JP2009066794A - 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法 - Google Patents

液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2009066794A
JP2009066794A JP2007235050A JP2007235050A JP2009066794A JP 2009066794 A JP2009066794 A JP 2009066794A JP 2007235050 A JP2007235050 A JP 2007235050A JP 2007235050 A JP2007235050 A JP 2007235050A JP 2009066794 A JP2009066794 A JP 2009066794A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substrate
reservoir
droplet discharge
nozzle
diaphragm
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2007235050A
Other languages
English (en)
Inventor
Yuki Sakashita
友樹 坂下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to JP2007235050A priority Critical patent/JP2009066794A/ja
Publication of JP2009066794A publication Critical patent/JP2009066794A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】リザーバダイアフラムの接着剤による影響を低減し、ダイアフラムとしての機能を十分に発揮できる液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッド100は、複数のノズル孔5を有するノズル基板1と、ノズル孔5毎に連通し、ノズル孔5より液滴を吐出する複数の独立した吐出室7を有するキャビティ基板3と、吐出室7に対して共通に連通するリザーバ10を有し、ノズル基板1とキャビティ基板3との間に設けられるリザーバ基板2とを少なくとも備え、リザーバ10の底面の一部を薄膜化してリザーバ10内における液滴による圧力変動を緩衝するダイアフラム部40を形成し、ダイアフラム部40の両面に撥水膜42を形成したことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、インクやその他の液体を吐出する液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法に関し、特にリザーバダイアフラムの機能を十分に発揮できるようにした液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法に関する。
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、たとえばインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドが知られている。このようなインクジェットヘッドは、極小の液滴を吐出することによって写真や文字等を印刷することができる。インクジェットヘッドは、一般に、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で、上記ノズル孔に連通する吐出室、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、駆動部により吐出室に圧力を加えることにより、インク滴を選択されたノズル孔より吐出するように構成されている。
このようにインク滴を吐出させる駆動方式としては、静電気力を利用する静電駆動方式や、圧電素子による圧電方式、発熱素子を利用するバブルジェット(登録商標)方式等がある。その中でも、特に駆動手段に静電気力を利用してインク液滴を吐出させる駆動方式のインクジェットヘッドは、チップサイズの小型高密度化、印字性能の高品質化及び長寿命化できるということに優れている。このように構成されたインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置においては、高精彩かつ高速なプリント品質が要求されている。このような要求を実現するに当たっては、高密度化したノズル孔を用いるとともに、高周波数にて駆動部を駆動させて液滴を吐出させることが考えられる。また、安定性、つまりノズル孔から安定して液滴を吐出させることが求められる。
インクジェットヘッドでは、各吐出室に共通に連通するリザーバが設けられているので、ノズル密度の高密度化に伴い、吐出室の圧力がリザーバにも伝達し、その圧力の影響が他の吐出室とその吐出室に連通するノズル孔にも及ぶことになる。たとえば、アクチュエータを駆動することにより、リザーバに正圧がかかると、本来インク滴を吐出すべきノズル孔(駆動ノズル)以外の非駆動ノズルからもインク滴が漏れ出たり、逆にリザーバに負圧がかかると、駆動ノズルから吐出するべきインク滴の吐出量が減少したりして、吐出性能の安定化を妨げる。
このような背景から、リザーバの圧力変動を緩衝させるための圧力調整機構を設けることが従来から提案されている。このような圧力調整機構は、ノズル基板の一部を薄膜化し、その部分がダイアフラム部として構成されることが多い。このようなものとして、「インクリザーバを区画形成している仕切り壁部分のうち、第1の仕切り壁部分には、インクリザーバの圧力変動を緩衝させるための圧力変動緩衝部分が形成されているインクジェットヘッド」が存在する(たとえば、特許文献1参照)。
特開平11−115179号公報(第2頁、図1及び図2)
特許文献1に記載されているインクジェットヘッドでは、リザーバが吐出室と同一の第2の基板(キャビティ基板)に形成されている。このため、リザーバの体積確保の観点から、ダイアフラム部をリザーバと同一の第2の基板に設けることは難しい。そこで、ダイアフラム部を第1の基板であるノズル基板に形成している。しかしながら、このような構造では、強度の低い部位(ダイアフラム部)が外側に露出するため、ダイアフラム部を薄くするのにも限界がある。また、ダイアフラム部を薄くするのであれば、ダイアフラム部を保護するための保護カバー等が別途必要になる。
この対策としては、ダイアフラム部と吐出室とを別々の基板(たとえば、リザーバ基板とキャビティ基板)に設け、リザーバの体積を確保しつつ、リザーバと同一の基板にダイアフラム部を設けるようにすることが考えられる。このような対策では、より厚みのある基板(たとえば、リザーバ基板)に接着剤を転写し、キャビティ基板及びノズル基板を貼り合わせることが多い。そうすると、接着剤を転写する際、ダイアフラム部にまで接着剤が転写されてしまうことがある。ダイアフラム部に接着剤が転写すると、ダイアフラム部は薄膜で構成されているため、しなやかに膨張、収縮を繰り返す機能が阻害されてしまうといった課題が生じることになる。また、ダイアフラム部の機能が阻害されると、最終的に安定的な液滴吐出ができなくなる可能性が高くなってしまう。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、リザーバダイアフラムの接着剤による影響を低減し、ダイアフラムとしての機能を十分に発揮できる液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、複数のノズル孔を有するノズル基板と、ノズル孔毎に連通し、ノズル孔より液滴を吐出する複数の独立した吐出室を有するキャビティ基板と、吐出室に対して共通に連通するリザーバを有し、ノズル基板とキャビティ基板との間に設けられるリザーバ基板とを少なくとも備え、リザーバの底面の一部を薄膜化してリザーバ内における液滴による圧力変動を緩衝するダイアフラム部を形成し、ダイアフラム部の両面に撥水膜を形成したことを特徴とする。
したがって、ダイアフラム部に選択的に撥水膜を形成したので、ダイアフラム部を接着剤から保護するとともに、ダイアフラム部に接着剤が付着したとしても、物理的に容易にふき取ることができ、接着剤による影響を低減することができる。すなわち、ダイアフラム部の機能(可撓性)を低減させることなく、十分に発揮することができる。また、ダイアフラム部が十分に撓むことができるので、リザーバ内における圧力変動を効果的に抑制することができる。
また、ダイアフラム部と吐出室とを別々の基板(リザーバ基板とキャビティ基板)に設けたので、リザーバの体積を確保することができる。このため、ノズル孔の高密度化が可能になる。さらに、リザーバ内の圧力変動を効果的に抑制できるので、インク吐出時に発生するノズル間の圧力干渉を防止することができ、良好な吐出特性を得ることができ、吐出特性の安定化を図ることができる。すなわち、信頼性を向上させた液滴吐出ヘッドを提供することができる。
さらに、リザーバ基板の内部にダイアフラム部を設け、ダイアフラム部が液滴吐出ヘッドの各ヘッドチップに内包される構造としたため、ダイアフラム部に直接外力が加わることはなく、ダイアフラム部を薄くすることができ、かつ保護カバー等のような特別の保護部材が不要となる。また、ダイアフラム部をリザーバの底面に形成するので、ダイアフラム部の面積を大きくすることができ、ダイアフラム部の圧力緩衝効果を大きくすることができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、ダイアフラム部は、リザーバの形成面とは反対側に、ダイアフラム部の振動を可能にする空間部を有していることを特徴とする。したがって、ダイアフラム部の両面に空間(リザーバ及び空間部)を有するので、この空間内でダイアフラム部が振動可能となる。またダイアフラム部が変形するための空間部をキャビティ基板あるいはノズル基板に形成する必要がないので、キャビティ基板あるいはノズル基板の設計及び加工に対する影響をなくすことができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、撥水膜がシランカップリング剤で構成されていることを特徴とする。したがって、ダイアフラム部の表面荒れを防止できるとともに、ダイアフラム部への撥水膜の密着性を向上させることができる。また、シランカップリング剤(SCA)は、膜厚が数nm(たとえば、2〜3nm)程度でも撥水特性を有するために、非常に薄く形成することができ、ダイアフラム部の機能を妨げることがない。
本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする。したがって、上記の液滴吐出ヘッドの効果をすべて有していることになる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、複数のノズル孔を有するノズル基板と、ノズル孔毎に連通し、ノズル孔より液滴を吐出する複数の独立した吐出室を有するキャビティ基板と、吐出室に対して共通に連通するリザーバを有し、ノズル基板とキャビティ基板との間に設けられるリザーバ基板とを、接着剤を介して積層させる液滴吐出ヘッドの製造方法であって、リザーバ基板になるシリコン基材の一方の面からリザーバを形成する工程と、シリコン基材の他方の面から掘り下げて、シリコン基材の一部を薄膜化し、ダイアフラム部を形成する工程と、シリコン基材の全面に撥水膜を形成する工程と、ダイアフラム部の両面をマスクで覆い、マスクで覆った部分以外の撥水膜を除去する工程と、マスクを除去する工程とを経てリザーバ基板を作製し、リザーバ基板の両面に接着剤を転写し、ノズル基板及びキャビティ基板をリザーバ基板に接合することを特徴とする。
したがって、ダイアフラム部に選択的に撥水膜を形成するので、リザーバ基板の接着面には撥水膜が形成されず、ノズル基板及びキャビティ基板との接合に影響を与えることがない。また、ダイアフラム部に選択的に撥水膜を形成したので、ダイアフラム部を接着剤から保護するとともに、ダイアフラム部に接着剤が付着したとしても、物理的に容易にふき取ることができ、接着剤による影響を低減することができる。すなわち、ダイアフラム部の機能(可撓性)を低減させることなく、十分に発揮することができる。また、ダイアフラム部が十分に撓むことができるので、リザーバ内における圧力変動を効果的に抑制することができる。
また、ダイアフラム部と吐出室とを別々の基板(リザーバ基板とキャビティ基板)に設けたので、リザーバの体積を確保することができる。このため、ノズル孔の高密度化が可能になる。さらに、リザーバ内の圧力変動を効果的に抑制できるので、インク吐出時に発生するノズル間の圧力干渉を防止することができ、良好な吐出特性を得ることができ、吐出特性の安定化を図ることができる。すなわち、信頼性を向上させた液滴吐出ヘッドを提供することができる。
さらに、リザーバ基板の内部にダイアフラム部を設け、ダイアフラム部が液滴吐出ヘッドの各ヘッドチップに内包される構造としたため、ダイアフラム部に直接外力が加わることはなく、ダイアフラム部を薄くすることができ、かつ保護カバー等のような特別の保護部材が不要となる。また、ダイアフラム部をリザーバの底面に形成するので、ダイアフラム部の面積を大きくすることができ、ダイアフラム部の圧力緩衝効果を大きくすることができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、マスクにPETフィルムを用いたことを特徴とする。したがって、PETフィルムは、強度と耐熱性に優れているために、撥水膜を効果的に保護することができる。
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上述の液滴吐出ヘッドの製造方法を含むことを特徴としている。したがって、上述の液滴吐出ヘッドの製造方法の効果をすべて有している。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッド100を分解した状態を示す分解斜視図である。図2は、液滴吐出ヘッド100が組み立てられた状態の断面構成を示す縦断面図である。図1及び図2に基づいて、液滴吐出ヘッド100の構成及び動作について説明する。この液滴吐出ヘッド100は、静電気力により駆動される静電駆動方式の静電アクチュエータの代表として、ノズル基板の表面側に設けられたノズル孔から液滴を吐出するフェイスイジェクトタイプの液滴吐出ヘッドを表している。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図の上側を上とし、下側を下として説明するものとする。
図1に示すように、この液滴吐出ヘッド100は、電極基板(電極ガラス基板)4、キャビティ基板3、リザーバ基板2及びノズル基板1の4つの基板が順に積層されて接合された4層構造で構成されている。リザーバ基板2の一方の面(上面)にはノズル基板1が接合されており、リザーバ基板2の他方の面(下面)にはキャビティ基板3が接合されている。また、キャビティ基板3のリザーバ基板2が接合された面の反対面には、電極基板4が接合されている。すなわち、吐出室7とリザーバ10とが別々の基板に設けられている。また、液滴吐出ヘッド100には、個別電極17に駆動信号を供給するドライバIC等の駆動制御回路15が接続されている。
[ノズル基板1]
ノズル基板1は、たとえば厚さ50[μm](マイクロメートル)のシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板という)を主要な材料として構成されている。ノズル基板1には、複数のノズル孔5が所定のピッチで形成されている。各ノズル孔5は、後述する各ノズル連通孔6から移送された液滴を外部に吐出する機能を有している。なお、図2に示すように、ノズル孔5を複数段(たとえば、基板面に対し垂直かつ同軸上に小さい径で形成されている第1ノズル孔部5aと、第1ノズル孔部5aよりも径の大きい第2ノズル孔部5bの2段)で形成したり、テーパー形状で形成したりすると、液滴を吐出する際の直進性の向上が期待できる。
また、図1では、ノズル孔5を有するノズル基板1を上面とし、電極基板4を下面として説明するが、実際に用いられる場合には、ノズル基板1の方が電極基板4よりも下面となることが多い。さらに、図1では、簡略化のため、1列に5つのノズル孔5が形成されている場合を例に示しているが、これに限定するものではない。たとえば、ノズル孔5の列を複数列とするとともに、ノズル孔5の個数を6つ以上としてノズル孔5を形成してもよい。
[リザーバ基板2]
リザーバ基板2は、たとえば厚さ180[μm]のシリコン基板を主要な材料として構成されている。このリザーバ基板2には、リザーバ基板2に垂直に貫通し、各ノズル孔5に独立して連通するノズル連通孔6が形成されている。このノズル連通孔6は、ノズル孔5の径よりも少し大きい径で形成されている。また、リザーバ基板2には、各吐出室7にインク等の液滴を供給するためのリザーバ10が各吐出室7に共通して形成されている。このリザーバ10は、ノズル基板1との接着面(以下、N面ともいう)側に拡径した断面形状(ほぼ逆台形状)となっている。
また、リザーバ10の底面には、リザーバ10の底面を垂直に貫通し、リザーバ10から各吐出室7へ液滴を移送するための供給口9が各吐出室7の位置に合わせて形成されている。すなわち、リザーバ10は、各供給口9を介して各ノズル連通孔6及びノズル孔5と連通するようになっている。さらに、リザーバ10の底面には、リザーバ10の底面を垂直に貫通し、図示省略の外部のインクタンクからリザーバ10に供給される液体を取り入れる流路となるインク供給孔31が形成されている。
リザーバ基板2とキャビティ基板3との接着面(以下、C面ともいう)におけるリザーバ10の底面には、圧力変動緩衝部であるリザーバダイアフラム(以下、ダイアフラム部40という)が設けられている。このダイアフラム部40は、リザーバ10の底面をC面側から薄膜化することで形成されている。つまり、リザーバ10の底面のC面側に空間部41を設けることによって、ダイアフラム部40を形成しているのである。この空間部41は、供給口9及びインク供給孔31との間に形成されている。また、リザーバ基板2のC面には、吐出室7の一部を構成する細溝状の凹部(第2キャビティ)28が形成されている。この凹部28は、キャビティ基板3を薄くすることによる吐出室7での流路抵抗の増加を防ぐために設けられているが、省略することも可能である。
また、ダイアフラム部40を構成するリザーバ基板2の底面両面には、撥水膜42が数nm(ナノメートル)程形成されている。この撥水膜42は、ダイアフラム部40の接着剤による影響を低減するための保護膜として機能する。つまり、撥水膜42は、接着剤の転写をしにくくするとともに、転写されたとしても物理的に拭き取り可能にする機能を有している。なお、リザーバ10の形成面側に形成された撥水膜42は、少なくともダイアフラム部40に形成されていればよく、リザーバ10の底面全体に形成されていなくてもよい。また、撥水膜42の材料を特に限定するものではない。たとえば、SCA(silane coupling agent:シランカップリング剤)で構成するとよい。
撥水膜42をSCAで構成すれば、ダイアフラム部40(詳しくは、以下で示す熱酸化膜203)の表面荒れを防止できるとともに、ダイアフラム部40への撥水膜42の密着性を向上させることができる。また、膜厚を数nm(たとえば、2〜3[nm])としても撥水特性を発揮するために、非常に薄い撥水膜42を形成することができる。したがって、撥水膜42をダイアフラム部40に形成したとしても、ダイアフラム部40の機能に影響を与えることなく、ダイアフラム部40が十分に機能することになる。
このように、ダイアフラム部40に撥水膜42を形成しても、撥水膜42の膜厚は数nm程度であるために、ダイアフラム部40の機能、つまりしなやかに膨張、収縮を繰り返すという可撓性を十分に発揮できる。すなわち、ダイアフラム部40を設けることによって、リザーバ10内における液滴によって発生する圧力変動を十分に緩衝することができるのである。また、ノズル連通孔6は、ノズル基板1のノズル孔5と同軸上に設けられているので、インク滴の吐出の直進性が得られ、そのため吐出特性が格段に向上する。特に、微小なインク滴を狙い通りに着弾させることができるため、色ずれ等を生じることなく微妙な階調変化を忠実に再現することができ、より鮮明で高品位の画質を実現することができる。
[キャビティ基板3]
キャビティ基板3は、たとえば厚さ約50[μm]の(110)面方位のシリコン基板を主要な材料として構成されている。このシリコン基板にドライエッチングまたは異方性ウエットエッチングのいずれかあるいは双方を行い、底壁が可撓性を有する振動板8となる吐出室(または、圧力室)7が複数形成されている。この吐出室7は、電極基板4の個別電極17の電極列に対応して形成されており、インク等の液滴が保持されて吐出圧が加えられるようになっている。また、吐出室7は、紙面手前側から奥側にかけて平行に並んで形成されているものとする。
この吐出室7は、リザーバ基板2のノズル連通孔6のそれぞれに独立して連通するように形成されている。また、リザーバ基板2の凹部28が各吐出室7の一部を構成するようになっている。さらに、キャビティ基板3の下面(電極基板4と対向する面)には、振動板8と個別電極17との間を電気的に絶縁するためのTEOS膜(ここでは、Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン(珪酸エチル)を用いてできるSiO2 をいう)である図示省略の絶縁膜をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:TEOS−pCVDともいう)法を用いて、0.1[μm]形成するとよい。
この絶縁膜を形成することで、振動板8の駆動時における絶縁破壊及びショートを防止できるとともに、インク等の液滴によるキャビティ基板3のエッチングを防止できる。また、絶縁膜をTEOS膜に限定するものではなく、絶縁性能が向上する物質、たとえばAl23(酸化アルミニウム(アルミナ))等を用いてもよい。さらに、キャビティ基板3の上面には、図示省略の液体保護膜となるSiO2 膜(TEOS膜を含む)を、プラズマCVD法又はスパッタリング法により成膜するとよい。この液体保護膜を成膜することで、インク滴で流路が腐食されるのを防止できる。また、この液体保護膜の応力と絶縁膜の応力とを相殺させ、振動板8の反りを小さくできるという効果もある。
振動板8は、高濃度のボロンドープ層で形成するようにしてもよい。水酸化カリウム水溶液(KOH水溶液)等のアルカリ溶液による単結晶シリコンのエッチングにおけるエッチングレートは、ドーパントがボロンの場合、約5×1019[atoms/cm3 以上の高濃度の領域において、非常に小さくなる。このため、振動板8の部分を高濃度のボロンドープ層とし、アルカリ溶液による異方性エッチングによって吐出室7を形成する際に、ボロンドープ層が露出してエッチングレートが極端に小さくなる、いわゆるエッチングストップ技術を用いることにより、振動板8を所望の厚さに形成することができる。また、振動板8の面荒れを精度よく抑制することができる。
また、キャビティ基板3には、キャビティ基板3を垂直に貫通し、リザーバ基板2のインク供給孔31と連通するインク供給孔32が形成されている。さらに、キャビティ基板3には、駆動制御回路15が搭載されている図示省略のフレキシブル配線基板と接続される部分に電極端子としての共通電極端子16が設けられている。この共通電極端子16は、駆動制御回路15から個別電極17に供給される電荷と反対の極性の電荷を振動板8に供給する際の端子となるものである。
[電極基板4]
電極基板4は、たとえば、厚さ1[mm]のガラス材を主要な材料として形成するとよい。中でも、キャビティ基板3を構成するシリコン材と熱膨張係数の近い硼珪酸系の耐熱硬質ガラスで形成するのが適している。この硼珪酸系の耐熱硬質ガラスで電極基板4を形成すれば、電極基板4とキャビティ基板3とを陽極接合する際、両基板の熱膨張係数が近いため、電極基板4とキャビティ基板3との間に生じる応力を低減することができ、その結果、剥離等の問題を生じることなく、電極基板4とキャビティ基板3とを強固に接合することができる。なお、電極基板4がガラス材で形成されている場合を例に示すが、単結晶シリコンで形成してもよい。
この電極基板4の表面には、キャビティ基板3の各吐出室7の形状に応じたガラス溝(凹部)12が形成されている。このガラス溝12は、たとえばエッチングにより深さ0.3[μm]で形成するとよい。また、ガラス溝12は、その一部が個別電極17を装着できるように、これらの形状に類似したやや大きめの形状にパターン形成されている。各ガラス溝12の内部(特に底部)には、固定電極となる個別電極17が、一定の間隔を有してキャビティ基板3の各吐出室7(振動板8)と対向するように作製されている。
この個別電極17は、たとえばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を0.1[μm]の厚さでスパッタして作製するとよい。このようにITOで個別電極17を作製すると、透明なので放電したかどうかの確認が行ないやすいという利点がある。なお、個別電極17をITOで作製した場合を例に示したが、これに限定するものではなく、IZO(Indium Zinc Oxide)あるいは金、銅、クロム等の金属等で作製してもよい。
したがって、電極基板4とキャビティ基板3とを接合して積層体を形成すると、振動板8と個別電極17との間には、振動板8を撓ませる(変位させる)ことができる一定のギャップ(空隙)18が、電極基板4のガラス溝12により形成されるようになっている。ここでは、ギャップ18が0.2[μm]となっている。このギャップ18は、ガラス溝12の深さ、個別電極17及び振動板8の厚さにより決まることになる。このギャップ18は、液滴吐出ヘッド100の吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が要求される。
また、このギャップ18の開放端部に、たとえばエポキシ接着剤等からなる封止部14を形成し、ギャップ18内に異物や湿気等が侵入するのを防止するとよい。なお、封止部14に使用する材料を特に限定するものではなく、ギャップ18を気密に封止できるものであればよい。たとえば、水分透過性の低い酸化シリコン(SiO2 )や、酸化アルミニウム(Al23)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、ポリパラキシリレン等で封止部14を形成するとよい。
なお、ギャップ18は、電極基板4にガラス溝12を形成する他に、キャビティ基板3となるシリコン基板に凹部を形成したり、スペーサを挟むことによって設けたりすることも可能である。また、個別電極17は、一定の間隔の隙間(ギャップ18)をもって振動板8に対向しており、ガラス溝12の底面に沿って電極基板4の片側末端まで伸びている。そして、この個別電極17の末端を構成する端子部17aで駆動制御回路15が搭載されている図示省略のフレキシブル配線基板と接続され、その駆動制御回路15から個別電極17に駆動信号が供給されるようになっている。端子部17aは、リザーバ基板2及びキャビティ基板3の端部が開口された電極取り出し部44に露出している。
この液滴吐出ヘッド100は、図1に示すように、複数の個別電極17が長辺及び短辺を有する長方形状に形成されており、この個別電極17が、互いの長辺が平行になるように配置されている。そして、個別電極17の短辺方向に伸びる1つの電極列を示している。なお、個別電極17の短辺が長辺に対して斜めに形成されており、個別電極17が細長い平行四辺形状になっている場合には、長辺方向に直角方向に伸びる電極列を形成するようにすればよい。
また、電極基板4には、電極基板4を垂直に貫通し、キャビティ基板3のインク供給孔32と連通するインク供給孔33が形成されている。このインク供給孔33は、電極基板4、キャビティ基板3及びリザーバ基板2が接合された状態において、キャビティ基板3に形成されたインク供給孔32、及びリザーバ基板2に形成されたインク供給孔31と連通し、インク供給孔34を形成し、液滴をリザーバ10に供給するようになっている。なお、ここで示したガラス溝12の深さ及び長さやギャップ18の深さ、個別電極17の厚さは一例であり、ここで示す値に限定するものではない。
電極基板4、キャビティ基板3、リザーバ基板2及びノズル基板1を接合するときに、シリコンからなる基板とホウ珪酸ガラスからなる基板を接合する場合(電極基板4とキャビティ基板3とを接合する場合)は陽極接合により、シリコンからなる基板同士を接合する場合(キャビティ基板3とリザーバ基板2、リザーバ基板2とノズル基板1とを接合する場合)は直接接合によって接合することができる。また、シリコンからなる基板同士は、接着剤を用いて接合することもできる。
ここで、液滴吐出ヘッド100の動作について説明する。リザーバ基板2のリザーバ10には、インク供給孔34を介して外部からインク等の液滴が供給されている。また、吐出室7には、供給口9を介してリザーバ10から液滴が供給されている。吐出室7内の液滴は、ノズル連通孔6を介してノズル孔5の先端まで満たされている。また、駆動制御回路15は、各個別電極17と、共通電極端子16との間に接続されている。この駆動制御回路15には、液滴吐出装置の図示省略の制御部から駆動信号(パルス電圧)が供給されている。そして、駆動制御回路15によって選択された個別電極17には0[V]〜40[V]程度のパルス電圧が印加され、その個別電極17を正に帯電させる。
このとき、共通電極端子16を介してキャビティ基板3には負の極性を有する電荷が印加され、正に帯電された個別電極17に対応する振動板8が相対的に負に帯電する。そのため、選択された個別電極17と振動板8との間では静電気力(クーロン力)が発生することになる。そうすると、振動板8は、静電気力によって個別電極17側に引き寄せられて撓むことになる。これによって、吐出室7の容積が増大する。次に、個別電極17へのパルス電圧の供給を止めると、振動板8と個別電極17との間の静電気力がなくなり、振動板8は元の状態に復元する。このとき、吐出室7の内部の圧力が急激に上昇し、吐出室7内の液滴がノズル連通孔6を通過してノズル孔5から吐出されることになる。
この吐出液滴が、たとえば記録紙に着弾することによって印刷等が行われるようになっている。その後、液滴がリザーバ10から供給口9を通じて吐出室7内に補給され、初期状態に戻る。このような方法は、引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。なお、液滴吐出ヘッド100のリザーバ10への液滴の供給は、たとえばインク供給孔34に接続された図示省略の液滴供給管により行われている。
この液滴吐出ヘッド100では、駆動時において、吐出室7の圧力がリザーバ10にも伝達される。このとき、リザーバ10の底面には、ダイアフラム部40が設けられているので、リザーバ10が正圧になるとダイアフラム部40は空間部41の下方へ撓み、逆にリザーバ10が負圧になるとダイアフラム部40は空間部41の上方へ撓むため、リザーバ10内の圧力変動を緩衝することができ、ノズル孔5間の圧力干渉を防止することができる。そのため、駆動ノズル以外の非駆動ノズルから液滴が漏れ出たり、駆動ノズルから吐出に必要な吐出量が減少したりするといったようなことをなくすことができる。
ダイアフラム部40は、リザーバ10の底面の一部を薄膜化して形成されているため、ダイアフラム部40の面積を大きくすることができ、圧力緩衝効果を大きくすることができる。また、ダイアフラム部40は、リザーバ基板2内に設けられており、C面側がキャビティ基板3によって蓋がされ、外部に露出していないので、ダイアフラム部40を外力から確実に保護することができる。さらに、保護カバー等特別な保護部材を全く必要としなくて済み、液滴吐出ヘッド100の小型化及び低コスト化を図れる。
次に、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッド100の製造工程について説明する。まず、リザーバ基板2の製造工程について説明する。図3及び図4は、リザーバ基板2の製造工程を説明するための説明図である。図3及び図4に基づいて、この実施の形態の特徴事項であるリザーバ基板2の製造工程について説明する。なお、以下に示す基板の厚さやエッチング深さ、温度、圧力等の値はあくまでも一例であり、本発明はこれらの値によって限定されるものではない。
面方位(100)、厚さ180[μm]のシリコン基板よりなるリザーバ基材200を用意し、このリザーバ基材200に熱酸化膜201を1.5[μm]形成し、フォトリソグラフィー法により、キャビティ基板3と接着する側の面(C面)に、ノズル連通孔6になる部分6a、凹部28になる部分28a、供給口9になる部分9a、ダイアフラム部40になる部分40a(後に、空間部41となる部分)及びインク供給孔31の外縁になる部分31aをパターニングする(図3(a))。このとき、ノズル連通孔6になる部分6a=0<供給口9になる部分9a=インク供給孔31の外縁になる部分31a<凹部28になる部分28a=ダイアフラム部40になる部分40aの関係になるように熱酸化膜201の残し膜厚を決定する。
次に、ノズル連通孔6になる部分6aを、たとえばICP(Inductively Coupled Plasma)によって150[μm]程、ドライエッチングする(図3(b))。それから、熱酸化膜201を適量エッチングして、供給口9になる部分9a、及びインク供給孔31の外縁になる部分31aを開口させ、たとえばICPで15[μm]程、ドライエッチングする(図3(c))。そして、熱酸化膜201を適量エッチングして、凹部28になる部分28a及びダイアフラム部40になる部分40aを開口させ、たとえばICPで25[μm]程、ドライエッチングして掘り下げる(図3(d))。このとき、ノズル連通孔6になる部分6aもドライエッチングされて、N面にまで貫通することになる。
その後、熱酸化膜201を除去し、再度、熱酸化膜202を1.0[μm]形成し、ノズル基板1と接着する側の面(N面)に、リザーバ10になる部分10aをフォトリソグラフィー法で開口する(図3(e))。このリザーバ基材200をKOH(水酸化カリウム水溶液)で150[μm]程、ウエットエッチングしてリザーバ10になる部分10aをウエットエッチングする(図4(f))。このとき、インク供給孔31になる部分は、インク供給孔31の外縁になる部分31aによりリザーバ基材200から分離されることになる。
熱酸化膜202を除去した後、再度、熱酸化膜203を0.2[μm]形成する(図4(g))。このリザーバ基材200の全体にSCA等を用いて撥水膜42aを形成する(図4(h))。その後、ダイアフラム部40(リザーバ10の形成面側及び空間部41側)をPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム等をマスクとして用いて保護し、それ以外の部分に形成されている撥水膜42aを除去し、撥水膜42aをダイアフラム部40に選択的に残るようにする(図4(i))。その後、ダイアフラム部40を覆っているPETフィルム等を除去し、ダイアフラム部40に撥水膜42が形成されることになる。
このように、ダイアフラム部40に選択的に撥水膜42が形成され、リザーバ基板2が作製される。なお、リザーバ10の形成面側における撥水膜42aは、ダイアフラム部40に少なくとも形成されていればよい。また、リザーバ基材200のダイアフラム部40以外に形成されている撥水膜42aの除去には、RIE(Reactive Ion Etching)装置等を使用するとよい。このときの条件は、たとえばArプラズマをガス流量50[sccm]、圧力0.05[Torr]、放電パワー200[W]、照射時間1分間として行うようにするとよい。
次に、電極基板4及びキャビティ基板3の製造工程について説明する。図5〜図7は、電極基板4及びキャビティ基板3の製造工程を説明するための説明図である。図5〜図7に基づいて、電極基板4及びキャビティ基板3の製造工程について簡単に説明する。なお、以下に示す基板の厚さやエッチング深さ、温度、圧力等の値はあくまでも一例であり、電極基板4及びキャビティ基板3の製造工程は、これらの値によって限定されるものではない。
電極基板4は、以下のようにして作製される。硼珪酸ガラス等からなる厚さ約1[mm]のガラス基材400に、金・クロムのエッチングマスクを使用し、フッ酸によってエッチングすることにより、ガラス溝12を形成する。なお、このガラス溝12は、個別電極17の形状より少し大きめの形状に、個別電極17ごとに複数形成されるものとする。そして、ガラス溝12の内部に、スパッタとパターニングにより、たとえばITOからなる個別電極17を形成する。その後、ブラスト等によってインク供給孔33を形成することにより、電極基板4が作製される(図5(a))。
次に、電極基板4と接合するE面に所要の厚さのキャビティ基材300を用意し、このキャビティ基材300のE面に、たとえばTEOSを原料としたプラズマCVDによって、厚さ0.1[μm]の酸化膜からなる絶縁膜301を形成する(図5(b))。この絶縁膜301の形成は、たとえば温度360[℃]、高周波出力250[W]、圧力66.7[Pa](0.5[Torr])、ガス流量はTEOS流量100[cm3 /min](100[sccm])、酸素流量1000[cm3 /min](1000[sccm])の条件で行うとよい。また、キャビティ基材300は、所要の厚さのボロンドープ層が形成してあるものを用いるとよい。
それから、キャビティ基材300と、電極基板4とを陽極接合する(図5(c))。この陽極接合は、キャビティ基材300及び電極基板4を360[℃]に加熱した後、電極基板4に負極、キャビティ基材300に正極を接続して、800[V]の電圧を印加して行なうとよい。陽極接合されたキャビティ基材300の表面を、たとえばバックグラインダーやポリッシャー等によって研削加工し、さらにKOHで表面を10〜20[μm]エッチングして加工変質層を除去し、厚さが30[μm]になるまで薄くする(図5(d))。
次に、薄板化されたキャビティ基材300の表面に、エッチングマスクとなるTEOS酸化膜302を、たとえばプラズマCVDによって厚さ約1.0[μm]で形成する(図6(e))。そして、TEOS酸化膜302の表面上に図示省略のレジストをコーティングし、フォトリソグラフィーによってレジストをパターニングし、TEOS酸化膜302をエッチングすることにより、吐出室7になる部分7a、インク供給孔32になる部分32a、及び電極取り出し部44になる部分44aを開口する(図6(f))。その後、レジストを剥離する。
それから、薄板化されたキャビティ基材300をKOHでエッチングすることにより、吐出室7になる部分7aと、インク供給孔32になる部分32aを形成する(図6(g))。このとき、電極取り出し部44になる部分44aは、ボロンドープ層が形成されているため、振動板8になる部分8aと同じ厚さで残留することになる。また、インク供給孔32になる部分32aにもボロンドープ層が形成されているが、電極基板4のインク供給孔33から侵入するKOHにも曝露されているため、エッチング中に消滅することになる。
なお、このエッチング工程では、最初は、濃度35[wt%]のKOHを用いて、キャビティ基材300の残りの厚さが、たとえば5[μm]になるまでエッチングを行い、それから、濃度3[wt%]のKOHに切り替えてエッチングを行うとよい。こうすることによって、エッチングストップが十分に働くため、振動板8になる部分8aの面荒れを防ぐことができ、その厚さを0.80±0.05[μm]と、高精度の厚さに形成することができる。エッチングストップとは、エッチング面から発生する気泡が停止した状態と定義し、実際のウエットエッチングにおいては、気泡の発生の停止をもってエッチングがストップしたものと判断する。
キャビティ基材300のエッチングが終了した後に、フッ酸水溶液でエッチングすることにより、キャビティ基材300の上面に形成されているTEOS酸化膜302を除去する(図6(h))。それから、キャビティ基材300の吐出室7になる部分7aの表面に、たとえばプラズマCVDによりTEOS膜からなるインク保護膜303を、厚さ0.1[μm]で形成するとよい(図7(i))。その後、RIE等によって電極取り出し部44になる部分44aを開口し、ギャップ18の開放端部を封止部14で気密封止し、Pt(白金)等の金属電極からなる共通電極端子16を、たとえばスパッタ等により、キャビティ基材300の表面端部に形成する(図7(j))。このように、電極基板4に接合した状態のキャビティ基材300からキャビティ基板3が作製される。
次に、液滴吐出ヘッド100の完成までの製造工程について説明する。図8は、液滴吐出ヘッド100の完成までの製造工程を説明するための説明図である。図8に基づいて、液滴吐出ヘッド100の完成までの製造工程について簡単に説明する。ここでは、図3及び図4で説明したリザーバ基板2と、図5〜図7で説明した電極基板4及びキャビティ基板3とを用いるとともに、シリコン材で構成されているノズル基板1を用いて液滴吐出ヘッド100を完成させる場合について示している。
リザーバ基板2のC面に接着剤を転写し、このリザーバ基板2とキャビティ基板3を接合する(図8(a))。このとき、リザーバ基板2のダイアフラム部40の空間部41側には、撥水膜42が形成されているために、接着剤がダイアフラム部40に付着しにくく、また付着したとしても、物理的に容易にふき取ることができる。それから、リザーバ基板2のN面に接着剤を転写し、このリザーバ基板2と予めノズル孔5が形成されたノズル基板1とを接合する(図8(b))。このとき、リザーバ基板2のリザーバ10の形成面側には、撥水膜42が形成されているために、接着剤がダイアフラム部40に付着しにくく、また付着したとしても、物理的に容易にふき取ることができる。最後に、ダイシングにより個々のヘッドに分離すれば、液滴吐出ヘッド100が完成する(図8(c))。
以上のように、この実施の形態に係る液滴吐出ヘッド100は、ダイアフラム部40に選択的に撥水膜42を形成したので、ダイアフラム部40を接着剤から保護するとともに、ダイアフラム部40に接着剤が付着したとしても、物理的に容易にふき取ることができ、接着剤による影響を低減することができる。したがって、ダイアフラム部40の機能を低減させることなく、十分に発揮することができる。すなわち、ダイアフラム部40が十分に撓むことができるので、リザーバ10内における圧力変動を効果的に抑制することができるのである。
また、ダイアフラム部40と吐出室7とを別々の基板(リザーバ基板2とキャビティ基板3)に設けたので、リザーバ10の体積を確保することができる。このため、ノズル孔5の高密度化が可能になる。さらに、リザーバ10内の圧力変動を効果的に抑制できるので、インク吐出時に発生するノズル孔5間の圧力干渉を防止することができ、良好な吐出特性を得ることができ、吐出特性の安定化を図ることができる。したがって、液滴吐出ヘッド100の信頼性を向上させることができる。
リザーバ基板2の内部にダイアフラム部40を設け、ダイアフラム部40がヘッドチップに内包される構造としたため、ダイアフラム部40に直接外力が加わることはなく、ダイアフラム部40を薄くすることができ、かつ保護カバー等のような特別の保護部材が不要となる。また、ダイアフラム部40をリザーバ10の底面に形成するので、ダイアフラム部40の面積を大きくすることができ、ダイアフラム部40の圧力緩衝効果を大きくすることができる。
図9は、上述した液滴吐出ヘッド100を搭載した液滴吐出装置150の一例を示した斜視図である。図9に示す液滴吐出装置150は、一般的なインクジェットプリンタである。なお、この液滴吐出装置150は、周知の製造方法によって製造することができる。また、液滴吐出ヘッド100は、図9に示す液滴吐出装置150の他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。
たとえば、液滴吐出ヘッド100をディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids:デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。
なお、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法は、上述の実施の形態で説明した内容に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において変更することができる。たとえば、ウエットエッチングに使用するエッチング液の選択比やドライエッチングに使用するエッチングガスの選択比等は、エッチングする深さやエッチングされる材料の厚さ等の条件によって適宜変更するとよい。さらに、静電駆動方式以外の駆動方式によるインクジェットヘッドについても、本発明を適用することができる。圧電方式の場合は、電極基板に代えて、圧電素子を各吐出室の底部に接着すればよく、バブル方式の場合は各吐出室の内部に発熱素子を設ければよい。
液滴吐出ヘッドを分解した状態を示す分解斜視図である。 液滴吐出ヘッドが組み立てられた状態の断面構成を示す縦断面図である。 リザーバ基板の製造工程を説明するための説明図である。 リザーバ基板の製造工程を説明するための説明図である。 電極基板及びキャビティ基板の製造工程を説明するための説明図である。 電極基板及びキャビティ基板の製造工程を説明するための説明図である。 電極基板及びキャビティ基板の製造工程を説明するための説明図である。 液滴吐出ヘッドの完成までの製造工程を説明するための説明図である。 液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の一例を示した斜視図である。
符号の説明
1 ノズル基板、2 リザーバ基板、3 キャビティ基板、4 電極基板、5 ノズル孔、5a 第1ノズル孔部、5b 第2ノズル孔部、6 ノズル連通孔、6a ノズル連通孔になる部分、7 吐出室、7a 吐出室になる部分、8 振動板、8a 振動板になる部分、9 供給口、10 リザーバ、10a リザーバになる部分、12 ガラス溝、14 封止部、15 駆動制御回路、16 共通電極端子、17 個別電極、17a 端子部、18 ギャップ、28 凹部、28a 凹部になる部分、31 インク供給孔、31a インク供給孔になる部分、32 インク供給孔、32a インク供給孔になる部分、33 インク供給孔、34 インク供給孔、40 ダイアフラム部、40a ダイアフラム部になる部分、41 空間部、42 撥水膜、42a 撥水膜、44 電極取り出し部、44a 電極取り出し部になる部分、100 液滴吐出ヘッド、150 液滴吐出装置、200 リザーバ基材、201 熱酸化膜、202 熱酸化膜、203 熱酸化膜、300 キャビティ基材、301 絶縁膜、302 TEOS酸化膜、303 インク保護膜、400 ガラス基材。

Claims (7)

  1. 複数のノズル孔を有するノズル基板と、
    前記ノズル孔毎に連通し、前記ノズル孔より液滴を吐出する複数の独立した吐出室を有するキャビティ基板と、
    前記吐出室に対して共通に連通するリザーバを有し、前記ノズル基板と前記キャビティ基板との間に設けられるリザーバ基板とを少なくとも備え、
    前記リザーバの底面の一部を薄膜化して前記リザーバ内における液滴による圧力変動を緩衝するダイアフラム部を形成し、
    前記ダイアフラム部の両面に撥水膜を形成した
    ことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記ダイアフラム部は、
    前記リザーバの形成面とは反対側に、前記ダイアフラム部の振動を可能にする空間部を有している
    ことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記撥水膜がシランカップリング剤で構成されている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを搭載した
    ことを特徴とする液滴吐出装置。
  5. 複数のノズル孔を有するノズル基板と、
    前記ノズル孔毎に連通し、前記ノズル孔より液滴を吐出する複数の独立した吐出室を有するキャビティ基板と、
    前記吐出室に対して共通に連通するリザーバを有し、前記ノズル基板と前記キャビティ基板との間に設けられるリザーバ基板とを、接着剤を介して積層させる液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記リザーバ基板になるシリコン基材の一方の面から前記リザーバを形成する工程と、
    前記シリコン基材の他方の面から掘り下げて、前記シリコン基材の一部を薄膜化し、ダイアフラム部を形成する工程と、
    前記シリコン基材の全面に撥水膜を形成する工程と、
    前記ダイアフラム部の両面をマスクで覆い、前記マスクで覆った部分以外の前記撥水膜を除去する工程と、
    前記マスクを除去する工程とを経て前記リザーバ基板を作製し、
    前記リザーバ基板の両面に前記接着剤を転写し、前記ノズル基板及び前記キャビティ基板を前記リザーバ基板に接合する
    ことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記マスクにPETフィルムを用いた
    ことを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記請求項5又は6に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用した
    ことを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
JP2007235050A 2007-09-11 2007-09-11 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法 Withdrawn JP2009066794A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007235050A JP2009066794A (ja) 2007-09-11 2007-09-11 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007235050A JP2009066794A (ja) 2007-09-11 2007-09-11 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009066794A true JP2009066794A (ja) 2009-04-02

Family

ID=40603584

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007235050A Withdrawn JP2009066794A (ja) 2007-09-11 2007-09-11 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2009066794A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016144917A (ja) * 2015-02-09 2016-08-12 セイコーエプソン株式会社 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016144917A (ja) * 2015-02-09 2016-08-12 セイコーエプソン株式会社 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2007152621A (ja) 液滴吐出ヘッド及びその製造方法
JP2011121218A (ja) ノズルプレート、吐出ヘッド及びそれらの製造方法並びに吐出装置
JP5315975B2 (ja) ノズル基板、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置並びにこれらの製造方法
JP5332275B2 (ja) シリコン製ノズル基板の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法、及び液滴吐出装置の製造方法
JP4735281B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP4259554B2 (ja) 液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP4270258B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP2007331167A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP2009066794A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP2007276307A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP2008132733A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの製造方法
JP5163144B2 (ja) 静電アクチュエータ
JP2009073072A (ja) 液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP2010142991A (ja) ノズル基板、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置並びにこれらの製造方法
JP2009269331A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの製造方法
JP2007021988A (ja) 液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに液滴吐出装置
JP2009006536A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの製造方法
JP2008194915A (ja) 液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出ヘッド
JP2007105931A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP4645631B2 (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP2007276128A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置
JP2006103167A (ja) 液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに液滴吐出装置
JP2008087208A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP2009113440A (ja) 液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法
JP2007260929A (ja) 液滴吐出ヘッド及びその製造方法並びに液滴吐出装置

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20101207