JP2011094174A - 銅合金継目無管 - Google Patents

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Abstract

【解決課題】強度が高く且つロウ付けによる強度低下が少ない銅合金継目無管を提供すること。
【解決手段】銅合金を加工して得られる銅合金継目無管であり、該銅合金は、Snと、0〜0.1質量%のZnと、0.01〜0.08質量%のZrと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなり、該銅合金中のSn、Zn及びZrの含有量が、下記式(1):(1)0.4≦A+B+2C≦0.85(式中、AはSnの含有量(質量%)を示し、BはZnの含有量(質量%)を示し、CはZrの含有量(質量%)を示す。)を満たし、該銅合金継目無管の平均結晶粒度が30μm以下であり、0.5〜80nmの大きさのZr系析出物が10〜600個/μmで分布していること、を特徴とする銅合金継目無管。
【選択図】なし

Description

本発明は、空調機用熱交換器、冷凍機等の伝熱管又は冷媒配管に使用される銅合金製の継目無管に関する。
従来より、ルームエアコン、パッケージエアコン等の空調機用熱交換器、冷凍機等の伝熱管又は冷媒配管には、継目無管が多く採用されており、強度や加工性、伝熱性等の諸物性、並びに材料及び加工コストにバランスの取れたりん脱酸銅管(JIS C1220T)が使用されてきた。
近年、これらの熱交換器では、重量の低減又はコストダウンの要求により、継目無管の薄肉化が必要となってきており、従来のりん脱酸銅管では強度が低いため、薄肉化は難しく、これに替わる銅合金製の継目無管の開発が求められている。
このような銅合金製の継目無管として、国際公開第2008/041777号公報(特許文献1)には、加工性に優れ、強度が高く、ロウ付けによる強度低下が少ない、銅合金製の継目無管が開示されている。
国際公開第2008/041777号公報(特許請求の範囲)
特許文献1によれば、加工性に優れ、強度が高く、ロウ付けによる強度低下が少ない、銅合金製の継目無管が得られるものの、更なる性能向上が求められている。特に、熱交換器等の耐圧強度設計においては、ロウ付け熱影響部の材料強度を元に肉厚を決めるため、ロウ付けによる熱強度低下が少ないことが、熱交換器の作製時の加工性を良好に保ちつつ、伝熱管、冷媒管の薄肉化を可能とするため、更に強度が高く且つロウ付けによる強度低下が少ない銅合金継目無管が要求されている。
従って、本発明は、強度が高く且つロウ付けによる強度低下が少ない銅合金継目無管を提供することにある。
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、銅合金に、特定の元素を特定の含有量で含有させ、且つ銅合金の結晶粒度、Zr系析出物の大きさ及び分布密度を適切にすることにより、強度が高く且つロウ付けによる強度低下が少ない銅合金継目無管が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明(1)は、銅合金を加工して得られる銅合金製の継目無管であり、
該銅合金は、Snと、0〜0.1質量%のZnと、0.01〜0.08質量%のZrと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなり、
該銅合金中のSn、Zn及びZrの含有量が、下記式(1):
(1)0.4≦A+B+2C≦0.85
(式中、AはSnの含有量(質量%)を示し、BはZnの含有量(質量%)を示し、CはZrの含有量(質量%)を示す。)
を満たし、
該銅合金継目無管の平均結晶粒度が30μm以下であり、
0.5〜80nmの大きさのZr系析出物が10〜600個/μmで分布していること、
を特徴とする銅合金継目無管を提供するものである。
本発明によれば、強度が高く且つロウ付けによる強度低下が少ない銅合金継目無管を提供することができる。
実施例3の転造加工後の溝形状を示す図である。
本発明の銅合金継目無管は、銅合金を加工して得られる銅合金製の継目無管であり、
該銅合金は、Snと、0〜0.1質量%のZnと、0.01〜0.08質量%のZrと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなり、
該銅合金中のSn、Zn及びZrの含有量が、下記式(1):
(1)0.4≦A+B+2C≦0.85
(式中、AはSnの含有量(質量%)を示し、BはZnの含有量(質量%)を示し、CはZrの含有量(質量%)を示す。)
を満たし、
該銅合金継目無管の平均結晶粒度が30μm以下であり、
0.5〜80nmの大きさのZr系析出物が10〜600個/μmで分布している銅合金継目無管である。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金は、Snと、0〜0.1質量%のZnと、0.01〜0.08質量%のZrと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該銅合金中のSn、Zn及びZrの含有量が、下記式(1):
(1)0.4≦A+B+2C≦0.85
(式中、AはSnの含有量(質量%)を示し、BはZnの含有量(質量%)を示し、CはZrの含有量(質量%)を示す。)
を満たす継目無管用の銅合金である。
そして、本発明の継目無管に係る該銅合金は、好ましくは、更に下記式(2):
(2)0.40≦A+B
(式中、A及びBは、前記と同義である。)
を満たし、且つ、Zrの含有量が0.06質量%以下である継目無管用の銅合金である。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金は、Sn及びZrを必須元素として含有し、Znを任意元素として含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金である。
本発明の銅合金継目無管において、Sn及びZnには、固溶強化により銅合金の強度を向上させる効果及び常温での延性を向上させる効果がある。また、これらの元素の場合、比較的低温で合金化できるので、製造上有利である。
本発明の銅合金継目無管において、Zrには、析出強化により銅合金の強度を向上させる効果がある。また、Zrには、ロウ付け温度が過剰に高くならない前提では、Zr析出物が残存し、結晶粒の粗大化を抑制することにより、強度低下を小さくする効果がある。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金中、Zrの含有量は、0.01〜0.08質量%である。銅合金中のZrの含有量が、0.01質量%未満だと、結晶粒粗大化を抑制する効果が小さく、ロウ付けによる強度低下が大きくなり、また、Sn及びZnによる固溶強化とZrによる析出強化を合わせても銅合金の強化が不十分となる。一方、銅合金中のZrの含有量が、0.08質量%を超えると、過剰な析出硬化が起こり、加工性を低下させる原因となる。例えば、厳しい曲げ条件によるヘアピン曲げ加工や、管端の拡管加工の加工性が低下する、などの問題が生じる。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金中のZnは、Snに比べて、延性を向上させる効果が小さく、また、過剰なZnは応力腐食感受性を高めるため、本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金では、Snを主として、Znの含有量は0.1質量%以下とする。銅合金中のZnの含有量が0.1質量%を超えると、応力腐食感受性が高くなり過ぎるので好ましくない。また、本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金では、Snは必須元素であるが、Znは任意元素なので、本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金中のZnの含有量は、0〜0.1質量%である。また、本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金は、他の不可避的不純物の含有量の一般的な上限である0.01質量%より、多い量のZnを含有してもよいので、溶解原料としてCu−Zn系銅合金のスクラップを使用することができる。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金では、A+B+2Cは0.4〜0.85であること、すなわち、下記式(1):
(1)0.4≦A+B+2C≦0.85
を満たす。
銅合金中のZrの含有量が0.08質量%以下であっても、Sn及びZnの含有量が多過ぎると、加工硬化が著しくなり、加工性、特に、冷間での引き抜き加工性が悪くなり、中間焼鈍工程を追加する必要が生じ、コスト増大を招くとともに、時効析出によって微細で均一な析出状態を得るための、冷間加工による十分な加工度が確保できなくなる。このため、A+B+2Cを0.85以下とする必要がある。
また、A+B+2Cを0.4以上とし、且つ、Zrの含有量を0.01質量%以上とすることにより、厳しい加工性が必要となる場合でも、銅合金継目無管の強度を最低限維持することができる。一方、A+B+2Cが0.4未満だと、銅合金継目無管の強度が不足する。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金では、好ましくはA+Bが0.40以上であること、すなわち、下記式(2):
(2)0.40≦A+B
を満たし、且つ、Zrの含有量が0.06質量%以下であり、
特に好ましくはA+Bが0.43以上であること、すなわち、下記式(2a):
(2a)0.43≦A+B
を満たし、且つ、Zrの含有量が0.06質量%以下である。本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金のように、Zr等の析出強化元素を含む銅合金の場合、時効析出によって強度が向上する一方、延性低下を引き起こす。本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金では、延性の低下による加工性の阻害を抑えるべく、Zrの含有量の上限を0.08質量%としてはいるが、厳しい加工性が必要となる場合、例えば、厳しい曲げ条件によるヘアピン曲げ加工や、管端の拡管加工や、高性能化の要求により難加工の内面溝形状を転造加工によって作製する場合などにおいては、十分な加工性を維持するために、SnやZnを積極的に添加することが望ましい。Sn及びZnは、前記のように、常温での延性を向上させる効果があり、Zrの含有量が0.01〜0.06質量%の場合、Zrの含有量を0.06質量%以下とし、且つ、Sn及びZnの合計量を0.40質量%以上とすることにより、加工性改善効果を奏する。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金中のPの含有量は、0.004〜0.040質量%であることが好ましく、0.015〜0.030質量%であることが特に好ましい。銅合金が、P元素を0.004質量%以上含有することにより、材料中の脱酸が十分であることが示される。そして、銅合金中のPの含有量が、多すぎると、銅合金の熱伝導性が低くなるので、伝熱管用の場合は特に、銅合金中のPの含有量は、0.040質量%以下が好ましい。
本発明の銅合金継目無管では、該銅合金の平均結晶粒度は30μm以下であり、且つ、大きさが0.5〜80nmのZr系析出物の分布密度が10〜600個/μmである。本発明の銅合金継目無管は、熱交換器等の製造において、ロウ付けに供される継目無管である。このロウ付けの方法としては、炉中ロウ付け、手ロウ付けが挙げられるが、いずれも、ロウ付けに供される継目無管は極部的に、750〜900℃の温度に、最長900秒間曝されることになる。このロウ付けの間に、微細なZr系析出物の再固溶が起こるため、銅合金の結晶粒は粗大化し、ロウ付けにより継目無管の強度低下が起こる。
そこで、本発明の銅合金継目無管では、ロウ付け前の平均結晶粒度と、Zr系析出物の大きさ及び分布密度とを、適切な範囲、すなわち、銅合金の平均結晶粒度は30μm以下とし、且つ、大きさが0.5〜80nmのZr系析出物の分布密度を10〜600個/μmにすることにより、ロウ付けによる銅合金継目無管の強度低下を抑制することができる。微細なZr系析出物が分散していることによって、結晶粒界の移動をピン止め効果で抑制し、結晶粒の粗大化を抑制する効果がある。微細なZr系析出物は、ロウ付け加熱中に部分的に固溶していくために、ピン止め効果は低減し、結晶粒成長を招くものの、本発明の銅合金継目無管では、ロウ付け加熱前のZr系析出物の大きさ及び分布密度を適切な範囲にすることにより、ロウ付け加熱によるピン止め効果の減少を少なくすることができる。そのため、本発明の銅合金継目無管では、ロウ付けにより高温で保持された後でも、結晶粒は微細なまま保持されるとともに、強度に寄与するZr系析出物の分散状態も維持される。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金の平均結晶粒度は、30μm以下である。前述したように、本発明の銅合金継目無管は、ロウ付けに供されるので、時効処理後且つロウ付け前の該銅合金の平均結晶粒度が、30μm以下である。銅合金の平均結晶粒度が上記範囲を超えると、いくらZr系析出物の分布状態を適正化し、結晶粒の粗大化を抑制することができても、元の結晶粒が大きいために、ロウ付け後の結晶粒径は好ましい範囲から外れることとなる。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金のZr系析出物は、CuZr、CuZr等のZrとCuとによって構成される析出物又はZrとCuと他の1種以上の金属元素によって構成される析出物である。
本発明の銅合金継目無管において、ロウ付け加熱後もピン止め効果を発揮する該Zr系析出物の大きさは、0.5〜80nmである。該Zr系析出物の大きさが上記範囲未満だと、ロウ付け加熱時に再固溶し消失してしまう、もしくは強度向上に寄与しない大きさまで小さくなってしまう。また、該Zr系析出物の大きさが上記範囲を超えると、ロウ付け加熱時の結晶粒界のピン止め効果が十分に得られない。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金では、大きさが0.5〜80nmの該Zr系析出物の分布密度は、10〜600個/μmである。上記大きさのZr系析出物の分布密度が上記範囲未満だと、結晶粒界のピン止め効果を十分に得るための析出物の数が不足し、ロウ付け加熱時に結晶粒の粗大化が起こって、ロウ付け後の強度が低下する。また、上記大きさのZr系析出物の分布密度が上記範囲を超えてもピン止め効果のそれ以上の向上は期待できないばかりでなく、加工性を低下させる原因ともなり、ヘアピン曲げ加工性や管端拡管加工性が低下してしまう。特に結晶粒界ピン止め効果に効果的なのは、大きさが0.5〜10nmの該Zr系析出物の分布密度が100〜600個/μmである。
本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金では、上記範囲未満の大きさのZr系析出物又は上記範囲を超える大きさのZr系析出物が存在していてもよい。つまり、銅合金中に、上記範囲未満の大きさのZr系析出物又は上記範囲を超える大きさのZr系析出物が存在していても、上記範囲内の大きさのZr系析出物の分布密度が上記範囲内であればよい。
本発明の銅合金継目無管は、Zr系析出物の大きさ及び分散状態が適切化されているために、ロウ付けによる強度の低下が小さい。具体的には、下記式(3)に示す強度低下率が、800℃で30秒間の加熱後において、5%以下であることが好ましい。800℃で30秒間の加熱後において、強度低下率が5%以下であることが、従来のものに比べ薄肉化を可能とするための指標となる。
強度低下率(%)=((ロウ付け前の強度−ロウ付け後の強度)/ロウ付け前の強度)×100 (3)
(式(3)中、強度は、引張強さ(単位:MPa)である。)
また、ロウ付け前及びロウ付け後の引張強さは245MPa以上であることが好ましい。
また、本発明の銅合金継目無管は、Sn、Zn及びZrの含有量が適切化されているため、加工性が良好である。
本発明の銅合金継目無管の形態例としては、内面溝が形成されていない内面平滑管(ベアー管)及び内面溝が形成されている内面溝付管がある。
本発明の銅合金継目無管の製造方法について述べる。本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法は、継目無管が内面平滑管である場合の製造方法である。また、本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法は、継目無管が内面溝付管である場合の製造方法である。
本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法は、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、時効処理と、を順に行い、
該熱間押出工程と該時効処理との間には中間焼鈍処理を行わず、
該冷間加工工程の総加工度が90%以上である、
銅合金継目無管の製造方法である。
本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該鋳造工程と、該熱間押出工程と、該冷間加工工程と、該時効処理と、を順に行う。なお、これらを順に行うとは、該鋳造工程の直後に該熱間押出工程を、該熱間押出工程の直後に該冷間加工工程を、該冷間加工工程の直後に該時効処理を行うということではなく、該鋳造工程より後に該熱間押出工程を、該熱間押出工程より後に該冷間加工工程を、該冷間加工工程より後に該時効処理を行うということ指す。
また、本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法は、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、中間焼鈍処理(A)と、転造加工工程と、時効処理と、を順に行い、
該熱間押出工程と該中間焼鈍処理(A)との間には中間焼鈍処理を行わず、
該冷間加工工程の総加工度が、90%以上である、
銅合金継目無管の製造方法である。
本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該鋳造工程と、該熱間押出工程と、該冷間加工工程と、該中間焼鈍処理(A)と、該転造加工工程と、該時効処理と、を順に行う。なお、これらを順に行うとは、該鋳造工程の直後に該熱間押出工程を、該熱間押出工程の直後に該冷間加工工程を、該冷間加工工程の直後に該中間焼鈍処理(A)を、該中間焼鈍処理(A)の直後に該転造加工工程を、該転造加工工程の直後に該時効処理を行うということではなく、該鋳造工程より後に該熱間押出工程を、該熱間押出工程より後に該冷間加工工程を、該冷間加工工程より後に該中間焼鈍処理(A)を、該中間焼鈍処理(A)より後に該転造加工工程を、該転造加工工程より後に該時効処理を行うということ指す。
本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法の該鋳造工程から該冷間加工工程までと、本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法の該鋳造工程から該冷間加工工程までとは、同様である。
本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法及び本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法に係る該鋳造工程は、常法に従って、溶解、鋳造し、所定の元素が所定の含有量で配合されているビレットを得る工程である。該鋳造工程では、例えば、銅の地金及び本発明の銅合金継目無管に係る該銅合金の含有元素の地金又は該含有元素と銅の合金を、本発明の銅合金継目無管の銅合金中の含有量が、所定の含有量となるように配合して、成分調整を行い、次いで、高周波溶解炉等を用いて、ビレットを鋳造する。
Zrは活性な金属なので、溶解時の酸化ロスが多くなるため、成分調整においては、Zrの溶解時の酸化ロスを考慮した配合が必要である。
また、該鋳造工程では、Pを配合することにより、溶湯の流動性が高くなるので、鋳造性が高くなり、ガス孔等の鋳造欠陥の発生が抑制され、また、脱酸効果が得られるので、上記Zrの溶解時の酸化ロスを少なくすることができる。そして、Pの配合量が多くなりすぎると、銅合金中のP元素の含有量が多くなりすぎるため、熱伝導性が低くなる。そのため、該鋳造工程では、銅合金中のP含有量が、0.004〜0.040質量%となるようにPを配合することが好ましく、0.015〜0.030質量%となるようにPを配合することが特に好ましい。
詳細には、該鋳造工程では、最終の工程である該時効処理を行うことにより得られる継目無管の化学組成が、本発明の銅合金継目無管の化学組成となるように、該鋳造工程を行うことにより得られる該ビレットの化学組成を調節する。該ビレットは、Snと、0〜0.1質量%のZnと、0.01〜0.08質量%のZrと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなり、Sn、Zn及びZrの含有量が、下記式(1):
(1)0.4≦A+B+2C≦0.85
(式中、AはSnの含有量(質量%)を示し、BはZnの含有量(質量%)を示し、CはZrの含有量(質量%)を示す。)
を満たす。好ましくは、該ビレット中のSn、Zn及びZrの含有量が、更に、下記式(2):
(2)0.40≦A+B
(式中、A及びBは、前記と同義である。)
を満たし、且つ、Zrの含有量が0.06質量%以下である。また、該ビレットは、Pを含有することもでき、その場合のPの含有量は0.004〜0.04質量%である。
本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法及び本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、次いで、該鋳造工程を行うことにより得られたビレットを熱間押出加工する該熱間押出工程を行う。該熱間押出工程では、該熱間押出加工前に該ビレットを所定の温度で加熱した後、該熱間押出加工を行う。該熱間押出加工は、マンドレル押出によって行われる。すなわち、加熱前に、冷間で予め穿孔したビレット、あるいは、押出前に熱間で穿孔したビレットに、マンドレルを挿入した状態で、熱間押出を行なって、継目無熱間押出素管を得る。
該熱間押出工程の前に、均質化処理を行うことができる。また、該熱間押出加工前のビレットの加熱に、均質化処理を兼ねさせることもできる。
該熱間押出工程を行うことにより得られた該継目無熱間押出素管を、該熱間押出工程後、速やかに冷却する。該冷却は、該継目無熱間押出素管を水中へ押し出すこと又は熱間押出後の該継目無熱間押出素管を水中へ投入することによって、行われる。該熱間押出工程での押出完了時から冷却開始までの時間、すなわち、該ビレットが押出ダイスを通過してから、押し出された該継目無熱間押出素管が最初に冷却水に接触するまでの時間が長過ぎると、この間にZrの析出が起こる。そして、このときの析出物は、該時効処理後に析出する析出物に比べ、大きく且つ分散状態もまばらであって、あとのロウ付け加熱時の結晶粒界の移動を阻止する効果はなく、また、あとの時効処理によって微細に析出するためのZrを消費してしまうことになり、このような析出を極力避けるべきである。そのため、押出完了時から冷却開始まで時間を極力短くすることが好ましい。具体的には、押出完了時から冷却開始まで時間は、2秒以下が好ましい。
本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法及び本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、次いで、冷却後の継目無押出素管の冷間加工を行い、管の外径及び肉厚を減じていく該冷間加工工程を行う。該冷間加工は、圧延加工や抽伸加工等の冷間加工である。また、該冷間加工工程では、該圧延加工や該抽伸加工等の冷間加工を、複数回行うことができる。なお、本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法及び本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該冷間加工工程とは、冷間で行う加工の全てを指す。
該冷間加工工程より後は、本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法と、本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法とでは、異なるので、それぞれ説明する。
本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該冷間加工工程に次いで、該冷間加工工程を行うことにより得られた冷間加工後の継目無素管の時効処理を行う。該時効処理の処理温度は、400〜650℃の温度であり、400〜650℃の処理温度で時効処理を行うことにより、適切なZr系析出物の大きさ及び分布密度や、適切な銅合金の結晶粒度を有する本発明の銅合金継目無管を得る。なお、該時効処理の処理温度及び処理時間は、適切なZr系析出物の大きさ及び分布密度や、適切な銅合金の結晶粒度となるように、適宜選択される。
なお、該時効処理を行うためには、該時効処理を行う前に、Zrを銅マトリックスに固溶させるための溶体化処理を行う必要があるが、本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該熱間押出工程前の加熱に、該溶解化処理を兼ねさせる。
そして、本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該熱間押出工程と該時効処理との間には、中間焼鈍処理を行わず、この間の該冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を90%以上とする。なお、該冷間加工工程の総加工度とは、該冷間加工工程で最初に行う冷間加工前の継目無素管に対する該冷間加工工程で行う最後の冷間加工後の継目無素管の加工度を指し、下記式(4)に示す断面減少率で表す。
断面減少率(%)=((管の加工前の断面積−管の加工後の断面積)/(管の加工前の断面積))×100 (4)
本発明の第一の銅合金継目無管の製造方法では、該熱間押出工程を行った後、該時効処理を行う前までの間には、中間焼鈍処理を行わず、且つ、該冷間加工工程の総加工度を上記範囲とすることにより、大きさが0.5〜80nmの該Zr系析出物を、分布密度が10〜600個/μmで、好ましくは、大きさが0.5〜10nmの該Zr系析出物を、分布密度が100〜600個/μmで分布させることができ、また、該時効処理後の結晶粒を微細にすること、つまり、該銅合金の平均結晶粒度を30μm以下にすることができる。冷間加工により導入される加工歪は、該時効処理でのZr系析出物の析出場所となるので、該冷間加工の加工度を大きくすることにより、導入される加工歪が均一且つ微細になり、微細で均一なZr系析出物が析出する。
このように、本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法を行うことにより、本発明の銅合金継目無管を得ることができる。
本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該冷間加工工程に次いで、該冷間加工工程を行うことにより得られた冷間加工後の継目無素管を、500〜850℃に加熱する該中間焼鈍処理(A)を行う。該中間焼鈍処理(A)を行うことにより、該転造加工工程での転造加工をし易くする。該中間焼鈍処理(A)における保持温度及び保持時間は、該転造加工工程によって所定の内面溝形成の加工が可能となる最低限の条件、すなわち、できるだけ温度を低く、できるだけ時間を短くすることが好ましい。本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該中間焼鈍処理(A)を行った後、該転造加工工程を行うまでは、他の熱処理を行わない。つまり、該中間焼鈍処理(A)は、該転造加工工程の前の熱処理である。
本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、次いで、該中間焼鈍処理(A)後の継目無素管を転造加工する該転造加工工程を行う。該転造加工は、管材料の内面に、内面溝を形成させる転造加工を行う工程であり、該中間焼鈍処理(A)後の継目無素管内に、外面にらせん状の溝加工を施した転造プラグを配置して、高速回転する複数の転造ボールによって、管の外側から押圧して、管の内面に転造プラグの溝を転写することにより行われる(特開2003−191006号公報参照)。また、通常、該中間焼鈍処理(A)を行った後、縮径加工を行ってから、該転造加工工程を行う。
本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、次いで、該転造加工工程を行うことにより得られた転造加工後の内面溝付管の時効処理を行う。該時効処理の処理温度は、400〜650℃の温度であり、400〜650℃の処理温度で時効処理を行うことにより、適切なZr系析出物の大きさ及び分布密度や、適切な銅合金の結晶粒度を有する本発明の銅合金継目無管を得る。なお、該時効処理の処理温度及び処理時間は、適切なZr系析出物の大きさ及び分布密度や、適切な銅合金の結晶粒度となるように、適宜選択される。
なお、該時効処理を行うためには、該時効処理を行う前に、Zrを銅マトリックスに固溶させるための溶体化処理を行う必要があるが、本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該熱間押出工程前の加熱に、該溶解化処理を兼ねさせる。
そして、本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該熱間押出工程と該中間焼鈍処理(A)との間には中間焼鈍処理を行わず、この間の該冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を90%以上とする。なお、該冷間加工工程の総加工度とは、該冷間加工工程で最初に行う冷間加工前の継目無素管に対する該冷間加工工程で最後に行う冷間加工後の継目無素管の加工度を指す。
本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法では、該熱間押出工程を行った後、該中間焼鈍処理(A)を行う前までの間には、中間焼鈍処理を行わず、且つ、該冷間加工工程の総加工度を上記範囲とすることにより、大きさが0.5〜80nmの該Zr系析出物を、分布密度が10〜600個/μmで、好ましくは、大きさが0.5〜10nmの該Zr系析出物を、分布密度が100〜600個/μmで分布させることができ、また、該時効処理後の結晶粒を微細にすること、つまり、該銅合金の平均結晶粒度を30μm以下にすることができる。冷間加工により導入される加工歪は、該時効処理でのZr系析出物の析出場所となるので、該冷間加工の加工度を大きくすることにより、導入される加工歪が均一且つ微細になり、微細で均一なZr系析出物が析出する。また、該中間焼鈍処理(A)を行うことにより、銅合金は再結晶するが、その再結晶粒をできるだけ微細な状態にしておくためには、このような均一且つ微細な加工歪をできる限り保持させるために、該熱間押出工程を行った後、該中間焼鈍処理(A)を行う前までの間には中間焼鈍処理を行わない。
このように、本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法に行うことにより、本発明の銅合金継目無管を得ることができる。
本発明の第一の形態の銅合金継目無管の製造方法により作製された本発明の銅合金継目無管(内面平滑管)は、コイル状に巻き取られ、主として、冷媒配管用に供される。また、本発明の第二の形態の銅合金継目無管の製造方法により作製された本発明の銅合金継目無管(内面溝付管)は、コイル形状に巻き取られ、熱交換器用の伝熱管としてクロスフィンチューブ型熱交換器の作製に供される。
<本発明の銅合金継目無管が、クロスフィンチューブ型熱交換器用の伝熱管に供される場合>
該クロスフィンチューブ型熱交換器は、空気側のアルミニウムプレートフィンと冷媒側の伝熱管が、一体に組付けられて構成されている。
該クロスフィンチューブ型熱交換器の製造工程について説明する。該クロスフィンチューブ型熱交換器の製造工程では、先ず、プレス加工等により、所定の組付け孔が複数形成されたアルミニウムプレートフィンを作製する。
次いで、得られたアルミニウムプレートフィンを積層した後、該組付け孔の内部に、伝熱管を挿通する。該伝熱管は、該転造加工工程によって内面に溝が形成された本発明の銅合金継目無管を、定尺切断及びヘアピン曲げを加工して作製される。
次いで、該伝熱管を、該アルミニウムプレートフィンに拡管固着し、ヘアピン曲げ加工を施した側とは反対側の伝熱管端部を拡管加工して、Uベンド管を挿通後、ロウ付けして、熱交換器を作製する。
このような製造工程中で、継目無管は、ヘアピン曲げ加工や管端拡管加工という強加工が施されるため、加工性が良好であることが必要である。加工性が良好であることの裏返しとして、強度が高過ぎないことが望まれる。このためには、継目無管には、ロウ付けによる強度低下が極力小さいことが必要である。そして、本発明の銅合金継目無管は、上述したように、Zr系析出物の大きさ及び分散密度が適切化されているために、ロウ付けによる強度低下が小さい。
<本発明の銅合金継目無管が、冷媒配管用に供される場合>
冷媒配管としては、例えば、二酸化炭素冷媒を用いた給湯機においては、ヒートポンプサイクルを構成する圧縮機、蒸発器、膨張弁、放熱器を接続する配管に用いられる。このような配管接続部においては、一方の管端を拡管し、もう一方の管端をこの拡管部に挿入した後、ロウ付けを行うことによって作製される。この場合も、伝熱管として使用される場合と同様に、管端拡管加工という強加工が施されるため、加工性が良好であることが必要である。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
本発明の継目無管のうち、内面平滑管の例について説明する。
実施例1(No.1〜9、17、19、20)及び比較例1(No.10〜16、18)
Cu、Sn及びZnの地金又はスクラップ、並びにCu−Zr母合金及びCu−P母合金を用いて、表1に示す成分に配合し、高周波溶解炉を用いて径254mmの鋳塊を製造した。
次いで、該鋳塊を930℃に加熱した後、この温度で、熱間押出を行い、外径81mm×肉厚8mm管(押出素管)とした。なお、熱間押出を、水中押出にて行った。また、熱間押出前の加熱にて溶体化処理を兼ねた。
次いで、冷間圧延及び冷間抽伸を行い、外径9.52mm×肉厚0.8mm管(冷間抽伸管)を得た。
次いで、バッチ炉内にて、非酸化性雰囲気中で、600℃で30分間の時効処理を行い、継目無管を得た。
なお、熱間押出と時効処理との間には、中間焼鈍を行っていない。また、このとき、冷間圧延及び冷間抽伸の合計の冷間加工度、すなわち、冷間加工工程の総加工度(断面減少率)は98.8%であった。
(評価)
1.ロウ付け前の継目無管の組織
<平均結晶粒度>
実施例1及び比較例1の継目無管について、管の円周方向断面において、JIS H0501に定められた比較法を用いて結晶粒度を測定し、任意の10ヶ所の平均した値を平均結晶粒度とした。その結果を表2に示す。
<Zr系析出物の分布密度>
透過型電子顕微鏡観察により、Zr系析出物の分布密度の評価を行った。
電子顕微鏡観察用の試料の調整は、前記実施例1及び比較例1の継目無管より切り出した試料を、まずエメリー紙を用いた湿式研磨により厚さ0.2mmとし、その後、リン酸とメタノールを体積比1:3の割合で混合した溶液を用いて電解研磨を行って薄膜とした。
そして、得られた薄膜を、加速電圧200kVにて透過型電子顕微鏡観察を行った。
透過型電子顕微鏡観察では、倍率20000倍で撮影した電子顕微鏡写真の、0.5μm×0.4μmの視野から、大きさ0.5〜80nmの析出物の数及び大きさ0.5〜10nmの析出物の数をカウントした。析出物のカウントの際には、等厚干渉縞を用いた膜厚測定法により、膜厚変化が線形との仮定のもと、平均膜厚を求め、体積率を面積率に換算した。
なお、Zr系析出物は円盤状の形態を示すものがあり、電子顕微鏡写真では、細長い形状に撮影されることがある。このため、1個の析出物像にて一番長い径(長径)をその析出物の大きさとした。
また、析出物の数をカウントするに際し、数が200個を超えるようなものについては、0.5μm×0.4μmの視野の中から、倍率10万倍で撮影した、さらに狭い視野0.1μm×0.08μmを3箇所、任意に選んで、その視野にて析出物のカウントを行い、その平均値にて評価した。
析出物の密度を下記ランクにて評価した。
ランク1:10個/μm2未満
ランク2:10〜100個/μm2
ランク3:100〜600個/μm2
ランク4:600個/μm2超え
なお、大きさ0.5〜80nmの析出物の密度は、ランク2、ランク3が本発明の範囲に該当する。その結果を表2に示す。
2.加工性
ロウ付け前の継目無管を、円錐状のプラグによる拡管試験により、加工性試験を行った。管端の外径を拡管前の外径の3倍まで拡管した後も、割れが生じなかったものを合格「○」とし、割れが生じたものを不合格「×」とした。その結果を表2に示す。
3.ロウ付け前後の機械的性質
ロウ付け時の管の温度上昇と同等の条件として、800℃で30秒間の加熱を行い、その加熱前後の機械的性質(引張強さと伸び)を評価した。
引張試験により機械的性質を評価し、JIS Z2241に準じ、引張強さと伸びを測定した。その結果を、表2に示す。
実施例2(No.21〜23)及び比較例2(No.24〜26)
表3に示す化学成分の鋳塊を用い、次いで、該鋳塊を930℃の適宜の温度に加熱した後、この温度で、熱間押出を行い、外径81mm×肉厚8mm管(押出素管)とした。なお、熱間押出を、水中押出にて行った。また、熱間押出前の加熱にて溶体化処理を兼ねた。
次いで、冷間圧延及び冷間抽伸を行い、外径9.52mm×肉厚0.8mm管(冷間抽伸管)を得た。
次いで、バッチ炉内にて、非酸化性雰囲気中で、表3に示す処理条件で時効処理を行い、継目無管を得た。
なお、No.21〜25では、熱間押出と時効処理との間には、中間焼鈍を行っていない。No.26では、熱間押出と時効処理との間にて、中間焼鈍を表3に示す条件にて行った。
また、このとき、冷間圧延及び冷間抽伸の合計の冷間加工度、すなわち、冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を、表3に示す。なお、No.26は、中間焼鈍以降、時効処理までの合計の冷間加工度である。
(評価)
ロウ付け前の継目無管の組織(平均結晶粒度、Zr系析出物の分布密度)、加工性及び、ロウ付け前後の継目無管の機械的性質については、実施例1及び比較例1と同様に評価を行った。その結果を表4に示す。
本発明の銅合金継目無管のうち、内面溝付管の例について説明する。
実施例3(No.27、28)
Cu、Sn及びZnの地金又はスクラップ、並びにCu−Zr母合金及びCu−P母合金を用いて、表5に示す化学成分の鋳塊を用い、次いで、該鋳塊を930℃に加熱した後、この温度で、熱間押出を行い、外径81mm×肉厚8mm管(押出素管)とした。なお、熱間押出を、水中押出にて行った。また、熱間押出前の加熱にて溶体化処理を兼ねた。
次いで、冷間圧延及び冷間抽伸を行い、外径9.5mm×肉厚0.5mm管(冷間抽伸管)を得た。
次いで、下記条件で中間焼鈍(A)を行った。
<中間焼鈍(A)の条件>
500℃から730℃までの最小昇温速度:10℃/秒
最高到達温度:800℃
750℃〜800℃での保持時間:2秒
730℃から500℃までの最小冷却速度:10℃/秒
次いで、転造加工を行い、外径7mmの内面溝付管を得た。得られた内面溝付管の寸法諸元を表7に示す。
次いで、バッチ炉内にて、非酸化性雰囲気中で、600℃で30分間の時効処理を行い、継目無管を得た。
なお、熱間押出と中間焼鈍(A)との間には、中間焼鈍を行っていない。また、このとき、冷間圧延及び冷間抽伸の合計の冷間加工度、すなわち、冷間加工工程の総加工度(断面減少率)は99.2%であった。
(評価)
ロウ付け前の継目無管の組織(平均結晶粒度、Zr系析出物の分布密度)、加工性及びロウ付け前後の継目無管の機械的性質については、実施例1及び比較例1と同様に評価を行った。その結果を表6に示す。
(実施例1、比較例1)
No.1〜9、17、19、20は、本発明例である。ロウ付け前の結晶粒度、0.5〜80nmサイズの析出物の密度が適正であるため、加工性、ロウ付け前後の強度、ロウ付け後の強度低下率が良好であった。
No.1〜5、7〜9、17は、更に、0.5〜10nmサイズの析出物の密度も良好であった。
No.20は、P含有量が高いため、No.2と比較して、導電率が若干低くなり、熱伝導率が若干劣った。
No.19は、P含有量が低いため、No.2と比較して、脱酸が十分ではなく、水素脆化の発生の可能性がNo.2と比較例して高くなるので、使用上好ましくない。
No.10〜12は、Zr含有量が高過ぎるために、0.5〜80nmサイズの析出物の密度が高くなり過ぎて、加工性が良好でなかった。
No.13は、Zr含有量が低過ぎるために、0.5〜80nmサイズの析出物の密度が低くなり過ぎて、ロウ付け加熱時に結晶粒が粗大化し、強度が低かった。
No.14、15は、A+B+2Cの値が低過ぎるために、強度が低かった。
No.16は、A+B+2Cの値が高過ぎるために、加工性が低かった。
No.18は、加工性、ロウ付け前後の強度、ロウ付け後の強度低下率は良好であったものの、Zn含有量が高過ぎるため、応力腐食割れ感受性が高くなるので、熱交換器用としての使用に適さない。
なお、No.2、No.17及びNo.18の継目無管を、8%の拡管率(外径比)で拡管し、12.5%アンモニア水溶液雰囲気中に2時間暴露して、割れ発生の有無を調査したところ、No.18では、2時間以内に目視で確認できる割れが発生したのに対し、No.2及びNo.17では、2時間経過後も目視で確認できる割れは発生していなかった。
(実施例2、比較例2)
No.21〜23は、本発明例である。ロウ付け前の結晶粒度、0.5〜80nmサイズの析出物の密度が適正であるため、加工性、ロウ付け前後の強度、ロウ付け後の強度低下率が良好であった。
No.24は、0.5〜80nmサイズの析出物の密度が低過ぎたため、ロウ付け加熱時に結晶粒が粗大化し、強度低下も大きかった。
No.25は、0.5〜80nmサイズの析出物の密度が高過ぎたため、加工性が低かった。
No.26は、ロウ付け前の結晶粒径が大き過ぎたため、析出物の密度は適正であっても、ロウ付け後の結晶粒度が大きく、強度が低くなった。
(実施例3)
No.27、28は、本発明例である。ロウ付け前の結晶粒度、0.5〜80nmサイズの析出物の密度が適正であるため、加工性、ロウ付け前後の強度、ロウ付け後の強度低下率が良好であった。
熱交換器等の耐圧強度設計においては、ロウ付け熱影響部の材料強度を元に管の肉厚を決める。そして、本発明の銅合金継目無管は、強度が高く且つロウ付けによる強度低下が少ないので、本発明によれば、伝熱管、冷媒管の薄肉化が可能となるとともに、ロウ付け熱影響のない部分で、不必要な強度向上がなく、その裏返しとしての加工性低下が抑制されることによって、良好な加工性を確保することが可能となる。
t 肉厚
h フィン高さ
α フィン頂角

Claims (3)

  1. 銅合金を加工して得られる銅合金継目無管であり、
    該銅合金は、Snと、0〜0.1質量%のZnと、0.01〜0.08質量%のZrと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなり、
    該銅合金中のSn、Zn及びZrの含有量が、下記式(1):
    (1)0.4≦A+B+2C≦0.85
    (式中、AはSnの含有量(質量%)を示し、BはZnの含有量(質量%)を示し、CはZrの含有量(質量%)を示す。)
    を満たし、
    該銅合金継目無管の平均結晶粒度が30μm以下であり、
    0.5〜80nmの大きさのZr系析出物が10〜600個/μmで分布していること、
    を特徴とする銅合金継目無管。
  2. 前記銅合金中のSn、Zn及びZrの含有量が、更に、下記式(2):
    (2)0.40≦A+B
    (式中、A及びBは、前記と同義である。)
    を満たし、且つ、Zrの含有量が0.06質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の銅合金継目無管。
  3. Pの含有量が0.004〜0.04質量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の銅合金継目無管。
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