JP2009084406A - エポキシ化合物組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性、機械特性および高温信頼性を損なわずに、樹脂成形体の難燃性を高める。
【解決手段】オキサゾリドン環、ホスファゼン環およびエポキシ基を有するエポキシ化合物を少なくとも二種類含むエポキシ化合物組成物またはこれに他の樹脂成分を混合したものを成形して硬化させる。エポキシ化合物組成物は、ビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの多官能性グリシジル化合物と、イソシアナトフェノキシ−フェノキシ混合置換環状ホスファゼン化合物などのイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応により得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、組成物、特に、エポキシ化合物の組成物に関する。
産業用および民生用の機器並びに電気製品などの分野において、合成樹脂は、その加工性、耐薬品性、耐候性、電気的特性および機械的強度等の点で他の材料に比べて優位性を有するため多用されており、また、その使用量が増加している。しかし、合成樹脂は、燃焼し易い性質を有するため、難燃性の付与が求められており、近年その要求性能が次第に高まっている。このため、LSI等の電子部品の封止剤や基板等に使用されている樹脂組成物、例えばエポキシ樹脂組成物は、難燃化するために、ハロゲン含有化合物や、ハロゲン含有化合物と酸化アンチモンなどのアンチモン化合物との混合物が一般的な難燃剤として添加されている。ところが、このような難燃剤を配合した樹脂組成物は、燃焼時や成形時等において、環境汚染のおそれがあるハロゲン系ガスを発生する可能性がある。また、ハロゲン系ガスは、電子部品の電気的特性や機械的特性を阻害する可能性がある。そこで、最近では、合成樹脂用の難燃剤として、燃焼時や成形時等においてハロゲン系ガスが発生しにくい非ハロゲン系のもの、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水和物系難燃剤やリン酸エステル系、縮合リン酸エステル系、リン酸アミド系、ポリリン酸アンモニウム系およびホスファゼン系などのリン系難燃剤が多用されるようになっている。
このうち、金属水和物系難燃剤は、脱水熱分解の吸熱反応とそれに伴う水の放出が合成樹脂の熱分解や燃焼開始温度と重複した温度領域で起こることで難燃化効果を発揮するが、その効果を高めるためには樹脂組成物に対して多量に配合する必要がある。このため、この種の難燃剤を含む樹脂組成物の成形品は、機械的強度が損なわれるという欠点がある。一方、リン系難燃剤のうち、リン酸エステル系および縮合リン酸エステル系のものは、可塑効果を有するため、難燃性を高めるために樹脂組成物に対して多量に添加すると、樹脂成形品の機械的強度が低下するなどの欠点が生じる。また、リン酸エステル系、リン酸アミド系およびポリリン酸アンモニウム系のものは、容易に加水分解することから、機械的および電気的な長期信頼性が要求される樹脂成形品の製造用材料においては実質的に使用が困難である。これらに対し、ホスファゼン系の難燃剤は、他のリン系難燃剤に比べて可塑効果および加水分解性が小さく、樹脂組成物に対する添加量を大きくすることができるため、特許文献1〜5に記載のように、合成樹脂用の有効な難燃剤として多用されつつある。しかし、ホスファゼン系の難燃剤は、樹脂組成物に対する添加量を増やすと、高温下における樹脂成形品の信頼性を損なう可能性がある。具体的には、熱可塑性樹脂系の樹脂組成物の場合は、高温下においてその樹脂成形体からホスファゼン系の難燃剤がブリードアウト(溶出)し易く、また、熱硬化性樹脂系の樹脂組成物の場合は、高温下においてその樹脂成形品にフクレ等の変形が発生し、当該樹脂成形品が積層基板等の電気・電子分野において用いられる場合は変形によるショートを引き起こす可能性がある。
特開2000−103939号公報 特開2004−83671号公報 特開2004−210849号公報 特開2005−8835号公報 特開2005−248134号公報
そこで、ホスファゼン系の難燃剤は、高温下での樹脂成形品の信頼性(高温信頼性)を高めるための改良が検討されており、その例として特許文献6〜10には、反応性基を有するホスファゼン系の難燃剤およびそれを用いたエポキシ樹脂組成物またはポリイミド樹脂組成物が開示されている。この種のホスファゼン系難燃剤は、樹脂組成物に対して多量に添加した場合であっても樹脂成形品の高温信頼性を損ないにくいが、添加量を増しても樹脂成形品の難燃性を効果的に高めるのが困難という、それに要求される本質的効果の点で不十分である。
特開平6−247989号公報 特開平10−259292号公報 特開2003−302751号公報 特開2003−342339号公報 特開2004−143465号公報
一方、エポキシ樹脂組成物においては、樹脂成形品の耐熱性(主にガラス転移温度で評価される)、機械特性(強靱性)および高温信頼性(耐水性を高めることで改善できる)を高めるための改良が検討されており、その例として特許文献11〜14には、オキサゾリドン環を有する難燃性エポキシ樹脂組成物が開示されている。この難燃性エポキシ樹脂組成物は、要求されている耐熱性および機械特性(強靱性)、並びに高温信頼性(耐水性)をほぼ達成した樹脂成形品を実現することができるが、当該樹脂成形品は難燃性が不十分である。ところが、当該樹脂成形品の難燃性を高めるため、上記難燃性エポキシ樹脂組成物にリン酸エステル系、縮合リン酸エステル系、ホスファフェナンスレン系、ホスファゼン系若しくはポリフェニレンエーテル系等の難燃剤または難燃助剤を加えると、その樹脂成形品は、耐熱性、機械特性または高温信頼性のいずれかに不具合が発生する。
特開平8−127635号公報 特開2002−308965号公報 特開2003−119253号公報 WO2006/001445号公報
本発明の目的は、耐熱性、機械特性および高温信頼性を損なわずに、樹脂成形体の難燃性を高めることにある。
本発明者らは、上述の課題を解決すべく研究を重ねた結果、樹脂成形体用の材料においてオキサゾリドン環とホスファゼン環とを同時に有するエポキシ化合物を用いた場合、優れた耐熱性(高いガラス転移温度)、機械特性(強靱性)および高温信頼性(耐水性)を示し、同時に難燃性に優れていることを見出した。
本発明は、エポキシ化合物組成物に関するものであり、このエポキシ化合物組成物は、オキサゾリドン環、ホスファゼン環およびエポキシ基を有するエポキシ化合物を少なくとも二種類含んでいる。
このエポキシ化合物組成物は、通常、多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応により得られる。ここで用いられる多官能性グリシジル化合物は、例えば、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、脂肪族エポキシド類および脂環式エポキシド類からなる群から選ばれる少なくとも一つである。また、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物は、下記の式(1)で示されるものである。
Figure 2009084406
式(1)中、nは1〜6の整数を示し、Aは次のA1基、A2基およびA3基からなる群から選ばれる基を示し、かつ、少なくとも一つがA3基である。
A1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい、炭素数が1〜8のアルコキシ基。
A2基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリールオキシ基。
A3基:下記の式(2)で示されるイソシアナトアリールオキシ基および下記の式(3)で示されるイソシアナトフェニル置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
Figure 2009084406
式(2)中、Yは、フェニレン、ビフェニレン若しくはナフタレンを示す。
Figure 2009084406
式(3)中、Zは、O、S、SO、CH、CHCH、C(CH、C(CF、C(CH)CHCH若しくはCOを示す。
式(1)のnは、1若しくは2が好ましい。また、式(1)で示されるイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物は、(2n+4)個のAの内の2〜(2n+2)個がA3基であるものが好ましい。さらに、式(1)のイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物は、式(1)のnが異なる二種以上のものを含むものが好ましい。
本発明のエポキシ化合物組成物は、目的に応じた所望の形状等にそれ自体を硬化させるか、或いは、樹脂材料と混合してこの混合物を硬化させるかすると、樹脂成形体を製造することができる。
本発明の樹脂成形体用組成物は、本発明のエポキシ化合物組成物と、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂成分とを含んでいる。また、本発明の樹脂成形体は、本発明のエポキシ化合物組成物を硬化させて得られるもの、或いは、本発明の樹脂成形体用組成物を硬化させて得られるものである。さらに、本発明の電子部品は、本発明の樹脂成形体を用いたものである。
本発明のエポキシ化合物組成物は、特有の構造を有するエポキシ化合物、すなわち、オキサゾリドン環およびホスファゼン環を同時に有するエポキシ化合物を少なくとも二種類含むものであるため、このエポキシ化合物組成物を用いれば、耐熱性、機械特性および高温信頼性とともに難燃性に優れた樹脂成形体を実現することができる。
本発明の樹脂成形体用組成物は、本発明のエポキシ化合物組成物と他の樹脂成分とを含むため、耐熱性、機械特性および高温信頼性とともに難燃性に優れ、他の樹脂成分により得られる特性を備えた樹脂成形体を形成することができる。
本発明の樹脂成形体は、本発明のエポキシ化合物組成物を含むものであるため、耐熱性、機械特性および高温信頼性とともに難燃性に優れている。
本発明の電子部品は、本発明の樹脂成形体を用いたものであるため、耐熱性、機械特性および高温信頼性とともに難燃性に優れている。
エポキシ化合物組成物
本発明のエポキシ化合物組成物は、オキサゾリドン環、ホスファゼン環およびエポキシ基を有する化合物、すなわち、オキサゾリドン環とホスファゼン環とを同時に有するエポキシ化合物を少なくとも二種類含むものである。この組成物に含まれるエポキシ化合物は、低分子のものであってもよいし、高分子のものであってもよい。
本発明のエポキシ化合物組成物において、オキサゾリドン当量は、100〜5,000g/eq.が好ましく、200〜3,500g/eq.がより好ましい。オキサゾリドン当量が100g/eq.未満の場合は、高温信頼性(耐水性)の良好な樹脂成形体が得られにくくなる。逆に、5,000g/eq.を超える場合は耐熱性および機械特性(強靱性)の良好な樹脂成形体が得られにくくなる。
ここで、エポキシ化合物組成物のオキサゾリドン当量(g/eq.)は、、1当量のオキサゾリドン環を含むエポキシ化合物組成物の質量gを示している。本発明のエポキシ化合物組成物を製造するための、後述する多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応では、多官能性グリシジル化合物のエポキシ基はオキサゾリドン環を形成する反応以外には実質的に関与しない。このため、当該反応により得られるエポキシ化合物組成物において、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物が単独で環化して生成すると考えられるイソシアヌレート環、および、多官能性グリシジル化合物のエポキシ基が開環して生成すると考えられるアルコール性水酸基とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応により得られると考えられるウレタン結合がないことを確認することができる。したがって、オキサゾリドン当量は、使用する多官能性グリシジル化合物のエポキシ当量(Ep1と称す)および重量(Wt1と称す)、並びに、上記反応により得られるエポキシ化合物組成物のエポキシ当量(Ep2と称す)および重量(Wt2と称す)から算出することができる。具体的な算出方法は実施例において説明する。
また、本発明のエポキシ化合物組成物において、エポキシ当量は、200〜10,000g/eq.が好ましく、250〜2,000g/eq.がより好ましい。エポキシ当量が200g/eq.未満の場合は、機械特性(強靱性)の良好な樹脂成形体が得られにくくなる。逆に、10,000g/eq.を超える場合は、耐熱性および高温信頼性(耐水性)の良好な樹脂成形体が得られにくくなる。
ここで、エポキシ化合物組成物のエポキシ当量は、JIS K−7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」において規定された方法により求めることができる。
本発明のエポキシ化合物組成物に含まれるエポキシ化合物は、1分子当たりにおけるエポキシ基の平均官能数が1以上であるが、当該平均官能数は1.2〜5が好ましく、1.2〜3がより好ましい。この平均官能数が1.2未満の場合は、耐熱性の良好な樹脂成形体が得られにくくなる。逆に、5を超える場合は、耐熱性の良好な樹脂成形体を得ることはできるが、エポキシ化合物組成物の保存安定性が低下する。
エポキシ化合物組成物の製造方法
本発明のエポキシ化合物組成物は、通常、多官能性グリシジル化合物と、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物とを反応させることで製造することができる。両化合物の反応では、グリシジル基とイソシアナト基との間の反応によりオキサゾリドン環が生成する。したがって、両化合物の反応により生成するエポキシ化合物は、このように生成するオキサゾリドン環、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物に由来のホスファゼン環および多官能性グリシジル化合物に由来のエポキシ基を有するものになる。そして、イソシアナト基を有するホスファゼン化合物は、通常、ホスファゼン環の構造が異なる数種類のものの混合物であるため、上述のような反応により、二種類以上の上記エポキシ化合物を含むエポキシ化合物組成物が得られる。
この製造方法において用いられる多官能性グリシジル化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、好ましいものとしてはグリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、脂肪族エポキシド類、脂環式エポキシド類およびトリグリシジルイソシアヌレートを例示することができる。
グリシジルエーテル類としては、例えば、フェノールのグリシジルエーテル類、ノボラックのポリグリシジルエーテル類およびアルキルグリシジルエーテル類等が挙げられる。フェノールのグリシジルエーテル類としては、例えば、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、ビスフェノール−AD、ビスフェノール−S、テトラメチルビスフェノール−A、テトラメチルビスフェノール−F、テトラメチルビスフェノール−AD、テトラメチルビスフェノール−S、ビフェノールおよびジヒドロキシナフタレン等の2価フェノール類をグリシジル化した化合物を挙げることができるが、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび4,4−(1−{4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル}エチリデン)ビスフェノール等のトリス(グリシジルオキシフェニル)アルカン類やアミノフェノール等をグリシジル化した化合物も挙げることができる。ノボラックのポリグリシジルエーテル類としては、例えば、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、ビフェニルノボラック、ビスフェノール−Aノボラックおよびナフトールノボラック等のノボラックをグリシジル化した化合物が挙げられる。アルキルグリシジルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテルおよびネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
グリシジルエステル類としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。グリシジルアミン類としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−パラ−アミノフェノールおよびトリグリシジル−メタ−アミノフェノール等が挙げられる。脂肪族エポキシド類としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエンおよびエポキシ化大豆油等が挙げられる。脂環式エポキシド類としては、例えば、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレートおよび3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
多官能性グリシジル化合物のうち、好ましいものはグリシジルエーテル類である。特に、2価のフェノール類のグリシジルエーテル類が好ましく、ビスフェノール−Aのグリシジルエーテルが特に好ましい。多官能性グリシジル化合物は、二種以上のものが併用されてもよい。
多官能性グリシジル化合物のエポキシ当量は、260g/当量以下が好ましい。特に、160〜220g/当量が好ましく、170〜200g/当量がより好ましい。多官能性グリシジル化合物のエポキシ当量が260g/当量を超えると、本発明のエポキシ化合物組成物の溶融粘度が高くなり、硬化時の流動性が低下する可能性がある。また、多官能性グリシジル化合物のアルコール性水酸基は1.0当量/kg以下が好ましい。特に、0.05〜0.7当量/kgが好ましく、0.1〜0.5当量/kgがより好ましい。多官能性グリシジル化合物のアルコール性水酸基が多くなりすぎると、本発明のエポキシ化合物組成物の製造時において、重合安定性が低下する可能性がある。
一方、この製造方法において用いられるイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物は、例えば下記の式(1)で表されるものである。
Figure 2009084406
式(1)において、nは、1から6の整数を示しているが、1から4の整数が好ましく、1若しくは2が特に好ましい。すなわち、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物として特に好ましいものは、nが1のイソシアナト基を有するシクロトリホスファゼン(3量体)およびnが2のイソシアナト基を有するシクロテトラホスファゼン(4量体)である。イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物は、nが異なる二種以上のものの混合物であってもよい。
また、式(1)において、Aは、下記のA1基、A2基およびA3基からなる群から選ばれた基を示している。但し、Aのうちの少なくとも一つはA3基である。
[A1基]
炭素数が1〜8のアルコキシ基。このアルコキシ基は、炭素数が1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい。
このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、エテニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、2−メチル−2−プロペニルオキシ基、4−ペンテニルオキシ基、2−ヘキセニルオキシ基、1−プロピル−2−ブテニルオキシ基、5−オクテニルオキシ基、ベンジルオキシ基および2−フェニルエトキシ基等を挙げることができる。このうち、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロペニルオキシ基およびベンジルオキシ基が好ましく、エトキシ基およびn−プロポキシ基が特に好ましい。
[A2基]
炭素数が6〜20のアリールオキシ基。このアリールオキシ基は、炭素数が1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい。
このようなアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、エチルメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、イソプロピルメチルフェノキシ基、イソプロピルエチルフェノキシ基、ジイソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ペンチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、エテニルフェノキシ基、1−プロペニルフェノキシ基、2−プロペニルフェノキシ基、イソプロペニルフェノキシ基、1−ブテニルフェノキシ基、sec−ブテニルフェノキシ基、1−ペンテニルフェノキシ基、1−ヘキセニルフェノキシ基、フェニルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基およびフェナントリルオキシ基等を挙げることができる。このうち、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、2−プロペニルフェノキシ基、フェニルフェノキシ基およびナフチルオキシ基が好ましく、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基およびナフチルオキシ基が特に好ましい。
[A3基]
下記の式(2)で示されるイソシアナトアリールオキシ基および下記の式(3)で示されるイソシアナトフェニル置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
Figure 2009084406
式(2)中、Yは、フェニレン、ビフェニレン若しくはナフタレンを示す。
式(2)で示されるイソシアナトアリールオキシ基は、具体的には、2−イソシアナトフェニルオキシ基、3−イソシアナトフェニルオキシ基、4−イソシアナトフェニルオキシ基、3’−イソシアナトフェニル−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニル−4−フェニルオキシ基、4−イソシアナトナフチル−1−オキシ基、5−イソシアナトナフチル−1−オキシ基および6−イソシアナトナフチル−2−オキシ基である。
Figure 2009084406
式(3)において、Zは、O、S、SO、CH、CHCH、C(CH、C(CF、C(CH)CHCH若しくはCOを示す。したがって、式(3)で示されるイソシアナトフェニル置換フェニルオキシ基は、具体的には、4’−イソシアナトフェニルオキシ−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニルチオ−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトベンジル−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニルエチリデン−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニルイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニルヘキサフルオロイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニル(1’−メチルプロピリデン)−4−フェニルオキシ基および4’−イソシアナトベンゾイル−4−フェニルオキシ基である。
式(1)において、Aは、(2n+4)個含まれており、このうちの少なくとも一つがA3基である。したがって、式(1)で表される本発明のイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物は、次の形態に大別することができる。
[形態1]
(2n+4)個の全てのAがA3基のものである。この場合、Aは、全てが同じA3基であってもよいし、二種以上のA3基であってもよい。
このような形態のイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物の具体例としては、式(1)のnが1であるイソシアナト基を有するシクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが2であるイソシアナト基を有するシクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが3であるイソシアナト基を有するシクロペンタホスファゼン化合物および式(1)のnが4であるイソシアナト基を有するシクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aの全てが、4−イソシアナトフェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニル−4−フェニルオキシ基、4−イソシアナトナフチル−1−オキシ基、5−イソシアナトナフチル−1−オキシ基、6−イソシアナトナフチル−2−オキシ基、4’−イソシアナトフェニルオキシ−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニルチオ−4−フェニルオキシ基、4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基および4’−イソシアナトフェニルイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基からなるA3基群から選ばれた一種のA3基であるもの並びにAの全てが当該A3基群から選ばれた二種以上のA3基であるもの並びにこれらの任意の混合物を挙げることができる。
[形態2]
(2n+4)個のAのうちの一部(すなわち、少なくとも一つ)がA3基であり、他のAがA1基およびA2基から選ばれた基のものである。この場合、A3基以外の他のAは、全てが同じA1基若しくはA2基であってもよいし、二種以上のA1基若しくはA2基または一種若しくは二種以上のA1基とA2基とが混在した状態であってもよい。
この形態のイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物として好ましいものは、(2n+4)個のAのうちの2個〜(2n+2)個がA3基のものである。特に、式(1)のnが1であるイソシアナト基を有するシクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが2であるイソシアナト基を有するシクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが3であるイソシアナト基を有するシクロペンタホスファゼン化合物および式(1)のnが4であるイソシアナト基を有するシクロヘキサホスファゼン化合物であって、(2n+4)個のAのうちの2個〜(2n+2)個がA3基のもの並びにこれらの任意の混合物が好ましい。イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物としてこの種のものを用いると、他のイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物を用いる場合に比べ、耐熱性(特に、ガラス転移温度が高い)および高温信頼性により優れた樹脂成形体を実現可能な点において有利である。
なお、(2n+4)個のAのうちの2個〜(2n+2)個がA3基であるか否かは、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物またはその製造過程における中間体のTOF−MS分析により確認することができる。
このような形態のイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物の具体例としては、式(1)のnが1であるイソシアナト基を有するシクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが2であるイソシアナト基を有するシクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが3であるイソシアナト基を有するシクロペンタホスファゼン化合物または式(1)のnが4であるイソシアナト基を有するシクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aが、A3基である4−イソシアナトフェニルオキシ基とA1基であるn−プロポキシ基との組合せのもの、A3基である4−イソシアナトフェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4−イソシアナトフェニルオキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニル−4−フェニルオキシ基とA1基であるn−プロポキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA1基であるn−プロポキシ基との組合せのもの、A3基である4−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A3基である5−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA1基であるn−プロポキシ基との組合せのもの、A3基である5−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である5−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基とA1基であるn−プロポキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基とA1基であるn−プロポキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのものおよびA3基である4’−イソシアナトフェニルイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの並びにこれらの任意の混合物を挙げることができる。
このうち、式(1)のnが1であるイソシアナト基を有するシクロトリホスファゼン化合物、式(1)のnが2であるイソシアナト基を有するシクロテトラホスファゼン化合物、式(1)のnが3であるイソシアナト基を有するシクロペンタホスファゼン化合物、式(1)のnが4であるイソシアナト基を有するシクロヘキサホスファゼン化合物であって、Aが、A3基である4−イソシアナトフェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である5−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのものおよびA3基である4’−イソシアナトフェニルイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのもの並びにこれらの任意の混合物が好ましい。特に、式(1)のnが1であるイソシアナト基を有するシクロトリホスファゼン化合物若しくは式(1)のnが2であるイソシアナト基を有するシクロテトラホスファゼン化合物であって、Aが、A3基である4−イソシアナトフェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である5−イソシアナトナフチル−1−オキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの、A3基である4’−イソシアナトフェニルスルホニル−4−フェニルオキシ基とA2基であるメチルフェノキシ基との組合せのものおよびA3基である4’−イソシアナトフェニルイソプロピリデン−4−フェニルオキシ基とA2基であるフェノキシ基との組合せのもの並びにこれらの任意の混合物が好ましい。
本発明のイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物は、次の非特許文献1〜3に記載された方法により製造することができる。
PHOSPHORUS−NITROGEN COMPOUNDS、H.R.ALLCOCK著、1972年刊、ACADEMIC PRESS社 PHOSPHAZENES、A WORLDWIDE INSIGHT、M.GLERIA、R.DE JAEGER著、2004年刊、NOVA SCIENCE PUBLISHERS INC.社 Aminophenoxy− and isocyanatophenoxyphosphonitriles, Gerhard F.Ottomann, Henry F.Lederle, Haywood Hooks and Ehrenfried H.Kober,Inorg.Chem.,1967,6(2),394−395
上述の多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応において、多官能性グリシジル化合物の使用量は、通常、そのエポキシ基がイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物のイソシアナト基よりも過剰になるよう設定する。具体的には、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物の使用量は、通常、そのイソシアナト基が、多官能性グリシジル化合物中のエポキシ基に対して5〜95当量%になるように設定するのが好ましく、10〜80当量%になるように設定するのがより好ましい。この使用量が5当量%未満の場合は、エポキシ化合物組成物においてオキサゾリドン環含有量が少なくなり、既述のように、高温信頼性(耐水性)の良好な樹脂成形体が得られにくくなる。逆に、この使用量が95当量%を超える場合は、エポキシ化合物組成物においてオキサゾリドン環含有量が多くなり過ぎ、既述のように、耐熱性および機械特性(強靱性)の良好な樹脂成形体が得られにくくなる。因みに、本発明のエポキシ化合物組成物におけるオキサゾリドン当量およびエポキシ当量は、多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との使用量を上記範囲において調整することで、既述の好ましい範囲に設定することができる。
但し、多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応において、環状ホスファゼン化合物のイソシアナト基は、多官能性グリシジル化合物中のアルコール性水酸基との反応によりウレタン結合を形成したり、環化三量化によりイソシアヌレート環を形成したりし、オキサゾリドン環の形成に関与しない可能性がある。そこで、多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応では、オキサゾリドン環形成触媒を用いるのが好ましい。オキサゾリドン環形成触媒を用いると、多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との間でほぼ理論的にオキサゾリドン環が形成され、目的のエポキシ化合物組成物が得られやすくなる。
ここで用いられるオキサゾリドン環形成触媒は、例えば、ブチルリチウム等のアルキルリチウム、ブトキシリチウムおよびメトキシナトリウム等の金属アルコラート、塩化リチウムおよび塩化アルミニウム等のルイス酸、ルイス酸とトリフェニルホスフィンオキサイド等のルイス塩基とのコンプレックス、ルイス酸とトリ−n−ブチルスズアイオダイド−トリフェニルホスフィンオキサイド等のオルガノスズハライド−ルイス塩基とのコンプレックス、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムおよびベンジルトリブチルアンモニウム等のクロライド、ブロマイド、アイオダイド若しくはアセテート等の第4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類、並びに、2−エチル−4−メチルイミダゾールおよび2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらの触媒は、性能が低下しない範囲で2種以上のものが併用されてもよい。オキサゾリドン環形成触媒として特に好ましいものは、ルイス酸とオルガノスズハライド−ルイス塩基とのコンプレックスおよび第4級アンモニウム塩である。
オキサゾリドン環形成触媒は、通常、多官能性グリシジル化合物の0.0005〜2重量%の範囲で使用するのが好ましく、0.0020〜0.5重量%の範囲で使用するのがより好ましい。
多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応においては、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物とは別の他のイソシアネート化合物を併用することもできる。このような他のイソシアネート化合物を用いることで、樹脂成形体の耐熱性、難燃性および機械特性を調整することができる。
他のイソシアネート化合物としては、例えば、分子内に環構造を有さない脂肪族ジイソシアネート、当該脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基の一部を変性した変性脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートおよび芳香族ジイソシアネート等を挙げることができる。他のイソシアネート化合物は、二種類以上のものが併用されてもよい。
分子内に環構造を有さない脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4(または2,4,4)−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびリジンジイソシアネート等を例示することができる。
変性脂肪族ジイソシアネートとしては、分子内に環構造を有さない脂肪族ジイソシアネートをモノオールおよびジオールのうちの少なくとも一つ等で変性したウレタン変性ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートをモノオール等で変性したアロファネート変性ジイソシアネート等を例示することができる。変性のために用いられるモノオールとしては、例えば、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ブチルセロソルブおよびポリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。また、ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等が挙げられる。モノオールおよびジオールは、二種以上のものが併用されてもよい。
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびノルボルナンジイソシアネート等を例示することができる。さらに、芳香族ジイソシアネートとしては、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネート等を例示することができる。
他のイソシアネート化合物を使用する場合、その使用量は、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物に対して300当量%以下に設定するのが好ましく、100当量%以下に設定するのがより好ましい。この使用量が300当量%を超える場合は、樹脂成形体の難燃性および機械特性が低下する可能性がある。
多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応は、無溶剤で行うこともできるし、適当な溶剤の存在下で行うこともできる。オキサゾリドン環形成触媒を用いる場合は、前者においても、当該触媒を適用な溶剤で希釈して用いることができる。ここで用いる溶剤は、トルエン、キシレン、メチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフランメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド等の活性水素を含まない溶剤が好ましい。
また、反応温度は、通常、80〜220℃に設定するのが好ましく、100〜200℃に設定するのがより好ましい。反応温度がこの温度範囲外のときは、オキサゾリドン環形成触媒の活性が高まりにくくなり、ウレタン結合やイソシアヌレート環の生成等の副反応が進行し易くなる。
多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応では、多官能性グリシジル化合物を加熱して乾燥空気や窒素を吹き込み、多官能性グリシジル化合物中の水分を極力除去した後、イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物およびオキサゾリドン環形成触媒を投入するのが好ましい。イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物およびオキサゾリドン環形成触媒の投入は、同時に一括して行ってもよいが、ウレタン結合やイソシアヌレート環の生成を効果的に抑制するために、それぞれ別々に若しくは同時に、数回に分けて(すなわち断続的に)または連続的に徐々に投入するのが好ましい。連続的に投入する場合、その投入時間は、1〜10時間に設定するのが好ましく、2〜5時間に設定するのがより好ましい。
上述の反応は、多官能性グリシジル化合物中のエポキシ基の10〜60当量%、好ましくは15〜50当量%がイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物と反応してオキサゾリドン環を形成するよう制御するのが好ましい。エポキシ基の10当量%未満しか反応しない場合は、得られるエポキシ化合物組成物から高い耐熱性、機械特性(強靱性)および難燃性を兼ね備えた樹脂成形体を得るのが困難になる可能性がある。逆に、60当量%を超えると、得られるエポキシ化合物組成物を用いて満足な高温信頼性を有する樹脂成形体を形成するのが困難になる可能性がある。多官能性グリシジル化合物中のエポキシ基のうち、オキサゾリドン環形成に関与するものの割合は、例えば、後述の実施例において説明する化学的手法によりオキサゾリドン当量を測定する方法および赤外分光法や核磁気共鳴分光法等の機器分析で定量する方法などにより確認することができる。
エポキシ化合物組成物の利用法
本発明のエポキシ化合物組成物は、樹脂成形体を製造するための材料として用いることができる。ここで、本発明のエポキシ化合物組成物は、それを単独で所望の形状に硬化させることで樹脂成形体を形成することができるが、樹脂成形体に所望の特性を付与するために、他の樹脂成分と混合して硬化させることで樹脂成形体を形成することもできる。以下、本発明のエポキシ化合物組成物および当該組成物と他のエポキシ樹脂とを混合した組成物を纏めて「樹脂成形体用組成物」という場合がある。
エポキシ化合物組成物と混合可能な樹脂成分は、各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂である。これらの樹脂成分は、天然のものであってもよいし、合成のものであってもよい。使用可能な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルの一部または全部にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、無水ジカルボキシル基などの反応性官能基をグラフト反応や共重合などの方法により導入した変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族系ポリアミドおよび芳香族系ポリアミドなどを挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド−シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド系樹脂、ポリカルボジイミド樹脂およびエポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの各種樹脂成分は、必要に応じて二種以上のものを併用することもできる。
本発明のエポキシ化合物組成物を他の樹脂成分と混合して調製した樹脂成形体用組成物において、本発明のエポキシ化合物組成物の使用量は、混合する樹脂成分の種類やその用途(樹脂成形体の用途)等の各種条件に応じて適宜設定することができるが、通常、固形分換算での樹脂成分100重量部(本発明のエポキシ化合物組成物に含まれる固形分と他の樹脂成分の固形分との合計量)に対して0.1〜200重量部に設定するのが好ましく、0.5〜100重量部に設定するのがより好ましく、1〜50重量部に設定するのがさらに好ましい。本発明のエポキシ化合物組成物の使用量が0.1重量部未満の場合は、樹脂成形体用組成物を用いて形成した樹脂成形体が十分な難燃性を示さない可能性がある。逆に、200重量部を超えると、得られる樹脂成形体において、混合した樹脂成分により期待することができる特性が得られにくくなる可能性がある。
樹脂成形体用組成物を硬化させるためには、硬化剤や硬化促進剤を用いることができる。ここで使用可能な硬化剤は、樹脂成形体用組成物の硬化形態に応じて選択することができる。
例えば、エポキシ基を用いた硬化形態の場合、硬化剤としては、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン等の脂肪族アミン類、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類、メルカプトプロピオン酸エステルやエポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、ビスフェノール−AD、ビスフェノール−S、テトラメチルビスフェノール−A、テトラメチルビスフェノール−F、テトラメチルビスフェノール−AD、テトラメチルビスフェノール−S、テトラブロモビスフェノール−A、テトラクロロビスフェノール−A、テトラフルオロビスフェノール−A、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールなどのビスフェノール類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノール−Aノボラック、臭素化フェノールノボラックおよび臭素化ビスフェノール−Aノボラック等のフェノール樹脂類、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、水酸基を有するホスファゼン化合物類、ポリアゼライン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸および無水ピロメリット酸等の酸無水物類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールおよび2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類、ジメチルベンジルアミンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン類、三フッ化ホウ素等のルイス酸およびそれらの塩類、トリフェニルホスフィン化合物並びにジシアンジアミド等が挙げられる。これらは、二種以上のものが併用されてもよい。
エポキシ基の変性により組み込まれた架橋性基や、変性により生成した2級水酸基を用いた硬化形態の場合は、硬化剤として、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物およびブロックイソシアネート化合物等が用いられる。メラミン樹脂としては、例えば、ヘキサメトキシメチロールメラミン、メチル・ブチル化メラミン、ブチル化メラミン等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4(または2,4,4)−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート並びにこれらのジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネートおよびアロファネート型ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は二種以上のものが併用されてもよい。ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、上述のジイソシアネートやポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックした化合物が用いられる。このブロックイソシアネート化合物を調製するためのブロック剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、ラクタム類および活性メチレン類等が挙げられる。これらのブロック剤は、二種以上のものが併用されても良い。
さらに、エポキシ基とシアナト基との反応を用いた硬化形態の場合は、硬化剤として、シアン酸エステル樹脂を用いることができる。シアン酸エステル樹脂としては、例えば、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、ノボラック樹脂およびハロゲン化シアンの反応により得られるものを挙げることができる。シアン酸エステル樹脂は、二種以上のものが併用されても良い。
硬化剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、樹脂成形体用組成物に対し、0.1〜90重量%に設定するのが好ましく、0.1〜50重量%に設定するのがより好ましい。
また、硬化剤としては、エポキシ化合物を用いることもできる。この場合に使用可能なエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、脂肪族エポキシド類および脂環式エポキシド類およびトリグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。
グリシジルエーテル類としては、例えば、フェノールのグリシジルエーテル類、ノボラックのポリグリシジルエーテル類およびアルキルグリシジルエーテル類等が挙げられる。フェノールのグリシジルエーテル類の具体例としては、例えば、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、ビスフェノール−AD、ビスフェノール−S、テトラメチルビスフェノール−A、テトラメチルビスフェノール−F、テトラメチルビスフェノール−AD、テトラメチルビスフェノール−S、ビフェノールおよびジヒドロキシナフタレン等の2価フェノール類をグリシジル化した化合物を挙げることができるが、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび4,4−[1−〔4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン]ビスフェノール等のトリス(グリシジルオキシフェニル)アルカン類やアミノフェノール等をグリシジル化した化合物も挙げることができる。ノボラックのポリグリシジルエーテル類としては、例えば、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、ビフェニルノボラック、ビスフェノール−Aノボラックおよびナフトールノボラック等のノボラックをグリシジル化した化合物が挙げられる。アルキルグリシジルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテルおよびネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
グリシジルエステル類としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。グリシジルアミン類としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−パラ−アミノフェノールおよびトリグリシジル−メタ−アミノフェノール等が挙げられる。脂肪族エポキシド類としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエンおよびエポキシ化大豆油等が挙げられる。脂環式エポキシド類としては、例えば、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレートおよび3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、二種以上のものを併用することもできる。
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、有機リン化合物(ホスフィン類)、第3級アミン類、第4級アンモニウム塩、アミノトリアゾール類および錫系や亜鉛系等の金属触媒類などが使用される。また、第2級アミノ基をアクリロニトリル、イソシアネート、メラミンまたはアクリレートなどでマスク化して潜在性を持たしたイミダゾール化合物を用いることもできる。ここで用いられるイミダゾール化合物は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリンおよび2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどである。硬化促進剤は、二種以上のものが併用されてもよい。
硬化促進剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、樹脂成形体用組成物の100重量部に対し、0.01〜5重量部に設定するのが好ましい。この使用量が0.01重量部未満の場合は硬化促進剤を用いることによる効果が得られにくく、逆に、5重量部を超える場合は硬化促進剤を添加した樹脂成形体用組成物の保存性が悪化する可能性がある。
樹脂成形体用組成物は、必要に応じて公知の反応性希釈剤が配合されていてもよい。利用可能な反応性希釈剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルおよびアリルグリシジルエーテル等の脂肪族アルキルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートおよび第3級カルボン酸グリシジルエステル等のアルキルグリシジルエステル、スチレンオキサイド並びにフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、パラ−s−ブチルフェニルグリシジルエーテルおよびノニルフェニルグリシジルエーテル等の芳香族アルキルグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの反応性希釈剤は、二種以上のものが併用されてもよい。
また、樹脂成形体用組成物は、必要に応じ、溶剤を含んでもよい。使用可能な溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリットおよびナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブおよびブチルカルビトール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミドやN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類並びに水などであり、目的および用途に応じて適宜選択して使用することが出来る。また、溶剤は、二種以上のものを併用することもできる。
樹脂成形体用組成物は、樹脂成分の種類や用途等に応じ、目的とする物性を損なわない範囲で、樹脂成形体の製造用材料において常用される各種の充填剤や添加剤等を配合することもできる。
使用可能な充填剤は、公知の各種のものであり、例えば、粘土、クレー、カオリン、ベントナイト、長石およびマイカ等のケイ酸アルミナ、タルクおよび滑石等のケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム(ワラストナイト)、軽石粉等のケイ酸塩、天然シリカ、焼成シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、ホワイトカーボン、アエロジル、ケイ砂、石英粉およびケイ藻土等の無水ケイ酸若しくはケイ酸、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデンおよび酸化亜鉛等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウムおよび硫酸マグネシウム等の硫酸塩、チタン酸カリウムおよびチタン酸バリウム等のチタン酸塩、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、カーボンブラックおよびグラファイト等の炭素類、ホウ酸亜鉛およびモリブデン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ガラスバルーン、シラスバルーンおよびフェノールバルーン等の無機若しくは有機のバルーン、ガラス繊維、ガラス布およびガラス微粉末等のガラス類、並びに、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、炭素繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、液晶繊維およびPBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維等の繊維類を例示することができる。充填材は、二種以上のものを併用することもできる。
また、使用可能な添加剤としては、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系およびベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系およびヒドラジド系等の酸化防止剤、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、リン酸アミド、リン酸アミドエステル、リン酸アンモニウムおよび赤リンなどのリン系、メラミン、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メロンおよびサクシノグアナミン等の窒素系、シリコーン系、臭素系並びに塩素化パラフィンなどの難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、シラン系やチタン系等のカップリング剤、染料、顔料、着色剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、重合禁止剤、ハジキ防止剤、消泡剤、離型剤並びに帯電防止剤等を例示することができる。添加剤は、二種以上のものを併用することもできる。
樹脂成形体用組成物を硬化させて得られる硬化物、すなわち樹脂成形体は、実質的に、本発明のエポキシ化合物組成物に由来のオキサゾリドン環およびホスファゼン環を有する重合体からなるため、耐熱性(高いガラス転移温度)、機械特性(強靱性)および高温信頼性(耐水性)に優れ、同時に難燃性においても優れている。このため、樹脂成形体用組成物は、各種の分野において用いられる樹脂成形体の製造用材料として、広く用いることができる。
例えば、樹脂成形体用組成物は、粉体塗料、電着塗料、PCM(プレコートメタル用)塗料等の塗料、接着剤、シーリング材、成型材料、複合材料、積層板および封止材等の材料として好適に使用される。特に、樹脂成形体用組成物は、電気・電子部品の製造用材料として好適であり、この組成物を用いて形成された半導体封止用材料や回路基板(特に、金属張り積層板、プリント配線板用基板、プリント配線板用接着剤、プリント配線板用接着剤シート、プリント配線板用絶縁性回路保護膜、プリント配線板用導電ペースト、多層プリント配線板用封止剤、層間絶縁材料、絶縁性接着材料、回路保護剤、カバーレイフィルムおよびカバーインクなど)を用いた電子部品は、耐熱性、機械特性、高温信頼性および難燃性に優れ、安定な作動を期待することができる。
樹脂成形体用組成物を電気・電子分野用の材料、特に、LSI等の電子部品の封止剤や基板等に用いる場合、本発明のエポキシ化合物組成物と混合する樹脂成分としては、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、ポリイミド樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂を選択するのが好ましい。
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下において、「unit mol」の「unit」は、環状ホスファゼン化合物の最小構成単位、例えば、一般式(1)については(PNA)を意味する。また、以下においては、特に断りがない限り、「%」および「部」とあるのは、それぞれ「重量%」および「重量部」を意味する。
以下の合成例で得られたホスファゼン化合物および実施例等で得られたエポキシ化合物組成物等は、H−NMRスペクトルおよび31P−NMRスペクトルの測定、CHNP元素分析、IRスペクトルの測定、アルカリ溶融後の硝酸銀を用いた電位差滴定法による塩素元素(残留塩素)の分析、マイクロウエーブ湿式分解後のICP−AESによるリン元素の分析並びにTOF−MS分析の結果に基づいて同定した。
また、実施例および比較例において得られた組成物は、以下に述べる手法により物性評価をした。
(1)エポキシ当量
エポキシ当量(g/eq.:1当量のエポキシ基を含む組成物の質量g)は、JIS K−7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」において規定された方法に従い測定した。
(2)軟化点
JIS K−7234(環球法)に準拠して測定した。
(3)オキサゾリドン当量(g/eq.)
使用した多官能性グリシジル化合物のエポキシ当量(Ep1と称す)および重量(Wt1と称す)、並びに、当該多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応により得られたエポキシ化合物組成物のエポキシ当量(Ep2と称す)および重量(Wt2と称す)とに基づき、次の式により求めた。なお、多官能性グリシジル化合物のエポキシ当量は、先に挙げたJIS K−7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」において規定された方法に従って測定することができる。
Figure 2009084406
(4)In/Oxd比
実施例において得られたエポキシ化合物組成物に含まれる、オキサゾリドン環に由来のカルボニル基に対するイソシアヌレート環に由来のカルボニル基の当量比を意味する。このIn/Oxd比は、フーリエ変換型赤外分光光度計(株式会社島津製作所製の「FT−IR4200」)により測定した赤外線吸収スペクトルにおける、オキサゾリドン環に由来のカルボニル基の伸縮振動ピーク(1750cm−1付近)の高さに対するイソシアヌレート環に由来のカルボニル基の伸縮振動ピーク(1690cm−1付近)の高さの比を基に算出し、0.1未満をA、0.1〜0.2をB、0.2〜0.3をC、0.3〜0.4をD、0.4以上をEと評価した。AからEに向けて、評価は低くなる。
(5)ウレタン結合量
実施例において得られたエポキシ化合物組成物に含まれる、その製造過程において多官能性グリシジル化合物のアルコール性水酸基とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物のイソシアナト基との反応により得られたウレタン結合の量を意味し、多官能性グリシジル化合物のアルコール性水酸基の量と、得られたエポキシ化合物組成物中のアルコール性水酸基の量とをそれぞれJIS K−0070(ピリジン−塩化アセチル法)に準じて求め、その差よりウレタン結合量を算出した。ここで、アルコール性水酸基の定量においては、エポキシ基1個はアルコール性水酸基2個と等価になることを考慮した。ウレタン結合量が0.05当量/kg未満をA、0.05〜0.1当量/kgをB、0.1〜0.5当量/kgをC、0.5〜0.7当量/kgをD、0.7当量/kg以上をEと評価した。AからEに向けて、評価は低くなる。
合成例1(ニトロ基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、水分離用受器および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に48%NaOH水溶液83.2g(1.00mol)、トルエン1,000mlおよびフェノール96.0g(1.02mol)を仕込んだ。これを窒素雰囲気下で撹拌加熱して共沸脱水によりフラスコ内の水分を除去し(回収水:約60ml)、フェノールのナトリウム塩を調製した。このスラリー溶液を20℃に冷却した後、テトラヒドロフラン(THF)500mlを仕込んで均一溶液とし、フェノールのナトリウム塩溶液を調製した。
次に、撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた3リットルのフラスコ中にヘキサクロロシクロトリホスファゼンのトルエン溶液(ヘキサクロロシクロトリホスファゼン115.9g(1.00unit mol)、トルエン500ml)を仕込み、上述の工程で調製したフェノールのナトリウム塩溶液を撹拌下5℃で6時間かけて滴下した。その後、25℃で撹拌反応を2時間行い、フェノキシ部分置換クロロシクロトリホスファゼンのトルエン・THF溶液を得た。
次に、撹拌機、温度計、還流冷却管、水分離用受器および窒素導入管を備えた5リットルのフラスコ中に48%KOH水溶液147.2g(1.26mol)、トルエン1,000mlおよびp−ニトロフェノール182.6g(1.30mol)を仕込んだ。これを窒素雰囲気下で撹拌加熱して共沸脱水によりフラスコ内の水分を除去し(回収水:約100ml)、p−ニトロフェノールのカリウム塩を調製した。このスラリー溶液を45℃に冷却した後、上述の工程で得られたフェノキシ部分置換クロロシクロトリホスファゼンのトルエン・THF溶液を添加し、還流温度(103℃)で20時間撹拌反応を行った。反応終了後、反応液を約1,500mlまで濃縮し、トルエン500mlと水500mlとを加えて内容物を溶解させた後、分液ロートにて有機層を分液した。この有機層を水で3回洗浄し、この有機層からトルエンを留去したところ、黄褐色ガラス状固体の生成物263.8g(収率:95.5%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
フェニルC−H 6.7〜7.3(7H),7.8〜8.2(2H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.1
◎CHNP元素分析:
理論値 C:52.2%,H:3.3%,N:10.1%,P:11.2%
実測値 C:52.0%,H:3.5%,N:10.0%,P:11.1%
◎残存塩素分析:
<0.01%
◎TOF−MS(m/z):
785,830,875
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は[N(OC(OCNO]、[N(OC(OCNO]、[N(OC(OCNO]の混合物であり、その平均組成が[N=P(OC1.00(OCNO1.00で示されるニトロフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物あることを確認した。
合成例2(アミノ基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に、合成例1にて得たニトロフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物(平均組成:[N=P(OC1.00(OCNO1.00)138.0g(0.50unit mol)、THF1,000ml、活性炭10gおよび塩化第二鉄・六水和物0.54g(0.002mol)を仕込み、還流温度での前処理反応を10分間行った後、ヒドラジン・一水和物50.2g(1.00mol)を添加して引き続き還流温度で8時間反応した。反応終了時には廃ガスの発生は殆どなくなっていた。反応終了後に活性炭をろ別し、濾過液よりTHFを留去したところ、黄褐色ガラス状固体の生成物121.2g(収率:98.5%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
−NH 3.3(2H),フェニルC−H 6.3〜8.0(9H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 10.6
◎CHNP元素分析:
理論値 C:58.4%,H:4.5%,N:11.4%,P:12.6%
実測値 C:58.1%,H:4.8%,N:11.1%,P:12.5%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は[N=P(OC(OCNH]、[N=P(OC(OCNH]、[N=P(OC(OCNH]の混合物であり、その平均組成が[N=P(OC1.00(OCNH1.00で示されるアミノフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物であることを確認した。
合成例3(イソシアナト基含有環状ホスファゼン化合物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に、トリホスゲン48.0g(0.162mol)およびジクロロメタン500mlを仕込み、そこに合成例2にて得たアミノフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物(平均組成:[N=P(OC1.00(OCNH1.00)100.0g(0.40unit mol)のジクロロメタン溶液を撹拌下10℃で6時間かけて滴下した後、還流温度(40℃)で撹拌反応を3時間行った。反応終了後、ジクロロメタンおよびホスゲンを留去したところ、茶色ガラス状固体の生成物106.3g(収率:96.2%)が得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
フェニルC−H 6.7〜8.0(9H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.8
◎CHNP元素分析:
理論値 C:57.4%,H:3.3%,N:10.3%,P:11.4%
実測値 C:57.2%,H:3.6%,N:10.1%,P:11.5%
以上の分析結果から、この工程で得られた生成物は[N=P(OC(OCNCO)]、[N=P((OC(OCNCO))、[N=P(OC(OCNCO)]の混合物であり、その平均組成が[N=P(OC1.00(OCNCO)1.00で示されるイソシアナトフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物であることを確認した。
合成例4(環状ホスファゼン化合物の製造)
PHOSPHORUS−NITROGEN COMPOUNDS、H.R.ALLCOCK著、1972年刊、151頁、ACADEMIC PRESS社(先に挙げた非特許文献1)に記載されている方法に従い、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンを用いて[N=P(OC(白色固体/融点:112〜113℃)を得た。
実施例1(エポキシ化合物組成物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に、合成例3にて得られたイソシアナト基含有環状ホスファゼン化合物(イソシアナトフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物/推定構造:[N=P(OC1.00(OCNCO)1.00)50.0g(0.184unit mol)、キシレン500ml、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン株式会社の商品名「jER828」:エポキシ当量185g/eq.)83.5g(0.442eq.)および0.1gの1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7を仕込み、還流温度で7時間反応した。反応終了後にキシレンを留去したところ、黄色固体の生成物が132.0g得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
◎IRスペクトル(KBr Pellet、cm−1):
オキサゾリドン環(C=O) 1749、ホスファゼン環(P=N) 1174、グリシジル基(エポキシC−O) 1240
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
−CH 1.6(6H),オキサゾリドン環 −CH− 3.8(2H),4.3(2H),エポキシ −CH− 2.8(2H),−CH< 3.3(1H),フェニルC−H 6.4〜8.2(17H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.8
◎エポキシ当量
520g/eq.
◎軟化点
86℃
◎オキサゾリドン当量
2,670g/eq.
◎In/Oxd比
In/Oxd比=0.1:評価=A
◎ウレタン結合量
0.05当量/kg未満:評価=A
以上の分析結果から、得られた生成物はオキサゾリドン環とホスファゼン環とを含むエポキシ化合物の組成物であることを確認した。
実施例2(エポキシ化合物組成物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に、合成例3にて得たイソシアナト基含有環状ホスファゼン化合物(イソシアナトフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物/推定構造:[N=P(OC1.00(OCNCO)1.00)50.0g(0.184unit mol)、キシレン500ml、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン株式会社の商品名「jER828」:エポキシ当量185g/eq.)100.0g(0.529eq.)および0.1gの1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7を仕込み、還流温度で8時間反応した。反応終了後にキシレンを留去したところ、黄色固体の生成物が149.3g得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
◎IRスペクトル(KBr Pellet、cm−1):
オキサゾリドン環(C=O) 1748、ホスファゼン環(P=N) 1174、グリシジル基(エポキシC−O) 1240
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
−CH 1.6(6H),オキサゾリドン環 −CH− 3.8(2H),4.3(2H),エポキシ −CH− 2.8(2H),−CH< 3.3(1H),フェニルC−H 6.4〜8.2(17H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.8
◎エポキシ当量
439g/eq.
◎軟化点
81℃
◎オキサゾリドン当量
2,200g/eq.
◎In/Oxd比
In/Oxd比=0.1:評価=A
◎ウレタン結合量
0.05当量/kg未満:評価=A
以上の分析結果から、得られた生成物は、オキサゾリドン環とホスファゼン環とを含むエポキシ化合物の組成物であることを確認した。
実施例3(エポキシ化合物組成物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に、合成例3にて得たイソシアナト基含有環状ホスファゼン化合物(イソシアナトフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物/推定構造:[N=P(OC1.00(OCNCO)1.00)50.0g(0.184unit mol)、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン株式会社の商品名「jER828」:エポキシ当量185g/eq.)100.0g(0.529eq.)および0.1gの1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7を仕込み、無溶媒にて150℃で反応を8時間行ったところ、黄褐色固体の生成物148.9gが得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
◎IRスペクトル(KBr Pellet、cm−1):
オキサゾリドン環(C=O) 1745、ホスファゼン環(P=N) 1172、グリシジル基(エポキシC−O) 1243
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
−CH 1.6(6H),オキサゾリドン環 −CH− 3.8(2H),4.3(2H),エポキシ −CH− 2.8(2H),−CH< 3.3(1H),フェニルC−H 6.4〜8.2(17H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.8
◎エポキシ当量
433g/eq.
◎軟化点
83℃
◎オキサゾリドン当量
2,230g/eq.
◎In/Oxd比
In/Oxd比=0.1:評価=A
◎ウレタン結合量
0.05当量/kg未満:評価=A
以上の分析結果から、得られた生成物は、オキサゾリドン環とホスファゼン環とを含むエポキシ化合物の組成物であることを確認した。
実施例4(エポキシ化合物組成物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコ中に、合成例3にて得たイソシアナト基含有環状ホスファゼン化合物(イソシアナトフェノキシ−フェノキシ混合置換ホスファゼン化合物/推定構造:[N=P(OC1.00(OCNCO)1.00)50.0g(0.184unit mol)、キシレン500ml、オルソクレゾールノボラックのグリシジルエーテル(日本化薬株式会社の商品名「EOCN−104S」:エポキシ当量218g/eq.)96.4g(0.442eq.)および0.1gの1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7を仕込み、還流温度での反応を8時間行った。反応終了後にキシレンを留去したところ、黄色固体の生成物が145.2g得られた。この生成物の分析結果は以下の通りであった。
◎IRスペクトル(KBr Pellet、cm−1):
オキサゾリドン環(C=O) 1750、ホスファゼン環(P=N) 1162、グリシジル基(エポキシC−O) 1256
H−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
−CH 1.6(6H),オキサゾリドン環 −CH− 3.8(2H),4.3(2H),エポキシ −CH− 2.8(2H),−CH< 3.3(1H),フェニルC−H 6.4〜8.2(17H)
31P−NMRスペクトル(重クロロホルム中、δ、ppm):
三量体(P=N) 9.8
◎エポキシ当量
564g/eq.
◎軟化点
95℃
◎オキサゾリドン当量
3,050g/eq.
◎In/Oxd比
In/Oxd比=0.1:評価=A
◎ウレタン結合量
0.05当量/kg未満:評価=A
以上の分析結果から、生成物は、オキサゾリドン環とホスファゼン環とを含むエポキシ化合物の組成物であることを確認した。
実施例5〜8(樹脂成形体の作製)
実施例1〜4で得られたエポキシ化合物組成物のうちの一つ50.0部とジシアンジアミド1.0部とを均一に混合し、これをPTFE製の型に流し込んで170℃で2時間および200℃で3時間加熱して硬化させ、1/16インチ厚および5mm厚の二種類のシート状硬化物(樹脂成形体)を作製した。このシート状硬化物は、IRスペクトルによってエポキシ基の吸収が完全に消失していることを確認した。
比較例1
ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン株式会社の商品名「jER828」:エポキシ当量189g/eq.)40.0部、合成例4で合成した環状ホスファゼン化合物7.0部およびジシアンジアミド1.0部を均一に混合し、この混合物を用いて実施例5〜8と同様にして二種類のシート状硬化物を作製した。
比較例2
ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン株式会社の商品名「jER828」:エポキシ当量189g/eq.)40.0部、合成例4で合成した環状ホスファゼン化合物15.0部およびジシアンジアミド1.0部を均一に混合し、この混合物を用いて実施例5〜8と同様にして二種類のシート状硬化物を作製した。
評価1
実施例5〜8および比較例1,2で得られたシート状硬化物について、燃焼性、高温信頼性、耐衝撃性(機械特性(強靱性))および耐熱性を調べた。燃焼性、高温信頼性および耐衝撃性は1/16インチ厚のシート状硬化物を用いて評価した。また、耐熱性は5mm厚のシート状硬化物を用いて評価した。各項目の評価方法は次の通りである。結果を表1に示す。
(燃焼性)
アンダーライターズラボラトリーズ(Underwriter’s Laboratories Inc.)のUL−94規格垂直燃焼試験に基づき、10回接炎時の合計燃焼時間と燃焼時の滴下物による綿着火の有無により、V−0、V−1、V−2および規格外の四段階に分類した。評価基準を以下に示す。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>規格外の順に低下する。
V−0:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が50秒以内。
(B)試験片5本を1本につき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が5秒以内。
(C)すべての試験片で滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がない。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは30秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
V−1:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が250秒以内。
(B)試験片5本を1本につき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が30秒以内。
(C)すべての試験片で滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がない。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは60秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
V−2:下記の条件を全て満たす。
(A)試験片5本を1本につき二回ずつ、合計10回の接炎後からの消炎時間の合計が250秒以内。
(B)試験片5本を1本につき二回ずつ接炎を行い、それぞれの接炎後からの消炎時間が30秒以内。
(C)試験片5本のうち、少なくとも1本は、滴下物による、300mm下の脱脂綿への着火がある。
(D)すべての試験片で、二回目の接炎後のグローイングは60秒以内。
(E)すべての試験片で、クランプまでフレーミングしない。
(高温信頼性)
シート状硬化物を80℃、相対湿度85%の恒温恒湿装置に48時間保管した後、288℃で20分間処理し、外観の変化を観察した。表1において、「有」は、シート状化合物の表面にブリードアウトによる外観変化がないこと(すなわち、高温信頼性があること)を示す。また、「無」は、シート状化合物の表面にブリードアウトによる外観変化があること(すなわち、高温信頼性がないこと)を示す。
(耐衝撃性)
JIS K−5400に規定されたデュポン式に準拠し、重り質量1kg、撃心半径1/4インチで実施し、衝撃による変形等が発生しない最高の重り高さで評価した。
(耐熱性)
セイコー電子工業株式会社の商品名「DMS−200」を用い、測定長(測定治具間隔)を20mmとして下記の条件下でシート状硬化物の貯蔵弾性率(ε’)の測定を行い、当該貯蔵弾性率(ε’)の変曲点をガラス転移温度(℃)とした。このガラス転移温度は、高いほど耐熱性に優れていることを示す。
測定雰囲気:乾燥空気雰囲気
測定温度:20〜400℃の範囲内
測定試料:幅9mm、長さ40mmにスリットしたシート状硬化物
Figure 2009084406
表1から明らかなように、実施例5〜8および比較例1,2のシート状硬化物は、いずれも難燃性に優れているが、比較例1,2は耐衝撃性、耐熱性および高温信頼性を欠くのに対し、実施例5〜8はこれらの項目においても優れている。
実施例9〜14(樹脂成形体の作製)
実施例1、2および4で製造したエポキシ化合物組成物、オルソクレゾールノボラックのグリシジルエーテル(日本化薬株式会社の商品名「EOCN−104S」:エポキシ当量218g/eq.)、ジシアンジアミドおよび2―エチル―4−メチルイミダゾールを表2に示す割合で混合し、樹脂ワニスを調製した。この樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製の商品名「WEA7628」:処理シラン系)に含浸塗布して150℃で乾燥させ、樹脂分50%のプリプレグを得た。
比較例3,4
合成例4で合成した環状ホスファゼン化合物、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン株式会社の商品名「jER828」:エポキシ当量189g/eq.)、オルソクレゾールノボラックのグリシジルエーテル(日本化薬株式会社の商品名「EOCN−104S」:エポキシ当量218g/eq.)、ジシアンジアミドおよび2−エチル−4−メチルイミダゾールを表2に示す割合で混合し、樹脂ワニスを調製した。そして、この樹脂ワニスを用い、実施例9〜14と同様にしてプリプレグを得た。
評価2
実施例9〜14および比較例3,4で得られた各プリプレグを8枚ずつ重ね、その両面に厚さ18μmの銅箔を重ねて温度170℃、圧力30kg/cmの条件で60分間加熱加圧成形した。これにより得られた両面銅張積層板の両面をエッチングし、試料(1.6mm厚)を得た。得られた試料について、評価1と同じ方法で燃焼性、高温信頼性および耐衝撃性(機械特性(強靱性))を評価した。また、試料の耐熱性は、実施例9〜14および比較例3,4で得られた樹脂ワニスのガラス転移温度により評価した。このガラス転移温度は、樹脂ワニスをオーブン中で170℃/1時間硬化し、TMA(SEIKO社製の「TMA/SS220」)にて昇温速度10℃/分の条件で測定した。結果を表2に示す。
Figure 2009084406
表2から明らかなように、実施例9〜14および比較例3,4のプリプレグを用いて調製した試料は、いずれも難燃性に優れているが、比較例3,4は耐衝撃性、耐熱性および高温信頼性を欠くのに対し、実施例9〜14はこれらの項目においても優れている。

Claims (11)

  1. オキサゾリドン環、ホスファゼン環およびエポキシ基を有するエポキシ化合物を少なくとも二種類含むエポキシ化合物組成物。
  2. 多官能性グリシジル化合物とイソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物との反応により得られる、請求項1に記載のエポキシ化合物組成物。
  3. 前記多官能性グリシジル化合物は、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、脂肪族エポキシド類および脂環式エポキシド類からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項2に記載のエポキシ化合物組成物。
  4. イソシアナト基を有する環状ホスファゼン化合物が下記の式(1)で示されるものである、請求項2または3に記載のエポキシ化合物組成物。
    Figure 2009084406
    (式(1)中、nは1〜6の整数を示し、Aは下記のA1基、A2基およびA3基からなる群から選ばれる基を示し、かつ、少なくとも一つがA3基である。
    A1基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい、炭素数が1〜8のアルコキシ基。
    A2基:炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基およびアリール基から選ばれる少なくとも一種の基が置換されていてもよい、炭素数6〜20のアリールオキシ基。
    A3基:下記の式(2)で示されるイソシアナトアリールオキシ基および下記の式(3)で示されるイソシアナトフェニル置換フェニルオキシ基からなる群から選ばれる基。
    Figure 2009084406
    式(2)中、Yは、フェニレン、ビフェニレン若しくはナフタレンを示す。
    Figure 2009084406
    式(3)中、Zは、O、S、SO、CH、CHCH、C(CH、C(CF、C(CH)CHCH若しくはCOを示す。)
  5. 式(1)のnが1若しくは2である、請求項4に記載のエポキシ化合物組成物。
  6. 式(1)において、(2n+4)個のAの内の2〜(2n+2)個がA3基である、請求項4または5に記載のエポキシ化合物組成物。
  7. 前記環状ホスファゼン化合物は、式(1)のnが異なる二種以上のものを含んでいる、請求項4から6のいずれかに記載のエポキシ化合物組成物。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載のエポキシ化合物組成物と、
    熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂成分と、
    を含む樹脂成形体用組成物。
  9. 請求項1から7のいずれかに記載のエポキシ化合物組成物を硬化させて得られる樹脂成形体。
  10. 請求項8に記載の樹脂成形体用組成物を硬化させて得られる樹脂成形体。
  11. 請求項9または10の樹脂成形体を用いた電子部品。
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