以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の内燃機関の制御装置の第一の実施形態の概略構成図、図2は図1に示した内燃機関の制御装置の吸気系等の詳細図である。図1及び図2において、1は内燃機関、2は吸気弁、3は排気弁、4は吸気弁を開閉させるためのカム、5は排気弁を開閉させるためのカム、6は吸気弁用カム4を担持しているカムシャフト、7は排気弁用カム5を担持しているカムシャフトである。図3は図1に示した吸気弁用カム及びカムシャフトの詳細図である。図3に示すように、本実施形態のカム4のカムプロフィルは、カムシャフト中心軸線の方向に変化している。つまり、本実施形態のカム4は、図3の左端のノーズ高さが右端のノーズ高さよりも大きくなっている。すなわち、本実施形態の吸気弁2のバルブリフト量は、バルブリフタがカム4の左端と接しているときよりも、バルブリフタがカム4の右端と接しているときの方が小さくなる。
図1及び図2の説明に戻り、8は気筒内に形成された燃焼室、9はバルブリフト量を変更するために吸気弁2に対してカム4をカムシャフト中心軸線の方向に移動させるためのバルブリフト量変更装置である。つまり、バルブリフト量変更装置9を作動することにより、カム4の左端(図3)においてカム4とバルブリフタとを接触させたり、カム4の右端(図3)においてカム4とバルブリフタとを接触させたりすることができる。バルブリフト量変更装置9によって吸気弁2のバルブリフト量が変更されると、それに伴って、吸気弁2の開口面積が変更されることになる。本実施形態の吸気弁2では、バルブリフト量が増加されるに従って吸気弁2の開口面積が増加するようになっている。10はバルブリフト量変更装置9を駆動するためのドライバ、11は吸気弁2の開弁期間を変更することなく吸気弁の開閉タイミングをシフトさせるための開閉タイミングシフト装置である。つまり、開閉タイミングシフト装置11を作動することにより、吸気弁2の開閉タイミングを進角側にシフトさせたり、遅角側にシフトさせたりすることができる。12は開閉タイミングシフト装置11を作動するための油圧を制御するオイルコントロールバルブである。尚、本実施形態における可変動弁機構には、バルブリフト量変更装置9及び開閉タイミングシフト装置11の両者が含まれることになる。
13はクランクシャフト、14はオイルパン、15は燃料噴射弁、16は吸気弁2のバルブリフト量及び開閉タイミングシフト量を検出するためのセンサ、17は機関回転数を検出するためのセンサである。18は気筒内に吸入空気を供給する吸気管内の圧力を検出するための吸気管圧センサ、19はエアフローメータ、20は内燃機関冷却水の温度を検出するための冷却水温センサ、21は気筒内に供給される吸入空気の吸気管内における温度を検出するための吸入空気温センサ、22はECU(電子制御装置)である。50はシリンダ、51,52は吸気管、53はサージタンク、54は排気管、55は点火栓である。
図4は図1に示したバルブリフト量変更装置等の詳細図である。図4において、30は吸気弁用カムシャフト6に連結された磁性体、31は磁性体30を左側に付勢するためのコイル、32は磁性体30を右側に付勢するための圧縮ばねである。コイル31に対する通電量が増加されるに従って、カム4及びカムシャフト6が左側に移動する量が増加し、吸気弁2のバルブリフト量が減少せしめられることになる。
図5はバルブリフト量変更装置が作動されるのに伴って吸気弁のバルブリフト量が変化する様子を示した図である。図5に示すように、コイル31に対する通電量が減少されるに従って、吸気弁2のバルブリフト量が増加せしめられる(実線→破線→一点鎖線)。また本実施形態では、バルブリフト量変更装置9が作動されるのに伴って、吸気弁2の開弁期間も変更せしめられる。つまり、吸気弁2の作用角も変更せしめられる。詳細には、吸気弁2のバルブリフト量が増加せしめられるのに伴って、吸気弁2の作用角が増加せしめられる(実線→破線→一点鎖線)。更に本実施形態では、バルブリフト量変更装置9が作動されるのに伴って、吸気弁2のバルブリフト量がピークとなるタイミングも変更せしめられる。詳細には、吸気弁2のバルブリフト量が増加せしめられるのに伴って、吸気弁2のバルブリフト量がピークとなるタイミングが遅角せしめられる(実線→破線→一点鎖線)。
図6は図1に示した開閉タイミングシフト装置等の詳細図である。図6において、40は吸気弁2の開閉タイミングを進角側にシフトさせるための進角側油路、41は吸気弁2の開閉タイミングを遅角側にシフトさせるための遅角側油路、42はオイルポンプである。進角側油路40内の油圧が増加されるに従い、吸気弁2の開閉タイミングが進角側にシフトせしめられる。つまり、クランクシャフト13に対するカムシャフト6の回転位相が進角せしめられる。一方、遅角側油路41の油圧が増加されるに従い、吸気弁2の開閉タイミングが遅角側にシフトせしめられる。つまり、クランクシャフト13に対するカムシャフト6の回転位相が遅角せしめられる。
図7は開閉タイミングシフト装置が作動されるのに伴って吸気弁の開閉タイミングがシフトする様子を示した図である。図7に示すように、進角側油路40内の油圧が増加されるに従って吸気弁2の開閉タイミングが進角側にシフトされる(実線→破線→一点鎖線)。このとき、吸気弁2の開弁期間は変更されない、つまり、吸気弁2が開弁している期間の長さは変更されない。
上述したようにバルブリフト量変更装置9及び開閉タイミングシフト装置11によって吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)が変更せしめられると、それに伴って筒内圧が変化する。筒内圧が変化するにもかかわらず一律に所定のタイミングで点火が行われてしまうと、最適な点火時期からずれてしまい、内燃機関を適切に制御することができない。従って、最適なタイミングで点火を行い、内燃機関を適切に制御するためには、吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)の変更に伴って変化する筒内圧を正確に算出することが必要になる。
図8は本実施形態における点火時期算出方法を示したフローチャートである。このルーチンは所定時間間隔で実行される。図8に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ100において機関始動時であるか否かが判断される。YESのときには、燃料増量が行われる機関始動時には筒内圧を正確に算出し、それに基づいて点火時期を決定する必要がないと判断し、このルーチンを終了する。一方、NOのときにはステップ101に進む。ステップ101では、吸気弁2のバルブリフト量LT、作用角VA、開閉タイミングVT、吸気管内の圧力PM、機関回転数NEに基づいて圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbが算出される。
図9は圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbとバルブリフト量LTと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図9に示すように、ステップ101において算出される圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbは、バルブリフト量LTが大きくなるに従って高くなり、また、吸気管内の圧力PMが高くなるに従って高くなる。図10は圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbと作用角VAと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図10に示すように、ステップ101において算出される圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbは、吸気下死点以降に吸気弁2が全閉する場合、作用角VAが小さくなるに従って高くなる。図11は圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbと作用角VAと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図11に示すように、ステップ101において算出される圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbは、吸気下死点以前に吸気弁2が全閉する場合、作用角VAが大きくなるに従って高くなる。
図12は圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbと開閉タイミング(位相)VTと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図12に示すように、ステップ101において算出される圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbは、吸気下死点以降に吸気弁2が全閉する場合、開閉タイミング(位相)VTが進角せしめられるに従って高くなる。図13は圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbと開閉タイミング(位相)VTと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図13に示すように、ステップ101において算出される圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbは、吸気下死点以前に吸気弁2が全閉する場合、開閉タイミング(位相)VTが遅角せしめられるに従って高くなる。図14は圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbと機関回転数NEとの関係を示した図である。図14に示すように、ステップ101において算出される圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbは、機関回転数NEが中速のときにピークとなる。
図8の説明に戻り、次いでステップ102では、現在の機関運転条件に基づいて圧縮上死点時筒内圧力標準状態PCYLbから圧縮上死点時筒内圧力PCYLが算出される。次いでステップ103では、圧縮上死点時筒内圧力PCYLと、機関回転数NEと、1回転当たり気筒内に吸入される吸入空気量GN、つまり、一回の吸気行程において気筒内に吸入される吸入空気量GNとに基づいて点火時期SAが算出される。図15は点火時期SAと圧縮上死点時筒内圧力PCYLと1回転当たり気筒内に吸入される吸入空気量GNとの関係を示した図である。図15に示すように、ステップ103において算出される点火時期SAは、圧縮上死点時筒内圧力PCYLが高くなるに従って遅角せしめられ、1回転当たり気筒内に吸入される吸入空気量GNが多くなるに従って遅角せしめられる。図16は点火時期SAと機関回転数NEとの関係を示した図である。図16に示すように、ステップ103において算出される点火時期SAは、機関回転数NEが高くなるに従って進角せしめられる。
上述したように本実施形態では、図8のステップ101及びステップ102において、筒内圧(圧縮上死点時筒内圧力PCYL)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によってバルブリフト量LTが変更されるのに伴って変更せしめられる吸気弁2の開口面積に基づいて算出され、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献1に記載された内燃機関の制御装置のように筒内圧センサによって筒内圧が検出される場合と異なり、燃焼圧ピーク時の筒内圧のみならず燃焼圧ピーク時以外の時点の筒内圧にも基づいて内燃機関を制御することができる。更に、吸気弁2の開口面積が変更せしめられる場合であっても内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図9に示したように吸気弁2の開口面積が増加するに従って、吸気弁の開口面積に基づいて算出される筒内圧が増加し、図15に示したように筒内圧が増加するに従って点火時期SAが遅角せしめられるように内燃機関が制御される。
更に本実施形態では、図8のステップ101及びステップ102において、筒内圧(圧縮上死点時筒内圧力PCYL)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によって変更せしめられる吸気弁2の作用角VAに基づいて算出され、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献1に記載された内燃機関の制御装置のように筒内圧センサによって筒内圧が検出される場合と異なり、燃焼圧ピーク時の筒内圧のみならず燃焼圧ピーク時以外の時点の筒内圧にも基づいて内燃機関を制御することができる。更に、吸気弁2の作用角VAが変更せしめられる場合であっても内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図10に示したように吸気下死点以降に吸気弁2が全閉する場合には、吸気弁2の作用角VAが減少するに従って、吸気弁2の作用角VAに基づいて算出される筒内圧が増加し、図15に示したように筒内圧が増加するに従って点火時期SAが遅角せしめられるように内燃機関が制御される。また、図11に示したように吸気下死点以前に吸気弁2が全閉する場合には、吸気弁2の作用角VAが増加するに従って、吸気弁2の作用角VAに基づいて算出される筒内圧が増加し、図15に示したように筒内圧が増加するに従って点火時期SAが遅角せしめられるように内燃機関が制御される。
また本実施形態では、図8のステップ101及びステップ102において、筒内圧(圧縮上死点時筒内圧力PCYL)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によって変更せしめられる吸気弁2の開口面積及び作用角VAの両方に基づいて算出され、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の作用角VAに基づくことなく吸気弁2の開口面積のみに基づいて筒内圧が算出される場合や、吸気弁2の開口面積に基づくことなく吸気弁2の作用角VAのみに基づいて筒内圧が算出される場合よりも、筒内圧を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
また本実施形態では、図8のステップ101及びステップ102において、筒内圧(圧縮上死点時筒内圧力PCYL)が、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて算出され、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて筒内圧が算出されない場合よりも筒内圧を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
尚、本実施形態では吸気弁の開口面積等に基づいて筒内圧を算出し、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御されているが、他の実施形態では、排気弁の開口面積等に基づいて筒内圧を算出し、その筒内圧に基づいて内燃機関を制御することも可能である。つまり、本発明は、吸気弁のみならず排気弁にも適用可能である。
以下、本発明の内燃機関の制御装置の第二の実施形態について説明する。本実施形態の構成は図1〜図7に示した第一の実施形態の構成とほぼ同様である。本実施形態においても、バルブリフト量変更装置9及び開閉タイミングシフト装置11によって吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)が変更せしめられると、それに伴って筒内圧が変化する。筒内圧が変化するにもかかわらず一律に燃料噴射量が定められてしまうと、実際の空燃比が目標空燃比からずれてしまい、内燃機関を適切に制御することができない。従って、最適な燃料噴射量を算出し、内燃機関を適切に制御するためには、吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)の変更に伴って変化する筒内圧を正確に算出することが必要になる。
図17は本実施形態における燃料噴射量算出方法を示したフローチャートである。このルーチンは所定時間間隔で実行される。図17に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ200において機関始動時であるか否かが判断される。YESのときには、燃料増量が行われる機関始動時には燃料噴射量が筒内圧とは無関係に定まるため、燃料噴射量を決定するために筒内圧を正確に算出する必要がないと判断し、このルーチンを終了する。一方、NOのときにはステップ201に進む。ステップ201では、吸気弁2のバルブリフト量LT、作用角VA、開閉タイミングVT、吸気管内の圧力PM、機関回転数NEに基づいて吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbが算出される。
図18は吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbとバルブリフト量LTと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図18に示すように、ステップ201において算出される吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbは、バルブリフト量LTが大きくなるに従って高くなり、また、吸気管内の圧力PMが高くなるに従って高くなる。図19は吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbと作用角VAと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図19に示すように、ステップ201において算出される吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbは、作用角VAが小さくなるに従って高くなる。
図20は吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbと開閉タイミング(位相)VTと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図20に示すように、ステップ201において算出される吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbは、開閉タイミング(位相)VTが進角せしめられるに従って高くなる。図21は吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbと機関回転数NEとの関係を示した図である。図21に示すように、ステップ201において算出される吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbは、機関回転数NEが中速のときにピークとなる。
図17の説明に戻り、次いでステップ202では、現在の機関運転条件に基づいて吸気下死点時筒内圧力標準状態PCYLINbから吸気下死点時筒内圧力PCYLINが算出される。次いでステップ203では、吸気下死点時筒内圧力PCYLINと開閉タイミング(位相、バルブオーバラップ)VTとに基づいて燃料噴射量QINJが算出される。図22は燃料噴射量QINJと吸気下死点時筒内圧力PCYLINと開閉タイミング(位相、バルブオーバラップ)VTとの関係を示した図である。図22に示すように、ステップ203において算出される燃料噴射量QINJは、吸気下死点時筒内圧力PCYLINが高くなるに従って増加せしめられ、開閉タイミング(位相)VTが遅角されるに従って、つまり、吸気弁2と排気弁3とのバルブオーバラップ期間が減少されるに従って増加せしめられる。
上述したように本実施形態では、図17のステップ201及びステップ202において、筒内圧(吸気下死点時筒内圧力PCYLIN)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によってバルブリフト量LTが変更されるのに伴って変更せしめられる吸気弁2の開口面積に基づいて算出され、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献1に記載された内燃機関の制御装置のように筒内圧センサによって筒内圧が検出される場合と異なり、燃焼圧ピーク時の筒内圧のみならず燃焼圧ピーク時以外の時点の筒内圧にも基づいて内燃機関を制御することができる。更に、吸気弁2の開口面積が変更せしめられる場合であっても内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図18に示したように吸気弁2の開口面積が増加するに従って、吸気弁の開口面積に基づいて算出される筒内圧が増加し、図22に示したように筒内圧が増加するに従って燃料噴射量QINJが増加せしめられるように内燃機関が制御される。
更に本実施形態では、図17のステップ201及びステップ202において、筒内圧(吸気下死点時筒内圧力PCYLIN)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によって変更せしめられる吸気弁2の作用角VAに基づいて算出され、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献1に記載された内燃機関の制御装置のように筒内圧センサによって筒内圧が検出される場合と異なり、燃焼圧ピーク時の筒内圧のみならず燃焼圧ピーク時以外の時点の筒内圧にも基づいて内燃機関を制御することができる。更に、吸気弁2の作用角VAが変更せしめられる場合であっても内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図19に示したように吸気弁2の作用角VAが減少するに従って、吸気弁2の作用角VAに基づいて算出される筒内圧が増加し、図22に示したように筒内圧が増加するに従って燃料噴射量QINJが増加せしめられるように内燃機関が制御される。
また本実施形態では、図17のステップ201及びステップ202において、筒内圧(吸気下死点時筒内圧力PCYLIN)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によって変更せしめられる吸気弁2の開口面積及び作用角VAの両方に基づいて算出され、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の作用角VAに基づくことなく吸気弁2の開口面積のみに基づいて筒内圧が算出される場合や、吸気弁2の開口面積に基づくことなく吸気弁2の作用角VAのみに基づいて筒内圧が算出される場合よりも、筒内圧を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
また本実施形態では、図17のステップ201及びステップ202において、筒内圧(吸気下死点時筒内圧力PCYLIN)が、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて算出され、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて筒内圧が算出されない場合よりも筒内圧を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
尚、本実施形態では吸気弁の開口面積等に基づいて筒内圧を算出し、その筒内圧に基づいて内燃機関が制御されているが、他の実施形態では、排気弁の開口面積等に基づいて筒内圧を算出し、その筒内圧に基づいて内燃機関を制御することも可能である。つまり、本発明は、吸気弁のみならず排気弁にも適用可能である。
以下、本発明の内燃機関の制御装置の第三の実施形態について説明する。本実施形態の構成は図1〜図7に示した第一の実施形態の構成とほぼ同様である。バルブリフト量変更装置9及び開閉タイミングシフト装置11によって吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)が変更せしめられると、それに伴って筒内ガス温度が変化する。筒内ガス温度が変化するにもかかわらず一律に所定のタイミングで点火が行われてしまうと、最適な点火時期からずれてしまい、内燃機関を適切に制御することができない。従って、最適なタイミングで点火を行い、内燃機関を適切に制御するためには、吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)の変更に伴って変化する筒内ガス温度を正確に算出することが必要になる。
図23は本実施形態における点火時期算出方法を示したフローチャートである。このルーチンは所定時間間隔で実行される。図23に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ300において機関始動時であるか否かが判断される。YESのときには、燃料増量が行われる機関始動時には筒内ガス温度を正確に算出し、それに基づいて点火時期を決定する必要がないと判断し、このルーチンを終了する。一方、NOのときにはステップ301に進む。ステップ301では、吸気弁2のバルブリフト量LT、作用角VA、開閉タイミングVT、吸気管内の圧力PM、機関回転数NEに基づいて圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbが算出される。
図24は圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbとバルブリフト量LTと開閉タイミング(位相)VTとの関係を示した図である。図24に示すように、ステップ301において算出される圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbは、吸気下死点以降に吸気弁2が全閉する場合、バルブリフト量LTが大きくなるに従って高くなり、また、開閉タイミング(位相)VTが進角されるに従って高くなる。図25に示すように、ステップ301において算出される圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbは、吸気下死点以前に吸気弁2が全閉する場合、バルブリフト量LTが大きくなるに従って高くなり、また、開閉タイミング(位相)VTが遅角されるに従って高くなる。図26は圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbとバルブリフト量LTと作用角VAとの関係を示した図である。図26に示すように、ステップ301において算出される圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbは、吸気下死点以降に吸気弁2が全閉する場合、作用角VAが大きくなるに従って高くなる。図27は圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbとバルブリフト量LTと作用角VAとの関係を示した図である。図27に示すように、ステップ301において算出される圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbは、吸気下死点以前に吸気弁2が全閉する場合、作用角VAが小さくなるに従って高くなる。
図28は圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図28に示すように、ステップ301において算出される圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbは、吸気管内の圧力PMが高くなるに従って高くなる。図29に示すように、ステップ301において算出される圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbは、機関回転数NEが中速のときにピークとなる。
図23の説明に戻り、次いでステップ302では、シリンダ壁温Twallに基づく受熱補正値KTWALLが算出される。シリンダ壁温Twallは下記の式に基づいて推定される。
Twall=(K1×Ga(i)−Tw(i)−Twall(i−1))
×K2+Twall(i)
ここで、K1は燃焼補正係数、K2は応答係数、Gaはエアフローメータ19の出力値に基づいて算出された吸入空気量、Twは機関冷却水温、iは図23に示すルーチンが今回実行されているときの値、i−1は図23に示すルーチンが前回実行されたときの値である。燃焼補正係数K1は、燃料噴射弁15から噴射された燃料が燃焼している時には正の値になり、燃料カットが行われ、燃料が燃焼していないモータリング時には負の値になる。図30は、受熱補正値KTWALLと、シリンダ壁温Twallと圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbとの差分と、機関回転数NEとの関係を示した図である。図30に示すように、受熱補正値KTWALLは、圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbよりもシリンダ壁温Twallが高くなるに従って大きくなり、また、機関回転数NEが低くなるに従って大きくなる。
図23の説明に戻り、次いでステップ303では、気筒内に吸入される吸入空気温に基づく吸入空気温変化補正値KTINが算出される。図31は吸入空気温変化補正値KTINと機関冷却水温Twと吸入空気量Gaとの関係を示した図である。図31に示すように、吸入空気温変化補正値KTINは、機関冷却水温Twが高くなるに従って大きくなり、また、吸入空気量Gaが少なくなるに従って大きくなる。
図23の説明に戻り、次いでステップ304では、気筒内における内部EGRガス割合に基づく内部EGRガス温度変化補正値KTEGRが算出される。図32は内部EGRガス温度変化補正値KTEGRと内部EGRガス割合との関係を示した図である。図32に示すように、内部EGRガス温度変化補正値KTEGRは内部EGRガス割合が高くなるに従って大きくなる。本実施形態の変形例では、内部EGRガス量に基づいて内部EGRガス温度変化補正値KTEGRを算出することも可能である。その場合、内部EGRガス温度変化補正値KTEGRは内部EGRガス量が多くなるに従って大きくなる。本実施形態の他の変形例では、前回の点火時期と前回の1回転当たりの燃焼ガス量とに基づいて内部EGRガス温度変化補正値KTEGRを算出することも可能である。図33は内部EGRガス温度変化補正値KTEGRと前回の点火時期と前回の1回転当たりの燃焼ガス量との関係を示した図である。図33に示すように、内部EGRガス温度変化補正値KTEGRは、前回の点火時期が遅角されるに従って大きくなり、また、前回の1回転当たりの燃焼ガス量が多くなるに従って大きくなる。本実施形態の更に他の変形例では、前回の空燃比に基づいて内部EGRガス温度変化補正値KTEGRを算出することも可能である。図34は内部EGRガス温度変化補正値KTEGRと前回の空燃比との関係を示した図である。図34に示すように、内部EGRガス温度変化補正値KTEGRは、ストイキよりもややリッチの空燃比においてピークとなり、それよりもリッチになってもリーンになっても小さくなる。
図23の説明に戻り、次いでステップ305では、ステップ301において算出された圧縮上死点時筒内ガス温度標準状態TCYLbと、ステップ302において算出された受熱補正値KTWALLと、ステップ303において算出された吸入空気温変化補正値KTINと、ステップ304において算出された内部EGRガス温度変化補正値KTEGRとに基づいて圧縮上死点時筒内ガス温度TCYLが算出される(TCYL←TCYLb×KTWALL×KTIN×KTEGR)。次いでステップ306では、圧縮上死点時筒内ガス温度TCYLと1回転当たりの吸入空気量GNと機関回転数NEとに基づいて点火時期SAが算出される。図35は点火時期SAと圧縮上死点時筒内ガス温度TCYLと1回転当たりの吸入空気量GNとの関係を示した図である。図35に示すように、ステップ306において算出される点火時期SAは、圧縮上死点時筒内ガス温度TCYLが高くなるに従って遅角せしめられ、1回転当たりの吸入空気量GNが多くなるに従って遅角せしめられる。また図16に示したように、ステップ306において算出される点火時期SAは、機関回転数NEが高くなるに従って進角せしめられる。
上述したように本実施形態では、図23のステップ301及びステップ305において、筒内ガス温度(圧縮上死点時筒内ガス温度TCYL)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によってバルブリフト量LTが変更されるのに伴って変更せしめられる吸気弁2の開口面積に基づいて算出され、その筒内ガス温度に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献2に記載された内燃機関の制御装置のようにシリンダ壁温に基づいて内燃機関が制御される場合よりも内燃機関を適切に制御することができる。更に、吸気弁2の開口面積が変更せしめられる場合であっても内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図24及び図25に示したように吸気弁2の開口面積が増加するに従って、吸気弁の開口面積に基づいて算出される筒内ガス温度が高くなり、図35に示したように筒内ガス温度が高くなるに従って点火時期SAが遅角せしめられるように内燃機関が制御される。
更に本実施形態では、図23のステップ301及びステップ305において、筒内ガス温度(圧縮上死点時筒内ガス温度TCYL)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によって変更せしめられる吸気弁2の作用角VAに基づいて算出され、その筒内ガス温度に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献2に記載された内燃機関の制御装置のようにシリンダ壁温に基づいて内燃機関が制御される場合よりも内燃機関を適切に制御することができる。更に、吸気弁2の作用角VAが変更せしめられる場合であっても内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図26に示したように吸気下死点以降に吸気弁2が全閉する場合、吸気弁2の作用角VAが増加するに従って、吸気弁2の作用角VAに基づいて算出される筒内ガス温度が高くなり、図35に示したように筒内ガス温度が高くなるに従って点火時期SAが遅角せしめられるように内燃機関が制御される。また、図27に示したように吸気下死点以前に吸気弁2が全閉する場合、吸気弁2の作用角VAが減少するに従って、吸気弁2の作用角VAに基づいて算出される筒内ガス温度が高くなり、図35に示したように筒内ガス温度が高くなるに従って点火時期SAが遅角せしめられるように内燃機関が制御される。
また本実施形態では、図23のステップ301及びステップ305において、筒内ガス温度(圧縮上死点時筒内ガス温度TCYL)が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によって変更せしめられる吸気弁2の開口面積及び作用角VAの両方に基づいて算出され、その筒内ガス温度に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の作用角VAに基づくことなく吸気弁2の開口面積のみに基づいて筒内ガス温度が算出される場合や、吸気弁2の開口面積に基づくことなく吸気弁2の作用角VAのみに基づいて筒内ガス温度が算出される場合よりも、筒内ガス温度を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
また本実施形態では、図23のステップ301及びステップ305において、筒内ガス温度(圧縮上死点時筒内ガス温度TCYL)が、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて算出され、その筒内ガス温度に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて筒内ガス温度が算出されない場合よりも筒内ガス温度を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
また本実施形態では、図23のステップ302においてシリンダ壁温Twall及び機関回転数NEに基づいて筒内ガス温度が補正され、ステップ303において吸入空気量Gaに基づいて筒内ガス温度が補正され、更に、ステップ304において内部EGRガス量(内部EGRガス割合)、つまり、その影響を受けて変化する内部EGRガス温度に基づいて筒内ガス温度が補正される。従って本実施形態によれば、それらに基づいて筒内ガス温度が補正されない場合よりも内燃機関を適切に制御することができる。
尚、本実施形態では吸気弁の開口面積等に基づいて筒内ガス温度を算出し、その筒内ガス温度に基づいて内燃機関が制御されているが、他の実施形態では、排気弁の開口面積等に基づいて筒内ガス温度を算出し、その筒内ガス温度に基づいて内燃機関を制御することも可能である。つまり、本発明は、吸気弁のみならず排気弁にも適用可能である。
以下、本発明の内燃機関の制御装置の第四の実施形態について説明する。本実施形態の構成は図1〜図7に示した第一の実施形態の構成とほぼ同様である。バルブリフト量変更装置9及び開閉タイミングシフト装置11によって吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)が変更せしめられると、それに伴って気筒内における内部EGRガス割合が変化する。内部EGRガス割合が変化するにもかかわらず一律に所定のタイミングで点火が行われてしまうと、最適な点火時期からずれてしまい、内燃機関を適切に制御することができない。従って、最適なタイミングで点火を行い、内燃機関を適切に制御するためには、吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)の変更に伴って変化する内部EGRガス割合を正確に算出することが必要になる。
図36は本実施形態における点火時期算出方法を示したフローチャートである。このルーチンは所定時間間隔で実行される。図36に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ400において機関始動時であるか否かが判断される。YESのときには、燃料増量が行われる機関始動時には内部EGRガス割合を正確に算出し、それに基づいて点火時期を決定する必要がないと判断し、このルーチンを終了する。一方、NOのときにはステップ401に進む。ステップ401では、吸気弁2のバルブリフト量LT、作用角VA、開閉タイミングVT、吸気管内の圧力PM、機関回転数NEに基づいて内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbが算出される。
図37は内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbとバルブリフト量LTと開閉タイミング(位相)VTとの関係を示した図である。図37に示すように、ステップ401において算出される内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbは、バルブリフト量LTが大きくなるに従って大きくなり、また、開閉タイミング(位相)VTが進角されるに従って大きくなる。図38は内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbと作用角VAと開閉タイミング(位相)VTとの関係を示した図である。図38に示すように、ステップ401において算出される内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbは、作用角VAが大きくなるに従って大きくなる。
図39は内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図39に示すように、ステップ401において算出される内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbは、吸気管内の圧力PMが高くなるに従って小さくなる。図40に示すように、ステップ401において算出される内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbは、機関回転数NEが高くなるに従って小さくなる。
図36の説明に戻り、次いでステップ402では、内部EGRガス割合標準状態定常値KEGRbと大気圧補正係数KPAとに基づいて内部EGRガス割合定常値KEGRSTが算出される(KEGRST←KEGRb×KPA)。つまり、内部EGRガス割合が大気圧を考慮して補正される。図41は大気圧補正係数KPAと大気圧との関係を示した図である。図41に示すように、大気圧補正係数KPAは大気圧が高くなるに従って大きくなる。すなわち、内部EGRガス割合は大気圧が高くなるほど高くなる。本実施形態の変形例では、図41に示したように大気圧に基づいて補正係数KPAを算出する代わりに、背圧に基づいて補正係数を算出し、その補正係数に基づいて内部EGRガス割合を補正することも可能である。図42は背圧と機関回転数NEと1回転当たりの吸入空気量GNとの関係を示した図である。図42に示すように、背圧は、機関回転数NEが高くなるに従って高くなり、また、1回転当たりの吸入空気量GNが多くなるに従って高くなる。図43は内部EGRガス割合を補正するための背圧補正係数と背圧との関係を示した図である。図43に示すように、背圧補正係数は背圧が高くなるに従って大きくなる。すなわち、内部EGRガス割合は背圧が高くなるほど高くなる。
また本実施形態の変形例では、図36のステップ402の次の不図示のステップにおいて、吸気管内に吹き返された後に再び気筒内に吸入される既燃ガスの量(以下、「吹き返しガス量」という)に基づいて内部EGRガス割合定常値KEGRSTを補正することも可能である。図44は吹き返しガス量と吸気弁2の平均的な開口面積(バルブオーバラップ期間中における吸気弁の開口面積の平均値)と吸気弁2の平均的な前後差圧(バルブオーバラップ期間中における筒内圧と吸気管内の圧力との差分の平均値)との関係を示した図である。図44に示すように、吹き返しガス量は、吸気弁2の開口面積が大きくなるに従って多くなり、また、吸気弁の前後差圧が大きくなるに従って、つまり、筒内圧が吸気管内の圧力よりも高くなるに従って多くなる。図45は内部EGRガス割合定常値KEGRSTと吹き返しガス量との関係を示した図である。図45に示すように、内部EGRガス割合定常値KEGRSTは吹き返しガス量が多くなるに従って大きくなる。つまり、内部EGRガス割合定常値KEGRSTは、吸気弁2の開口面積が大きくなるに従って大きくなり、また、筒内圧が吸気管内の圧力よりも高くなるに従って大きくなる。この変形例によれば、可変動弁機構によって変更せしめられるバルブオーバラップ期間中の吸気弁2の開口面積と、バルブオーバラップ期間中における吸気弁2の下流側の圧力(筒内圧)及び上流側の圧力(吸気管内の圧力)とに基づいて内部EGRガス割合が算出され、その内部EGRガス割合に基づいて内燃機関が制御されるため、可変動弁機構によって変更せしめられる吸気弁2の開口面積のみに基づいて内部EGRガス割合が算出され、バルブオーバラップ期間中における吸気弁の下流側の圧力及び上流側の圧力に基づいて内部EGRガス割合が算出されない場合よりも、内部EGRガス割合を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
また、この変形例の更なる変形例では、バルブオーバラップ期間中における吸気弁の開口面積の平均値及びバルブオーバラップ期間中における筒内圧と吸気管内の圧力との差分の平均値の代わりに、バルブオーバラップ期間中における所定時間毎の開口面積及びバルブオーバラップ期間中における所定時間毎の筒内圧(吸気弁2の下流側の圧力)と吸気管内の圧力(吸気弁2の上流側の圧力)との差分に基づいて瞬時内部EGRガス割合を算出し、その瞬時内部EGRガス割合を積算することにより得られた内部EGRガス割合に基づいて内燃機関を制御することも可能である。この変形例によれば、バルブオーバラップ期間中における吸気弁2の開口面積やバルブオーバラップ期間中における吸気弁の上流側の圧力及び下流側の圧力の変化が大きい場合であっても、内部EGRガス割合を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
図36の説明に戻り、次いでステップ403では、前回の内部EGRガス割合KEGROと吸気管内の圧力PMとに基づいて前回からの変化割合KEGRSMが算出される。図46は前回の内部EGRガス割合の影響度(=1−前回からの変化割合KEGRSM)と前回の内部EGRガス割合KEGROと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図46に示すように、前回の内部EGRガス割合の影響度は、前回の内部EGRガス割合KEGROが小さくなるに従って小さくなり、また、吸気管内の圧力PMが高くなるに従って小さくなる。つまり、前回からの変化割合KEGRSMは、前回の内部EGRガス割合KEGROが小さくなるに従って大きくなり、また、吸気管内の圧力PMが高くなるに従って大きくなる。
図36の説明に戻り、次いでステップ404では、内部EGRガス割合定常値KEGRSTと前回の内部EGRガス割合KEGRO(=前回このルーチンが実行されたときにステップ404において算出された内部EGRガス割合KEGR)と前回からの変化割合KEGRSMとに基づいて内部EGRガス割合KEGRが算出される(KEGR←(KEGRST−KEGRO)×KEGRSM+KEGRO)。次いでステップ405では、内部EGRガス割合KEGRと1回転当たりの吸入空気量GNと機関回転数NEとに基づいて点火時期SAが算出される。図47に示すように、ステップ405において算出される点火時期SAは、内部EGRガス割合KEGRが高くなるに従って進角せしめられ、1回転当たりの吸入空気量GNが少なくなるに従って進角せしめられる。図48は点火時期SAと機関回転数NEとの関係を示した図である。図48に示したように、ステップ405において算出される点火時期SAは、機関回転数NEが高くなるに従って進角せしめられる。
上述したように本実施形態では、図36のステップ401及びステップ404において、内部EGRガス割合が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によってバルブリフト量LTが変更されるのに伴って変更せしめられる吸気弁2の開口面積に基づいて算出され、その内部EGRガス割合に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献3に記載された内燃機関の制御装置のように可変動弁機構による吸気弁2の開口面積の変更を考慮することなく内部EGRガス割合が算出される場合よりも、内部EGRガス割合を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。つまり、吸気弁2の開口面積が変更せしめられる場合であっても内部EGRガス割合を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図37に示したように吸気弁2の開口面積が増加するに従って、吸気弁の開口面積に基づいて算出される内部EGRガス割合が高くなり、図47に示したように内部EGRガス割合が高くなるに従って点火時期SAが進角せしめられるように内燃機関が制御される。
更に本実施形態では、図36のステップ401及びステップ404において、内部EGRガス割合が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によって変更せしめられる吸気弁2の作用角VAに基づいて算出され、その内部EGRガス割合に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献3に記載された内燃機関の制御装置のように可変動弁機構による吸気弁2の作用角VAの変更を考慮することなく内部EGRガス割合が算出される場合よりも、内部EGRガス割合を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。つまり、吸気弁2の作用角VAが変更せしめられる場合であっても内部EGRガス割合を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図38に示したように吸気弁2の作用角VAが増加するに従って、吸気弁の作用角に基づいて算出される内部EGRガス割合が高くなり、図47に示したように内部EGRガス割合が高くなるに従って点火時期SAが進角せしめられるように内燃機関が制御される。
また本実施形態では、図36のステップ401及びステップ404において、内部EGRガス割合が、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によって変更せしめられる吸気弁2の開口面積及び作用角VAの両方に基づいて算出され、その内部EGRガス割合に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の作用角VAに基づくことなく吸気弁2の開口面積のみに基づいて内部EGRガス割合が算出される場合や、吸気弁2の開口面積に基づくことなく吸気弁2の作用角VAのみに基づいて内部EGRガス割合が算出される場合よりも、内部EGRガス割合を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
また本実施形態では、図36のステップ401及びステップ404において、内部EGRガス割合が、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて算出され、その内部EGRガス割合に基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて内部EGRガス割合が算出されない場合よりも内部EGRガス割合を正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
また本実施形態では、図36のステップ402において大気圧に基づいて内部EGRガス割合が補正され、ステップ402の変形例において排気管内の圧力、つまり、背圧に基づいて内部EGRガス割合が補正され、更に、ステップ404において前回のルーチンで算出した内部EGRガス割合KEGROに基づいて内部EGRガス割合が補正される。従って本実施形態によれば、それらに基づいて内部EGRガス割合が補正されない場合よりも内燃機関を適切に制御することができる。
上述した実施形態及びその変形例では、内部EGRガス割合が算出され、それに基づいて内燃機関が制御されているが、その代わりに、上述した方法と同様の方法によって内部EGRガス量を算出し、それに基づいて内燃機関を制御することも可能である。すなわち、上述した図における曲線の傾きの傾向は、内部EGRガス割合を用いる場合と内部EGRガス量を用いる場合とで同様になる。
尚、本実施形態及びその変形例では吸気弁の開口面積等に基づいて内部EGRガス割合又は量を算出し、その内部EGRガス割合又は量に基づいて内燃機関が制御されているが、他の実施形態では、排気弁の開口面積等に基づいて内部EGRガス割合又は量を算出し、その内部EGRガス割合又は量に基づいて内燃機関を制御することも可能である。つまり、本発明は、吸気弁のみならず排気弁にも適用可能である。
以下、本発明の内燃機関の制御装置の第五の実施形態について説明する。本実施形態の構成は図1〜図7に示した第一の実施形態の構成とほぼ同様である。バルブリフト量変更装置9及び開閉タイミングシフト装置11によって吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)が変更せしめられると、それに伴って筒内乱れの程度が変化する。筒内乱れの程度が変化するにもかかわらず一律に所定のタイミングで点火が行われてしまうと、最適な点火時期からずれてしまい、内燃機関を適切に制御することができない。従って、最適なタイミングで点火を行い、内燃機関を適切に制御するためには、吸気弁2のバルブリフト量、作用角、開閉タイミング(位相)の変更に伴って変化する筒内乱れの程度を正確に算出することが必要になる。
図49は本実施形態における点火時期算出方法を示したフローチャートである。このルーチンは所定時間間隔で実行される。図49に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ500において機関始動時であるか否かが判断される。YESのときには、燃料増量が行われる機関始動時には筒内乱れを正確に算出し、それに基づいて点火時期を決定する必要がないと判断し、このルーチンを終了する。一方、NOのときにはステップ501に進む。ステップ501では、吸気弁2のバルブリフト量LT、作用角VA、開閉タイミングVT、吸気管内の圧力PM、機関回転数NEに基づいて筒内乱れCYLTRBが算出される。
図50は筒内乱れCYLTRBとバルブリフト量LTと開閉タイミング(位相)VTとの関係を示した図である。図50に示すように、ステップ501において算出される筒内乱れCYLTRBは、バルブリフト量LTが小さくなるに従って大きくなり、また、開閉タイミング(位相、吸気弁2の開弁時期)VTが遅角されるに従って大きくなる。図51は筒内乱れCYLTRBと作用角VAと開閉タイミング(位相)VTとの関係を示した図である。図51に示すように、ステップ501において算出される筒内乱れCYLTRBは、作用角VAが小さくなるに従って大きくなる。
図52は筒内乱れCYLTRBと吸気管内の圧力PMとの関係を示した図である。図52に示すように、ステップ501において算出される筒内乱れCYLTRBは、吸気管内の圧力PMが高くなるに従って小さくなる。図53は筒内乱れCYLTRBと機関回転数NEとの関係を示した図である。図53に示すように、ステップ501において算出される筒内乱れCYLTRBは、機関回転数NEが高くなるに従って大きくなる。
図49の説明に戻り、次いでステップ502では、筒内乱れCYLTRBと1回転当たりの吸入空気量GNと機関回転数NEとに基づいて点火時期SAが算出される。図54は点火時期SAと筒内乱れCYLTRBと1回転当たりの吸入空気量GNとの関係を示した図である。図54に示すように、ステップ502において算出される点火時期SAは、筒内乱れCYLTRBが大きくなるに従って遅角せしめられ、1回転当たりの吸入空気量GNが多くなるに従って遅角せしめられる。図55は点火時期SAと機関回転数NEとの関係を示した図である。図55に示したように、ステップ502において算出される点火時期SAは、機関回転数NEが高くなるに従って進角せしめられる。
上述したように本実施形態では、図49のステップ501において、筒内乱れCYLTRBが、可変動弁機構としてのバルブリフト量変更装置9によってバルブリフト量LTが変更されるのに伴って変更せしめられる吸気弁2の開口面積に基づいて算出され、その筒内乱れCYLTRBに基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、特許文献4に記載された内燃機関の制御装置のように可変動弁機構による吸気弁2の開口面積の変更を考慮することなく筒内乱れCYLTRBが算出される場合よりも、筒内乱れCYLTRBを正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。つまり、吸気弁2の開口面積が変更せしめられる場合であっても筒内乱れCYLTRBを正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。詳細には、図50に示したように吸気弁2の開口面積が減少するに従って、吸気弁の開口面積に基づいて算出される筒内乱れCYLTRBが大きくなり、図54に示したように筒内乱れCYLTRBが大きくなるに従って点火時期SAが遅角せしめられるように内燃機関が制御される。
更に本実施形態では、図49のステップ501において、筒内乱れCYLTRBが、吸気弁2の作用角VA、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて算出され、その筒内乱れCYLTRBに基づいて内燃機関が制御される。従って本実施形態によれば、吸気弁2の作用角VA、吸気弁2の開閉タイミング(位相)VT、吸気管内の圧力PM、及び機関回転数NEに基づいて筒内乱れCYLTRBが算出されない場合よりも筒内乱れCYLTRBを正確に算出し、内燃機関を適切に制御することができる。
尚、本実施形態及びその変形例では吸気弁の開口面積等に基づいて筒内乱れを算出し、その筒内乱れに基づいて内燃機関が制御されているが、他の実施形態では、排気弁の開口面積等に基づいて筒内乱れを算出し、その筒内乱れに基づいて内燃機関を制御することも可能である。つまり、本発明は、吸気弁のみならず排気弁にも適用可能である。
以下、本発明の内燃機関の制御装置の第六の実施形態について説明する。本実施形態の構成は、後述する点を除いて図1〜図7に示した第一の実施形態の構成とほぼ同様である。また、後述する本実施形態の制御ルーチンは、上述した実施形態のいずれかの制御ルーチンと組み合わせて実行される。上述した実施形態においては、図3に示したようにカムノーズ高さが連続的に変化しているカムが設けられているが、本実施形態では、代わりに、カムノーズ高さが比較的高い高速カムHと、カムノーズ高さが比較的低い低速カムLと、カムノーズ高さがそれらの中間となる中速カムMとが設けられている。
図56は本実施形態におけるカム制御方法を示したフローチャートである。このルーチンは所定時間間隔で実行される。図56に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ600において、不図示のアクセル開度センサの出力値に基づいて算出されたアクセル開度が読み込まれる。次いでステップ601では、機関回転数センサ17の出力値に基づいて算出された機関回転数が読み込まれる。次いでステップ602では、アクセル開度と機関回転数と図57に示す関係とに基づいてカムが選択される。図57はアクセル開度と機関回転数と選択すべきカムとの関係を示した図である。図57に示すように、アクセル開度が小さくかつ機関回転数が低いときには低速カムLが選択され、アクセル開度が大きくなるに従って選択されるカムのカムノーズ高さが高くなり、また、機関回転数が高くなるに従って選択されるカムのカムノーズ高さが高くなる。
次いでステップ603では、カム切換えタイミングであるか否かが判断される。YESのときにはステップ604に進み、NOのときにはこのルーチンを終了する。ステップ604では、選択されたカムへの切換えが行われる。次いでステップ605では、機関回転数と、冷却水温センサ20の出力値に基づいて算出された冷却水温と、図58に示す関係とに基づいてカム切換え遅れが推定される。図58はカム切換え遅れと機関回転数と冷却水温との関係を示した図である。図58に示すように、カム切換え遅れは、機関回転数が高くなるに従って小さくなり、また、冷却水温が高くなるに従って小さくなる。
本実施形態の変形例では、冷却水温等に基づいてカム切換え遅れを推定する代わりに、カムを作動する作動油の油圧に基づいてカム切換え遅れを推定することも可能である。図59はカム切換え遅れと油圧との関係を示した図である。図59に示すように、カム切換え遅れは、油圧が高くなるに従って小さくなると推定される。
本実施形態の他の変形例では、カムの切換え以前に予め運転条件又は油圧に基づいてカム切換え遅れを推定し、その遅れを考慮してカム切換え時期が決定される。図60はカムを切換えるための指示が出される時期と実際にカムが切換わる時期との関係等を示した図である。図60に示すように、カム切換え遅れ(=時間t1−時間t0)が推定され、実際にカムを時間t1に切換えようとする場合には、カムを切換えるための指示は時間t0に出されることになる。
図61は本実施形態における燃料噴射量算出方法を示したフローチャートである。このルーチンは所定時間間隔で実行される。図61に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ700において、エアフローメータ19の出力値が読み込まれる。次いでステップ701では、機関回転数センサ17の出力値に基づいて算出された機関回転数が読み込まれる。次いでステップ702では、カム選択推定値が読み込まれる。つまり、図56のステップ602において選択されるカムを示すフラグが読み込まれる。次いでステップ703では、上述した実施形態と同様の方法により1回転当たりの吸入空気量が算出される。次いでステップ704では、カムの種類と機関回転数と1回転当たりの吸入空気量と図62に示す関係とに基づいて応答補正係数が算出される。図62は応答補正係数とカムの種類と機関回転数と1回転当たりの吸入空気量GNとの関係を示した図である。次いでステップ705では、1回転当たりの吸入空気量と図63に示す関係とに基づいて燃料噴射量が算出される。図63は燃料噴射量と1回転当たりの吸入空気量との関係を示した図である。
図64は本実施形態における点火時期算出ルーチンを示したフローチャートである。このルーチンは所定時間間隔で実行される。図64に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ800において、1回転当たりの吸入空気量が読み込まれる。次いでステップ801では、機関回転数が読み込まれる。次いでステップ802ではカム選択推定値が読み込まれる。次いでステップ803では、カムの種類と機関回転数と1回転当たりの吸入空気量と図65に示す関係とに基づいて点火時期が算出される。図65は点火時期とカムの種類と機関回転数と1回転当たりの吸入空気量GNとの関係を示した図である。
上述した実施形態の変形例では、カムによって駆動される吸排気弁の代わりに、必要に応じて電磁力や油圧によって駆動される吸排気弁を使用することも可能である。