レンズ鏡筒において、操作環と2つのカム筒を設け、操作環の操作により第2カム筒が光軸方向へ移動すると共に、その回転速度を第1カム筒の回転速度と異ならせることにより、小型化、高品質、低コストに寄与し得るレンズ鏡筒及び撮像装置を、簡単な構成によって実現した。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1〜図39は、本発明の実施の形態の例を説明するものである。即ち、図1は本発明のレンズ鏡筒の第1の実施の例を示す断面図、図2は分解斜視図、図3A,Bは1群枠の斜視図、図4は1群カム環の斜視図、図5はズームカム環の斜視図、図6は1群カム環の展開図、図7ズームカム環の展開図、図8は固定筒の斜視図、図9は4群カム環の斜視図、図10は固定筒の展開図、図11A〜Dは固定筒のリード溝の例を示す説明図、図12は4群カム環の展開図、図13は3群移動枠の展開図、図14は4群枠ユニットの斜視図、図15は3群移動枠の斜視図、図16Aはズームカム環と固定筒の組立図、図16Bはズームカム環と固定筒と4群カム環の組立図、図17は固定枠とズーム操作環の連結状態の説明図、図18A,Bはズーム操作環の斜視図、図19は1群案内環の展開図、図20は2群枠組立体の斜視図、図21はフォーカスカム環の斜視図、図22は2群移動枠の斜視図、図23A,Bはフォーカスカム環の展開図、図24は2群移動枠の展開図、図25A,B及び図26はフォーカスカム環等の組立図、図27A〜Cは固定筒とフォーカスカム環と2群玉枠の組立図、図28A,Bはフォーカスカム環と固定筒等の組立図、図29A,Bは固定保持枠の斜視図、図30はフォーカス作動環等の斜視図、図31は1群カム環と4群カム環等の組立斜視図、図32〜図35は固定筒と2群移動枠とフォーカスカム環との動作の関係を示す説明図、図36は本発明のレンズ鏡筒を備えた撮像装置の第1の実施の例を示す一眼レフカメラの正面図、図37は同じく背面図、図38は同じく縦断面図、図39は一眼レフカメラの概略構成を示すブロック説明図である。
図1及び図2に示すレンズ鏡筒10は、本発明のレンズ鏡筒の第1の実施の例を示すものであり、デジタル一眼レフカメラ等に使用される交換レンズとして構成されている。このレンズ鏡筒10は、複数のレンズやフィルタ等の光学素子によって構成される撮影光学系と、その撮影光学系の各構成要素を固定又は移動可能に支持する環体や枠体等のメカニック系とから構成されている。このメカニック系は、手動操作によって動作されるが、モータやギア等の動力系を設け、メカニック系を自動的に動作させる構成とすることもできる。
図1に示すように、レンズ鏡筒10の撮影光学系は、被写体側から順に配置されている複数のレンズの組合せからなる第1レンズ群1と、同じく複数のレンズの組合せからなる第2レンズ群2と、1又は2以上のレンズの組合せからなる第3レンズ群3と、同じく複数のレンズの組合せからなる第4レンズ群4との4群レンズ構成とされている。第2レンズ群2と第3レンズ群3と第4レンズ群4の位置調整によってズーミング機能とフォーカシング機能が発揮され、これら第2〜第4レンズ群2〜4を光軸方向に所定量移動することにより、光学系のズーミング動作とフォーカシング動作を実行することができる。
レンズ鏡筒10のメカニック系は、第1レンズ群1を保持する1群枠11と、第2レンズ群2を保持する2群枠12と、第3レンズ群3を保持する3群移動枠13と、第4レンズ群4を保持する4群枠ユニット14と、第2カム筒の一具体例を示す1群カム環15と、第1カム筒の一具体例を示すズームカム環16と、固定筒17と、固定保持枠18と、1群案内環21と、ズーム操作環22と、外装カバー23と、距離環24と、フォーカスカム環25等を備えて構成されている。このレンズ鏡筒10の第4レンズ群4の光軸方向の後方に、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補性金属酸化膜半導体)等からなる撮像素子が配置される。
1群枠11は、図1及び図3A,Bに示すように、筒状をなす鏡筒環31と、この鏡筒環31の内側に保持される1群玉枠32とを備えている。鏡筒環31は、筒軸方向の一端の直径を他端側よりも大きくした大径部31aを有する段付き筒体からなり、この大径部31aの内側に1群玉枠32が着脱可能に取り付けられている。1群玉枠32は、複数枚のレンズを保持可能な枠体からなり、この1群玉枠32に、3枚のレンズの組み合わせとして構成された第1レンズ群1が固定されている。鏡筒環31の大径部31aと反対側の端部には、径方向内側に突出する3個の1群カムピン33と、径方向外側に突出する3個の回転止め凸部34が設けられている。3個の1群カムピン33及び3個の回転止め凸部34は、それぞれが互いに等角度間隔をあけて配置されている。そして、1群カムピン33と回転止め凸部34は、周方向に適当な角度をあけて配置されている。
この鏡筒環31の内側に1群カム環15が配置され、1群カム環15の内側にズームカム環16が配置され、ズームカム環16の内側に固定筒17が配置され、固定筒17の内側にフォーカスカム環25が配置され、フォーカスカム環25の内側に3群移動枠13が配置されている。そして、鏡筒環31の光軸方向の後方において、フォーカスカム環25の外側に第3カム筒の一具体例を示す4群カム環26が配置され、4群カム環26の外側に遮光筒27が配置され、遮光筒27の外側にフォーカス作動環28が配置されている。また、鏡筒環31の外側に1群案内環21が配置され、1群案内環21の外側に距離環24が配置され、距離環4の外側にズーム操作環22と外装カバー23が配置されている。
1群カム環15は、図2及び図4に示すように、肉厚の薄い筒体からなり、その肉部を貫通して表裏両面に開口された3つの軸方向溝36と3つの周方向溝37と3つのズーム用カム溝38が設けられている。図6に示すように、3つの軸方向溝36は、所定の間隔をあけて互いに平行となるよう筒軸方向に延在されている。更に、3つの周方向溝37は、1群カム環15の筒軸方向の一側において、所定の間隔をあけて周方向に延在されている。また、3つのズーム用カム溝38は、隣り合う軸方向溝36,36間において、一方の軸方向溝36の一端から他方の軸方向溝36の他端に向けて斜め方向へ直線的に延在されている。
ズームカム環16は、図2及び図5に示すように、肉厚の薄い筒体からなり、その肉部を貫通して表裏両面に開口された3つの直進案内長溝41と3つの回転案内長溝42が設けられている。図7に示すように、3つの直進案内長溝41は、所定の間隔をあけて互いに平行となるように配置されて筒軸方向に延在されている。また、3つの回転案内長溝42は、隣り合う直進案内長溝41,41間において、一方の直進案内長溝41の一端近傍から他方の直進案内長溝41の他端に向けて斜め方向へ緩いS字曲線を描くように延在されている。そして、直進案内長溝41及び回転案内長溝42の各溝において、一方の端部の穴径を少し大きく形成することにより、カムピン等の挿入が容易に行えるようにしている。
更に、ズームカム環16には、筒軸方向の一端において半径方向外側へ張り出すように形成された外フランジ部16aと、筒軸方向の他端において半径方向内側へ張り出すように形成された内フランジ部16bとが設けられている。そして、ズームカム環16の外フランジ部16aの2箇所には、半径方向外側へ突出するズーム連動ピン43がそれぞれ設けられている。2つのズーム連動ピン43,43は、周方向へ所定の角度間隔をあけて(この実施例では120度)配置されている。また、ズームカム環16の内フランジ部16b側には、3つの連結カムピン44が半径方向外側へ突出するように設けられている。3つの連結カムピン44,44は、周方向へ等角度間隔に配置されている。そして、3つの連結カムピン44,44は、1群カム環15の3つのズーム用カム溝38,38にそれぞれ摺動可能に係合されている。
固定筒17は、図2及び図8に示すように、肉厚の薄い筒体からなり、その肉部を貫通して表裏両面に開口された3つの直進案内溝40及び3つのカム溝45と、その肉部の内側にのみ開口された1つのリード溝46と、内側に突出するように形成された3つの嵌合凸部47が設けられている。図10に示すように、3つの直進案内溝40は、所定の間隔をあけて互いに平行となるように配置されて筒軸方向に延在されている。また、3つのカム溝45は、隣り合う直進案内溝40,40間において、一方の直進案内溝40の中途部から他方の直進案内溝40の他端に向けて円弧状の曲線を描くように延在されている。
この固定筒17の各カム溝45の凹側に、それぞれ嵌合凸部47が配置されている。各嵌合凸部47は、直進案内溝40に対して所定角度(この実施例では45度)で傾斜されて螺旋状に中途部まで延在された突条部として形成されている。この嵌合凸部47の内面は、固定筒17の筒軸心線と略平行をなすように形成されている。リード溝46は、1つの嵌合凸部47と対向するように、固定筒17の嵌合凸部47と反対側に開口され、直進案内溝40に対して所定角度(この実施例では45度)で傾斜されて螺旋状に中途部まで延在された長溝として形成されている。
固定筒17のリード溝46は、4群カム環26をガイドするもので、後述する4群カム環26の係合突起26aが摺動可能に係合される。このリード溝46の傾斜角度等を変えることにより、4群カム環26の回転数を調整することができる。
図11A〜11Dは、リード溝46の傾斜角度等を変化させた状態を示すものである。図11Aは、リード溝46の傾斜角度αを、図10等に示したノーマル状態としたときのもので、このときのリード溝46の傾斜角度αを基準傾斜角度(この実施例では45度)αaとする。図11Bは、リード溝46の傾斜角度αを、ノーマル状態よりも急な傾きの傾斜角度αbとしたものであり、この場合には4群カム環26の回転量を小さくすることができる。図11Cは、リード溝46の傾斜角度αを、ノーマル状態よりも緩い傾きの傾斜角度αcとしたものであり、この場合には4群カム環26の回転量を大きくすることができる。また、図11Dは、リード溝46の傾斜を、略S字状をなすカム曲線としたもので、この場合には4群カム環26の回転量を1行程内において増減変化させることができる。
更に、固定筒17のリード溝46が開口する側の端部には、半径方向外側に突出する3個の連結アーム48が設けられている。3個の連結アーム48は、周方向へ所定の角度間隔をあけて等間隔に配置されている。固定筒17は、バヨネットによってズームカム環16に回転可能に連結されており、ズーム操作環22を回転することにより、ズームカム環16が回転するようになっている。
4群カム環26は、図9に示すように、肉厚の薄い筒体からなり、その肉部を貫通して表裏両面に開口された2つの4群カム溝51と、その肉部の内側にのみ開口された略L字状をなす2つの4群補助カム溝52と、上述した係合突起26aとを有している。図12に示すように、2つの4群カム溝51,51は、周方向に所定の間隔をあけて配置されており、筒軸方向の一方に凹となるよう周方向へ円弧状に延在されている。また、2つの4群補助カム溝52,52は、隣り合う4群カム溝51,51間に配置されていて、筒軸方向に延在されて一端に開口された軸方向溝部52aと、この軸方向溝部52aの内端部から周方向に連続された周方向溝部52bと、この周方向溝部52bの先部において軸方向へ湾曲された湾曲溝部52cとを有している。
4群カム環26の2つの4群カム溝51,51には、2つの4群カムピン53,53がそれぞれ摺動可能に係合されている。2つの4群カムピン53,53は、180度回転変位した位置に配置されており、3群移動枠13の2つの4群用直進案内溝54,54を貫通している。この2つの4群カムピン53,53により、3群移動枠13を介して4群枠ユニット14が4群カム環26と連動可能に連結されている。
4群枠ユニット14は、図1及び図14に示すように、円筒状の筒体からなる4群移動枠61と、この4群移動枠61の内側に保持された4群玉枠62とを有している。4群玉枠62は、複数枚のレンズを保持可能な枠体からなり、この4群玉枠62に、5枚のレンズの組み合わせとして構成された第4レンズ群4が固定されている。更に、4群移動枠61の外周面において180度回転変位した位置に、2つの4群カムピン53,53が取り付けられている。
また、3群移動枠13は、図1及び図15に示すような構成を有している。即ち、3群移動枠13は、肉厚の薄い筒体からなり、2つの4群用直進案内溝54,54と2つの4群用補助カムピン55,55を有している。図13は、3群移動枠13の展開図である。2つの4群用直進案内溝54,54は、周方向に所定の間隔をあけて配置されていると共に筒軸方向へ平行に延在されており、各4群用直進案内溝54の近傍に4群用補助カムピン55がそれぞれ配置されている。
この3群移動枠13の筒軸方向の一側には、半径方向内側へ突出する内フランジ部13aが設けられている。この内フランジ部13aには、3群玉枠56が固定されている。3群玉枠56は、複数枚のレンズを保持可能な枠体からなり、この3群玉枠56に、2枚のレンズの組み合わせとして構成された第3レンズ群3が固定されている。この3群移動枠13の先端部に3群延長環57が着脱可能に装着されている。
更に、3群移動枠13の内フランジ部13a側の外周面に、3個の3群ピン58が周方向へ等間隔に配置されて設けられている。3群ピン58は、2つのローラ58a,58bと、この2つのローラ58a,58bを貫通して3群移動枠13に回転自在に支持する取付ねじ59とからなっている。2つのローラ58a,58bは層状に重ね合わされており、第1のローラ58aには固定筒17とズームカム環16が対向され、第2のローラ58bには1群カム環15と1群案内環21が対向される。そして、3つの3群ピン58の第2のローラ58bが、1群カム環15の3つの周方向溝37にそれぞれ摺動可能に係合されている。
図16Aは、ズームカム環16に固定筒17を嵌合させて組み合わせた状態を示すものである。ズームカム環16の内側に固定筒17が挿入されていて、ズームカム環16の外フランジ部16aに設けた2つのズーム連動ピン43,43の近傍に、固定筒17に設けた3つの連結アーム48,48のうちの2つが接近されている。また、図16Bは、ズームカム環16と固定筒17との組立体に、更に4群カム環26を嵌合させて組み合わせた状態を示すものである。固定筒17のリード溝46に4群カム環26の係合突起26aが摺動可能に係合されている。
図17は、ズームカム環16と固定筒17とズーム操作環22との間の連結状態を示す説明図である。ズーム操作環22は、図1及び図18A,Bに示すように、筒軸方向の中途部に段差を設けた筒体からなり、その小径側の外周面にズームゴムリング65が嵌合されている。ズームゴムリング65の外周面には滑り止めのためのローレットが設けられており、このズームゴムリング65を持って回すことによりズーム操作環22が回動操作される。また、ズーム操作環22の内周面には、ズームカム環16のズーム連動ピン43を係合保持するためのピン保持部66が設けられている。
ズーム操作環22の光軸方向OLの背面側には後部保持環67が設けられている。後部保持環67にはレンズマウント68が固定されており、このレンズマウント68を介してレンズ鏡筒10が、一眼レフカメラ等の撮像装置に着脱可能に装着される。ズーム操作環22の光軸方向OLの前面側には外装カバー23が配置されている。外装カバー23には、内部を覗き見るための距離目盛窓69が設けられている。この距離目盛窓69から内部の目盛を見ることにより、被写体までの距離を目で見て知ることができる。
図19は、1群案内環21の展開図である。1群案内環21は、肉厚の薄い筒体からなり、その肉部の外側にのみ開口された3つの軸方向案内溝71と、その肉部及び内側に突出するボス部を貫通する3つの嵌合穴72を有している。3つの軸方向案内溝71は、1群案内環21の外周面において、周方向へ等間隔に配置され、筒軸方向と平行に延在されている。更に、3つの軸方向案内溝71は、1群案内環21の筒軸方向の一端にのみ開口されており、その開口部と反対側に、同じく周方向へ等間隔に配置された3つの嵌合穴72が設けられている。3つの嵌合穴72には、3つの3群ピン58の第2のローラ58bがそれぞれ嵌合されている。
図20は、2群枠12の組立体を示す図である。この2群枠組立体74は、2群枠12とフォーカスカム環25と2群移動枠75とを有している。2群枠12は、複数枚のレンズを保持可能な枠体からなる2群玉枠76と、この2群玉枠76に保持された5枚のレンズの組み合わせとして構成された第2レンズ群2とからなっている。
フォーカスカム環25は、図21に示すような構成を有している。即ち、フォーカスカム環25は、肉厚の薄い筒体を有しており、筒軸方向の一端に、半径方向外側に突出する外フランジ部25aが設けられている。この外フランジ部25aは、2群枠12をフォーカスカム環25にねじ止めするためのものである。フォーカスカム環25の筒軸方向の他端には、背面側に延在されて筒軸方向と平行に突出するフォーカス連動レバー77が設けられている。フォーカス連動レバー77には、フォーカス作動環28が連結される。
更に、フォーカスカム環25には、図23A,Bに展開して示すように、3つのバリエータカム78と、3つのL字形状に形成された位置規制部79とが設けられている。フォーカスカム環25の筒軸方向の一端には、鋸歯状に切り欠かれた3つの切欠き部81が周方向へ等間隔に設けられている。切欠き部81は、筒軸方向と平行に延びる垂直部81aと、この垂直部81aの底部に連続して水平方向に延びる水平部81bと、水平部81bの他端に連続して端面側に斜めに延びる斜面部81cとを有している。
バリエータカム78の一端は、切欠き部81の垂直部81aに開口されていて、回転角度に応じて切欠き部81から離れる方向へ湾曲するように形成されている。このバリエータカム78は、1つが周方向の1/3を超える回転角度120度以上に設定されている。そのため、各バリエータカム78の先端は、隣り合う切欠き部81の垂直部81aより遠い位置まで延在(オーバーラップ)されている。図23A,Bにおいて、符号WIはワイド側無限位置、WNはワイド側近位置、TIはテレ側無限位置、TNはテレ側近位置をそれぞれ示している。
この3つのバリエータカム78の中間部に対応する位置に3つの位置規制部79がそれぞれ設けられている。位置規制部79は、バリエータカム78の斜面部81cに対向される水平部79aと、この水平部79aの切欠き部81の垂直部81a側に連続された垂直部79bと、この垂直部79bの切欠き部81から離れた側に連続された補強リブ部79cとを有している。位置規制部79の水平部79aは、筒軸方向と垂直をなす面上において周方向へ延在するように設けられている。この水平部79aは、フォーカスカム環25の筒軸方向において、バリエータカム78の先端部と略同じ位置に設定されている。位置規制部79の垂直部79bは、筒軸方向と平行をなす方向へ延在するように設けられている。これら水平部79aと垂直部79bが、位置規制部79の実質を構成しており、これらによって後述するようにフォーカスカム環25の脱落が防止されている。
位置規制部79の補強リブ部79cは、フォーカスカム環25を補強して変形を防止するために補強用として設けたものである。この補強リブ部79cは、水平部79aや垂直部79bのような受部材としての機能が無いため、フォーカスカム環25に強度や変形の点に問題が無い場合には、無くてもよいものである。
2群移動枠75は、図22に示すような構成を有している。即ち、2群移動枠75は、リング状をなす枠体によって形成されている。2群移動枠75には、3つの2群カムピン84と3つのフォーカスカムピン85が設けられている。3つの2群カムピン84は、周方向に等角度間隔をあけて半径方向外側へ突出するように取り付けられている。2群カムピン84は、固定筒17のカム溝45に回転自在且つ摺動可能に係合されるローラ84aと、このローラ84aを2群移動枠75に回転自在に支持する取付ねじ84bを有している。
図24は、2群移動枠75を展開して示すものである。3つのフォーカスカムピン85は、周方向に等角度間隔をあけて半径方向内側へ突出するように取り付けられている。フォーカスカムピン85の頭部はテーパ形状(きのこ形)をなしており、フォーカスカム環25の3つのバリエータカム78にそれぞれ摺動可能に係合される。
図25A,B及び図26は、フォーカスカム環25と2群移動枠75とフォーカス操作環28との組立状態を説明するもので、図25Aはワイド側無限位置、図25Bはワイド側近位置、図26はテレ側無限位置、をそれぞれ示している。フォーカス操作環28は、リング状の本体部を有し、その本体部の外周面の一部にギア部86と係合突起87が設けられている。ギア部86は、オートフォーカスの駆動力を伝動するものである。また、フォーカス操作環28の本体部の一方の端面には、筒軸方向に突出する摺動軸受88が設けられている。摺動軸受は、マニュアルフォーカスからの駆動力を伝動するものである。この摺動軸受には、フォーカスカム環25に設けたフォーカス連動レバー77が筒軸方向へ摺動可能に保持されている。
図27A,B,C及び図28A,Bは、2群枠組立体74に固定筒17を組み立てた状態を示す図である。2群移動枠75の2群カムピン84が、固定筒17のカム溝45に摺動可能に係合されている。図27及び図28Aは、2群移動枠75が引き込んだ状態を示し、図28Bは、2群移動枠75が飛び出した状態を示している。
図29A,Bは、固定保持環18を示している。この固定保持環18は筒状の部材からなり、これの外側にズーム操作環22が回動可能に嵌合されている。
図30は、フォーカス作動環28と距離環24とクラッチユニット91の組立状態を説明する図である。クラッチユニット91は、図1に示すように、1群案内環21の外側であって固定保持環18及び距離環24の前側に配置されている。このクラッチユニット91の前側にフォーカス操作環92が配置されている。フォーカス操作環92には、フォーカスゴムリング93が装着されている。このクラッチユニット91は、フォーカス操作環92等を回転させるもので、フォーカス操作環92を回転させると距離環24が回転するが、距離環24を回転させてもフォーカス操作環92を回転させない構成となっている。
また、フォーカス作動環28の係合突起87には、距離環24に設けた連結アーム95が移動可能に係合保持されている。更に、フォーカス作動環28には、フォーカスブラシ96が取り付けられている。このフォーカスブラシ96は、図示しないエンコーダと回転接触して電気信号を伝達するものである。図31は、ズームカム環16と3群移動枠13の組立状態を説明する図である。
このような構成を有するレンズ鏡筒10の動作を、次に説明する。まず、ズーム操作時において、ズーム操作環22を回転させた場合の動作について説明する。
ズーム操作環22が回転すると、ズーム連動ピン43を通してズームカム環16に回転力が伝達され、ズームカム環16が回転する。ズームカム環16が回転すると、固定筒17の直進案内溝40と、ズームカム環16の回転案内長溝42により、3群ピン58を介して3群移動枠13が回転せずに前進する。また、ズームカム環16の先端部に取り付けられた連結カムピン44(1群カム環15の直進案内溝40と係合)を通して、1群カム環15に回転力が伝達される。
このとき、3群ピン58は、1群カム環15の周方向溝37に挿入されているため、1群カム環15は3群移動枠13と同じ速度で回転しながら前進する。また、1群枠11は、その回転止め凸部34により、鏡筒環31の直進案内溝で回転が規制され、1群カムピン33が1群カム環15のカム溝38によって押し出される。これにより、前述した前進にプラスされて1群カム環15が大きく繰り出される。
4群カム環26は、その内径部に4群用補助カムピン55と係合する4群補助カム溝52が形成されているため、3群移動枠13が繰り出されると、4群カム環26も繰り出される。この4群カム環26が繰り出されると、その係合突起26aが固定筒17のリード溝46に係合されているため、4群カム環26は回転する。即ち、4群カム環26は、ズームカム環16及び、1群カム環15とは異なる速度で回転しながら、3群移動枠13と異なる速度で繰り出される。よって、リード溝46及び4群補助カム溝52を設けたことにより、4群カム環26の回転速度及び繰り出し速度を任意に設定することができるため、カム設計の自由度が非常に大きくなる。
4群枠ユニット14は、図14に示すように、4群カムピン53が、3群移動枠13に構成された4群用直進案内溝54を直進ガイドとし、4群カム環26に構成された4群カム溝51によって繰り出される。即ち、4群枠ユニット14は、4群カム環26に対して、4群カム溝51分だけ更に繰り出される。
また、2群移動枠75は、2群カムピン84がズームカム環16の直進案内長溝41から回転力を得て、固定筒17に構成されたカム溝45により、回転しながら繰り出される。フォーカスカム環25は、フォーカス連動レバー77が回転止めとなって回転しないが、2群移動枠75が回転して繰り出される。そのため、フォーカスカム環25は、2群移動枠75と共に繰り出され、さらに、バリエータカム78が2群カムピン84と接触している位置が変化するため、繰り出される。即ち、フォーカスカム環25は、カム溝45による2群移動枠75の移動量と、バリエータカム78による移動量とを合成した所定位置に配置される。
このように、ズーム操作をしたときの各部品の繰り出し量と回転速度をまとめると、次のようになる。
ズームカム環16‥‥‥繰り出し無し、回転速度はズーム操作環22と同速
3群移動枠13‥‥‥‥繰り出し速度は回転案内長溝42による。回転無し
1群カム環15‥‥‥‥繰り出しは3群移動枠13と同速、回転速度はズームカム環16と同速
1群枠11‥‥‥‥‥‥繰り出し速度はカム溝38と回転案内長溝42による。回転無 し
4群カム環26‥‥‥‥繰り出し速度は回転案内長溝42と4群補助カム溝52による。回転速度はリード溝46と自身の繰り出し速度による。
4群枠ユニット14‥‥繰り出し速度は回転案内長溝42と4群カム溝51と4群補助カム溝52による。回転無し
2群移動枠75‥‥‥‥繰り出し速度はカム溝45による。回転速度はズーム操作環22と同速
フォーカスカム環25‥繰り出し速度はカム溝45とバリエータカム78による。回転無し
次に、フォーカス操作時において、フォーカス操作環92を回転させた場合について説明する。
フォーカス操作環92が回転すると、クラッチユニット91を介して距離環24が回転し、距離環24が回転すると、連結アーム95で連結されたフォーカス作動環28が回転する。フォーカス作動環28が回転すると、フォーカス連動レバー77を介してフォーカスカム環25が回転する。フォーカスカム環25が回転すると、バリエータカム78の使用位置が変化し、フォーカスカム環25が光軸方向へ移動する。なお、この実施例においては、フォーカスカム環25にバリエータカム78を設け、2群移動枠75にカムピンを設けた例について説明したが、これとは逆に、フォーカスカム環25にカムピンを設け、2群移動枠75にバリエータカム78を設ける構成としてもよいことは勿論である。
次に、フォーカスカム環25の位置規制について説明する。
フォーカスカム環25は、図20、図25及び図26に示すように、3本のフォーカスカムピン85によって2群移動枠75に支持されている。この3本のフォーカスカムピン85は、主に、フォーカスカム環25のチルト成分(光軸と垂直をなす面に対して傾く方向の成分)を規制する役目を果たす。
仮に、ガタ成分が無い完全に理想的な形状を想定すると、フォーカスカムピン85はテーパピン(きのこ形状)になっているため、シフト成分(光軸と垂直をなす面に対して平行する方向の成分)も規制されるが、実際にはガタがあり、直進案内もフォーカス連動レバー77の1箇所だけであるため、シフト成分を規制する受け面が必要となる。このシフト成分を規制するのが、120度の間隔で3箇所に設けられたL字形状をなす受け面の一具体例を示す位置規制部79である。この位置規制部79は、固定筒17の内面に対向され、3つの嵌合凸部47と接触される。
次に、位置規制部79の形状について説明する。
この実施例では、フォーカス操作によるフォーカスレンズ群の繰り出し量を、ズーム位置に応じて補正するようなフォーカスカムを用いた構成のズームレンズに適用している。そのため、バリエータカム78の周方向の長さが110度以上に延在されており、非常に長い構成となっている。このバリエータカム78の構成の内訳は、例えば、ズーム回転角度が70度、フォーカス回転角度が40度で、更に組立時に必要とされる組立分の角度である。
そのため、図20及び図23A,Bに示すように、1のバリエータカム78のテレ側近(T NEAR)位置の端部と、これに隣り合うバリエータカム78のワイド側無限(W INF)位置の端部とが重なり合い、オーバーラップORを生じている。このような状態で受け面である位置規制部を作製しようとすると、フォーカスカム(バリエータカム78)との干渉を避けるためには、光軸方向に逃げるしか方法がない。
しかしながら、この種のレンズ鏡筒において、高倍率で、高い光学性能を維持するためには、第2レンズ群2の移動量を大きくする必要がある。そのため、図28Bに示すように、テレ側近(T NEAR)位置のときには、フォーカスカム環25が固定筒17に対して大きく繰り出すことから、現在の位置規制部79の水平部79aの位置を補強リブ部79cの水平位置まで変移させると、固定筒17の嵌合凸部47が外れて抜け出すことになる。
そこで、この実施例においては、テレ側近(T NEAR)位置のときにも、固定筒17の嵌合凸部47から位置規制部79が外れることがなく、しかも、フォーカスカム(バリエータカム)と干渉しない位置に位置規制部79の水平部79aを設けるようにした。そして、フォーカスカムであるバリエータカム78と干渉する部分の受け面は、水平部79aの一端から光軸方向へ垂直に曲げて垂直部79bを形成し、この垂直部79bで固定筒17を支持できるようにして、固定筒17に対してフォーカスカム環25を光軸方向へ大きく繰り出すことができるようにした。
図32〜図35は、ズーム位置及びフォーカス位置における位置規制部79の作用を説明する図である。これらの図は、固定筒17とフォーカスカム環25と2群移動枠75をそれぞれ展開して重ね合わせ、ワイド側無限(W INF)位置、ワイド側近(W NEAR)位置、テレ側無限(T INF)位置及びテレ側近(T NEAR)位置の各位置における相互の位置関係を示したものである。
図32に示すように、ワイド側無限(W INF)位置では、固定筒17の嵌合凸部47が位置規制部79の全体で接触し、その位置規制部79の全体で支持されているため、フォーカスカム環25が外れることがない。更に、図33に示すように、ワイド側近(W NEAR)位置では、固定筒17の嵌合凸部47が位置規制部79の全体で接触し、その位置規制部79の全体で支持されているため、フォーカスカム環25が外れることがない。
一方、図34に示すように、テレ側無限(T INF)位置では、固定筒17の嵌合凸部47が位置規制部79の垂直部79bで接触し、その垂直部79bで支持されているため、フォーカスカム環25が外れるのを防止することができる。また、図35に示すように、テレ側近(T NEAR)位置では、固定筒17の嵌合凸部47が位置規制部79の水平部79aで接触し、その水平部79aで支持されているため、フォーカスカム環25が外れることがない。
この図32〜図35から明らかなように、位置規制部79に垂直部79bが無い場合には、テレ側無限(T INF)位置において、フォーカスカム環25が固定筒17の嵌合凸部47から外れてしまい、フォーカスカム環25を支持できないことになる。また、フォーカスカム環25が固定筒17から外れないようにするために、位置規制部79の水平部79aを周方向に延長すると、バリエータカム78に干渉してカムの役目を果たすことができなくなる。これを避けるために、位置規制部79の水平部79aを光軸方向へ移すと、テレ側近(T NEAR)位置において、フォーカスカム環25が固定筒17の嵌合凸部47から外れてしまうことになる。
このような固定筒17に対するフォーカスカム環25の外れを防止し、すべての位置において固定筒17でフォーカスカム環25を支持できるようにするためには、位置規制部の受け面を曲げて設定するか、レンズ鏡筒全体を大きくするか、或いは、光学性能やスペックを節約し、フォーカス又は第2レンズ群2の移動量を減らす必要がある。これらの観点に基づいて本実施例が構成されており、この実施例に係る位置規制部79によれば、レンズ鏡筒の小型化、高性能化を実現することができる。なお、この実施例では、位置規制部79の必須要素部分をL字形状に構成したが、必ずしもL字形状とする必要はなく、例えば、フォーカスカム環25のデッドスペースを利用しつつ、フォーカスカム(バリエータカム)と干渉する部分は受け面を曲げて構成してもよいことは勿論である。
次に、前述したような構成を有するレンズ鏡筒が使用される撮像装置の実施の例について説明する。図36〜図39は、本発明の撮像装置の一具体例を示すデジタル一眼レフカメラを説明する図である。図36に示すように、デジタル一眼レフカメラ100は、カメラ本体部(カメラボディ)101を備えている。このカメラ本体部101に対して、交換式の撮影レンズユニットであるレンズ鏡筒10が着脱可能に構成されている。
カメラ本体部101は、レンズ鏡筒10が装着される円環状のマウント部MTを正面略中央に備えている。このマウント部MTの近傍には、レンズ鏡筒10を着脱するための着脱ボタン102が設けられている。また、カメラ本体部101は、その正面左上部にモード設定ダイヤル103を備えている。モード設定ダイヤル103を操作することにより、カメラの各種モード(各種撮影モード(人物撮影モード、風景撮影モード、およびフルオート撮影モード等)、撮影した画像を再生する再生モード、および外部機器との間でデータ交信を行う通信モード等を含む)の設定動作(切替動作)を行うことが可能である。
また、カメラ本体部101は、正面左端部に撮影者が把持するためのグリップ部104を備えている。グリップ部104の上面には露光開始を指示するためのレリーズボタン105が設けられている。グリップ部104の内部には電池収納室とカード収納室とが設けられている。電池収納室にはカメラの電源として、例えばリチウムイオン電池などの電池が収納されており、カード収納室には撮影画像の画像データを記録するためのメモリカード等の外部記憶装置が着脱可能に収納されるようになっている。
レリーズボタン105は、半押し状態(S1状態)と全押し状態(S2状態)の2つの状態を検出可能な2段階検出ボタンである。レリーズボタン105が半押しされS1状態になると、被写体に関する記録用静止画像(本撮影画像)を取得するための準備動作(例えば、AF制御動作等)が行われる。また、レリーズボタン105がさらに押し込まれてS2状態になると、本撮影画像の撮影動作{撮像素子を用いて被写体像(被写体の光像)に関する露光動作を行い、その露光動作によって得られた画像信号に所定の画像処理を施す一連の動作}が行われる。
図37において、カメラ本体部101の背面略中央上部には、ファインダ窓(接眼窓)110が設けられている。撮影者は、ファインダ窓110を覗くことによって、レンズ鏡筒10から導かれた被写体の光像を視認して構図決定を行うことができる。すなわち、光学ファインダを用いて構図決めを行うことが可能である。なお、この実施形態に係るデジタル一眼レフカメラ100においては、背面モニタ111に表示されるライブビュー画像を用いて構図決めを行うことも可能である。また、光学ファインダによる構図決め動作とライブビュー表示による構図決め動作との切換操作は、操作者が切換ダイヤル106を回転させることによって実現される。
カメラ本体部101の背面の略中央には、背面モニタ111が設けられている。背面モニタ111は、例えばカラー液晶ディスプレイ(LCD)として構成される。背面モニタ111は、撮影条件等を設定するためのメニュー画面を表示すること、及び再生モードにおいてメモリカードに記録された撮影画像を再生表示することなどが可能である。また、操作者が光学ファインダによる構図決めではなくライブビュー表示による構図決めを選択した場合には、背面モニタ111には、撮像素子によって取得された時系列の複数の画像(すなわち動画像)がライブビュー画像として表示される。
背面モニタ111の左上部には電源スイッチ(メインスイッチ)112が設けられている。電源スイッチ112は2点スライドスイッチからなり、接点を左方の「OFF」位置に設定すると、電源がオフになり、接点の右方の「ON」位置に設定すると、電源がオンになる。更に、背面モニタ111の右側には方向選択キー113が設けられている。この方向選択キー113は円形の操作ボタンを有し、この操作ボタンにおける上下左右の4方向の押圧操作と、右上、左上、右下及び左下の4方向の押圧操作とが、それぞれ検出されるようになっている。なお、方向選択キー113は、上記8方向の押圧操作とは別に、中央部のプッシュボタンの押圧操作も検出されるようになっている。背面モニタ111の左側には、メニュー画面の設定、画像の削除などを行うための複数のボタンからなる設定ボタン群83が設けられている。
図38は、に示すように、デジタル一眼レフカメラ100を縦方向に断面して示すものである。カメラ本体部101の内部には、CCDやCMOS等からなる撮像素子120と、主ミラー121と、サブミラー122と、ペンタミラー123と、焦点板124と、光学ユニット125等が収納されている。これにより、レンズ鏡筒10を通って入光される被写体の像が、主ミラー121とペンタミラー123と光学ユニット125を介してファインダ窓110へと導かれる。このように、主ミラー61とペンタミラー65と光学ユニット125とを含むファインダ光学系は、撮影光学系からの光束であって主ミラー121で反射された光束である観察用光束をファインダ窓110へと導くことが可能である。
また、主ミラー121を透過した光は、サブミラー122で反射されて下方に進路を変更し、AFモジュール126へと進入する。AFモジュール126及びフォーカス制御部等は、主ミラー121及びサブミラー122を介して進入してきた光を用いて、AF動作を実現する。
次に、図39を参照しながら、デジタル一眼レフカメラ100の機能の概要について説明する。図39は、デジタル一眼レフカメラ100の機能構成を示すブロック図である。デジタル一眼レフカメラ100は、操作部130、全体制御部140、フォーカス制御部141、ミラー制御部142、シャッタ制御部143、タイミング制御回路144、及びデジタル信号処理回路150等を備えている。操作部130は、レリーズボタン105を含む各種ボタン及びスイッチ等を備えて構成されている。操作部130に対するユーザーの入力操作に応答して、全体制御部140が各種動作を実現する。
全体制御部140は、マイクロコンピュータとして構成されており、主にCPU、メモリ、及びROM等を備えている。全体制御部140は、ROM内に格納されるプログラムを読み出し、そのプログラムをCPUで実行することによって、各種機能を実現する。例えば、全体制御部140は、プログラムの実行により機能的に実現される第1の露出制御部146及び第2の露出制御部147を有している。第1の露出制御部146は、ファインダ用の撮像素子180に関する露出制御を実行する。更に、第1の露出制御部146は、EVFモードにおいては、原則として、ファインダ用撮像素子180の画像信号に基づいて当該撮像素子180の露出制御を実行する。ただし、特定の条件が充足されるとき(換言すれば特定のタイミングが到来したとき)には、測光センサによる測光値に基づいて露出制御における露出制御値を求める。
第2の露出制御部147は、撮像素子120の露出制御を実行する。更に、第2の露出制御部147は、第1の露出制御部146によって露出制御が施されたファインダ用撮像素子180の画像信号に基づいて被写体に関する測光値(被写体輝度)を求め、当該被写体輝度に基づいて撮像素子120の露出制御を実行する。
また、全体制御部140は、AFモジュール126及びフォーカス制御部141等と協動して、フォーカスレンズの位置を制御する合焦制御動作を行う。全体制御部140は、AFモジュール126によって検出される被写体の合焦状態に応じて、フォーカス制御部141を用いてAF動作を実現する。なお、AFモジュール126は、ミラー機構160を介して進入してきた光を用いて、位相差方式等の合焦状態検出手法により被写体の合焦状態を検出することが可能である。
フォーカス制御部141は、全体制御部140から入力される信号に基づいて制御信号を生成しモータM1を駆動することによって、レンズ鏡筒10のレンズ群190に含まれるフォーカスレンズを移動する。また、フォーカスレンズの位置は、レンズ鏡筒10のレンズ位置検出部191によって検出され、フォーカスレンズの位置を示すデータが全体制御部140に送られる。このように、フォーカス制御部141及び全体制御部140等は、フォーカスレンズの光軸方向の動きを制御する。
ミラー制御部142は、ミラー機構160が光路から退避した状態(ミラーアップ状態)とミラー機構160が光路を遮断した状態(ミラーダウン状態)との状態切替を制御する。ミラー制御部142は、全体制御部140から入力される信号に基づいて制御信号を生成し、モータM2を駆動することによってミラーアップ状態とミラーダウン状態とを切り替える。シャッタ制御部143は、全体制御部140から入力される信号に基づいて制御信号を生成し、モータM3を駆動することによってシャッタ170の開閉を制御する。また、タイミング制御回路144は、撮像素子120等に対するタイミング制御を行う。
撮像素子(CCDセンサやCMOSセンサ等からなる)120は、光電変換作用により被写体の光像を電気的信号に変換して、本撮影画像に係る画像信号(記録用の画像信号)を生成する。この撮像素子120は、記録画像取得用の撮像素子であるとも表現される。更に、撮像素子120は、タイミング制御回路144から入力される駆動制御信号(蓄積開始信号及び蓄積終了信号)に応答して、受光面に結像された被写体像の露光(光電変換による電荷蓄積)を行い、当該被写体像に係る画像信号を生成する。また、撮像素子120は、タイミング制御回路144から入力される読出制御信号に応答して、当該画像信号を信号処理部151へ出力する。
また、タイミング制御回路144からのタイミング信号(同期信号)は、信号処理部151及びA/D(アナログ/デジタル)変換回路152にも入力される。撮像素子120で取得された画像信号は、信号処理部151において所定のアナログ信号処理が施され、当該アナログ信号処理後の画像信号はA/D変換回路152によってデジタル画像データ(画像データ)に変換される。この画像データは、デジタル信号処理回路150に入力される。
デジタル信号処理回路150は、A/D変換回路152から入力される画像データに対してデジタル信号処理を行い、撮像画像に係る画像データを生成する。デジタル信号処理回路150は、黒レベル補正回路153、ホワイトバランス(WB)回路154、γ補正回路155及び画像メモリ156を備えている。
黒レベル補正回路153は、A/D変換回路152が出力した画像データを構成する各画素データの黒レベルを基準の黒レベルに補正する。WB回路154は、画像のホワイトバランス調整を行う。γ補正回路155は、撮像画像の階調変換を行う。画像メモリ156は、生成された画像データを一時的に記憶するための、高速アクセス可能な画像メモリであり、複数フレーム分の画像データを記憶可能な容量を有する。
本撮影時には、画像メモリ156に一時記憶される画像データは、全体制御部140において適宜画像処理(圧縮処理等)が施された後、カードI/F132を介してメモリカード115に記憶される。また、画像メモリ156に一時記憶される画像データは、全体制御部140によって適宜VRAM131に転送され、画像データに基づく画像が背面モニタ111に表示される。これによって、撮影画像を確認するための確認表示(アフタービュー)、及び撮影済みの画像を再生する再生表示等が実現される。
なお、撮像素子180は、いわゆるライブビュー画像取得用(動画取得用)の撮像素子としての役割を果たす。撮像素子180も、撮像素子120と同様の構成を有している。ただし、撮像素子180は、ライブビュー用の画像信号(動画像)を生成するための解像度を有していればよく、通常、撮像素子120よりも少ない数の画素で構成される。この撮像素子180で取得された画像信号に対しても、撮像素子120で取得された画像信号と同様の信号処理が施される。即ち、撮像素子180で取得された画像信号は、信号処理部151で所定の処理が施され、A/D変換回路152でデジタルデータに変換された後、デジタル信号処理回路150で所定の画像処理が施され、画像メモリ156に格納される。
また、撮像素子180で取得され画像メモリ156に格納される時系列の画像データは、全体制御部140によって適宜VRAM131に順次に転送され、当該時系列の画像データに基づく複数の画像が背面モニタ111に順次に表示される。これによって、構図決めを行うための動画的態様の表示(ライブビュー表示)が実現される。
なお、特に、処理の高速化を図るためには、撮像素子120に関する画像処理と撮像素子180に関する画像処理とは並列的に処理されることが好ましい。そのため、ここでは、タイミング制御回路144、信号処理部151、A/D変換回路152、及びデジタル信号処理回路150等が、それぞれ、2系統の処理回路を有するものとし、両撮像素子120,180に関する画像処理が並列的に行われるものとする。ただし、これに限定されず、タイミング制御回路144、信号処理部151、A/D変換回路152、及びデジタル信号処理回路150等を、それぞれ、1系統のみ設けておき、撮像素子120に関する画像処理と撮像素子180に関する画像処理とを、この順序で或いは逆順に、順次に実行するようにしてもよい。
更に、デジタル一眼レフカメラ100は、通信用I/F133を有しており、当該インターフェイス133の接続先の機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)とデータ通信をすることが可能である。また、デジタル一眼レフカメラ100は、フラッシュ装置116、フラッシュ制御回路117、及びAF補助光発光部127を備えている。フラッシュ装置116は、被写体の輝度不足時等に利用される光源である。フラッシュの点灯の有無及び点灯時間等は、フラッシュ制御回路117及び全体制御部140等によって制御される。AF補助光発光部127は、AF用の補助光源である。AF補助光発光部127の点灯の有無および点灯時間等は、全体制御部140等によって制御される。
次に、このデジタル一眼レフカメラ100における撮影動作について説明する。
このデジタル一眼レフカメラ100においては、ファインダ光学系等で構成される光学ファインダ{光学ビューファインダ(OVF)とも称される}を用いて構図決め(フレーミング)を行うことが可能であると共に、背面モニタ111に表示されるライブビュー画像を用いて構図決めを行うことも可能である。なお、撮像素子180及び背面モニタ111を利用して実現されるファインダ機能は、被写体の光像を電子データに変換した後に可視化するものであることから電子ビューファインダ(EVF)とも称される。
操作者は、切換ダイヤル106を操作することによって、光学ビューファインダ(OVF)を用いて構図決めを行うか、操作者が電子ビューファインダ(EVF)を用いて構図決めを行うかを選択することができる。
図38に示すように、レンズ鏡筒10から撮像素子120に至る光路(撮影光路)上にはミラー機構160が設けられており、そのミラー機構160は、撮影光学系からの光を上方に向けて反射する主ミラー121(主反射面)を有している。この主ミラー121は、例えば、その一部または全部がハーフミラーとして構成され、撮影光学系からの光の一部を透過する。また、ミラー機構160は、主ミラー121を透過した光を下方に反射させるサブミラー122(副反射面)をも有している。サブミラー122で下方に反射された光は、AFモジュール126へと導かれて入射し、位相差方式のAF動作に利用される。
撮影モードにおいて、レリーズボタン105が全押し状態S2にされるまで、換言すれば構図決めの際には、ミラー機構160はミラーダウン状態となるように配置される。この際には、レンズ鏡筒10からの被写体像は、主ミラー121で上方に反射され、観察用光束としてペンタミラー123に入射する。ペンタミラー123は、複数のミラー(反射面)を有しており、被写体像の向きを調整する機能を有している。また、ペンタミラー123に入射した後の、観察用光束の進路は、上記の両方式(すなわちOVF方式及びEVF方式)のいずれを採用して構図決めを行うかに応じて異なっているが、操作者は、選択した所望の方式によって構図決めを行うことが可能である。
以上説明したが、本発明は、フォーカス操作によるフォーカスレンズ群の繰り出し量を、ズーム位置に応じて補正するフォーカスカムを用いたレンズ鏡筒に限定されるものではなく、通常のズームレンズに適用できることは勿論のこと、ズーム機能だけ、或いは、フォーカス機能だけに利用することができるものである。
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施例においては、撮像装置としてデジタル一眼レフカメラを適用した例について説明したが、デジタルビデオカメラ、フィルム式一眼レフカメラ、アナログビデオカメラ、監視カメラその他の撮像装置にも適用できるものである。更に、光学レンズとして4群レンズを用いた例について説明したが、3群レンズであってもよく、また、5群レンズ以上であってもよいことは勿論である。
1…第1レンズ群、 2…第2レンズ群、 3…第3レンズ群、 4…第4レンズ群、 10…レンズ鏡筒、 11…1群枠、 12…2群枠、 13…3群移動枠、 14…4群枠ユニット、 15…1群カム環(第2カム筒)、 16…ズームカム環(第1カム筒)、 17…固定環、 18…固定保持環、 21…1群案内環、 22…ズーム操作環、 23…外装カバー、 24…距離環、 25…フォーカスカム環、 26…4群カム環(第3カム筒)、 28…フォーカス作動環、 31…鏡筒環、 32…1群玉枠、 33…1群ピン、 34…回転止め凸部、 36…軸方向溝、 37…周方向溝、 38…カム溝、 40…直進案内溝、 41…直進案内長溝、 42…回転案内長溝、 43…ズーム連動ピン、 44…連結カムピン、 45…カム溝、 46…リード溝、 47…嵌合凸部、 48…連結アーム、 51…4群カム溝、 52…4群補助カム溝、 53…4群カムピン、 54…4群用直進案内溝、 55…4群用補助カムピン、 56…3群玉枠、 58…3群ピン、 61…4群移動枠、 62…4群玉枠、 74…2群枠組立体、 75…2群移動枠、 76…2群玉枠、 77…フォーカス連動レバー、 78…バリエータカム、 79…位置規制部、 79a…水平部、 79b…垂直部、 84…2群カムピン、 85…フォーカスカムピン、 89…連結アーム、 91…クラッチユニット、 92…フォーカス操作環、 95…連結アーム、 100…デジタル一眼レフカメラ(撮像装置)、 101…カメラ本体部