JP2009051256A - 溝の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エアバッグを覆う部材の裏面に均一な深さ、幅の溝を形成する。
【解決手段】エアバッグを覆う部材の裏面に溝22を形成する方法であって、誘導加熱装置を用いて、刃26を加熱させて、前記部材の裏面に刃26を所定深さ押し当てて溝22を形成することを特徴とする、溝の形成方法。より具体的には、交流電流を通電させた誘導加熱用のコイル28に向かって刃26を接近させる工程と、刃26を前記部材の裏面に押し当てる工程と、コイル28への通電を停止した後に、刃26を前記部材の裏面から離間させる工程と、を有することを特徴とする溝22の形成方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、エアバッグを覆う部材の裏面に溝を形成する方法に関する。
近年、自動車の助手席にもエアバッグ装置が設けられるようになった。このエアバッグ装置は、エアバッグと当該エアバッグが収納されるエアバッグケースとからなり、助手席側のインストルメントパネルの裏側に取り付けられる。エアバッグ装置が設けられたインストルメントパネルには、エアバッグを車室内に膨出させるための開口部が設けられており、この開口部は平時にはエアバッグリッドによって覆われている。そして、一旦衝突などによって車両が大きな衝撃を受けた時には、前記エアバッグケース内に収納されているエアバッグが作動して膨張し、このエアバッグリッドを内側から押し広げて開口させる。
最近では、エアバッグリッドはインストルメントパネルと一体となってインストルメントパネルの表面からはインビジブルな(目視不能な)外観のものが製造されるようになってきている。このインストルメントパネルと一体となっているインビジブルエアバッグリッドは、インストルメントパネルの裏面に表面に達しない程度の深さの溝(ティアライン)を形成したものである。つまり、当該溝によって囲まれた領域が、インストルメントパネルと一体となったインビジブルエアバッグリッドとなっている。
このようなエアバッグリッドの製造方法として、特許文献1に記載された方法が知られている。この方法は、インストルメントパネルの裏面に熱刃を押し当てることによって、インストルメントの裏面に対して表面に達しない程度の深さの溝を形成するというものである。
また、従来、インストルメントパネルの裏面にレーザーを照射することによって、インストルメントパネルの裏面に溝を形成する方法も知られている。
特開2004−82865公報
従来の方法には、つぎのような問題がある。
熱刃を用いた場合には、刃の根元に取り付けたヒータ等によって刃先を加熱しているために、刃先に均一に熱が行き渡らない場合がある。この場合、刃先の温度にバラツキが発生し、溝の深さ、幅が安定しないという問題がある。また、一旦加熱した刃の温度がなかなか下がらないために、刃をインストルメントパネルの裏面に押し当ててから引き上げたときに、加熱された刃によって溶融された樹脂の一部が刃によって引き上げられてしまい、均一でかつ精密な寸法を有する溝を形成することができないという問題がある。
レーザー光を用いて溝を形成する場合には、レーザー光の幅が1mm以上もあるために、溝の幅が広くなってしまう。溝の幅が広くなった場合、インストルメントパネルを表面から見た場合に、その溝が透けて見えてしまうために、もはやインビジブルなエアバッグリッドとはいえなくなってしまうという問題がある。
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、エアバッグを覆うインストルメントパネルなどの部材の裏面に均一な深さ、幅の溝を形成することを目的とする。
課題を解決するための手段は、以下の発明である。
第1発明は、エアバッグを覆う部材の裏面に溝を形成する方法であって、誘導加熱装置を用いて、刃を加熱させて、前記部材の裏面に前記刃を所定深さ押し当てて前記溝を形成することを特徴とする、溝の形成方法である。
第1発明によれば、誘導加熱装置を用いて刃を加熱させることが可能である。したがって、エアバッグを覆う部材の裏面に均一な深さ、幅の溝を形成することが可能である。
また、誘導加熱装置を用いて、刃先のみを加熱することが可能である。したがって、刃先を短い時間で加熱・冷却することが可能であり、エアバッグを覆う部材の裏面に均一でかつ精密な寸法を有する溝を形成することが可能である。
第2発明は、上記第1発明の溝の形成方法であって、誘導加熱用のコイルを備えた作業台上に前記部材をセットする工程と、前記コイルに交流電流を通電させて前記コイルに向かって前記刃を接近させる工程と、前記刃を前記部材の裏面に押し当てて前記部材の裏面に溝を形成する工程と、前記コイルへの通電を停止した後に、前記刃を前記部材の裏面から離間させる工程と、を有することを特徴とする、溝の形成方法である。
第2発明によれば、誘導加熱用のコイルへの通電を停止した後に刃を部材の裏面から離間させることによって、エアバッグを覆う部材の裏面に均一な深さ、幅を有する溝を形成することが可能である。
第3発明は、上記第1発明または第2発明の溝の形成方法であって、前記部材は、車両用内装材の表皮材であることを特徴とする、溝の形成方法である。
第3発明によれば、エアバッグを覆う車両用内装材の表皮材に均一な深さ、幅を有する溝を形成することが可能である。
第4発明は、上記第1発明から第3発明のいずれかの溝の形成方法であって、前記表皮材は本革であることを特徴とする、溝の形成方法である。
第4発明によれば、本革の裏面に均一な深さ、幅を有する溝を形成することが可能である。
第5発明は、上記第3発明の溝の形成方法であって、前記車両用内装材は、インストルメントパネルであることを特徴とする、溝の形成方法である。
第5発明によれば、エアバッグを覆うインストルメントパネルの裏面に均一な深さ、幅を有する溝を形成することが可能である。
第6発明は、第1発明から第5発明のうちいずれかの溝の形成方法であって、前記刃が薄刃であることを特徴とする、溝の形成方法である。
第6発明によれば、エアバッグを覆う部材の裏面により細くて表面側からは見えにくい溝を形成することが可能である。
本発明によれば、エアバッグを覆うインストルメントパネルなどの部材の裏面に均一な深さ、幅の溝を形成することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、インストルメントパネル10の斜視図である。図2は、図1に示すインストルメントパネル10のA−A線断面図である。
図1、図2に示すように、車両用内装材の一種であるインストルメントパネル10は、表皮材12、クッション材14、及び芯材16が、表面側から裏面側に順に積層された構造となっている。なお、本実施形態では、インストルメントパネル10の表皮材12が、本発明の「エアバッグを覆う部材」に対応している。
表皮材12としては、本革、合成皮革、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(TPO樹脂)、軟質塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、熱可塑性ポリウレタン(TPU樹脂)等を使用することができる。
クッション材14としては、発泡ポリウレタン、発泡ポリオレフィン等の発泡樹脂を使用することができる。
芯材16としては、ポリプロピレン(PP)樹脂単独、あるいは、PP樹脂をタルク、マイカ又はガラス等で補強したフィラー入りPP樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド(PPO)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等を使用することができる。
図1、図2に示すように、助手席側のインストルメントパネル10の裏側には、エアバッグ装置18が設けられている。エアバッグ装置18は、車両の衝突時にインフレータが作動することで瞬時に膨張するエアバッグと、当該エアバッグを収納するエアバッグケースとによって構成されている。エアバッグ装置18は、従来公知のエアバッグ装置と同様のものを使用することができる。
助手席側のインストルメントパネル10の裏面には、略逆U字型の溝22(ティアライン)が形成されている。溝22は、インストルメントパネル10の裏面に対して表面に達しない程度の深さに形成されている。
溝22によって囲まれた領域は、インストルメントパネル10と一体のエアバッグリッド20となっている。エアバッグリッド20は、インストルメントパネル10の表面からはほとんど目視不能(インビジブル)になっている。
車両の衝突時にエアバッグ装置18が作動した場合には、エアバッグの膨張圧によってインストルメントパネル10が溝22に沿って破断する。これにより、エアバッグリッド20が車室内側に押し出されて開口するとともに、その開口部からはエアバッグが車室内に向けて膨出する。
図3は、インストルメントパネル10の裏面に溝22を形成するための溝形成装置40の構成例を示している。
図3に示すように、溝形成装置40は、インストルメントパネル10の表皮材12を載置するための作業台24と、ステンレス等の金属からなる刃26と、刃26を加熱するための誘導加熱用のコイル28と、コイル28に交流電流を通電させるための電源30と、によって構成されている。
図4は、刃26の斜視図である。図4に示すように、本実施形態の溝形成装置40に用いられている刃26は直線状の形状を有しており、刃先の厚みが0.1mm以下の薄刃が用いられている。
溝形成装置40によって表皮材12の裏面に溝22を形成する方法について以下に説明する。
まず、作業台24の上にその裏面を上方に向けた状態でインストルメントパネル10の表皮材12を載置する。
つぎに、コイル28に交流電流(例えば20kHz、2kWの交流電流)を通電させて磁力線を発生させるとともに、コイル28に向けて刃26を接近させる。これにより、刃26の表面付近に渦電流が発生するので、ジュール熱が発生して刃26が加熱される。なお、本実施形態において、コイル28が、本発明の「誘導加熱装置」に対応している。
そして、加熱した刃26を表皮材12の裏面に押し当てることによって、表皮材12の裏面に溝22を形成することができる。
加熱した刃26を表皮材12の裏面に押し当てた後に、コイル28への交流電流の通電を停止する。これにより、刃26の刃先の熱が根元の部分に伝達したり、周囲の雰囲気中に放散したりするので、刃26の刃先の温度が急速に低下する。これにより、刃先が当接している溝22の周囲の溶融樹脂が冷却されて固化するので、溝22を予定した通りの寸法に精密に形成することができる。
その後、表皮材12の裏面から刃26を離間させる。これにより、表皮材12の裏面には、表面に達しない程度の深さの溝22が形成される。
本実施形態に係る溝22の形成方法によれば、以下の効果が得られる。
誘導加熱装置を用いて刃26の刃先を均一に加熱することが可能であるために、予め溝、切り込みなどを形成した芯材16、クッション材14を組み合わせたものに表皮材12を添設したインストルメントパネル10の裏面に均一な深さ、幅を有する溝22を形成することが可能である。
また、誘導加熱装置を用いて刃26の刃先のみを加熱することが可能であるために、刃26の刃先を短い時間で加熱・冷却することが可能である。
また、刃26の刃先のみを短い時間で加熱・冷却することが可能であるために、表皮材12の裏面に精密な深さ・幅寸法を有する溝22を形成することが可能である。
また、厚みが例えば0.1mm以下の刃26(薄刃)を用いることによって、表皮材12の裏面に極めて細い幅の溝22を形成することができる。この場合、インストルメントパネル10の表面側からはほとんど目視することのできない(インビジブルな)エアバッグリッド20を実現することが可能である。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、溝22が略逆U字型に形成される例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。本発明は、例えば図5に示すように、略H型の溝22aを形成する場合であっても適用可能である。この場合であっても、エアバッグの膨張圧によってインストルメントパネル10を溝22aに沿って破断させることが可能であり、車両の衝突時にエアバッグを車室内に膨出させることが可能である。
(2)上記実施形態では、刃26の形状が直線状である例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。本発明は、例えば図6に示すように、点線状の刃26aを用いてもよい。このような点線状の刃26aを用いた場合には、表皮材12の裏面に点線状の溝22bを形成することができる。
(3)上記実施形態では、刃26の材質がステンレスである例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。刃26の材質は電磁誘導により加熱することができる導電材料であればよく、例えばチタンやバネ鋼などのその他の導電材料を用いてもよい。
(4)上記実施形態では、エアバッグを覆う部材が車両用内装材の一種であるインストルメントパネル10の表皮材12である例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。車両用内装材は、インストルメントパネル10以外にも、例えば、ステアリングパッド、ドアトリム、ピラーガーニッシュ等であってもよい。
(5)上記実施形態では、エアバッグ装置18が助手席側に設けられている例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。本発明は、ステアリングパッドの裏側に設置されているエアバッグや、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等に対しても適用することが可能である。
(6)上記実施形態では、表皮材12のみに刃26を押し当てて溝22を形成する例を示したが、表皮材12とクッション材14を重合させたもの、または表皮材12、クッション材14、芯材16を重合させたものに溝22を形成してもよい。
インストルメントパネルの斜視図である。 図1に示すインストルメントパネルのA−A線断面図である。 インストルメントパネルの表皮材の裏面に溝を形成するための溝形成装置の構成例を示している。 直線状の刃の斜視図である。 裏面に略H字型のが形成されているインストルメントパネルの斜視図である。 点線状の刃の斜視図である。
符号の説明
10…インストルメントパネル
12…表皮材(エアバッグを覆う部材)
18…エアバッグ装置
20…エアバッグリッド
22、22a、22b…溝
26、26a…刃
28…コイル(誘導加熱装置)
30…電源
40…溝形成装置

Claims (6)

  1. エアバッグを覆う部材の裏面に溝を形成する方法であって、
    誘導加熱装置を用いて、刃を加熱させて、前記部材の裏面に前記刃を所定深さ押し当てて前記溝を形成することを特徴とする、溝の形成方法。
  2. 請求項1に記載の溝の形成方法であって、
    誘導加熱用のコイルを備えた作業台上に前記部材をセットする工程と、
    前記コイルに交流電流を通電させて前記コイルに向かって前記刃を接近させる工程と、
    前記刃を前記部材の裏面に押し当てて前記部材の裏面に溝を形成する工程と、
    前記コイルへの通電を停止した後に、前記刃を前記部材の裏面から離間させる工程と、
    を有することを特徴とする、溝の形成方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の溝の形成方法であって、
    前記部材は、車両用内装材の表皮材であることを特徴とする、溝の形成方法。
  4. 請求項3に記載の溝の形成方法であって、
    前記表皮材は本革であることを特徴とする、溝の形成方法。
  5. 請求項3に記載の溝の形成方法であって、
    前記車両用内装材は、インストルメントパネルであることを特徴とする、溝の形成方法。
  6. 請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の溝の形成方法であって、
    前記刃は薄刃であることを特徴とする、溝の形成方法。
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