JP2009083119A - 脆性材料基板の加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ビームスポットBSを分断予定ラインPに沿って相対移動させることにより加熱する加熱工程と、冷却スポットをビームスポットが走査された軌跡に沿って相対移動させて冷却する冷却工程とによりクラックを形成する脆性材料基板の加工方法であって、(a)ビームスポットの幅より小さく絞った第一冷却スポットCS1を、ビームスポットの直後に追随させて相対移動させることにより、浅いクラックS2を進展する第一冷却工程と、(b)ビームスポットの幅以上に広げた第二冷却スポットCS2を、第一冷却スポットが走査された軌跡に沿って相対移動させることにより、先に形成された浅いクラックを基板の厚み方向に浸透させる第二冷却工程とが連続して行われるようにする。
【選択図】図5
Description
ここで脆性材料基板とは、ガラス基板、焼結材料のセラミックス、単結晶シリコン、半導体ウエハ、サファイア基板、セラミック基板等をいう。
なお、以下の説明において「クラックの浸透」とは、便宜上、クラックが基板の深さ方向(厚み方向)に進行する状態をいい、クラックが基板の面方向に進行する状態(「クラックの進展」という)とは区別して用いることとする。
ガラス基板を分断する工程では、例えば特許文献1に記載されるように、カッターホイールを基板に対し圧接しながら移動することにより、基板上にスクライブラインを刻み、このスクライブラインに沿って基板の厚み方向に曲げモーメントを加えてブレイクすることにより、基板を分断する方法が利用されている。
しかしながら、基板への入熱量を増やして基板温度を高める必要があり、製品によっては基板温度の上昇を避けたい場合がある。また、走査速度を遅くすれば、生産性に影響を及ぼすことになるため、できるだけ高速でクラックを形成することが好ましい。
そこで、スクライブラインを効率よく、しかも確実に形成するために、ビームスポットの後方で、冷却スポット(主冷却スポット)よりもレーザスポット側であって、スクライブラインに沿った領域(例えば特許文献4の実施例1ではビームスポット後端より55mm後方の位置付近)に、予め冷媒を噴射して冷却するアシスト冷却スポットを形成し、また、アシスト冷却スポットの冷媒温度を主冷却スポットの冷媒温度よりも高い冷媒温度に設定し、アシスト冷却スポットおよび主冷却スポットを走査するようにしている。
そして、このようなアシスト冷却を実行することにより、アシスト冷却を実行しない場合に比較して、10%程度クラックの深さを増すことが開示されている。
上記発明において、ビームスポットの幅方向の熱エネルギー強度がビームスポット中央で最大となるにようするのが好ましい。
これにより、ビームスポット中央が最も加熱されるようになり、第一冷却スポットによる冷却が行われたときに、ビームスポット中央で温度差が最大になるので、熱応力(引張応力)の集中部分をビームスポット中央、すなわち分断予定ライン上にすることができ、分断予定ラインに沿って浅いクラックを正確に形成することができる。
これにより、分断予定ラインに垂直な面内の温度分布は、2つの温度ピーク(高温領域)の間に、温度極小領域が挟まれた形状になるので、温度極小領域に熱応力(引張応力)が集中することになり、温度極小領域にクラックを正確に形成することができる。
ここで「ミスト化した冷媒」とは、水分を含む冷媒を小さい領域に向けて集中的に噴射するようにして、気化しにくい状態でノズルから噴射することにより、水分の気化による自己冷却現象が生じることなく噴射される状態の冷媒をいう。ミスト化した冷媒を用いた場合は、自己冷却が生じないため、冷媒温度は低温化しないが、小さい領域を集中して冷却することができる。
「気化冷却」とは、水分を含む冷媒を水分が拡散するように噴射して、気化しやすい状態でノズルから噴射することにより、冷媒中の水分の気化による自己冷却現象を利用して冷媒温度を低温化させ、低温化した冷媒で冷却することをいう。気化冷却によれば、小さい領域を集中して冷却することは困難であるが、広範な領域を低温で冷却することができる。
本発明によれば、ミスト化された冷媒により局所的な冷却が容易になり、一方、気化冷却された冷媒により広範囲を強く冷却することができる。
本発明によれば、板厚、材質、加工方法にも依存するが、浅いクラックを形成する工程と、深く浸透するクラックを形成する工程とを連続して行うことにより、100mm/秒〜720mm/秒の高速化を行っても分断予定ラインに沿って確実にクラックを形成することができるようになるので、高速度でクラックを形成することができる。
まず、基板加工装置LS1の全体構成について説明する。水平な架台1上に平行に配置された一対のガイドレール3,4に沿って、図1の紙面前後方向(以下Y方向という)に往復移動するスライドテーブル2が設けられている。両ガイドレール3,4の間に、スクリューネジ5が前後方向に沿って配置され、このスクリューネジ5に、前記スライドテーブル2に固定されたステー6が螺合されており、スクリューネジ5をモーター(図示外)によって正、逆転することにより、スライドテーブル2がガイドレール3,4に沿ってY方向に往復移動するように形成されている。
レーザ装置13は、脆性材料基板の加工用として一般的なものを使用すればよく、具体的にはエキシマレーザ、YAGレーザ、炭酸ガスレーザ又は一酸化炭素レーザなどが使用される。ガラス基板Aの加工には、ガラス材料のエネルギー吸収効率が大きい波長の光を発振する炭酸ガスレーザを使用することが好ましい。
第一冷却ノズル16aから噴射される冷却媒体は、光学ホルダ14からガラス基板Aに照射されるビームスポットBSの長手方向の後端部に向けられ、ガラス基板Aの表面に第一冷却スポットCS1を形成する。第一冷却ノズル16aから噴射される冷却媒体は、ミスト状になるようにして、ノズルから噴射されるようにしてある。
第二冷却ノズル16bから噴射される冷却媒体は、第一冷却スポットCS1の後端部、あるいは第一冷却スポットと一部が重なる位置、あるいは第一冷却スポットCS1の後端から少し離れた位置に向けられ、ガラス基板Aの表面に第二冷却スポットCS2を形成する。第二冷却ノズル16bから噴射される冷却媒体は、ノズルから広く拡散するように噴射され、水分が気化するようにして効率的よく冷却できるようにしてある。
ビームスポットBSと第一冷却スポットCS1と第二冷却スポットCS2とはいずれも長軸を有する楕円形状あるいは長円にしてあり、それぞれ長軸方向が分断予定ラインPに軸合わせしてある。ビームスポットBSの幅(短軸)をWB、第一冷却スポットの幅をWcs1、第二冷却スポットの幅をWcs2とすると、これらの幅の大小関係が、Wcs1<WB≦Wcs2となるようにしてある。
また、第二冷却スポットCS2の幅Wcs2は、ビームスポットBSの幅WBと同じか、少し広い程度になるように設定してある。例えばビームスポットBSの幅(短軸)を2mmとし、第二冷却スポットCS2は短軸が3mm程度にして噴射するようにしてある。
この状態で、回転テーブル12を−X方向(図1では右から左)に移動する。これにより、ガラス基板Aの分断予定ラインPに沿って、ビームスポットBS、第一冷却スポットCS1、第二冷却スポットCS2がこの順で走査されるようにする。
これまで説明したように、ビームスポットBSにより加熱される領域L1では、表面近傍に紙面に垂直な方向の圧縮応力が作用しているがクラックは発生していない。
第一冷却スポットCS1により冷却される領域L2では、表面近傍において紙面に垂直な方向の局所的な引張応力が発生し(図4(c)参照)、浅いクラックS2が形成される。
さらに第二冷却スポットCS2により冷却された領域L3では、基板内部における紙面に垂直な方向の圧縮応力と基板表面における紙面に垂直な方向の引張応力とにより、表面近傍に形成された浅いクラックS2をさらに浸透させる力が働き(図4(d)参照)、深く浸透したクラックS3が形成されるようになる。
例えば、CO2レーザを照射してスクライブ加工する場合に、出力240Wで500mm/秒以下の走査速度でしかスクライブ加工ができなかったが、本発明を用いることにより、同じ基板に対して550mm/秒まで走査速度を速めても加工が可能である。その結果、高速でクロスカットを実現することができる。そして、最大720mm/秒での高速クラック形成が実験的に確認できている。
BS ビームスポット
CS1 第一冷却スポット
CS2 第二冷却スポット
P 分断予定ライン
S2 浅いクラック
S3 深く浸透したクラック
2 スライドテーブル
12 回転テーブル
13 レーザ装置
14 光学ホルダ
16a 第一冷却ノズル
16b 第二冷却ノズル
Claims (5)
- 脆性材料基板に分断予定ラインを設定し、レーザビームのビームスポットを前記分断予定ラインに沿って相対移動させることにより前記基板を軟化温度よりも低温にて加熱する加熱工程と、冷媒の噴射により形成される冷却スポットを前記ビームスポットが走査された軌跡に沿って相対移動させて冷却する冷却工程とにより、前記分断予定ラインに沿ってクラックを形成する脆性材料基板の加工方法であって、前記冷却工程は、
(a)前記冷却スポットの幅を前記ビームスポットの幅より小さく絞った第一冷却スポットを、前記ビームスポットの直後に追随させて相対移動させることにより、浅いクラックを進展する第一冷却工程と、
(b)前記冷却スポットの幅を前記ビームスポットの幅以上に広げた第二冷却スポットを、第一冷却スポットが走査された軌跡に沿って相対移動させることにより、先に形成された浅いクラックを基板の厚み方向に浸透させる第二冷却工程とが連続して行われることを特徴とする脆性材料基板の加工方法。 - ビームスポットの幅方向の熱エネルギー強度がビームスポット中央で最大となる請求項1に記載の脆性材料基板の加工方法。
- 第一冷却工程は、第一冷却スポットが通過した直後における分断予定ラインに垂直な面内の温度分布が、分断予定ラインを挟んで左右両側に一対の高温領域が形成されるとともに、分断予定ライン上に前記高温領域よりも低温である温度極小領域が形成されるように冷却が行われ、前記一対の高温領域と前記温度極小領域との温度差により生じる熱応力により浅いクラックを形成する請求項1に記載の脆性材料基板の加工方法。
- 冷媒には水分が含まれ、第一冷却スポットは水分をミスト化した冷媒が吹き付けられるミストジェットにより形成され、第二冷却スポットは水分を気化して自己冷却により前記ミストジェットよりも低温化した冷媒を幅広に吹き付ける気化冷却により形成される請求項1に記載の脆性材料基板の加工方法。
- ビームスポット、第一冷却スポット、第二冷却スポットの相対移動速度を、100mm/秒〜720/秒で行う請求項1に記載の脆性材料基板の加工方法。
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