JPWO2009041376A1 - 多孔質構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
高分子化合物と両親媒性化合物とが溶媒に溶解した溶液を支持体(21)上にキャストしてキャスト膜(22)を形成する。キャスト膜(22)に含有する溶媒(23)を蒸発させながら、キャスト膜(22)の露出面(22a)に水滴(25)を形成する。溶媒(23)を蒸発させながら、水滴(25)を成長させる。水滴(25)はキャスト膜(22)の中に入り込む。キャスト膜(22)に入り込んでいた水滴(25)を蒸発させる。水滴(25)の蒸発により、固形化したキャスト膜(22)に孔が形成される。水滴或いは溶媒の表面張力や、水滴と溶媒との界面張力が、水滴(25)の形成プロセスに大きな影響を与える。溶媒として親水性液体を含む溶媒を用いることにより、水滴(25)を露出面(22a)上に均一に形成することができ、寸法のばらつきが抑制された均一な孔を備える多孔質フイルムを容易に製造することができる。
Description
本発明は、多孔質構造体の製造方法に関し、より詳しくは微細なパターンを有する多孔質構造体の製造方法に関するものである。
今日、光学分野や電子分野では、集積度の向上や情報量の高密度化、画像情報の高精細化といった要求がますます大きくなっている。そのため、それら分野に用いられるフイルムに対しては、より微細な構造(微細パターン構造)を形成すること(微細パターニング)が強く求められている。また、再生医療分野の研究においては、表面に微細な構造を有する膜が、細胞培養の場となる材料として有効である。
フイルムの微細パターニングには、マスクを用いた蒸着法、光化学反応ならびに重合反応を用いた光リソグラフィ技術、レーザーアブレーション技術など種々の方法が実用化されている。
所定のポリマーの希薄溶液を高湿度下でキャストすることで、ミクロンスケールのハニカム構造をもつ多孔質フイルムなどの多孔質構造体が得られることが知られている(例えば、特許文献1参照)。この多孔質構造体の製造方法の概略について簡単に説明する。まず、疎水性の溶媒にポリマーが溶解する溶液を支持体上にキャストして、支持体上にキャスト膜を形成する。次に、キャスト膜に加湿風を当て、結露によりキャスト膜の表面上に多数の水滴を形成する。この水滴は、キャスト膜で成長をしながらキャスト膜に入り込む。そして水滴の形状を維持しながら、キャスト膜に含まれる溶媒を除去する。こうして、キャスト膜から多孔質構造体が形成される。最後に、更なる乾燥により、多孔質構造体に含まれる水滴を除去することにより、多孔質構造体を得ることができる。
また、偏光板にも微細パターニングが形成されているフイルムが用いられている。このようなフイルムとしては、例えば、モスアイ構造を有する反射防止機能を発現するフイルムがある。このフイルムは、サブミクロン〜数十ミクロンサイズの規則正しい微細パターニングが形成されている。その形成方法の中でも主流であるのは、光リソグラフィを中心としたマイクロ加工技術を用いた版を作成し、その版の構造をフイルムに転写する方法である(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−157574号公報
特開2003−302532号公報
前記特許文献1に記載の方法では、均一の寸法の孔を有する多孔質構造体を製造する際には、各製造工程において略同一の雰囲気条件にすることが困難である。そして、この雰囲気条件のゆらぎにより、孔の寸法にばらつきが生じてしまう。このように、孔の寸法の均一さは、各工程の雰囲気条件の影響をうける。さらに、多孔質構造体に形成する孔の寸法や孔の配列は、各工程の雰囲気条件のみならず、水滴及び溶液の表面張力や、これらの界面張力にも支配される。すなわち、多孔質構造体の原料である高分子化合物や両親媒性化合物の配合比を調整して、表面張力や界面張力を所望の条件にすることにより、均一の寸法であり、所望のピッチで均一に配列する孔を備える多孔質構造体を製造することができる。しかしながら、これらの化合物の配合比の調整のみでは、所望な物性値を有する多孔質構造体を得ることが非常に困難である。更に、上記問題の対策として、所望な物性値を有する多孔質構造体を製造する都度、新たな疎水性化合物や両親媒性化合物を選択することも可能であるが、この化合物の変更に伴う多孔質構造体の製造工程の全体の調整が必要になるため、効率的な方法とはいえない。
前記特許文献2に記載の方法はトップダウン方式と呼ばれ、この方法では上記のように、微細構造を決定する版を作製する。版の作製は、複雑でいくつもの工程を必要とし、高いコストが必要とされる。また、大きな面積の版を製造することが困難であるという問題も生じている。
本発明の目的は、均一の寸法であり、所望のピッチで均一に配列する孔を備える多孔質構造体の容易且つ安価な製造方法を提供することにある。
本発明の多孔質構造体の製造方法は、高分子化合物が溶媒に溶解している溶液を、支持体上にキャストしてキャスト膜を形成するキャスト工程と、このキャスト膜に含まれる溶媒を除去しながら、キャスト膜の露出面に水滴を形成する水滴形成工程と、この水滴形成工程の後に、キャスト膜に入り込んだ水滴を除去する水滴除去工程とを有し、前記溶媒が、親水性を有する液体を含むことを特徴として構成されている。
前記溶液は、両親媒性化合物を含むことが好ましい。上記の親水性を有する液体に対する水の溶解度は5重量%以上であることが好ましく、前記溶媒が、前記親水性を有する液体を0.01重量%以上20重量%以下含むことが好ましい。
本発明の多孔質構造体の製造方法によれば、原料である高分子化合物を溶解する前記溶媒が親水性を有する液体を含むため、均一の寸法であり、所望のピッチで均一に配列する孔を有する多孔質構造体を容易に製造することができる。また、高分子化合物の溶媒として、親水性の液体を含む溶液を用いることにより、多孔質構造体の原料となる化合物の選択や配合比を考慮しなくても、所望の寸法の孔を有する多孔質構造体を容易に製造することが可能となる。したがって、多孔質構造体の製造における歩留まりがよくなる。更に、キャスト膜の親水性が向上するために、キャスト膜における水滴の核形成及び水滴の成長速度の増大を促し、水滴形成時のキャスト膜の状態のばらつきを最小限に抑え、ひいては、均一の寸法、所望の形成ピッチで配列する孔を有する多孔質構造体を製造することができる。そして、本発明は、版を用いることなく多孔質構造体を製造することができるために、版の製造に係る手間を省略することが可能となり、結果として、安価かつ効率的に多孔質構造体の製造することができる。
10 多孔質構造体製造工程
11 キャスト工程
12 水滴形成工程
13 水滴成長工程
14 水滴蒸発工程
15、33 多孔質構造体
21 支持体
22 キャスト膜
22a 露出面
23 溶媒
31 孔
42 溶液
11 キャスト工程
12 水滴形成工程
13 水滴成長工程
14 水滴蒸発工程
15、33 多孔質構造体
21 支持体
22 キャスト膜
22a 露出面
23 溶媒
31 孔
42 溶液
(多孔質構造体の製造方法)
図1は本発明に係る多孔質構造体の製造工程であり、図2は多孔質構造体ができる過程をモデル的に図示した説明図である。図1に示すように、多孔質構造体製造工程10は、キャスト工程11と、水滴形成工程12と、水滴成長工程13と、水滴蒸発工程14とを有する。この多孔質構造体製造工程10により、多孔質構造体15が製造される。
図1は本発明に係る多孔質構造体の製造工程であり、図2は多孔質構造体ができる過程をモデル的に図示した説明図である。図1に示すように、多孔質構造体製造工程10は、キャスト工程11と、水滴形成工程12と、水滴成長工程13と、水滴蒸発工程14とを有する。この多孔質構造体製造工程10により、多孔質構造体15が製造される。
キャスト工程11では、後述の溶液を支持体21(図2(a)参照)の上にキャスト(流延)し、キャスト膜(図2(a)参照)を形成する。この溶液は、多孔質構造体の原料となるポリマーを溶媒に溶解することにより得られる。溶液のキャストの方法は、静置した支持体の上に溶液を載せて塗り広げる方法と、走行する支持体上に溶液を流延ダイから流出する方法とがあり、本発明ではいずれの方法も用いることができる。一般的に、前者は少ない生産量で多品種つくる場合に適し、後者は大量生産に適する。なお、後者の方法において、流延ダイからの溶液の流出を連続或いは断続的に行うことにより、長尺の多孔質構造体、或いは、所定長さの多孔質構造体を連続して製造することができる。
水滴形成工程12では、図2(a)及び(b)に示すように、キャスト膜22の露出面22aに所望の加湿条件に調節された空気(以下、加湿空気と称する)200をあてて、キャスト膜22に含まれる溶媒23が、露出面22aから蒸発する。溶媒23の蒸発に伴い、露出面22aの周りの空気の温度が低下する。この温度の低下に伴い、露出面22aの周りの空気に含まれる水蒸気が凝縮する。露出面22aの周りの温度が露点と同じ、或いは低い場合に、露出面22aに水滴25が形成、すなわち発生する。このとき生じた水滴25は、極めて小さく、肉眼で認めることができないような大きさである。また、水滴形成工程12において、溶媒の蒸発と露出面22aでの水滴25の形成とを同時に開始させる、または一方を先に開始する、いずれのケースでも良い。
水滴成長工程13では、水滴形成工程12と同様にして、加湿空気200を露出面22aにあてて、溶媒23を蒸発させながら、表面22aに形成された水滴25をゆっくりと成長させる。水滴25は蒸発せずに、図2の(c)に示すようにキャスト膜22の中に入り込む。この水滴成長工程13では、水滴形成工程12で発生した極めて小さな水滴を複数合体させて水滴を大きくすることを目的とするが、キャスト膜22の露出面22aの温度やキャスト膜22の周辺の条件次第では、水滴形成工程12で発生した極めて小さな各水滴が核となってそれぞれ大きくなる現象が見られる場合もあり、これでもよい。以上のように、水滴形成工程12では、積極的にキャスト膜22の露出面近傍を加湿し、このような加湿は、水滴成長工程13でも実施することがより好ましい。
そして、水滴25の寸法が所望の状態となったところで、水滴蒸発工程14で図2の(d)に示すようにキャスト膜22中の水滴25を水蒸気27として蒸発させる。キャスト膜22の中に溶媒23が残留している場合には、できるだけ多くの溶媒23を蒸発させた後に水滴25を蒸発させるような条件とする。この条件として、例えば、水よりも沸点の低い化合物を溶媒として用いる、或いは、キャスト膜22の雰囲気に含まれる水や溶媒の蒸気圧を所望の範囲に調節する、などが挙げられる。溶媒23が十分に除去されたキャスト膜22には、自己支持性が発現する。次に、自己支持性を有するキャスト膜22に入り込んでいた水滴25を蒸発させる。水滴25の蒸発により、キャスト膜22から多孔質構造体15を生成することができる。なお、支持体21が不要なものであれば、多孔質構造体15の形成後または形成中に剥がしてもよい。
図3〜図6は、多孔質構造体15の概略図である。支持体21(図2参照)から剥がした多孔質構造体15には、非常に多くの孔31が密に形成される。図3は本発明により得られる多孔質構造体15の平面図、図4は図3のIV−IV線に沿う断面図で、図5は図3のV−V線に沿う断面図である。また、図6は、別の多孔質構造体33の断面図であるが、多孔質構造体33の平面図は図3と同様であるので略す。
孔31は、図3に示すようにハチの巣状、いわゆるハニカム構造となるように多孔質構造体15上に配列する。孔31は、略一定の形状及びサイズであり、規則的に配列する。そして、孔31は、図4及び図5に示すように、多孔質構造体15の両面を突き抜けるように形成される場合もあるし、図6の多孔質構造体33のように片面側に窪みとして形成される場合もある。そして、この孔31の配列は、水滴の疎密の度合いや大きさ、形成する液滴の種類、乾燥速度、溶液の固形分濃度、水滴成長工程における水滴成長度合いに対する溶媒23の蒸発のタイミング等によって異なるものとなる。本発明により製造される多孔質構造体15の形態は特に限定されるものではないが、本発明は、例えば、多孔質構造体15の厚みL1が0.05μm以上100μm以下、孔31の径D1が0.05μm以上100μm以下、隣接する孔31の中心間距離L2が0.1μm以上120μm以下であるような多孔質構造体を製造する場合に特に効果がある。
ハニカム構造とは、上記のように、一定形状、一定サイズの孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。この規則配列は単層の場合には二次元的であり、複層の場合は三次元的にも規則性を有する。この規則性は二次元的には1つの孔の周囲を複数(例えば、6つ)の孔が取り囲むように配置され、三次元的には結晶構造の面心立方や6方晶のような構造を取って、最密充填されることが多いが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともある。なお、1つの孔の周囲に形成される孔の数は、6個に限らず、3〜5個或いは7個以上でも良い。
次に、キャストすべき溶液を構成する各成分について説明する。本発明で用いられる溶液は、多孔質構造体の原料となるポリマーすなわち高分子化合物と、このポリマーを溶解しうる溶媒とを含む。
(ポリマー)
多孔質構造体15の原料となるポリマーとしては、疎水性を有する化合物を用いる。なお、このポリマーは、疎水性と親水性とを併せもつようないわゆる両親媒性の高分子化合物、例えば、疎水基と親水基との両方をもつポリマーであってもよい。すなわち、原料であるポリマーとしては、親水性の有無に関係無く、疎水性をもつ化合物が好ましい。
多孔質構造体15の原料となるポリマーとしては、疎水性を有する化合物を用いる。なお、このポリマーは、疎水性と親水性とを併せもつようないわゆる両親媒性の高分子化合物、例えば、疎水基と親水基との両方をもつポリマーであってもよい。すなわち、原料であるポリマーとしては、親水性の有無に関係無く、疎水性をもつ化合物が好ましい。
多孔質構造体15の主たる成分は上記のような疎水性をもつポリマーであり、このようなポリマーは、多孔質構造体15の用途等に応じて決定することができるが、その数平均分子量(Mn)が10,000〜10,000,000であるものが好ましく、50,000〜1,000,000であるものがより好ましい。
上記のように疎水性をもつポリマーに両親媒性化合物を加えて、両者を併用し、これらにより多孔質構造体15を構成してもよい。そして、両親媒性化合物と併用される場合のポリマーは、非水溶性溶媒に溶解するものが好ましい。この非水溶性溶媒とは、親水基をもたないような疎水性溶媒である。例えば、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、アガロース、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリカーボネートなどが好ましい。生分解性を必要とする場合や、あるいは、コストや入手の容易さなどを考慮すると、ポリ−ε−カプロラクトンが特に好ましい。
両親媒性化合物と併用される場合のポリマーの他の例としては、ビニル重合ポリマ(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、セルロースアセテート、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、強度、弾性等の観点から、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーやポリマーブレンド、ポリマーアロイとしてもよい。
(両親媒性化合物)
両親媒性化合物は、親水性をもつとともに親油性をももつ物質であり、具体的には、親水基と疎水基をもつ化合物である。このような両親媒性化合物として本発明では、市販される多くの界面活性剤のような単量体の他に、二量体や三量体等のオリゴマー、高分子化合物を用いることができる。両親媒性化合物と上記のような疎水性を有するポリマーとを混合することにより、キャスト膜の露出面に水滴を形成しやすくなる。また、高分子化合物に対する分散状態を制御することにより、水滴が形成される位置をより容易に制御することができる。
両親媒性化合物は、親水性をもつとともに親油性をももつ物質であり、具体的には、親水基と疎水基をもつ化合物である。このような両親媒性化合物として本発明では、市販される多くの界面活性剤のような単量体の他に、二量体や三量体等のオリゴマー、高分子化合物を用いることができる。両親媒性化合物と上記のような疎水性を有するポリマーとを混合することにより、キャスト膜の露出面に水滴を形成しやすくなる。また、高分子化合物に対する分散状態を制御することにより、水滴が形成される位置をより容易に制御することができる。
両親媒性化合物として、例としてはポリアクリルアミドがある。その他の両親媒性高分子化合物としては、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、親油性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つもの、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。親油性側鎖は、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。親油性側鎖は、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
両親媒性化合物としては、互いに異なる2種以上の化合物を用いると水滴の形成位置、水滴の大きさを制御することができるので好ましい。また、原料であるポリマーについても、互いに異なる2種以上の化合物を用いることにより同様の効果を得ることができる。
ポリマー及び両親媒性化合物は、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)高分子化合物であってもよい。また、ポリマー、両親媒性化合物とともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物により多孔質構造体を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施してもよい。
ポリマー、両親媒性化合物と併用される多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート又はこれらの変性物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。ポリマー、両親媒性化合物が分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)化合物である場合には、その重合性基と反応しうる重合性の多官能モノマーを併用することも好ましい。
上記の中でもエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。したがって、例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗布液を調製し、その塗布液を透明な支持体上に塗布した後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化すると、反射防止フイルムを製造することができる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンなどが挙げられる。
前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
なお、前記光ラジカル重合開始剤としては、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されている。また、市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。前記光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン、チオキサントン、などが挙げられる。
前記熱ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、有機ジアゾ化合物、などを用いることができる。有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドなどが挙げられる。無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。前記ジアゾ化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
(溶媒)
本発明に用いられる溶媒としては、以下の(1)〜(3)のすべてを満たすものであればよい。
(1)多孔質構造体の原料ポリマーを溶解しうるもの。
(2)非水溶性を有するもの。
(3)非水溶性を有する液体(以降、非水溶性液体と称する)と親水性を有する液体(以降、親水性液体と称する)とを含むもの。
本発明に用いられる溶媒としては、以下の(1)〜(3)のすべてを満たすものであればよい。
(1)多孔質構造体の原料ポリマーを溶解しうるもの。
(2)非水溶性を有するもの。
(3)非水溶性を有する液体(以降、非水溶性液体と称する)と親水性を有する液体(以降、親水性液体と称する)とを含むもの。
(非水溶性液体)
溶媒の第1の成分である非水溶性液体としては、溶媒に対する水の溶解度が5重量%以下であるものが好ましく、キャストすべき溶液をつくる観点及び水滴形成の観点から−10℃以上100℃以下の範囲では液体である化合物が好ましい。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系有機溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類や二硫化炭素などが挙げられる。上述した化合物のうち、2種類以上の化合物を非水溶性液体として用いてもよい。これらの化合物の割合を適宜代えて用いることにより、液滴の形成速度、及び液滴のキャスト膜への入り込み深さ等を制御することができる。
溶媒の第1の成分である非水溶性液体としては、溶媒に対する水の溶解度が5重量%以下であるものが好ましく、キャストすべき溶液をつくる観点及び水滴形成の観点から−10℃以上100℃以下の範囲では液体である化合物が好ましい。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系有機溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類や二硫化炭素などが挙げられる。上述した化合物のうち、2種類以上の化合物を非水溶性液体として用いてもよい。これらの化合物の割合を適宜代えて用いることにより、液滴の形成速度、及び液滴のキャスト膜への入り込み深さ等を制御することができる。
(親水性液体)
溶媒の第2の成分である親水性液体は、溶媒全体としてすなわち上記第1の成分と混合したときの液全体として原料のポリマーを溶解しうるものであればよい。キャスト膜に形成される水滴の大きさや、水滴の配列は、溶液や水滴の表面張力及び溶液や水滴の界面張力に依存するため、キャスト膜を構成する溶媒に含まれる親水性液体の添加量を調整することにより、所望の表面張力や界面張力が得られ、結果として、キャスト膜に所望の寸法の水滴を所望の配列ピッチで形成することができる。また、親水性液体に対する水の溶解度は、少なくとも5重量%すなわち5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが特に好ましい。このような親水性液体を含む溶媒から形成されたキャスト膜は高い親水性を有するため、水滴形成及び水滴成長時のキャスト膜の状態のばらつきを最小限に抑えることが可能となり、キャスト膜全体において、均一の寸法、所望の形成ピッチで配列する水滴を形成することが可能となる。一方、この溶解度が、5重量%未満である場合には、本発明の効果、すなわち、水滴形成及び水滴成長時のキャスト膜の状態のばらつきを最小限に抑えることができないため好ましくない。また、親水性液体の前記溶媒における含有量は、親水性液体の添加後の溶液が、原料であるポリマーを溶解しうる範囲であればよい。
溶媒の第2の成分である親水性液体は、溶媒全体としてすなわち上記第1の成分と混合したときの液全体として原料のポリマーを溶解しうるものであればよい。キャスト膜に形成される水滴の大きさや、水滴の配列は、溶液や水滴の表面張力及び溶液や水滴の界面張力に依存するため、キャスト膜を構成する溶媒に含まれる親水性液体の添加量を調整することにより、所望の表面張力や界面張力が得られ、結果として、キャスト膜に所望の寸法の水滴を所望の配列ピッチで形成することができる。また、親水性液体に対する水の溶解度は、少なくとも5重量%すなわち5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが特に好ましい。このような親水性液体を含む溶媒から形成されたキャスト膜は高い親水性を有するため、水滴形成及び水滴成長時のキャスト膜の状態のばらつきを最小限に抑えることが可能となり、キャスト膜全体において、均一の寸法、所望の形成ピッチで配列する水滴を形成することが可能となる。一方、この溶解度が、5重量%未満である場合には、本発明の効果、すなわち、水滴形成及び水滴成長時のキャスト膜の状態のばらつきを最小限に抑えることができないため好ましくない。また、親水性液体の前記溶媒における含有量は、親水性液体の添加後の溶液が、原料であるポリマーを溶解しうる範囲であればよい。
溶媒における親水性液体の含有量は、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以上10重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以上5重量%以下であることが特に好ましい。溶媒における親水性液体の含有量が、0.01重量%未満では、本発明の効果が発揮されないため、好ましくない。一方、溶媒における親水性液体の含有量が、20重量%を超えると、原料であるポリマーの溶解性が悪くなり、各工程12〜14の途中にて、原料であるポリマーが析出してしまう等の問題があるため、好ましくない。したがって、溶媒における親水性液体の含有率は最大でも20重量%である。
また、用いる親水性液体の沸点は、低いことが望ましく、具体的には、100℃以下であることが好ましい。これは、キャスト膜22の露出面に結露させて形成するものが水滴であり水の沸点が100℃であることと、溶媒の第1成分としての非水溶性液体の蒸発速度とを考慮したことによる。親水性液体の沸点が高すぎると、フイルム中に親水性液体が残留してしまい、結果として、孔31の形状や、形成ピッチが均一とならないこと、多孔質構造体15の強度が低下することなど、フイルムの品質が低下する、或いは、高温の乾燥処理や真空乾燥などの処理が必要となり、結果として、生産性が低下するため、好ましくない。そして、親水性液体の沸点が100℃よりも高いと、水滴よりも蒸発がおそくなってしまい、形成すべき孔31の大きさが小さい場合ほど、孔31の寸法がばらつきやすくなったり、また、孔31の配列が不規則になってしまったりする。したがって、形成すべき孔31の大きさが小さい場合ほど、親水性液体の沸点が水滴よりも低いものとする効果は顕著であり、例えば、10μm以下の径をもつような孔31を均一にかつ規則的に形成する場合に効果が特に大きい。
このように、親水性液体は、水滴が形成されるとできるだけ早くに蒸発してキャスト膜22からなくなるようなもの、すなわち、水滴蒸発工程14を開始するまでには蒸発しきってしまうものが好ましい。より好ましくは、水滴成長工程13のできるだけ早い時点で蒸発してキャスト膜22からなくなるものが好ましい。
この親水性液体は、水滴形成工程12の初期段階である水滴の核の形成に寄与し、水滴の核がより細かにしかもより多くつくるという作用をもつため、水滴形成工程12の所定時間はキャスト膜22に保持されることが好ましい。そして、水滴形成工程12と水滴成長工程13における積極的な加湿は、親水性液体がキャスト膜22で保持される時間とキャスト膜22から蒸発する時間とのバランスを図る作用もある。
親水性液体としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルアセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ギ酸メチル等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール誘導体等が挙げられる。
(溶液)
上記に述べた、親水性液体と非水溶性液体とを含む溶媒に原料であるポリマーを溶解して、溶液をつくる。溶液に含まれるポリマーの濃度は、製造する多孔質構造体の厚さにもよる。厚さが0.1μm以上100μm以下の多孔質構造体を製造する場合には、溶液に含まれるポリマーの濃度が0.02重量部以上20重量部以下であることが好ましい。
上記に述べた、親水性液体と非水溶性液体とを含む溶媒に原料であるポリマーを溶解して、溶液をつくる。溶液に含まれるポリマーの濃度は、製造する多孔質構造体の厚さにもよる。厚さが0.1μm以上100μm以下の多孔質構造体を製造する場合には、溶液に含まれるポリマーの濃度が0.02重量部以上20重量部以下であることが好ましい。
図7は多孔質構造体製造設備41の概略図である。溶液42は、多孔質構造体製造設備41に送られる前に、予めろ過されることが好ましい。これにより多孔質構造体15への異物混入を防止することができる。ろ過は複数回実施することが好ましい。例えばろ過を2回実施するときには、上流側のろ過装置(図示なし)には、多孔質構造体15の孔の径よりも大きな絶対ろ過精度(絶対ろ過孔径)をもつフィルタが備えられ、下流側のろ過装置(図示なし)には、多孔質構造体15の空隙よりも小さな絶対ろ過精度をもつフィルタが備えられることが好ましい。
多孔質構造体製造設備41は、流延室43を備える。前述したキャスト工程11、水滴形成工程12、水滴成長工程13、水滴蒸発工程14は、いずれも流延室43で実施される。流延室43で気体となった溶媒は、回収装置(図示せず)で回収された後に、流延室43の外に備えられる再生装置(図示せず)で再生されて再利用に供される。本実施形態では、キャスト工程11と水滴形成工程12とを行うための第1エリア46と、水滴成長工程13を行うための第2エリア47と、水滴蒸発工程14を行うための第3エリア48とが区画された一体型の流延室43を用いているが、それぞれのエリアを独立させてもよい。ただし、第1エリア46と第2エリア47とは互いにできるだけ近くに設けられることが好ましい。以上のような第1〜第3エリア46〜48を経ることにより、キャスト膜22は自己組織化して所定の空隙を有する多孔質構造体15となる。
支持体21(図2参照)として用いる流延ベルト51はローラ52,53に掛け渡され、流延ダイ56は、流延ベルト51の上方の第1エリア46に備えられる。ローラ52,53は、少なくとも一方は図示しない駆動装置により回転する。これらローラ52、53の回転により、流延ベルト42は、第1エリア46、第2エリア47、そして第3エリア48の各エリアを順次無端走行する。ローラ52,53は、温調機54により温度を調整され、これにより、ローラ52,53に接触する流延ベルト51が温度制御される。特に、キャスト膜22の周辺空気の条件制御が瞬時に変化させられない場合にはこのような流延ベルト51が有効である。
第1エリア46において、流延ダイ56から溶液42が流出されると、流延ベルト51の上にキャスト膜22が形成される。キャスト膜22の走行路の上方には送風吸引ユニット61が設けられてある。送風吸引ユニット61は、加湿空気をキャスト膜22の近傍で流し出す送風口61aと、キャスト膜22の周辺気体を吸排気する吸気口61bとを有するとともに、送風系における風の温度、露点、湿度、風速、吸気系における吸引力を独立して制御する送風コントローラ(図示せず)を備える。送風口61aには、塵埃度、つまり加湿空気の清浄度を保つためのフィルタが備えられる。送風ユニット61aは流延ベルト51の走行方向に複数並べて設けられてもよい。
第1エリア46においては、キャスト膜22の表面温度は、流延ベルト51と、この流延ベルト51に対向して配された温度制御板とにより制御される。また、液滴の露点については、送風吸引ユニット61から出される加湿空気の条件を制御することにより制御される。
第2エリア47には、2つの送風吸気ユニット63,64がキャスト膜22の走行路に沿って順に配される。上流側の送風吸気ユニット63は、第1エリア46の送風吸気ユニット61のすぐ下流側とされる。これは第1エリア46で形成された水滴を、一様に成長させるためである。第1エリア46と第2エリア47とが互いに離れるほど、つまり水滴を形成してから第2エリア47に入るまでの時間が長くなるほど、成長し終えたときの水滴の大きさが不均一になってしまう。送風吸気ユニットの数は、本実施形態の数、つまり2に限定されず、1または3以上であってもよい。送風吸気ユニット63,64は、送風吸気ユニット61と同じものとしているがこれに限定されない。
表面温度の制御は、主に温度制御板によりなされる。温度制御板は、流延ベルト51の走行方向に沿って温度を変化させることができる。また、露点の制御は送風口63a及び64aからの加湿空気の条件制御によりなされる。
水滴を成長させている間に、できるだけ多くの溶媒をキャスト膜22から蒸発させることが好ましい。第2エリア47における表面温度と露点とを所定の範囲にすることにより、溶媒を十分に蒸発させるとともに、急激な蒸発を抑制することができる。また、水滴を蒸発させずに溶媒だけを選択的に蒸発させることが好ましい。したがって、溶媒としては、同温同圧下において水滴よりも蒸発速度が速いものが好ましい。これにより、溶媒の蒸発に伴い水滴がキャスト膜22の内部に入り込むことがより容易になる。
第3エリア48には、4つの送風吸気ユニット71〜74がキャスト膜22の走行路に沿って順に配される。送風吸気ユニットの数は、本実施形態の数、つまり4に限定されず、1以上3以下または5以上であってもよい。送風吸気ユニット71〜74は、送風吸気ユニット61と同じものとしているがこれに限定されない。
第3エリア48では、水滴の蒸発を主たる目的としているが、第3エリア48に至るまでに蒸発しきれなかった溶媒も蒸発させる。
第3エリア48における水滴の蒸発工程では、送風吸引ユニット71〜74に代えて減圧乾燥装置や、いわゆる2Dノズルを用いてもよい。減圧乾燥を行うことで、溶媒と水滴との蒸発速度をそれぞれ調整することがより容易になる。これにより、有機溶媒の蒸発と水滴の蒸発とをより良好にし、水滴をより良好にキャスト膜22の内部に形成することができるので、前記水滴が存在する位置に、大きさ、形状が制御された孔31を形成することができる。なお、前記2Dノズルとは、風を出す給気ノズル部材と、キャスト膜22近傍の空気を吸い込む排気用ノズル部材とをもつものである。この2Dノズルとしては、キャスト面全幅に渡り、均一に給気と排気とを行えるものが好ましい。
多孔質構造体製造設備41は、さらに、キャスト膜22を流延ベルト51から剥ぎ取る際に、流延ベルト51から剥離した多孔質構造体15を支持する剥取ローラ57を備え、多孔フイルムは次工程に送られる。次工程とは、例えば、多孔質構造体15に種々の機能を施すための機能付与工程や、多孔質構造体15をロール状に巻き取る巻取工程等である。
本発明において、送風吸引ユニット61,63,64からの加湿空気の送風速度は、キャスト膜22の移動速度、つまり流延ベルト51の走行速度との相対速度が0.1m/秒以上20m/秒以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5m/秒以上15m/秒以下の範囲であり、最も好ましくは1m/秒以上10m/秒以下の範囲である。前記相対速度が0.1m/秒未満であると、水滴が細密に配列して形成されないうちに、キャスト膜22が第3エリア48(図7参照)に導入されてしまうことがある。一方、前記相対速度が20m/秒を超えると、キャスト膜22の露出面が乱れる、あるいは、結露が充分に進行しないおそれがある。
次に、第1エリア46で行われる水滴形成工程12の詳細について説明する。流延ベルト51の上にキャスト膜22が形成された後、送風ユニット61は、キャスト膜22に所定の条件に調整される加湿空気をあてる。高い親水性を有するキャスト膜22の露出面22aでは、水滴の核形成及び水滴の成長が行われやすくなる。この核形成及び水滴の成長の速度の増大は、キャスト直後から水滴が形成されるまでの期間を短くすることができる。また、核形成を迅速に行うことで、1μm以下の微細な孔径のフイルムを得ることが可能となる。この期間ではキャスト膜から溶媒等が蒸発するおそれがあるため、この期間が長くなると水滴が形成される時点におけるキャスト膜の状態を均一に保つことが非常に困難になる。従って、核形成及び水滴の成長の速度の増大はこの期間を短くすることを可能にするため、水滴形成及び水滴成長時のキャスト膜の状態のばらつきを最小限に抑え、キャスト膜全体において、均一の寸法、所望の形成ピッチで配列する水滴を形成することが可能となり、ひいては、均一の寸法、所望の形成ピッチで配列する孔を有する多孔質構造体を製造することができる。また、キャスト膜22に形成される水滴の大きさや、水滴の配列は、溶液や水滴の表面張力及び溶液や水滴の界面張力に依存する。そのため、本発明は、キャスト膜22を構成する溶媒に含まれる親水性液体の添加量を調整することにより、所望の表面張力や界面張力が得られ、結果として、径の寸法及び形成ピッチが均一である孔を備える多孔質構造体を容易に得ることができる。また、溶液や水滴の表面張力及び溶液や水滴の界面張力を調整のために添加される親水性液体は、多孔質構造体の原料ではなく、水滴の蒸発も終わった全工程終了後には揮発してしまうため、多孔質構造体の物性を変えることなく、所望の寸法及び所望の形成ピッチの孔を有する多孔質構造体を製造することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。以下の実施例1〜4は本発明の実施態様の例であり、比較例は、実施例1〜4に対する比較実験である。
実施例1
高分子化合物として、平均分子量20万のポリスチレン(PS)を用いた。両親媒性化合物として、ポリアルキルアクリルアミド(CAP)を用いた。溶媒として、0.5重量%のエタノールを添加したジクロロメタンを用いた。この溶媒を用いて、PS5.0mg/mlと、CAP0.5mg/mlとを分散混合し、溶液をつくった。この溶液を支持体上にキャストし、厚さが略0.2mmのキャスト膜22を形成した。キャスト膜22の表面温度が4℃、温度が略25℃で露点が18℃で風速が略0.2m/秒の加湿空気200をキャスト膜22にあてた。キャスト膜22の露出面側に水滴を結露及び成長させた後、加湿空気200の相対湿度を徐々に下げていき、キャスト膜22に含まれる溶媒を十分除去した。その後、水滴を蒸発させた。こうして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
高分子化合物として、平均分子量20万のポリスチレン(PS)を用いた。両親媒性化合物として、ポリアルキルアクリルアミド(CAP)を用いた。溶媒として、0.5重量%のエタノールを添加したジクロロメタンを用いた。この溶媒を用いて、PS5.0mg/mlと、CAP0.5mg/mlとを分散混合し、溶液をつくった。この溶液を支持体上にキャストし、厚さが略0.2mmのキャスト膜22を形成した。キャスト膜22の表面温度が4℃、温度が略25℃で露点が18℃で風速が略0.2m/秒の加湿空気200をキャスト膜22にあてた。キャスト膜22の露出面側に水滴を結露及び成長させた後、加湿空気200の相対湿度を徐々に下げていき、キャスト膜22に含まれる溶媒を十分除去した。その後、水滴を蒸発させた。こうして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
得られた多孔質フイルムについて、孔の径D1の平均値と、径D1の変動係数(以下、孔径変動係数と称する)と、孔の中心間距離L1と、中心間距離L1の変動係数(以下、ピッチ変動係数と称する)とをそれぞれ求め、以下の基準で径と中心間距離との均一性を評価した。中心間距離が均一とは、孔のピッチが一定で配列が規則的であることを意味する。ここで、孔径変動係数は、孔の径D1についての標準偏差をA、孔の径の平均値をBとしたときに、100×A/Bで求める値(単位;%)であり、ピッチ変動係数は、孔の中心間距離L1についての標準偏差をC、孔の径の平均値をDとしたときに、100×C/Dで求める値(単位;%)である。
A;孔径変動係数<10%とピッチ変動係数<5%との両方を満たし、孔の径と中心間距離とがともに非常に均一
B;孔径変動係数<10%と5%≦ピッチ変動係数<10%との両方を満たし、孔の径と中心間距離とがともに均一
C;孔径変動係数<10%と10%≦ピッチ変動係数<20%との両方を満たし、中心間距離が若干不均一な箇所がみられるが、孔の径は非常に均一であり、実用上問題無いレベル
D;10%≦孔径変動係数と20%≦ピッチ変動係数との少なくともいずれか一方を満たし、実用に供することができないレベル
B;孔径変動係数<10%と5%≦ピッチ変動係数<10%との両方を満たし、孔の径と中心間距離とがともに均一
C;孔径変動係数<10%と10%≦ピッチ変動係数<20%との両方を満たし、中心間距離が若干不均一な箇所がみられるが、孔の径は非常に均一であり、実用上問題無いレベル
D;10%≦孔径変動係数と20%≦ピッチ変動係数との少なくともいずれか一方を満たし、実用に供することができないレベル
得られた多孔質フイルムの孔の径D1の平均値は1.9μm、孔径変動係数は2.3%、孔の中心間距離L2は3.1μm、ピッチ変動係数は4.20%であり、上記評価基準による評価結果はAであった。なお、多孔質フイルムの厚さ方向における孔の形状も、ばらつきがなく均一であった。得られた多孔質フイルムの顕微鏡写真を図8に示す。
実施例2
高分子化合物として、平均分子量7万〜10万のポリ−ε−カプロラクトン(PCL)を用いた。両親媒性化合物として、ポリアルキルアクリルアミド(CAP)を用いた。溶媒として、0.5重量%のエタノールを添加したジクロロメタンを用いた。この溶媒を用いて、PCL1.0mg/mlと、CAP0.5mg/mlとを分散混合し、溶液をつくった。この溶液を支持体上にキャストし、厚さが略1mmのキャスト膜22を形成した。キャスト膜22の表面温度が4℃、温度が略25℃、湿度が略80%RH、風速が略0.2m/秒の加湿空気200をキャスト膜22にあてた。キャスト膜の露出面側に水滴を結露及び成長させた後、加湿空気200の相対湿度を徐々に下げていき、キャスト膜22に含まれる溶媒を十分除去した。その後、水滴を蒸発させた。こうして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
高分子化合物として、平均分子量7万〜10万のポリ−ε−カプロラクトン(PCL)を用いた。両親媒性化合物として、ポリアルキルアクリルアミド(CAP)を用いた。溶媒として、0.5重量%のエタノールを添加したジクロロメタンを用いた。この溶媒を用いて、PCL1.0mg/mlと、CAP0.5mg/mlとを分散混合し、溶液をつくった。この溶液を支持体上にキャストし、厚さが略1mmのキャスト膜22を形成した。キャスト膜22の表面温度が4℃、温度が略25℃、湿度が略80%RH、風速が略0.2m/秒の加湿空気200をキャスト膜22にあてた。キャスト膜の露出面側に水滴を結露及び成長させた後、加湿空気200の相対湿度を徐々に下げていき、キャスト膜22に含まれる溶媒を十分除去した。その後、水滴を蒸発させた。こうして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
得られた多孔質フイルムの孔の径D1の平均値は3.0μmであり、孔径変動係数は3.0%、孔の中心間距離L2は4.2μm、ピッチ変動係数は4.80%であり、上記評価基準による評価結果はAであった。
実施例3
ジクロロメタンと20重量%のエタノールとを含む溶媒を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
ジクロロメタンと20重量%のエタノールとを含む溶媒を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
得られた多孔質フイルムの孔の径D1の平均値は3.6μmであり、孔径変動係数は6.5%、孔の中心間距離L2は5.0μm、ピッチ変動係数は7.20%であり、上記評価基準による評価結果はBであった。
実施例4
ジクロロメタンと25重量%のエタノールとを含む溶媒を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
ジクロロメタンと25重量%のエタノールとを含む溶媒を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
得られた多孔質フイルムの孔の径D1の平均値は3.2μmであり、孔径変動係数は8.5%、孔の中心間距離L2は4.6μm、ピッチ変動係数は11.00%であり、上記評価基準による評価結果はCであった。
比較例
溶媒には、ジクロロメタンを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
溶媒には、ジクロロメタンを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、100mm×300mmの略長方形の多孔質フイルムを得た。
得られた多孔質フイルムの孔の径D1の平均値は3.5μmであり、孔径変動係数は12.0%、孔の中心間距離L2は8.5μm、ピッチ変動係数は20.0%であり、上記評価基準による評価結果はDであった。
本発明により、溶液に親水性物質を添加することにより、孔の寸法及び、孔の形成ピッチが均一である多孔質構造体を容易に製造することができることがわかった。
本発明によると、孔が小さくても寸法及びピッチが均一な多孔質構造が、容易に製造することができるので、均質な素材として大量生産することができ、光学、電子、再生医療などの多方面の分野で利用することできる。
Claims (4)
- 高分子化合物が溶媒に溶解している溶液を、支持体上にキャストしてキャスト膜を形成するキャスト工程と、
前記キャスト膜に含まれる前記溶媒を除去しながら、前記キャスト膜の露出面に水滴を形成する水滴形成工程と、
前記水滴形成工程の後に、前記キャスト膜に入り込んだ前記水滴を除去する水滴除去工程と、
を有し、
前記溶媒が、親水性を有する液体を含む多孔質構造体の製造方法。 - 前記溶液は、両親媒性化合物を含む請求の範囲第1項記載の多孔質構造体の製造方法。
- 前記親水性を有する液体に対する水の溶解度が、5重量%以上である請求の範囲第2項記載の多孔質構造体の製造方法。
- 前記溶媒が、前記親水性を有する液体を0.01重量%以上20重量%以下含む請求の範囲第1項記載の多孔質構造体の製造方法。
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