JP2009084357A - 改質ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 エステル交換反応またはエステル化反応及び重縮合反応に使用した触媒・添加物に起因する重縮合・溶融紡糸時の熱・酸化分解反応を抑制することで、芯鞘型複合繊維の芯部に使用した際の糸強度・伸度バラツキ、単糸繊度バラツキ、さらには布帛にした際のタテスジが発生しにくい改質ポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】 アンチモン原子含有化合物をアンチモン原子換算で100〜700ppm、数平均分子量400〜8000のポリオキシアルキレングリコールを10〜50重量%添加する回分式ポリエステル組成物の製造方法において、ポリエステルの極限粘度が目標極限粘度の85〜98%に到達した時点で3価のリン化合物をリン原子換算で10〜200ppm添加することにより達成できる。
【選択図】なし

Description

本発明は熱安定性に優れた改質ポリエステルの製造方法に関するものである。詳しくはエステル交換反応またはエステル化反応及び重縮合反応に使用した触媒・添加物に起因する重縮合・溶融紡糸時の熱・酸化分解反応を抑制することで、芯鞘型複合繊維の芯部に使用した際の糸強度・伸度バラツキ、単糸繊度バラツキ、さらには布帛にした際のタテスジが発生しにくい改質ポリエステルを製造する方法に関するものである。
ポリエステルはその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、医療用に用いられている。その中でも、汎用性、実用性の点でポリエチレンテレフタレートが優れ、好適に使用されている。
一方でポリエステルは疎水性であること、分子鎖中に反応性の官能基を持っていないこと、結晶性が高く分子構造が緻密でガラス転移点温度が高いことなどの点から染色し難い、吸湿性が低く接触冷感性(肌快適性)の点で天然繊維よりも劣るという問題があった。このため、染色性・接触冷感性を改善すべく、これまでに種々の方法が提案されている。中でもポリオキシアルキレングリコールをポリエステルに共重合させる方法が有効であることが知られている。しかしながらポリオキシアルキレングリコールをポリエステルに共重合すると、エーテル結合が空気中の酸素の攻撃を受けやすくなるため、ポリエステルの耐酸化分解性が低下し、ポリエステルの重縮合時や重縮合反応終了後、ポリマーを吐出・冷却する工程でポリマーが黄化する問題があった。この他、ポリオキシアルキレングリコール共重合ポリエステルを製糸する際、チップ乾燥時の黄化、紡糸時の糸切れが多い、糸物性バラツキが大きいなど、数多くの耐酸化分解性低下に起因する問題があった。
特にポリエステル繊維に接触冷感性を付与する目的で芯鞘型複合繊維の芯部にポリオキシアルキレングリコール共重合ポリエステルを使用した場合、紡糸時の耐熱性低下により糸強度・伸度バラツキ、単糸繊度バラツキ、さらには布帛にした際のタテスジが発生しやすいという問題があった。
これらポリオキシアルキレングリコール共重合ポリエステルの耐熱性、耐酸化分解性の改善や重縮合触媒起因によるポリエステル自体の熱分解反応、酸化分解反応を抑制させる検討が広くなされている。
従来技術として例えば、触媒として使用する金属化合物と触媒失活効果のあるリン化合物を一定量含有することで副反応を抑制し、ポリマーの色調悪化抑制や耐熱性向上を図る方法が提案されている(特許文献1参照)。この技術ではリン化合物の添加時期は規定されておらず、例えば、重縮合反応の初期に一定量以上のリン化合物を加えると重縮合触媒の失活効果が大き過ぎ、重縮合反応時間の遅延や、場合によっては目標の重合度まで到達しないこともある。重縮合反応時間が遅延した場合、ポリマーの色調が悪化するばかりでなく、熱劣化も進むため、安定した糸物性が得られない可能性がある。
重縮合反応が30〜60%完了の時期にリン化合物を添加して、色調や熱安定性に優れるポリエステルを製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。この技術では確かに副反応の抑制効果は認められるものの、重縮合反応の30〜60%の段階で一定量以上のリン化合物を加えると重縮合触媒の失活効果が大き過ぎ、重縮合反応時間の遅延や、場合によっては目標の重合度まで到達しないこともある。重縮合反応時間が遅延した場合、ポリマーの色調が悪化するばかりでなく、熱劣化も進むため安定した糸物性が得られない可能性がある。
イソフタル酸や、ポリエチレングリコール等を共重合する改質ポリエステルにおいて、リン化合物添加による重縮合反応の遅延を解決すべく、リン化合物を重縮合反応終了後に添加する方法(特許文献3参照)や連続重縮合方法において、重縮合反応終了後にリン化合物を添加する方法(特許文献4参照)が提案されている。確かにこれら方法を用いるとリン化合物による重縮合触媒の失活は防げるが、重縮合反応が終了した後にポリエステルとリン化合物を混合するため、重縮合反応終了直後におこる副反応は抑制できず、更には混合工程におけるポリマーの劣化は避けられない。また重縮合反応終了後にリン化合物を添加した場合、その際の分散性は極めて悪く、ポリマー品質に斑が発生し、チップ化工程や紡糸工程に悪影響を及ぼし、安定した糸物性が得られない可能性がある。
特開2006−188667号公報(特許請求の範囲) 特公昭33−3748号公報(発明の詳細な説明) 特開昭48−79896号公報(発明の詳細な説明) 特表2000−510180公報(特許請求の範囲)
本発明はエステル交換反応またはエステル化反応及び重縮合反応に使用した触媒・添加物に起因する重縮合・溶融紡糸時の熱・酸化分解反応を抑制することで、芯鞘型複合繊維の芯部に使用した際の糸強度・伸度バラツキ、単糸繊度バラツキ、さらには布帛にした際のタテスジが発生しにくい改質ポリエステルの製造方法を提供することである。
上記従来技術では解決できなかった課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、回分式重縮合の際に、アンチモン原子含有化合物をアンチモン原子換算で100〜700ppmと数平均分子量400〜8000のポリオキシアルキレングリコールを10〜50重量%とを添加するポリエステルの製造方法において、ポリエステルの極限粘度が目標極限粘度の85〜98%に到達した時点で3価のリン化合物をリン原子換算で10〜200ppm添加することにより達成できる。
本発明の方法により得られた改質ポリエステルは、従来の製造方法で得られたポリエステルに比べて、重縮合・溶融紡糸時の熱・酸化分解反応を抑制でき、これにより芯鞘型複合繊維の芯部に使用した際の糸強度・伸度バラツキ、単糸繊度バラツキ、さらには布帛にした際のタテスジ発生を抑制することができる。
また本発明では、3価のリン化合物を重縮合反応後半の最適時点で添加しているため、重縮合反応の遅延や吐出工程トラブルの発生を抑制することができる。
本発明の製造方法は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体をエステル化またはエステル交換反応させた後、重縮合反応させ合成されるものである。ポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含む改質ポリエステル共重合体が好適である。
本発明におけるポリオキシアルキレングリコールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。これらポリオキシアルキレングリコールを単一で用いても良いし、混合して使用してもよい。得られるポリエステルの均質性の観点から、例えば主成分がポリエチレンテレフタレートであるポリエステルにはポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
本発明は、数平均分子量400〜8000のポリオキシアルキレングリコールを10〜50重量%共重合する。ポリオキシアルキレングリコールの数平均分子量が大きすぎると共重合せずポリエステル中で塊を形成しやすく、小さすぎるとポリマ耐熱性に劣る。ポリオキシアルキレングリコールの共重合量が多すぎるとポリマ耐熱性が低下するため紡糸性や糸物性に劣り、少なすぎると接触冷感性に劣る。ポリオキシアルキレングリコールの重量平均分子量は800〜6000が好ましく、共重合量は15〜40重量%が好ましい。
ポリエステルの着色や耐熱性の悪化は、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社、初版、P.178〜198)に明示されているように、ポリエステルの副反応によって起こる。このポリエステルの副反応は、金属触媒によってカルボニル酸素が活性化し、β水素が引き抜かれることにより、ビニル末端基成分およびアルデヒド成分が発生する。このビニル末端基によりポリエンが形成されることによってポリマーが黄色に着色し、また、アルデヒド成分が発生するために、主鎖エステル結合が切断されるため、耐熱性が劣ったポリマーとなる。リン化合物は、重縮合触媒と適度に相互作用することにより、重縮合触媒の活性を調節する役割を果たす。しかし従来のリン化合物を重縮合反応開始前に添加を行う方法では、重縮合触媒の副反応の活性とともに重縮合活性をも低下させることは避けられなかった。ところが本発明によると、重縮合触媒の重合活性を十分に保持したままに、副反応活性のみを極めて小さく抑えることができる。
そのため、リン化合物をポリエステルの重縮合反応が実質的に完了した後ではなく、実質的に重縮合反応が完了する前に添加することにより、重縮合反応完了直後に起こるβ水素の引き抜きとビニル末端基成分およびアルデヒド成分の生成を特異的に抑制出来ることを見出したものである。これは、従来のリン化合物やリン化合物の添加方法では達成し得なかったものである。
本発明において、ポリエステルの極限粘度が目標とする極限粘度の85〜98%に到達した時点で3価のリン化合物を添加する。目標極限粘度の85%より早い段階でリン化合物を添加すると重縮合反応が遅延してしまい、ポリマー色調や耐熱性が悪化するため好ましくなく、目標極限粘度の98%より遅い段階でリン化合物を添加すると、十分な触媒失活効果を得ることができず、ポリマー色調や耐熱性に悪影響を及ぼす。またリン化合物が均一に分散せず、ポリエステルの重縮合が実質的に完了した後に添加することと同じとなるため、重縮合反応器から安定的に吐出できず、ガット切れによりチップ形状が不均一となるため、吐出工程や後の乾燥工程や溶融紡糸工程での操業トラブルを引き起こす可能性がある他、ポリマーの品質斑を引き起こす可能性があり、好ましくない。リン化合物を添加する段階としてより好ましくは目標極限粘度の90〜97.5%であり、更に好ましくは92〜96%である。
リン化合物を添加する時期におけるポリエステルの極限粘度値は、直接サンプリングを行い後述する方法で極限粘度の測定を行っても良いが、重縮合反応器の撹拌翼にかかるトルク負荷から算出しても良い。またリン化合物は、数回に分割して添加しても良く、フィーダーなどで継続的に添加を行っても良い。
また本発明の回分式重縮合の場合においては、リン化合物を添加する場合、リン化合物を単独で添加しても良く、エチレングリコール等のジオール成分に溶解させた状態または分散させて添加しても良い。ただし、エチレングリコール等のジオール成分を多量に持ち込んで添加を行うと、ポリエステルの解重合(ポリエステル主鎖の切断反応)が進行してしまうため、リン化合物を単独で添加するのが好ましい。
本発明において、3価のリン化合物とは、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィナイト系化合物、ホスフィン系化合物およびそれらのアルキルエステルまたはアリールエステルのことを指す。これら3価のリン化合物は、副反応により発生する過酸化物(R−O−OH:副反応を更に促進する)をアルコール(R−OH)に変換し、自らは5価のリン化合物に変わることでポリエステルの副反応を特に抑制する。
本発明において、3価のリン化合物は、得られる改質ポリエステルに対してリン原子換算で10〜200ppmとなるように添加する。添加量が10ppmに満たない場合は十分な触媒失活効果を得ることができず、ポリマー色調や耐熱性に悪影響を及ぼすため好ましくなく、添加量が200ppmを超えた場合は重縮合反応が遅延してしまい、ポリマー色調や耐熱性が悪化するばかりでなく、リン化合物が均一に分散せず、重縮合反応器から安定的に吐出できなくなり、吐出工程や後の乾燥工程や溶融紡糸工程での操業トラブルやポリマーの品質斑を引き起こす可能性があり、好ましくない。リン添加量は、12〜150ppmが好ましく、更に好ましくは15〜100ppmである。
本発明において添加する3価リン化合物は具体的には、下記式1で表されるビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(融点:234〜240℃)や、式2で表されるトリス[2−{(2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ}エチル]アミン(融点:190〜210℃)、式3で表される6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン(融点:115℃〜125℃)、式4で表されるテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(融点:234〜240℃)が好ましい。これらの化合物はそれぞれ、式1はアデカスタブPEP−36((株)ADEKA製)、式2はIRGAFOS12(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、式3はSumilizer−GP(住友化学(株)製)、式4はGSY−P101(大崎工業(株)製)として入手可能である。これらの化合物は単独で用いてもまたは併用してもよい。
Figure 2009084357
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Figure 2009084357
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本発明において、重縮合触媒としてアンチモン原子含有化合物を添加後に重縮合反応系内の減圧を開始してから改質ポリエステルの重縮合反応が実質的に完了する前までの間に添加するリン化合物は、融点が100〜400℃であることが好ましい。融点が100℃以下であると減圧条件下でリン化合物を添加する際にリン化合物が飛散してしまうため、改質ポリエステル中に所望量のリン化合物が添加されず好ましくない。減圧条件下でリン化合物が飛散せず、さらには均一に分散させるようにリン化合物の融点は115℃〜350℃の範囲が好ましく、175〜300℃の範囲が更に好ましい。
リン化合物を添加する際には、反応系内に溶解または溶融可能であり、本発明で得られるポリエステルと実質的に同一成分のものから成る容器に充填して添加することが好ましい。このような容器にリン化合物を入れて添加することで、減圧条件下の重縮合反応器に添加したリン化合物の飛散による減圧ラインへの流出を抑制でき、リン化合物をポリマー中に所望量添加することができる。本発明でいう容器とは、リン化合物がまとめられるものであればよく、例えば、ふたや栓を有する射出成形容器、あるいはシートやフィルムをシールあるいは縫製などで袋状にしたものなどが含まれる。また、上記の容器には孔などの空気抜きを作ることが更に好ましい。空気抜きを作った容器であれば、減圧条件下の重縮合反応器に添加しても、空気膨張による容器の破裂でリン化合物が減圧ラインに流出したり、重縮合反応器の上部や壁面に付着することがなく、ポリマー中にリン化合物を所望量添加することができる。この容器の厚さは、厚すぎると溶解、溶融時間が長くかかるため厚さは薄いほうがよいが、リン化合物の封入・添加作業の際に破裂しない程度の厚さを確保する。そのためには10〜500μmの厚さで均一で偏肉のないものが好ましい。
なお、ポリエステルには目標極限粘度設定値の85〜98%の重縮合反応中に3価のリン化合物を添加する以外に、重縮合反応開始前の段階で3価または5価のリン化合物を目的を損なわない範囲で添加しても差支えない。
本発明において、重縮合触媒としてアンチモン原子含有化合物を使用するが、得られる改質ポリエステルに対してアンチモン原子換算で100〜700ppm添加する。アンチモン原子含有化合物の含有量が多すぎると、重縮合反応が早期に終了するため、ポリマーにムラが生じ吐出安定性に劣りやすく、またポリエステル中に活性のあるアンチモン化合物が残るため、乾燥・紡糸工程で熱をうけた際、ポリマーの耐熱性が低下して糸物性が劣りやすい。少なすぎると重縮合反応時間が長くなるため、ポリマー耐熱性に劣りやすく、また重合生産効率も悪くなる。アンチモン原子換算で150〜600ppmとなるように添加するとポリマー耐熱性や重合生産性がより好ましく、更に好ましくは200〜500ppmである。
本改質ポリエステルには、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、シリコン、カーボンブラック等の粒子のほか、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を、目的を損なわない範囲で含有しても差支えない。
本発明の改質ポリエステルは、繊維形成性重合体の構成成分として用いることで、今までにない接触冷感性を有し、かつ繊維形成性重合体の繊維物性を損なわない範囲で合成繊維を得ることができる。
繊維の形態としては、繊維形成性重合体を鞘成分とし、本改質ポリエステルを分散した繊維形成性重合体を芯成分とした芯鞘型複合繊維に用いると強度を保持しかつ接触冷感効果が発現する繊維を得ることができるので好ましい。芯成分は接触冷感性を付与するため本改質ポリエステルを芯成分に対して10〜70重量%含有させることが好ましい。
また、芯鞘の複合比率は繊維の接触冷感性、強度保持の観点から重量比で芯:鞘=80:20〜40:60とすることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
Figure 2009084357
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノールで溶解したポリエステル希釈溶液の25℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値である。cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
(2)吐出安定性
重縮合反応が終了後、重縮合反応器の吐出口金からポリマーを30本のストランド状にして落下させ、カッターでチップ状に切断する際、吐出口金から落下するストランドの切断回数を10分間計測して、0回は◎、1〜3回は○、4回以上は×とした。但し、回分式重縮合器で吐出する場合、吐出開始直後は吐出状態が安定しないので、吐出開始3分経過後から測定した。
(3)糸強度、糸伸度バラツキ
東洋ボールドウィン社製テンシロン引張り試験機を用いて試長20cm、引張速度10cm/分の条件で応力−歪み曲線から値を求めた。N=50測定した時の標準偏差が、強度は0.1以下、伸度は1.5以下だと優れたポリマーといえる。
(4)単糸繊度バラツキ
糸の断面を顕微鏡で写真撮影し、適宜コピーで拡大した後、単糸断面の縦横直径を測定し平均する。N=50単糸測定した時のCV%(標準偏差/平均値×100)が、1.0以下だと優れたポリマーだといえる。
(5)布帛タテスジ品位
タテスジ品位を目視により10人のパネラーに10点満点で採点してもらい下記の通り3段階で評価した。◎、○をタテスジなく合格レベルと判断した。
◎ : 10人のパネラーの平均点が9点以上
○ : 10人のパネラーの平均点が6点以上8点以下
× : 10人のパネラーの平均点が6点未満
(6)接触冷感性(Qmax)
実施例および比較例に記載の筒編みおよび布帛に対し、カトーテック(株)製のサーモラボ2型測定器を用い、室温20℃、湿度65%RHの部屋で、BT−Boxを30℃に調節し、十分調湿したサンプルの上にBT−Box(圧力10g/cm)をのせ、10℃の温度差での単位面積あたりの熱流速を測定した。本測定方法においてQmaxが0.1(W/cm)以上を合格レベルとした。
実施例1
予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートが約100kg仕込まれ、温度250℃、圧力1.5×10Paに保持されたエステル化反応槽に高純度テレフタル酸(三井化学社製)60.5kgとエチレングリコール(日本触媒社製)26.0kgのスラリーを3時間かけて順次供給し、供給終了後も更に1時間かけてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物74.5kgを重縮合反応槽に移送した。
そのエステル化反応生成物に、シリコン(東芝シリコーン製、TSF433)120gとリン酸10g(ポリマーに対してリン原子換算で27ppm)を添加した。6分間撹拌した後、三酸化アンチモン45g(ポリマーに対してアンチモン原子換算で375ppm)、酢酸マンガン10g、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、イルガノックス1010)150gを添加した。更に5分間撹拌した後、数平均分子量3300のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製)をポリマーへの共重合量が30重量%となるように30kg添加した。5分間撹拌した後、無水トリメリット酸(三菱ガス化学(株)製)300gをエチレングリコールスラリーにして添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から280℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。
所定の攪拌トルク(目標の極限粘度設定値)の95%となった時点(減圧を開始してから3時間10分の時点)で、反応缶上部よりポリマーに対して250ppm(ポリマーに対してリン原子換算で25ppm)相当のビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト((株)ADKA製、アデカスタブPEP−36、融点236℃、予め、ポリエチレンテレフタレートを射出成形により厚さ200μm、内容積50cmの容器およびそのふたに成形した容器(容器とふたを合わせた重量は30g)に詰めたもの)を添加した。その後反応を継続し、所定の攪拌トルク(目標の極限粘度設定値)に到達したら反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、カッティングして改質ポリエステルのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間20分であり、ポリマーの吐出安定性は極めて良好であった。得られた改質ポリエステルの極限粘度は1.05であった。
得られた改質ポリエステルペレットは次の方法で芯鞘型複合繊維とし、各種物性評価を行った。改質ポリエステルペレットとポリエチレンテレフタレートペレットを別々に溶融し、10段の静止混練子を組み込んだパックから改質ポリエステルのブレンド比率が55重量%となるように吐出させ芯成分とし、ポリエチレンテレフタレートペレットを鞘成分として鞘成分比率が40重量%となるように1500m/minで溶融紡糸し、得られた未延伸糸を延伸倍率2.5倍で延伸し、44detx/12フィラメントの芯鞘型複合繊維を得た。
得られた繊維の強度バラツキは0.05、伸度バラツキは0.9、単糸繊度バラツキは0.6と良好な物性を得た。
得られた芯鞘型複合繊維を用いて28ゲージで編製し、布帛サンプルを得た。得られた編物のタテスジ品位、接触冷感性は良好であった。
本発明の製造方法により品位良好のポリマーを得た。
実施例2〜4
改質ポリエステルの目標極限粘度設定値の85〜98%の時点で添加する3価のリン化合物の種類を変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。得られた繊維の物性は良好であり、布帛した際のタテスジ品位も良好であった。
実施例5〜7
改質ポリエステルに添加するアンチモン化合物の添加量を変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。得られた繊維の物性は良好であり、布帛した際のタテスジ品位も良好であった。
実施例8〜10
改質ポリエステルに添加するポリアルキレングリコールの平均分子量を変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。得られた繊維の物性は良好であり、布帛した際のタテスジ品位も良好であった。
実施例11〜13
改質ポリエステルに添加するポリアルキレングリコールの添加量を変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。得られた繊維の物性は良好であり、布帛した際のタテスジ品位も良好であった。実施例1対比、ポリオキシエチレングリコールの添加量を減らすと、問題ない範囲ではあるが接触冷感性が劣った。
実施例14〜16
改質ポリエステルの目標極限粘度設定値の85〜98%の時点で添加する3価のリン化合物の添加量を変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。得られた繊維の物性は良好であり、布帛した際のタテスジ品位も良好であった。
実施例17〜19
改質ポリエステルの目標極限粘度設定値の85〜98%の時点で添加する3価のリン化合物の添加時期を変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。得られた繊維の物性は良好であり、布帛した際のタテスジ品位も良好であった。
比較例1
改質ポリエステルに添加するアンチモン化合物の添加量を100ppm未満の量に変更した以外は実施例1と同様の方法にて重縮合反応を行った。重合活性が足りず目標の極限粘度に到達することができなかった。
比較例2
改質ポリエステルに添加するアンチモン化合物の添加量を700ppmを超えた量に変更した以外は実施例1と同様の方法にて重縮合反応を行った。重縮合反応時間が早すぎポリマーにムラが生じたためか吐出安定性は悪く、得られた芯鞘型複合繊維は伸度・単糸繊度バラツキが大きく、品位の劣る繊維であった。
比較例3
改質ポリエステルに添加するポリオキシアルキレングリコールの平均分子量を400未満のものに変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。繊維物性はいずれも劣り、品位の劣る繊維であった。
比較例4
改質ポリエステルに添加するポリオキシアルキレングリコールの平均分子量を8000を超えたものに変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。吐出安定性は悪く、タテスジ品位等の物性も劣る繊維であった。
比較例5
改質ポリエステルに添加するポリオキシアルキレングリコールの添加量を10重量%未満の量に変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。繊維物性のバラツキは問題なかったが、接触冷感性に劣る繊維であった。
比較例6
改質ポリエステルに添加するポリオキシアルキレングリコールの添加量を50重量%を超える量に変更した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。吐出時はガットが頻繁に切断し、吐出安定性が悪かった。またタテスジ品位等の物性も劣る繊維であった。
比較例7
改質ポリエステルの目標極限粘度設定値の85〜98%の時点で添加する3価のリン化合物の添加量を添加しなかった以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。繊維物性はいずれも劣り、品位の劣る繊維であった。
比較例8
改質ポリエステルの目標極限粘度設定値の85〜98%の時点で添加する3価のリン化合物の添加量を200ppmを超える量に変更した以外は実施例1と同様の方法にて重縮合反応を行った。しかしリン化合物の添加量が多すぎたため重縮合触媒が目標の極限粘度設定値に到達する前に失活し、狙いとするポリエステルを得ることができなかった。
比較例9
改質ポリエステルの目標極限粘度設定値の85〜98%の時点で添加する3価のリン化合物の添加時期を目標極限粘度設定値の85%未満の時期に変更した以外は実施例1と同様の方法にて重縮合反応を行った。しかしリン化合物の添加時期が早すぎたため重縮合触媒が目標の極限粘度設定値に到達する前に失活し、狙いとするポリエステルを得ることができなかった。
比較例10
改質ポリエステルの目標極限粘度設定値の85〜98%の時点で添加する3価のリン化合物の添加時期を重縮合反応が実質的に完了した後に(目標とする極限粘度に達した後)添加した以外は実施例1と同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。吐出時はガットが頻繁に切断し、吐出安定性が悪かった。またタテスジ品位等の物性も劣る繊維であった。
比較例11〜13
改質ポリエステルの目標極限粘度設定値の85〜98%の時点で添加する3価のリン化合物を3価ではないリン化合物に変更した以外は実施例1と同様の方法にて同様の方法にてポリマーを得、溶融紡糸して芯鞘型複合繊維および布帛を得た。いずれもポリマーの耐熱性が悪いため、タテスジ品位等の物性が劣る繊維であった。
Figure 2009084357
Figure 2009084357

Claims (4)

  1. 回分式重縮合の際に、アンチモン原子含有化合物をアンチモン原子換算で100〜700ppmと数平均分子量400〜8000のポリオキシアルキレングリコールを10〜50重量%とを添加するポリエステルの製造方法において、ポリエステルの極限粘度が目標極限粘度の85〜98%に到達した時点で3価のリン化合物をリン原子換算で10〜200ppm添加することを特徴とする改質ポリエステルの製造方法。
  2. 3価のリン化合物の融点が、100〜400℃であることを特徴とする請求項1記載の改質ポリエステルの製造方法。
  3. 3価のリン化合物が、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス[2−{(2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ}エチル]アミン、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の改質ポリエステルの製造方法。
  4. 3価のリン化合物を添加するに際し、製造するポリエステルと同じポリエステルを主体とする容器に入れて添加することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の改質ポリエステルの製造方法。
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CN102690410A (zh) * 2012-05-11 2012-09-26 浙江恒逸高新材料有限公司 一种改性聚酯及其纤维的生产方法
WO2014050652A1 (ja) * 2012-09-26 2014-04-03 東レ株式会社 共重合ポリエステルおよびそれからなるポリエステル繊維

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