JP2009068552A - 固定型等速自在継手 - Google Patents

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清史 上井
Yasuhiro Omori
靖浩 大森
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秀途 木村
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和彦 吉田
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幸生 松原
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Abstract

【課題】疲労強度を向上させた固定型等速自在継手の提供。
【解決手段】外側部材1および内側部材2の組み合わせによる固定型等速自在継手であって、少なくとも前記外側部材が、所定の成分組成を有し、850〜950℃の温度域で複数回の加工を施し、該加工後の冷却速度を0.5〜5℃/sとすることにより、該外側部材のマウス部の母材組織をベイナイト相面積率が15〜30%とされ、次いで該マウス部に常温で板厚減少率が20〜30%となる外面側しごき加工が施され、しかる後にマウス部案内溝1bにマウス部案内面の全面において硬さがHv500以上となる有効硬化層深さhと案内溝底の肉厚wとの比h/wが0.3〜0.5で、且つマウス部先端部の有効硬化深さhtと、マウス部案内溝の高周波焼入部の最大有効硬化深さhmとの比ht/hmが0.6以上0.8未満となり、さらに高周波焼入部における旧オーステナイト粒のJIS粒度番号が平均で10以上13以下となる高周波焼入れが施されたものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼素材を加熱後に鍛造を施し、さらに高周波焼入れを施すことにより製造される固定型等速自在継手に関するものである。
固定型等速自在継手は、その軸方向断面と周方向断面を図1に示すように、外側部材1と、内側部材2と、トルク伝達部材としてのボール3とを備えた等速自在継手である。すなわち、外側部材1は、一体に形成されたステム部11とマウス部12とからなり、該マウス部12の球面状の内径面1aには、複数の曲線状の案内溝1bを軸方向に形成してなる。この外側部材1の内側に、球面状の外径面2aに複数の曲線状の案内溝2bを軸方向に形成した内側部材2が、外側部材1の案内溝1bと内側部材2の案内溝2bとが協働して形成されるボールトラックに配された複数のトルク伝達ボール3を介して、取り付けられている。ここで、トルク伝達ボール3は保持器4にて保持される。かように、固定型等速自在継手は、トルク伝達ボール3と外側部材1の案内溝1bとが転がりすべり接触することによって、外側部材1と内側部材2との間でトルク伝達がなされる。なお、符号13は、内側部材2とシャフト14とが嵌合するセレーション部である。
上記のような固定型等速自在継手の外側部材等の条鋼製品は、例えば熱間圧延棒鋼等の鋼素材に、熱間鍛造、さらには切削、冷間鍛造等を施して所定の形状に成形される。そして更に、転動疲労寿命等疲労破壊が問題となる部位に対しては、高周波焼き入れを施すことにより表面硬化層を形成して用いられる。
近年、環境問題から自動車用部材に対する軽量化等への要求が強く、かかる用途の製品については、捩りや曲げに対する疲労強度の一層の向上が要求されている。
例えば、等速自在継手の疲労強度を向上させる手段としては、これまでにも種々の方法が提案されている。
特許文献1に開示された技術では、化学成分組成を適切にした鋼を、850〜950℃の温度範囲で鍛造して整細粒組織の素材とした後、冷間鍛造、切削加工および転造加工を施すことによって、インボリュートセレーション部およびねじ部を有する所定形状に成形加工し、引き続きインボリュートセレーション部に高周波焼入れおよび焼戻しを行うことによって、インボリュートセレーション端部における旧オーステナイト粒をJIS粒度番号で8以上、該端部の表面硬さをHVで720以上にすると共に、該端部における硬さがHVで450となる有効硬化層深さCDと軸部の半径Rとの比(CD/R)が0.35〜0.60となるようにして、等速ジョイント外輪のねじり疲労特性を向上させている。
また、特許文献2には、用いられる鋼の化学成分組成を適切にすると共に、インボリュートセレーション部の端部の有効硬化層深さtと半径rの比t/rを0.20〜0.50とし、さらに、カップ部(マウス部とも称される)のトラック溝部における有効硬化層深さを、有効硬化層深さtとマウス部肉厚wの比t/wで0.25〜0.45とすることにより、等速ジョイントの軸部のねじり疲労強度、カップ部のトラック溝部の耐フレーキング性とを向上させる技術が開示されている。
しかしながら、これら特許文献1および2には、等速自在継手の外側部材の軸部や、マウス部の内周面のトラック溝部といった高周波焼入れが施される部位に対して疲労強度を向上させるべく、有効硬化層深さや、旧オーステナイト粒径について検討がなされているものの、車の操舵角を大きく採った場合に相当する高角度傾斜での疲労試験の際に生じるマウス先端からの疲労破壊の延命化に関しては何ら考慮がなされておらず、等速自在継手の外側部材の軽量化を実現するためには改良の余地があった。
特開平9−280262号公報 特開2000−154828号公報
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたものであり、従来よりも疲労強度を一層向上させた固定型等速自在継手を提供することを目的とする。
さて、発明者らは、上述した従来の技術による等速自在継手の外側部材に対して、さらなる軽量化を達成するには、特にマウス部案内溝の高周波焼入れ部の硬さ分布に改良を加え、該マウス先端の疲労強度を向上させることが有効であることを知見した。そして、このマウス先端における疲労強度の向上には、化学成分設計及び鍛造条件を適切にするとともに、当該マウス先端まで十分硬化させることとし、且つ、マウス先端部の有効硬化深さと、マウス部案内溝の高周波焼入部の最大有効硬化深さの比を適正化することによって達成可能であることを見出した。
すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)外側部材および内側部材の組み合わせによる固定型等速自在継手であって、
少なくとも前記外側部材が、
C:0.45〜0.55mass%、
Si:0.05mass%以下、
Mn:0.55〜0.65mass%、
P:0.020mass%以下、
S:0.002〜0.015mass%、
Mo:0.35〜0.45mass%、
Al:0.02〜0.05mass%、
Cu:1.0mass%以下、
Ti:0.015〜0.030mass%および
B:0.0015〜0.0030mass%
を含み、残部Feおよび不可避的不純物の組成を有し、850〜950℃の温度域で複数回の加工を施し、該加工後の冷却速度を0.5〜5℃/sとすることにより、該外側部材のマウス部の母材組織をベイナイト相面積率が15〜30%とされ、次いで、該マウス部に常温で板厚減少率が20〜30%となる外面側しごき加工が施され、しかる後に、マウス部案内溝にマウス部案内面の全面において硬さがHv500以上となる有効硬化層深さhと案内溝底の肉厚wとの比h/wが0.3〜0.5で、且つマウス部先端部の有効硬化深さhtと、マウス部案内溝の高周波焼入部の最大有効硬化深さhmとの比ht/hmが0.6以上0.8未満となり、さらに高周波焼入部における旧オーステナイト粒のJIS粒度番号が平均で10以上13以下となる高周波焼入れが施されたことを特徴とする固定型等速自在継手。
(2)高周波焼入したステム部表層における旧オーステナイト粒のJIS粒度番号が平均で10以上13以下である前記(1)に記載の固定型等速自在継手。
(3)外側部材のS量を0.002〜0.008mass%とした鋼材からなる摩擦圧接部を有する前記(1)または(2)に記載の固定型等速自在継手。
本発明によれば、強度特性に優れた固定型等速自在継手を提供できるから、等速自在継手の軽量化等の要求に対し偉効を奏する。
以下、本発明の固定型等速自在継手について、図面を参照して詳しく説明する。本発明で対象とする固定型等速自在継手は、先に図1に示したところと同様の構造になり、外側部材1と内側部材2とトルク伝達部材としてのボール3とを備えた等速自在継手である。
本発明の固定型等速自在継手では、まず、成分組成を適切に設計し、外側部材のマウス部の母材組織における、ベイナイト相面積率を15〜30%とし、マウス部案内溝にマウス部案内面の全面において硬さがHv500以上となる有効硬化層深さhと案内溝底の肉厚wとの比h/wを0.3〜0.5、且つマウス部先端部の有効硬化深さhtとマウス部案内溝の高周波焼入部の最大有効硬化深さhmとの比ht/hmを0.6以上0.8未満とし、さらに高周波焼入部における旧オーステナイト粒のJIS粒度番号が平均で10以上13以下となる高周波焼入れを施すことが肝要である。
まず、本発明において、鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.45〜0.55mass%
Cは、鋼の強度確保に必要な元素であり、また、焼入れ性への影響も大きく、焼入れ硬化層を硬くそして深くすることによって、疲労強度の向上に寄与する。そのため、0.45mass%以上含有させるものとする。一方、Cを0.55mass%を超えて含有させると、被削性や鍛造性が劣化して、温間鍛造時あるいは冷間鍛造時に割れが生じたり、鍛造金型寿命が低下したり、切削加工時の工具寿命が短くなるという不利が生じる。したがって、C量は0.45〜0.55mass%に限定する。
Si:0.05mass%以下
Siは、高周波焼き入れ性を高めベイナイト組織の生成に有用であるとともに、高周波焼き入れ加熱時にオーステナイト粒成長を抑制するため、本来は積極的に添加したいが、Siの添加により鍛造性、被削性が著しく劣化する。このようにSiは本発明において非常に重要な元素であり、その含有量が0.05mass%を超えると鍛造性が著しく劣化するため、ベイナイト組織の生成、焼入れ時のオーステナイト粒の成長抑制にはSiではなく後述するMn、Moの成分調整により効果を働かせる。Siは鍛造性劣化の抑止を目的に0.05mass%を上限とする。
P:0.020mass%以下
Pは、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより疲労強度を低下させる。また、焼き割れを助長する弊害もある。したがって、Pの含有量は極力低減することが望ましいが、0.020mass%までは許容される。
S:0.002〜0.015mass%
Sは、鋼中でMnSを形成し被削性を向上させる有用元素であるが、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより疲労強度を低下させる弊害もあるため、0.015mass%を上限とする。一方、その含有量が0.002mass%に満たないと被削性を著しく悪化させるため、それを下限とする。なお、摩擦圧接する場合には、S量が0.008mass%を超えると摩擦圧接部にSが粒界偏析して、疲労強度が低下するため、それ以下にすることが好ましい。
Mn:0.55〜0.65mass%
Mnは、ベイナイト組織の生成に有用であるとともに、強度の向上に有効に寄与する元素であるが、その含有量が0.55mass%に満たないと、その効果が十分ではない。また0.65mass%を超えると、高周波焼き入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くため、Mn量は0.55〜0.65mass%の範囲とする。
Mo:0.35〜0.45mass%
Moは、焼き入れ性を向上させベイナイト組織の生成を促進するのに有用な元素である。また、高周波焼き入れ時におけるオーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素である。加えて、Moは、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を有効に阻止する元素でもある。このようにMoは本発明において重要な元素であり、本発明の如くSi添加量を0.05mass%以下とした場合には、Mo添加量が0.35mass%に満たないと所望量のベイナイト組織を生成できないとともに、オーステナイト粒成長抑制作用を十分に発現できない。一方、Mo含有量が0.45mass%を超えても、その効果は飽和し,むしろコストの上昇を招くとともに、変形抵抗を増大させ、鍛造金型の寿命を大幅に低下させるため、その含有量を0.35〜0.45mass%に限定する。
Ti:0.015〜0.030mass%
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼き入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bの焼き入れ性効果を十分に発揮させる作用を有するとともにTiNのピンニング効果により、結晶粒を微細化するために有用な元素である。これらの効果を十分に発現させるためには、Tiは0.015ass%以上を必要とする。一方、Ti含有量が0.030mass%を超えても、結晶粒微細化効果が飽和するだけでなく、TiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度が低下するため、0.015〜0.030mass%の範囲に限定した。
Al:0.02〜0.05mass%
Alは、鋼の脱酸剤として作用する他、高周波焼入れ時におけるオーステナイト粒の成長を抑制して、硬化層の疲労強度を高める効果がある。しかし、その含有量が0.02mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、0.05mass%を超えると疲労強度の低下を招くため、0.02〜0.05mass%と限定した。
Cu:1.0mass%以下
Cuは、固溶強化および析出硬化によって強度を向上させる有用元素であり、また、焼き入れ性の向上にも寄与するが、その添加量が1.0mass%を超えると、鍛造時に表面疵が多発するため、1.0mass%を上限とする。なお、好ましくは0.5mass%以下である。
B:0.0015〜0.0030mass%
Bは、微量の添加によって焼き入れ性を高めて強度を向上させる有用元素である。また、粒界に優先的に偏析して、粒界に偏析するP、Sの濃度を低減し粒界強度を向上させて疲労特性を向上させる作用もある。このため、本発明ではBを積極的に添加するが、その含有量が0.0015mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、0.003mass%を超えて添加してもその効果は飽和し、むしろコストの上昇を招くことから、0.0015〜0.003mass%の範囲に限定した。
以上説明した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
そして、本発明では、特に外側部材を成形する鍛造において、その温度域を850〜950℃とし、鍛造後の冷却速度を0.5〜5℃/sとすることによって適正なマウス部の高周波焼入れ前組織とする。具体的には、上記した950℃以下の温度域で鍛造し、0.5〜5℃/sの範囲で冷却することにより、旧オーステナイト粒の粗大化及びマルテンサイトの生成を抑制するとともに、ベイナイト相を面積率で15〜30%含む組織とする。
すなわち、冷却速度が5℃/sを超えると、マルテンサイトが生成し、一方0.5℃/sより遅いとベイナイト相の面積率が15%以下になるとともに、フェライト相の面積率が増加する。
また、鍛造温度が850℃未満になると、鍛造は可能であるが、鋼の変形抵抗が大きいため大容量の鍛造機が必須となるとともに、工具寿命が低下するため、850℃以上が必要である。一方、950℃を超えると、高周波焼き入れ前の組織が大きくなって、高周波焼き入れ後の硬化層の旧オーステナイト粒径が所定の大きさとならないため、950℃以下とする。
次に、鋼組織について、ベイナイト組織分率が15%未満では、フェライト+パーライト組織が主体となり、焼き入れ性の低下により残留フェライトが生成するため、疲労強度の向上は期待できない。また、ベイナイト組織分率が30%を超えると、次工程の常温でのしごき鍛造で割れを生じるために、ベイナイト組織分率は15〜30%とすることが肝要である。
ここで、ベイナイト、フェライトおよびパーライトの面積率は、ナイタールエッチングにより、ベイナイト、フェライトおよびパーライトが現出するようにエッチングし、光学顕微鏡により400倍(1視野の面積0.25mm×0.25mm)で3視野観察し、画像解析装置により各々の面積分率を測定して求める。
なお、冷間しごき工程は、板厚減少率で20%以上にしないと形状凍結性が悪いため、案内溝におけるボールの片当たりを生じ、耐フレーキング疲労が悪化する。また、板厚減少率が30%を超えると、冷間しごき中の割れを誘発するため、冷間しごきの板厚減少率は20〜30%とする。
以上、成分組成範囲、鍛造温度範囲及び組織状態について説明したが、本発明では、上記の範囲に限定するだけでは不十分であり、マウス部案内溝の高周波焼入れ部の焼入れ深さを調整するとともに、高周波焼き入れ後の硬化層の旧オーステナイト粒径を調整することも重要である。
すなわち、本発明では、車の操舵角を大きく取った場合に相当する、高角度傾斜での疲労試験でのマウス部先端からの疲労寿命を確保するために、当該マウス部案内溝の高周波焼入部において、マウス部先端まで十分に硬化させる。そして、マウス案内面全面において硬さがHv500となる有効硬化層深さhと案内溝底の肉厚wの比h/wで0.3〜0.5とし、且つ、マウス先端部の有効硬化深さhtと、マウス部案内溝の高周波焼入部の最大有効硬化深さhmとの比ht/hmが0.6以上0.8未満とする必要がある。
というのは、マウス部案内面全面における有効硬化層深さhと案内溝底の肉厚wとの比h/wが0.3未満では、その効果は不十分であり、一方0.5を超えると案内溝の歪が大きくなり、ボールの片当たりを生じ、耐フレーキング疲労が悪化する。さらに、操舵角を大きく取った状態では、マウス部先端に高い応力が負荷される状態となるため、マウス先端部の有効硬化深さhtと、マウス部案内溝の高周波焼入部の最大有効硬化深さhmとの比ht/hmが0.6未満では、マウス部先端から疲労破壊を生じるため、疲労寿命を延長することができない。また、ht/hmが0.8以上では、高周波焼き入れ時に焼き割れを生じるため、ht/hm は0.8未満とする必要がある。
上記の焼入れ深さの選定とともに、高周波焼き入れ後の硬化層の平均旧オーステナイト粒径をJIS粒度番号で10以上13以下とする必要がある。というのは、焼入れ硬化層の平均旧オーステナイト粒径の粒度番号が10未満では、十分な粒界強度が得られず、満足いくほどの強度の上昇が望めないからである。一方、13を超えると、830℃(Ac+50℃)からの焼入れが必須となり、残留フェライトを生成するため疲労強度は低下する。なお、ステム部の高周波焼入れに際し、同様に旧オーステナイト粒径を所定の範囲に調整すれば、該部位の疲労強度を高めることができる。
また、焼入れ硬化層の旧オーステナイト粒径は、高周波焼き入れ後の鋼材の硬化層における厚み方向断面を、旧オーステナイト粒が現出するようにエッチングし、光学顕微鏡により硬化層の旧オーステナイト粒径に応じて400倍(1視野の面積0.25mm×0.225mm)から1000倍(1視野の面積0.10mm×0.09mm)で3視野観察し、画像解析装置により平均粒径を測定することにより求められる。
表1に示す成分組成になる鋼材を、30kgづつ溶製し、1200℃に加熱して22mmφの棒状に鍛造した。その後、850℃に再加熱して1時間保持し空冷した。得られた棒状体を、鍛造試験に供した。
鍛造試験は、上記棒状体から14mmφ×30.6mmの素材を採取し、図2に示す手順に従って、第1工程:軸出し、第2工程:据え込み、次いで第3工程:後方押し出しの3工程をトランスファー鍛造にて実施し、得られた鍛造品のベイナイト面積分率を評価した。また、トランスファー鍛造後、マウス部を板厚減少率で30%になるよう常温(冷間)にてしごき試験し、割れの有無を評価した。得られた評価結果を、表2に併記する。
表2に示す、冷間しごきにて割れの生じなかった鋼種A、B、C、E、H、JおよびKにつき、150kgづつ溶製し、1200℃に加熱して60mmφの棒状に鍛造した。その後、850℃に再加熱して1時間保持し空冷した。得られた棒状体を、55mmφにピーリング後、固定型等速自在継手の実鍛造を実施し、試作した固定型等速自在継手マウス部に周波数20kHz、出力100kWの高周波焼入れ装置にて高周波焼入れ(図4参照)した後、170℃×30minの焼戻しを行った。かくして得られた固定型等速自在継手を、図3に示す高角傾斜での疲労強度試験に供し、疲労特性を評価した。得られた評価結果を、表3に併記する。なお、表3中の旧γ粒径は案内面表層の粒度番号である。
表3より、成分組成、鍛造条件、組織、硬化層深さ比および硬化層旧オーステナイト粒径のいずれもが本発明の範囲を満たす場合には、疲労強度特性に優れていることが判る。これに対し、成分組成、鍛造条件、組織、硬化層深さ比および硬化層旧オーステナイト粒径のいずれかが本発明の条件を満足しない比較例は、疲労強度特性が劣っている。
(a)は固定型等速自在継手の軸方向断面を示す図であり、(b)は固定型等速自在継手の周方向断面を示す図である。 トランスファー鍛造の工程図である。 高角疲労試験の要領を示す図である。 マウス案内溝底の高周波焼入れ部を示す図である。
符号の説明
1 外側部材
1a 内径面
1b 案内溝
2 内側部材
2a 外径面
2b 案内溝
3 トルク伝達ボール
4 保持器
11 ステム部
12 マウス部

Claims (3)

  1. 外側部材および内側部材の組み合わせによる固定型等速自在継手であって、
    少なくとも前記外側部材が、
    C:0.45〜0.55mass%、
    Si:0.05mass%以下、
    Mn:0.55〜0.65mass%、
    P:0.020mass%以下、
    S:0.002〜0.015mass%、
    Mo:0.35〜0.45mass%、
    Al:0.02〜0.05mass%、
    Cu:1.0mass%以下、
    Ti:0.015〜0.030mass%および
    B:0.0015〜0.0030mass%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物の組成を有し、850〜950℃の温度域で複数回の加工を施し、該加工後の冷却速度を0.5〜5℃/sとすることにより、該外側部材のマウス部の母材組織をベイナイト相面積率が15〜30%とされ、次いで、該マウス部に常温で板厚減少率が20〜30%となる外面側しごき加工が施され、しかる後に、マウス部案内溝にマウス部案内面の全面において硬さがHv500以上となる有効硬化層深さhと案内溝底の肉厚wとの比h/wが0.3〜0.5で、且つマウス部先端部の有効硬化深さhtと、マウス部案内溝の高周波焼入部の最大有効硬化深さhmとの比ht/hmが0.6以上0.8未満となり、さらに高周波焼入部における旧オーステナイト粒のJIS粒度番号が平均で10以上13以下となる高周波焼入れが施されたことを特徴とする固定型等速自在継手。
  2. 高周波焼入したステム部表層における旧オーステナイト粒のJIS粒度番号が平均で10以上13以下である請求項1に記載の固定型等速自在継手。
  3. 外側部材のS量を0.002〜0.008mass%とした鋼材からなる摩擦圧接部を有する請求項1または2に記載の固定型等速自在継手。
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