JP2009046702A - 耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管 - Google Patents

耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な強度と高い耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合でも表面にピックアップの発生しない耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管を提供する。
【解決手段】質量%でSi:0.01〜0.3%、Fe:0.01〜0.3%、Cu:0.05〜0.4%、Mn:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%を含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満である耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、カーエアコンなどの自動車用熱交換器に好適に用いることができる耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管に関する。
従来から、カーエアコンのコンデンサやエバポレータなどの自動車用熱交換器として、複数のヘッダパイプと、これらのヘッダパイプ間に架設された複数の多穴管と、各多穴管に接合されたフィンとを備えたものが知られている。また、このような自動車用熱交換器を構成する多穴管としては、純アルミニウムやアルミニウム合金を押出加工してなるものが用いられている。
また、このような多穴管では、組立性、ろう付け性、熱交換器の強度・耐食性などについて所定の条件を満たすことが要求されている。さらに、このような多穴管は、一般に、幅5〜50mm、高さ1〜5mmの断面形状とされており、所定の寸法精度や表面粗さなどの条件を満たすことが要求されている。
このような条件を満たす多穴管を実現できる材料としては、押出性の良好な純アルミニウムや、少量のCuが含有されたアルミニウム合金などが挙げられ、広く使用されている(例えば、特許文献1)。Cuを添加することで、耐食性が良好なものとなり、強度を向上させることができるとともに、高温での変形抵抗を低減させることができ、押出性を向上させることができる。
また、多穴管の耐食性を向上させる技術として、多穴管の外表面にZn皮膜を形成する方法がある。外表面にZn皮膜の形成された多穴管では、熱交換器の製造時に多穴管とフィンやヘッダパイプなどの他部材とをろう付けする際などの熱処理により、Znが多穴管の内部へと拡散される。Znが内部に拡散された多穴管では、Znの犠牲陽極効果によって局部腐食の進行が抑えられるので、耐食性が向上する。
特開2001−26832号公報
最近、製品コストを低減させるために、高速押出化の要求が高まってきている。しかしながら、Cuの含有されたアルミニウム合金では、高速押出により多穴管を製造した場合に、以下に示すようにして、ピックアップと呼ばれるむしれ状の欠陥が表面に発生する場合があり、問題となっていた。
すなわち、Cuの含有されたアルミニウム合金では、Cuの含有量が多いと、低融点化合物の形成が避けられなくなり、高速押出の押出加工熱によって局部的な溶融が生じてしまう。この局部的な溶融によってアルミ滓が生じ、アルミ滓が押出金型に凝着・堆積することにより、ピックアップを生じさせる。
また、従来の技術では、多穴管を腐食環境下で使用した場合には、短期間で孔食などの局部腐食に起因する貫通孔が形成されてしまう場合があり、耐食性を向上させることが要求されていた。特に、軽量化・薄肉化された多孔管では、比較的早期に貫通孔が形成されてしまうため、問題となっていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、十分な強度と高い耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合でも表面にピックアップの発生しない耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管を提供することを課題としている。
本発明の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管は、質量%でSi:0.01〜0.3%、Fe:0.01〜0.3%、Cu:0.05〜0.4%、Mn:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%を含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であることを特徴とする。
本発明において、AlFeSi安定相とは、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)により測定したFe、Si原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5未満であるものを意味する。
上記の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管においては、Tiを0.05〜0.15質量%含有するものとすることができる。
また、上記の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管においては、外表面にZn溶射皮膜が設けられているものとすることができる。
本発明の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管によれば、十分な強度と高い耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合でも表面にピックアップの発生しない優れたものとなる。
以下、本発明に係る耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管について例を挙げて詳細に説明する。
本実施形態の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管は、質量%でSi:0.01〜0.3%、Fe:0.01〜0.3%、Cu:0.05〜0.4%、Mn:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%を含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であるものである。
[アルミニウム合金の成分組成]
以下に記載する各元素の含有量は、特に規定しない限り質量%である。
「Si」0.01〜0.3%
アルミニウム合金にSiを含有させることにより、マトリックス中にAlFeSi安定相を生じさせることができる。アルミニウム合金にSiを含有させて、AlFeSi安定相を生じさせることにより、マトリックス中にSiが固溶していることに起因するピックアップの発生を抑制できる。また、アルミニウム合金にSiを含有させて、AlFeSi安定相を生じさせることにより、Siと似た挙動を示すCuがAlFeSi安定相と共にAlFeSi(Cu)安定相として析出される。このことにより、マトリックス中にCuが固溶していることに起因する耐食性の劣化を抑制できる。また、Siを含有させることにより、強度、耐食性、押出性を向上させることができる。
Siの含有量が0.01%未満であると、マトリックス中にAlFeSi安定相を生じさせる効果が十分に得られず、Cuの析出が不十分となるため、耐食性を十分に向上させることができない場合がある。また、Siの含有量が0.01%未満であると、強度が不十分となるため好ましくない。また、Siの含有量が0.30%を超えると、低融点化合物が形成されやすくなり、高速押出の押出加工熱に起因するピックアップが生じやすくなる。
「Fe」0.01〜0.3%
アルミニウム合金にFeを含有させることにより、マトリックス中にAlFeSi安定相を生じさせることができる。また、Feは、分散強化によってアルミニウム合金の強度を向上させる一方、粗大な晶出物を生成しやすく、合金の腐食速度を増大させて、耐食性を低下させる虞がある。また、Feを含有させることによって、生成した晶出物が再結晶の核となるため、ろう付時の再結晶粒が微細となり、耐ろう侵食性が低下する場合がある。このため、Feの含有量は、質量%で0.01〜0.3であることが望ましい。Feの含有量を0.01〜0.3とすることにより、耐食性、ろう付性を劣化させることなく、強度を向上させることができる。
「Cu」0.05〜0.4%
本実施形態のアルミニウム合金において、Cuは、熱交換器用押出扁平多穴管の強度、耐食性、押出性を向上させる作用がある。Cuの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出合金の強度、耐食性が不十分となるため好ましくない。また、Cuの含有量が0.4%を越えると、低融点化合物が形成されやすくなり、高速押出の押出加工熱によって生じるアルミ滓に起因するピックアップが生じやすくなる。
「Mn」0.05〜0.3%
本実施形態のアルミニウム合金において、Mnは、強度および耐食性を向上させる作用がある。Mnの含有量が0.05%未満であると、熱交換器用押出扁平多穴管の強度および耐食性が不十分となるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.3%を越えると、押出時の変形抵抗が上昇して高速押出が困難となる恐れが生じるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.3%を越えると、高速押出時にピックアップが生じやすくなる。
「Zr」0.05〜0.25%
本実施形態のアルミニウム合金において、Zrは、熱交換器用押出扁平多穴管の強度を向上させる作用や、金型への清浄効果によって押出性を向上させる作用、押出装置の金型とアルミニウム合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させる作用がある。
Zrの含有量が0.05%未満であると、アルミニウム合金の強度が不十分となるため好ましくない。また、Zrの含有量が0.05%未満であると、金型への清浄効果が十分に得られない恐れや、高速押出時におけるピックアップの発生を十分に抑制できない恐れが生じる。また、Zrの含有量が0.25%を越えると、鋳造性が低下して割れなどが生じやすくなるため好ましくない。さらに、Zrの含有量が0.25%を越えると、粗大なZr化合物が発生しやすくなって、アルミニウム合金中の成分が不均一となり、素材の品質を損なうことになるため好ましくない。
また、本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管においては、ZrとTiとの合計が0.3%以下となる範囲で必要に応じてTiを0〜0.15%、好ましくは0.05〜0.15%含有することができる。
「Ti」0〜0.15%
本実施形態のアルミニウム合金において、Tiは、Zrと共に含有されることで、組織を扁平化させることができ、アルミニウム合金の断面厚み方向への腐食の進行を抑制して、局部腐食による貫通孔の形成を遅延させることができ、耐食性を向上させることができる。Tiの含有量が0.05%未満であると、TiとZrとを共に含有させることによって得られる上記作用が十分に得られない場合がある。また、Tiの含有量が0.15%を越えると、金型の磨耗性が低下するとともに、鋳造性が低下して割れなどが生じやすくなるため好ましくない。さらに、Tiの含有量が0.15%を越えると、粗大なTi化合物が発生しやすくなって、アルミニウム合金中の成分が不均一となり、素材の品質を損なうことになるため好ましくない。
また、本実施形態のアルミニウム合金において、ZrとTiとの合計が0.3%を越えると、鋳造性が低下したり、粗大化合物が発生しやすくなって、素材の品質が損なわれたりするため好ましくない。
[AlFeSi安定相]
また、本実施形態のアルミニウム合金は、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であるものである。このようなアルミニウム合金は、マトリックス中のSiがAlFeSi安定相として析出されるとともに、マトリックス中のCuがAlFeSi安定相と共にAlFeSi(Cu)安定相として析出されたものとなる。ここで、マトリックス中に分散している粒子のうち粒子面積1.0μm未満の粒子は、粒子の容量が少ないため、押出時の加熱(予熱、加工熱、摩擦熱)によって、容易にSiの固溶が生じ、効果的にSiをAlFeSi安定相として析出させることができないため、好ましくない。上記面積率が0.1%未満であると、SiをAlFeSi安定相として析出させる効果や、CuをAlFeSi(Cu)安定相として析出させることによる効果が十分に得られないため、好ましくない。また、上記面積率を0.5%以上としても、SiやCuを析出させることによる効果が飽和するため、耐食性の向上は見られない。
なお、AlFeSi相にはAlFeSi安定相だけでなく、AlFeSi準安定相もある。AlFeSi準安定相は、粒子面積が1.0μm以上であっても、押出時の加熱によって容易にSiの固溶が生じ、マトリックス中のSi固溶量を向上させてしまうので、本発明の目的達成には不利となる。
ここで、「AlFeSi安定相」とは、EDXにより測定したFe、Si原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5未満であるものを意味する。
また、「AlFeSi準安定相」とは、EDXにより測定したFe、Si原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5〜7.0の範囲であるものを意味する。
また、本実施形態のアルミニウム合金は、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm以上の粒子のうち、AlFe相の占める面積率が0.3%以下であるものとすることが好ましい。AlFe相はSiと結びついていないものであり、AlFe相の占める面積率が0.3%を超えると、AlFeSi安定相の占める割合が少なくなり、AlFe相と結び付くSiが減るので、マトリックス中に固溶されるSiが多くなって、本発明の効果が低下する傾向となり易い。
また、本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管においては、耐食性を向上させるために、外表面にZn溶射皮膜が設けられていることが好ましい。Zn溶射皮膜は、熱交換器用押出扁平多穴管の軽量化を図るために耐食性を損なわない範囲で薄くすることが好ましい。また、Zn溶射皮膜は、耐食性のばらつきを少なくするために膜厚が均一であることが好ましい。
[熱交換器用押出扁平多穴管の製造方法]
次に、本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管の製造方法について説明する。
本実施形態においては、上記のアルミニウム合金を均質化処理する工程を備え、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理と冷却工程と第2熱処理とを順に行なう製造方法を例に挙げて説明する。
「第1熱処理」
第1熱処理においては、上記のアルミニウム合金を560℃〜620℃の範囲の温度、より好ましくは590℃超〜610℃の範囲の温度で1時間〜18時間、より好ましくは3時間〜10時間保持する。
第1熱処理を行なうことで、CuやSiなどの低融点元素を均一に分布させ、高速押出時にピックアップを発生させる元素を固溶させて、ピックアップの発生を抑制することができる。また、アルミニウム合金中に均一に拡散しにくいZrを、アルミニウム合金中に均一に拡散させることができる。
第1熱処理の処理温度が上記範囲よりも低い場合や処理時間が上記範囲よりも短い場合には、Si、Cu、Zrなどの元素の分布が不均一となったり、高速押出時にピックアップを発生させる元素の固溶が不十分となり、高速押出時におけるピックアップの発生を十分に抑制できなかったりする恐れが生じる。また、第1熱処理の処理温度が上記範囲よりも高い場合や処理時間が上記範囲よりも長い場合には、アルミニウム合金の一部が溶解する恐れがあるし、第1熱処理を行なうことによる費用が大きくなり、経済的に不利となる。
「冷却工程」
冷却工程は、第1熱処理の後、第2熱処理の前に、第1熱処理によって高温となったアルミニウム合金を常温とする工程である。
アルミニウム合金中に析出されたZr化合物(アルミニウム合金中にTiが含有されている場合にはZr化合物およびTi化合物)は、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させてピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させる。Zr化合物(およびTi化合物)からなる析出物(サイト)の大きさは、均質化処理における温度が高温であるほど大きく、低温であるほど小さくなり、析出物(サイト)の数は、均質化処理における温度が高温であるほど少なく、低温であるほど多くなる。したがって、冷却工程により、析出物(サイト)の核となる大きさの小さい析出物を多数形成しておくことで、第2熱処理において、冷却工程で形成された小さい析出物を軸としたZr化合物(およびTi化合物)の析出を促進することができる。
冷却工程においては、第1熱処理後のアルミニウム合金を、好ましくは20℃/hr〜100℃/hr、より好ましくは40℃/hr〜60℃/hrの冷却速度で冷却する。冷却速度を20℃/hr未満としても、冷却工程を行うことによるZr化合物(およびTi化合物)からなる析出物の核の形成効果に変化はないし、冷却工程に要する時間が長くなるため好ましくない。また、冷却速度が100℃/hrを超えると、冷却工程を行っても、Zr化合物(およびTi化合物)からなる析出物の核が十分に形成されない恐れがある。
このように、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理の後、第2熱処理の前に冷却工程を行った場合、第2熱処理において、冷却工程で形成された小さい析出物にSi、Cu、Mn、Zrの結合を促進することができ、大きい析出物を多数形成することができ、より一層、ピックアップの発生を抑制することができるとともに、より一層、金型の磨耗性を向上させることができる。また、第1熱処理の後、第2熱処理の前に冷却工程を行うことにより、AlFeSi相の析出物を効果的に析出させることができる。
「第2熱処理」
第2熱処理は、第1熱処理後のアルミニウム合金を450℃〜520℃の範囲の温度、より好ましくは480℃〜510℃の範囲の温度で2時間超〜18時間、より好ましくは3時間〜10時間保持する。
第2熱処理を行なうことで、第1熱処理によって一旦固溶したSi、Cu、Mn、Zrを前記冷却工程で形成した析出物(サイト)と結合させることで、押出装置の金型と熱交換器用押出合金との接触部分の高速押出時における潤滑性を向上させ、ピックアップの発生を抑制するとともに、金型の磨耗性を向上させることができる。
第2熱処理の処理温度が上記範囲よりも低い場合や処理時間が上記範囲よりも短い場合には、Cu、MnをZr(アルミニウム合金中にTiが含有されている場合にはZrおよびTi)と結びついたそれぞれの析出物の成長が不十分となる恐れが生じる。また、第2熱処理の処理温度が上記範囲よりも高い場合は、アルミニウム合金中における元素の拡散が活発となり、アルミニウム合金中の元素が拡散してCu、MnとZr(およびTi)とが結びついた析出物が析出されにくくなり、上記範囲よりも処理時間を長くしても、得られる効果は変わらず、むしろ経済的に不利となる。
なお、上述した実施形態では、アルミニウム合金を均質化処理する工程において、第1熱処理と冷却工程と第2熱処理とを順に行なったが、第1熱処理と第2熱処理のみを行なってもよい。この場合においても、十分な強度および耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合に表面にピックアップの発生しない多穴管を製造できる。また、冷却工程を行なわない場合、第2熱処理のために常温から所定の温度まで再度加熱する必要がないので、冷却工程を行なう場合と比較して、製造に必要なエネルギーを削減できる。また、冷却工程を行なわない場合、冷却工程を行なう場合と比較して、製造工程を削減できるので、製造効率を向上させることができる。
なお、上記均質化処理における加熱方法や加熱炉の構造等については特に限定されない。また、均質化処理する工程の後のアルミニウム合金を押出すことにより熱交換器用押出扁平多穴管が得られる。ここでの押出において、押出形状は特に限定されるものではなく、熱交換器の形状等に応じて押出形状が選定される。また、押出方法(方式)については特に限定されるものではなく、押出形状等に合わせて適宜常法の方法を採用することができる。
続いて、得られた熱交換器用押出扁平多穴管の外表面にZn溶射皮膜を設ける。ここでのZn溶射皮膜の形成方法は、特に限定されないが、例えば、押出方向に一列に配置された押出加工手段と溶射加工手段とを備え、溶射加工手段が、押出方向における押出加工手段の下流側に配置された製造装置を用い、押出加工手段から押出された熱交換器用押出扁平多穴管を、押出加工手段から押出す押出速度で溶射加工手段内を通過させることによって、熱交換器用押出扁平多穴管の外表面にZn溶射皮膜を設ける方法を用いることが好ましい。
このようにして得られた熱交換器用押出扁平多穴管は、例えば、熱媒体を流通させる熱交換器用扁平多穴管などとして用いられる。また、熱交換器の使用場所は、特に限定されるものではないが、自動車用の熱交換器に好適である。また、自動車用の熱交換器として、具体的にはコンデンサ、エバポレータ、インタクーラ等の用途に好適に使用できる。
また、このような熱交換器用押出扁平多穴管は、熱交換器用の部品として使用するに際し、他部材(例えばフィンやヘッダパイプ)と組み付けて、通常はろう付けにより接合される。なお、本発明においては、ろう付けの際の雰囲気や加熱温度、時間などの条件について、特に限定されるものではなく、ろう付け方法も特に限定されない。
本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管は、質量%でSi:0.01〜0.3%、Fe:0.01〜0.3%、Cu:0.05〜0.4%、Mn:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%を含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなるものであるので、十分な強度と高い耐食性を有し、高速押出により多穴管を製造した場合でも表面にピックアップの発生しない優れたものとなる。
また、本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管は、マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であるので、マトリックス中のSiがAlFeSi安定相として析出されるとともに、マトリックス中のCuがAlFeSi安定相と共にAlFeSi(Cu)安定相として析出されたものとなる。したがって、マトリックス中にSiが固溶していることに起因するピックアップの発生を抑制できるとともに、マトリックス中にCuが固溶していることに起因する耐食性の劣化を抑制できる。よって、耐食性をより一層向上させることができる。
例えば、マトリックス中にCuが固溶していると、以下に示す問題が生じて耐食性を劣化させる場合がある。すなわち、加熱や経時変化によりCuがSiとともに析出して、粒界近傍にCu−Si欠乏相が形成され、粒界腐食が発生する問題が生じる。また、マトリックスの電位が貴になってマトリックスとAlZr、AlTi粒子と電位差が十分に得られなくなる問題や、熱交換器用押出扁平多穴管の外表面にZn溶射皮膜を設けた場合に生じるZnによる犠牲陽極効果を阻害する問題などが生じる。
また、本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管において、アルミニウム合金がTiを0.05〜0.15質量%含有するものとした場合、鋳造性を低下させたり、アルミニウム合金中の成分を不均一にすることなく、アルミニウム合金の組織を扁平化させることができ、アルミニウム合金の断面厚み方向への腐食の進行を抑制して、局部腐食による貫通孔の形成を遅延させることができ、耐食性をより一層向上させることができる。
また、本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管において、外表面にZn溶射皮膜が設けられているものとした場合、耐食性をより一層向上させることができる。
また、本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管は、高速押出可能なものであるから、押出加工手段から押出された熱交換器用押出扁平多穴管を、押出加工手段から押出す押出速度で溶射加工手段内を通過させることによって、熱交換器用押出扁平多穴管の外表面にZn溶射皮膜を設ける場合、押出加工手段から高速で押出された熱交換器用押出扁平多穴管が、高速で溶射加工手段内を通過することになり、熱交換器用押出扁平多穴管の外表面に薄く均一なZn溶射皮膜が形成される。したがって、薄くて均一なZn溶射皮膜を有し、軽量で均一なZnの犠牲陽極効果による耐食性向上効果が得られる熱交換器用押出扁平多穴管を高速で製造できる。
また、本実施形態の熱交換器用押出扁平多穴管は、高速押出可能なものであるから、高速で押し出すことによって押出時の加工熱を大きくすることができるとともに、押出加工手段から溶射加工手段への移動速度を高速とすることができる。したがって、押出加工手段から押出された高温の熱交換器用押出扁平多穴管を、高温状態を維持したまま溶射加工手段内に侵入させることができ、容易に高温で溶射できる。このため、溶射時にZnを熱交換器用押出扁平多穴管の内部に拡散させることができる。したがって、得られた熱交換器用押出扁平多穴管は、熱交換器の製造時の熱処理などによってZnを内部に拡散させなくても、Znの犠牲陽極効果による耐食性向上効果が得られるものとなる。その結果、熱交換器の製造時の熱処理温度を低くしたり熱処理時間を短くしたりすることができ、熱交換器の生産性を向上することができる。例えば、熱交換器の製造時に熱交換器用押出扁平多穴管をろう付けする場合、ろう付け時の熱処理温度を低くすることが可能となり、ろう付けに要する時間を短縮できる。
「実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例7」
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
表1に示す成分を含有するアルミニウム合金を鋳造してなるビレットを製作し、このビレットに、表2に示す均質化処理を行なった。そして均質化処理後のビレットを以下に示す条件で押出し、押出された熱交換器用押出扁平多穴管を表2に示す押出速度でZn溶射量10g/mで溶射加工手段内を通過させて熱交換器用押出扁平多穴管の外表面にZn溶射皮膜を設けることにより、図1に示す複数の媒体通路用穴2を有する断面形状の熱交換器用押出扁平多穴管1を得た。
Figure 2009046702
Figure 2009046702
このようにして得られた実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例7の熱交換器用押出扁平多穴管を、所定の条件で外部形状を整える圧延加工を行なってから、600℃で3minのろう付けのための熱処理を行なった後、以下に示す評価を行なった。
その結果を表3および表4に示す。
Figure 2009046702
Figure 2009046702
「AlFeSi安定相の面積率」
AlFeSi安定相の面積率は、以下に示すようにして算出した。まず、測定面積1mmの測定視野内に存在する全粒子について、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)によりFe、Si原子濃度を測定した。そして、FeとSiの原子濃度の比(=Fe原子濃度/Si原子濃度)が3.5未満であることをAlFeSi安定相の判定基準とし、以下の式(1)により、AlFeSi安定相総面積率(%)を算出した。
AlFeSi安定相の面積率(%)=AlFeSi安定相総面積÷測定面積×100・・・(1)
「押出速度」
比較例2における押出速度を1とした場合の比(倍)を意味する。
「強度」
熱交換器用押出扁平多穴管を長手方向に引張試験機にて引っ張る方法により測定した。
「ピックアップ評価」
ピックアップ評価が○であるとは熱交換器用押出扁平多穴管にピックアップが発生しなかったことを意味し、ピックアップ評価が×であるとは熱交換器用押出扁平多穴管にピックアップが発生したことを意味する。
「鋳造割れ」
鋳造割れは、クラウトレーマー社製USM25Jにより二極判定を行なうことにより測定した。鋳造割れが○であるとは、ビレットに次工程の押出で不具合が出るような割れが発生していなかったことを意味し、鋳造割れが×であるとは、ビレットに次工程の押出で不具合が出るような割れが発生していたことを意味する。
「金型磨耗性」
金型磨耗性が○であるとは、ビレットを5〜10本程度押し出した後に、押出材にダイマークと呼ばれる筋状の欠陥が強く発生していなかったことを意味し、金型磨耗性が×であるとは、ビレットを5〜10本程度押し出した後に、押出材に強いダイマークが発生し、金型表面が荒れてしまったことを意味する。
「SWAAT貫通日数」
実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例7の熱交換器用押出扁平多穴管と、両面ろうを有するフィンとを組み合わせ、600℃で3minのろう付けのための熱処理を行なうことにより図2に示すコア4(試験体)を作製し、SWAAT(Sea Water Acetic Acid Test、人工海水噴霧試験)評価を行なった。図2において、符号10、20は熱交換器用押出扁平多穴管を示し、符号30はフィンを示している。
試験方法は、ASTM(G85−85)規格に則り、以下の条件で(1)および(2)を2サイクル行い実施した。
(1)人工海水(pH=3)噴霧:50℃、0.5時間
(2)湿潤:50℃、1.5時間
表3に示すように、実施例1〜実施例8では、いずれも60(MPa)以上の十分な強度が得られ、SWAAT貫通日数が30日を超える高い耐食性を有し、押出速度が1.3〜1.5倍と高速であっても、ピックアップの評価が○となり、ピックアップが発生しないことが確認できた。また、実施例1〜実施例8では、鋳造割れおよび金型磨耗性の評価も全て○であった。
また、表4に示すように、比較例1では、Si、Fe、Cu、Mn、Zrの添加量が少なすぎるため、強度が60MPa未満と低く、強度が不十分であった。
また、比較例2では、各元素の添加量が何れも多すぎるため、強度は高いが、ピックアップの評価、鋳造割れ、金型磨耗性の評価が×となり、押出速度が遅かった。
また、比較例3では、Zrが含まれておらず、Tiの添加量が多すぎるため、金型磨耗性の評価が×となった。
また、比較例4では、Tiの添加量が多すぎるため、金型磨耗性の評価が×となった。
また、比較例5および比較例6では、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%未満であるため、ピックアップの評価の評価が×になり、押出速度が遅かった。
また、比較例7では、Cuの添加量が多すぎ、Zrが含まれておらず、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%未満であるため、ピックアップの評価の評価が×になり、SWAAT貫通日数が少なく、耐食性が不十分であった。また、比較例7では、押出速度が遅かった。
図1は本発明の熱交換器用扁平多穴管の一例を示した斜視図である。 図2はSWAAT貫通日数の評価を行なうための試験体を示した断面図である。
符号の説明
1、10、20…熱交換器用押出扁平多穴管、2…媒体通路用穴、4…コア、30…フィン。

Claims (3)

  1. 質量%でSi:0.01〜0.3%、Fe:0.01〜0.3%、Cu:0.05〜0.4%、Mn:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.25%、Ti:0〜0.15%を含有し、ZrとTiとの合計が0.3%以下であり、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
    マトリックス中に分散している粒子面積1.0μm以上の粒子のうち、AlFeSi安定相の占める面積率が0.1%以上0.5%未満であることを特徴とする耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管。
  2. Tiを0.05〜0.15質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管。
  3. 外表面にZn溶射皮膜が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐食性に優れた熱交換器用押出扁平多穴管。
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