〈第1実施形態〉
以下、本発明の一実施形態を第1実施形態として、図1〜図7を参照して説明する。
第1実施形態に係る椅子1は、図1〜図4に示すように、前脚2と、後脚3と、背凭れ4と、座5とを備えたものである。
前脚2及び後脚3はそれぞれパイプ状のフレーム材Fa、Fbを主体としてなり、下端部にキャスタ21、31を備えたものである。本実施形態では、後脚3として機能する左右一対のフレーム材Fbの上端部に肘掛け6を設けている。一方、前脚2として機能する左右一対のフレーム材Faの上端部位は背凭れ4の一部としても機能し、これら一対のフレーム材Faの上端部位間に、背凭れ面を形成する背凭れ本体41を取り付けている。
背凭れ4は、前脚2として機能する左右一対のフレーム材Faの上端部位と、前記背凭れ本体41とからなる。
背凭れ本体41は、例えば樹脂製のシェル構造体であり、巾方向中央部を最も窪ませた平面視略部分円弧状をなすとともに、上端部に向かって漸次後方(背面側)へ傾斜させた3次元形状を有するものである。背凭れ本体41の上端部には、他の部位よりも後方に向かって突出するリブ411を設け、このリブ411が、椅子1を持ち上げる際に掴むことが可能な「背側ハンドル部」として機能する。
前脚2及び後脚3はジョイント部材7によって相対角度変更不能に相互に交叉させた状態で保持されている。ジョイント部材7は、例えば樹脂製の一体品であり、前脚2を後脚3よりも相対的に内側(椅子1の巾方向中心側)に配した状態でこれら脚2、3同士を一体的に連結するものである。左右一対のジョイント部材7間に、ジョイント部材7同士を連結し且つ座5を支持する座支持体8を配している。
座5は、樹脂製のシェル構造体である座本体51からなり、使用者が着座可能な着座位置(X)(図3参照)と、背凭れ4に向かって跳ね上がった跳ね上げ位置(Y)(図4参照)との間で回動可能なものである。なお、以下、座5を説明するにあたって用いる「上」「下」「前」「後」方向は、特に言及しない限り、着座位置(X)に位置付けた座5の「上」「下」「前」「後」方向と一致するものとする。しかして、座5の裏面、すなわち座本体51の裏面に、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けて持ち上げる際に使用者が手を引っ掛けることが可能な座側ハンドル部511と、座5を着座位置(X)に位置付けた場合に他の部位より優先して座支持部材8に当たる優先当たり部512とを設けている。座側ハンドル部511、及び優先当たり部512は座本体51とともに一体に成形されている。
座側ハンドル部511は、座本体51の裏面における前端部近傍部位に設けられ、着座位置(X)において周辺部位よりも下方に突出したものである。そして、この座側ハンドル部511の突出端部511aは、背凭れ4の背面部(具体的には背凭れ本体41の背面部)の形状に対応した形状をなしている。本実施形態では、座側ハンドル部511の突出端部511aを、背凭れ4の背面部の平面視におけるアールに対応させた部分円弧状に切り欠いた形状に設定している。なお、座側ハンドル部511は、座本体51の巾方向に沿って延び、リブとしても機能している。
次に、このような椅子1を図5に示すように、高さ方向に積み重ねる(以下、「垂直スタッキング」と称す)作業手順、及び作用について説明する。
先ず、座5を着座位置(X)から跳ね上げ位置(Y)に移動させる。この作業は、座5の前端部を掴んで背凭れ4側に回動させる操作によって行う。なお、図示しない座5の回転軸は、座5の後端部近傍部位に設定している。座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けると、座5の裏面が正面(前方)を向くため、前記座側ハンドル部511が前方へ突出した姿勢となる。この状態において、使用者は一方の手で、背凭れ4に設けた背側ハンドル部として機能するリブ411を持つとともに、他方の手で座5に設けた座側ハンドル部511を持つ(具体的には座側ハンドル部511に指を引っ掛ける)ことによって安定した姿勢で椅子1を持ち上げることができ、垂直スタッキング作業を簡単に行うことが可能である。本実施形態では、前脚2の後向面に後方に向かって突出させた後方突出部22を設けるとともに、後脚3の前向面に前方に向かって突出させた前方突出部32を設け、垂直スタッキングを行った状態で、相対的に積み重ねる側の椅子1(上方側の椅子1)の後方突出部22及び前方突出部32が、積み重ねられる側の椅子1(下方側の椅子1)の前脚2及び後脚3の所定部位にそれぞれ当たることによって、垂直スタッキング状態でガタツキが生じることを防止するとともに、安定した状態で略垂直に積み重ねることができる。なお、他の椅子1に積み重ねる時点で座5を跳ね上げ位置(Y)から着座位置(X)に戻しておくことによって、当該椅子1に別の椅子1をさらに積み重ねることができるようにしている。また、座を着座位置(X)に位置付けた状態で、上方側の椅子1の座側ハンドル部511が下方側の椅子1に干渉しないようにしている。
次に、このような椅子1を図6に示すように、水平方向に重ねる(以下、「水平スタッキング」と称す)作業手順、及び作用について説明する。
水平スタッキングを行う場合は、着座位置(X)にある座5を跳ね上げ位置(Y)に移動させ、前方の椅子1に対して後方から近付けることにより行う。これにより、相対的に後方側の椅子1の前脚2が、前方側の椅子1の後脚3の内側に位置付けられるとともに、所定距離近付けた時点で、図6のA領域の平断面図を模式的に示した図7に示すように、後方側の椅子1の座側ハンドル部511の突出端部511aが、前方側の椅子1の背凭れ4に当たる。そして、突出端部511aの形状を、背凭れ4の背面側の形状に対応させた円弧状にしているため、この突出端部511aが背凭れ4の背面部に符合して嵌まり、水平スタッキングした椅子1同士の巾方向への位置ずれが抑制され、所定の水平スタッキングピッチを確保できるようにしている。本実施形態では、座側ハンドル部511を、前方に位置する他の椅子1の背凭れ4に当たることによって適正な水平スタッキング位置を決めるストッパとして機能させることにより、水平スタッキングを例えば120mmという小ピッチで行えるように設定している。また、座側ハンドル部511の形状を上述した形状に設定することにより、座側ハンドル部511自体が、適正な水平スタッキング位置を示唆する水平スタッキング位置示唆部として機能している。したがって、水平スタッキングを行う際に、作業者はスタッキング位置を容易に把握できるとともに、適正な水平スタッキング位置にしなければならないという意識をもたずとも、座側ハンドル部511を前方に位置する椅子1の背凭れ4の背面部に当てるだけで、おのずと適正な水平スタッキング位置が確保される。
このように、本実施形態に係る椅子1は、持ち上げる際に使用者の手が引っ掛け可能な背側ハンドル部として機能するリブ411を有する背凭れ4と、着座位置(X)と跳ね上げ位置(Y)との間で回動可能な座5とを備え、座5の裏面に、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けて持ち上げる際に使用者の手が引っ掛け可能な座側ハンドル部511を設けているため、垂直スタッキングを行う場合には、片方の手でリブ411を掴むとともに、他方の手で座側ハンドル部511を掴むことによって、従来のように専用のハンドル部を設けていない座5の一部を持つ態様と比較して、掴み損ねることがなく、持ち上げる作業を安定した姿勢でスムーズに行うことができる。また、予め跳ね上げ位置(Y)に位置付けた状態で座側ハンドル部511を掴む態様であるため、垂直スタッキング作業中に座5が不意に跳ね上がることによって生じ得る不具合、つまり指を挟むという不具合や、安定した持ち上げ姿勢のバランスが崩れるという不具合が生じず、安全性も向上する。さらに、座側ハンドル部511を座5の裏面に設けているため、通常の使用状態、すなわち座5を着座位置(X)に位置付けた状態では座側ハンドル部511が座5の着座面側に露出することがなく、外観を損なうことがない。
特に、座側ハンドル部511を座5の裏面における前端部近傍部位に設けているため、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた場合に、座側ハンドル部511が当該座5の上端部近傍に位置付けられることになり、この座側ハンドル部511に手を掛けるために深く前屈する必要が無く、楽な姿勢で座側ハンドル部511を掴むことができる。
加えて、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた状態で水平方向に重ねることが可能であり、座側ハンドル部511が、前方に位置する他の椅子1の背凭れ4に当たることによって所定の水平スタッキングピッチを確保するためのストッパとして機能しているため、所定の水平スタッキングピッチを確保するために別途専用のストッパが不要となり、部品点数の削減、及び構造の簡略化に資する。また、専用のストッパが不要となるため、その分デザインの自由度が増す。
殊に、座側ハンドル部511が、着座位置(X)において他の部位より下方に突出したものであり、座側ハンドル部511の突出端部511aを、背凭れ4の背面部にフィットする形状にしているため、水平スタッキングした際に、座側ハンドル部511の突出端部511aが前方に位置する椅子1の背凭れ4の背面部にフィットすることによって、水平スタッキングした椅子1同士の巾方向への位置ずれを抑制し、所定の水平スタッキングピッチを確保することができる。
また、座側ハンドル部511の形状を、上述した形状、すなわち背凭れ4の背面部に対応する形状に設定することにより、座側ハンドル部511自体が、適正な水平スタッキング位置を示唆する水平スタッキング位置示唆部として機能するため、水平スタッキングを行う際に、作業者がスタッキング位置を直感的に把握できる。
座5が単一のシェル構造体からなる座本体51を備えたものであり、座本体51に座側ハンドル部511を一体に設けているため、座側ハンドル部511を別途座本体51に組み付ける態様と比較して、組立工程の簡素化、構造の簡略化を有効に図ることができる。また、座側ハンドル部511がリブとしても機能し、座5の強度向上にも資する。
〈第2実施形態〉
次に、本発明の他の実施形態を第2実施形態として、図8〜図16を参照して説明する。なお以下の説明における符号は前記第1実施形態と関係がないものとする。
第2実施形態に係る椅子1は、図8〜図10に示すように、前脚2と、後脚3と、背凭れ4と、座5と、座5を支持する座支持体6とを備えたものである。
前脚2及び後脚3はそれぞれパイプ状のフレーム材Fa、Fbを主体としてなり、下端部にキャスタ21、31を備えたものである。本実施形態では、後脚3として機能する左右一対のフレーム材Fbの上端部に肘掛け7を設けている。一方、前脚2として機能する左右一対のフレーム材Faの上端部位は背凭れ4の一部としても機能し、これら一対のフレーム材Faの上端部位間に、背凭れ面を形成する背凭れ本体(第2実施形態では、背凭れ本体を「背シェル41」と称す)を取り付けている。
背凭れ4は、前脚2として機能する左右一対のフレーム材Faの上端部位と、前記背シェル41とを備えたものである。なお、背シェル41の少なくとも前向面に図示しない張り地を張った背凭れとしても構わない。
背シェル41は、例えば樹脂製のシェル構造体であり、巾方向中央部を最も窪ませた平面視略部分円弧状をなすとともに、上端部に向かって漸次後方(背面側)へ傾斜させた3次元形状を有するものである。背シェル41の上端部には、他の部位よりも後方に向かって突出するリブ411を設け、このリブ411が、椅子1を持ち上げる際に掴むことが可能な「背側ハンドル部」として機能する。
前脚2及び後脚3はジョイント部材8によって相対角度変更不能に相互に交叉させた状態で保持されている。ジョイント部材8は、例えば樹脂製の一体品であり、前脚2を後脚3よりも相対的に内側(椅子1の巾方向中心側)に配した状態でこれら脚2、3同士を一体的に連結するものである。左右一対のジョイント部材8間に、対をなす前脚2同士を連結し且つ座5を図9に示す着座位置(X)と図10に示す跳ね上げ位置(Y)との間で回動可能に支持する座支持体6を配している。
座支持体6は、図11(同図は、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた椅子1の要部を一部省略して示す図である)に示すように、座5の後端部近傍部位に配され座5の回動中心となる回転軸61と、回転軸61から変位した箇所に設けられ、且つ着座位置(X)に位置付けた座5を裏面側から支持する支持フレーム62とを備えたものである。
回転軸61は、各前脚2の内向面からそれぞれ内方に向かって延びる一対の軸要素61aからなり、これら軸要素61aの軸中心を、同一直線上に設定している。
支持フレーム62は、対をなす前脚2同士を連結するものである。本実施形態では、支持フレーム62として横断面略矩形状をなす単一の角パイプを適用しており、図13(同図は、着座位置(X)に位置付けた座5の支持状態を一部省略して示す模式図である)に示すように、着座位置(X)にある座5の裏面(具体的には後述する優先当たり部512)が、支持フレーム62の上向面62aに当たるようにしている。この支持フレーム62を、回転軸61よりも下方であって且つ前方に変位した箇所に設けている。また、支持フレーム62の両端部と前脚2との接続箇所はジョイント部材8によって被覆され、良好な外観を呈するようにしている。
座5は、樹脂製のシェル構造体である座本体(第2実施形態では、座本体を「座シェル51」と称す)と、クッション性を有する座クッション52とを備えたものであり、使用者が着座可能な着座位置(X)と、背凭れ4に向かって跳ね上がった跳ね上げ位置(Y)との間で回動可能なものである。なお、以下、座5を説明するにあたって用いる「上」「下」「前」「後」方向は、特に言及しない限り、着座位置(X)に位置付けた座5の「上」「下」「前」「後」方向と一致するものとする。
座シェル51は、図12(同図は座シェル51を底面側から見た状態を示す図である)に示すように、底壁部51Aと、底壁部51Aの前端部、両側端部、後端部からそれぞれ起立する前壁部51B、両側壁部51C、後壁部51Dとによって上方に開放した概略箱型の構造体をなすものであり、さらに、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けて持ち上げる際に使用者が手を引っ掛けることが可能な座側ハンドル部511と、座5を着座位置(X)に位置付けた場合に他の部位より優先して座支持体6の支持フレーム62に当たる優先当たり部512と、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた場合に他の部位より優先して座支持体6の支持フレーム62に当接する突起部513と、座5の着座位置(X)と跳ね上げ位置(Y)との間での回動時に、その回動動作を妨げない状態で座支持体6の支持フレーム62に摺接し得る摺接部514と、座支持体6の回転軸61を受け容れる軸受け部515とを備えたものである。座シェル51は、これら、各壁部(底壁部51A、前壁部51B、側壁部51C、後壁部51D)、座側ハンドル部511、優先当たり部512、突起部513、摺接部514、及び軸受け部515を一体に有する成型品である。
座側ハンドル部511は、底壁部51Aの前端部近傍部位に設けられ、周辺部位よりも下方に突出した突出部511aと、突出部511aに連続し周辺部位よりも上方に窪ませた凹部511bとからなり、これら突出部511a及び凹部511bに指を引っ掛けることができるようにしている。そして、この座側ハンドル部511の突出端部(具体的には突出部511aの下向面)を、背凭れ4の背面部(具体的には背シェル41の背面)の形状に対応した形状に設定している。なお、座側ハンドル部511は、座シェル51の巾方向に沿って延び、リブとしても機能している。
優先当たり部512は、底壁部51Aの巾方向中央部及び左右両側端部近傍部位の計3箇所に設けられており、本実施形態では、各優先当たり部512を、周辺部位よりも下方に突出し且つ座5の前後方向に延びる複数のリブ(図示例では3本のリブ)から構成している。
突起部513は、底壁部51Aのうち、各優先当たり部512を形成した領域である優先当たり部形成領域51AXよりもさらに後方の領域に設けられ、下方に向かって突出するものである。本実施形態では、底壁部51Aの巾方向中央部からそれぞれ側方に向かって変位した箇所に突起部513を設けている。このことから、本実施形態の座シェル51は、左右一対の突起部513を有するものであるといえる。なお、各突起部513は中実状のものである。
摺接部514は、底壁部51Aのうち、優先当たり部形成領域51AXと、各突起部513を形成した領域である突起部形成領域51AYとの間の領域に設けられ、下方に突出する側面視略部分円弧状をなすものである。摺接部514は、軸受け部515に収容された座支持体6の回転軸61を中心とする円弧状をなすものである。この摺接部514の後方に、突起部513を設けている。具体的には、突起部513の前向面513bを、摺接部514の後方側部位に沿った円弧形状とし、突起部513自体を摺接部514の後方に連続して設けている。これにより、座シェル51が、座5の回動軸を中心とする円弧状の滑らかな曲面の一部に、その円弧から外方に突出した突起(突起部513)を有するものとなる。
軸受け部515は、底壁部51Aのうち、摺接部514の左右両側端部近傍領域に形成され厚み方向に貫通する窓部515aと、各側壁部51Cのうち、摺接部514の形状に対応させて下方に突出させた側面視略部分円弧状の部分に形成され、下方に開口する側面視略下向きU字状の切込部515bとを有するものである。
摺接部514及び軸受け部515は、座シェル51の前後方向中央部よりも後方側に設けられている。これにより、本実施形態の座5は、後端部側の領域にその回動中心を設定したものとなり、前端部が回動時にフリーな回動自由端となる。
なお、本実施形態の座5は、図11に示すように、各軸受け部515にそれぞれ回転軸61を収容した状態、具体的には、窓部515aを介して切込部515bの反開口縁(上縁)に当接又は近接する位置に回転軸61を配した状態で、軸受け部515の窓部515aを下方から被覆するカバー体53を座シェル51に取付可能にしている(図11では説明の便宜上の一方の窓部515aのみをカバー体53によって被覆した状態を示している)。カバー体53は、座シェル51に取り付けた状態において摺接部514と略連続し得る側面視略円弧状をなし、摺接部514と共に、座5の着座位置(X)と跳ね上げ位置(Y)との間での回動時に、その回動動作を妨げない状態で座支持体6の支持フレーム62に摺接するものである。このカバー体53は、切込部515bにも嵌合し得る嵌合部53aを一体に有している。嵌合部53aの上端部を側面視略上向きU字状に切り欠いた形状とし、当該嵌合部53aを切込部515bに嵌合させた状態で、切込部515bの反開口縁(上縁)と嵌合部53aの上端部との間に形成される空隙に回転軸61(軸要素61a)が配されるようにしている。このようなカバー体53を座シェル51に取り付けた状態で、嵌合部53aが座シェル51の側壁部51Cと略面一となるように設定している。
また、本実施形態の座5は、座シェル51を上方から被覆し得る図示しないコア板を備え、このコア板と座シェル51とを相互に組み付けた状態で、コア板に座クッション52を載置した状態で取り付けている。なお、本実施形態では、各回転軸61の内方端部(座5の巾方向中心側の端部)を回転可能に保持する回転軸保持部をコア板の左右両端部近傍に設けている(図示省略)。
このような構成を有する椅子1は、座5を着座位置(X)に位置付けることにより、当該座5に着座することができる。座5が着座位置(X)にある場合、当該座5は、図13に示すように、座シェル51の優先当たり部512を支持フレーム62の上向面62aに当接させた状態で座支持体6に支持される。
次に、このような椅子1を複数用いて、図15に示すように、前後方向から近付けることによって水平にスタッキングする(以下、「水平スタッキング」と称す)作業手順、及び作用について説明する。
水平スタッキングを行う場合、先ず着座位置(X)にある座5の前端部を掴んで、当該座5を座支持体6の回転軸61を中心に跳ね上げ位置(Y)に向かって跳ね上げる方向に回動させる。座5を着座位置(X)から跳ね上げ位置(Y)へ向かって回動させる過程で、座シェル51の優先当たり部512が支持フレーム62から離れ、摺接部514及びカバー体53が支持フレーム62に摺接又は近接する。そして、座5を所定角度回動させた時点で、座シェル51の突起部513が他の部位に優先して支持フレーム62に当接し、座5のそれ以上同一方向への回動が規制され、座5が跳ね上げ位置(Y)に位置付けられる。本実施形態では、座5の前端部が背凭れ4に当接する前に座シェル51の突起部513が支持フレーム62の当接するように設定している。すなわち、跳ね上げ位置(Y)に位置付けた座5の前端部が背凭れ4に干渉しないようにしている。座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けると、座5の裏面、つまり座シェル51が正面(前方)を向くため、前記座側ハンドル部511や突起部513が前方に向かって突出した姿勢となる。
しかして、本実施形態では、図14に示すように、突起部513が支持フレーム62に当接した際に、突起部513にその圧縮方向に当接力が作用するようにしている。すなわち、当該突起部513に突出方向と異なる方向、つまり曲げ方向に当接力が作用しないように設定している。このように、突起部513の突出方向に沿った圧縮強度を利用して突起部513を支持フレーム62に当接させることにより、過度の当接力が突起部513に作用した場合であっても、突起部513が座シェル51からちぎれて離れ落ちたり、或いはその機能を発揮し得ない状態に変形してしまうという事態が発生することなく、良好な当接状態が維持され、座5がそれ以上背凭れ4に向かって大きく回動することを規制できる。また、本実施形態の突起部513は、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた際に支持フレーム62と面接触するように、その下向面513aの形状を、支持フレーム62のうち座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた際に当該下向面513aが接触し得る外面にフィットする形状に設定している。本実施形態では、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた際に突起部513の下向面513aが支持フレーム62のうちフラットな後向面62bに接触する態様であるため、突起部513の下向面513aをフラットな面に設定している。特に、本実施形態では、突起部513の下向面513aを、座5を着座位置(X)に位置付けた状態で水平方向に対して所定角度傾斜させた傾斜面に設定している。これは、本実施形態の椅子1が、座5の着座位置(X)と跳ね上げ位置(Y)との間の回動角度を90度よりも大きな角度に設定しているものであり、90度を越える角度分に応じた傾斜が突起部513の下向面513aに要求されるためである。このことは、換言すれば、本実施形態の椅子1が、座5の着座位置(X)と跳ね上げ位置(Y)との間の回動角度が90度であれば、突起部513の下向面513aを水平な面に設定すればよいということである。
このようにして跳ね上げ位置(Y)に位置付けた座5を、前方の他の椅子1に後方から近付けると、相対的に後方側の椅子1の各前脚2が、前方側の椅子1の各後脚3の内側にそれぞれ位置付けられるとともに、椅子1同士を前後方向に所定距離近付けた時点で、後方側の椅子1における座5の前端部近傍領域(具体的には、座側ハンドル部511)が、前方側の椅子1における背凭れ4の背面部に当たる。この際、後方側の椅子1の座5が前方側の椅子1の背凭れ4に押圧され、座5の突起部513が若干弾性変形することによって座5のそれ以上の僅かな回動を許容するようにしている。その結果、水平スタッキングを行う場合に生じる椅子1同士の衝撃を緩和することができる。つまり、本実施形態の椅子1は、水平スタッキング時に緩衝機能を発揮するものであり、突起部513が、本発明の「緩衝手段」として機能する。なお、椅子1同士を前後方向に重ねた状態において、一方の椅子1を他方の椅子1に向かって近付ける操作力を停止又は軽減する(具体的には椅子1から手を離す)と、突起部513の弾性復帰力により相対的に後方側に位置する椅子1の座5が、その前端部近傍領域(具体的には、座側ハンドル部511)を前方の椅子1の背凭れ4に当たて状態で所定の跳ね上げ位置(Y)に戻る。
さらに、座シェル51に設けた座側ハンドル部511の突出端部の形状を、背凭れ4の背面側の形状に対応させた円弧状にしているため、この座側ハンドル部511の突出端部が背凭れ4の背面部に符合して嵌まり、水平スタッキングした椅子1同士の巾方向への位置ずれが抑制され、所定の水平スタッキングピッチを確保できるようにしている。本実施形態では、座側ハンドル部511を、前方に位置する他の椅子1の背凭れ4に当たることによって適正な水平スタッキング位置を決めるストッパとして機能させることにより、水平スタッキングを例えば120mmという小ピッチで行えるように設定している。また、座側ハンドル部511の形状を上述した形状に設定することにより、座側ハンドル部511自体が、適正な水平スタッキング位置を示唆する水平スタッキング位置示唆部として機能している。これにより、使用者は適正な水平スタッキング位置にしなければならないという意識をもたずとも、座側ハンドル部511を前方に位置する椅子1の背凭れ4の背面部に当てるだけで、おのずと適正な水平スタッキング位置を確保することができる。さらに、本実施形態の椅子1は、水平スタッキングした際、相対的に前方に位置する椅子1の背凭れ4と相対的に後方に位置する椅子1の座側ハンドル511とが相互に当接するのみであり、このように樹脂製のパーツ同士のみが当接する態様とすることにより、スチール製の脚同士(例えば各椅子1の前脚2同士)が当接することを回避し、スタッキング時の衝撃音の発生を抑制している。
なお、本実施形態に係る椅子1は、図16に示すように、高さ方向に積み重ねる(以下、「垂直スタッキング」と称す)ことも可能であり、以下にその作業手順、及び作用について簡単に説明する。
先ず、座5を着座位置(X)から跳ね上げ位置(Y)に移動させ、次いで、一方の手で、前方へ突出した姿勢となる前記座側ハンドル部511を持つ(具体的には座側ハンドル部511に指を引っ掛ける)とともに、他方の手で、背凭れ4に設けた背側ハンドル部として機能するリブ411を持って、椅子1を持ち上げる。本実施形態では、前脚2の後向面に後方に向かって突出させた後方突出部22を設けるとともに、後脚3の前向面に前方に向かって突出させた前方突出部32を設け、垂直スタッキングを行った状態で、相対的に積み重ねる側の椅子1(上方側の椅子1)の後方突出部22及び前方突出部32が、積み重ねられる側の椅子1(下方側の椅子1)の前脚2及び後脚3の所定部位にそれぞれ当たることによって、垂直スタッキング状態でガタツキが生じることを防止するとともに、安定した状態で略垂直に積み重ねることができるようにしている。なお、他の椅子1に積み重ねる時点で座5を跳ね上げ位置(Y)から着座位置(X)に戻しておくことによって、当該椅子1に別の椅子1をさらに積み重ねることができるようにしている。また、座5を着座位置(X)に位置付けた状態で、上方側の椅子1の座側ハンドル部511が下方側の椅子1に干渉しないようにしている。
このように、第2実施形態に係る椅子1は、第1実施形態の係る椅子と略同様の作用効果を得ることができるととともに、座5の裏面に、座5を着座位置(X)から跳ね上げ位置(Y)へ向かって回動させた際に、他の部位よりも優先して座支持体6に当接し、座5のそれ以上同一方向への回動を規制する突起部513を設け、この突起部513にその圧縮方向に当接力が作用するように突起部513を座支持体6に当接させているため、突起部513に突出方向と異なる方向から曲げの力が作用することを回避し、使用者が座5を急に跳ね上げ位置(Y)へ回動させた場合や、水平スタッキング作業時に前方に位置する他の椅子1と強く当たった場合、或いは長期に亘って座5を着座位置(X)と跳ね上げ位置(Y)との間で繰り返し回動させた場合であっても、突起部513が座シェル51からちぎれて離れ落ちることなく、良好な当接状態が維持され、突起部513の突出方向に沿った圧縮強度を利用して、座5のそれ以上跳ね上がる方向への回動を確実に規制できる。
しかも、座5が跳ね上げ位置(Y)に到達した際に、回動自由端である座5の前端部側の領域が背凭れ4に当たる前に、突起部513が座支持体6に当接するようにしているため、座5の前端部が背凭れ4に当たることによって生じ得る背凭れ4の損傷や変形を防止することができる。
特に、座5が、裏面から下方に突出する突起部513を座5の回動中心よりも後方に設けたものであり、座5を着座位置(X)から跳ね上げ位置(Y)に向かって回動させた際に、突起部513の下向面513aが座支持体6に当接し得るようにしているため、座5の着座位置(X)から跳ね上げ位置(Y)への回動に伴って突起部513が前方に向かって移動する態様となり、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた際に、前方に移動しようとする突起部513のうち、その下向面513aを座支持体6に当接させることによって、突起部513にその突出方向に沿った当接力が確実に作用することとなり、突起部513の突出方向に沿った圧縮強度を利用して座5のそれ以上背凭れ4に向かう回動を好適に防止することができる。
また、座5を跳ね上げ位置(Y)に位置付けた際に、突起部513の下向面513aの全領域又は略全領域が座支持体6に当接するようにしているため、座支持体6に当接する突起部513の面積を有効に稼ぐことができ、良好な当接状態を実現できる。
さらに、水平スタッキングを行う際に、相対的に後方側の椅子1における座5の座側ハンドル部511と、前方側の椅子1における固定された背凭れ4との当接時の衝撃を緩和する緩衝手段を備えているため、水平スタッキング作業をスムーズ且つ好適に行うことができる。
本実施形態では、突起部513を樹脂製のものとし、当該突起部513の弾性変形を利用して当接時の衝撃を緩和するようにしているため、極めて簡単な構造で緩衝手段を実現することができる。
加えて、水平スタッキングした際に、相対的に後方側の椅子1における座5の裏面を形成する樹脂製の座シェル51と、相対的に前方側の椅子1における背凭れ4の背面部を形成する樹脂製の背シェル41とが、他の部位よりも優先して相互に当接するようにしているため、水平スタッキングした際に各椅子1の金属製の部材同士(例えば脚2同士)が当接する態様であれば生じる大きな衝撃音を抑制することができる。
また、座5の裏面に突起部513を複数設けているため、各突起部513に掛かる負荷を軽減することができる。
特に、座シェル51に突起部513を一体に設けているため、突起部513を別途座シェル51に組み付ける態様と比較して、組立工程の簡素化、構造の簡略化を有効に図ることができるのみならず、突起部513と座シェル51との取付強度の向上にも資する。
しかも、座支持体6が、座5の回動中心となる回転軸61と、回転軸61よりも前方に設けられ、且つ着座位置(X)に位置付けた座5を裏面側から支持する支持フレーム62とを備えたものであり、座5を着座位置(X)から跳ね上げ位置(Y)へ向かって回動させた際に、突起部513が支持フレーム62に当接するようにしているため、跳ね上げ位置(Y)に位置付けた座5の突起部513が当たる部材と、着座位置(X)に位置付けた座5を支持する部材とを共通化することができ、座支持体6、ひいては椅子1の構造簡略化を図ることができる。
なお、本発明は、以上に詳述した各実施形態に限られるものではない。
例えば、座側ハンドルは、座の裏面に設けられ且つ座を跳ね上げ位置に位置付けた場合に使用者が掴むことが可能なものであればよく、座の裏面における前端部近傍部位に限らず、側端部近傍部位や奥行き方向中央部位等に設けたものであってもよい。さらに、前記実施形態では、座側ハンドル部として、座の巾方向に沿って延びる単一の突起部からなるものを例示したが、複数の突起部からなるもの、例えば座の巾方向中央部を隔てた位置に対向配置した一対の突起部からなるものを適用しても構わない。
また、座側ハンドル部が、周辺部位よりも窪ませた凹部のみからなる態様、或いは凹凸部(例えば粗いシボ加工による凹凸部)である態様であってもよい。
座側ハンドル部の突出端部(座側ハンドル部の下向面)は、背凭れの背面部にフィットする形状であればよく、背面部が平面視部分多角形状であれば、突出端部も部分多角形状とすればよく、背面部が凹凸形状であれば、突出端部も凹凸形状とすればよく。
また、座側ハンドル部が座本体とは別体のものであり、座本体に一体的に取り付けたものであっても構わない。同様に、背側ハンドル部が、背凭れ本体とは別体のものであり、背凭れ本体に一体的に取り付けたものであっても構わない。
さらに、肘掛けを有さない椅子や、背凭れや座の表面に布地を被せた椅子、或いは背凭れや座にクッション性を持たせた椅子等、種々の椅子にも座の裏面に座側ハンドル部を設けることによって上記実施形態で述べた効果と略同様の効果を奏する。
また、座が単一の突起部を備えたものであっても構わない。この場合、突起部を座の左右巾方向に沿って延びる帯状のものとすれば、座支持体との当接領域を有効に稼ぐことができる。また、座が、3以上の突起部を備えたものであっても構わない。
また、水平スタッキングした際に、相対的に後方側の椅子における座の前端部又は前端部近傍部位と、他の部位よりも優先して相対的に前方側の椅子における背凭れの背面部との当接により生じる衝撃を緩和する緩衝手段として、水平スタッキング時に相互に当接する部位、すなわち相対的に後方側の椅子における座の前端部又は前端部近傍、及び相対的に前方側の椅子における背凭れの背面部の少なくとも何れか一方に弾性体を設け、弾性体の弾性変形によって衝撃を緩和する態様としてもよい。或いは、緩衝手段として、跳ね上げ位置に位置付けた座が不意に着座位置に向かって移動しない範囲で座の揺動を許容し、水平スタッキングした際に、この揺動可能範囲内で座を回動させることによって衝撃を緩和する態様としてもよい。
また、座を回動可能に支持する座支持体が、座の左右巾方向略全域に亘る長尺の回転軸を備えたものであっても構わない。座支持体の支持フレームが、角パイプ状のものではなく円筒状のものであっても構わない。この場合、突起部の下向面の形状を部分円弧状とすればよい。
さらに、肘掛けを有さない椅子や、背凭れや座の表面に布地を被せた椅子、或いは背凭れや座にクッション性を持たせた椅子等、種々の椅子にも座の裏面に、突起部を設け、突起部にその圧縮方向に当接力が作用するように突起部を座支持体に当接させることによって上記第2実施形態で述べた効果と略同様の効果を奏する。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。