JP2009085164A - 噴射異常検出装置及び燃料噴射システム - Google Patents

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Abstract

【課題】噴射異常を即時に精度良く検出できるようにした噴射異常検出装置及び燃料噴射システムを提供する。
【解決手段】燃圧センサを、コモンレールからインジェクタの噴射孔に至るまでの燃料通路のうちコモンレールに対して噴射孔に近い側に配置することで、噴射孔での圧力変動(推移波形)を詳細に精度良く検出することを図る(S21)。一方、噴射指令信号の指令内容から、正常な噴射がなされていた場合に想定される燃圧センサの検出圧力の変動態様(推移波形)を算出する(S22)。そして、検出した推移波形と想定される推移波形とを比較する(S23)ことで、噴射孔詰まりやニードル弁の摺動不良等による噴射異常の発生を検出する(S24)。
【選択図】 図4

Description

本発明は、燃料噴射弁からの燃料噴射異常を検出する噴射異常検出装置及び燃料噴射システムに関する。
コモンレール(蓄圧容器)で蓄圧された燃料を、噴射指令信号に基づき燃料噴射弁から噴射する燃料噴射システムにおいて、燃料漏れ等の原因により噴射指令と異なる態様で燃料が噴射されてしまうことがあり、このような噴射異常状態を検出する装置が従来より知られている(特許文献1等参照)。
特許文献1記載の燃料噴射システムでは、蓄圧燃料の圧力を検出するレール圧センサをコモンレールに備えており、レール圧センサの検出圧力が目標値に近づくよう、コモンレールに燃料を圧送する燃料ポンプの作動をフィードバック制御している。なお、前記目標値は、エンジン回転速度及びエンジン負荷に基づき設定される。そして、特許文献1記載の噴射異常検出装置は、前記目標値が基準値以下となった場合に燃料漏れ異常により所望する量の燃料が噴射されていないとの噴射異常状態を検出している。
特開平5−52146号公報
しかしながら、特許文献1記載の噴射異常検出装置は、フィードバック制御に用いる目標値に異常が生じることで噴射異常を検出するものであるため、実際の噴射状態を間接的に検出していると言える。そのため、燃料漏れ等に起因して燃料噴射量が実際に少なくなり始めてから目標値に異常が生じるまでのタイムラグが大きいので、噴射異常を即時に検出することが困難であるとともに、その検出精度も悪い。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、噴射異常を即時に精度良く検出できるようにした噴射異常検出装置及び燃料噴射システムを提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
<請求項1について>
請求項1記載の発明では、蓄圧容器で蓄圧された燃料を燃料噴射弁から噴射する燃料噴射システムに適用される噴射異常検出装置であって、前記蓄圧容器から前記燃料噴射弁の噴射孔に至るまでの燃料通路のうち前記蓄圧容器に対して前記噴射孔に近い側に配置され、前記噴射孔からの燃料噴射に伴い変動する燃料の圧力を検出する燃圧センサと、燃料の噴射態様を指令する噴射指令信号を前記燃料噴射弁に出力する指令信号出力手段と、前記燃圧センサの検出圧力が前記噴射指令信号から想定される範囲の変動態様で変動しているか否かを判定し、前記想定される範囲の変動態様でないと判定した場合に噴射異常が発生していると判断する噴射異常判定手段と、を備えることを特徴とする。
ところで、燃料噴射弁の噴射孔における燃料の圧力は燃料の噴射に伴い変動する。そして、このような噴射孔での圧力変動と実際の噴射状態とは相関が強く、例えば、実噴射開始に伴い、噴射孔での圧力は下降を開始するよう変動する。本発明者らはこの点に着目しており、前記圧力変動を検出することで実際の噴射状態を詳細に検知することを検討した。しかしながら上記特許文献1記載の燃料噴射システムでは、燃圧センサ(レール圧センサ)は、蓄圧容器内の燃料圧力を検出することを目的としているため蓄圧容器に取り付けられている。そのため、噴射に伴い生じる圧力変動は蓄圧容器内で減衰してしまう。よって、こうした従来システムでは前記圧力変動を精度よく検出することは困難である。
これに対し本発明では、燃圧センサを、蓄圧容器から噴射孔に至るまでの燃料通路のうち蓄圧容器に対して噴射孔に近い側に配置しているので、噴射孔での圧力変動を蓄圧容器内で減衰する前に検出することができる。よって、噴射に伴い生じる圧力変動を精度よく検出することができるので、その検出結果を用いて実際の噴射状態を詳細に検知することができる。
そして、このように噴射状態を詳細に検知できるよう燃圧センサを配置したことに加え、本発明では、燃圧センサの検出圧力が噴射指令信号から想定される範囲の変動態様で変動しているか否かを判定し、前記想定される範囲の変動態様でないと判定した場合に噴射異常が発生していると判断する。そのため、実際の噴射状態が燃圧センサにより直接的に検出され、その検出結果に基づき噴射異常の発生有無が判断されるので、フィードバック制御に用いる目標値に間接的に現れる異常に基づき噴射異常を判断する先述の特許文献1記載の検出装置に比べ、噴射異常を即時かつ精度良く検出できる。
以降に説明する請求項2〜15記載の発明は、検出圧力の推移波形中に現れる変化と実際の噴射状態の変化との各種相関に着目してなされたものである。なお、以降の説明に用いる図5は、噴射異常が発生していない場合における噴射率(単位時間あたりに噴射される量)と燃圧センサの検出圧力の推移波形との相関を例示するタイムチャートである。また、図6〜図12では上記噴射率を模式的に例示しており、図中の実線は噴射異常が発生している時の噴射率を、図中の一点鎖線は正常噴射時の噴射率を示している。
<請求項2,3について>
図5及び図6にて例示されるように、正常噴射であれば、噴射開始指令時期Isから第1所定時間T11内に噴射孔から燃料の噴射が開始され、噴射率は変化点R3にて上昇を開始する。そして、このようにR3の時点で噴射率が上昇を開始したことに伴い、燃圧センサの検出圧力は変化点P3にて下降を開始する。したがって、このような変化点R3とP3の相関に着目すれば、検出圧力の推移波形中に変化点P3が現れたことに基づき、実際に噴射開始されたことが検知できる。
この点を鑑み、請求項2記載の発明では、前記検出圧力の推移波形中に現れる、実噴射開始に起因した圧力下降の開始(変化点P3)を検出する噴射開始検出手段を備え、前記噴射異常判定手段は、前記噴射指令信号による噴射開始指令時期(Is)から第1所定時間(T11)内に前記圧力下降の開始が検出されなかった場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする。よって、噴射異常を好適に検出できる。
また、上記請求項2記載の発明によれば、噴射開始指令に反して無噴射となっている可能性が高いとの情報を取得できる。そこで請求項3記載の発明では、前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、噴射開始指令に反して無噴射となっている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする。これによれば、噴射異常発生後の対応に前記情報を用いることができ、好適である。
<請求項4,5について>
図5及び図7にて例示されるように、正常噴射であれば、噴射終了指令時期Ieから第2所定時間T12内に噴射孔からの燃料噴射が終了し、変化点R7から下降を続ける噴射率は変化点R8にて下降を終了する。そして、このようにR8の時点で噴射率が下降を終了したことに伴い、燃圧センサの検出圧力は変化点P8にて上昇を終了する。したがって、このような変化点R8とP8の相関に着目すれば、検出圧力の推移波形中に変化点P8が現れたことに基づき、実際に噴射終了したことが検知できる。
この点を鑑み、請求項4記載の発明では、前記検出圧力の推移波形中に現れる、実噴射終了に起因した圧力上昇の終了を検出する噴射終了検出手段を備え、前記噴射異常判定手段は、前記噴射指令信号による噴射終了指令時期から第2所定時間内に前記圧力上昇の終了が検出されなかった場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする。よって、噴射異常を好適に検出できる。
また、上記請求項4記載の発明によれば、噴射終了指令に反して噴射が継続されている可能性が高いとの情報を取得できる。そこで請求項5記載の発明では、前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、噴射終了指令に反して噴射が継続されている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする。これによれば、噴射異常発生後の対応に前記情報を用いることができ、好適である。
<請求項6,7について>
図5及び図8にて例示されるように、正常噴射であれば、噴射終了指令時期Ieから第3所定時間T13内に、最大噴射率であった噴射率は変化点R7にて下降を開始し、当該下降開始に伴い、燃圧センサの検出圧力は変化点P7にて上昇を開始する。したがって、このような変化点R7とP7の相関に着目すれば、検出圧力の推移波形中に変化点P7が現れたことに基づき、実際に噴射率が下降を開始したことが検知できる。
この点を鑑み、請求項6記載の発明では、前記検出圧力の推移波形中に現れる、噴射終了作動を開始することによる実噴射率下降開始に起因した圧力上昇の開始を検出する噴射終了作動開始検出手段を備え、前記噴射異常判定手段は、前記噴射指令信号による噴射終了指令時期から第3所定時間内に前記圧力上昇の開始が検出されなかった場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする。よって、噴射異常を好適に検出できる。
また、上記請求項6記載の発明によれば、噴射終了指令に反して噴射率下降が開始されていない可能性が高いとの情報を取得できる。そこで請求項7記載の発明では、前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、噴射終了指令に反して噴射率下降が開始されない異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする。これによれば、噴射異常発生後の対応に前記情報を用いることができ、好適である。
<請求項8,9について>
図5及び図9にて例示されるように、噴射開始に伴い上昇した噴射率の上昇量(最大噴射率Rβ)が大きいほど、噴射開始に伴い生じる変化点P3からの検出圧力の下降量Pβは大きくなる。したがって、このような変化量RβとPβの相関に着目すれば、検出圧力の推移波形中に現れる下降量Pβに基づき実際の最大噴射率Rβを検知できる。
この点を鑑み、請求項8記載の発明では、前記検出圧力の推移波形中に現れる、実噴射開始後の最大噴射率到達に起因した圧力下降の終了を検出する最大噴射率到達検出手段を備え、前記噴射異常判定手段は、前記最大噴射率到達後の第4所定時間内に前記検出圧力が所定の閾値を超えなかった場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする。よって、噴射異常を好適に検出できる。
また、上記請求項8記載の発明によれば、指令した最大噴射率まで噴射率が十分に高くなっていない可能性が高いとの情報を取得できる。そこで請求項9記載の発明では、前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、指令した最大噴射率まで噴射率が十分に高くなっていない異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする。これによれば、噴射異常発生後の対応に前記情報を用いることができ、好適である。
<請求項10,11について>
図5及び図10にて例示されるように、噴射開始に伴い変化点R3から噴射率が上昇する際の上昇率Rαと、噴射開始に伴い生じる変化点P3から検出圧力が下降する際の下降率Pαとの相関に関し、上昇率Rαが大きく噴射率が急激に上昇するほど、下降率Pαは小さく検出圧力は急激に下降する。したがって、このような上昇率Rαと下降率Pαの相関に着目すれば、検出圧力の推移波形中に現れる下降率Pαに基づき、実際の噴射率の上昇率Rαを検知できる。
この点を鑑み、請求項10記載の発明では、前記検出圧力の推移波形中に現れる、実噴射開始後の噴射率上昇に起因した圧力下降の下降率を検出する噴射率上昇検出手段を備え、前記噴射異常判定手段は、前記下降率が所定の下降率より小さい場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする。よって、噴射異常を好適に検出できる。
また、上記請求項10記載の発明によれば、実際の噴射率の上昇率が指令した上昇率よりも低くなっている可能性が高いとの情報を取得できる。そこで請求項11記載の発明では、前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、実際の噴射率の上昇率が指令した上昇率よりも低くなっている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする。これによれば、噴射異常発生後の対応に前記情報を用いることができ、好適である。
<請求項12〜15について>
図5及び図11にて例示されるように、実噴射開始から終了までの噴射率の積分値(斜線を付した符号Sに示す部分の面積)は噴射量に相当する。そして、検出圧力の推移波形のうち実噴射開始から終了までの噴射率変化に対応する部分(変化点P3〜P8の部分)の圧力の積分値と噴射率の積分値Sとは相関があり、圧力積分値が大きいほど噴射率積分値Sは大きい。したがって、このような両積分値の相関に着目すれば、検出圧力の推移波形から算出される積分値に基づき、実際の噴射量Sを検知できる。
この点を鑑み、請求項12記載の発明では、前記検出圧力の推移波形のうち実噴射開始から終了までの噴射率変化に対応する部分の波形について、噴射量に相当する圧力の積分値を算出する噴射量算出手段を備え、前記噴射異常判定手段は、前記噴射量算出手段により算出された噴射量が所定の下限値より少ない場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする。また、請求項14記載の発明では、前記噴射異常判定手段は、前記噴射量算出手段により算出された噴射量が所定の上限値より多い場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする。よって、噴射異常を好適に検出できる。
また、上記請求項12記載の発明によれば、実際の噴射量が指令した噴射量に対して過少となっている可能性が高いとの情報を取得でき、上記請求項14記載の発明によれば、実際の噴射量が指令した噴射量に対して過多となっている可能性が高いとの情報を取得できる。そこで請求項13記載の発明では、前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、実際の噴射量が指令した噴射量に対して過少となっている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする。また、請求項15記載の発明では、実際の噴射量が指令した噴射量に対して過多となっている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする。これらによれば、噴射異常発生後の対応に前記情報を用いることができ、好適である。
<請求項16〜19について>
請求項16記載の発明では、前記燃圧センサは前記燃料噴射弁に取り付けられていることを特徴とする。そのため、蓄圧容器と燃料噴射弁とを接続する配管に燃圧センサを取り付ける場合に比べて、燃圧センサの取り付け位置が燃料噴射弁の噴射孔に近い位置となる。よって、噴射孔での圧力変動が前記配管にて減衰してしまった後の圧力変動を検出する場合に比べて、噴射孔での圧力変動をより的確に検出することができる。
上述の如く燃圧センサを燃料噴射弁に取り付けるにあたり、請求項17記載の発明では前記燃料噴射弁の燃料流入口に取り付けることを特徴とし、請求項18記載の発明では、前記燃料噴射弁の内部に取り付け、前記燃料噴射弁の燃料流入口から前記噴射孔に至るまでの内部燃料通路の燃料圧力を検出することを特徴とする。
上述の如く燃料流入口に取り付ける場合には、燃料噴射弁の内部に取り付ける場合に比べて燃圧センサの取付構造を簡素にできる。一方、燃料噴射弁の内部に取り付ける場合には、燃料流入口に取り付ける場合に比べて燃圧センサの取り付け位置が燃料噴射弁の噴射孔に近い位置となるので、噴射孔での圧力変動をより的確に検出することができる。
請求項19記載の発明では、前記蓄圧容器から前記燃料噴射弁の燃料流入口までの燃料通路には、蓄圧容器内の燃料の圧力脈動を減衰させるオリフィスが備えられており、前記燃圧センサは前記オリフィスの燃料流れ下流側に配置されていることを特徴とする。ここで、前記オリフィスの上流側に燃圧センサを配置した場合には、噴射孔での圧力変動がオリフィスにより減衰してしまった後の圧力変動を検出することとなる。これに対し上記請求項19記載の発明によれば、オリフィスの下流側に燃圧センサを配置するので、オリフィスにより減衰する前の状態の圧力変動を検出することができ、噴射孔での圧力変動をより的確に検出することができる。
<請求項20について>
請求項20記載の発明では、上記噴射異常検出装置と、燃料を蓄圧する蓄圧容器、及び前記蓄圧容器で蓄圧された燃料を噴射する燃料噴射弁の少なくとも一方と、を備えることを特徴とする燃料噴射システムである。この燃料噴射システムによれば、上述の各種効果を同様に発揮することができる。
以下、本発明に係る燃料噴射装置及び燃料噴射システムを具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の装置は、例えば4輪自動車用エンジン(内燃機関)を対象にするコモンレール式燃料噴射システムに搭載されており、ディーゼルエンジンのエンジンシリンダ内の燃焼室に直接的に高圧燃料(例えば噴射圧力「1000気圧」以上の軽油)を噴射供給(直噴供給)する際に用いられる。
はじめに、図1を参照して、本実施形態に係るコモンレール式燃料噴射システム(車載エンジンシステム)の概略について説明する。なお、本実施形態では多気筒(例えば直列4気筒)の4ストローク、レシプロ式ディーゼルエンジン(内燃機関)を想定している。このエンジンでは、吸排気弁のカム軸に設けられた気筒判別センサ(電磁ピックアップ)にてその時の対象シリンダが逐次判別され、4つのシリンダ#1〜#4について、それぞれ吸入・圧縮・燃焼・排気の4行程による1燃焼サイクルが「720°CA」周期で、詳しくは例えば各シリンダ間で「180°CA」ずらしてシリンダ#1,#3,#4,#2の順に逐次実行される。
同図1に示されるように、このシステムは、大きくは、電子制御ユニットであるECU(燃料噴射制御手段)30が、各種センサからのセンサ出力(検出結果)を取り込み、それら各センサ出力に基づいて燃料供給系を構成する各装置の駆動を制御するように構成されている。ECU30は、吸入調整弁11cに対する電流供給量を調整して燃料ポンプ11の燃料吐出量を所望の値に制御することで、コモンレール12(蓄圧容器)内の燃料圧力(燃圧センサ20aにて測定される時々の燃料圧力)を目標値(目標燃圧)にフィードバック制御(例えばPID制御)している。そして、その燃料圧力に基づいて、対象エンジンの所定シリンダに対する燃料噴射量、ひいては同エンジンの出力(出力軸の回転速度やトルク)を所望の大きさに制御している。
燃料供給系を構成する諸々の装置は、燃料上流側から、燃料タンク10、燃料ポンプ11、コモンレール12、及びインジェクタ20(燃料噴射弁)の順に配設されている。このうち、燃料タンク10と燃料ポンプ11とは、燃料フィルタ10bを介して配管10aにより接続されている。
燃料ポンプ11は、駆動軸11dによって駆動される高圧ポンプ11a及び低圧ポンプ11bを有し、低圧ポンプ11bによって上記燃料タンク10から汲み上げられた燃料を、高圧ポンプ11aにて加圧して吐出するように構成されている。そして、高圧ポンプ11aに送られる燃料圧送量、ひいては燃料ポンプ11の燃料吐出量は、燃料ポンプ11の燃料吸入側に設けられた吸入調整弁(SCV:Suction Control Valve)11cによって調量される。すなわち、この燃料ポンプ11では、吸入調整弁11c(例えば非通電時に開弁するノーマリオン型の調整弁)の駆動電流量(ひいては弁開度)を調整することで、同ポンプ11からの燃料吐出量を所望の値に制御することができるようになっている。
こうした燃料ポンプ11により燃料タンク10から燃料フィルタ10bを介して汲み上げられた燃料は、コモンレール12へ加圧供給(圧送)される。そして、コモンレール12は、その燃料ポンプ11から圧送された燃料を高圧状態で蓄えてこれを、シリンダ毎に設けられた高圧配管14を通じて、各シリンダ#1〜#4のインジェクタ20へそれぞれ分配供給する。これらインジェクタ20(#1)〜(#4)の燃料排出口21は、それぞれ余分な燃料を燃料タンク10へ戻すための配管18とつながっている。また、コモンレール12と高圧配管14との間には、コモンレール12から高圧配管14に流れる燃料の圧力脈動を減衰させるオリフィス12a(燃料脈動軽減手段)が備えられている。
図2に、上記インジェクタ20の詳細構造を示す。なお、上記4つのインジェクタ20(#1)〜(#4)は基本的には同様の構造(例えば図2に示す構造)となっている。いずれのインジェクタ20も、燃焼用のエンジン燃料(燃料タンク10内の燃料)を利用した油圧駆動式の燃料噴射弁であり、燃料噴射に際しての駆動動力の伝達が油圧室Cd(制御室)を介して行われる。同図2に示されるように、このインジェクタ20は、非通電時に閉弁状態となるノーマリクローズ型の燃料噴射弁として構成されている。
インジェクタ20のハウジング20eに形成された燃料流入口22には、コモンレール12から送られてくる高圧燃料が流入し、流入した高圧燃料の一部は油圧室Cdに流入し、他は噴射孔20fに向けて流れる。油圧室Cdには制御弁23により開閉されるリーク孔24が形成されており、制御弁23によりリーク孔24が開放されると、油圧室Cdの燃料はリーク孔24から燃料排出口21を経て燃料タンク10に戻される。
このインジェクタ20の燃料噴射に際しては、二方電磁弁を構成するソレノイド20bに対する通電状態(通電/非通電)に応じて制御弁23を作動させることで、油圧室Cdの密閉度合、ひいては同油圧室Cdの圧力(ニードル弁20cの背圧に相当)が増減される。そして、その圧力の増減により、スプリング20d(コイルばね)の伸張力に従って又は抗して、ニードル弁20cがハウジング20e内を往復動(上下)することで、噴射孔20f(必要な数だけ穿設)までの燃料供給通路25が、その中途(詳しくは往復動に基づきニードル弁20cが着座又は離座するテーパ状のシート面)で開閉される。
ここで、ニードル弁20cの駆動制御は、オンオフ制御を通じて行われる。すなわち、ニードル弁20cの駆動部(上記二方電磁弁)には、ECU30からオンオフを指令するパルス信号(通電信号)が送られる。そして、パルスオン(又はオフ)によりニードル弁20cがリフトアップして噴射孔20fが開放され、パルスオフ(又はオン)によりリフトダウンして噴射孔20fが閉塞される。
ちなみに、上記油圧室Cdの増圧処理は、コモンレール12からの燃料供給によって行われる。他方、油圧室Cdの減圧処理は、ソレノイド20bへの通電により制御弁23を作動させてリーク孔24を開放させることによって行われる。これにより、当該インジェクタ20と燃料タンク10とを接続する配管18(図1)を通じてその油圧室Cd内の燃料が上記燃料タンク10へ戻される。つまり、油圧室Cd内の燃料圧力を制御弁23の開閉作動により調整することで、噴射孔20fを開閉するニードル弁20cの作動が制御される。
このように、上記インジェクタ20は、弁本体(ハウジング20e)内部での所定の往復動作に基づいて噴射孔20fまでの燃料供給通路25を開閉(開放・閉鎖)することにより当該インジェクタ20の開弁及び閉弁を行うニードル弁20cを備える。そして、非駆動状態では、定常的に付与される閉弁側への力(スプリング20dによる伸張力)でニードル弁20cが閉弁側へ変位するとともに、駆動状態では、駆動力が付与されることにより上記スプリング20dの伸張力に抗してニードル弁20cが開弁側へ変位する。そしてこの際、それら非駆動状態と駆動状態とでは、ニードル弁20cのリフト量が略対称に変化する。
インジェクタ20には、燃料圧力を検出する燃圧センサ20a(図1も併せ参照)が取り付けられている。具体的には、ハウジング20eに形成された燃料流入口22と高圧配管14とを治具20jで連結させ、この治具20jに燃圧センサ20aを取り付けている。このようにインジェクタ20の燃料流入口22に燃圧センサ20aを取り付けることで、燃料流入口22における燃料圧力(インレット圧)の随時の検出が可能とされている。具体的には、この燃圧センサ20aの出力により、当該インジェクタ20の噴射動作に伴う燃料圧力の変動パターンや、燃料圧力レベル(安定圧力)、燃料噴射圧力等を検出(測定)することができる。
燃圧センサ20aは、複数のインジェクタ20(#1)〜(#4)の各々に対して設けられている。そして、これら燃圧センサ20aの出力に基づいて、所定の噴射について、インジェクタ20の噴射動作に伴う燃料圧力の変動パターンを高い精度で検出することができるようになっている(詳しくは後述)。
また、図示しない車両(例えば4輪乗用車又はトラック等)には、上記各センサの他にもさらに、車両制御のための各種のセンサが設けられている。例えば対象エンジンの出力軸であるクランク軸41の外周側には、所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)クランク角信号を出力するクランク角センサ42(例えば電磁ピックアップ)が、同クランク軸41の回転角度位置や回転速度(エンジン回転速度)等を検出するために設けられている。また、アクセルペダルの状態(変位量)に応じた電気信号を出力するアクセルセンサ44が、運転者によるアクセルペダルの操作量(踏み込み量)を検出するために設けられている。
こうしたシステムの中で、本実施形態の燃料噴射制御手段として機能するとともに、電子制御ユニットとして主体的にエンジン制御を行う部分がECU30である。このECU30(エンジン制御用ECU)は、周知のマイクロコンピュータ(図示略)を備えて構成され、上記各種センサの検出信号に基づいて対象エンジンの運転状態やユーザの要求を把握し、それに応じて上記吸入調整弁11cやインジェクタ20等の各種アクチュエータを操作することにより、その時々の状況に応じた最適な態様で上記エンジンに係る各種の制御を行っている。
また、このECU30に搭載されるマイクロコンピュータは、各種の演算を行うCPU(基本処理装置)、その演算途中のデータや演算結果等を一時的に記憶するメインメモリとしてのRAM、プログラムメモリとしてのROM、データ保存用メモリとしてのEEPROM、バックアップRAM(ECU30の主電源停止後も車載バッテリ等のバックアップ電源により常時給電されているメモリ)等を備えて構成されている。そして、ROMには、当該燃料噴射制御に係るプログラムを含めたエンジン制御に係る各種のプログラムや制御マップ等が、またデータ保存用メモリ(例えばEEPROM)には、対象エンジンの設計データをはじめとする各種の制御データ等が、それぞれ予め格納されている。
本実施形態では、ECU30が、随時入力される各種のセンサ出力(検出信号)に基づいて、その時に出力軸(クランク軸41)に生成すべきトルク(要求トルク)、ひいてはその要求トルクを満足するための燃料噴射量を算出する。こうして、インジェクタ20の燃料噴射量を可変設定することで、各シリンダ内(燃焼室)での燃料燃焼を通じて生成されるトルク(生成トルク)、ひいては実際に出力軸(クランク軸41)へ出力される軸トルク(出力トルク)を制御する(要求トルクへ一致させる)ようになっている。
すなわち、このECU30は、例えば時々のエンジン運転状態や運転者によるアクセルペダルの操作量等に応じた燃料噴射量を算出し、所望の噴射時期に同期して、その燃料噴射量での燃料噴射を指示する噴射制御信号(駆動量)を上記インジェクタ20へ出力する。そしてこれにより、すなわち同インジェクタ20の駆動量(例えば開弁時間)に基づいて、対象エンジンの出力トルクが目標値へ制御されることになる。
なお周知のように、ディーゼルエンジンにおいては、定常運転時、新気量増大やポンピングロス低減等の目的で、同エンジンの吸気通路に設けられた吸気絞り弁(スロットル弁)が略全開状態に保持される。したがって、定常運転時の燃焼制御(特にトルク調整に係る燃焼制御)としては燃料噴射量のコントロールが主となっている。
以下、図3を参照して、本実施形態に係る燃料噴射制御の基本的な処理手順について説明する。なお、この図3の処理において用いられる各種パラメータの値は、例えばECU30に搭載されたRAMやEEPROM、あるいはバックアップRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。そして、これら各図の一連の処理は、基本的には、ECU30でROMに記憶されたプログラムが実行される。
同図3に示すように、この一連の処理においては、まずステップS11で、所定のパラメータ、例えばその時のエンジン回転速度(クランク角センサ42による実測値)及び燃料圧力(燃圧センサ20aによる実測値)、さらには運転者によるその時のアクセル操作量(アクセルセンサ44による実測値)等を読み込む。
続くステップS12では、上記ステップS11で読み込んだ各種パラメータに基づいて噴射パターンを設定する。例えば単段噴射の場合にはその噴射の噴射量Q(噴射時間)が、また多段噴射の噴射パターンの場合にはトルクに寄与する各噴射の総噴射量Q(総噴射時間)が、それぞれ上記出力軸(クランク軸41)に生成すべきトルク(アクセル操作量等から算出される要求トルク、いわばその時のエンジン負荷に相当)に応じて可変設定される。
この噴射パターンは、例えば上記ROMに記憶保持された所定のマップ(噴射制御用マップ、数式でも可)及び補正係数に基づいて取得される。詳しくは、例えば予め上記所定パラメータ(ステップS11)の想定される範囲について試験により最適噴射パターン(適合値)を求め、その噴射制御用マップに書き込んでおく。
この噴射パターンは、例えば噴射段数(1燃焼サイクル中の噴射回数)、並びにそれら各噴射の噴射時期(噴射タイミング)及び噴射時間(噴射量に相当)等のパラメータにより定められるものである。こうして、上記噴射制御用マップは、それらパラメータと最適噴射パターンとの関係を示すものとなっている。
そして、この噴射制御用マップで取得された噴射パターンを、別途更新されている補正係数(例えばECU30内のEEPROMに記憶)に基づいて補正する(例えば「設定値=マップ上の値/補正係数」なる演算を行う)ことで、その時に噴射すべき噴射パターン、ひいてはその噴射パターンに対応した上記インジェクタ20に対する指令信号を得る。補正係数(厳密には複数種の係数のうちの所定の係数)は、別途の処理により内燃機関の運転中に逐次更新されている。
なお、上記噴射パターンの設定(ステップS12)には、同噴射パターンの要素(上記噴射段数等)毎に別々に設けられた各マップを用いるようにしても、あるいはこれら噴射パターンの各要素を幾つか(例えば全て)まとめて作成したマップを用いるようにしてもよい。
こうして設定された噴射パターン、ひいてはその噴射パターンに対応する指令値(指令信号)は、続くステップS13で使用される。すなわち、同ステップS13(指令信号出力手段)では、その指令値(指令信号)に基づいて(詳しくは上記インジェクタ20へその指令信号を出力して)、同インジェクタ20の駆動を制御する。そして、このインジェクタ20の駆動制御をもって、図3の一連の処理を終了する。
次に、インジェクタ20の噴射孔20f詰まりやニードル弁20cの摺動不良等による噴射異常の発生を検出する噴射異常検出処理について、図4を用いて説明する。図4に示す一連の処理は、所定周期(例えば先述のCPUが行う演算周期)又は所定のクランク角度毎に実行される。なお、この処理を実行するECU30は噴射異常検出装置に相当する。
まずステップS21で、燃圧センサ20aの出力値(検出圧力)を取り込む。この取り込み処理は複数の燃圧センサ20aの各々について実行され、以降のステップS22〜S25についても、複数のインジェクタ20の各々について噴射異常検出処理が実行される。
ここで、ステップS21の取り込み処理について図5を用いて詳細に説明する。図5(a)は、図3のステップS13にてインジェクタ20に出力される噴射指令信号を示しており、この指令信号のパルスオンによりソレノイド20bが作動して噴射孔20fが開弁する。つまり、噴射指令信号のパルスオン時期Isにより噴射開始が指令され、パルスオフ時期Ieにより噴射終了が指令される。よって、指令信号のパルスオン(噴射指令)により噴射孔20fの開弁時間Tqを制御することで、噴射量Qを制御している。図5(b)は、上記噴射指令に伴い生じる噴射孔20fからの燃料噴射率の変化を示し、図5(c)は、噴射率の変化に伴い生じる燃圧センサ20aの出力値(検出圧力)の変化を示す。
そして、ECU30は、図4の処理とは別のサブルーチン処理により、燃圧センサ20aの出力値を検出しており、そのサブルーチン処理では燃圧センサ20aの出力値を、該センサ出力で圧力推移波形の軌跡(図5(c)にて例示される軌跡)が描かれる程度に短い間隔(図4の所定周期よりも短い間隔)にて逐次取得している。具体的には、50μsecよりも短い間隔(より望ましくは20μsec)でセンサ出力を逐次取得する。
なお、図5(c)に示すインレット圧の変動(圧力推移波形)から図5(b)に示す噴射率の変化を推定し、推定した噴射率変化は、図3のステップS11で用いる先述の噴射制御用マップの更新(学習)等に用いられる。ちなみに、燃圧センサ20aの検出圧力の変動と噴射率の変化とは以下に説明する相関があるため、上述の如く噴射率の変化を推定することができる。
先ず、図5(a)に示すように噴射開始指令Isがなされた後、噴射率が応答遅れTaの後R3の時点で上昇を開始して噴射が開始される。一方、検出圧力は、この噴射開始時点R3の前に変化点P1にて下降する。これは、P1の時点で制御弁23がリーク孔24を開放し、油圧室Cdが減圧処理されることに起因する。その後、油圧室Cdが十分に減圧された時点で、変化点P2にてP1からの下降が一旦停止する。次に、R3の時点で噴射率が上昇を開始したことに伴い、検出圧力は変化点P3にて下降を開始する。その後、R4の時点で噴射率が最大噴射率に到達したことに伴い、検出圧力の下降は変化点P4にて停止する。
次に、検出圧力は変化点P5にて上昇する。これは、P5の時点で制御弁23がリーク孔24を閉塞し、油圧室Cdが増圧処理されることに起因する。その後、油圧室Cdが十分に増圧された時点で、変化点P6にてP5からの上昇が一旦停止する。次に、R7の時点で噴射率が下降を開始したことに伴い、検出圧力は変化点P7にて上昇を開始する。その後、R8の時点で噴射率がゼロになり実際の噴射が終了したことに伴い、検出圧力の上昇は変化点P8にて停止する。P8以降の検出圧力は、図示を省略しているが、一定の周期で下降と上昇を繰り返しながら減衰した後安定する。
以上により、燃圧センサ20aによる検出圧力の変動のうち変化点P3及びP8を検出することで、噴射率の上昇開始時点R3(噴射開始時点)及び下降終了時点R8(噴射終了時点)を推定することができる。また、以下に説明する検出圧力の変動と噴射率の変化との相関関係に基づき、検出圧力の変動から噴射率の変化を推定できる。
つまり、検出圧力の変化点P3からP4までの圧力下降率Pαと、噴射率の変化点R3からR4までの噴射率上昇率Rαとは相関がある。変化点P7からP8までの圧力上昇率Pγと変化点R7からR8までの噴射率下降率Rγとは相関がある。変化点P3からP4までの圧力下降量Pβと変化点R3からR4までの噴射率上昇量Rβとは相関がある。よって、燃圧センサ20aによる検出圧力の変動から圧力下降率Pα、圧力上量率Pγ及び圧力下降量Pβを検出することで、噴射率の噴射率上昇率Rα、噴射率下降率Rγ及び噴射率上昇量Rβを推定することができる。以上の如く噴射率の各種状態R3,R8,Rα,Rβ,Rγを推定することができ、よって、図6(b)に示す燃料噴射率の変化を推定することができる。
さらに、実噴射開始から終了までの噴射率の積分値(斜線を付した符号Sに示す部分の面積)は噴射量に相当する。そして、検出圧力の推移波形のうち実噴射開始から終了までの噴射率変化に対応する部分(変化点P3〜P8の部分)の圧力の積分値と噴射率の積分値Sとは相関がある。よって、燃圧センサ20aによる検出圧力の変動から圧力積分値を算出することで、噴射量Qに相当する噴射率積分値Sを推定することができる。
図5の説明に戻り、先述のステップS21に続くステップS22では、噴射指令信号による噴射開始指令時期Is及び噴射終了指令時期Ieに基づき、正常な状態で噴射がなされていれば検出圧力がどのような態様で変動するかを推定し、推定した変動態様(推移波形)に対する正常範囲を想定する(詳細は後述)。続くステップS23(噴射異常判定手段)では、ステップS21にて取得した検出圧力に基づく実際の推移波形が、ステップS22にて想定した正常範囲内で挙動する波形であるか否かを判定する。
正常範囲内でないと判定された場合には、ステップS24(噴射異常判定手段)において、噴射異常が発生していると判断する異常判定処理を実行し、続くステップS25にて異常信号を出力し、先述のEEPROM等に異常発生の旨を記憶する。なお、異常信号には、後に詳述する異常内容の情報が含まれている。当該異常信号を受信した異常発生時処理装置(例えばECU30のマイコン)は、インジェクタ20の交換を促す報知を行ったり、該当するインジェクタ20への噴射指令信号の出力を禁止して噴射を確実に停止させる等の処理を実行する。
次に、ステップS22にて想定される推移波形の挙動の正常範囲について説明する。本実施形態に係る正常範囲とは、以下の(a)〜(f)の条件を全て満たす範囲のことであり、少なくとも1つの条件を満たしていなければ、ステップS23にて噴射異常が発生していると判定される。
(a)図6中の一点鎖線に示すように、正常噴射であれば、噴射開始指令時期Isから第1所定時間T11内に噴射が開始され、噴射率は変化点R3にて上昇を開始する。そして、このようにR3の時点で噴射率が上昇を開始したことに伴い、検出圧力は変化点P3にて下降を開始する。したがって、噴射指令信号による噴射開始指令時期Isから第1所定時間T11内に圧力下降開始の変化点P3が現れることを、正常範囲の推移波形とする。
なお、上記第1所定時間T11は、変化点P1が現れる以前の検出圧力に応じて可変設定することが望ましい。例えば、噴射開始指令時点Isでの検出圧力が高いほど、正常噴射における変化点P1は早期に現れることとなるので、第1所定時間T11を短く設定することが望ましい。
そして、図6中の実線に示すように、噴射開始指令時期Isから第1所定時間T11が経過しても、噴射率変化点R3に伴う検出圧力変化点P3が現れなければ、ステップS23にて噴射異常が発生していると判定される。そして、噴射開始指令に反して無噴射となっている異常状態の可能性があるとの異常内容情報を、ステップS25にて出力される異常信号に含ませる。
(b)図7中の一点鎖線に示すように、正常噴射であれば、噴射終了指令時期Ieから第2所定時間T12内に噴射が終了し、変化点R7から下降を続ける噴射率は変化点R8にて下降を終了する。そして、このようにR8の時点で噴射率が下降を終了したことに伴い、検出圧力は変化点P8にて上昇を終了する。したがって、噴射指令信号による噴射終了指令時期Ieから第2所定時間T12内に圧力上昇終了の変化点P8が現れることを、正常範囲の推移波形とする。
なお、上記第2所定時間T12は、変化点P1が現れる以前の検出圧力及び噴射指令信号による開弁指令時間Tqの少なくとも一方に応じて、可変設定することが望ましい。例えば、噴射開始指令時点Isでの検出圧力が高いほど、或いは開弁指令時間Tqが長いほど、正常噴射における変化点P8は早期に現れることとなるので、第2所定時間T12を短く設定することが望ましい。
そして、図7中の実線に示すように、噴射終了指令時期Ieから第2所定時間T12が経過しても、噴射率変化点R8に伴う検出圧力変化点P8が現れなければ、ステップS23にて噴射異常が発生していると判定される。そして、噴射終了指令に反して噴射が継続されているとの異常内容情報を、ステップS25にて出力される異常信号に含ませる。
(c)図8中の一点鎖線に示すように、正常噴射であれば、噴射終了指令時期Ieから第3所定時間T13内に噴射率は変化点R7にて下降を開始し、当該下降開始に伴い検出圧力は変化点P7にて上昇を開始する。したがって、噴射指令信号による噴射終了指令時期Ieから第3所定時間T13内に圧力上昇開始の変化点P7が現れることを、正常範囲の推移波形とする。
なお、上記第3所定時間T13は、変化点P1が現れる以前の検出圧力及び噴射指令信号による開弁指令時間Tqの少なくとも一方に応じて、可変設定することが望ましい。例えば、噴射開始指令時点Isでの検出圧力が高いほど、或いは開弁指令時間Tqが長いほど、正常噴射における変化点P7は早期に現れることとなるので、第3所定時間T13を短く設定することが望ましい。
そして、図8中の実線に示すように、噴射終了指令時期Ieから第3所定時間T13が経過しても、噴射率変化点R7に伴う検出圧力変化点P7が現れなければ、ステップS23にて噴射異常が発生していると判定される。そして、噴射終了指令に反して噴射率下降が開始されていないとの異常内容情報を、ステップS25にて出力される異常信号に含ませる。
(d)図9中の一点鎖線に示すように、正常噴射であれば、噴射率変化点R4が現れた以後の最大噴射率Rβは所定の閾値Rβ1を超えることとなる。したがって、圧力変化点P4が現れてから第4所定時間T14が経過するまでに、変化点P3からP4までの圧力下降量Pβが閾値Rβ1に相当する閾値を超えて下降することを、正常範囲の推移波形とする。
なお、上記第4所定時間T14及び閾値Rβ1は、変化点P1が現れる以前の検出圧力及び噴射指令信号による開弁指令時間Tqの少なくとも一方に応じて、可変設定することが望ましい。例えば、噴射開始指令時点Isでの検出圧力が高いほど、或いは開弁指令時間Tqが長いほど、正常噴射における最大噴射率Rβは早期かつ大きく現れることとなるので、第4所定時間T14を短く設定し、閾値Rβ1を大きく設定することが望ましい。
そして、図9中の実線に示すように、最大噴射率到達時点R4から第4所定時間T14が経過しても、圧力下降量Pβが閾値を超えて下降しなければ、ステップS23にて噴射異常が発生していると判定される。そして、指令した最大噴射率まで噴射率が十分に高くなっていないとの異常内容情報を、ステップS25にて出力される異常信号に含ませる。
(e)図10中の一点鎖線に示すように、正常噴射であれば、噴射率の上昇率Rαは所定の上昇率Rα1より大きい値となる。したがって、圧力下降率Pαが所定上昇率Rα1に相当する所定圧力下降率Pαより小さい値となり急激に圧力下降していることを、正常範囲の推移波形とする。
なお、上記所定圧力下降率Pα1は、変化点P1が現れる以前の検出圧力及び噴射指令信号による開弁指令時間Tqの少なくとも一方に応じて、可変設定することが望ましい。例えば、噴射開始指令時点Isでの検出圧力が高いほど、或いは開弁指令時間Tqが長いほど、正常噴射における噴射率の上昇率Rαは大きい値となり急激に上昇することとなるので、所定上昇率Rα1を大きく設定することが望ましい。
そして、図10中の実線に示すように、噴射率の上昇率Rαが所定上昇率Rαより小さければ、ステップS23にて噴射異常が発生していると判定される。そして、実際の噴射率の上昇率が指令した上昇率よりも低くなっているとの異常内容情報を、ステップS25にて出力される異常信号に含ませる。
(f)図10及び図11中の一点鎖線に示すように、正常噴射であれば、噴射量Qに相当する噴射率の積分値Sは所定の下限値より大きく、上限値よりも小さい値となる。したがって、噴射率積分値Sが下限値及び上限値の範囲内となるような圧力変動となる波形を、正常範囲の推移波形とする。
なお、上記上限値及び下限値は、変化点P1が現れる以前の検出圧力及び噴射指令信号による開弁指令時間Tqの少なくとも一方に応じて、可変設定することが望ましい。例えば、噴射開始指令時点Isでの検出圧力が高いほど、或いは開弁指令時間Tqが長いほど、噴射量Qは多くなるので、上限値及び下限値を高い値に設定することが望ましい。
そして、図10及び図11中の実線に示すように、噴射率積分値Sが下限値よりも小さい、或いは上限値よりも大きければ、ステップS23にて噴射異常が発生していると判定される。そして、実際の噴射量が指令した噴射量に対して過少或いは過多となっているとの異常内容情報を、ステップS25にて出力される異常信号に含ませる。
条件(a)に基づき異常判定を行うにあたり、圧力下降開始の変化点P3(噴射開始時期)を検出する処理を実行している時のECU30は噴射開始検出手段に相当する。条件(b)に基づき異常判定を行うにあたり、圧力上昇終了の変化点P8(噴射終了時期)を検出する処理を実行している時のECU30は噴射終了検出手段に相当する。条件(c)に基づき異常判定を行うにあたり、圧力上昇開始の変化点P7(ニードル弁20cの閉弁作動開始時期)を検出する処理を実行している時のECU30は噴射終了作動開始検出手段に相当する。条件(d)に基づき異常判定を行うにあたり、圧力下降量Pβを検出する処理を実行している時のECU30は最大噴射率到達検出手段に相当する。条件(e)に基づき異常判定を行うにあたり、圧力下降率Pαを検出する処理を実行している時のECU30は噴射率上昇検出手段に相当する。条件(f)に基づき異常判定を行うにあたり、噴射量Qを算出する処理を実行している時のECU30は噴射量算出手段に相当する。
以上により本実施形態では、燃圧センサ20aをインジェクタ20に取り付けているため、コモンレール12に取り付けた場合に比べて噴射孔20fに近い位置に燃圧センサ20aは配置されることとなる。よって、噴射孔20fでの圧力変動(推移波形)を詳細に精度良く検出することができる(S21)。一方、噴射指令信号による噴射開始指令時期Is、噴射終了指令時期Ie、及びこれらの時期Is,Ieにて特定される噴射時間Tqから、正常な噴射がなされていた場合に想定される検出圧力の変動態様(推移波形)を算出する(S22)。そして、検出した推移波形と想定される推移波形とを比較する(S23)ことで燃料噴射の異常を検出する(S24)。
したがって、実際の噴射状態が燃圧センサ20aにより直接的に検出され、その検出結果に基づき噴射異常の発生を検出するので、フィードバック制御に用いる目標値に間接的に現れる異常に基づき噴射異常を検出する従来装置に比べ、噴射異常を即時かつ精度良く検出できる。
しかも、本実施形態によれば、先述の条件(a)〜(f)を満たすか否かに基づき噴射異常を検出するので、異常内容を情報として異常信号に含ませることができる。よって、インジェクタ20の交換を促す報知を行ったり、該当するインジェクタ20への噴射指令信号の出力を禁止して噴射を確実に停止させる等の異常発生時の異常対応処理を、その異常内容に応じた処理内容にすることができる。
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、上記各実施形態の特徴的構造をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。また、例えば次のように実施しても良い。
・図9に示す上記条件(d)に関し、上記実施形態では第4所定時間T14の計時開始を圧力変化点P4(R4)の時点としているが、例えば、圧力変化点P3(R3)の時点から第4所定時間T14の計時を開始してもよい。但しこの場合には、噴射率上昇率Rαが十分大きくないとの異常状態である場合にも、条件(d)を満たしていないとの異常判定がなされるので、噴射率上昇率Rαの異常及び最大噴射率Rβの異常のいずれが異常の原因になっているかを特定することができない。これに対し、上記実施形態では圧力変化点P3(R3)の時点から第4所定時間T14の計時を開始しているので、条件(d)を満たしていないとの異常判定がなされた場合、最大噴射率Rβの異常である旨を特定できる。
・上記実施形態では、条件(a)〜(f)の全てを満たす場合に正常噴射であると判定されるが、これら複数の条件(a)〜(f)のうち任意に選択された複数又は1つの条件を満たす場合に正常噴射であると判定するようにしてもよい。
・図4のステップS23の処理を実行するにあたり、燃圧センサ20aの検出圧力から推定された噴射率について正常範囲の変動態様になっているかを判定して噴射異常を検出してもよいし、噴射率についてではなく燃圧センサ20aの検出圧力について、正常範囲の変動態様になっているかを判定して噴射異常を検出するようにしてもよい。
・図2に例示した電磁駆動式のインジェクタ20に替えて、ピエゾ駆動式のインジェクタを用いるようにしてもよい。また、リーク孔24等からの圧力リークを伴わない燃料噴射弁、例えば駆動動力の伝達に油圧室Cdを介さない直動式のインジェクタ(例えば近年開発されつつある直動式ピエゾインジェクタ)等を用いることもできる。そして、直動式のインジェクタを用いた場合には、噴射率の制御が容易となる。
・燃圧センサ20aをインジェクタ20に取り付けるにあたり、上記実施形態では、インジェクタ20の燃料流入口22に燃圧センサ20aを取り付けているが、図2中の一点鎖線200aに示すようにハウジング20eの内部に燃圧センサ200aを組み付けて、燃料流入口22から噴射孔20fに至るまでの内部燃料通路25の燃料圧力を検出するように構成してもよい。
そして、上述の如く燃料流入口22に取り付ける場合には、ハウジング20eの内部に取り付ける場合に比べて燃圧センサ20aの取付構造を簡素にできる。一方、ハウジング20eの内部に取り付ける場合には、燃料流入口22に取り付ける場合に比べて燃圧センサ20aの取り付け位置が噴射孔20fに近い位置となるので、噴射孔20fでの圧力変動をより的確に検出することができる。
・高圧配管14に燃圧センサ20aを取り付けるようにしてもよい。この場合、コモンレール12から一定距離だけ離間した位置に燃圧センサ20aを取り付けることが望ましい。
・コモンレール12と高圧配管14との間に、コモンレール12から高圧配管14に流れる燃料の流量を制限する流量制限手段を備えてもよい。この流量制限手段は、高圧配管14やインジェクタ20等の損傷による燃料漏れにより過剰な燃料流出が発生した時に、流路を閉塞するよう機能するものであり、例えば過剰流量時に流路を閉塞するように作動するボール等の弁体により構成することが具体例として挙げられる。なお、オリフィス12a(燃料脈動軽減手段)と流量制限手段とを一体に構成したフローダンパを採用してもよい。
・また、燃圧センサ20aをオリフィス及び流量制限手段の燃料流れ下流側に配置する構成の他に、オリフィス及び流量制限手段の少なくとも一方に対して下流側に配置するよう構成してもよい。
・燃圧センサ20aの数は任意であり、例えば1つのシリンダの燃料流通経路に対して2つ以上のセンサを設けるようにしてもよい。また、上記実施形態で説明した燃圧センサ20aに加えて、さらにコモンレール12内の圧力を測定するレール圧センサを備える構成としてもよい。
・制御対象とするエンジンの種類やシステム構成も、用途等に応じて適宜に変更可能である。例えば、上記実施形態ではディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について言及したが、例えば火花点火式のガソリンエンジン(特に直噴エンジン)等についても、基本的には同様に本発明を適用することができる。直噴式ガソリンエンジンの燃料噴射システムでは、燃料(ガソリン)を高圧状態で蓄えるデリバリパイプを備えており、このデリバリパイプに対して燃料ポンプから燃料が圧送されるとともに、同デリバリパイプ内の高圧燃料が複数のインジェクタ20に分配され、エンジン燃焼室内に噴射供給される。なお、かかるシステムでは、デリバリパイプが蓄圧容器に相当する。また、本発明に係る装置及びシステムは、シリンダ内に燃料を直接的に噴射する燃料噴射弁に限らず、エンジンの吸気通路又は排気通路に燃料を噴射する燃料噴射弁についても適用できる。
本発明に係る噴射異常検出装置が搭載されたエンジン制御システムの一実施形態について、該システムの概略を示す構成図。 同システムに用いられる燃料噴射弁の内部構造を模式的に示す内部側面図。 本実施形態に係る燃料噴射制御処理の基本的な手順を示すフローチャート。 本実施形態に係る噴射異常検出処理の手順を示すフローチャート。 本実施形態に係る燃圧センサによる検出圧力の推移波形と、噴射率の変化との関係を示すタイムチャート。 噴射異常発生時の噴射率の一態様を示す図。 噴射異常発生時の噴射率の一態様を示す図。 噴射異常発生時の噴射率の一態様を示す図。 噴射異常発生時の噴射率の一態様を示す図。 噴射異常発生時の噴射率の一態様を示す図。 噴射異常発生時の噴射率の一態様を示す図。 噴射異常発生時の噴射率の一態様を示す図。
符号の説明
12…コモンレール(蓄圧容器)、20…インジェクタ(燃料噴射弁)、20a,200a…燃圧センサ、20f…噴射孔、30…ECU(噴射異常検出装置)、S13…指令信号出力手段、S23,S24…噴射異常判定手段、S23…噴射開始検出手段、噴射終了検出手段、噴射終了作動開始検出手段、最大噴射率到達検出手段、噴射率上昇検出手段、噴射量算出手段。

Claims (20)

  1. 蓄圧容器で蓄圧された燃料を燃料噴射弁から噴射する燃料噴射システムに適用される噴射異常検出装置であって、
    前記蓄圧容器から前記燃料噴射弁の噴射孔に至るまでの燃料通路のうち前記蓄圧容器に対して前記噴射孔に近い側に配置され、前記噴射孔からの燃料噴射に伴い変動する燃料の圧力を検出する燃圧センサと、
    燃料の噴射態様を指令する噴射指令信号を前記燃料噴射弁に出力する指令信号出力手段と、
    前記燃圧センサの検出圧力が前記噴射指令信号から想定される範囲の変動態様で変動しているか否かを判定し、前記想定される範囲の変動態様でないと判定した場合に噴射異常が発生していると判断する噴射異常判定手段と、
    を備えることを特徴とする噴射異常検出装置。
  2. 前記検出圧力の推移波形中に現れる、実噴射開始に起因した圧力下降の開始を検出する噴射開始検出手段を備え、
    前記噴射異常判定手段は、前記噴射指令信号による噴射開始指令時期から第1所定時間内に前記圧力下降の開始が検出されなかった場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする請求項1に記載の噴射異常検出装置。
  3. 前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、噴射開始指令に反して無噴射となっている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の噴射異常検出装置。
  4. 前記検出圧力の推移波形中に現れる、実噴射終了に起因した圧力上昇の終了を検出する噴射終了検出手段を備え、
    前記噴射異常判定手段は、前記噴射指令信号による噴射終了指令時期から第2所定時間内に前記圧力上昇の終了が検出されなかった場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の噴射異常検出装置。
  5. 前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、噴射終了指令に反して噴射が継続されている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする請求項4に記載の噴射異常検出装置。
  6. 前記検出圧力の推移波形中に現れる、噴射終了作動を開始することによる実噴射率下降開始に起因した圧力上昇の開始を検出する噴射終了作動開始検出手段を備え、
    前記噴射異常判定手段は、前記噴射指令信号による噴射終了指令時期から第3所定時間内に前記圧力上昇の開始が検出されなかった場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の噴射異常検出装置。
  7. 前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、噴射終了指令に反して噴射率下降が開始されない異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の噴射異常検出装置。
  8. 前記検出圧力の推移波形中に現れる、実噴射開始後の最大噴射率到達に起因した圧力下降の終了を検出する最大噴射率到達検出手段を備え、
    前記噴射異常判定手段は、前記最大噴射率到達後の第4所定時間内に前記検出圧力が所定の閾値を超えなかった場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の噴射異常検出装置。
  9. 前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、指令した最大噴射率まで噴射率が十分に高くなっていない異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする請求項8に記載の噴射異常検出装置。
  10. 前記検出圧力の推移波形中に現れる、実噴射開始後の噴射率上昇に起因した圧力下降の下降率を検出する噴射率上昇検出手段を備え、
    前記噴射異常判定手段は、前記下降率が所定の下降率より小さい場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の噴射異常検出装置。
  11. 前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、実際の噴射率の上昇率が指令した上昇率よりも低くなっている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする請求項10に記載の噴射異常検出装置。
  12. 前記検出圧力の推移波形のうち実噴射開始から終了までの噴射率変化に対応する部分の波形について、噴射量に相当する圧力の積分値を算出する噴射量算出手段を備え、
    前記噴射異常判定手段は、前記噴射量算出手段により算出された噴射量が所定の下限値より少ない場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の噴射異常検出装置。
  13. 前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、実際の噴射量が指令した噴射量に対して過少となっている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする請求項12に記載の噴射異常検出装置。
  14. 前記検出圧力の推移波形のうち実噴射開始から終了までの噴射率変化に対応する部分の波形について、噴射量に相当する圧力の積分値を算出する噴射量算出手段を備え、
    前記噴射異常判定手段は、前記噴射量算出手段により算出された噴射量が所定の上限値より多い場合に、前記想定される範囲の変動態様でないと判定することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の噴射異常検出装置。
  15. 前記噴射異常判定手段により前記噴射異常が発生していると判断された場合に、実際の噴射量が指令した噴射量に対して過多となっている異常状態の可能性があるとの情報を含む異常信号を出力することを特徴とする請求項14に記載の噴射異常検出装置。
  16. 前記燃圧センサは前記燃料噴射弁に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の燃料噴射装置。
  17. 前記燃圧センサは前記燃料噴射弁の燃料流入口に取り付けられていることを特徴とする請求項16に記載の燃料噴射装置。
  18. 前記燃圧センサは、前記燃料噴射弁の内部に取り付けられ、前記燃料噴射弁の燃料流入口から前記噴射孔に至るまでの内部燃料通路の燃料圧力を検出するよう構成されていることを特徴とする請求項16に記載の燃料噴射装置。
  19. 前記蓄圧容器から前記燃料噴射弁の燃料流入口までの燃料通路には、コモンレール内の燃料の圧力脈動を減衰させるオリフィスが備えられており、
    前記燃圧センサは前記オリフィスの燃料流れ下流側に配置されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1つに記載の燃料噴射装置。
  20. 請求項1〜19のいずれか1つに記載の噴射異常検出装置と、
    燃料を蓄圧する蓄圧容器、及び前記蓄圧容器で蓄圧された燃料を噴射する燃料噴射弁の少なくとも一方と、
    を備えることを特徴とする燃料噴射システム。
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