが可能であるため、レンズの温度ムラが発生することなく、より均一で良好な成膜を行うことができる。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るレンズ用吸熱シートが用いられるプラスチックレンズのコーティング装置の概略図、図2はレンズ用吸熱シートの一部を破断して示す斜視図である。これらの図において、コーティング装置1は、プラスチックレンズ2の被コーティング面である凸面2aに塗布された紫外線硬化型の調光用コーティング溶液3をUV4の照射によって硬化させる装置で、前記プラスチックレンズ2が装着される密閉型のチャンバー5と、前記プラスチックレンズ2がレンズ用吸熱シート7を介して設置される固定台座6と、前記コーティング溶液3にUV4を照射する光源としてのUVランプ8等を備えている。チャンバー5の内部は、プラスチックレンズ2が装填されると、コーティング溶液3の空気中の酸素との反応による硬化阻害を防止するために排気され、窒素ガス(N2 )等の不活性ガスに置換される。
図1は本発明に係るレンズ用吸熱シートが用いられるプラスチックレンズのコーティング装置の概略図、図2はレンズ用吸熱シートの一部を破断して示す斜視図である。これらの図において、コーティング装置1は、プラスチックレンズ2の被コーティング面である凸面2aに塗布された紫外線硬化型の調光用コーティング溶液3をUV4の照射によって硬化させる装置で、前記プラスチックレンズ2が装着される密閉型のチャンバー5と、前記プラスチックレンズ2がレンズ用吸熱シート7を介して設置される固定台座6と、前記コーティング溶液3にUV4を照射する光源としてのUVランプ8等を備えている。チャンバー5の内部は、プラスチックレンズ2が装填されると、コーティング溶液3の空気中の酸素との反応による硬化阻害を防止するために排気され、窒素ガス(N2 )等の不活性ガスに置換される。
プラスチックレンズ2は、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等の公知の樹脂によって形成された、外径が例えば、65mm、70mm、75mmまたは80mmの円形レンズからなり、凸面2aが所定の曲率半径の光学面に研磨仕上げされ、凹面2bが未加工または同じく所定の曲率半径の光学面に研磨されている。
プラスチックレンズ2へのコーティング溶液3の塗布は、プラスチックレンズ2を回転台上に被コーティング面である凸面2aを上にして載置しておき、適宜な滴下手段によってコーティング溶液3を凸面2aの中央に滴下する。回転台は、プラスチックレンズ2を真空吸着し、その凸面2aにコーティング溶液が滴下されると高速回転し、遠心力によってコーティング溶液3を吹き飛ばしその膜厚を均一にする。
コーティング溶液3が光硬化性樹脂の場合は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の化合物がなんら制限なく使用できる。熱硬化性樹脂の場合も特に制限はないが、例えばエポキシ基を有する有機ケイ素化合物のように公知のものが使用できる。また、光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を混合したものも使用できる。
プラスチックレンズ2は、コーティング溶液3が均一に塗布すると、前記固定台座6上にレンズ用吸熱シート7を介して設置され、粘着テープ9によって固定される。固定台座6としては、金属、ガラス、プラスチック材料等によって形成されている。また、プラスチックレンズ2自体でレンズ用吸熱シート7を固定してもよい。なお、固定台座6、粘着テープ9は必ずしも必要ではない。
前記レンズ用吸熱シート7は、コーティング溶液3の光硬化時にUVランプ8の熱によってチャンバー5内の温度が上昇すると、プラスチックレンズ2の温度も上昇するため、その熱を吸収しレンズの温度上昇を抑えるために用いられるもので、図2に示すように可撓性シート10と、この可撓性シート10に収納された冷却媒体11とで形成されている。また、可撓性シート10は、耐熱性を有する薄い2枚のプラスチックシート10a、10bによって袋状に形成されている。2枚の薄いプラスチックシート10a、10bは、プラスチックレンズ2と略同一の大きさの円形(または方形)に形成され、外周が全周にわたって熱溶着されている。プラスチックシート10a、10bの材質としては、耐熱性に優れた合成樹脂、例えばポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂が用いられる。
前記冷却媒体11としては、水と吸水性ポリマーとからなる含水ゲルが用いられ、空気を含まないように可撓性シート10に封入される。吸水性ポリマーとしては、主として水を大量に吸収してゲル化する既知の高分子材料であればよく、例えばデンプンやセルロースなどの天然高分子に、アクリル酸やスチレンスルホン酸などのグラフト共重合体や合成高分子のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミド、ポリアミン、ポリアクリル酸塩を架橋処理したポリマー、ポリエチレングリコール系ポリマーなどのうちのいずれか1つが用いられる。中でもポリビニルアルコールは、吸水性に優れ、冷却媒体として好適である。
また、前記冷却媒体11の水と吸水性ポリマーとの割合は、樹脂によって変わるが、例えばポリビニルアルコールを使用した場合、前記冷却媒体の含水率は80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは95%以上である。なお、保冷剤の含水率は、実験の結果97.78%であった。
コーティング溶液3の硬化時にこのようなレンズ用吸熱シート7を介してプラスチックレンズが固定台座6上に設置される。このため、可撓性シート10の上面は、プラスチックレンズ2の重量によって凹面2bの形状に倣って変形し、これにより凹面2bの略全面が可撓性シート10の上面に密着する。なお、固定台座6へのプラスチックレンズ2の設置は、予めレンズ用吸熱シート7をプラスチックレンズ2の凹面2bに粘着テープ等によって貼り付けた後、設置してもよい。
固定台座6にプラスチックレンズ2がレンズ用吸熱シート7を介して設置されると、チャンバー5の内部を排気して不活性ガスに置換する。不活性ガスの置換が終了すると、UVランプ8を点灯してUV4をコーティング溶液3に所定時間照射することにより硬化させる。
UV4を照射するUVランプ8としては公知の光源を何ら制限無く用いることができ、具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、無電極ランプ等が挙げられる。また、光照射時間は紫外線重合開始剤の種類、吸収波長、感度、さらには所望のフォトクロミック被膜層の膜厚等によって適宜決めることができる。
コーティング溶液3の硬化によってレンズ表面にコーティング被膜が形成されると、プラスチックレンズ2をチャンバー5の外部に取り出し、硬化処理を終了する。
本発明においては、レンズ用吸熱シート7を用いているので、コーティング溶液3の硬化処理時におけるプラスチックレンズ2の温度上昇を水と吸水性ポリマーとからなるゲル状の冷却媒体11によって効果的に抑えることができる。すなわち、UVランプ8の点灯によってチャンバー5内の温度が上昇すると、プラスチックレンズ2の温度も上昇するため、その熱を吸水性ポリマーに保持されている水が吸収して、レンズ2の温度上昇を抑える。
図3はコーティング溶液の硬化処理時のレンズの温度上昇の変化を示す図で、縦軸はチャンバー内の温度、横軸はUVキュア時間である。
同図において、曲線Aはレンズ用吸熱シート7を用いたときのレンズの温度変化を示す曲線、曲線Bはレンズ用吸熱シート7を用いないときのレンズの温度変化を示す曲線である。この図から明らかなように、レンズ用吸熱シート7を用いて硬化させたときは、プラスチックレンズ2の温度上昇を70℃程度にまで抑えることができるため、中央の肉厚が2mm以下の薄いレンズであってもほとんど熱変形せず良好なレンズを製造することができた。一方、レンズ用吸熱シート7を用いないで硬化させたときはプラスチックレンズ2の温度が110℃程度にまで上昇するため、中央の肉厚が2mm以下の薄いレンズの場合には熱変形し不良品の頻度が高くなった。
同図において、曲線Aはレンズ用吸熱シート7を用いたときのレンズの温度変化を示す曲線、曲線Bはレンズ用吸熱シート7を用いないときのレンズの温度変化を示す曲線である。この図から明らかなように、レンズ用吸熱シート7を用いて硬化させたときは、プラスチックレンズ2の温度上昇を70℃程度にまで抑えることができるため、中央の肉厚が2mm以下の薄いレンズであってもほとんど熱変形せず良好なレンズを製造することができた。一方、レンズ用吸熱シート7を用いないで硬化させたときはプラスチックレンズ2の温度が110℃程度にまで上昇するため、中央の肉厚が2mm以下の薄いレンズの場合には熱変形し不良品の頻度が高くなった。
また、本発明によれば、従来のように紫外線4を断続的に照射したりあるいは光の強度を徐々にまたは段階的に弱くしたりする必要がないので、高い生産性で製造することができる。
さらに、冷水を循環させる機構や、重合装置中の雰囲気を冷却する装置を別途用意し設置するといった煩雑さも無く、既存の重合装置で簡単に冷却効果を出すことができる。
さらに、レンズ用吸熱シート7は、構造が簡単で容易に製作することができるばかりか、常温で何回も再使用することができ、プラスチックレンズの被コーティング面に塗布されたコーティング溶液を光硬化や熱硬化させるときに用いて好適である。
1…コーティング装置、2…プラスチックレンズ、2a…被コーティング面、3…コーティング溶液、4…紫外線(UV)、5…チャンバー、6…固定台座、7…レンズ用吸熱シート、8…UVランプ、9…粘着テープ、10…可撓性シート、11…冷却媒体。
Claims (3)
- プラスチックレンズの被コーティング面に塗布されたコーティング溶液を硬化させる最、前記プラスチックレンズが熱を持つ硬化を行なうときに用いられるレンズ用吸熱シートであって、冷却媒体と、この冷却媒体を収容する可撓性シートとからなり、前記冷却媒体を水と吸水性ポリマーとからなる含水ゲルで構成したことを特徴とするレンズ用吸熱シート。
- 請求項1記載のレンズ用吸熱シートにおいて、
前記吸水性ポリマーが、デンプンやセルロースなどの天然高分子に、アクリル酸やスチレンスルホン酸などのグラフト共重合体や合成高分子のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミド、ポリアミン、ポリアクリル酸塩を架橋処理したポリマー、ポリエチレングリコール系ポリマーのうちのいずれか1つであることを特徴とするレンズ用吸熱シート。 - 請求項1記載のレンズ用吸熱シートにコーティング溶液が塗布されたプラスチックレンズを密着させる工程と、
前記コーティング溶液を光硬化または熱硬化によって硬化させる工程とを備えたことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
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JP2007255959A JP2009086281A (ja) | 2007-09-28 | 2007-09-28 | レンズ用吸熱シートおよびプラスチックレンズの製造方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012024744A (ja) * | 2010-07-27 | 2012-02-09 | Hoya Corp | レンズ保持治具及びレンズの保持方法 |
JP2013208985A (ja) * | 2012-03-30 | 2013-10-10 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 宇宙用冷却器 |
WO2018168347A1 (ja) * | 2017-03-15 | 2018-09-20 | 日本電産株式会社 | レンズの製造方法 |
-
2007
- 2007-09-28 JP JP2007255959A patent/JP2009086281A/ja active Pending
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