JP2009079168A - 多孔質構造体の製造方法及び製造設備 - Google Patents

多孔質構造体の製造方法及び製造設備 Download PDF

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Abstract

【課題】品質の良い多孔質構造体を容易且つ安価に製造する。
【解決手段】原料ポリマーと溶媒とを含む溶液を流延ベルト42にキャストする。流延ベルト42上にキャスト膜22が形成する。キャスト膜22の表面22aに調節空気をあてて、キャスト膜22に含まれる溶媒を蒸発させる。結露により表面22a上に水滴が形成する。音波生成装置62は、振動面62aを介して、所定の音波を表面22aに伝える。表面22aに伝播する音波は、表面22aを変動させる。キャスト膜22の共振によって生成する節では、表面22aが変動しない。表面22aを伝播する音波の周波数を時間の経過と共に変化させることにより、節を消滅させることができるため、表面22aの水滴がより均一の配列を形成する。すなわち、本発明により、欠陥の少ない多孔質構造体を容易に製造することができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、多孔質構造体の製造方法及び製造設備に関し、より詳しくは微細なパターンを有する多孔質構造体の製造方法及び製造設備に関するものである。
今日、光学分野や電子分野では、集積度の向上や情報量の高密度化、画像情報の高精細化といった要求がますます大きくなっている。そのため、それら分野に用いられるフイルムに対しては、より微細な構造(微細パターン構造)を形成すること(微細パターニング)が強く求められている。また、再生医療分野の研究においては、表面に微細な構造を有する膜が、細胞培養の場となる材料として有効である。
フイルムの微細パターニングには、マスクを用いた蒸着法、光化学反応ならびに重合反応を用いた光リソグラフィ技術、レーザーアブレーション技術など種々の方法が実用化されている。
所定のポリマーの希薄溶液を高湿度下でキャストすることで、ミクロンスケールのハニカム構造をもつ多孔質フイルムなどの多孔質構造体が得られることが知られている(例えば、特許文献1参照)。この多孔質構造体の製造方法の概略について簡単に説明する。まず、疎水性の溶媒にポリマーが溶解する溶液を支持体上にキャストして、支持体上にキャスト膜を形成する。次に、キャスト膜に含まれる溶媒の蒸発を行う。この蒸発に伴い、キャスト膜の表面上の温度が結露に達し、キャスト膜の表面上に多数の水滴が形成する。そして、乾燥した空気をキャスト膜にあてて、キャスト膜に含まれる溶媒を蒸発させる。この溶媒の蒸発において、水滴は蒸発せずに、その形状を維持したまま、或いは成長をしながら、キャスト膜に入り込む。こうして、溶媒の蒸発を十分に行うことにより、キャスト膜に自己支持性が発現する。最後に、自己支持性を有するキャスト膜に入り込んでいた水滴を蒸発させる。こうして、この水滴の蒸発により、多数の孔を有する多孔質構造体を得ることができる。
キャスト膜上に水滴を均一に形成させる方法として、水滴が形成されるキャスト膜を一定の周波数で振動させることにより、水滴の再配列を促し、水滴の配列をより均一にすることができることが知られている(例えば、特許文献2)。
また、偏光板にも微細パターニングが形成されているフイルムが用いられている。このようなフイルムとしては、例えば、モスアイ構造を有する反射防止機能を発現するフイルムがある。このフイルムは、サブミクロン〜数十ミクロンサイズの規則正しい微細パターニングが形成されている。その形成方法の中でも主流であるのは、光リソグラフィを中心としたマイクロ加工技術を用いた版を作成し、その版の構造をフイルムに転写する方法である(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−157574号公報 特開2005−262777号公報 特開2003−302532号公報
前記特許文献1に記載の方法において、均一に配列され、寸法が均一の孔を有する多孔質構造体を製造する際には、キャスト膜の表面に水滴を形成させる水滴形成工程や表面に形成される水滴を成長させる水滴成長工程において、形成される水滴の寸法や配列は、キャスト膜の表面の温度や、表面の周りの空気の露点などの雰囲気条件に支配される。そのため、均一に配列し、個々の寸法が均一の孔を備える多孔質構造体を製造するためには、適切に制御された雰囲気条件下で、水滴形成工程や水滴成長工程を行うことが望まれる。しかしながら、水滴形成工程や水滴成長工程では、系の吸熱を伴う溶媒の蒸発及び系の発熱を伴う水滴の凝縮が混在する。そのため、水滴形成工程や水滴成長工程において、適切な雰囲気条件を維持することが非常に困難である。
前記特許文献3に記載の方法はトップダウン方式と呼ばれ、この方法では上記のように、微細構造を決定する版を作製する。版の作製は、複雑でいくつもの工程を必要とし、高いコストが必要とされる。また、大きな面積の版を製造することが困難であるという問題も生じている。
本発明者は、特許文献2に開示されるように、キャスト膜に水滴を形成した後に、一定の周波数でキャスト膜を振動させて、水滴の配列の均一化を試みたところ、製造された多孔質構造体の孔の配列の一部に欠陥が生じていることを発見した。本発明者の鋭意検討の結果、この欠陥の生成が、キャスト膜の共振に起因することを突き止めた。
キャスト膜が共振すると、キャスト膜の表面に節が生成するため、振動に起因する表面の変動が小さい節及び節の近傍では、水滴の再配列が行われない。したがって、節及び節の近傍に形成される水滴の配列の方向やピッチ等(以下、配列秩序と称する)は、再配列した水滴の配列秩序と異なってしまう。同一のキャスト膜の表面に、配列秩序が異なる水滴の集合体が複数形成されると、これらの集合体の界面が配列の欠陥となる。このキャスト膜の共振周波数を事前に求めることは困難であり、また、表面に形成された微小な水滴を観察して、再配列を誘発しない節の有無を工程内で検出することは非常に困難である。
上記問題に鑑みて、均一に配列される孔を有する多孔質構造体を容易且つ安価に製造する多孔質構造体の製造方法及び製造設備を提供する。
本発明は、疎水性を有する溶媒に、多孔質構造体の原料となるポリマーが溶解する溶液を、支持体上にキャストして、キャスト膜を形成する第1工程と、前記キャスト膜に含有する前記溶媒を蒸発させながら、結露により前記キャスト膜の表面に水滴を形成させる、または、前記表面に形成される前記水滴を成長させる第2工程と、前記第2工程において前記キャスト膜に入り込んだ前記水滴を蒸発させる第3工程と、を有する多孔質構造体の製造方法において、前記第2工程では、前記キャスト膜を振動させて、この振動に起因する前記表面の変動により、前記表面上の前記水滴を均一に配列することを特徴とする。
音波を用いて、前記キャスト膜を振動させることが好ましい。また、複数の周波数で前記キャスト膜を振動させることが好ましい。
本発明の多孔質構造体の製造設備は、疎水性を有する溶媒に多孔質構造体の原料となるポリマーが溶解する溶液を、支持体上にキャストして、前記支持体にキャスト膜を形成するキャスト膜形成手段と、前記キャスト膜に含有する前記溶媒を蒸発させる溶媒蒸発手段と、結露により前記キャスト膜の表面に水滴を形成させる水滴形成手段と、この水滴を成長させる水滴成長手段と、前記キャスト膜に入り込んだ前記水滴を蒸発させる水滴蒸発手段と、前記キャスト膜を振動させる振動手段と、を有することを特徴とする。
前記振動手段が、前記キャスト膜を振動させる音波を生成する音波生成手段であることが好ましい。また、前記振動手段と異なる周波数で、前記キャスト膜を振動させる副振動手段を有することが好ましい。
本発明の多孔質構造体の製造方法によれば、前記キャスト膜の振動により、水滴が形成される表面を変動させるため、キャスト膜上の水滴の配列を均一にすることが容易になる。すなわち、本発明により、均一に配列する孔を有する多孔質構造体を容易且つ安価に製造することができる。また、本発明では、版の作成が不要であるため、多孔質構造体を安価に製造することができる。
本発明によれば、キャスト膜近傍の空気を介在してキャスト膜に伝わる音波を用いるため、キャスト膜の全域にわたり均一な振動を与えることを可能にする。また、本発明によれば、音波を生成する音波生成手段の配置の自由度が高いこと、そして、支持体の共振周波数や固有振動モードなどの制約をうけずに、自由な周波数でキャスト膜の表面を振動させることができるため、製造設備の設計変更にも容易に対応することが可能になり、製造設備のコストを抑制することができる。更に、異なる周波数を用いて、キャスト膜を振動させるため、工程内において確実にキャスト膜の表面を変動させることが可能になり、水滴の配列の欠陥の生成を抑制することができる。
また、本発明の多孔質構造体の製造設備によれば、疎水性を有する溶媒に多孔質構造体の原料となるポリマーが溶解する溶液を、支持体上にキャストして、前記支持体にキャスト膜を形成するキャスト膜形成手段と、前記キャスト膜に含有する前記溶媒を蒸発させる溶媒蒸発手段と、結露により前記キャスト膜の表面に水滴を形成させる水滴形成手段と、この水滴を成長させる水滴成長手段と、前記キャスト膜に入り込んだ前記水滴を蒸発させる水滴蒸発手段と、前記キャスト膜を振動させる振動手段と、を有するため、キャスト膜の共振を防ぎ、キャスト膜上の水滴の配列を均一にすることが容易になる。すなわち、本発明により、均一に配列する孔を有する多孔質構造体を容易に製造することができる。また、本発明では、版の作成が不要であるため、多孔質構造体を安価に製造することができる。
(多孔質構造体の製造方法)
図1に本発明に係る多孔質構造体製造工程10を、図2に多孔質構造体製造工程10をモデル的に図示した説明図である。多孔質構造体製造工程10は、キャスト工程11と、水滴形成工程12と、水滴成長工程13と、水滴蒸発工程14とを有する。この多孔質構造体製造工程10により、多孔質構造体15が製造される。
キャスト工程11では、前述した溶液を支持体21(図2(a)参照)の上にキャストし、キャスト膜22(図2(a)参照)を形成する。この溶液は、多孔質構造体の原料となるポリマーを溶媒に溶解することにより得られる。溶液のキャストの方法は、静置した支持体の上に溶液を載せて塗り広げる方法と、走行する支持体上に溶液を流延ダイから流出する方法とがあり、本発明ではいずれの方法も用いることができる。一般的に、前者は少ない生産量で多品種をつくる場合に適し、後者は大量生産に適する。なお、後者の方法において、流延ダイからの溶液の流出を連続或いは断続的に行うことにより、長尺の多孔質構造体、或いは、所定長さの多孔質構造体を連続して製造することができる。
水滴形成工程12では、図2(a)及び(b)に示すように、キャスト膜22の表面22aに所望の条件に調節された空気(以下、調節空気と称する)200をあてて、キャスト膜22に含まれ、溶媒23が、表面22aから蒸発する。溶媒23の蒸発に伴い、表面22aの周りの空気の温度が低下する。この温度の低下に伴い、表面22aの周りの空気に含まれる水蒸気が凝縮する。溶媒23の蒸発と水蒸気の凝縮との反応において溶媒23の蒸発と水蒸気の凝縮との反応において、表面22aの周りの温度が露点と同じ、或いは低い場合に、表面22aに水滴25が形成される。このとき生じた水滴25は、極めて小さく、肉眼で認めることができないような大きさである。なお、この水滴形成工程12において、調節空気200に代えて、湿った空気を用いても良い。この湿った空気をキャスト膜22にあてることにより、表面22aに水滴25を形成することもできる。また、水滴形成工程12において、溶媒の蒸発と表面22aでの水滴25の形成とを同時に開始させる、または一方を先に開始する、いずれのケースでも良い。
水滴成長工程13では、水滴形成工程12と同様にして、調節空気200を表面22aにあてて、溶媒23を蒸発させながら、表面22aに形成する水滴25をゆっくりと成長させる。水滴25は蒸発せずに、図2の(c)に示すようにキャスト膜22の中に入り込む。この水滴成長工程13では、水滴形成工程12で発生した極めて小さな水滴を複数合体させて水滴を大きくすることを目的とするが、キャスト膜22の表面22aの温度やキャスト膜22の周辺の条件次第では、水滴形成工程12で発生した極めて小さな各水滴が核となってそれぞれ大きくなる現象が見られる場合もある。
そして、水滴25が所望の寸法になったところで、水滴蒸発工程14で図2の(d)に示すようにキャスト膜22中の水滴25を水蒸気27として蒸発させる。キャスト膜22の中に溶媒23が残留している場合には、できるだけ多くの溶媒23を蒸発させた後に水滴25を蒸発させるような条件とする。この条件として、例えば、溶媒に水よりも沸点の低い化合物を用いる、或いは、キャスト膜22の雰囲気に含まれる水や溶媒の蒸気圧を所望の範囲に調節する、などが挙げられる。溶媒23が十分に除去されたキャスト膜22には、自己支持性が発現する。次に、自己支持性を有するキャスト膜22に入り込んでいた水滴25を蒸発させる。水滴25の蒸発により、キャスト膜22から多孔質構造体15を生成することができる。なお、支持体21が不要なものであれば、多孔質構造体15の形成後または形成中に剥がしてもよい。
図3は、多孔質構造体15の概略図である。支持体21(図2参照)から剥がした多孔質構造体15には、非常に多くの孔31が密に形成される。(A)は本発明により得られる多孔質構造体15の平面図、(B)は(A)のb−b線に沿う断面図で、(C)は(A)のc−c線に沿う断面図である。また、(D)は、別の多孔質構造体33の断面図であるが、多孔質構造体33の平面図は(A)と同様であるので略す。
孔31は、図3(A)に示すようにハチの巣状、いわゆるハニカム構造となるように多孔質構造体15上に配列する。孔31は、略一定の形状及びサイズであり、規則的に配列する。そして、孔31は、図3(B)及び(C)に示すように、多孔質構造体15の両面を突き抜けるように形成される場合もあるし、(D)の多孔質構造体33のように片面側に窪み33aとして形成される場合もある。そして、この孔31の配列は、水滴の疎密の度合いや大きさ、形成する水滴の種類、乾燥速度、溶液の固形分濃度、水滴成長工程における水滴成長度合いに対する溶媒23の蒸発のタイミング等によって異なるものとなる。本発明により製造される多孔質構造体15の形態は特に限定されるものではないが、本発明は、例えば、多孔質構造体15の厚みL1が0.05μm以上100μm以下、孔の径D1が0.05μm以上100μm以下、孔31の形成ピッチL2が0.05μm以上100μm以下であるような多孔質構造体を製造する場合に特に効果がある。
ハニカム構造とは、上記のように、一定形状、一定サイズの孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。この規則配列は単層の場合には二次元的であり、複層の場合は三次元的にも規則性を有する。この規則性は二次元的には1つの孔の周囲を複数(例えば、6つ)の孔が取り囲むように配置され、三次元的には結晶構造の面心立方や6方晶のような構造を取って、最密充填されることが多いが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともある。
(溶液)
本発明で用いられる溶液は、多孔質構造体の原料となるポリマー(以下、原料ポリマーと称する)と原料ポリマーを溶解しうる溶媒とを含む。キャストするときの溶液の原料ポリマーの濃度は、キャスト膜22を形成できる濃度であれば良く、具体的には、0.1重量%以上30重量%以下の範囲であることが好ましい。原料ポリマーの濃度が0.1重量%未満であると、フイルムの生産性に劣り大量生産に適さないおそれがある。また、原料ポリマーの濃度が30重量%を超えると、水滴形成工程12において水滴の成長が十分に行われないうちに乾燥してしまうため、好ましい寸法の孔をもつような多孔質構造体15をつくることが困難になることがある。
(溶媒)
本発明に用いられる溶媒としては、以下を満たすものであればよい。
(1)多孔質構造体の原料ポリマーを溶解しうるもの。
(2)疎水性の有するもの。
疎水性溶媒としては、水の溶解度が5重量%以下であるものが好ましく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系有機溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類や二硫化炭素などが挙げられる。上述した化合物のうち、2種類以上の化合物からなる溶媒を疎水性溶媒としてもよい。これらの化合物の割合を適宜代えて用いることにより、液滴の形成速度、及び液滴のキャスト膜への入り込み深さ等を制御することができる。
(原料ポリマー)
多孔質構造体の原料ポリマーとしては、高分子化合物や両親媒性化合物などを用いることができる。
(高分子化合物)
高分子化合物としては、特に限定されず、用途等に応じて決定することができるが、その数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000,000であるものが好ましく、5,000〜1,000,000であるものがより好ましい。
この高分子化合物としては、非水溶性溶媒つまり疎水性溶媒に溶解するものが好ましく、例えば、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、アガロース、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリスルホンなどが好ましい。生分解性を必要とする場合や、あるいは、コストや入手の容易さなどを考慮すると、ポリ−ε−カプロラクトンが特に好ましい。
高分子化合物の他の例としては、ビニル重合ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、強度、弾性等の観点から、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーやポリマーブレンド、ポリマーアロイとしてもよい。
(両親媒性化合物)
両親媒性化合物は、親水性をもつとともに親油性をももつ物質であり、具体的には、親水基と疎水基をもつ化合物である。このような両親媒性化合物としては、市販される多くの界面活性剤のような単量体の他に、二量体や三量体等のオリゴマー、高分子化合物を用いることができる。両親媒性化合物と高分子化合物とを混合することにより、キャスト膜の表面に水滴を形成しやすくなる。また、高分子化合物に対する分散状態を制御することにより、水滴が形成される位置をより容易に制御することができる。
両親媒性化合物として、例としてはポリアクリルアミドがある。その他の両親媒性高分子化合物としては、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、親油性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つもの、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。親油性側鎖は、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。親油性側鎖は、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
両親媒性化合物としては、互いに異なる2種以上の化合物を用いると水滴の形成位置、水滴の大きさを制御することができるので好ましい。また、高分子化合物についても、互いに異なる2種以上の化合物を用いることにより同様の効果を得ることができる。なお、高分子化合物として、上記の両親媒性化合物を用いてもよい。
高分子化合物及び両親媒性化合物は、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)高分子化合物であってもよい。また、高分子化合物、両親媒性化合物とともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物により多孔質構造体を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施してもよい。
高分子化合物、両親媒性化合物と併用される多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート又はこれらの変性物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。高分子化合物、両親媒性化合物が分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)化合物である場合には、その重合性基と反応しうる重合性の多官能モノマーを併用することも好ましい。
上記の中でもエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。したがって、例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗布液を調製し、その塗布液を透明な支持体上に塗布した後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化すると、反射防止フイルムを製造することができる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンなどが挙げられる。
前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
なお、前記光ラジカル重合開始剤としては、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されている。また、市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。前記光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン、チオキサントン、などが挙げられる。
前記熱ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、有機ジアゾ化合物、などを用いることができる。有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドなどが挙げられる。無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。前記ジアゾ化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
次に、本発明の多孔質構造体の製造設備について説明する。なお、本発明の多孔質構造体の製造設備は、以下に記載される内容に限られない。
(多孔質構造体の製造設備)
図4のように、多孔質構造体製造設備40は、流延室41を備える。流延室41には、走行する支持体である流延ベルト42と、溶液43を流延ベルト42の片面(以下、流延面と称する)42の上に流出する流延ダイ44とが配される。また、流延室41は、第1エリア46〜第3エリア48を備え、流延ダイ44は、第1エリア46に配される。流延ベルト42は、ローラ52,53に掛け渡される。ローラ52,53は、少なくとも一方は図示しない駆動装置により回転する。これらローラ52、53の回転により、流延ベルト42は、第1エリア46、第2エリア47、そして第3エリア48の各エリアを順次無端走行する。
溶液43は、多孔質構造体製造設備40に送られる前に、予めろ過されることが好ましい。これにより多孔質構造体15への異物混入を防止することができる。ろ過は複数回実施することが好ましい。例えばろ過を2回実施するときには、上流側のろ過装置(図示なし)には、多孔質構造体15の孔の径よりも大きな絶対ろ過精度(絶対ろ過孔径)をもつフィルタが備えられ、下流側のろ過装置(図示なし)には、多孔質構造体15の空隙よりも小さな絶対ろ過精度をもつフィルタが備えられることが好ましい。
また、温調機54がローラ52,53の温度を制御することにより、ローラ52,53に接触する流延ベルト42の流延面42aの温度を所望の範囲に制御する。このようにして、温調機54は、ローラ52,53を介して、流延面42a上に形成されるキャスト膜22の表面22aの温度(以下、表面温度と称する)を所望の範囲に調節することができる。特に、キャスト膜22の周辺空気の条件制御が瞬時に変化させられない場合にはこのような流延ベルト42が有効である。
温調機54による流延面42aの温度調整の方法としては、伝熱媒体が流れる液流路をローラ52,53の内部に設け、温度調節された伝熱媒体を送液する方法などが挙げられる。流延ベルト42の温度は、下限値を0℃以上とすることが好ましい。また、上限値は溶媒の沸点以下とすることが好ましく、より好ましくは(溶媒の沸点−3)℃とすることである。これにより、結露した水分が凝固することも無く、また、キャスト膜22の中の溶媒が急激に蒸発することが抑制されるため、空隙のサイズや均一性や形状等に優れる多孔質構造体15を得ることができる。さらに、流延面42aの温度は、キャスト膜22の幅方向にわたってばらつきが±3℃以内となるようにすることにより、表面温度の位置によるばらつきも幅方向において±3℃以内とすることができる。キャスト膜22の幅方向における温度のばらつきを抑えることにより、多孔質構造体15の孔に異方性が生じることが抑制されるので、多孔質構造体としての品質が向上する。
流延ダイ44には、溶液43が貯留するタンク(図示しない)が配管を介して接続する。タンクに貯留する溶液43の温度は、所望の範囲(0℃以上50℃以下)になるように保持されている。溶液43は、流延ダイ44から流延ベルト42の上に流出する。こうして、走行する流延ベルト42の流延面42aの上では、溶液43が流延し、キャスト膜22が形成される。
第1エリア46には、送風吸気ユニット61と音波生成装置62とが配される。第1エリア46では、送風吸気ユニット61を用いて、所望の条件に調節された調節空気をキャスト膜22にあてて、その表面22aに水滴を形成する、すなわち水滴形成工程12を行うことを主たる目的とする。なお、第1エリア46の詳細は後述する。
第2エリア47には、送風吸気ユニット63が流延ベルト42の走行方向に沿って配される。送風吸気ユニット63は、第1エリア46の送風吸気ユニット61のすぐ下流側に配される。送風吸気ユニット63は、送風口63aと吸気口63bとを備える。送風口63aは、調節空気をキャスト膜22の表面22aに向けて流し出す。吸気口63bは、キャスト膜22の周りの気体を吸気する。送風吸気ユニット63は、それぞれ図示しない制御部により、所望の条件に調節された調節空気をキャスト膜22に向けて送り出し、所望の吸引力で、表面22aの周りの気体を吸引する。
第2エリア47では、これら送風吸気ユニット63を用いて、調節空気をキャスト膜22にあてて、第1エリア46で形成された水滴を、一様に成長させることを主たる目的とする。第1エリア46と第2エリア47とが互いに離れるほど、つまり水滴を形成してから第2エリア47に入るまでの時間が長くなるほど、成長し終えたときの水滴の大きさが不均一になってしまう。送風吸気ユニットの数は、本実施形態の数、つまり2に限定されず、1または3以上であってもよい。また、送風吸気ユニット63として、送風吸気ユニット61と同じものを用いてもよい。
また、第1エリア46及び第2エリア47において流延ベルト42が走行する路(以下、走行路と称する)の傾きが大きすぎると、キャスト膜22の内部では、このキャスト膜22を構成している溶液が走行路の傾き方向に不均一な流れを発生してしまう(以下、液流動現象と称する)ことがある。そこで、流延ベルト42の走行路を水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。なお、走行路は、走行方向のみならず、幅方向についても、水平方向に対して±10°以内とされることが好ましい。走行路の走行方向及び幅方向の傾きを以上のように調整することにより、キャスト膜22の厚みが均一になり、均一な孔を有する多孔質構造体15を形成することができる。
第3エリア48には、4つの送風吸気ユニット71〜74が流延ベルト42の走行方向に沿って順に配される。送風吸気ユニットの数は、本実施形態の数、つまり4に限定されず、1以上3以下または5以上であってもよい。送風吸気ユニット71〜74は、送風吸気ユニット63と同様に、調節空気をキャスト膜22の表面22aに向けて流し出す送風口71a〜74aとキャスト膜22の周りの気体を吸気する吸気口71b〜74bとを備える。送風吸気ユニット71〜74は、図示しない制御部により、所望の条件に調節された空気を送り出す。
第3エリア48では、水滴の蒸発、すなわち水滴蒸発工程14を行うことを主たる目的としているが、第3エリア48に至るまでに蒸発しきれなかった溶媒も蒸発させる。
送風吸気ユニット71〜74から送り出される空気の送風速度は、0.01m/秒以上20m/秒以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5m/秒以上15m/秒以下の範囲であり、最も好ましくは1m/秒以上10m/秒以下の範囲とすることである。この送風速度が0.01m/秒未満であると、水滴の蒸発が充分に進行しないおそれがあり、生産性がおちる場合がある。一方、送風速度が20m/秒を超えると水滴の蒸発が急激に生じて、形成される孔の形態が乱れるおそれがある。
送風吸気ユニット71〜74から送り出される空気の露点TD2と第3エリア48におけるキャスト膜22の表面温度TLとは、80℃≧(TL−TD2)℃≧1℃の条件を満たすように、少なくとも何れか一方を制御することが好ましい。これにより、水滴の成長を止めて、水滴を水蒸気として蒸発させることが可能となる。(TL−TD2)が1℃未満であるときには、水滴の成長を止めることが確実にはできず、孔のサイズの精度が低下することがある。一方、(TL−TD2)が80℃を越えると、有機溶媒や水滴の蒸発が急激になってしまい、規則的に並んでいた水滴の配列や形状、サイズが乱れて均一なハニカム構造は発現されなくなる。
第3エリア48に入る直前の表面温度TLと、第3エリア48の直前の搬送路近傍の露点と、第3エリア48に入った直後の搬送路近傍の露点との各ばらつきは、いずれも±3℃以内であることが好ましい。
また、表面22aから3mm〜20mm程度離れた位置に凝縮器を設けることが好ましい。この凝縮器により、凝縮器の表面近傍の水蒸気や揮発有機溶媒を凝縮させて、表面22a近傍の水分及び溶媒ガスの濃度が高くならないように制御することが可能になる。こうして、第3エリア48におけるキャスト膜22の乾燥を、より確実に行うことができる。以上のような乾燥方法のうち少なくともいずれかひとつの乾燥方法を適用することで、キャスト膜22の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
更に、多孔質構造体製造設備40は、キャスト膜22を流延ベルト42から剥ぎ取る際に、流延ベルト42から剥離した多孔質構造体15を支持する剥取ローラ80を備え、剥取ローラ80によって剥ぎ取られた多孔質構造体15は次工程に送られる。次工程とは、例えば、多孔質構造体15に種々の機能を施すための機能付与工程や、多孔質構造体15をロール状に巻き取る巻取工程等である。
次に、第1エリア46の詳細について説明する。図5のように、流延ベルト42の近傍、そして、流延ダイ44からみて流延ベルト42の走行方向の下流側には、送風吸気ユニット61が設けられる。送風吸気ユニット61は、送風口61aと、吸気口61bと、送風コントローラ61cとを備える。送風口61aは、調節空気をキャスト膜22の表面22aに向けて流し出す。吸気口61bは、キャスト膜22の周りの気体を吸気する。また、送風口61a及び吸気口61bは、風を出す給気ノズル部材と、キャスト膜22近傍の空気を吸い込む排気用ノズル部材とをもつ、いわゆる2Dノズルである。図示しない制御部の制御下において、送風コントローラ61cは、送風系における調節空気の温度、露点、湿度、送風速度、並びに、吸気系における吸引力を独立して制御する。こうして、送風吸気ユニット61はキャスト膜22全幅に渡り、均一に給気と排気を行うことができる。
送風吸気ユニット61からの調節空気の露点TD1と、第1エリア46を通過するキャスト膜22の表面温度TLとは、0℃≦(TD1−TL)の条件を満たすように、少なくともいずれか一方が制御される。これにより、キャスト膜22の近傍を流れる調節空気の中の水蒸気を良好に水滴として発生させるとともに成長させることができる。より好ましくは0℃≦(TD1−TL)≦80℃であり、さらに好ましくは0℃≦(TD1−TL)≦30℃であり、最も好ましくは0℃≦(TD1−TL)≦10℃である。(TD1−TL)が0℃未満の場合、表面22aにおいて、結露がおきにくくなることがある。また、(TD1−TL)が80℃を超える場合、結露する速度、つまり水滴発生速度が大きくなりすぎて、水滴の上にさらに水滴ができてしまい、多孔質構造体15の孔のサイズが不均一、つまり構造が不均一となってしまうことがある。また、調節空気の温度は特に限定されるものではないが、5℃以上100℃以下の範囲であることが好ましい。100℃を超えると、水滴がキャスト膜22内に入り込む前に、水蒸気として蒸発してしまうおそれがある。
第1エリア46において、キャスト膜22に調節空気を一方向からあてることが好ましく、キャスト膜22に平行である追い風(並流)になるようにすることがより好ましい。また、この調節空気がキャスト膜22にあたる角度のばらつきは、±20°以内となるような角度であることが好ましい。調節空気を向流として送風すると、調節空気とキャスト膜22との相対速度を低い条件とする場合に調節空気の速度制御が難しく、キャスト膜22の表面22aが乱れて平滑性を失うために、表面22a上における水滴の成長が阻害されることがある。また、調節空気の送風速度は、キャスト膜22の移動速度、つまり流延ベルト42の走行速度との相対速度が0.01m/秒以上10m/秒以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05m/秒以上5m/秒以下の範囲であり、最も好ましくは0.1m/秒以上1m/秒以下の範囲である。相対速度が0.01m/秒未満であると、水滴が細密に配列して形成されないうちに、キャスト膜22が第2エリア47や第3エリア48に搬送されるおそれがある。一方、相対速度が10m/秒を超えると、キャスト膜22の表面22aが乱れ、水滴の形成が充分に進行しないおそれがある。
調節空気の送風速度と流延ベルト42の走行速度と相対速度のばらつきは、相対速度の平均値に対して±20%以内であることが好ましい。この条件と調節空気の条件とにより水滴の様態を均一にする効果がより高まる。この相対速度の調整は、調節空気の速度とキャスト膜22の搬送速度との少なくともいずれか一方を調整することで実施することができる。
キャスト膜22が第1エリア46及び第2エリア47を通過する時間(以下、通過時間と称する)は0.1秒以上1000秒以下とすることが好ましい。これにより、孔が細密に充填されるに十分な水滴を均一に生じさせることができる。通過時間が0.1秒未満であると水滴が充分成長しないまま形成されるため所望の孔を形成することが困難となる、あるいは、細密な孔をフイルム中に細密に形成されないことがある。また、通過時間が1000秒を超えると、水滴のサイズが大きくなり過ぎハニカム構造の多孔質構造体15を得られないおそれがある。このようにキャスト膜22が第1エリア46及び第2エリア47を通過する時間を制御することにより、孔の大きさ等の様態を制御することができる。多孔質構造体15を連続ではなくバッチ式で製造する場合、あるいは長尺状ではなくシート状や小さな短冊状等に製造する場合には、上記の第1エリア46及び第2エリア47を通過する時間に代えて、結露させる環境下にキャスト膜を置く時間を制御すると同様な効果が得られる。
音波生成装置62は、送風口61aと吸気口61bとの間に配される。音波生成装置62は振動面62a及び振動部を備え、振動面62aの向きが、水滴が形成された表面22aの広い範囲に音波が伝わるように配される。後述する制御信号が音波生成装置62に入力すると、振動部は当該制御信号に基づいて振動し、この振動によりこの所望の音波が生成される。振動部の振動によって生成した音波は、振動面62aを介して、キャスト膜22の表面22aへ伝わる。この振動部は、1つ或いは2つ以上あってもよい。振動部が複数ある場合には、異なる周波数で振動する振動部であることが好ましい。音波生成装置62として、所望の音波を生成することが可能なスピーカを用いることが可能である。スピーカとして、圧電素子型のスピーカや電磁コイル型のスピーカなどが挙げられ、いずれを用いても良い。
本明細書における音波は、可聴周波数の弾性波に限らず、可聴周波数以上の超音波や可聴周波数以下の超低周波音までを含む。本発明で用いることのできる音波としては、周波数が10Hz以上50kHz以下であることが好ましく、20Hz以上10kHz以下であることがより好ましく、50Hz以上1kHz以下であることが最も好ましい。音波の周波数が10Hz未満の場合では、表面22a上の水滴の再配列が行われないおそれがある。一方、音波の周波数が50kHzを超えると、表面22a上の水滴の再配列が行われないおそれがあるため、好ましくない。
振動部で生成される音波の音圧レベルは、40dB以上120dB以下であることが好ましい。このような音圧レベルの音波をキャスト膜22に伝えることにより、表面22aの広範囲において、水滴の再配列を促すのに十分な変動を発生させることができる。音圧レベルが40dB未満の場合は、キャスト膜22の表面22a全域に十分振動が十分伝わらないため、表面22a上に形成した水滴を再配列することができない。一方、音圧レベルが120dBを超える場合は、この振動により表面22aが乱れ、水滴の形成が充分に進行しないおそれがある。なお、本発明において、表面22aを変動させる方向には、特に限定されない。例えば、キャスト膜22の膜圧方向と膜圧方向と略垂直な方向とのうち少なくとも1つ、或いは、これらの組合せの方向における表面22aの変動により、本発明の効果が発現する。
制御部88は、音波生成装置62と接続する。制御部88は、制御信号発生処理を行う。制御信号発生処理では、音波生成時間と周波数と音圧レベルとを含む制御信号を生成する。制御部88からの制御信号が音波生成装置62に入力すると、音波生成装置62はこの制御信号に基づき、所望の期間で、所望の周波数及び所望の音圧レベルの音波を発生することができる。これら音波生成時間と周波数と音圧レベルとして、目標とする製造条件や品質条件に応じたものを適宜用いればよい。また、音波とキャスト膜22との共鳴がおきると、表面22a上の振動の節が生成する。この節或いは節の近傍の範囲では、表面22aが変動せず、水滴の再配列が行われない。したがって、キャスト膜22における水滴の再配列が行われない範囲をなくすために、時間の経過とともに音波の周波数を変化させる、或いは、複数の周波数を備える合成波の音波を生成し、この音波によりキャスト膜22を振動させることにより、表面22aを確実に変動させることができる。
次に、本発明の多孔質構造体の製造方法について例を挙げて説明する。なお、本発明は、以下に記載される内容に限定されない。
所定の割合の原料ポリマーが溶媒に溶解した溶液43を調整する。次に、第1エリア46において、流延ダイ44により、溶液43が流延ベルト42の流延面42a上に流出する(図5)。溶液43は、流延ベルト42の走行により、流延面42a上で流延される。こうして、キャスト膜22が流延面42aに形成され、流延ベルト42の走行方向に送られる。
温調機54や送風コントローラ61cは、制御部88の制御の下、表面温度、調節空気の送風速度及び露点を所定の範囲に調節する。送風口61aからの調節空気が、キャスト膜22の表面22aにあたると、キャスト膜22の溶媒が蒸発する。そして、この蒸発に伴う潜熱により、表面22a上に水滴が形成する。制御部88の制御の下、音波生成装置62は、所定の制御情報に基づく音波を生成する。この制御情報には、一定間隔ごとに、2種類の周波数(以下、第1周波数、第2周波数と称する)の音波を交互に発生する条件が含まれる。
音波生成装置62は、制御部88からの制御信号に基づいて、第1周波数の音波(以下、第1音波と称する)を発生させる。この第1音波により、キャスト膜22が振動する。所定の期間に、第1音波によるキャスト膜22の振動を行った後、音波生成装置62は、制御部88からの制御信号に基づいて、音波の周波数を第1周波数から第2周波数まで徐々に変えながら、当該周波数の音波を発生する。この音波により、キャスト膜22が振動する。このとき、第1音波によりキャスト膜22が共振する場合には、表面22a上に節が生成する。この節或いはその近傍は、表面22aが十分に変動しないため、水滴の再配列が行われない。本発明では、第1周波数から第2周波数まで徐々に周波数を変えながら、当該周波数の音波を用いてキャスト膜22を振動するため、表面22a上に形成される水滴の再配列を確実に行うことができる。この再配列によって、表面22aの水滴は、欠陥がより少なく、より均一の配列を形成する。そして、キャスト膜22は、流延ベルト42の走行により、第2エリア47へ送られる。
図4のように、第2エリア47では、送風吸気ユニット63が、所望の条件に調節された調節空気を表面22aにあてる。送風吸気ユニット63からの調節空気により、キャスト膜22の表面22aから溶媒が蒸発し、水滴が一様に成長する。この成長した水滴は、その形状を維持したまま、キャスト膜22の中に入り込む。そして、キャスト膜22は、流延ベルト42の走行により、第3エリア48へ送られる。
第3エリア48では、送風吸気ユニット71〜74が、所望の条件に調節された調節空気を表面22aにあてる。送風吸気ユニット71〜74の空気により、キャスト膜22上の水滴が蒸発する。水滴の蒸発により、キャスト膜22から多孔質構造体15が生成する。多孔質構造体15は、流延ベルト42の走行により、剥取ローラ80へと送られる。剥取ローラ80は、流延ベルト42から多孔質構造体15を剥ぎ取り、機能付与工程や巻取工程などの次工程を行う。
本発明では、水滴形成工程12を行う第1エリア46において、複数の周波数の音波を用いてキャスト膜22を振動させることにより、この振動中に表面22aが変動しない範囲をつくらないため、表面22a上の水滴の配列を、より欠陥の少ない配列にすることが容易になり、この再配列に要する時間や手間を抑えることができる。したがって、本発明は、孔の寸法が均一であり、均一に配列する孔を備える多孔質構造体を容易に安価に製造することができる。
上記実施形態では、送風口61aと吸気口61bとの間に音波生成装置62を設けると記載したが、これに限らず、水滴が形成される表面22aを変動させることができる位置であれば、第1エリア46や第2エリア47のいずれの場所に設けても良い。成長後の水滴よりも形成直後の水滴のほうが、表面22aの変動による水滴の再配列が行われやすいため、水滴が形成直後の表面22aを変動させるような位置に、音波生成装置62を設けることがより好ましい。
なお、上記実施形態では、振動時に表面22aが変動しない範囲をなくすために、2種類の周波数を用いてキャスト膜22を振動させると記載したが、3つまたはそれ以上の種類の周波数を用いてもよいし、1次モードの振動を行うる周波数の音波を用いてキャスト膜22を振動しても良い。また、キャスト膜22の振動に用いられる音波等が有する周波数は、単一に限らず、複数であってもよい。キャスト膜22の振動に用いる振動は、パルス振動、連続振動いずれであってもよい。
キャスト膜22に振動を与える方法は、音波に限らない。キャスト膜22を直接振動させる方法のほか、キャスト膜22の周りの空気、支持体を介してキャスト膜を振動させても良い。キャスト膜22を直接振動させる方法としては、キャスト膜22に少量の溶媒や溶液を流下する、或いは、振動子をキャスト膜の一部に接触させるなどの方法があり、これらを単独で、或いはこれらの組合せで用いても良い。また、キャスト膜22の周りの空気を介してキャスト膜を振動させる方法としては、電磁コイルや圧電素子を駆動源とする、スピーカ等の音波発生装置などがあり、これらを単独で、或いはこれらの組合せで用いても良い。また、支持体を介してキャスト膜22を振動させる方法の詳細については、支持体に振動手段を備えるなどがあげられるが、この方法の詳細については後述する。
上記実施形態では、異なる周波数の音波を1つの音波生成装置62から生成すると記載したが、これに限らず、複数の音波生成装置91、92を用いて行っても良い(図6)。第1エリア46には、ローラ52に掛け渡された流延ベルト42と、送風吸気ユニット61と音波生成装置91,92と制御部95とが配される。送風吸気ユニット61は、図示しない制御部の制御の下、キャスト膜22全幅に渡り、均一に給気と排気を行い、キャスト膜22の表面22aに水滴を形成する。音波生成装置91、92は、送風口61aと吸気口61bとの間に、流延ベルト42の走行方向に沿って、順次配される。音波生成装置92は、音波生成装置91の上流側に配される。制御部95は、音波生成装置91,92に接続し、音波生成装置91,92それぞれに異なる周波数の条件を含む制御信号を入力する。音波生成装置91,92は、制御部95の制御の下、異なる周波数の音波を生成し、これらの音波がキャスト膜22に伝わる。これらの音波により、キャスト膜22の表面22aが変動し、表面22a上の水滴の再配列を行うことができる。
このように、複数の音波生成装置91を配置することにより、キャスト膜表面に伝わる音波の音圧レベルを均一化することが可能となる。したがって、複数の音波生成装置91の配置位置の調節により、孔の形成ピッチが均一の多孔質構造体を容易且つ安価に製造することができる。
上記実施形態では、各工程11〜14を連続的に行う、すなわちオンライン方式の多孔質構造体の製造設備について記載したが、本発明は、上記実施形態に限られない。すなわち、本発明は、各工程11〜14を個別に行うバッチ方式、すなわちオフライン方式の多孔質構造体の製造設備にも適用可能である。次に、オフライン方式の多孔質構造体の製造設備について説明する。なお、上記実施形態と同様の部材を用いる場合は、その符号を用いて説明し、その詳細の説明を省略する。
図7のように、多孔質構造体製造設備100は、支持板102と、送風吸気ユニット61と、音波生成装置105と、制御部109と、温調機54とを備える。支持板102は、支持面102aを備える。多孔質構造体製造設備100は、多孔質構造体製造工程10(図1)の水滴形成工程12を行うことを主たる目的とする。
支持板102は、一方の面に孔102aを備える。この孔102aに溶液を貯留することにより、孔102aにキャスト膜22が形成される。支持板102の温度は、温調機54の制御の下、所望の範囲に維持される。更に、支持板102は、振動装置102bを備える。後述する制御信号が振動装置102bに入力すると、振動装置102bは、当該制御信号に基づき、所定の方向に、所定の周波数で、所定の力の大きさで、支持板102を振動させる。
振動装置102bが支持板102を振動させるときの力は、周期的に変化する力でも良いし、パルス状の力でもよい。また、この力の大きさは、キャスト膜22の表面22aに水滴が形成する範囲の表面22aが変動できる程度の大きさであることが好ましい。力の大きさが、この範囲を下回ると、水滴の再配列が行われない。一方、力の大きさが、この範囲を超えると、表面22aが乱れてしまい、表面22aにおける水滴の形成が阻害される恐れがある。振動装置102bが、支持板102を振動させるときの周波数は、10Hz以上50kHz以下であることが好ましい。周波数が10Hz未満の場合では、表面22a上の水滴の再配列が行われないおそれがある。一方、周波数が50kHzを超えると、表面22a上の水滴の再配列が行われないおそれがあるため、好ましくない。振動装置102bの振動方向は、キャスト膜22の厚さ方向に対して、水平方向或いは垂直の方向いずれでも良いが、好ましくは水平方向であることが好ましい。
音波生成装置105は、送風口61aと吸気口61bとの間に配される。音波生成装置105は振動面105a及び振動部を備え、振動面105aの向きが、水滴が形成された表面22aの広い範囲に音波が伝わるように配される。後述する制御信号が音波生成装置105に入力すると、振動部は当該制御信号に基づいて振動し、この振動によりこの所望の音波が生成される。振動部の振動によって生成した音波は、振動面105aを介して、キャスト膜22の表面22aへ伝わる。
制御部109は、制御信号発生処理を行う。制御信号発生処理では、制御情報に基づいて、音波生成装置105に出力される制御信号(以下、第1制御信号と称する)と、振動装置102bに出力される制御信号(以下、第2制御信号と称する)とを生成する。第1制御信号には、音波生成開始時間と音波生成終了時間と周波数と音圧レベルとが含まれる。第2制御信号には、支持板102を振動させる力の大きさ、振動開始時間と振動終了時間と振動周期とが含まれる。制御部109は、音波生成装置105と振動装置102bと接続し、音波生成装置105に第1制御信号を、振動装置102bに第2制御信号を出力する。制御部109からの第1制御信号が音波生成装置105に入力すると、音波生成装置105は第1制御信号に基づき、所定のタイミングで、所定の周波数及び所定の音圧レベルの音波を生成する。
制御部109からの第2制御信号が振動装置102bに入力すると、振動装置102bは第2制御信号に基づき、所定のタイミングで、所定の力の大きさで、所定の周期で支持板102aを振動する。音波生成装置105から生成した音波は、振動面105aを介して、表面22aに伝わり、キャスト膜22を振動させる。また、振動装置102bにより、支持板102を介して、キャスト膜22が振動する。これら音波と振動装置102bの振動により、キャスト膜22が複数の周波数で振動することが可能となり、表面22a上に形成される水滴の再配列を促す。この再配列によって、表面22aの水滴はより秩序のある配列を形成する。水滴が均一に配列するキャスト膜22は、水滴成長工程、水滴蒸発工程を経て、均一に配列する孔を備える多孔質構造体となる。したがって、本発明により、均一に配列する孔を備える多孔質構造体を容易且つ安価に製造することができる。
以下、実施例1ないし実施例4により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はそれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例1ないし3は、本発明に対応する実施例であり、実施例4は、実施例1ないし3の実施例に対する比較実験である。
図4及び図5に示す多孔質構造体製造設備40を用いて、多孔質構造体15を製造した。以下その手順について説明する。化1に示す平均分子量7万〜10万のポリ−ε−カプロラクトンと化2に示す両親媒性ポリアクリルアミドとを、50:1の重量比で混合して高分子溶液の溶質とした。溶媒にはジクロロメタンを用いた。高分子化合物の濃度が0.2重量%となるように溶液43を調製した。溶液43は、タンクにて、略15℃になるように保持した。また、温調機54がローラ52,53の温度の制御により、接触する流延ベルト42の流延面42aの温度を略10℃に制御した。
Figure 2009079168
Figure 2009079168
第1エリア46において、溶液43は、流延ダイ44から流延ベルト42の上に流延速度は20m/分で流出した。こうして、走行する流延ベルト42の流延面42aの上では、溶液43が流延し、キャスト膜22が形成した。流延ベルト42にはエンドレス状ステンレス板を用いた。送風吸気ユニット61は、流延ベルト42の走行速度との相対速度が0.3m/秒の調節空気をキャスト膜22にあてた。調節空気の相対速度のばらつきは、平均値に対して±20%以内であった。このとき、送風吸気ユニット61からの調節空気の露点TD1と、第1エリア46を通過するキャスト膜22の表面温度TLとは、0℃≦(TD1−TL)≦10℃の条件を満たしていた。
音波生成装置62として、圧電素子型のスピーカを用いた。スピーカの振動面がキャスト膜22と略平行になるように、スピーカを配置した。制御部88の制御の下、スピーカは、周波数略30Hz、音圧レベル略60dBの音波を生成し、この音波は表面に水滴が形成したキャスト膜22の表面に伝播した。
第2エリア47において、送風吸気ユニット63は、流延ベルト42の走行速度との相対速度が0.1m/秒の調節空気をキャスト膜22にあてた。調節空気の相対速度のばらつきは、平均値に対して±20%以内であった。このとき、送風吸気ユニット63からの調節空気の露点TD1と、第2エリア47を通過するキャスト膜22の表面温度TLとは、0℃≦(TD1−TL)≦10℃の条件を満たしていた。多孔質構造体15の孔径D1の目標値D1aが7μm、厚みL1の目標値L1aが10μm、形成ピッチL2の目標値L2aが9μmとなるように、そして、キャスト膜22が第1エリア46及び第2エリア47を通過する時間が85秒となるように第1エリア46及び第2エリア47の長さを調整した。
第3エリア48において、送風吸気ユニット71〜74は、流延ベルト42の走行速度との相対速度が1m/秒の調節空気をキャスト膜22にあてた。調節空気の相対速度のばらつきは、平均値に対して±20%以内であった。このとき、送風吸気ユニット71〜74からの調節空気の露点TD2と、第3エリア48を通過するキャスト膜22の表面温度TLとは、80℃≧(TL−TD2)℃≧1℃の条件を満たしていた。
得られた多孔質構造体についてその微細構造を走査型電子顕微鏡SEMにより観察して、孔31の直径D1及び形成ピッチL2(μm)のばらつきを評価した。形成ピッチは、形成した任意の孔の中心と、当該孔と隣接する孔の中心との距離を形成ピッチL2とした。目標とした孔径D1a、形成ピッチL2aを基準値にして、各ばらつきがその±10%未満である場合を○、±10%以上である場合を×、という2段階評価で評価したところ、本実施例における、孔径D1のばらつきは±5.5%、形成ピッチL2のばらつきは、±7.0%であり、結果は○であった。
第1エリア46において、スピーカが第1に、周波数20Hzの音波を生成し、第2に、周波数1kHzになるまで、毎秒10Hzごとに増加させた周波数の音波を生成し、第3に、周波数20kHzになるまで、毎秒10Hzごとに減少させた周波数の音波を生成し、これを繰り返し行ったこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質構造体を製造した。本実施例における、孔径D1のばらつきは±4.8%、形成ピッチL2のばらつきは、±6.0%であり、結果は○であった。
第1エリア46において、周波数略1kHz音圧レベル60dBの音波を生成するスピーカと、周波数略950Hz音圧レベル80dBの音波を生成するスピーカとを用いた以外は、実施例1と同様にして、多孔質構造体を製造した。本実施例における、孔径D1のばらつきは±2.0%、形成ピッチL2のばらつきは、±3.2%であり、結果は○であった。
第1エリア46において、スピーカからの音波の生成を停止したこと以外は実施例1と同様にして、多孔質構造体を製造した。本実施例における、孔径D1のばらつきは±10.5%、形成ピッチL2のばらつきは、±12.3%であり、結果は×であった。
実施例1〜4の結果より、水滴形成工程において水滴が形成されたキャスト膜22に一定の周波数の音波をあてることにより、キャスト膜22上における水滴の再配列を促し、結果として、形成ピッチのばらつきが抑えられた孔を有する多孔質構造体を製造することができることがわかる。また、複数の周波数の音波を用いることにより、形成ピッチのばらつきが、より抑えられることがわかった。本発明の多孔質構造体の製造方法によれば、均質の多孔質構造体を容易且つ安価に製造することができる。
多孔質構造体の製造工程を示す説明図である。 多孔質構造体が形成される過程の概略を示す説明図である。 多孔質構造体の概要を示す説明図である。(A)は本発明に係る多孔質構造体の平面図、(B)は(A)のb−b線に沿う断面図、(C)は(A)のc−c線に沿う断面図であり、(D)は別の実施様態である多孔質構造体の断面図である。 本発明の、オンライン方式用の多孔質構造体製造設備の概要を示す説明図である。 第1及び第2エリアの概要を示す説明図である。 本発明の、オンライン方式用の多孔質構造体製造設備の概要を示す説明図である。 本発明の、オフライン方式用の多孔質構造体製造設備の概要を示す説明図である。
符号の説明
10 多孔質構造体製造工程
11 キャスト工程
12 水滴形成工程
13 水滴成長工程
14 水滴蒸発工程
15、33 多孔質構造体
21 支持体
22 キャスト膜
22a 表面
23 溶媒
25 水滴
31 孔
40、100 多孔質構造体製造設備
43 溶液
44 流延ダイ
46 第1エリア
47 第2エリア
48 第3エリア
54 温調機
61 送風吸気ユニット
61c 送風コントローラ
62、91、92、105 音波生成装置
62a、91a、92a、105a 振動面
88、95、109 制御部
102 支持板
102b 振動装置

Claims (6)

  1. 疎水性を有する溶媒に、多孔質構造体の原料となるポリマーが溶解する溶液を、支持体上にキャストして、キャスト膜を形成する第1工程と、前記キャスト膜に含有する前記溶媒を蒸発させながら、結露により前記キャスト膜の表面に水滴を形成させる、または、前記表面に形成される前記水滴を成長させる第2工程と、前記第2工程において前記キャスト膜に入り込んだ前記水滴を蒸発させる第3工程と、を有する多孔質構造体の製造方法において、
    前記第2工程では、前記キャスト膜を振動させて、
    この振動に起因する前記表面の変動により、前記表面上の前記水滴を均一に配列することを特徴とする多孔質構造体の製造方法。
  2. 音波を用いて、前記キャスト膜を振動させることを特徴とする請求項1記載の多孔質構造体の製造方法。
  3. 複数の周波数で前記キャスト膜を振動させることを特徴とする請求項1または2項記載の多孔質構造体の製造方法。
  4. 疎水性を有する溶媒に多孔質構造体の原料となるポリマーが溶解する溶液を、支持体上にキャストして、前記支持体にキャスト膜を形成するキャスト膜形成手段と、
    前記キャスト膜に含有する前記溶媒を蒸発させる溶媒蒸発手段と、
    結露により前記キャスト膜の表面に水滴を形成させる水滴形成手段と、
    この水滴を成長させる水滴成長手段と、
    前記キャスト膜に入り込んだ前記水滴を蒸発させる水滴蒸発手段と、
    前記キャスト膜を振動させる振動手段と、
    を有することを特徴とする多孔質構造体の製造設備。
  5. 前記振動手段が、前記キャスト膜を振動させる音波を生成する音波生成手段であることを特徴とする請求項4記載の多孔質構造体の製造設備。
  6. 前記振動手段と異なる周波数で、前記キャスト膜を振動させる副振動手段を有することを特徴とする請求項4または5項記載の多孔質構造体の製造設備。
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JP2016149737A (ja) * 2015-02-10 2016-08-18 Necトーキン株式会社 圧電スピーカ

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