JP2009050988A - 円筒状基体の製造方法 - Google Patents

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【課題】精度の高い円筒状基体を低コストで生産性良く製造する。
【解決手段】円筒状金属素管の端面及び外面に切削加工を施して円筒状基体を得る。具体的には、円筒状金属素管に保持手段を圧接させて該素管を保持する工程と、保持手段によって保持された円筒状金属素管の端面を切削する複数回の端面切削加工工程と、保持手段によって保持された円筒状金属素管の外面を切削する外面切削加工工程とを有する。そして、複数回の端面切削加工工程及び外面切削加工工程が、保持手段を取り外すことなく施され、かつ、複数回の端面切削加工工程の第一回目が、円筒状金属素管に対して最初に施される切削加工である。
【選択図】図1

Description

本発明は、円筒状基体の製造方法に関するものである。特に、電子写真感光体や現像剤担持体等に用いられる高精度な円筒状基体の製造方法に関するものである。
複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真方式を採用した画像形成装置、いわゆる電子写真装置は、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有するものが一般的である。ここで、帯電手段は、電子写真感光体を帯電させるための手段であり、露光手段は、帯電された電子写真感光体に静電潜像を形成するための手段である。また、現像手段は、電子写真感光体に形成された静電潜像を現像剤担持体に担持された現像剤により現像して現像像を形成するための手段であり、転写手段は、電子写真感光体に形成された現像像を転写材(紙等)に転写するための手段である。
上記構成を有する電子写真装置において、高画質の画像を得るためには、電子写真感光体と現像剤担持体(現像ローラーや現像スリーブ等)との間の距離が一定に保たれていることが必要である。そして、電子写真感光体と現像剤担持体との間の距離を一定に保つためには、電子写真感光体及び現像剤担持体の精度が高くなければならない。
電子写真感光体や現像剤担持体等には、一般的に円筒状基体が使用される。円筒状基体の端部には、軸又は軸受部を有する端部係合部材(ギヤやフランジ等)が係合され、円筒状基体は、回転可能に保持される。従って、電子写真感光体や現像剤担持体等に用いられる円筒状基体には、高い外径精度(外径寸法、真円度、円筒度)が求められる。また、回転時の全振れに関わる精度(端部係合部材が係合する端部内側の両端同軸度、端部内径部と外径部の同軸度、外径と端面との直角度)等が高精度であることも求められる。
円筒状基体の精度を高める方法の一つとして、押出、引抜加工を経て所定長に切断された円筒状金属素管に、旋盤での切削加工を施す方法が知られている。ここでの切削加工には、円筒状金属素管の両端部に、外周面に対して略直角の端部加工面を形成する端面切削加工、円筒状金属素管の外径を所定の精度、面粗さに仕上げる外径切削加工等が含まれる。
また、円筒状金属素管の両端部の内周面及び外周面を切削することによって支持体を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、円筒状金属素管に外周面に対して粗切削加工を施した後に、両端内周面にインロー加工を施し、さらに外周面に対して切削加工を施すことで加工精度を高める方法も提案されている(特許文献2参照)。
また、円筒状金属素管の外周面にセンターレス研磨加工を施した後、両端内面に外周面を加工基準としたインロー加工を施し、さらにインロー加工面を加工基準として、外周面に切削加工を施すことで加工精度を高める方法も提案されている(特許文献3参照)。
特開平2−110570公報 特許第3583272号明細書 特開2003−162078公報
従来、上記のような方法によって、円筒状基体の高精度化が図られてきた。しかし、上述したような従来技術では、高精度化と加工コスト低減との両立が十分に図れない。すなわち、従来技術では、高精度化のために、非常に複雑な加工工程が必要であり、かつ各加工工程ごとに加工用の装置が必要となり、加工コストが上昇してしまう。
また、加工工程を簡素化して円筒状基体を製造することも可能であるが、精度の低い円筒状金属素管は加工装置でしっかりと保持できず、円筒状金属素管の加工中にガタツキが発生する。そこで、ガタツキ抑制のために円筒状金属素管を保持する力を強めると、円筒状金属素管が変形する等の問題が発生する。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、高精度な円筒状基体を低コストで生産性良く製造することができる円筒状基体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の円筒状基体の製造方法は、円筒状金属素管の端面及び外面に切削加工を施して円筒状基体を得るものである。具体的には、円筒状金属素管に保持手段を圧接させて該素管を保持する工程と、保持手段によって保持された円筒状金属素管の端面を切削する複数回の端面切削加工工程と、保持手段によって保持された円筒状金属素管の外面を切削する外面切削加工工程とを有する。そして、前記複数回の端面切削加工工程及び前記外面切削加工工程が、前記保持手段を取り外すことなく施され、かつ、前記複数回の端面切削加工工程の第一回目が、前記円筒状金属素管に対して最初に施される切削加工である。
本発明によれば、円筒状金属素管が安定して保持・固定された状態で切削加工を実施することができるので、精度の高い円筒状基体を低コストで生産性良く製造することができる。
以下、本発明の円筒状基体の製造方法の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態に係る円筒状基体の製造方法は、円筒状金属素管に複数回の切削加工を施して円筒状基体を得るものであり、図1(a)〜(e)は、主要工程における円筒状金属素管101の形状変化を示す模式的断面図である。具体的には、図1(a)は、加工前の円筒状金属素管101の形状を示している。また、図1(b)は、第1の端面切削加工工程、図1(c)は第2の端面切削加工工程、図1(d)はインロー加工工程、図1(e)は外面切削加工工程における円筒状金属素管101の形状変化をそれぞれ示している。尚、各図において斜線で示された部分が各加工工程において切削(除去)される部分である。
円筒状金属素管101の材質は、使用目的に応じた材質であればよく、特定の材質に限定されない。例えば、電気伝導率の観点からは、銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレス等が好適な材質として挙げられる。さらに、加工性や製造コストを含めて考慮すると、円筒状金属素管101の材質としては、アルミニウムが最適であり、例えばAl−Mg系合金やAl−Mn系合金を用いることが望ましい。
円筒状金属素管101を製造する具体的方法は、精度やコストなどを考慮されて決定されるが、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いる場合、押出、引抜、矯正等の工程を経て製造された管材を所定の長さに切断する方法が一般的である。このようにして製造された円筒状金属素管101の内部には、押出、引抜、矯正等の工程で多少の残留応力が生じている。円筒状基体の製造時の切削加工や、例えば電子写真感光体製造時の加熱等に残留応力が開放されると、完成品である円筒状基体に変形が生じる。一般的に、残留応力の除去には、所定の長さに切断された管材(円筒状金属素管101)に対して加熱処理(焼鈍)が行われ、通常300〜430℃程度の温度で処理される。残留応力が大きい場合、焼鈍処理を行うと、円筒状金属素管101が大きく変形し、小さい場合は変形も小さい。従って、高精度の円筒状基体を製造するためには、残留応力が小さいもの、即ち、焼鈍処理前後で変形が小さく、かつ焼鈍処理後に所定の寸法精度をもった円筒状金属素管101を使用することが好ましい。
次に、上記円筒状金属素管101を出発部材とする円筒状基体の製造方法について具体的に説明する。尚、本発明の円筒状基体の製造方法では、複数の切削工程を1台の旋盤で行う。よって、複数の切削加工用刃物(バイト)が取り付け可能な刃物台(タレット)を有するとともに、円筒状金属素管101の両端面を同時切削可能とするためのタレットを複数有し、円筒状金属素管101を回転させながら切削加工を行うことができる旋盤を用いる。
まず、図1(a)に示す円筒状金属素管101を不図示の旋盤にセットする。ここで、円筒状金属素管101の外面及び両端内面を加工するためは、円筒状金属素管101をその内側から保持する必要がある。図2は、円筒状金属素管101をその内側から保持するための保持手段の一例としてのコレットチャック201の断面を示す模式図である。コレットチャック201は、支軸202、可動楔形部203、固定楔形部204、保持部205を有する。
コレットチャック201を円筒状金属素管101に挿入して旋盤にセットすると、旋盤の芯押しによって、コレットチャック201内のバネ(不図示)を介して可動楔形部203が固定楔形部204の方向へ押される。すると、可動楔形部203と固定楔形部204とによって挟まれた保持部205が円筒状金属素管101の径方向外側へ拡張し、円筒状金属素管101の内面に圧接する。以上によって、円筒状金属素管101がその内側から保持される。このとき、保持部205が円筒状金属素管101の内面に圧接する力が強すぎると、円筒状金属素管101を変形させてしまい、弱すぎると保持が不安定となるので、適度な力で圧接させる必要がある。
次に、旋盤にセットされた円筒状金属素管101に対して切削加工を開始するが、切削加工前の円筒状金属素管101(図1(a))の全長は、完成品である円筒状基体の全長よりも1〜5mm程度長い。すなわち、円筒状金属素管101は、1〜5mm程度の余長部106を備えている。尚、図1(a)(b)では、余長部106とそれ以外の部分との境界を鎖線で示してある。かかる余長部106は、端面切削加工の加工代の確保と、運搬時にある程度のキズ・打コン等があっても加工時に影響が出ないようにするためのものである。
まず、図1(a)に示す円筒状金属素管101に対して端面切削加工工程を実施する。端面切削加工工程は、図1(b)に示す第1の端面切削加工工程(粗切削加工)と、図1(c)に示す第2の端面切削加工工程(仕上げ切削加工)とに分けて実施する。そして、第1の端面切削加工工程では、円筒状金属素管101の余長部106の一部106aのみを切削する。従って、第1の端面切削加工工程は、円筒状基体の仕上がり寸法及び精度には影響が少ない工程である。
切削加工開始前、円筒状金属素管101はコレットチャック201により保持されていることは既述のとおりである。しかし、十分に安定した状態で保持・固定されているわけではなく、ある程度のガタツキを持って保持・固定されている。従って、円筒状金属素管101に切削加工を行うと、切削抵抗による負荷によって円筒状金属素管101がある程度動く。このある程度動くことで、図2に示すコレットチャック201の保持部205がさらに拡張し、保持部205と円筒状金属素管101との間のガタツキが除去され、円筒状金属素管101がより安定して保持・固定される。このようにしてガタツキが除去された後は、より高精度な切削加工が可能となる。したがって、切削加工を行う場合には、複数回に分けて行うことが有効である。本発明では、円筒状金属素管101に対する最初の切削加工工程によってこのガタツキ除去を行う。より具体的には、仕上がり寸法及び精度に影響が少ない第1の端面切削加工工程によってガタツキ除去を行う。
同様の効果は、円筒状金属素管101の端面切削加工工程で無くても、外面切削加工工程やインロー加工工程によっても得られる。しかし、コレットチャック201の保持部205からなるべく離れた位置に切削抵抗による負荷を与えた方がガタツキ除去の効果が大きい。例えば、保持部205が円筒状金属素管101の内面であって、かつ、母線方向中央に圧接されている場合には、円筒状金属素管101の端面が保持部205から最も離れた切削位置となる。よって、端面切削加工工程が、ガタツキ除去にとって最も有効である。また、端面切削加工工程は所要時間が短いので、短時間でガタツキを除去することもできるため、生産性が良い。以上より、端面切削加工工程を複数回に分けて実施し、その第一回目の工程によってガタツキを除去するのが最も有効である。
第1の端面切削加工工程について図3を参照しながらより詳しく説明する。図3は、円筒状金属素管101の端部断面、切削加工用バイト、切削加工部を模式的に示した拡大図である。尚、図示されている拡大部分は、図1(b)において丸で囲まれた部分である。
図3(a)に示すように、第1の端面切削加工工程では、旋盤にセットされた円筒状金属素管101を回転させつつ、端面切削加工用バイト301を円筒状金属素管101の母線方向に移動させる。これによって、円筒状金属素管101の端部(余長部106の一部106a)を切削する。このときの円筒状金属素管101を回転速度は、例えば2000rpmである。さらに、必要に応じて、端面切削加工用バイト301を斜め方向へ移動させ、図中に符号302で示す部分を切削して面取りを行う。
第1の端面切削加工工程を複数回に分けて実施すると、ガタツキ除去の効果がより大きくなる。例えば、第1の端面切削加工工程を2回に分けて実施する場合について図3(b)を参照して説明する。まず、端面切削加工用バイト301を円筒状金属素管101の母線方向に移動させ、余長部106の一部106aの径方向半分に相当する部分303を切削する。さらに、端面切削加工用バイト301を円筒状金属素管101の母線方向に移動させ、径方向残り半分に相当する部分304を切削する。尚、加工順を逆にして、部分304を切削してから部分303を切削してもよい。また、図3(c)に示すように、端面切削加工用バイト301を円筒状金属素管101の母線方向に移動させ、余長部106の一部106aの母線方向半分に相当する部分305を切削する。次いで、端面切削加工用バイト301を母線方向にさらに移動させ、残り半分に相当する部分306を切削することも可能である。
いずれにしても、第1の端面切削加工工程では、円筒状金属素管101の余長部106の一部106aを切削することによって円筒状金属素管101に切削抵抗による負荷を与え、ガタツキを除去する。
次に、第1の端面切削加工工程を経た円筒状金属素管101に対して、同一の旋盤を用いて、コレットチャック201で保持した状態で、旋盤から取り外すことなく、第2の端面切削加工工程を実施する。第2の端面切削加工工程は、所謂仕上げ加工の工程であり、余長部106の残部106bを切削し、円筒状金属素管101の長さを円筒状基体の長さに合わせる工程である。
第2の端面切削加工工程について図4を参照してより詳しく説明する。図4(a)に示すように、第1の端面切削加工工程と同様に、端面切削加工用バイト301を円筒状金属素管101の母線方向に移動させ、余長部106の残部106bを切削する。尚、第2の端面切削加工工程では、図4(b)に示すように、端面切削加工用バイト301を円筒状金属素管101の径方向外側から内側へ移動させて、残部106bを切削することも可能である。
次に、第2の端面切削加工工程を経た円筒状金属素管101に対し、同一の旋盤を用いて、コレットチャック201で保持した状態で、旋盤から取り外すことなく、インロー加工を施す。具体的には、図5に示すように、円筒状金属素管101を例えば2000rpmで回転させつつ、インロー加工用バイト401を円筒状金属素管101の母線方向に移動させて、円筒状金属素管101の端部内側108を切削する。もっとも、インロー加工が不要な場合は、図5に示す工程が省略される。
尚、端面切削加工、インロー加工など円筒状金属素管101の端部に加工を施す場合、両端部に対して同時に加工を施すことが望ましい。これは、円筒状金属素管101への切削抵抗を対称にすることで加工精度が向上すること、加工時間が短縮可能であること等の理由による。
次に、インロー加工工程を経た円筒状金属素管101に対し、同一の旋盤を用いて、コレットチャック201で保持した状態で、旋盤から取り外すことなく、外面切削加工工程を実施する。具体的には、図6に示すように、円筒状金属素管101を例えば2000rpmで回転させつつ、外面切削加工用バイト501を円筒状金属素管101の母線方向に移動させて、外面109を切削する。尚、必要に応じて、外面にさらなる仕上げ切削加工を施してもよい。また、仕上げ切削加工は別の旋盤を用いて行ってもよい。
ここで、円筒状金属素管101は、金属であるがゆえに、加工雰囲気温度による膨張、収縮があり、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金は膨張、収縮量が大きい。従って、高精度な円筒状基体を製造する場合、加工雰囲気温度の変化が無いことが理想である。そこで、切削加工中の雰囲気温度の変動を2℃以内、つまり基準温度±1℃に管理することが望ましい。
以上の様にして製造された円筒状基体の一使用例について説明する。ここでは、円筒状基体を基体とした電子写真感光体の製造方法について説明する。電子写真感光体は、円筒状基体の外面に感光体材料層が形成されてなり、CVD法等により形成したa−Si(アモルファスシリコン)感光体のような無機感光体や、電荷発生材料と電荷輸送材料とを組み合わせ、塗布形成した有機感光体等があげられる。ここでは、一例として、a−Si感光体の製造方法の概要について図7を参照して説明する。
a−Si感光体は、一般的に高周波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により製造される。図7に示す装置は、電子写真感光体の製造に使用する高周波プラズマCVD装置の一例である。
図示されている高周波プラズマCVD装置は、縦型の真空容器でカソード電極を兼ねた反応容器702を有し、この反応容器702内の周囲には容器の長手方向に延びる原料ガス導入管703が複数本配設されている。また、ガス導入管703の側面には、長手方向に沿って多数の細孔(不図示)が設けられている。さらに、反応容器702内の中心には、ヒータ704が設けられている。電子写真感光体の基体となる円筒状基体105は、基体ホルダ705に装着された状態で、ヒータ704の周囲に縦向きで設置される。尚、反応容器702の上部には蓋706が設けられており、この蓋706を開けて、円筒状基体105を上記のように設置する。
反応容器702の側面には、マッチングボックス707を介して高周波電源714が接続されている。また、反応容器702の下部には、原料ガス導入管703に接続された原料ガス供給管708が取り付けられ、この供給管708は、供給バルブ709を介して図示しないガス供給装置に接続されている。また、反応容器702の下部には排気管710が取り付けられ、この排気管710は排気バルブ711を介して図示しない排気装置(真空ポンプ)に接続されている。反応容器702の下部には、他に、円筒状基体105が装着された基体ホルダ705を回転させるモータ712、真空計713が取り付けられている。
上記の装置を用いた高周波プラズマCVD法によるa−Si感光体は次のように形成される。まず、反応容器702内に電子写真感光体の基体となる円筒状基体105が装着された基体ホルダ705をセットし、蓋706を閉じた後、図示しない排気装置により反応容器702内を所定の圧力まで排気する。以後、排気を続けながら、モータ712により円筒状基体105が装着された基体ホルダ705を回転させ、ヒータ704により円筒状基体105を内側から加熱して、円筒状基体105を所定の温度に制御する。円筒状基体105が所定の温度に維持されたら、所望の原料ガスをそれぞれの流量制御器(不図示)により調節しながら、原料ガス導入管703を通して反応容器702内に導入する。導入された原料ガスは反応容器702内を満たした後、排気管710を通って反応容器702外に排気される。
このようにして、原料ガスが満たされた反応容器702内が所定の圧力になって安定したことを真空計713により確認したら、高周波電源714(例えば13.56MHzのRF帯域)により、高周波を所望の投入電力量で反応容器702内に導入する。すると、反応容器702内にグロー放電が発生する。このグロー放電のエネルギによって、原料ガスが分解されてプラズマイオンが生成され、円筒状基体105の表面に珪素を主体としたa−Si堆積膜が形成される。この際、ガス種、ガス導入量、ガス導入比率、圧力、基体温度、投入電力、膜厚などのパラメータを調整することにより様々な特性のa−Si堆積膜を形成することができ、電子写真特性を制御することができる。
以上のようにして、円筒状基体105の表面にa−Si堆積膜が所望の膜厚で形成されたら、高周波電力の供給を止め、供給バルブ709等を閉じて、反応容器702内への原料ガスの導入を停止し、一層分のa−Si堆積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すことにより所望の構造のa−Si感光体が製造される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下の説明では上述した実施形態において説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、同一の符号を用いる。
また、以下の実施例および比較例では、円筒状金属素管101として、マグネシウムを2.5重量%含有したAl−Mg合金の引抜管で、380℃で2時間の焼鈍処理を行ったものを用いた。
また、切削加工工程中の雰囲気温度は、基準温度23℃、変動温度を2℃以内つまり±1℃で管理して行った。
また、円筒状金属素管101及び円筒状基体105の寸法を表1に示す(単位はmm)。尚、インロー加工工程については、切削量が1.5mmと大きいため、二回に分けて実施した。
Figure 2009050988
(実施例1)
コレットチャック201を挿入した円筒状金属素管101を株式会社エグロ製の旋盤(商品名:SD550)にセットし、円筒状金属素管101を内側から保持した。この状態で、円筒状金属素管101を2000rpmで回転させ、表2に示す条件で、旋盤から取り外すことなく連続して加工を行って、円筒状基体105を100本製造した。第1の端面切削加工工程では、図3(a)に示す矢印方向に端面切削加工用バイト301を送り、端面全体を0.8mm切削した。次に、第2の端面切削加工工程では、図4(a)に示す矢印方向に端面切削用バイト301を送り、端面全体を0.2mm切削した。
一回目のインロー加工工程(表2中では「インロー加工1」)及び二回目のインロー加工工程(表2中では「インロー加工2」)では、図5に示す矢印方向にインロー加工用バイト401を送り、端部内側108を端面から13.0mmに渡って切削した。
次に、外面切削加工工程を実施して円筒状金属素管101の外面全体を切削した。具体的には、図6に示す矢印方向に外面切削加工用バイト501を送り、外面109の全体を切削した。尚、加工順1、2、3、4、については両端同時加工を行った。

Figure 2009050988
以上のようにして製造された円筒状基体105について、「外径寸法」、「外径真円度」、「外径円筒度」、「外径対インロー内径同軸度」、「両端インロー内径同軸度」、「端面直角度」、「加工時間」の各項目について評価した。尚、「外径寸法」、「外径真円度」及び「外径円筒度」は、外径に関する精度を示す評価項目である。また、「外径対インロー内径同軸度」、「両端インロー内径同軸度」及び「端面直角度」は、回転時の全振れに関する精度を示す評価項目である。また、「加工時間」は、生産性に関する評価項目である。
(外径寸法の評価)
マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製)を用い、円筒状基体105の中央及び両端から20mm位置の3点の寸法を測定し、製造した100本間の平均値とバラツキから工程能力を算出した。工程能力指数Cpkは次式によって表される。
Cpk={(U−L)−|U+L−2X|}/6σ
但し、Uは規格上限値、Lは規格下限値、Xは平均値、σは標準偏差
得られた結果の評価は、後述する比較例で得られた結果を100としたときの相対評価で実施した。つまり、評価結果は数字が大きいほど良い。
(外径真円度、外径円筒度の評価)
株式会社ミツトヨ製の真円度円筒形状測定機(商品名:ROUNDTEST RA−436)を用い、円筒状基体105の中央、両端から20mm、両端から100mmの計5点について真円度を測定し、その5点から円筒度を算出した。算出結果の評価は、製造した100本間の平均値とバラツキから工程能力を算出し、後述する比較例で得られた結果を100としたときの相対評価で実施した。つまり、評価結果は数字が大きいほど良い。
(外径対インロー内径同軸度、両端インロー内径同軸度の評価)
図8に測定の概略図を示す。円筒状基体105の両端部を2台のVブロック801で支持し、ダイヤルゲージ802及び803をインロー加工が施された端部内面(インロー内径部)に当てる。そして、円筒状基体105を1回転させたときの、ダイヤルゲージ802及び803の指示値の最大値と最小値を測定し、その差をそれぞれの外径対インロー内径同軸度とした。また、円筒状基体105を1回転させたときの、ダイヤルゲージ802と803の指示値の差の最大値と最小値を測定し、その差を両端インロー内径同軸度とした。測定結果の評価は、製造した100本間の平均値とバラツキから工程能力を算出し、後述する比較例で得られた結果を100としたときの相対評価で実施した。つまり、評価結果は数字が大きいほど良い。
(端面直角度の評価)
株式会社ミツトヨ製の真円度円筒形状測定機(商品名:ROUNDTEST RA−436)を用い、端面を基準として円筒状基体105の両端から20mm位置の2点の傾きを端面直角度として測定した。測定結果の評価は、製造した100本間の平均値とバラツキから工程能力を算出し、後述する比較例で得られた結果を100とした時の相対評価で実施した。つまり、評価結果は数字が大きいほど良い。
(加工時間の評価)
円筒状基体105を連続して100本加工するために要する時間を計測し、後述する比較例で得られた結果を100としたときの相対評価で実施した。つまり、評価結果は数字が小さいほど良い。
また、得られた円筒状基体105の外面に仕上げ切削加工を施した。仕上げ切削加工には、株式会社エグロ製の旋盤(商品名:RL550)を用いた。具体的には、円筒状基体105をコレットチャックで内側から保持した状態で、3000rpmで回転させ、インロー内径基準で、表3に示す条件で加工を行った。尚、表3中の外面粗切削加工と外面仕上げ切削加工は、加工用バイトを並べて設置し、同時に加工を実施した。その後、洗浄を行い、図7に示す高周波プラズマCVD装置を用いて、円筒状基体105上に、表4に示す条件で、a−Si感光体の形成を行った。

Figure 2009050988
Figure 2009050988
得られたa−Si感光体の両端に、図9に示すフランジ902及び903を取り付けて回転可能とし、電子写真感光体ユニット901を作製した。そして、電子写真感光体特性の評価として「振れ」「Vd面ムラ」の評価を行った。
電子写真感光体特性の評価には、複写機(株式会社キヤノン製の商品名「iR5000」改造機)を用いた。図10に、上記複写機の概略を示す。電子写真感光体ユニット901は図中時計回り回転駆動可能に支持されている。この電子写真感光体ユニット901の周りには、前露光器1008、主帯電器1002、潜像形成用露光器1009及び電位センサ1003が時計回り方向に順に配置されている。次に、静電潜像上にトナーを付着させて現像を行うための現像器1004、トナー像を被記録媒体に転写するための転写帯電器1005a、分離帯電器1005bが配置されている。その後、残留トナーを除去するためのクリーニングローラー1006及びクリーニングブレード1007を具備したクリーナー1010が配置されている。
振れを測定する際には、現像器1004及びクリーナー1010を取り外し、現像器1004の代わりに、電子写真感光体ユニット901の母線方向の所定位置の振れを測定できる変位センサ(株式会社キーエンス製の商品名EX−502、不図示)を装着した。そして、電子写真感光体ユニット901を回転させ、変位センサをユニット901の端部より母線方向に移動させ、母線方向に40mm間隔の9点でそれぞれ最大値と最小値の差の測定を行った。さらに、9点での測定値の最大値を振れとし、100本間の平均値とバラツキから工程能力を算出した。
Vd面ムラの測定では、現像器1004及びクリーナー1010を取り外し、現像器1004の代わりに電子写真感光体ユニット901の母線方向の所定位置の電子写真特性を測定できる電位プローブ(TREK社製Model344、不図示)を装着した。
また、プロセススピード265mm/sec、前露光(波長660nmのLED)光量を2.3μJ/cmとした。そして、電子写真感光体ユニット901
の母線方向中位置の表面電位が、電位プローブで測定して450V(暗電位)になるように主帯電器1002の電流値を調整した。その後、電位プローブを電子写真感光体ユニット901の端部より母線方向に移動させて、母線方向に40mm間隔の9点でそれぞれの最大値、最小値の測定を行った。全ての測定値の最大値と最小値の差をVd面ムラとし、100本の平均値とバラツキから工程能力を算出した。「振れ」および「Vd面ムラ」の評価は、後述の比較例で得られた結果を100としたときの相対評価で実施した。つまり、評価結果は数字が大きいほど良い。
(各評価結果のランク付け)
「加工時間」を除く前記各評価項目に関して、以下に示す基準でランク付けを行った。
A・・・175より大きい
B・・・150より大きく175以下
C・・・125より大きく150以下
D・・・100より大きく125以下
E・・・100(変化なし)
F・・・100未満
「加工時間」の結果は、以下に示す基準でランク付けを行った。
A・・・40未満
B・・・40以上60未満
C・・・60以上80未満
D・・・80以上100未満
E・・・100(変化なし)
F・・・100より大きい
(総合評価)
上記9項目(「外径寸法」「外径真円度」「外径円筒度」「外径対インロー内径同軸度」「両端インロー内径同軸度」「端面直角度」「加工時間」「振れ」「Vd面ムラ」)の評価結果について、以下に示す基準でランク付けを行った。ランク付けの結果は表7に示す。
A・・・各項目でBレベル以上、かつAレベル4個以上
B・・・各項目でBレベル以上
C・・・各項目でCレベル以上
D・・・各項目でDレベル以上
E・・・各項目でEレベル以上
F・・・各項目で一つでもFレベルがある
(実施例2)
実施例1に対して、表2中の加工順2の第1の端面切削加工工程を、図3(b)に示す方法に変更した。第1の端面切削加工工程の一回目で、部分303を幅2mmで切削し、二回目で部分304を切削した。それ以外は実施例1と同様にして円筒状基体を100本製造した。得られた円筒状基体を用いて実施例1と同様に電子写真感光体ユニットを作製し、実施例1と同様の評価を行い、評価結果に基づいてランク付けを行った。ランク付けの結果を表7に示す。
(実施例3)
実施例1に対して、加工順を変更した。具体的には、表2中の加工順を、1、2、5、3、4の順、つまり、外面切削加工工程後にインロー加工工程を実施した。それ以外は実施例1と同様にして円筒状基体を100本製造した。得られた円筒状基体を用いて実施例1と同様に電子写真感光体ユニットを作製し、実施例1と同様の評価を行い、評価結果に基づいてランク付けを行った。ランク付けの結果を表7に示す。
(実施例4)
実施例1に対して、インロー加工工程を省略し、表2中の加工順を、1、2、5の順で実施した。それ以外は実施例1と同様にして円筒状基体を作製し、実施例1と同様の評価を行い、評価結果に基づいてランク付けを行った。ランク付けの結果を表7に示す。尚、本実施例ではインロー加工を実施していないので、「両端インロー内径同軸度」「外径対インロー内径同軸度」「振れ」「Vd面ムラ」の各評価は省略した。
(比較例)
端面加工済みの円筒状金属素管をその内側から保持した状態で株式会社エグロ製の旋盤(商品名:SD550)にセットし、2000rpmで回転させ、表5に示す条件でインロー加工を両端同時に行った。その後、インロー加工済み円筒状金属素管を一旦旋盤から取り外し、インロー内径基準で外面切削加工を行った。外面切削加工は、株式会社エグロ製の旋盤(商品名:RL550)を用い、コレットチャックでインロー内径部を保持した状態で、2000rpmで回転させ、表6に示す条件で加工を行った。以上のようにして、円筒状基体を100本製造した。得られた円筒状基体を用いて実施例1と同様にして電子写真感光体ユニットを作製し、実施例1と同様の評価を行い、評価結果に基づいてランク付けを行った。ランク付けの結果を表7に示す。
Figure 2009050988
Figure 2009050988
Figure 2009050988
※項目A〜Iは以下を示す
I:外径寸法、II:外径真円度、III:外径円筒度
IV:外径対インロー内径同軸度、V:両端インロー内径同軸度
VI:端面直角度、VII:加工時間、VIII:振れ、IX:Vd面ムラ
尚、表中の「−」は「評価せず」を示す。
表7から、本発明により、項目I〜VIに関する円筒状基体の精度が向上した
ことがわかる。特に、回転時の振れに関わる精度(項目IV〜VI)に関して良化
している。これは、本発明によって、円筒状金属素管が安定して保持・固定された状態で切削加工が実施された効果である。円筒状基体の高精度化は、円筒状基体を使った製品の特性である項目VIII、IXによく現れている。また、項目VII
から、円筒状金属素管を保持した状態で一連の加工を行うことで、加工時間が半減されていることもわかる。
以上を総合すると、本発明によって、高精度でかつ生産性良く円筒状基体を製造することが可能となったことがわかる。
本発明に係る円筒状基体の製造方法の各工程における円筒状金属素管の形状変化を示す模式図である。 コレットチャックの断面を示す模式図である。 第1の端面切削加工工程を示す模式図である。 第2の端面切削加工工程を示す模式図である。 インロー加工工程を示す模式図である。 外面切削加工工程を示す模式図である。 電子写真感光体の製造に使用する高周波プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。 同軸度評価の方法を示す概略図である。 電子写真感光体ユニットを示す模式図である。 電子写真感光体ユニットの特性評価に用いた複写機を示す概略図である。
符号の説明
101 円筒状金属素管
105 円筒状基体
205 保持部
106 余長部
106a 余長部の一部
106b 余長部の残部

Claims (6)

  1. 円筒状金属素管の端面及び外面に切削加工を施して円筒状基体を得る円筒状基体の製造方法において、
    前記円筒状金属素管に保持手段を圧接させて前記円筒状金属素管を保持する工程と、
    前記保持手段によって保持された前記円筒状金属素管の端面を切削する複数回の端面切削加工工程と、
    前記保持手段によって保持された前記円筒状金属素管の外面を切削する外面切削加工工程と、を有し、
    前記複数回の端面切削加工工程及び前記外面切削加工工程が、前記保持手段を取り外すことなく施され、かつ、前記複数回の端面切削加工工程の第一回目が、前記円筒状金属素管に対して最初に施される切削加工であることを特徴とする円筒状基体の製造方法。
  2. 前記保持手段を前記円筒状金属素管の内面であって、かつ、前記円筒状金属素管の母線方向中央に圧接させることを特徴とする請求項1記載の円筒状基体の製造方法。
  3. 前記複数回の端面切削加工工程には、前記円筒状基体に対する前記円筒状金属素管の余長部の一部を切削する第1の端面切削加工工程と、前記余長部の残部を切削する第2の端面切削加工工程とが含まれ、
    前記端面切削加工工程の第一回目が前記第1の端面切削加工工程であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の円筒状基体の製造方法。
  4. 前記端面切削加工工程は、前記円筒状金属素管の両端面に対して同時に行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の円筒状基体の製造方法。
  5. 前記円筒状金属素管の材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の円筒状基体の製造方法。
  6. 前記切削加工工程中の雰囲気温度の変動を2℃以内とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の円筒状基体の製造方法。
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