JP2009084102A - セラミックスハニカム構造体の焼成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】棚板の上にトチを載せ、トチのセルを耐熱性無機物質の粉末で埋めるとともに、トチの上面に薄い粉末の層を形成する。この粉末の層を介して生素地のセラミックスハニカム構造体をトチの上に載置し、焼成する。セラミックスハニカム構造体の開口端面でのワレを防止できるとともに、粉末の焼結をも防止することができる。この粉末の平均粒径はセル壁の厚さ以下でセル壁の平均細孔径の1/2以上である。
【選択図】図1
Description
これらの方法は、セラミックスハニカム構造体のセル壁に生じるワレの防止、および、セラミックスハニカム構造体と焼成棚板との付着防止を目的としている。
すなわち、前者では、焼成炉で、棚板の上にトチと呼ばれる焼成台を乗せ、その上に生素地のセラミックスハニカム構造体を載せて焼成することとなる。ここで、トチとは、セラミックスハニカム構造体を例えば厚さ20〜30mmになるように開口端面に平行に切断したもので、トチのハニカム構造の開口端面(格子面)に生素地のセラミックスハニカム構造体の開口端面が当接するように載置される。
その他、ハニカム形状ではないセラミックス平板の平らな上面に、耐熱性無機物質の粉末を積層した特許文献3が知られている。
さらに、この耐熱性無機物質の粉末は、いったん焼成されると硬化してしまう。すると、この無機物質の粉末を使用することによる摩擦抵抗力の緩和効果が得られなくなるから、一度使用して硬化した耐熱性無機物質の粉末の焼成台は、粉砕に工数を要するので粉砕して再使用することが難しく、焼成終了後は全て回収し、次に焼成する際には再び新しい耐熱性無機物質の粉末を使用する必要があった。
さらにまた、耐熱性無機物質の粉末の焼成台は、その厚さを均一かつ平坦に形成し、その上に載せたセラミックスハニカム構造体の開口端面に均一に当接されて載置されなければならない。セラミックスハニカム構造体が傾いて載置されると、セラミックスハニカム構造体が歪んだり、場合によってはワレることがある。これを避けるには粉末製の焼成台の上面を平坦にする必要がある。しかしながら、耐熱性無機物質の粉末のみの焼成台では、必ず焼成台の外周側の厚さが漸次減少するため、焼成台全体の厚さを均一かつ平坦にするには、多くの工数を要していた。その結果、焼成台作製、焼成、焼成台回収の作製サイクルを繰り返さなければならず、多大な工数が必要となっていた。
さらに、特許文献3に記載された発明の場合には、特許文献2に記載された発明の場合と同じく、耐熱性無機物質の粉末が、焼成後セラミックス平板にくっつき、セラミックス平板の表面の剥離が生じる。そのため、焼成を繰り返すと、セラミックス平板表面の剥離が多くなり、セラミックハニカム構造体の開口端面がセラミックス平板に均一に当接せず、焼成時に、セラミックスハニカム構造体が歪んだりワレる場合があった。
また、この発明は、焼成台の作製に係る工数を減らすことができるセラミックスハニカム構造体の焼成方法を提供することを、その目的としている。
また、焼成時、セラミックスハニカム構造体とトチとの間に中間層を介在させたので、トチとセラミックスハニカム構造体との焼結(貼り着き)を防ぐことができ、セラミックスハニカム構造体のトチからの剥離が容易となる。
さらに、厚さ5mm以下の中間層であることから、焼成後に、耐熱性無機物質の粉末が硬化しても、容易に粉砕して再度使用することが可能となり、焼成終了後に回収する必要がなく、次に焼成する際に再び新しい耐熱性無機物質の粉末を使用する必要がないため、工数を低減することが可能となる。
また、ハニカム形状のトチの各セルを耐熱性無機物質の粉末で埋めてトチの上面に中間層を形成するので、耐熱性無機物質の粉末を焼成台全体に均一かつ平坦に形成することが容易となる。
この場合、中間層の厚さは5mm以下である。
中間層の厚さが5mmを超えると、耐熱性無機物質の粉末の厚さを均一かつ平坦に形成し難くなり、焼成後、硬化した粉末を粉砕して再使用するのに手間がかかるようになるので好ましくない。
また、中間層の好ましい厚さは、0.01〜3mmである。この範囲であれば、焼成後、硬化した粉末を粉砕して再使用するのに容易となるとともに、摩擦抵抗力の緩和の効果を有する。0.01mm未満の場合、耐熱性無機物質の粉末がハニカム構造体の膨張収縮に伴い発生する摩擦抵抗力の緩和の効果が小さくなり、ハニカム構造体の端面がワレ易くなる。
なお、この発明においては、ハニカム形状のトチの開口端面のセル壁上に中間層が形成されていればよい。ハニカム形状のトチの全てのセルを耐熱性無機物質の粉末で埋め尽くす必要はない。さらに、ハニカム形状のトチのセルの中を全て耐熱性無機物質の粉末で埋め尽くす必要はない。
この発明においては、耐熱性無機物質の粉末が、焼成して得られるセラミックスハニカム構造体と同一または同系統の材料であると、トチの上面を構成するこの粉末とセラミックスハニカム構造体との熱膨張係数差が小さくなり、トチとセラミックスハニカム構造体との当接面に生じる摩擦抵抗力の緩和効果が大きくなる。
耐熱性無機物質の粉末としては、コージェライト、ムライト、アルミナ、シリカ、炭化珪素、窒化珪素等の耐熱性の高い粉末、あるいはこれらの混合粉末が、焼成時の高温に曝されても変形しにくいことから適している。
ここで、同系統の材料であるとは、例えば、焼成して得られるセラミックスハニカム構造体がコージェライトを主成分とする場合は、耐熱性無機物質の粉末もコージェライトを主成分とすることを意味する。
また、耐熱性無機物質の粉末は、その全量が焼成して得られるセラミックスハニカム構造体と同系統の材料である必要は必ずしもなく、少なくとも10質量%以上が焼成して得られるセラミックスハニカム構造体と同系統の材料であれば、トチとセラミックスハニカム構造体との当接面に生じる摩擦抵抗力が緩和されるため、トチとセラミックスハニカム構造体との当接面であるセラミックスハニカム構造体の開口端面に割れが発生しにくくなる。
平均粒子径がセル壁の厚さ以下であれば、トチの開口端面であるセル壁面に粉末を付着・保持することが容易となり、トチの上面に粉末の中間層を確実に形成することができる。望ましくは、セル壁厚さの1/2以下、さらに望ましくは1/3以下である。
また、耐熱性無機物質の粉末の平均粒子径は、トチのセル壁に存在する細孔の平均細孔径の1/2以上、望ましくは、細孔の平均径(例えば20μm)以上とする。粉末の平均粒子径がセル壁の細孔の径よりも小さ過ぎると粉末が細孔内に侵入する可能性があり、焼成時にセラミックスハニカム構造体と反応する可能性が高くなり、剥離しにくくなる。
耐熱性無機物質の粉末の平均粒径は、上記の理由から、20〜150μmがより好ましく、さらには30〜100μmが好ましい。
なお、トチの高さ(軸方向の長さ)は5〜50mmとする。望ましくは10〜30mmである。トチの高さが低すぎると(トチ自体が扁平で薄すぎると)割れやすくなる。
トチの厚さが50mmを超えると、セラミックスハニカム構造体の長さに対する焼成台としてのトチの厚さが無視できなくなり、生素地セラミックスハニカム構造体の焼成炉内への搭載量が減少する。その結果、製造コストが上昇する。
まず、図1〜図3を参照して、この実施形態に係るセラミックスハニカム構造体について説明する。
コージェライト組成に配合したセラミック原料粉末、成形助剤、および添加剤を混合してから所定量の水を加えて混練する。その後、押出成形用金型を用いてこれを所定のセラミックスハニカム構造体に押出成形し、さらに乾燥炉で乾燥して生素地のセラミックスハニカム構造体を得た。
次に、焼成炉により、この生素地のセラミックスハニカム構造体を、以下に示す方法により、所定温度下で焼成して、所定の形状と所定の強度を持ち、そのセル壁3に多数の微細な細孔を持つセル壁厚さ0.3mm、セルピッチ1.46mm、外径300mm、長さ400mmのセラミックスハニカム構造体1を得た。
すなわち、図1に示すように、このセラミックスハニカム構造体1は、外周面(胴面)を構成する外皮2と、その内周側に各々直交するよう形成されたセル壁3と、これらのセル壁3により画成された多数のセル4とを有することとなる。
このセラミックスハニカム構造体1は、ディーゼルエンジンの排ガスのフィルタとして、金属製収納容器内で動かないように、収納容器内周面とセラミックスハニカム構造体の外周面との間に配置された把持部材により強固に把持されて収納されて使用される。
上述のようにして製造した生素地のセラミックスハニカム構造体1を準備するとともに、同じ素材からなるトチ5を得た。トチ5の厚さ(高さ)は10mm、そのセルを構成するセル壁の厚さは0.3mm、セル壁の平均細孔径(細孔の平均的な直径)は20μmとする。そのトチの製法は、以下の通りである。すなわち、上述の生素地のセラミックスハニカム構造体を、厚さが10mmとなるように切断して形成した。
次に、セラミック製の棚板6の水平な上面6Aにこのトチ5を載置してトチ5の開口端面(格子面)の一方を上面とする。
そして、このトチ5の上方から耐熱性無機物質の粉末を振りかけてそのセル4内を埋めるとともに、ヘラを使用してトチ5の上面に中間層7Aを形成する。このとき、粉末はトチ5の外面を覆うような断面が台形状の層7を形成する。中間層7Aの厚さtは1〜5mmとする。
このトチの上に中間層7Aを介して上記セラミックスハニカム構造体1をその開口端面(格子面)が当接面となるように(円筒体の軸線が垂直となるように)搭載して焼成炉中に装入し、1400℃での焼成を行う。
また、平均粒径120μmのコージェライト粉末、平均粒径120μmのムライト粉末、平均粒径120μmのアルミナ粉末を、表1に示す配合比で混合して、これらが混合された耐熱性無機物質の粉末を準備した。
(1)セラミックスハニカム構造体の下面のワレ
セラミックスハニカム構造体の焼成台に当接している開口端面を目視検査し、セルが2箇所以上連続して切断していればワレと判定した。同じ条件で試験を行い、焼成体数に対するワレ発生数の比率をワレ発生率とし、ワレ発生率が2%以下を◎、2%超〜5%を○、5%超〜10%を△、10%長を×で表記した。
(2)焼成台作製工数の評価
評価基準は、比較例3の粉末のみの焼成台の作成工数を1として、各実施例での焼成台作製に要した工数を相対的に、1以上であったものを×、1未満0.9以上であったものを△、0.9未満0.8以上であったものを○、0.8未満であったものを◎として評価した。
焼成後、セラミックスハニカム構造体を焼成台から取り外す際、セラミックスハニカム構造体の焼成台に当接している開口端面とトチとの焼結がなく容易に取り外せたものを○、トチとの焼結が若干生じたが破損なく取り外せたものを△、トチと焼結してハニカム構造体の焼成台に当接している開口端面が破損してしまったものを×で表記した。
(4)総合評価
(1)〜(3)の結果で、(1)〜(3)に×が1つでもある場合を×、△が一つでもある場合を△、◎が2つ以上ある場合を◎、その他の場合を○で評価した。
耐熱性無機物質の粉末からなる中間層の厚さが1.0〜1.5mmであると、セラミックスハニカム構造体のトチに当接している開口端面には粉末がほとんど付着しないことが判る。
さらに、耐熱性無機物質の材料については、コージェライト、ムライト、アルミナのいずれを用いた場合でも割れ発生率は10%以下であることが判る。
総合評価が最も高かったものは、耐熱性無機物質の粉末の平均粒径が80〜100μmでかつ中間層の厚さが1.0〜1.5mmの実施例13,14,18,19であった。
2 外皮、
3 セル壁、
4 セル、
5 トチ、
6 棚板
7A 中間層。
Claims (3)
- 生素地のセラミックスハニカム構造体をトチを用いて焼成するセラミックスハニカム構造体の焼成方法であって、
棚板の水平な上面に、一方の開口端面を下にしてハニカム形状のトチを載置し、
このトチの各セルを耐熱性無機物質の粉末で埋めるとともに、トチの上面に耐熱性無機物質の粉末からなる厚さ5mm以下の中間層を形成し、
この中間層の上に、一方の開口端面を下にして生素地のセラミックスハニカム構造体を載置して焼成するセラミックスハニカム構造体の焼成方法。 - 上記トチまたは耐熱性無機物質の粉末は、上記セラミックスハニカム構造体と同じ材料で形成された請求項1に記載のセラミックスハニカム構造体の焼成方法。
- 上記耐熱性無機物質の粉末は、その平均粒子径が上記トチのセル壁の厚さ以下であるとともに、このセル壁の平均細孔径の1/2以上の大きさである請求項1または請求項2に記載のセラミックスハニカム構造体の焼成方法。
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