JP2009079558A - エンジンの制御装置 - Google Patents
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Abstract
始動時の燃料挙動をより高精度に予測し、かつ、吸気管内燃料量を積極的に制御することでシリンダ内に流入する燃料量をより高精度に制御し、もって排気を低減する方式を提案するものである。
【解決手段】
エンジンの吸気ポート近傍もしくは吸気管内に残留している燃料量を、平衡液膜燃料量と非平衡液膜燃料量に分離演算し、非平衡液膜量に基づいて、噴射燃料量を補正し、シリンダ内流入燃料量を高精度に制御する手段を備えたことを特徴とするエンジンの制御装置。
【選択図】図1
Description
エンジンの吸気ポート近傍もしくは吸気管内に残留している燃料量を、燃料量Aと燃料量Bに分離演算する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、吸気管に噴射した燃料は、一旦、吸気管内壁および吸気弁表面で液膜化するが、発明者は、この液膜は、「吸気管内に残留する安定な液膜(後述するように平衡液膜)」と「吸気管に残留せず、十分な時間(十分なサイクル数)が経過すれば、全てシリンダ内に吸入されてしまう不安定な液膜(後述するように非平衡液膜)」から形成されることを見出した。図16は、実エンジンで「エンジン始動時の極初期における吸気管に残留する安定な液膜量(平衡液膜量)」を計測した結果である(近似式も同じく図示、吸気流速は一定)。燃料温度を代表する始動時冷却水温と燃料性状(軽質,重質)で整理できることがわかる。また、図17は、「エンジン始動時の極初期における吸気管に残留する不安定な液膜量(非平衡液膜量)」を計測した結果である(推定値も同じく図示)。始動後サイクル数が増えるに応じて、非平衡液膜量が減少し、0に漸近していることがわかる。非平衡液膜量が減少した分は、シリンダ内に流入していると考える。
請求項1において、
前記分離演算した燃料量Aもしくは燃料量Bに基づいて、
燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、上述したように、吸気管内燃料液膜量を平衡液膜量と非平衡液膜量に分離演算し、平衡液膜量もしくは非平衡液膜量に基づいて、燃料噴射量を補正するものである。同上述したように、非平衡液膜量は、時間(サイクル数)が経過するに応じて、徐々に崩壊し、シリンダ内に流入する。したがって、望ましくは、請求項4の説明において後述するように、図17で示される如く、非平衡液膜量の内、各サイクルで崩壊してシリンダ内に流入する燃料量を推定しつつ、その分、燃料量を減量補正するのがよい。
請求項1〜2において、
前記「分離演算される2つの燃料量」は、
安定な燃料液膜である「平衡液膜量」と
不安定な燃料液膜である「非平衡液膜量」とすることを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、2つに分離演算される吸気管内燃料液膜量は、平衡液膜量と非平衡液膜量であることを明記するものである。
請求項1〜3において、
前記「非平衡液膜量」に基づいて、
燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項2の説明で述べたように、非平衡液膜量は、時間(サイクル数)が経過するに応じて、徐々に崩壊し、シリンダ内に流入する。したがって、望ましくは、図17で示される如く、非平衡液膜量の内、各サイクルで崩壊してシリンダ内に流入する燃料量を推定しつつ、その分、燃料量を減量補正するのがよい。
請求項1〜4において、
前記「非平衡液膜量」の内、次サイクルでシリンダに流入する燃料量を予測演算する手段を備えたことを
特徴とするエンジンに制御装置。
を提案する。すなわち、請求項2および請求項4に準じるものであり、燃料量の補正方法をより具体的に明記するものである。
請求項1〜5において、
前記「非平衡液膜量」の内、次サイクルでシリンダに流入する燃料量に基づいて、
次サイクルの燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項2,請求項4および請求項5に準じるものであり、燃料量の補正方法をより具体的に明記するものである。
請求項1〜6において、
始動後、所定サイクル経過後もしくは所定時間経過後における、
各気筒の吸気ポート近傍もしくは吸気管内に残留している燃料量を気筒別に制御する手段を備えていることを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、一般に燃料噴射弁は、気筒別に取り付けられているため、請求項1〜6に記載の発明も気筒別に行える。したがって、各気筒の吸気管内残留燃料量(平衡液膜量+非平衡液膜量)は、独立に制御することが可能であることを明記するものである。
請求項1〜7において、
始動後、所定サイクル経過後もしくは所定時間経過後における、
各気筒の吸気ポート近傍もしくは吸気管内に残留している燃料量の差(ばらつき)が、
所定範囲内に収まるように制御することを、
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項7に説明で述べたように、各気筒の吸気管内残留燃料量(平衡液膜量+非平衡液膜量)は、独立に制御することが可能であるが、特に気筒別に吸気管内残留燃料量をばらつかせる必要がなければ、各気筒均一になるように制御することが望ましいことを明記するものである。
燃料温度を直接的もしくは間接的に検出する手段を備え、
前記燃料温度から所定の燃料性状における平衡液膜量を求める手段を備え、
目標燃焼燃料量を演算する手段を備え、
前記平衡液膜量と目標燃焼燃料量を足した燃料量を始動時の各気筒の初回に噴射する手段とを備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項1〜8の説明から、特に初回噴射においては、吸気管内残留燃料量を0とみなすことができれば、平衡液膜量+目標燃焼燃料量(目標シリンダ内流入燃料量)を噴射すれば、シリンダ内流入燃料量を所望の量に制御できる。また、請求項1の説明で述べたように、平衡液膜量は、図16で示されるように、吸気流速一定下においては、粘性を決める「燃料温度と燃料性状」から支配的に決まる。それも併せて明記するものである。実際の燃料性状が、始動前に既知であれば、それに基づいて、平衡液膜量を決める。実際の燃料性状が、不明であれば、なんらかの燃料性状に仮定して、平衡液膜量を求めることになる。始動性能のロバスト性確保の観点では、請求項17,18に記載されているように、より重質側の燃料性状に初期設定しておくのが望ましい。
請求項1〜9において、
前記「燃料温度から所定の燃料性状における平衡液膜量」を(一サイクル毎など)更新演算する手段を備え、
「前回演算した平衡液膜量」と「今回演算した平衡液膜量」との差に基づいて、
(次回以降の)燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、上述しているように平衡液膜量は、温度,燃料性状などから、動的に変化する。平衡液膜量が動的に変化すると、相対的に非平衡液膜量も変化することになる。非平衡液膜量が変化すれば、その一部が崩壊して、シリンダ内に流入する燃料量も変化するので、シリンダ内の空燃比を最適化するには、それに応じて、燃料噴射量も逐次、補正する必要がある。それを明記するものである。
請求項1〜10において、
前記「前回演算した平衡液膜量」と「今回演算した平衡液膜量」との差に基づいて、
「非平衡液膜量」を更新する手段を備え、
前記「非平衡液膜量」に基づいて、(次回以降の)燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項10の説明に準じるものであり、非平衡液膜量を更新する手段まで備えることを明記するものである。
請求項1〜11において、
様々な(複数の)燃料性状と、それに応じた平衡液膜量を求める手段を備え、
実際の燃料性状を直接的もしくは間接的に検出する手段と、
前記検出した実際の燃料性状に対応する平衡液膜量を求める(切り換える)手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項9の説明で述べたように、実際の燃料性状が、始動前に既知であれば、それに基づいて、平衡液膜量を決める。一方、実際の燃料性状が、不明であれば、なんらかの燃料性状に仮定して、平衡液膜量を求めることになる。請求項14〜請求項16で述べるように、始動後になんらかの手段で、燃料性状が検出できた時は、それに応じて、平衡液膜量を切り換える。それを明記するものである。
燃料温度検出手段は、
少なくとも外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温に、
基づいて燃料温度を検出するもしくは、
外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温で代替することを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項1の説明で述べたように、図16において、平衡液膜量が温度,燃料性状で整理できるのは、燃料の粘性が温度と燃料性状で支配的に決まるからであると考える。その意味では、燃料温度を直接検出するのが望ましいが、実用上の観点で、燃料温度と相関のある温度パラメータである外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温から、燃料温度を推定するのもよい。また、燃料温度を推定せず、外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温を直接に用いるのも良い。
請求項1〜13において、
エンジンの燃焼空燃比を直接的もしくは間接的に検出する手段を備え、
前記燃焼空燃比に基づいて前記燃料性状を検出することを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項12の説明で述べたように、実際の燃料性状が、始動前に既知であれば、それに基づいて、平衡液膜量を決める。一方、実際の燃料性状が、不明であれば、なんらかの燃料性状に仮定して、平衡液膜量を求めることになる。本請求では、始動後にエンジンの燃焼空燃比に基づいて燃料性状を検出することを明記するものである。たとえば、燃料性状が重質側になれば、それに応じて、燃料気化率が低くなるので、目標空燃比より大きく(リーン)になる。これを検出することで、燃料性状を間接的に検出するものである。
請求項14において、
エンジンの筒内圧もしくは軸トルクもしくは排気空燃比を直接的もしくは間接的に検出する手段を備え、
エンジンに供給した燃料量および空気量、
および前記筒内圧もしくは前記軸トルクもしくは排気空燃比に基づいて、
前記燃焼空燃比を検出することを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、本請求項は、請求項14に準じるものであり、燃焼空燃比をエンジンの筒内圧もしくは軸トルクもしくは排気空燃比から間接的に求めるものである。燃料性状が所定の性状であれば、実現できる燃焼空燃比を燃料量と空気量からもとめ、エンジンの筒内圧もしくは軸トルクもしくは排気空燃比から実際の燃焼空燃比をもとめ、その差をもって、燃料性状を推定するものである。なお、燃焼空燃比がリーンになるに応じて、筒内圧およびトルクは低下する。
請求項14において、
エンジンの回転速度変動を直接的もしくは間接的に検出する手段を備え、
エンジンに供給した燃料量および空気量および前記回転速度変動に基づいて、
前記燃焼空燃比を検出することを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、本請求項は、請求項14に準じるものであり、燃焼空燃比をエンジンの回転速度変動から間接的に求めるものである。燃料性状が所定の性状であれば実現できる燃焼空燃比を燃料量と空気量からもとめ、エンジンの回転速度変動から実際の燃焼空燃比をもとめ、その差をもって、燃料性状を推定するものである。なお、燃焼空燃比がリーンになるに応じて、エンジン回転速度変動は大きくなる。
請求項1〜16において、
前記、「エンジン始動時における所定の燃料性状における平衡液膜量」は、
「重質燃料における平衡液膜量」とすることを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項9の説明で述べたように、実際の燃料性状が、始動前に既知であれば、それに基づいて、平衡液膜量を決める。実際の燃料性状が、不明であれば、なんらかの燃料性状に仮定して、平衡液膜量を求めることになる。始動性能のロバスト性確保の観点で、より重質側の燃料性状に初期設定しておくのが望ましい。それを明記するものである。
請求項17において、
前記、「重質燃料」は、少なくとも、排気認証試験に用いられる燃料よりも重質の燃料であることを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。本請求項は、請求項17に準じるものであり、初期設定しておく燃料性状をより具体的に明記するものである。
請求項1〜18において、
前記「所定燃料性状における平衡液膜量」は、
前記「外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温」が低くなるに応じて、増加するように設定することを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項1の説明で述べたように、図16において、平衡液膜量が温度,燃料性状で整理できるのは、燃料の粘性が温度と燃料性状で支配的に決まるからであると考える。粘性は、温度が低くなるにつれ高くなる。したがって、本請求項に記載の如く、「平衡液膜量」は、「外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温」が低くなるに応じて、増加するように設定することになる。それを明記するものである。
請求項19において、
前記「平衡液膜量」は、
前記「外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温」に対して、
Exp関数あるいはそれに準じる傾向で表されることを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項19の説明で述べたように、粘性は、温度が低くなるにつれ高くなるが、より詳しくは、粘性は燃料温度のExp関数で表されること(実験式)が、知られている。これを明記するものである。
請求項1〜20において、
前記「平衡液膜量」は、
エンジンに吸入される空気量の流速もしくはそれと相関のあるパラメータに基づいて補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項1の説明で述べたように、吸入空気量による燃料液膜剪断応力,燃料液膜の粘性力および摩擦力などの力学的バランスによって、燃料液膜の内、吸気管内に残留する燃料とシリンダ内に流入する燃料量が決まる。本請求項では、吸入空気量による剪断応力の影響を考慮して平衡液膜量を決める(補正する)ことを明記するものである。
請求項1〜21に記載の制御装置は、
気筒別に備えることを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。
請求項1〜22において、
燃料噴射は、吸気弁が開く前に開始することを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、〔発明が解決しようとする課題〕で述べたように、従来技術の如くまた、吸気行程に合わせて燃料噴射を行うと、吸気管内壁および吸気弁表面で一旦燃料が液膜化することなく、噴射燃料が直接シリンダ内に流入しやすくなる。この場合、吸気流速の剪断応力を十分に利用することができないため、燃料は十分に微粒化できずに、シリンダに入る。燃料粒径が大きいと、燃焼素性が悪くなり、トルク性能,排気性能の双方に悪影響を及ぼす。したがって、本発明においては、燃料噴射は少なくとも吸気弁が開く前に開始し、吸気流による剪断応力を十分に利用し、もって、燃料微粒化を促進することを提案するものである。
請求項1〜23において、
燃料噴射は、吸気弁が開く前に終了することを
特徴とするエンジンの制御装置。
を提案する。すなわち、請求項23では、吸気弁が開く前に燃料噴射を開始することを提案したが、より望ましくは、吸気弁が開く前に燃料噴射を終了し、燃料液膜を形成させた状態で、吸気弁を開くのがよい。それを明記するものである。
図18は本実施例を示すシステム図である。多気筒で構成されるエンジン9において、外部からの空気はエアクリーナ1を通過し、吸気管4,コレクタ5を経てシリンダ内に流入する。流入空気量は電子スロットル3により調節される。エアフロセンサ2では流入空気量が検出される。エンジン回転数センサ15では、クランク軸の回転角1゜と燃焼周期毎の信号が出力される。水温センサ14はエンジンの冷却水温度を検出する。またアクセル開度センサ13は、アクセル6の踏み込み量を検出し、それによって運転者の要求トルクを検出する。アクセル開度センサ13,エアフロセンサ2,電子スロットル3に取り付けられたスロットル開度センサ17,エンジン回転数センサ15,水温センサ14のそれぞれの信号はコントロールユニット16に送られ、これらセンサ出力からエンジンの運転状態を得て、空気量,燃料噴射量,点火時期のエンジンの主要な操作量が最適に演算される。コントロールユニット16内で演算された燃料噴射量は開弁パルス信号に変換され、燃料噴射弁7に送られる。またコントロールユニット16で演算された点火時期で点火されるよう駆動信号が点火プラグ8に送られる。噴射された燃料は吸気マニホールドからの空気と混合されエンジン9のシリンダ内に流入し混合気を形成する。可変吸気弁31は、可変動弁であり、開弁時期,閉弁時期がそれぞれ制御可能である。混合気は所定の点火時期で点火プラグ8から発生される火花により爆発しその燃焼圧によりピストンを押し下げエンジンの動力となる。爆発後の排気は排気管10を経て三元触媒11に送り込まれる。排気還流管18を通って排気の一部は吸気側に還流される。排気還流量調整バルブ19によって制御される。A/Fセンサ12はエンジン9と三元触媒11の間に取り付けられており、排気中に含まれる酸素濃度に対して線形の出力特性を持つ。排気中の酸素濃度と空燃比の関係はほぼ線形になっており、したがって酸素濃度を検出するA/Fセンサ12により空燃比を求めることが可能となる。コントロールユニット16ではA/Fセンサ12の信号から三元触媒11上流の空燃比を算出し、触媒下流O2センサ20の信号から、三元触媒下流のO2濃度もしくはストイキに対してリッチもしくはリーンであるかを算出する。また、両センサの出力を用いて三元触媒11の浄化効率が最適となるよう燃料噴射量もしくは空気量を逐次補正するF/B制御を行う。また、吸気温センサ29で、吸気温が、筒内圧センサ30で、筒内の圧力が、それぞれ検出される。
・始動制御許可部(図21)
・実空気量演算部(図22)
・燃料噴射量演算部(図23)
「始動制御許可部」では、始動制御を許可するべく始動制御許可フラグ(F_sidou)が求められる。「実空気量演算部」では、エアフロセンサ2の出力信号などに基づいて、一気筒あたりの実空気量(Tp)を演算する。「燃料噴射量演算部」では、実空気量(Tp)と冷却水温(Twn)に基づいて燃料噴射量(TI)を演算する。
本演算部(許可部)では、始動制御の許可の判定(F_sidouを行う。具体的には図21に示されるように、
・Ne(エンジン回転数)=0からK1≦Neとなったとき、F_sidou=1
とする。
本演算部ではTp(実空気量)を演算する。具体的には図22に示される式で演算する。ここに、Cylは気筒数を表す。K0は、インジェクタの仕様(燃料噴射パルス幅と燃料噴射量の関係)に基づき決める。
本演算部では、燃料噴射量(TI)を演算する。具体的には、図23に示されるように、下記の4つの演算部から構成される。
・目標燃焼燃料量演算部(図24)
・平衡液膜量演算部(図25)
・非平衡液膜量演算部(図26)
・非平衡液膜崩壊量演算部(図27)
目標燃焼燃料量演算部では、シリンダ内実空気量(Tp)からシリンダ内で燃焼する目標燃料量(TgTICyl)を演算する。平衡液膜量演算部では、冷却水温(Twn)から平衡液膜量(TI_S)を求める。非平衡液膜量演算部では、平衡液膜量(TI_S)から非平衡液膜量(TI_US)を求める。非平衡液膜崩壊量演算部で、非平衡液膜量(TI_US)から崩壊液膜量(TI_C)を求める。
○目標燃焼燃料量演算部(図24)
本演算部では、目標燃焼燃料量(TgTICyl)を求める。具体的には、図24に示されるように、実空気量(Tp)に目標当量比(TgFA)を乗じた値を目標燃焼燃料量(TgTICyl)とする。目標当量比(TgFA)はシリンダ内の燃焼当量比(空燃比)を指し、一般に1.0とするのがよい。
○平衡液膜量演算部(図25)
本演算部では、平衡液膜量(TI_S)を求める。具体的には、図25に示されるように、冷却水温(Twn)からテーブルを参照して、平衡液膜量(TI_S)を求める。本テーブルは、図16に示される如く設定される。なお、実燃料性状が事前に検知されない場合は、なんらかの燃料性状に仮定して、設定することになる。排気性能優先であれば、排気認証試験に用いられる比較的軽質の燃料性状用の平衡液膜量で設定するのがよい。始動性能(ロバスト性)優先であれば、比較的重質の燃料性状用の平衡液膜量で設定するのがよい。
○非平衡液膜量演算部(図26)
本演算部では、非平衡液膜量(TI_US)を求める。具体的には、図26に示されるように、前サイクルにおける平衡液膜量(TI_Sz)と今サイクルにおける平衡液膜量(TI_S)との差から求める。すなわち、非平衡液膜量(TI_US)は、同一気筒における1サイクル間の平衡液膜量の変化量とする。
○非平衡液膜崩壊量演算部(図27)
本演算部では、崩壊液膜量(TI_C)を演算する。具体的には、図27に示されるように、非平衡液膜量(TI_US)が0より大きいとき、すなわち、過剰な燃料量が吸気管にある場合、非平衡液膜量(TI_US)に非平衡液膜崩壊率(R_C)を乗じて、崩壊液膜量(TI_C)を求める。非平衡液膜崩壊率(R_C)は、非平衡液膜量(TI_US)からテーブルを参照して求める。本テーブルは、図17に示される如く設定される。
実施例1では、実燃料性状を特に検出はせず、平衡液膜量は、所定の燃料性状で設定した。実施例2は、始動後のエンジン回転速度変動から燃料性状を推定し、その結果に基づいて、平衡液膜量を切り換える。
図21に示されるものであり実施例1と同じであるので、詳述しない。
図22に示されるものであり実施例1と同じであるので、詳述しない。
本検出部では、実燃料性状を検出(推定)する。具体的には、図29に示されるように、回転速度Neから、角加速度,角加加速度を検出し、所定期間における角加速度もしくは角加加速度の分散が所定値以上のとき、燃料性状は、重質と判断し、F_Fuel=1とする。
本演算部では、燃料噴射量(TI)を演算する。具体的には、図30に示されるように、下記の4つの演算部から構成される。
・目標燃焼燃料量演算部(図24)
・平衡液膜量演算部(図25)
・非平衡液膜量演算部(図26)
・非平衡液膜崩壊量演算部(図27)
目標燃焼燃料量演算部では、シリンダ内実空気量(Tp)からシリンダ内で燃焼する目標燃料量(TgTICyl)を演算する。平衡液膜量演算部では、冷却水温(Twn)と燃料性状フラグF_Fuelから平衡液膜量(TI_S)を求める。非平衡液膜量演算部では、平衡液膜量(TI_S)から非平衡液膜量(TI_US)を求める。非平衡液膜崩壊量演算部で、非平衡液膜量(TI_US)から崩壊液膜量(TI_C)を求める。
○目標燃焼燃料量演算部(図24)
図24に示されるものであり実施例1と同じであるので、詳述しない。
○平衡液膜量演算部(図31)
本演算部では、平衡液膜量(TI_S)を求める。具体的には、図31に示されるように、冷却水温(Twn)からテーブルを参照して、重質燃料時の平衡液膜量(TI_SH)もしくは軽質燃料時の平衡液膜量(TI_SL)を求める。両テーブルは、図16に示される如く設定される。どちらの平衡液膜量を用いるかは、燃料性状フラグ(F_Fuel)の値による。なお、実燃料性状が始動前に検知されない場合は、なんらかの燃料性状に仮定して、設定することになる。排気性能優先であれば、排気認証試験に用いられる比較的軽質の燃料性状用の平衡液膜量で設定するのがよい。始動性能(ロバスト性)優先であれば、比較的重質の燃料性状用の平衡液膜量で設定するのがよい。また、始動時の極初期は、重質用の平衡液膜量で設定しておき、始動後は、実際の燃料性状如何に関わらず、強制的に平衡液膜量を軽質用に切り換えるのも良い。実際の燃料性状が軽質のときは、空燃比が最適化されるので、排気も低減される。実際の燃料性状が重質のときは、空燃比がリーン化するが、前述の燃料性状検出部で回転速度変動により、重質が検出され、F_Fuel=1となるので、自動的に重質用の平衡液膜量に戻され、運転性能および排気性能が最適化される。
○非平衡液膜量演算部(図26)
図26に示されるものであり実施例1と同じであるので、詳述しない。
○非平衡液膜崩壊量演算部(図27)
図27に示されるものであり実施例1と同じであるので、詳述しない。
2 エアフロセンサ
3 電子スロットル
4 吸気管
5 コレクタ
6 アクセル
7 燃料噴射弁
8 点火プラグ
9 エンジン
10 排気管
11 三元触媒
12 A/Fセンサ
13 アクセル開度センサ
14 水温センサ
15 エンジン回転数センサ
16 コントロールユニット
17 スロットル開度センサ
18 排気還流管
19 排気還流量調節バルブ
20 触媒下流O2センサ
21 コントロールユニット内に実装されるCPU
22 コントロールユニット内に実装されるROM
23 コントロールユニット内に実装されるRAM
24 コントロールユニット内に実装される各種センサの入力回路
25 各種センサ信号の入力、アクチュエータ動作信号を出力するポート
26 点火プラグに適切なタイミングで駆動信号を出力する点火出力回路
27 燃料噴射弁に適切なパルスを出力する燃料噴射弁駆動回路
28 電子スロットル駆動回路
29 吸気温センサ
30 筒内圧センサ
31 可変吸気弁
32 可変吸気弁用駆動回路
Claims (24)
- エンジンの吸気ポート近傍もしくは吸気管内に残留している燃料量を、燃料量Aと燃料量Bに分離演算する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1において、
前記分離演算した燃料量Aもしくは燃料量Bに基づいて、
燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜2において、
前記「分離演算される2つの燃料量」は、
安定な燃料液膜である「平衡液膜量」と、
不安定な燃料液膜である「非平衡液膜量」とすることを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜3において、
前記「非平衡液膜量」に基づいて、
燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜4において、
前記「非平衡液膜量」の内、次サイクルでシリンダに流入する燃料量を予測演算する手段を備えたことを
特徴とするエンジンに制御装置。 - 請求項1〜5において、
前記「非平衡液膜量」の内、次サイクルでシリンダに流入する燃料量に基づいて、
次サイクルの燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜6において、
始動後、所定サイクル経過後もしくは所定時間経過後における、
各気筒の吸気ポート近傍もしくは吸気管内に残留している燃料量を気筒別に制御する手段を備えていることを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項7において、
始動後、所定サイクル経過後もしくは所定時間経過後における、
各気筒の吸気ポート近傍もしくは吸気管内に残留している燃料量の偏差が、
所定範囲内に収まるように制御することを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜8において、
燃料温度を直接的もしくは間接的に検出する手段を備え、
前記燃料温度から所定の燃料性状における平衡液膜量を求める手段を備え、
目標燃焼燃料量を演算する手段を備え、
前記平衡液膜量と目標燃焼燃料量を足した燃料量を始動時の各気筒の初回に噴射する手段とを備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜9において、
前記「燃料温度から所定の燃料性状における平衡液膜量」を一サイクル毎又は複数サイクル毎に更新演算する手段を備え、
「前回演算した平衡液膜量」と「今回演算した平衡液膜量」との差に基づいて、
次回以降の燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜10において、
前記「前回演算した平衡液膜量」と「今回演算した平衡液膜量」との差に基づいて、
「非平衡液膜量」を更新する手段を備え、
前記「非平衡液膜量」に基づいて、次回以降の燃料噴射量を補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜11において、
複数の燃料性状と、それに応じた平衡液膜量を求める手段を備え、
実際の燃料性状を直接的もしくは間接的に検出する手段と、
前記検出した実際の燃料性状に対応する平衡液膜量を求める手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜12において、
燃料温度検出手段は、
少なくとも外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温に、
基づいて燃料温度を検出するもしくは
外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温で代替することを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜13において、
エンジンの燃焼空燃比を直接的もしくは間接的に検出する手段を備え、
前記燃焼空燃比に基づいて前記燃料性状を検出することを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項14において、
エンジンの筒内圧もしくは軸トルクもしくは排気空燃比を直接的もしくは間接的に検出する手段を備え、
エンジンに供給した燃料量および空気量、
および前記筒内圧もしくは前記軸トルクもしくは排気空燃比に基づいて、
前記燃焼空燃比を検出することを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項14において、
エンジンの回転速度変動を直接的もしくは間接的に検出する手段を備え、
エンジンに供給した燃料量および空気量および前記回転速度変動に基づいて、
前記燃焼空燃比を検出することを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜16において、
前記、「エンジン始動時における所定の燃料性状における平衡液膜量」は、
「重質燃料における平衡液膜量」とすることを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項17において、
前記、「重質燃料」は、少なくとも、排気認証試験に用いられる燃料よりも重質の燃料であることを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜18において、
前記「所定燃料性状における平衡液膜量」は、
前記「外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温」が低くなるに応じて、増加するように設定することを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項19において、
前記「平衡液膜量」は、
前記「外気温もしくはエンジン吸入空気温もしくはエンジン冷却水温」に対して、
Exp関数あるいはそれに準じる傾向で表されることを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜20において、
前記「平衡液膜量」は、
エンジンに吸入される空気量の流速もしくはそれと相関のあるパラメータに基づいて補正する手段を備えたことを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜21に記載の制御装置は、
気筒別に備えることを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜22において、
燃料噴射は、吸気弁が開く前に開始することを
特徴とするエンジンの制御装置。 - 請求項1〜23において、
燃料噴射は、吸気弁が開く前に終了することを
特徴とするエンジンの制御装置。
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