JP2009081388A - 光起電力素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光電変換効率を向上させ、光の利用効率を向上させる。
【解決手段】光起電力素子10は、透明な絶縁性基板1と、表面電極となる透明電極2(第1電極)と、n型半導体層3と、p型半導体層4(第1p型半導体層)と、p型半導体層5(第2p型半導体層)と、背面電極層6(第2電極)とが順に積層されて構成されている。p型半導体層4とp型半導体層5とは、それぞれ異なる電子供与性有機物を含有しており、p型半導体層5に含有される電子供与性有機物は、無金属フタロシアニンである。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池、光センサ、フォトダイオードなどの光起電力素子及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ヘテロpn接合による内部電界を利用した光起電力素子及びその製造方法の改良に関する。
近年、環境に優しいエネルギーとして、太陽エネルギーの利用研究が活発に行なわれており、中でも、燃料が不要でかつ無尽蔵なクリーンエネルギーとして、太陽電池(光起電力素子)の本格的な実用化が大いに期待されている。この太陽電池のタイプとしては、単結晶、多結晶あるいはアモルファスのSiを用いたシリコン系太陽電池、GaAs,CdS等を用いた化合物半導体系太陽電池、有機色素や導電性高分子を用いた有機半導体系太陽電池、あるいは金属酸化物系(色素増感型)太陽電池等が知られている。
ところで、現在最も普及しているシリコン系太陽電池や化合物半導体系太陽電池は、光電変換効率が高いという特徴を有するが、その反面、材料・製造コストが高く、作製に際して大規模な製造設備と多くのエネルギーを要することや、有毒な原料ガスを用いるなどの問題も指摘されている。
一方、有機半導体を用いた光起電力素子は、材料が比較的安価で、大規模な設備や有毒な原料を必要とせず、大量生産によるコストダウンが期待できるため、その光電変換効率の向上を狙った研究開発が行なわれており、例えば、ペリレン誘導体からなる電子受容性(n型)有機物層と塩化インジウムフタロシアニンからなる電子供与性(p型)有機物層とを積層して形成した有機光起電力素子(特許文献1)、バインダー樹脂中に電子供与性有機顔料を分散させたp型半導体層と電子受容性有機顔料の蒸着膜からなるn型半導体層とを積層して形成した有機太陽電池(特許文献2)や、少なくとも一方が透光性を有する2つの電極の間に、電子受容性無機物を主成分とし、塩基性染料を含有する材料から構成されたn型半導体層と、電子供与性有機物を主成分とし、電子受容性化合物を含有する材料から構成されたp型半導体層とからなるヘテロ接合半導体膜を形成した光起電力素子(特許文献3)等の提案がなされている。
特開平5−275728号公報 特開平7−240530号公報 特開2007−157999号公報
しかしながら、n型有機半導体は、空気中で不安定であり、酸素と結合するとその性質が変化してp型に反転してしまうだけでなく、電荷移動度も低いという問題がある。そのため、特許文献1,2のようなp型有機半導体/n型有機半導体からなるヘテロ接合光起電力素子は、光電変換効率の向上が難しく、また製造に際し、脱酸素環境を構築するための大掛かりな設備が必要となる場合がある。
また、特許文献3のように、2つの電極の間に、電子受容性無機物を主成分とし、塩基性染料を含有する材料から構成されたn型半導体層と、電子供与性有機物を主成分とし、電子受容性化合物を含有する材料から構成されたp型半導体層とからなるヘテロ接合半導体膜を形成した素子構造では、光の利用効率が充分でなく、結果として光電変換効率の向上が充分でないことが懸念される。即ち、太陽電池のエネルギー変換効率は、「光の利用効率」及び「発生するキャリアの輸送効率」に起因することが知られており、有機半導体は無機半導体と比べて抵抗が高いことから、光感度並びにキャリア移動度が低いとされている。
本発明は、上述した課題に対処するためになされたものであり、安価で且つより光電変換効率を向上させたヘテロpn接合型の光起電力素子と、この光起電力素子を歩留まり良く高効率に低コストで作製でき、大面積化にも対応可能な製造方法を提供することを目的としている。
課題を解決するための手段及び発明の効果
安価で且つ安定性良く、しかも大面積化にも対応できる光起電力素子を考えた場合、n型半導体層、p型半導体層などの光起電力素子を構成する各層を、複雑な製造設備を必要としない塗布製法により積層して形成できれば、そのメリットは極めて大きい。本発明者らは、塗布による積層が可能な層構造を種々検討した結果、増感剤として塩基性染料を添加したn型半導体層と、p型半導体層とを組み合わせるとともに、このp型半導体層をそれぞれ異なる電子供与性有機物から構成された第1p型半導体層と第2p型半導体層とから形成することによりエネルギー変換効率を向上させることができることを見出した。
本発明はこの知見に基づくものであって、本発明の光起電力素子は、少なくとも一方が透光性を有する2つの電極の間に、n型半導体層とp型半導体層とが配置された光起電力素子であって、前記n型半導体層が、電子受容性無機物を主成分とし、塩基性染料を含有する材料から構成され、前記p型半導体層が、それぞれ異なる電子供与性有機物を含有する、前記n型半導体層と接する第1p型半導体層と、前記n型半導体層と反対側において前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層とからなり、前記第2p型半導体層に含有される電子供与性有機物が、無金属フタロシアニンである。
本発明の光起電力素子によると、n型半導体層に塩基性染料を添加し、p型半導体層をそれぞれ異なる電子供与性有機物から構成された第1p型半導体層と第2p型半導体層とから形成し、第2p型半導体層における電子供与性有機物として無金属フタロシアンを用いていることにより、エネルギー変換効率が向上する。
また、前記第1p型半導体層に含有される電子供与性有機物が、チタニルフタロシアニンであることが好ましい。
さらに、前記第1p型半導体層が、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。これによると、光電変換効率がさらに向上する。
また、本発明の光起電力素子は、少なくとも一方が透光性を有する2つの電極の間に、n型半導体層とp型半導体層とが配置された光起電力素子であって、前記n型半導体層を構成する電子受容性無機物及び塩基性染料が、それぞれ酸化亜鉛及びローダミンを含んでおり、前記p型半導体層が、それぞれ異なる電子供与性有機物を含有する、前記n型半導体層と接する第1p型半導体層と、前記n型半導体層と反対側におけて前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層とからなり、前記第1p型半導体層に含有される電子供与性有機物が、チタニルフタロシアニンであり、前記第2p型半導体層に含有される電子供与性有機物が、無金属フタロシアニンである。
本発明の光起電力素子によると、n型半導体層に塩基性染料であるローダミンを添加し、p型半導体層をそれぞれ異なる電子供与性有機物であるチタニルフタロシアニン及び無金属フタロシアニンから構成された第1p型半導体層と第2p型半導体層とから形成することにより、より高い光電変換効率が得られる光起電力素子を提供することができる。
本発明の光起電力素子の製造方法は、少なくとも一方が透光性を有する2つの電極の間に、n型半導体層とp型半導体層とが形成された光起電力素子の製造方法であって、電子受容性無機物に所定量の塩基性染料とバインダー樹脂と溶剤とを添加したn型半導体塗布液と、電子供与性有機物にバインダー樹脂と溶剤とを添加した第1p型半導体塗布液と、前記第1p型半導体塗布液を形成する電子供与性有機物とは異なる電子供与性有機物にバインダー樹脂と溶剤とを添加した第2p型半導体塗布液とを、基板である第1電極の上に順次塗布して積層させた後、これら半導体層の上に、樹脂中に導電性物質を分散させた導電性ペーストを塗布することにより、前記第1電極に対向する第2電極を形成する。
本発明の光起電力素子の製造方法によると、第1電極を除くすべての構造(半導体層及び第2電極)を塗布のみで形成することができる。これにより、従来のような大規模な設備を用いることなく、光起電力素子を安全且つ低コストで製造することが可能になるとともに、連続生産設備が容易に構築できることから、光起電力素子の大面積化への対応も容易になる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る光起電力素子の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る光起電力素子10は、透明な絶縁性基板1と、表面電極となる透明電極2(第1電極)と、n型半導体層3と、p型半導体層4(第1p型半導体層)と、p型半導体層5(第2p型半導体層)と、背面電極層6(第2電極)とが順に積層されて構成されている。なお、電極に取り付けられるリード(電線)や光起電力素子10への水分の浸入を防止する防護樹脂などは、図示を省略している。
透明絶縁性基板1は、可視光領域の波長を広く透過するものが好ましく、例えばガラス、プラスチックフィルムなどをシート状あるいはプレート状など適宜の形で用いることができる。
透明電極2は、透明絶縁性基板1と同様に、可視光領域の波長を広く透過するものが好ましく、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウムなどが用いられる。
n型半導体層3は、電子受容性無機物と塩基性染料とバインダー樹脂とを含有している。n型半導体層3に用いる電子受容性無機物としては、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)などの金属酸化物半導体が挙げられるが、特に好ましくは、酸化亜鉛顔料が使用される。なお、この酸化亜鉛顔料は、粉末の平均粒径が数nm〜数十nm程度のものが好ましく、さらに光電変換効率の観点からすると、平均粒径が20〜30nmであるものを用いることが望ましい。
また、n型半導体層3に用いる塩基性染料としては、ローダミンB、ローダミン6Gなどのキサンテン染料、メチレンブルー、メチレンバイオレットなどのチアジン染料などが挙げられる。電子受容性無機物として酸化亜鉛顔料を用いる場合は、塩基性染料としてローダミンBを用いるのが好適である。
さらに、n型半導体層3に用いるバインダー樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂などの広範囲な絶縁性樹脂から選択することができる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上を混合して使用してもよい。なお、本実施形態においては、ポリビニルブチラール樹脂を好適に採用した。また、電子受容性無機物とバインダー樹脂との好ましい配合比(重量)は、40:1〜1:1、さらに好ましくは20:1〜5:1の範囲である。
p型半導体層4は、電子供与性有機物とバインダー樹脂とを含有している。p型半導体層4に用いる電子供与性有機物としては、オキシチタニウムフタロシアニン(チタニルフタロシアニン)並びにこの環の一部を適当な置換基によって置換したものが使用される。尚、オキシチタニウムフタロシアニン(チタニルフタロシアニン)は、粉末の平均粒径が0.1μm〜数十μm程度のものを用いることが望ましい。
また、p型半導体層4に電子受容性化合物を含有させても良い。この場合、p型半導体層4に用いる電子受容性化合物としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、アントラキノンなどのキノン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,7,9−テトラニトロフルオレノンなどのフルオレノン系化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、ジフェノキノン系化合物などが挙げられる。特に好ましくは、ジフェノキノン系化合物が使用される。なお、本実施形態においては、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン(TBDQ)を好適に採用した。また、電子供与性有機物と電子受容性化合物との好ましい配合比は、電子供与性有機物100重量部に対して、電子受容性化合物2.5〜20重量部の範囲が好適である。
さらに、p型半導体層4に用いるバインダー樹脂も、n型半導体層3における例と同様に、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂などの広範囲な絶縁性樹脂から選択することができる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上を混合して使用してもよい。なお、本実施形態においては、p型半導体層4においても、ポリビニルブチラール樹脂を好適に採用した。また、p型半導体層4における電子供与性有機物とバインダー樹脂との好ましい配合比(重量)は、10:1〜1:1、さらに好ましくは6:1〜2:1の範囲である。
p型半導体層5は、電子供与性有機物とバインダー樹脂とを含有している。p型半導体層5に用いる電子供与性有機物としては、無金属フタロシアニン、並びにこの環の一部を適当な置換基によって置換したものである。なお、無金属フタロシアニンは、粉末の平均粒径が0.1μm〜数十μm程度のものを用いることが望ましい。
また、p型半導体層5に用いるバインダー樹脂も、n型半導体層3における例と同様に、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂などの広範囲な絶縁性樹脂から選択することができる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上を混合して使用してもよい。なお、本実施形態においては、p型半導体層5においても、ポリビニルブチラール樹脂を好適に採用した。また、p型半導体層5における電子供与性有機物とバインダー樹脂との好ましい配合比(重量)は、10:1〜1:1、さらに好ましくは6:1〜2:1の範囲である。
以上の構成により、本実施形態における光起電力素子は、従来の光起電力素子に比べて、光の利用効率を向上させ、光電変換効率を向上させることができた。
次に、本実施形態における光起電力素子を製造する方法について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る光起電力素子の製造工程を示す図である。この光起電力素子は、電子受容性無機物(酸化亜鉛顔料)に所定量の塩基性染料(ローダミンB)とバインダー樹脂(ポリビニルブチラール樹脂)と溶剤を添加したn型半導体塗布液と、電子供与性有機物(オキシチタニウムフタロシアニン顔料)とバインダー樹脂(ポリビニルブチラール樹脂)と溶剤を添加した第1のp型半導体塗布液(第1p型半導体塗布液)と、電子供与性有機物(無金属フタロシアニン顔料)とバインダー樹脂(ポリビニルブチラール樹脂)と溶剤を添加した第2のp型半導体塗布液(第2p型半導体塗布液)とを、透明電極2の上に順次塗布して積層させた後、これら半導体層の上に、樹脂中に導電性物質を分散させた導電性ペーストを塗布し、透明電極2に対向する背面電極層6を形成する方法により形成されている。
半導体塗布液の作製は、これら所定の原料を溶媒により分散させることにより行われる。溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルセロソルブなどの環状または鎖状のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などを、単独または2種以上混合して用いることができる。
なお、各半導体塗布液は、電子受容性無機物又は異なる種類の電子供与性有機物の微粒子をそれぞれ塗布液中に分散させたものであることから、その微粒子の分散には、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライターなどの従来公知の方法を用いることが出来る。
半導体層の作製は、図2(a)に示すように、透明絶縁性基板1の上に透明電極2を載置した後、前述の半導体塗布液を用いて、例えば、ディップコート法、エアナイフコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法などにより、図2(b)〜図2(d)に示すように、n型半導体層3、p型半導体層4及びp型半導体層5を順次積層した。膜厚は、それぞれ一般的には0.01〜3.0μm程度が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2.0μmである。
積層された半導体層を十分乾燥させた後、図2(e)に示すように、この半導体層の上に、背面電極層6を形成する。この背面電極層6を形成するのに用いられる導電性ペーストには、導電性のカーボンブラックを樹脂中に分散させたカーボンペーストや金属微粒子を樹脂中に分散させた金属ペーストなどが用いられる。この背面電極層6の膜厚は、1〜50μm程度が好ましい。
以上の製造方法により、本実施形態における光起電力素子10は、従来の製造方法で必須であった蒸着などの真空プロセスや高温プロセス、あるいは安全上問題のあるガスや脱酸素環境を用いることなく、透明絶縁性基板1及び透明電極2を除く半導体層及び背面電極層6を、通常の大気圧(常温)環境下で形成することが可能となる。また、この製造方法は、従来の光起電力素子で用いられているようなバッチ式生産設備だけでなく、長尺・大面積の光起電力素子を製造することのできる連続生産設備の構築も容易となる。
なお、本発明における背面電極の構成は、本実施形態における例に限られるものではなく、半導体層とオーミックに接合させることのできるその他の導電性膜でもよい。例えば、蒸着法あるいはスパッタリング法により、Au、Agなどの仕事関数の大きい金属による被膜を形成してもよい。
次に、以上の実施形態における光起電力素子の効果を確認すべく、本発明のより具体的な実施例1及び2を、比較例1〜3と合わせて、実際に光電変換特性を測定して説明する。
[実施例1]
本発明の実施例1として作製した素子は、上述した実施形態で説明した3層構造のヘテロpn接合型半導体層を有する光起電力素子である。まず、素子の作製に先立ち、半導体塗布液の調整を行った。
n型半導体塗布液は、バインダー樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製:エスレックBX−1)1重量部に対して、酸化亜鉛粉末(テイカ社製:MZ−500、平均粒径20〜30nm)を12重量部と、ローダミンB(東京化成工業社製)を0.3重量部と、溶剤としての2−プロパノールを65重量部とを、0.5mmΦのジルコニアビーズとともに容器に入れ、ビーズミルを用いて30分攪拌し、スラリー状のn型半導体塗布液を作製した。
また、第1のp型半導体塗布液は、バインダー樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製:エスレックBX−1)1重量部に対して、オキシチタニウムフタロシアニン顔料(山陽色素社製、平均粒径0.5〜5μm)を4重量部と、溶剤としてのエチレングリコールジメチルエーテルを150重量部とを、0.5mmΦのジルコニアビーズとともに容器に入れ、ビーズミルを用いて13分攪拌し、スラリー状の第1のp型半導体塗布液を作製した。
さらに、第2のp型半導体塗布液は、バインダー樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製:エスレックBX−1)1重量部に対して、無金属フタロシアニン顔料(東京化成工業社製、平均粒径2〜10μm)を4重量部と、溶剤としての1,4−ジオキサンを110重量部とを、0.5mmΦのジルコニアビーズとともに容器に入れ、ビーズミルを用いて13分攪拌し、スラリー状の第2のp型半導体塗布液を作製した。
実施例1における素子の作製は、まず、ガラスからなる透明絶縁性基板1の上にインジウム・スズの酸化物からなる透明電極2を設けたITOガラスを水平に載置し、このITOガラス上に、上述したn型半導体塗布液をバーコート法により塗布して、膜厚600nmのn型半導体層3を形成した。このn型半導体層3を室温下で十分に乾燥させた後、このn型半導体層3の上に、上述した第1のp型半導体塗布液を同じくバーコート法により塗布して、膜厚350nmの第1p型半導体層4を形成した。この第1p型半導体層4を室温下で十分に乾燥させた後、この第1p型半導体層4の上に、上述した第2のp型半導体塗布液を同じくバーコート法により塗布して、膜厚300nmの第2p型半導体層5を形成した。
得られた3層構造のヘテロpn接合半導体層を十分乾燥させた後、この半導体層の上に、導電性カーボンペースト(ライオン株式会社製:W−310A)6重量部と、ポリビニルアセタール樹脂(積水化学社製:エスレックKW−1)4重量部とを混合攪拌した導電性ペースト液をローラーコート法により塗布し、膜厚10μmの背面電極層を形成することにより、実施例1の光起電力素子を作製した。
[比較例1]
実施例1における第1のp型半導体層の形成工程を除いた以外、実施例1と同様の方法で、比較例1の単純積層型(p−n接合構成)の光起電力素子を作製した。
[比較例2]
第1のp型半導体層4と第2のp型半導体層5の形成順序を逆にした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2の光起電力素子を作製した。
これら作製した各光起電力素子の光電変換特性の測定は、暗状態及び擬似光AM1.5−100mWcm−2照射下における電流−電圧(I−V)測定で行った。また、測定は室温、大気中で行った。以下の「表1」に、測定により得られた各光起電力素子の光電変換特性を示す。
Figure 2009081388
この表から、実施例1のようにn型半導体層と第2p型半導体層との間に第1p型半導体層を形成することにより、開放電圧(Voc)はほとんど変化しないが、短絡電流(Isc)が増大することが認められ、従来の単純積層型の光起電力素子(比較例1)と比較して、変換効率ηを高めることができた。
このように本発明は、p型半導体層として種類の異なるフタロシアニン化合物からなる層を積層構造にすることにより光電変換効率の向上を図ったものであるが、比較例2からも明らかなようにn型半導体層との積層において、その積層順序が重要なポイントであることを見出したことによるものである。この理由としては第1のp型半導体層と第2のp型半導体層とのエネルギーバンドが大きく起因し、光発生した電子と正孔が各半導体層のエネルギーバンドにしたがって、スムーズに外部の電極に捕集されるような、n型半導体層、第1のp型半導体層及び第2のp型半導体層のエネルギーバンドの積層構造であることによるものと推測される。
[実施例2]
3層型光起電力素子における第1のp型半導体層4に、アクセプター分子であるTBDQを添加することで、半導体層のドーピングとした。
具体的には第1のp型半導体層4に対するアクセプタードーピングは、先の実施例1において調整した第1のp型半導体塗布液にTBDQをオキソチタニウムフタロシアニン顔料100重量部に対するドーピング量10重量部で溶解することにより行った。
また、光起電力素子の作製および測定・評価は上記の実施例1と同様の方法で行った。その結果、Jsc(mA/cm)=1.75、Voc(V)=0.66、F.F.=0.26、η(%)=0.31となった。
また、ドーピング量と光電変換効率(η)の関係については、オキソチタニウムフタロシアニン顔料100重量部に対するTBDQのドーピング量が0、2.5、10及び20重量部の各素子を作製して評価した。
その結果、図3に示すように、光電変換効率(η)はそれぞれ0.17、0.18、0.31、0.19となり、TBDQのドーピング量がオキソチタニウムフタロシアニン顔料100重量部に対して0〜10重量部まで増加傾向にあり、それ以降においては減少傾向になった。
以上より、第1のp型半導体層へのTBDQドープは、キャリア移動度の向上に伴う導電性の改善によるものと推測され、結果的に、短絡電流(Isc)の増加に繋がることが確認された。また、そのドーピング量はオキソチタニウムフタロシアニン顔料100重量部に対して、2.5〜20重量部の範囲が好適であり、10重量部のドーピング量が最適であった。
このように第1のp型半導体層4に電子受容性化合物としてTBDQを含有させることで、実施例1と比較して、さらに変換効率ηが増加した。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、基板としてカーボンブラック分散導電性シートを用い、この導電性シート上に第2p型半導体層、第1p型半導体層、n型半導体層及びITO透明層をこの順序で形成するようにしても良い。
本実施形態に係る光起電力素子の概略構成図である。 本実施形態に係る光起電力素子の製造工程を示す図である。 本実施形態におけるTBDQのドーピング濃度及びηの関係を示す図である。
符号の説明
1 透明絶縁性基板
2 透明電極
3 n型半導体層
4,5 p型半導体層
6 背面電極層

Claims (5)

  1. 少なくとも一方が透光性を有する2つの電極の間に、n型半導体層とp型半導体層とが配置された光起電力素子であって、
    前記n型半導体層が、電子受容性無機物を主成分とし、塩基性染料を含有する材料から構成され、
    前記p型半導体層が、それぞれ異なる電子供与性有機物を含有する、前記n型半導体層と接する第1p型半導体層と、前記n型半導体層と反対側において前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層とからなり、
    前記第2p型半導体層に含有される電子供与性有機物が、無金属フタロシアニンであることを特徴とする光起電力素子。
  2. 前記第1p型半導体層に含有される電子供与性有機物が、チタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項1に記載の光起電力素子。
  3. 前記第1p型半導体層が、電子受容性化合物を含有していることを特徴とする請求項2に記載の光起電力素子。
  4. 少なくとも一方が透光性を有する2つの電極の間に、n型半導体層とp型半導体層とが配置された光起電力素子であって、
    前記n型半導体層を構成する電子受容性無機物及び塩基性染料が、それぞれ酸化亜鉛及びローダミンを含んでおり、
    前記p型半導体層が、それぞれ異なる電子供与性有機物を含有する、前記n型半導体層と接する第1p型半導体層と、前記n型半導体層と反対側におけて前記第1p型半導体層と接する第2p型半導体層とからなり、
    前記第1p型半導体層に含有される電子供与性有機物が、チタニルフタロシアニンであり、
    前記第2p型半導体層に含有される電子供与性有機物が、無金属フタロシアニンであることを特徴とする光起電力素子。
  5. 少なくとも一方が透光性を有する2つの電極の間に、n型半導体層とp型半導体層とが形成された光起電力素子の製造方法であって、
    電子受容性無機物に所定量の塩基性染料とバインダー樹脂と溶剤とを添加したn型半導体塗布液と、電子供与性有機物にバインダー樹脂と溶剤とを添加した第1p型半導体塗布液と、前記第1p型半導体塗布液を形成する電子供与性有機物とは異なる電子供与性有機物にバインダー樹脂と溶剤とを添加した第2p型半導体塗布液とを、基板である第1電極の上に順次塗布して積層させた後、これら半導体層の上に、樹脂中に導電性物質を分散させた導電性ペーストを塗布することにより、前記第1電極に対向する第2電極を形成することを特徴とする光起電力素子の製造方法。
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