JP4555910B2 - 感光体用基板、電子写真用感光体および画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アモルファスシリコンの感光層を形成する感光体用基板、とくにアルミニウム合金の押出管または押出、引抜き管を基板用素材とする感光体用基板および電子写真用感光体の改良、ならびにこれを用いた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アモルファスシリコン(以下、a−Siと称する)を感光層とする電子写真用感光体の基板(以下、基板と称する)の素材としては、主としてアルミニウム(以下、Alという)合金が使用されている。基板の形状は、一般的には円筒形状であり、電子写真用感光体の製造は、まず、Al合金を押出加工または押出加工と引抜き加工を行うことにより所定の円筒形状に成形し、成形された円筒体の外周部、内周部、両端部などを粗切削し、インロー内径部を切削加工して所定の基板形状に加工する。さらに、基板形状に加工したものに所定の表面性状を与えるために、仕上げ切削、各種のブラスト処理、化学処理などを行い、表面に付着した油分や汚れなどを除去するための脱脂、洗浄工程を経て、感光体用基板を得る。
【0003】
つぎに、得られたAl合金の基板に、a−Si感光層を10〜100μmの厚さで成膜形成して電子写真用感光体(以下、感光体という)とする。a−Si感光層は、例えば、プラズマCVD法により基板側からキャリア注入阻止層、光導電層、表面保護層を順次積層することにより形成される。このa−Si感光層を有する電子写真用感光体を搭載した画像形成装置の電子写真プロセスは、一般にカールソン法が多く用いられ、複写機、プリンタなどとして商品化されている。
【0004】
近年、電子写真技術の飛躍的な進歩によって、画像形成装置の高速化、軽量化、高分解能化が進み、これらの高性能を達成するために、感光層の特性向上のみでなく、感光体の寸法精度や基板の良好な表面性状が要求されている。
【0005】
感光体の寸法精度には、基板製作工程におけるAl合金の押出、引抜き工程での寸法精度と、粗切削加工、仕上げ切削加工工程における寸法精度とが大きく影響するが、現状ではこれら各工程における技術の進歩により、十分対応可能となっている。しかし、Al合金の基板とa−Si感光層との密着性を向上させ、また良好なa−Si感光層形成を目的として、基板温度を高温にして感光層の成膜形成するようになったため、基板が変形し(以下、熱変形という)、さらに、高温で感光層を成膜形成した基板を室温まで冷却する際、a−Si感光層とAl合金の基板の線膨張係数の違いにより感光体が変形する(以下、成膜変形という)という問題が生じるようになった。
【0006】
従来、a−Si感光層を成膜するAl合金の基板の材質としては、Al−Mg合金が使用されてきた(特公昭62−32261号公報など)が、Al−Mg合金からなる基板は、感光層を成膜形成するための下地として、超精密仕上げ面を得るには適しているものの、切削加工などで基板が高寸法精度に加工されても、a−Si感光層を形成する際の熱変形、成膜変形により、感光体の寸法精度が低下し易い。Al−Mg合金のVを添加することにより熱変形、成膜変形を抑制することも試みられている(特開平9−49045号公報)が、なお十分な対策にはなっていない。
【0007】
熱変形および成膜変形を軽減することを可能とする基板として、発明者らは先に、Al−Mn−Cu−Mg系のアルミニウム合金からなる基板を提案した(特願平11−177817号)。しかしながら、この系のアルミニウム合金は、熱変形、成膜変形が軽減されて寸法精度は良好となるものの、感光体製造工程の仕上げ切削において、周速度300000〜1500000mm/分の切削速度で切削加工を行うと、切削工具の摩耗が大きく1本の切削バイトで切削できる基板本数が少なくなるという難点がある。バイトが摩耗した状態でさらに切削を続けると、所定の粗さが得られなくなるため切削工具の交換回数が多くなって生産性が低下する。
【0008】
Mg:0.1〜3.0%、Mn:0.3%以下を含有するアルミニウム合金からなる感光体用基板の切削方法も提案されている(特開平7−248634号公報)が、この合金はMn量が少ないため、切削時のバイト寿命に影響するAlMnFeSi系などの晶出物が少なく、一般的にバイト寿命が良好な合金であり、AlMnFeSi系などの晶出物の量およびサイズが異なる前記Al−Mn−Cu−Mg系合金の切削には適用し得ない。
【0009】
a−Siドラム用アルミニウム合金として提案されているAl−Mn系合金(特開平2−306251号公報)においても良好なバイト寿命が得られず、感光ドラム用アルミニウム合金として提案されているAl−Mn系合金(特開昭64−25957号公報)、Al−Mn−Cu−Mg系合金(特開昭61−177347号公報)においても、バイトの摩耗の問題は解決されない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
精密切削仕上げ面を得るために切削工具に要求されることは、一般に、切取り厚さを精度良く制御するために切れ刃稜の鋭さが必要なこと、切削仕上げ面は工具逃げ面のバニッシ作用によって作られ、その輪郭のレプリカであるから、正確な切れ刃の輪郭が必要なこと、所定期間内での切れ刃の性能劣化が一定限度内にあることで、工具の摩耗を抑制することがきわめて重要な課題である。
【0011】
発明者らは、a−Siを感光層とするAl合金のうち、熱変形および成膜変形を軽減することを可能とするAl−Mn−Cu−Mg系のアルミニウム合金に着目し、当該Al−Mn−Cu−Mg系合金による電子写真感光体用基板における切削上の上記従来の不都合な点を解消するために、この合金の切削のメカニズムを解析し、とくに、切削性と不純物を含む成分組成との関連性について、多角的な実験、検討を繰り返した結果、合金成分のうち、Ti、Fe、Siの量がある値以上になると、切削時の工具(バイト)の摩耗が増大することを見出した。
【0012】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その目的は、a−Siからなる感光層を形成する感光体用基板、とくにアルミニウム合金の押出管または押出、引抜き管を基板用素材とする基板において、精密切削仕上げにおいて優れた切削加工性をそなえると共に、熱変形および成膜変形が少なく高寸法精度が得られる感光体用基板および電子写真用感光体、ならびにこれを用いて高速複写、高速印字を可能とする軽量、高耐久の画像形成装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の請求項1による感光体用基板は、a−Siからなる感光層を形成する感光体用基板であって、Mn:0.5%を越え1.0%未満、Mg:0.5%を越え1.0%未満、Cu:0.05%を越え0.30%未満を含有し、Tiを0.010%未満、Feを0.20%未満、Siを0.30%未満に制限し、且つSiとFeの含有量比(Si%/Fe%)を1.0〜2.5とし、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金からなり、表面粗度十点平均粗さRzが0.2μm以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項2による感光体用基板は、前記の組成を有するアルミニウム合金からなり、平均間隔が0.005〜0.09mmの切削溝を表面に有することを特徴とする。
【0016】
請求項3による電子写真用感光体は、請求項1または2に記載の感光体用基板の表面に、a−Siからなる感光層が積層されてなることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4による画像形成装置は、請求項3に記載の電子写真用感光体と、該電子写真用感光体の表面に電荷を付与する帯電手段と、前記電子写真用感光体の帯電領域に対して光照射する露光手段とからなり、これら帯電手段と露光手段とにより前記電子写真用感光体の表面に静電潜像を形成するとともに、該静電潜像に対応したトナー像を前記電子写真用感光体の表面に形成する現像手段と、前記トナー像を被転写材に転写する転写手段と、該転写手段による転写後に前記電子写真用感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段と、前記転写後に残余の静電潜像を除去する除電手段とを配設したことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜2は、本発明の実施形態を示す電子写真感光体用基板の作製状態を示す断面図である。図1に示すように、押出または押出、引抜により円筒形状のAl合金管1aを製作し、必要に応じて残留応力を除去するための軟化処理を行う。ついで、図2に示すように、Al合金管1aの寸法精度を向上させるために、外周部2、内周部3、両端部4を、例えば、NC旋盤で粗切削し、さらにインロー内径部5などを切削加工して円筒状のAl基板とする。円筒状のAl基板の他、とくに図示しないが、板状、ベルト状のAl基板もある。
【0019】
Al合金管1aの表面の平滑性を向上させるため、あるいは感光層を密着させるための所定の表面性状を与えるために、仕上げ切削、各種のブラスト処理、化学処理などを行って所定の基板表面状態とした後、最終的にAl合金管1aの表面に付着している油分や汚れなどを除去するために、有機溶剤や水系洗浄剤を用いて洗浄を行い、円筒形状の感光体用基板1を得る。
【0020】
本発明においては、基板素材として、精密切削仕上げにおいて優れた切削加工性をそなえると共に、切削時の工具(バイト)の摩耗を軽減することができ、さらに、電子写真感光体用基板に、a−Siからなる感光層を成膜形成する際の熱変形および成膜変形を軽減することができるAl合金を使用することを特徴とする。
【0021】
以下、本発明の電子写真感光体用基板に使用されるAl合金における合金成分の意義およびその限定理由について説明すると、Mnは、マトリックス中に固溶あるいは析出することにより、強度を向上させるよう機能する。Mnの好ましい含有範囲は0.5%を越え1.0%未満であり、0.5%以下では強度不足となるため成膜変形が生じ易くなり、1.0%以上では、鋳造時に粗大な晶出物を形成するため工具の摩耗が激しくなり良好な切削面を得ることも難しくなる。Mnのさらに好ましい含有範囲は0.6〜0.9%である。
【0022】
Mgは、マトリックス中に固溶することによって強度を向上させるよう機能する。Mgの好ましい含有範囲は0.5%を越え1.0%未満であり、0.5%以下ではその効果が小さく、1.0%以上では成膜変形が生じ易くなる。Mgのさらに好ましい含有範囲は0.6〜0.9%である。
【0023】
Cuは、マトリックス中に固溶あるいは析出することにより、強度を向上させるよう機能する。Cuの好ましい含有範囲は0.05%を越え0.30%未満であり、0.05%以下ではその効果が小さく、0.30%以上では鋳塊に欠陥が生じ易くなる。Cuのさらに好ましい含有範囲は0.07〜0.25%である。
【0024】
Tiは、通常、Al−Ti−B合金の形態でAl合金に添加され、鋳造時の鋳塊の割れ防止に機能するが、切削時の工具を摩耗させるため、工具の摩耗防止の観点から、0.010%未満(0%を含む)に制限するのが好ましい。また、Tiを添加しない場合でも、前記の含有範囲のCuおよびMgを含むものでは鋳塊割れを生じ難い。
【0025】
Siは、Mgと共存することにより、Mg2 Si晶出物または析出物を形成し強度を向上させるが、MnあるいはFeと共存することにより、AlMnSiあるいはAlMnFeSiの晶出物を形成し、この晶出物が切削時の工具寿命を低下させる原因となるため、Siは0.30%未満に制限することが好ましい。
【0026】
Feは、Al合金における不可避的不純物であるが、組織を安定化するために若干のFeを添加することもできる。一方、FeはMnおよびSiと共存することによりAlMnFeSiあるいはAlFe系の晶出物を形成し、この晶出物が切削時の工具寿命を低下させる原因となるため、Feは0.20%未満に制限することが好ましい。
【0027】
また、SiとFeの含有量比(Si%/Fe%)は1.0〜2.5に規制するのが好ましい。Si%/Fe%が2.5を越えると、AlMnSiあるいはAlMnFeSiの晶出物が多くなり、切削時の工具の摩耗を促進し、Si%/Fe%が1.0未満では、これらの晶出物は少なくなるが晶出物が粗大なものとなるため、やはり切削時の工具寿命低下の原因となる。
【0028】
Al基板とするために行われる精密仕上げ加工における表面粗さは画像特性に影響するため、鏡面状態の感光体用基板においては、表面粗度十点平均粗さRzが0.2μm以下の鏡面状態を得る精密加工を行う。Rzを0.2μm以下とすることによって、良質な出力画像が得られ、クリーニング性を良好にして感光体表面の残留トナーを除去することができる。
【0029】
切削溝を得る精密加工を行う場合には、平均間隔が0.005〜0.09mm、算術平均粗さRaが0.05〜1.5μmの規則正しい形状の切削溝に加工する。すなわち、画像露光時に、感光層表面から入射した光のうち、感光層に吸収されずに基板まで到達した光は、基板表面で反射され感光層内を逆行し、例えば、露光光がレーザー光のような特定の単一波長光の場合、その反射して逆行する光と入射する光とが干渉し、出力画像に干渉縞が現れて良好な画像を得ることができなくなるが、上記の特定された切削溝加工を行うことにより、基板表面からの反射光が再反射されたり屈折したりして、干渉を起こす反射光が減少し干渉縞の発生が抑制される。
【0030】
図3、4は本発明の実施形態を示す電子写真感光体を示す断面図である。図3に示すように、感光体用基板1の外周部2にa−Si感光層11を成膜形成することにより電子写真用感光体10を作製する。a−Si感光層11は、図4に示すように、例えば、キャリア注入阻止層12、光導電層13、表面保護層14を、例えばプラズマCVD法にて順次積層してなる。キャリア注入阻止層12は、ホウ素1500ppm、酸素1.0%、窒素0.7%を含むアモルファスシリコンであり、光導電層13は、ホウ素0.5ppmを含むアモルファスシリコンであり、表面保護層14は、アモルファスシリコンカーバイトである。a−Si感光層11の成膜形成方法としては、プラズマCVD法が主流であるが、この他に真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法などがあり、いずれを適用することもできる。
【0031】
上記の成膜法では、密着性の良好なa−Si感光層11を得るために、感光体用基板1の温度を高温にして成膜形成するため、従来、基板が熱変形したり、高温で成膜形成された電子写真感光体10を室温に冷却することによって成膜変形が生じ寸法精度が低下する。この現象は基板の肉厚が薄くなるほど顕著であり、熱変形および成膜変形は、円筒状の感光体では、両端部付近の外径部、内径部、インロー内径において大きく、とくに、薄肉部分である両端インロー内径部5において大きくなる。しかしながら、本発明においては、基板素材として、前記の組成を有するAl合金を使用することにより、図5に示すような熱変形および成膜変形6を生じることがなく、したがって、感光体用基板1の寸法精度が、そのまま電子写真用感光体10の寸法精度に反映され、電子写真用感光体10の寸法精度向上が達成される。
【0032】
電子写真用感光体10は、図6に示すような画像形成装置20に搭載される。この画像形成装置20は、上記の電子写真用感光体10の表面に電荷を付与する帯電手段であるコロナ帯電器21と、原稿からの反射光を通すレンズやミラーを配設し、これらを通った反射光を電子写真用感光体10の帯電領域に対して光照射する露光手段である露光器22とからなり、これらコロナ帯電器21と露光器22とにより電子写真用感光体10の表面に静電潜像を形成するとともに、この静電潜像に対応したトナー像を電子写真用感光体10の表面に形成するためのトナー23を備えた現像手段である現像器24と、トナー像を被転写材25に転写する転写手段である転写器26と、この転写器26による転写後に電子写真用感光体10表面の残留トナーを除去するクリーニング手段27と、転写後に残余の静電潜像を除去する除電手段28とを配設したものである。なお、29は、被転写材25に転写されたトナー像を熱もしくは圧力により固着するための定着器である。
【0033】
このカルーソン法はつぎの▲1▼〜▲6▼の各プロセスを繰り返す。
▲1▼感光体10の周面をコロナ帯電器21により帯電する。
▲2▼露光器22により画像を露光することにより感光体10の表面上に電位コントラストとして静電潜像を形成する。
▲3▼この静電潜像を現像器24により現像する。現像により黒色のトナーが静電潜像として静電引力により感光体10の表面に付着し可視化する。
▲4▼感光体10の表面のトナー像を、紙などの被転写材25の裏面よりトナーと逆極性の電界を加えて静電転写し、これにより画像を被転写材25の上に得る。
▲5▼感光体10の表面の残留トナーをクリーニング手段27により機械的に除去する。
▲6▼感光体10の表面を強い光で全面露光し、除電手段28により残余の静電潜像を除去する。
【0034】
この電子写真画像形成装置20においては、通常の乾式現像を用いているが、この他、湿式現像に使用される液体現像剤も適用できる。本発明の画像形成装置においては、搭載する感光体の寸法の高精度化により、感光体の振れを抑えるためのコロなどの部品が不要となるため、画像形成装置の軽量化が実現され、さらに、搭載する感光体の寸法の高精度化により、画像形成装置を構成する各部品の配置精度の向上が可能となるため、均一な濃度の画像出力が実現される。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明すると共に、それに基づいてその効果を実証する。なお、これらの実施例は、本発明の好ましい一実施態様を説明するためのものであって、これにより本発明が制限されるものではない。
【0036】
実施例1
表1に示す組成(合金A〜K)のアルミニウム合金をDC鋳造で造塊し、得られた鋳塊を500〜630℃で1時間以上均質化処理した後、400〜450℃の温度で管形状に熱間押出加工し、さらに抽伸加工を行って、切削加工に供する素管寸法(外径30.3mm、内径27.1mm)に加工した。その後、400〜550℃で1時間の軟化処理を行って切削に供した。
【0037】
まず、各Al合金管を、NC旋盤にて外径30mm、内径27.1mm、全長254mm、インロー内径27.5mm、インロー内径深さ11mmに高寸法精度の粗切削加工を行い、ついで外径仕上切削精密旋盤にて天然ダイヤモンド切削バイトを用いて各Al合金管外周面を0.04mm程度の切込量で鏡面仕上げ、あるいは平均間隔0.05mmの切削溝加工を行った。切削後、油分、切削粉等を除去するために水系洗浄剤にて洗浄して感光体用基板とし、この感光体用基板の寸法、特にインロー内径寸法を内径測定用高精度プラグゲージで0.001mm単位まで正確に測定した。
【0038】
その後、感光体用基板を反応炉内にセットし、プラズマCVD法にて、ホウ素1500ppm、酸素1.0%、窒素0.7%を含むa−Siのキャリア注入阻止層、ホウ素0.5ppmを含むa−Siの光導電層、アモルファスシリコンカーバイト(a−SiC)の表面保護層を順次積層してなるa−Si感光層を成膜形成した。この成膜形成時の感光体用基板の温度は300℃であり、a−Si感光層厚みは40μmとした。このプラズマCVD法における出発原料ガスとしては、シランガス、メタンガス、水素ガス、ジボランガス、酸化窒素ガスを用いて上記各層の成膜形成に応じ各種ガスを適宜反応炉内に導入し続けて高電圧でプラズマを発生させることで各層を順次形成し、電子写真用感光体を得た。
【0039】
感光体用素管の(1)鋳造性、感光体用素管を感光体用基板とするための精密仕上げ切削加工における(2)切削工具(切削バイト)の寿命、得られた電子写真用感光体についての(3)寸法変化量、(4)画像特性を測定した。感光体用素管の鋳造性を表1に示し、その他の測定結果を、感光体用基板No.1〜11およびこれらの感光用基板No.1〜11で構成した電子写真用感光体の特性として併せて表2に示す。
【0040】
(1)鋳造性
直径254mmに造塊し、内部に長さ5mm以上の亀裂欠陥のあるものを不良(×)、欠陥の無いものを良好(○)とする。
(2)切削工具の寿命
押出、抽伸、軟化したAl合金素材をダイヤモンド仕上げバイトを用いて、周速1400000mm/分、送り速度100mm/分、切り込み量0.04mmで30本切削した時、所定の表面粗さが得られるかどうかを以下に示す基準で評価した。
30本切削した際、30本目の表面粗さが
Rz:0.15μm以下:◎
Rz:0.15μmを越え0.20μm以下:○
Rz:0.20μmを越え0.30μm以下:△
Rz:0.30μmを越える:×
30本切削した際、30本目の表面粗さが
Ra:0.08〜1.2μm:◎
Ra:0.05μm以上0.08μm未満または1.2μmを越え1.5μm以下:○
Ra:0.02μm以上0.05μm未満または1.5μmを越え2.0μm以下:△
Ra:0.02μm未満または2.0μmを越える:×
【0041】
(3)寸法変化量
a−Si感光層を成膜形成する前後の電子写真用感光体について、インロー内径部寸法の変化量を測定する。すなわち、最も熱変形および成膜変形し易いインロー内径部における深さ方向の測定箇所▲1▼の変化量(図7)を測定する。この変化量の測定値が正の場合は拡大変形を示し、負の場合は収縮変形を示す。
【0042】
(4)画像特性
各電子写真用感光体を画像形成装置に搭載し、出力画像の濃度ムラを目視観察することにより画像特性を評価した。すなわち、電子写真感光体のインロー内径部の変形が大きくなると、画像形成装置に電子写真感光体を搭載した際、電子写真感光体の振れが大きくなり、出力画像の濃度ムラが発生するので、その出力画像の濃度ムラの発生具合を観察することにより全体的に画像品質を、○:良、△:可、×:不可の3段階で画像特性として評価した。なお、画像品質の評価は、1本の切削バイトで30本切削した際の30本目に切削した感光体用基板を用いて行った。また、画像特性の評価のための画像形成装置は、高画質画像を得るため高精度寸法となっており、さらに、軽量化を図るため、搭載する電子写真感光体の振れを抑える目的の部品あるいは制御系は削除あるいは簡略化している。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
比較例1
表3に示す組成(合金L〜X)のアルミニウム合金をDC鋳造で造塊し、得られた鋳塊を実施例1と同様に処理して基板用素管を作製し、得られた基板用素管を実施例1と同じ条件で切削加工することにより感光体用基板を得た。さらに、これらの感光体用基板に、実施例1と同じ条件でa−Si感光層を成膜形成して電子写真用感光体を作製し、実施例1と同様に、感光体用素管の(1)鋳造性、(2)感光体用素管を感光体用基板とするための精密仕上げ切削加工における切削工具(切削バイト)の寿命、得られた電子写真用感光体についての(3)寸法変化量、(4)画像特性を測定した。感光体用素管の鋳造性を表3に示し、その他の測定結果を、感光体用基板No.12〜24およびこれらの感光用基板No.12〜24で構成した電子写真用感光体の特性として併せて表4に示す。なお、基板No.23は、200本切削することにより摩耗させた工具を用いて鏡面加工を行い、表面粗さを0.3μmとしたものであり、基板No.24は、200本切削することにより摩耗させた工具を用いて溝加工を行い、表面粗さ1.8μmの切削溝を形成したものである。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
表1〜2にみられるように、本発明に従う基板用素材のAl合金の鋳造性、押出性は良好であり、この素材により作製された感光体用基板は、精密仕上げ切削加工において所定の表面粗さが得られ切削工具の摩耗は少なかった。また、寸法変化量が少ないため、感光体の寸法特性が向上して、画像形成装置搭載時の振れが小さくなり、切削加工後の表面状態も良好なため、画像品質が優れていた。
【0049】
これに対して、基板No.12はMnの含有量が多いため押出性が劣り、Al−Mn系晶出物が多くなるため、切削工具の消耗が激しく、所定の表面粗さが得られなかった。基板No.13、15、17は、それぞれMn、CuおよびMgの含有量が少ないため強度が不足して寸法変化量が大きくなり、感光体の振れの影響による画像濃度ムラが生じ、高画質画像を得ることができなかった。
【0050】
基板No.14はCuの含有量が多いため、鋳塊割れが生じ健全な素管を製造することができなかった。基板No.16はMgの含有量が多いため成膜変形が大きくなり、高画質画像を得ることができなかった。
【0051】
基板No.18はTiの含有量が多く、No.19はFeの含有量が多く、No.20はSiの含有量が多く、No.21はSi%/Fe%の比率が大きく、またNo.22はSi%/Fe%の比率が小さいため、いずれも切削加工時の工具の摩耗が激しく所定の表面粗さが得られなかった。
【0052】
基板No.23〜24は、素材の組成は本発明の範囲内にあるが、200本切削して工具を摩耗させ、Rz:0.3μm、Ra:1.8μmとしたものであり、表面粗さが所定の範囲を外れているため良好な画像特性が得られなかった。すなわち、表面粗度十点平均粗さまたは算術平均粗さが大きくなるような粗雑な切削加工を行った場合には、クリーニング性が悪くなり、残留トナーの除去が不完全となって干渉縞が発生し易くなり、良好な画像を得ることができない。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、精密切削仕上げにおいて優れた切削加工性をそなえ、切削工具の摩耗が軽減されると共に、アモルファスシリコン系の感光層成膜形成時の熱変形および成膜変形が低減された感光体用基板を得ることができ、この感光体用基板を使用することにより、高精度の寸法特性を有する電子写真用感光体が得られ、また、当該電子写真用感光体を搭載することによって、各プロセスの配置精度が向上して、高速複写、高速印字を可能とする軽量且つ高耐久性を備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す感光体用基板の作製状態の断面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す感光体用基板の作製状態の断面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す電子写真用感光体の断面図である。
【図4】本発明の実施形態を示す電子写真用感光体の一部の拡大断面図である。
【図5】電子写真感光体の不良状態を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態を示す画像形成装置の構成図である。
【図7】電子写真用感光体のインロー内径部における測定位置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 感光体用基板
1a アルミニウム管
2 外周部
3 内周部
4 両端部
5 インロー内径部
6 熱変形および成膜変形
10 電子写真感光体
11 a−Si感光層
12 キャリア注入阻止層
13 光導電層
14 表面保護層
20 画像形成装置
21 コロナ帯電器
22 露光器
23 トナー
24 現像器
25 被転写材
26 転写器
27 クリーニング手段
28 除電手段
29 定着器
Claims (4)
- アモルファスシリコンからなる感光層を形成する感光体用基板であって、Mn:0.5%(質量%、以下同じ)を越え1.0%未満、Mg:0.5%を越え1.0%未満、Cu:0.05%を越え0.30%未満を含有し、Tiを0.010%未満、Feを0.20%未満、Siを0.30%未満に制限し、且つSiとFeの含有量比(Si%/Fe%)を1.0〜2.5とし、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金からなり、表面粗度十点平均粗さRzが0.2μm以下であることを特徴とする感光体用基板。
- アモルファスシリコンからなる感光層を形成する感光体用基板であって、Mn:0.5%を越え1.0%未満、Mg:0.5%を越え1.0%未満、Cu:0.05%を越え0.30%未満を含有し、Tiを0.010%未満、Feを0.20%未満、Siを0.30%未満に制限し、且つSiとFeの含有量比(Si%/Fe%)を1.0〜2.5とし、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金からなり、平均間隔が0.005〜0.09mmの切削溝を表面に有することを特徴とする感光体用基板。
- 請求項1または2に記載の感光体用基板の表面に、アモルファスシリコンからなる感光層が積層されてなることを特徴とする電子写真用感光体。
- 請求項3に記載の電子写真用感光体と、該電子写真用感光体の表面に電荷を付与する帯電手段と、前記電子写真用感光体の帯電領域に対して光照射する露光手段とからなり、これら帯電手段と露光手段とにより前記電子写真用感光体の表面に静電潜像を形成するとともに、該静電潜像に対応したトナー像を前記電子写真用感光体の表面に形成する現像手段と、前記トナー像を被転写材に転写する転写手段と、該転写手段による転写後に前記電子写真用感光体表面の残留トナーを除去するクリーニング手段と、前記転写後に残余の静電潜像を除去する除電手段とを配設したことを特徴とする画像形成装置。
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