JP2009084713A - ポリフェニレンスルフィド紙、ポリフェニレンスルフィド酸化物紙及びそれらの製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド紙、ポリフェニレンスルフィド酸化物紙及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来技術の問題点であった工程の煩雑さ、抄紙収率を大幅に改善し生産性に優れ、さらには廃棄物を削減し、環境負荷を低減できるPPS紙、PPSO紙の製造方法およびPPS紙、PPSO紙を提供する。
【解決手段】 ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる短繊維(A)とポリフェニレンスルフィドオリゴマー(B)を水に分散させた分散液を抄紙し100℃以上250℃未満の温度で熱プレスを施して、オリゴマー(B)により短繊維(A)間を結着させるポリフェニレンスルフィド紙の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は耐熱性、耐薬品性に優れるポリフェニレンスルフィド(PPS)紙、ポリフェニレンスルフィド酸化物(PPSO)紙およびそれらの製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(PPS)は耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気的特性などに優れたエンジニアリングプラスチックである。またPPSを酸化して得られるポリフェニレンスルフィド酸化物(PPSO)はPPSよりも耐熱性、耐薬品性、特に耐酸性に優れ、さらには熱溶融しないという優れた特性を有している。この特徴を活かして、各種用途へのPPS、PPSO紙の応用が期待されている。
PPS紙の製造方法に関しては、一般的な合成紙において短繊維間の結着の目的で使用される低融点のバインダー繊維は、PPS独自の優れた特性を損ねるため使用できない。このため、通常の合成繊維からなる合成紙と同様の製法が適用できず、特殊な製法が必要であり、PPS独自の特性を損なうことのないPPS紙の製造方法が種々検討されてきた。
短繊維間の結着剤としてPPSの未延伸糸を用い、これを熱プレス(カレンダー)する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながらこの製法においては未延伸糸を得るためにPPS樹脂の段階からペレット化、溶融紡糸、捲縮付与、カットなどの工程が必要であり、工程が煩雑であった。
また、PPSナノファイバーを結着剤として用いることが提案(特許文献2)されているが、このPPSナノファイバーを得るためにはPPSと異種ポリマーを混練するアロイ化、溶融紡糸によるアロイ繊維化、延伸による細繊度化、アロイ繊維から異種ポリマーの除去を行なうナノファイバー化、ナノファイバーの束をほぐすための叩解といった一連の特殊な加工が必要であり、その工程は上記のPPS未延伸糸を使ったものよりもはるかに煩雑なものであった。さらにナノファイバー化では異種ポリマーの除去にはアルカリ加水分解などの手法が用いられるが、この際分解物は全て廃棄物となり環境負荷を高めるという問題もあった。
さらに、上記の未延伸糸、PPSナノファイバーともにその形態が繊維状であるために、抄紙原液の調製工程において紙の骨材となる通常のPPS短繊維と共に水に分散させると繊維同士の絡まりを促進するため分散が困難であった。このため、繊維の絡まりを防いで地合いの良い紙を得るため抄紙原液の濃度を低くせざるを得ず、抄紙時の排水量が多く生産性が悪かった。
このように、PPS紙の製造方法に関する従来技術においてはPPS独自の特性を保ったPPS紙が得られるものの、その製造工程は非常に煩雑であるためコストアップが避けられず、また原液濃度が高い場合には紙の地合いが悪いといった問題があった。
一方、PPSの重合においては目的とするPPSポリマー(顆粒状)の他、低分子量のPPSオリゴマーを主成分とする微粒子状の固形物も副生することが知られている。このPPSオリゴマーは微粒子状で取り扱いが煩雑なため、濾別回収し廃棄されることが多く問題となっている。そこで、オリゴマーを回収し再利用する試みも行われている(特許文献3、特許文献4)。しかしオリゴマーの再利用については射出成形、押出成形等の成形用途、高分子量PPSの流動性改良剤、塗装用途といったPPS粒子の一般的な用途に関する記載のみであり、紙用のバインダーとした際の優れた効果を示唆するものではない。
特開平1−272899号公報(第2〜3頁) 特開2006−257618号公報(第9〜15頁) 特開2007−2172号公報(第9〜13頁) 特開2007−16142号公報(第10〜12頁)
本発明の課題は、上記従来技術の課題である、工程の煩雑さ、抄紙収率を大幅に改善し生産性に優れ、さらには廃棄物を削減し、環境負荷を低減できるPPS紙、PPSO紙の製造方法およびPPS紙、PPSO紙を提供することである。
前記した本発明の課題は以下の手段により達成される。
1.ポリアリーレンスルフィド樹脂からなる短繊維(A)とポリフェニレンスルフィドオリゴマー(B)を水に分散させた分散液を抄紙し100℃以上250℃未満の温度で熱プレスを施して、オリゴマー(B)により短繊維(A)間を結着させるポリフェニレンスルフィド紙の製造方法。
2.熱プレス後に気相酸化性雰囲気下、150〜260℃で熱酸化処理する1記載のポリフェニレンスルフィド紙の製造方法。
3.1または2記載の方法で製造されたポリフェニレンスルフィド紙。
4.1または2記載の方法で製造されたポリフェニレンスルフィド紙を、酸化剤を含む液体存在下で酸化反応処理するポリアリーレンスルフィド酸化物紙の製造方法。
5.4記載の方法で製造されたポリフェニレンスルフィド酸化物紙。
本発明のPPS紙、PPSO紙はPPS、PPSO樹脂独自の耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気的特性を有することから、耐熱性ワイパー、プリント回路基板、電気絶縁紙、各種フィルター材、防音断熱材、ルーフィング材、バッテリーセパレーターなどとして利用することができる。また、本発明のPPS紙、PPSO紙の製造方法は従来の製造方法と比べて製造工程の簡略化、抄紙原液濃度の向上が可能であり、経済的に優れる他、従来廃棄されてきたオリゴマーを使用することで廃棄物削減、環境負荷の低減に寄与できる。
以下、本発明のPPS紙の製造方法について詳細に説明する。
本発明におけるPPS樹脂とは、一般式(1)で示される繰り返し単位を主要構成単位とする重合体である。
Figure 2009084713
(Rは、水素、ハロゲン、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基、芳香族置換基で置換された脂肪族置換基の少なくともいずれか1つを表す。)
また以下の一般式(2)〜(8)で示される繰り返し単位を共重合させても良いが、耐熱性の観点からは一般式(1)で示される繰り返し単位を70モル%以上、更には90モル%以上含むことが好ましい。
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
(Rは、水素、ハロゲン、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基、芳香族置換基で置換された脂肪族置換基のいずれかを表し、R’は、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基を表す。)
置換基RおよびR’は、水素または炭素数1〜4の脂肪族置換基が好ましく、具体例としては水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。中でも好ましいのは、水素、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基であり、さらに好ましいのは、水素である。
また、本発明で用いるPPS樹脂は、その溶融粘度が5〜5000Pa・s(320℃、せん断速度1,000sec−1)の範囲が好ましい。
本発明でいう短繊維(A)とは上記PPS樹脂から紡糸、好ましくは溶融紡糸および延伸により得られる繊維をステープル状にカットした繊維を指す。短繊維(A)の長さは紙の強度向上の目的で1mm以上が好ましく、抄紙原液中での繊維同士の絡まりを抑制する目的で5cm以下が好ましい。より好ましくは5mm以上2cm以下である。
短繊維(A)の直径は抄紙原液中での繊維の分散性を向上し、地合いの良い紙を得る目的で25μm以下が好ましい。より好ましくは15μm以下、最も好ましくは10μ以下である。なお、現行の直接紡糸法によって得られる繊維直径の下限としては5μm程度である。
短繊維(A)は紙の強度を向上させるため高配向であることが好ましい。繊維の配向は複屈折率(Δn)で示すことができ、本発明においては0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.15以上がさらに好ましい。Δnは高ければ高いほど強度は向上するが、到達可能な上限は0.28程度である。なお本発明で用いるΔnとは実施例記載の方法により求められた値を指す。
短繊維(A)は紙の強度向上の目的で捲縮を有していてもよい。紙の強度向上と抄紙原液中での繊維同士の絡まりを抑制する目的で捲縮数としては4山/25mm以上、18山/25mm以下が好ましい。
本発明におけるオリゴマー(B)とは上記PPS樹脂と同様の構造を有した、直鎖状および/または環状オリゴマーである。
オリゴマー(B)の重量平均分子量は800以上好ましくは1000以上、より好ましくは1200以上、さらに好ましくは10,000以上である。また、その上限は20,000であり、好ましくは18,000以下、より好ましくは17,000以下、さらに好ましくは15,000以下である。重量平均分子量が800未満では機械的強度が極めて乏しくなり、その製造も難しく工業的使用には適さない。重量平均分子量が20,000を越える重合物は工業的使用には適するが、本発明の主たる目的は、PPS樹脂を重合し、重合後徐冷することにより顆粒状の高分子量のPPS樹脂を得た際に副生する、低分子量のPPSオリゴマーの有効活用であり、このようにして副生するPPSオリゴマーの重量平均分子量の上限はおよそ20,000である。
オリゴマー(B)は重合時のモノマー比率を制御することにより、所望の重量平均分子量を有するPPSオリゴマーを重合して得ることも可能であるが、本発明においてはPPS樹脂を重合し、重合後徐冷することにより顆粒状の高分子量のPPS樹脂を得た際に副生する、低分子量のPPSオリゴマーを用いることが好ましい。従来廃棄されてきた副生物のオリゴマーを再利用することで廃棄物削減、環境負荷低減を図ることができる。
PPS重合でのオリゴマーの製造(副生)およびオリゴマーの回収については公知の手法を採用することができ、例えば特許文献4第9〜12頁記載の手法を好適に用いることができる。すなわち前工程として有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去し、次の重合反応工程では有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を重合し、重合反応終了後、徐冷して顆粒状の高分子量PPS樹脂を析出させ、次の回収工程にて顆粒状のPPS樹脂、PPSオリゴマー、有機極性溶媒、水、ハロゲン化アルカリ金属塩を含むスラリーからPPSオリゴマーを回収する。
回収工程の詳細は、まずスラリーを有機溶媒で希釈し、次に濾過による固液分離で顆粒状のPPS樹脂を回収する。この際、顆粒状のPPSのみを分別するためフィルターは10メッシュ(目開き1.651mm)〜200メッシュ(目開き0.074mm)を用いることが好ましい。次に濾液である回収スラリーを常圧または減圧下にて加熱し、有機極性溶媒を除去する。その際の温度は水分も除去でき、PPSオリゴマーが融解しない温度である140℃〜250℃が好ましい。次に有機溶媒除去後の残留物に水を添加し、水スラリー化した後、濾過等の方法で、少なくとも残存有機極性溶媒、ハロゲン化アルカリ金属塩、場合により一部の副生物及び重合助剤を除去しPPSオリゴマーを得る。このPPSオリゴマーを更に1回以上水スラリー化し、濾過することは、より純度の高いPPSオリゴマーを得る上で有効な方法である。
本発明におけるオリゴマー(B)と短繊維(A)の総重量に対する(B)の割合は用途に応じて任意に選択可能であるが、10重量%以上95重量%以下であることが好ましい。オリゴマー(B)10重量%以上とすることで短繊維(A)間に存在するオリゴマー(B)により短繊維(A)間の摩擦が大きくなり、抄紙後の基材からの剥がれが良好となる。また、オリゴマー(B)を95重量%以下とすることで紙中での短繊維(A)同士の絡み合いによる紙力が向上し、抄紙後に基材から剥がそうとする際の形態安定性が向上する。
上記の範囲内でオリゴマー(B)の混率を多くすると、短繊維(A)間をオリゴマー(B)が充填するため、熱プレス後の紙の密度が向上し通気度が低い紙を得ることができる。またオリゴマー(B)の混率を少なくすると、熱プレス後の短繊維(A)同士の結着点が少なくなり、十分な紙力を有しながら密度が低く、通気度の高い紙を得る。例えば、耐熱ワイパー用途においては汚れを取り込む目的で繊維間隙は多いほうが好ましいためオリゴマー(B)の添加量は10重量%以上50重量%以下が好ましい。また、電気絶縁紙用途やプリント回路基板用途においては電気絶縁性を向上する目的で繊維間隙が少ないほうが好ましく、オリゴマー(B)の添加量としては50重量%以上95重量%以下が好ましい。
本発明においては、オリゴマー(B)と短繊維(A)を水に分散させた抄紙原液を抄紙する。このような方法は一般に湿式抄紙法と呼ぶが、本発明においては湿式抄紙法とすることでオリゴマー(B)の凝集を防ぎ、短繊維(A)との均一な混合が可能となる。一方で、水への分散を行なわない乾式抄紙法においてはオリゴマー(B)が凝集した状態で短繊維(A)に付着してしまうため、均一な紙を得ることが困難である。
抄紙原液の調製手順としては、オリゴマー(B)、短繊維(A)それぞれを水に分散させた液を混合しても、予めオリゴマー(B)と短繊維(A)を混ぜた状態で水に分散しても良い。分散時に起こる、オリゴマー(B)と短繊維(A)の擦れ、フィブリル化、潰れなどのダメージを最小限にする目的でオリゴマー(B)、短繊維(A)を予めそれぞれ水に分散させた液を混合して抄紙原液を得ることが好ましい。水分散させる方法としては例えばナイアガラビーター、リファイナー、パルパーなど、各種ブレンダー、ラボ用粉砕器やバイオミキサー、PFI叩解機、撹拌子、撹拌翼など各種撹拌機、叩解機を好ましく用いることができる。分散時に起こるオリゴマー(B)と短繊維(A)のダメージを最小限にし、得られる紙の品質を保つ目的で、これら手法のうち比較的剪断力が小さい状態で分散させることが可能なパルパーやブレンダーの使用がより好ましい。
抄紙原液の濃度としては濾水時間の面から0.01重量%以上、分散性の面から10重量%以下が好ましい。また、抄紙原液にはオリゴマー(B)と短繊維(A)の分散性向上の目的で各種分散剤を添加することが好ましい。
分散剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が挙げられ、紙の用途に合わせて適宜選択可能である。たとえば電気絶縁紙用途においては、含有イオンによる絶縁劣化を防ぐ目的でノニオン系の界面活性剤の使用が好ましい。ノニオン系の界面活性剤としては、PPSとの相性からポリグリコールやポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどが好ましい。分散剤は水への溶解を速やかに行なう目的で予め希釈して0.1重量%以上10重量%以下の水溶液として用いることが好ましい。分散剤の添加時期はオリゴマー(B)、短繊維(A)の水分散前でも、水分散と同時でも、あるいは水分散後でも良い。このうち、水分散前に添加することで分散剤の成分がオリゴマー(B)および短繊維(A)の表面に多量付着し、水への均一な分散が容易となるため最も好ましい。
なお抄紙原料としては上記した短繊維(A)、オリゴマー(B)の他、公知のPPSバインダー(C)を用いても良い。バインダー(C)としてはPPS未延伸糸、PPSナノファイバー、PPS樹脂顆粒(重合により得られるPPS樹脂)およびその粉砕品を用いることができる。バインダー(C)の添加量は本発明の趣旨である工程の煩雑さ、抄紙収率改善による生産性の向上、廃棄物の削減を損なわないため短繊維(A)とオリゴマー(B)の総重量に対し50重量%以下とすることが好ましく、40重量%以下とすることがより好ましい。
抄造工程としては連続工程では丸網抄紙機や長網抄紙機、バッチ工程ではシートマシンなどを使った公知の湿式抄造技術が好ましく用いられる。
本発明においては、抄紙して得られた紙を熱プレスすることでオリゴマー(B)により短繊維(A)間を結着する。ここで本発明はPPSオリゴマー(B)と短繊維(A)の融点の違いを利用して結着を行なう点に特徴がある。
結着を進めるためには短繊維(A)、オリゴマー(B)を加熱、流動させることが効果的だが、融点まで加熱すると繊維構造の変化(結晶融解、配向緩和)が進み繊維の強度が低下し、得られる紙の紙力が低下してしまう。ここで、オリゴマー(B)は分子量が小さいため末端効果により短繊維(A)より融点が低下する。そこで本発明においては低温でプレスすることで、オリゴマー(B)を流動変形させ結着剤として作用させる一方、短繊維(A)は繊維構造を維持できるため高い紙力を保持できるのである。なお本発明で用いる融点は実施例記載の方法により求められる値である。
熱プレスの方法としては平板プレス、カレンダープレスを用いることができ、連続で処理可能なカレンダープレスがより好ましく用いられる
熱プレス温度は100℃以上250℃未満である。100℃以上でのプレスによりオリゴマー(B)を変形させ短繊維(A)間を結着させ紙力向上が可能である。また250℃未満でのプレスにより短繊維(A)の繊維構造変化による紙の強度劣化が抑制される他、オリゴマーの融解によるロールへの貼りつきが抑制できる。なお、この範囲内でも温度を上げることでオリゴマー(B)の流動性を高め、短繊維(A)間の接着を促進して紙の強度を向上することが可能であるが、短繊維(A)の構造変化も促進されるため、プレス温度のより好ましい範囲としては125℃以上245℃以下、最も好ましくは150℃以上240℃以下である。
平板プレスの際のプレス時間としては紙面全体に熱を伝え変形を可能とし、紙の熱劣化を避けるため1分間以上30分未満、より好ましくは3分以上10分未満が好ましい。また、カレンダープレスの際のプレス回数としては同様の理由から2回以上10回未満が好ましい。なお、平板プレスにおけるプレス圧力は変形を可能とし、かつ過大な装置となることを避ける目的で変形を可能とし、かつ過大な装置となることを避ける目的で0.1MPa以上100MPa以下の範囲が好ましい。特に電気絶縁紙用途、プリント回路基板用途など高密度の紙が要求される際には1MPa以上100MPa以下でのプレスが好ましい。
カレンダープレスの際のプレス速度としては生産性の面から1m/分以上、ロール上での紙の加熱時間を十分とる目的で100m/分以下の範囲が好ましい。なお、カレンダープレスにおけるプレス圧力は0.01kN/cm以上10kN/cm以下が好ましい。特に電気絶縁紙用途、プリント回路基板用途など高密度の紙が要求される際には0.1kN/cm以上10kN以下でのプレスが好ましい。
このようにして得られるPPS紙は、このままでも優れた耐薬品性を有し工業的に利用できるが、PPSオリゴマーは揮発分を含んでいるため、高温下で用いる用途については揮発分を低下させる必要がある。揮発分を低減するためには熱酸化処理を行うことが好ましい。
熱酸化処理はオリゴマーの状態で行っても良いが、オリゴマーの濾別、乾燥は設備負荷を伴うため、混抄紙とした後に紙の状態で行うことが設備負荷の低減、酸化処理効率向上の観点で好ましい。
熱酸化処理とは気相酸化性雰囲気下での加熱処理することであり、雰囲気としては効率よく酸化を進行させるため酸素濃度5体積%以上、更には8体積%以上とすることが好ましく、発火等の恐れがないよう上限は50体積%程度とすることが望ましい。中でも大気雰囲気とすることは低コスト化の点で最も好ましい。処理温度は酸化反応が進行し、かつPPSが融解しない150〜260℃が好ましい。酸化速度を速めるためには処理温度は高いほうが好ましいが、融点付近まで温度を高めると構造緩和により紙力が低下するため処理温度は170〜250℃の範囲がより好ましい。また処理時間も同様に十分な熱酸化を行うためには0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上であり、構造緩和による紙力低下を防ぐためには100時間以下、より好ましくは50時間以下、さらに好ましくは25時間以下である。
紙の状態での熱酸化処理はロール間に加熱炉を設け、紙を連続的に走行させながら行っても良いが、設備負荷軽減のためにはロールあるいはカットした紙の状態で加熱炉を用いバッチ式の処理を行うことが好ましい。
熱酸化処理を行うことで揮発分が低減できる。揮発分の低減は実施例記載の方法により求められる重量減少率で示すことができ、本発明においては、PPS樹脂の室温から20℃/分で昇温した際の、300℃における重量減少量が1.0重量%以下、好ましくは0.8重量%以下であることが好ましい。
次に、本発明のPPS紙について説明する。
本発明の紙の厚みは紙の十分な強度を得る目的で、1μm以上1mm以下が好ましい。紙の引張強度は取り扱い性から30N/15mm以上が好ましく、50N/15mm以上がより好ましい。また坪量としては10g/m以上、400g/m以下が好ましい。なお、本発明でいう坪量とは実施例に記載する方法により求められる値である。本発明の紙の密度としては紙の強度を保つ目的で0.3g/cm以上1.3g/cm以下が好ましい。
次に、本発明のPPSO紙の製造方法について詳細に説明する。
本発明においては前記したPPS紙の製造法により作製されたPPS紙を、酸化剤を含む液体存在下で酸化反応処理する。熱プレスにより結着させたPPS紙を酸化することにより紙力が高く、ピンホールなどの欠陥が少ない緻密なPPSO紙が得られる。欠陥が少ないことは電気絶縁紙、プリント回路基板用など高い電気絶縁性が要求される用途において重要な特性である。
本発明において、酸化反応処理に使用される液体は、PPS紙の形態を保持するものであれば任意に用いることができ、酸化反応処理に用いる酸化剤を均一に溶解するものであることが好ましい。中でも、反応効率を高める目的で有機酸、有機酸無水物または鉱酸を含む液体であることが好ましい。有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸などが挙げられる。有機酸無水物としては、下記一般式(9)で示される酸無水物が挙げられる。
Figure 2009084713
(R、Rは、それぞれ炭素数1〜5の脂肪族置換基、芳香族置換基、芳香族置換基で置換された脂肪族置換基のいずれかを表し、RおよびRは互いに連結して環状構造を形成していてもよい。)
具体例としては無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水安息香酸、無水−クロロ安息香酸などが挙げられる。鉱酸の具体例としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸などが挙げられる。酸化剤の活性を高める目的で、液体として好ましいのは、水、酢酸、トリフルオロ酢酸、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、硫酸、塩酸であり、さらに好ましいのは、水、酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸である。中でも特に好ましいのは、水、酢酸および硫酸が混合された液体である。その混合組成比としてより好ましいのは、水:5重量%以上20重量%以下、酢酸:60重量%以上90重量%以下、硫酸:5重量%以上20重量%以下であり、この範囲の濃度において特に紙の諸物性を損なうことなく、かつ安全性、処理効率、コストに優れる酸化反応処理が可能である。
反応に使用される酸化剤としては液体に均一に溶解する目的で無機塩過酸化物および過酸化水素水から選ばれる少なくとも1つが好ましく、無機塩過酸化物および過酸化水素水から選択される一種以上と、有機酸および有機酸無水物から選択される一種以上との混合物から形成される過酸化物(過酸を含む)であっても構わない。酸化剤として用いる無機塩過酸化物としては、過硫酸塩類、過ホウ酸塩類、過炭酸塩類が好ましく挙げられる。ここで塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、なかでも溶解性の面からナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましい。その具体例としては、過硫酸塩としては過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過ホウ酸塩としては過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過ホウ酸アンモニウム、過炭酸塩としては過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなどが挙げられる。過酸化水素水と、有機酸または有機酸無水物との混合物から形成される過酸の具体例としては、過ギ酸、過酢酸、トリフルオロ過酢酸、過プロピオン酸、過酪酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸などが挙げられる。
酸化剤の濃度としては、処理効率の面から0.1重量%以上、安全性の面から20重量%以下が好ましい。この範囲の濃度において良好な反応結果を与え、かつ安全性の高いプロセスが構築できる。より好ましくは1〜15重量%であり、さらに好ましくは5〜10重量%である。
酸化反応処理の温度としては、処理効率の面からは処理温度は高いことが好ましいが、酸化剤の分解促進による暴走反応による爆発を避けるなど安全性の面からは、使用される液体の沸点以下の温度でできるだけ低温で行うことが好ましい。具体的には、用いる液体の沸点により異なるが、処理効率と安全性を両立する目的で液体の沸点が許容する範囲内において、0℃〜100℃の間、中でも30℃〜80℃の間が好ましく、特に40℃〜70℃が好ましい。例えば、液体が酢酸の場合には50℃〜70℃の酸化反応処理温度が好ましい。
酸化反応処理時間は、反応温度と酸化剤の濃度により左右されるため一概にはいえないが、安全性の面から処理時間は1時間以上、またコスト面から8時間以下に制御することが好ましい。
なお、酸化反応処理後の紙は直ちに水洗し酸化反応処理に使用した薬液を除くことが安全性の面また酸化反応処理に続く工程における装置保護の面から好ましい。
酸化反応処理を行うための処理方式に特に制限はないが、バッチ式または連続式、あるいはそれらを組み合わせたものも採用できる。
ここで、バッチ式とは、任意の反応容器内にPPS紙および酸化剤の含まれる液体を投入し、任意の濃度、温度、時間で酸化反応処理した後、PPSO紙または液体を取り出す処理方式を意味する。連続式とは、任意の形態で固定化したPPS紙に対して、酸化剤の含まれる液体を流通または循環させて酸化反応処理する方法、あるいは、酸化剤の含まれる液体を任意の反応容器内に投入し、そこへPPS紙を連続的に流通または循環させて酸化反応処理する方法を意味する。
本発明におけるPPSOとは下記一般式(10)で示される繰り返し単位を主要構成単位とする重合体である。
Figure 2009084713
(R’’は、水素、ハロゲン、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基、芳香族置換基で置換された脂肪族置換基のいずれかを表し、分子間のR’’同士が互いに連結して架橋構造を形成していてもよい。またR’’はPPSOからなるポリマー鎖でもよい。R’’’はPPSOからなるポリマー鎖を示し、mは0〜3のいずれかの整数を表す。また、Xは0、1、2のいずれかを表す。)
また以下の一般式(11)〜(17)で示される繰り返し単位が共重合しても良いが、耐熱性の観点からは一般式(10)で示される繰り返し単位を70モル%以上、更には90モル%以上含むことが好ましい。
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
Figure 2009084713
(R’’は、水素、ハロゲン、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基、芳香族置換基で置換された脂肪族置換基のいずれかを表し、R’’’’は、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基を表し、分子間のRまたはR’同士が互いに連結して架橋構造を形成していてもよい。また、R’’、R’’’’はPPSOからなるポリマー鎖でもよい。R’’’はPPSOからなるポリマー鎖を示し、mは0〜3のいずれかの整数を表し、nは0〜2のいずれかの整数を表す。また、Xは0、1、2のいずれかを表す。)
また、一般式(10)で示される繰り返し単位のうち、Xが0、1、2である構造単位中に占める、Xが1または2である構造単位の比率は、耐熱性を高めるためには0.5以上0.9以下が好ましく、さらに好ましくは0.7以上0.9以下である。
また、本発明のPPSOは実質的に不融性である。不融性であることは示差走査熱量計(DSC)の測定において融解ピークが実質的に認められないことで示される。実質的に融解ピークが認められないとは、融解ピークにおける融解熱量が具体的には15J/g以下、好ましくは10J/g以下、より好ましくは5J/g以下の融解熱量を有するPPSOを意味し、この範囲において耐熱性、耐薬品性に関して特に優れた特性を有する。これは、紙の状態で高温下でも十分な強度を保持するだけでなく、融解によるピンホールの発生に伴う絶縁破壊を防ぐ上で重要な要素になる。なお本発明で用いる融解熱量とは実施例記載の手法により求められた値を指す。
本発明においては酸化反応処理をした後に平滑化処理を施しても構わない。本発明でいう平滑化処理とは、平板間またはロール間に紙面を挟み圧力を加える工程をいう。酸化反応処理においては紙が収縮するのに伴い繊維間に微細な空隙が発生するが、平滑化処理を行なうことで、空隙が潰れて紙の強度が向上する。また、平滑化処理によって酸化反応処理に伴い発生する紙の毛羽立ちや凹凸が低減でき、表面の平滑性が向上し紙の品位が向上する。
本発明における平滑化処理には平板プレス、ニップロール、カレンダープレスを用いることができ、連続で処理可能なニップロール、カレンダープレスがより好ましく、加熱可能なカレンダープレスが最も好ましく用いられる。なお、平滑化処理は酸化反応処理後に紙が濡れた状態で行なっても、乾燥した後に行なっても良い。また平滑化処理は酸化反応処理と連続した装置構成で行なっても良いし、酸化反応処理の後に一度巻き取った状態にし、これを再度引き出して別途平滑化処理を行なっても良い。
該平滑化処理における好ましい温度範囲としては紙の変形を容易とし、またPPSOの熱劣化や熱分解による紙の強度劣化を避ける目的で100℃以上400℃未満の温度が好ましい。同様の理由からより好ましくは150℃以上350℃以下、最も好ましくは200℃以上300℃以下である。
該平滑化処理における平板プレスの際のプレス時間としては紙面全体に圧力、熱を伝え変形を可能とし、かつ紙の熱劣化を避けるため平板プレスの場合は1分以上30分未満、より好ましくは3分以上10分未満が好ましい。また、ニップロール、カレンダープレスの際のプレス回数としては1回でも良いが、同様の理由から2回以上10回未満が好ましい。なお、平板プレスにおけるプレス圧力は変形を可能とし、かつ過大な装置となることを避ける目的で0.1MPa以上100MPa以下の範囲が好ましい。特に電気絶縁紙用途、プリント回路基板用途など高密度の紙が要求される際には1MPa以上でのプレスが好ましい。
カレンダープレスの際のプレス速度としては生産性の面から1m/分以上、ロール上での紙の加熱時間を十分とる目的で100m/分以下の範囲が好ましい。なお、カレンダープレスにおけるプレス圧力は変形を可能とし、かつ過大な装置となることを避ける目的で0.01kN/cm以上10kN/cm以下が好ましい。特に電気絶縁紙用途、プリント回路基板用途など高密度の紙が要求される際には0.1kN/cm以上でのプレスが好ましい。
次に、本発明のPPSO紙について説明する。
本発明の紙の厚みとしては紙の十分な強度を得る目的で、1μm以上1mm以下が好ましい。紙の引張強度は取り扱い性から30N/15mm以上が好ましく、50N/15mm以上がより好ましい。紙の坪量としては10g/m以上、400g/m以下が好ましい。密度としては紙の強度を保つ目的で0.3g/cm以上1.3g/cm以下が好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
A.融点
サンプル約10mgを精秤し、示差走査熱量計(TA Instruments社製DSC2920)で窒素下、昇温速度10℃/分で昇温し、観察される主吸熱ピークのピーク温度を融点とした。
B.粘度
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、ズリ速度1000sec−1での見かけ粘度を測定した。
C.分子量測定
溶離液調製
1−クロロナフタレン(以下1−CNと略す)に活性アルミナ(1−CNに対して1/20重量)を加え、6時間攪拌した後、G4グラスフィルターで濾過した。これを超音波洗浄機にかけながらアスピレーターを用いて脱気した。
サンプル調製
(1)PPSサンプル約5mg、1−CN 約5gをサンプル瓶に計り取った。
(2)210℃に設定した高温濾過装置(センシュー科学製SSC−9300)に入れ、5分間(1分間予備加熱、4分間攪拌)加熱した。
(3)高温濾過装置から取り出し、室温になるまで放置した。
GPC測定条件
装置 : センシュー科学 SSC−7100
カラム名 : センシュー科学 GPC3506×1
溶離液 : 1−クロロナフタレン(1−CN)
検出器 : 示差屈折率検出器
検出器感度 : Range 8
検出器極性 : +
カラム温度 : 210℃
プレ恒温槽温度 : 250℃
ポンプ恒温槽温度 : 50℃
検出器温度 : 210℃
サンプル側流量 : 1.0mL/分
リファレンス側流量 : 1.0mL/分
試料注入量 : 300μL
検量線作成試料 : ポリスチレン
D.熱減量率
熱重量示差熱分析装置(セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA6200)を用い、乾燥サンプル量約10mg、窒素雰囲気下で室温から20℃/分で昇温し、300℃における重量減少率を求めた。
E.複屈折率
オリンパス社製BH−2偏光顕微鏡により、Na光源で波長589nmにてコンペンセーター法により単糸のレターデーションと糸径を測定することにより求めた。
F.融解熱量
サンプル約10mgを精秤し、示差走査熱量計(TA Instruments社製DSC2920)で窒素下、温度プログラムを50〜340℃(50℃で1分間保持、50℃から20℃/分で340℃まで昇温、340℃で1分間保持、続いて20℃/分で100℃まで降温、100℃で1分間保持、続いて20℃/分で340℃まで再昇温)と設定し、測定した時の再昇温時の融解熱量を求めた。
G.ふるい残分
JIS−K−0069(1992年改正)に準じて、JIS−Z−8801−1(2006年改正)に記載された規格を満たす目開き500μm、枠寸法が直径200mm、高さ45mmの平織り試験ふるいを受け皿の上に重ね、試料25gをふるいに投入して蓋をし、電磁振動式篩分器MS−200((株)伊藤製作所製)に装着し、振幅2mmで毎分3000回の振動を連続で10分間加えてふるい分けを実施した。ふるい分け後のふるい上およびふるい下の試料重量の合計重量と、始めにふるいに投入した試料重量の差(試料損失量)が始めに投入した試料重量の2%以内であることを確認し、ふるい残分を次の式によって算出し、少数点第2位を四捨五入した値を得た。
Figure 2009084713
ここに、A:ふるい残分(%)、B:ふるい上の試料重量(g)、S:ふるい上及びふるい下の試料重量の合計重量(g)である。なお、試料損失量が2%を超えた場合は試料を改めてふるい分けを実施し、ふるい残分を算出した。
H.紙の厚み
JIS−L−1906(2000年改正)の試験法に準じて荷重10kPaで、23℃、相対湿度50%下で紙面の角4点と中央部1点の計5箇所の厚みを0.001(mm)のオーダーまで測定した。5箇所で測定した結果の平均の値を求め、0.1μmのオーダーを四捨五入した値を厚みL(μm)とした。
I.紙の坪量、密度
紙の重量(g)を23℃、相対湿度50%で測定し、紙の面積(m)で除して、有効数字2桁で坪量(g/m)を算出した。また、それぞれcmの単位に換算した坪量の値を上記H.項で測定した厚みLで除して有効数字2桁で密度(g/cm)を算出した。
J.紙の引張強度
23℃、相対湿度50%の雰囲気下でオリエンテック社製テンシロンUCT−100を用いて、試料幅15mm、初期長20mm、引張速度20mm/分で最大点荷重の値を測定し、5回の測定の平均値を有効数字2桁で求め、引張強度(N/15mm)とした。
K.地合い
熱プレス後の紙を幅1cm、長さ20cmの短冊状に切り、この紙片から直径6mmの円形の紙片を20枚サンプリングした。得られた紙片の重量を0.01mgの桁まで測定して平均値、標準偏差を求めた。質量分布の値として標準偏差を平均値で除した値を求め、以下のように評価した。
○(良好):質量分布の値が0.060以下
×(不良):質量分布の値が0.060より大きい
L.結着剤の保持性
抄紙直後の未乾燥紙を15度、30度の2段階で傾斜し、紙からの結着剤の脱落の有無を確認した。結着剤の脱落が無い場合は、乾燥後の紙についても30度傾斜して結着剤の脱落を確認し、結着剤の保持性を以下のように評価した。
○(良好):未乾燥紙、乾燥紙共に脱落なし
△(可) :未乾燥紙にて15度傾斜で脱落なし、30度傾斜で脱落あり
×(不良):未乾燥紙にて15度傾斜で脱落あり
M.自己支持性
乾燥後の紙を基布から剥がす際のはがれの状態について確認し、以下の評価を行った。
○(良好) :はがれ良好
△(やや難):はがそうとすると紙の一部が破れるまたは基布に残る
×(不良) :はがそうとすると紙が形態を保たずに崩れる
[参考例1](フラッシュ法による粉末状PPSの作成)
攪拌機及び底にバルブの付いた容量1Lのオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム118g、96%水酸化ナトリウム42.9g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)199g、酢酸ナトリウム27.0g、イオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水210gおよびNMP2gを留出した後、オートクレーブを160℃に冷却した。次に、p−ジクロロベンゼン147g、NMP69gを加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで攪拌しながら200℃から274℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、274℃で50分保持した後、282℃まで昇温した。次に、オートクレーブ底部のバルブを開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく攪拌して大半のNMPを除去し、PPSと塩類を含む固形物257gを得た。
得られた固形物にイオン交換水を2.5kg添加して80℃に加熱し、200rpmで攪拌しながら30分間洗浄し、吸引ろ過により固形分を集める操作を合計4回繰り返し、塩類を除去し、98gのPPSを得た。得られたPPSを120℃で1時間乾燥し、更に80℃で24時間真空乾燥して粉末状のPPS樹脂98gを得た。この粉末状PPSの重量平均分子量23,500、融点は282℃、温度320℃での粘度は20Pa・s、熱減量率は0.7重量%であった。
なお、この粉末状PPSのふるい残分は2.4%であり、粒径500μm以上の粉末を微量含んでいた。
[参考例2](PPSオリゴマーの作製)
撹拌機付きの70Lオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267g、96%水酸化ナトリウム2957g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11435g、酢酸ナトリウム2583g、イオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。次にp−ジクロロベンゼン10235g、NMP9009gを加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、顆粒状のPPS樹脂、PPSオリゴマー、有機極性溶媒、水、ハロゲン化アルカリ金属塩、重合助剤、副生物を含むスラリー(S1)を得た。
このスラリー(S1)を26300gのNMPで希釈し希釈スラリー(S2)を得た。70℃に加熱した希釈スラリー(S2)200gをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、PPS樹脂と回収スラリー(S3)150gを得た。濾過時間は9分であった。
次に回収スラリー(S3)をロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下160℃で1時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
この固形物にイオン交換水180g(回収スラリー(S3)の1.2倍量)注ぎ70℃で30分撹拌し、再スラリー化した。このスラリー(S4)を濾過面積9.6cm2(目開き10〜16μm)のガラスフィルターで吸引濾過し、重量平均分子量13,600のPPSオリゴマーを得た。このPPSオリゴマーの揮発分を測定したところ、熱減量率は1.7重量%であった。また融点は266℃であった。
[参考例3](PPS未延伸糸の作成)
融点282℃、温度320℃での粘度200Pa・sのPPS樹脂からなるペレットを使用し、プレッシャーメルター型紡糸機を用い、紡糸温度320℃にて口金孔径0.1mm、48ホールの口金を用い、吐出量14.4g/分の条件で溶融吐出した。これを冷却風温度25℃、風速25m/分の条件で冷却し、収束剤として油剤を塗布した後、紡糸速度1000m/分で引き取り、144dtex48フィラメントの未延伸糸を作成した。この糸の重量平均分子量は46,100、融点は282℃であった。また直径は17μm、複屈折率は0.012であり熱減量率は0.2重量%であった。この糸をECカッターにて6mm長にカットしてPPS未延伸糸を得た。このPPS未延伸糸のふるい残分は99.9%であった。
[参考例4](PPSナノファイバーの作成)
融点282℃、温度320℃での粘度200Pa・sのPPS樹脂を使用し、融点が252℃、温度320℃での溶融粘度100Pa・sのポリエチレンテレフタレートを40:60(重量比)の割合で300℃の2軸混練機で混練しアロイポリマーのペレットを得た。このアロイポリマーのペレットを、エクストルーダー型の単成分紡糸機を用い、紡糸温度320℃にて口金孔径0.3mm、36ホールの口金を用い、吐出量35g/分の条件で溶融吐出した。これを冷却風温度25℃、風速25m/分の条件で冷却し、収束剤として油剤を塗布した後、紡糸速度1000m/分で引き取り、350dtex36フィラメントのPPSアロイ未延伸糸を得た。さらにこの未延伸糸を第1ホットローラー温度が90℃、第2ホットローラー温度が150℃のローラー間で3.5倍延伸して100dtex36フィラメントのPPSアロイ延伸糸を得た。
この延伸糸をカセ状で、温度98℃、濃度10%の水酸化ナトリウム水溶液に3時間浸してポリエチレンテレフタレートを溶出除去しPPSの極細繊維集合体を得た。この極細繊維集合体の重量平均分子量は46,000、融点は287℃であった。また熱減量率は0.2重量%であった。
この極細繊維集合体を2mmの長さにカットしたもの30gを、熊谷理機工業製の試験用ナイアガラビーター(No.2505)を使用して、水20L中で5分間叩解した後、熊谷理機工業製の自動式PFIミル(No.2511−B)を使用して叩解荷重9kg、叩解間隙0.2mm、ロール回転回数9000回の条件で叩解を行った。得られた叩解繊維は水を多量含んでおり、乾燥重量の測定から繊維濃度は10wt%であった。
得られた叩解繊維の形態を走査型電子顕微鏡で確認したところ、直径が数10〜数100nmでアスペクト比が1:10以上のPPSナノファイバーが単独または束状となって存在していた。
[参考例5](PPS短繊維の作成)
参考例3で得たPPS未延伸糸を95℃の熱水浴で3.0倍に延伸し、48dtex48フィラメントの延伸糸を得た。延伸糸の重量平均分子量は46,000、融点は286℃、直径は10μm、複屈折率は0.202、熱減量率は0.2重量%、捲縮数は13山/25mmであった。この延伸糸をECカッターにて6mmの長さに切断し、PPS短繊維を得た。
実施例1
参考例2で作成したオリゴマー(B)を2.5g計量し、分散剤としてノイゲンEA−87(第一工業製薬社製)の0.1重量%水分散液を20滴加え、さらに水200mLを添加してオリゴマー分散液を得た。
PPS短繊維(A)として参考例5で得たPPS短繊維2.5gをそれぞれ1g、1g、0.5gに分け、それぞれに1リットルの水と分散剤としてノイゲンEA−87(第一工業製薬社製)の1.0重量%水分散液2滴を加え、ブレンダー(オスター社製「オスターブレンダーOB−1」)に投入し、撹拌速度10300rpmで10秒間撹拌して得た液を全て合わせたものを短繊維分散液として得た。
オリゴマー(B)の分散液と短繊維(A)の分散液を混合し、分散液の全量が3300gとなるように水を追加し、表1の重量比、原液濃度の抄紙原液を得た。抄紙原液は短繊維(A)間の絡まりがなく分散性は良好であった。
熊谷理機工業製の実験用抄紙機(25cm角のシート形成可能な角形シートマシン)の120メッシュの金属製の網上に基布として坪量40g/mの東レ社製「トルコン(登録商標)」ペーパーを重ね、この上に抄紙しPPS紙を得た。得られた紙の状態は均一で良好であった。
得られた未乾燥紙を120℃で2時間乾燥させて乾燥紙を得た。この紙の結着剤保持性は極めて良好であり、自己支持性についても良好であった。基布から剥がした紙を鉄ロールとペーパーロールからなるカレンダー加工機に通した。カレンダー条件は、温度230℃、荷重は25cm幅のペーパーに対して30kNで圧力1.2kN/cm、ロール周速度2m/分で、2回処理を行なった。得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度、熱減量率は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.040であり地合い良好であった。
比較例1
オリゴマー(B)を用いず、その他結着剤として参考例3で得たPPS未延伸糸2.5gを使用し、実施例1と同様の手順で表1の重量比、原液濃度の抄紙原液を得た。抄紙原液には繊維同士が絡まった塊が浮遊しており、分散性は悪かった。この原因としては、PPS未延伸糸が繊維状であるためにPPS短繊維と絡まり易いため抄紙原液中で均一に分散可能な濃度上限値を超えたものと推測する。この抄紙原液を使用して実施例1と同様にして抄紙、乾燥を行なったところ得られた紙には目付斑が生じ、厚みの薄い部分と厚い部分が存在していた。また乾燥紙の結着剤保持性、自己支持性も表1に示すが、自己支持性にやや問題があった。この紙を実施例1と同様に乾燥、プレスを行なった。得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度、熱減量率は表1に示す通りであった。プレス温度が結着剤(PPS未延伸糸)に対してはやや低いためか密度が小さく、強度も低いものであった。また、紙の質量分布の値は0.070であり地合い不良であった。
比較例2
オリゴマー(B)を用いず、その他結着剤として参考例4で得た叩解繊維25g(水を含むためPPSナノファイバーの純分は2.5g)を使用し、実施例1と同様の手順で表1の重量比、原液濃度の抄紙原液を得た。抄紙原液には繊維同士が絡まった塊が浮遊しており、分散性は悪かった。この原因としては、PPSナノファイバーが繊維状であるためにPPS短繊維と絡まり易いため抄紙原液中で均一に分散可能な濃度上限値を超えたものと推測する。
この抄紙原液を使用して実施例1と同様にして抄紙、乾燥を行なったところ得られた紙は薄い部分と厚い部分が存在していた。この紙を実施例1と同様にプレスを行なった。得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度、熱減量率は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.077であり地合い不良であった。
比較例3
オリゴマー(B)を用いず、その他結着剤として参考例1で作成した粉末状PPSを使用して実施例1と同様にして分散液を得た。抄紙原液の分散性は良好であった。実施例1と同様にして抄紙、乾燥した。この紙の結着剤保持性は実施例1〜3に比べて劣り、未乾燥紙の15度傾斜により粉落ちが発生した。なお、自己支持性については良好であった。基布から剥がした紙を実施例1と同様の手順でプレスを行なった。得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度、熱減量率は表1に示す通りであった。プレス温度が結着剤(粉末状PPS)に対してはやや低いためか密度が小さく、強度も低いものであった。また、紙の質量分布の値は0.048であり地合い良好であった。
実施例2〜6、比較例4、5
参考例2で得たオリゴマー(B)を表1に記載する量使用し、実施例1と同様の手順でオリゴマー分散液を得た。PPS短繊維(A)として参考例5で得たPPS短繊維を表1記載の添加量とり、これを実施例1のように0.5g〜1gずつに分割して、それぞれに1リットルの水と分散剤としてノイゲンEA−87(第一工業製薬社製)の1.0重量%水分散液2滴を加え、ブレンダー(オスター社製「オスターブレンダーOB−1」)に投入し、撹拌速度10300rpmで10秒間撹拌して得た液を全て合わせたものを短繊維分散液とした。
オリゴマー(B)の分散液と短繊維(A)の分散液を混合し、分散液の全量が13300gとなるように水を追加し抄紙原液を得た。この抄紙原液のオリゴマー(B)と短繊維(A)の重量比率、原液濃度は表1に示すとおりである。抄紙原液の分散性はいずれも良好であった。
これを実施例1と同様に抄紙した。この未乾燥紙を実施例1と同様の手順で乾燥、および熱プレスを行なった。得られた紙の特性は表1に示す通りであった。オリゴマー(B)混率が5重量%である実施例2では自己支持性にやや難があったものの、実施例2〜6の全てにおいて良好な特性を有する紙が得られた。なお本発明の範囲外の比較例4、5において自己支持性について何れも不良であり紙が崩れたため、熱プレスが実施できなかった。
実施例7
参考例2で得たオリゴマー(B)を表1に記載する量使用し、実施例1と同様の手順でオリゴマー分散液を得た。また参考例3で得たPPS未延伸糸も結着剤として表1に記載する量使用し、比較例1と同様の手順で分散液を得た。
PPS短繊維(A)として参考例5で得たPPS短繊維を表1記載の添加量とり、これを実施例1のように0.5g〜1gずつに分割して、それぞれに1リットルの水と分散剤としてノイゲンEA−87(第一工業製薬社製)の1.0重量%水分散液2滴を加え、ブレンダー(オスター社製「オスターブレンダーOB−1」)に投入し、撹拌速度10300rpmで10秒間撹拌して得た液を全て合わせたものを短繊維分散液とした。
オリゴマー(B)、PPS未延伸糸、短繊維(A)の分散液を全て混合し、分散液の全量が13300gとなるように水を追加し抄紙原液を得た。この抄紙原液のオリゴマー(B)とその他結着剤(PPS未延伸糸)、短繊維(A)の重量比率、原液濃度は表1に示すとおりである。抄紙原液の分散性は良好であった。
これを実施例1と同様に抄紙した。この未乾燥紙を実施例1と同様の手順で乾燥、および熱プレスを行なった。得られた紙の特性は表1に示す通りであった。オリゴマーを使用することでPPS未延伸糸のみを結着剤とする場合に比べ、地合などの特性に優れる紙が得られた。
実施例8〜11、比較例6
実施例1と同様にして参考例5で得たPPS短繊維(A)、参考例2で得たオリゴマー(B)を表1記載の添加量使用し、分散液の全量が20000gとなるようにして抄紙原液を得て、さらに抄紙、乾燥を行なった。
得られた乾燥紙を鉄ロールとペーパーロールからなるカレンダー加工機に通し熱プレスを実施した。プレス条件として温度は表1記載の温度、荷重は25cm幅のペーパーに対して120kNで圧力4.8kN/cm、ロール周速度2m/分で2回処理を行なった。得られた紙の特性は表1に示す通りであった。熱プレス温度を高めるにつれ密度が増加し、引張強度が増加することが分かる。なお熱プレス温度が260℃の場合には紙がロールへ貼りつきサンプルが得られなかった。
Figure 2009084713
実施例12
実施例1で得た熱プレス後のPPS紙を、熱風オーブン(ADVANTEC社製FV−650)を用い、空気(大気)雰囲気、温度220℃にて5時間熱酸化処理を行った。処理後のPPS熱酸化紙の熱減量率は0.1重量%であり、処理前(実施例1)の0.9重量%に比べ揮発分が低下した。また得られた紙の厚みは90μm、坪量は79g/m、密度は0.88g/cm、引張強度は40N/15mmであり良好な特性を有していた。
実施例13
実施例1で得た熱プレス後のPPS紙を、あらかじめ混合し60℃に保った99.0%酢酸418g(キシダ化学製)、35%過酸化水素水139g(キシダ化学製)、95%硫酸35g(和光純薬工業製)の酸化剤濃度(過酸化水素濃度)8.2重量%の混合溶液に浸漬させて60℃、2時間酸化反応処理した後、直ちに流水で10分間すすいで薬液を除き、50℃の熱風乾燥機で60分間乾燥し、PPSO紙を得た。このPPSO紙を鉄ロールとペーパーロールからなるロールカレンダー加工機(由利ロール社製)に通し平滑化処理を実施した。熱プレス条件は、温度250℃、荷重は25cm幅の紙に対して120kNで圧力4.8kN/cm、ロール周速度2m/分で、2回処理を行なった。得られたPPSO紙の融解熱量は4.2J/gであり、処理前(実施例1)の融解熱量40.1J/gに比べ減少しており不融化していることが確認された。また得られた紙の厚みは99μm、坪量は98g/m、密度は0.99g/cm、引張強度は45N/15mm、熱減量率は0.2重量%であり良好な特性を有していた。
本発明のPPS紙、PPSO紙はPPS、PPSO樹脂独自の耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気的特性を有することから、耐熱性ワイパー、プリント回路基板、電気絶縁紙、各種フィルター材、防音断熱材、ルーフィング材、バッテリーセパレーターなどとして利用することができる。また、本発明のPPS紙、PPSO紙の製造方法は従来の製造方法と比べて製造工程の簡略化、抄紙原液濃度の向上が可能であり、経済的に優れる他、従来廃棄されてきたオリゴマーを使用することで廃棄物削減、環境負荷の低減に寄与できる。

Claims (5)

  1. ポリフェニレンスルフィド樹脂からなる短繊維(A)とポリフェニレンスルフィドオリゴマー(B)を水に分散させた分散液を抄紙し100℃以上250℃未満の温度で熱プレスを施して、オリゴマー(B)により短繊維(A)間を結着させるポリフェニレンスルフィド紙の製造方法。
  2. 熱プレス後に気相酸化性雰囲気下、150〜260℃で熱酸化処理する請求項1記載のポリフェニレンスルフィド紙の製造方法。
  3. 請求項1または2記載の方法で製造されたポリフェニレンスルフィド紙。
  4. 請求項1または2記載の方法で製造されたポリフェニレンスルフィド紙を、酸化剤を含む液体存在下で酸化反応処理するポリフェニレンスルフィド酸化物紙の製造方法。
  5. 請求項4記載の方法で製造されたポリフェニレンスルフィド酸化物紙。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN107252589A (zh) * 2017-07-27 2017-10-17 江苏丰鑫源环保集团有限公司 一种抗氧化复合针刺毡

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