JP2002256364A - 熱交換器のフィン材用アルミニウム合金、及び熱交換器のフィン材の製造方法 - Google Patents
熱交換器のフィン材用アルミニウム合金、及び熱交換器のフィン材の製造方法Info
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Abstract
ン性に優れた熱交換器のフィン材用アルミニウム合金及
び熱交換器のフィン材の製造方法を提供する。 【解決手段】 Mn:0.3〜2.0重量%、Si:
0.5〜1.5重量%、Ce:0.005〜0.5重量
%を含有し、さらに、Feを0.05重量%以上1.0
重量%未満含有し、Cu及びNiの含有量がいずれも
0.1重量%未満であり、残部がAlと不可避不純物か
らなる熱交換器のフィン材用アルミニウム合金を用い、
溶湯を鋳造する際の冷却速度を15〜1000℃/se
cとして板材又はスラブを作製し、次いで、板材を作製
する場合には冷間圧延を行い、スラブを作製する場合に
は熱間圧延、冷間圧延を行い、次いで、460〜600
℃の温度で、4時間以内の中間焼鈍を少なくとも1回施
し、最終圧延率が15〜50%となるようにさらに冷間
圧延を行うことにより、熱交換器のフィン材を製造す
る。
Description
にろう付けした後に高い強度を有し、高熱伝導性を有す
るとともに、自己耐食性と耐エロージョン性に優れた熱
交換器のフィン材用アルミニウム合金、及び熱交換器の
フィン材の製造方法に関するものである。
ータ、空調系のコンデンサ、エバポレータなどの熱交換
器が使用されており、このような熱交換器においては、
例えば管材からなる冷媒通路形成体に、フィン材をアル
ミニウム−シリコン合金等のろう材によりろう付けして
金属的に結合させ、伝熱面積を広くすることにより熱交
換効率の向上を図っている。従来、フィン材としては、
熱伝導率の良いアルミニウム合金(例えば、AA105
0合金などの純アルミニウム系合金、AA3003合金
などのアルミニウム−マンガン系合金、アルミニウム−
鉄系合金など)が一般に用いられている。
ガス排出量を低減するために、燃費の向上と車両重量の
低減が必要になっており、これに伴って、自動車等の部
品の1つである熱交換器についても、軽量かつ小型で熱
交換効率の高い熱交換器の開発が進められている。
るための手段の1つとして、熱交換器を構成するフィン
材の薄肉化が検討されており、フィン材の薄肉化に伴っ
て、冷媒通路形成体にろう付けした後に高い強度を有
し、高熱伝導性を有するとともに、自己耐食性に優れ、
耐エロージョン(侵食)性に優れたフィン材の開発が必
要になっている。
耐食性、耐エロージョン性に優れたフィン材の開発が必
要になっている理由について説明する。フィン材には従
来から冷媒通路形成体の腐食を防止するための犠牲陽極
材としての作用が付与されているが、薄いフィン材が腐
食されると熱交換器コアとしての強度、熱交換率を確保
することができず、製品寿命が短くなるため、犠牲陽極
材としての作用を有するとともに、自己耐食性を有する
ことが必要になっている。特に、自動車のエバポレータ
ーやコンデンサでは腐食されやすい環境にあるため、自
己耐食性の高いフィン材が必要になっている。
自然酸化被膜が形成され、この酸化被膜が保護膜として
機能するが、冷媒通路形成体にフィン材をろう付けする
際には、フィン材表面のろう付けを行う箇所の酸化被膜
をあらかじめ破壊してから、溶融させたろう材を用いて
フィン材のろう付けを行うため、フィン材の耐エロージ
ョン性が低い場合には、フィン材がろう材によって侵食
され、薄いフィン材では熱交換器として必要な強度が得
られなくなり、さらには熱交換器としての構造が保てな
くなるという恐れがある。したがって、フィン材にはろ
う材に対する耐エロージョン性を有することが必要にな
っている。
するフィン材が提案されているが、上記の性質をすべて
満足できるフィン材は開発されていないのが現状であ
る。例えば、特許第2846544号には、強度と熱伝
導性に優れたフィン材として、Si:0.3〜0.8重
量%、Fe:0.5〜1.5重量%、Ni:0.1〜
2.0重量%等を含有するアルミニウム合金からなるフ
ィン材が開示されているが、このフィン材は、高強度と
高熱伝導性を有するものの、耐エロージョン性や自己耐
食性については記載されていない。また、特開平11−
256259号公報には、強度と熱伝導性と耐エロージ
ョン性に優れたフィン材として、Fe:1.0〜2.5
重量%、Ce:0.005〜0.5重量%を含有し、さ
らに必要に応じて、Zr:0.05〜0.2重量%及び
Zn:0.5〜2.0重量%、及び/又は、Mn:0.
1〜0.5重量%、Si:0.1〜0.5重量%、C
u:0.05〜0.7重量%のうち1種又は2種以上を
含有するフィン材が開示されている。しかしながら、こ
のフィン材は強度と熱伝導性と耐エロージョン性に優れ
るものの、Feを1.0重量%以上含有しているため、
自己耐食性が低いものとなっている。
n:0.8〜1.3重量%、Si:0.2〜0.7重量
%等を含有するアルミニウム合金を用い、熱間圧延温度
や中間焼鈍温度あるいは最終冷間圧延率を規定した、耐
垂下性や犠牲陽極効果に優れたアルミニウム合金薄板の
製造方法が開示されている。
ム合金からなり、強度や耐垂下性に優れたフィン材又は
フィン材の製造法方法は、特開平11−256261号
公報、特開平4−247841号公報、特開平5−43
999号公報、特開平4−371369号公報などに開
示されている。しかしながら、いずれのフィン材(アル
ミニウム合金)も、強度や耐垂下性に優れるものの、熱
伝導性、耐エロージョン性、自己耐食性については記載
されていない。
て満足できるフィン材は開発されていないのが現状であ
り、上記の性質のうち1つでも欠けてしまうと、熱交換
器のフィン材としての必要な特性を満足できなくなるば
かりでなく、熱交換器の熱交換機能にも支障をきたす恐
れがある。
めになされたもので、ろう付け後に高い強度を有し、高
熱伝導性を有するとともに、自己耐食性、耐エロージョ
ン性に優れた熱交換器のフィン材用アルミニウム合金及
び熱交換器のフィン材の製造方法を提供することを目的
とする。
に、本発明者は種々検討を行った結果、以下の熱交換器
のフィン材用アルミニウム合金を発明し、この本発明の
熱交換器のフィン材用アルミニウム合金を用いることに
より、ろう付け後に高い強度を有し、高熱伝導性を有す
るとともに、自己耐食性、耐エロージョン性に優れたフ
ィン材を製造することができることを見出した。
アルミニウム合金は、Mn:0.3〜2.0重量%、S
i:0.5〜1.5重量%、Ce:0.005〜0.5
重量%を含有し、さらに、Feを0.05重量%以上
1.0重量%未満含有し、Cu及びNiの含有量がいず
れも0.1重量%未満であり、残部がAlと不可避不純
物からなることを特徴とする。
〜2.0重量%含有させることにより、製造されるフィ
ン材のろう付け後の強度を向上することができること、
Siを0.5〜1.5重量%含有させることにより、製
造されるフィン材の強度を向上することができるととも
に、ろう付け後の熱伝導性を向上することができるこ
と、Ceを0.005〜0.5重量%を含有させること
により、製造されるフィン材のろう付け時の耐エロージ
ョン性を向上することができるとともに、ろう付け後の
熱伝導性と強度を向上することができること、Feを
0.05重量%以上1.0重量%未満含有させることに
より、製造されるフィン材のろう付け後の強度と熱伝導
性を向上することができることを見出した。
Ceを0.5重量%より多く配合した場合には、製造さ
れるフィン材の自己耐食性が低下するが、上記組成とし
た場合には、製造されるフィン材は自己耐食性に優れた
ものとなることを見出した。
ある場合には、製造されるフィン材の自己耐食性と熱伝
導性が低下すること、Niの含有量が0.1重量%以上
である場合には、製造されるフィン材の自己耐食性が低
下することを見出し、不純物の中で、Cu及びNiの含
有量をいずれも0.1重量%未満に規制する必要がある
ことを見出した。
ルミニウム合金は、Zr:0.01〜0.2重量%、M
g:0.05〜0.5重量%のうち、少なくとも1種を
含有するものであることが望ましい。本発明者はZr:
0.01〜0.2重量%、Mg:0.05〜0.5重量
%のうち少なくとも1種を含有させることにより、製造
されるフィン材の強度を向上することができることを見
出した。なお、Zrを0.2重量%より多く含有させた
場合には、製造されるフィン材の自己耐食性が低下する
ことを見出した。
ルミニウム合金は、Zn:0.01〜3.0重量%、I
n:0.001〜0.1重量%、Sn:0.01〜0.
2重量%のうち、少なくとも1種を含有するものである
ことが望ましい。本発明者は、Zn:0.01〜3.0
重量%、In:0.001〜0.1重量%、Sn:0.
01〜0.2重量%のうち、少なくとも1種を含有させ
ることにより、製造されるフィン材の電位を卑にして、
犠牲陽極材としての作用を持たせることができることを
見出した。なお、Znを3.0重量%より多く含有させ
た場合には、製造されるフィン材の自己耐食性が低下す
ることを見出した。
ミニウム合金の組成は、Ce、Feなどを配合成分とす
る点で、特開平11−256259号公報に記載された
発明と共通している。しかしながら、特開平11−25
6259号公報に記載された発明では、Feを1.0〜
2.5重量%含有させることにより強度を確保する構成
としており、Feを1.0重量%以上含有させているた
め、自己耐食性が低いものとなっている。これに対し
て、本発明の熱交換器のフィン材用アルミニウム合金で
は、Feの含有量を1.0重量%未満とすることにより
自己耐食性を確保するとともに、Mnを特開平11−2
56259号公報に記載された発明(Mn:0.1〜
0.5重量%)よりも多い0.3〜2.0重量%含有さ
せることにより強度を確保する構成としている。
おいて、アルミニウム合金を鋳造する際の冷却速度を1
5〜1000℃/secとし、板材(スラブを作製した
場合にはスラブを熱間圧延することにより得られた板
材)を冷間圧延した後、460〜600℃の温度で、4
時間以内の中間焼鈍を少なくとも1回施し、最終圧延率
が15〜50%となるようにさらに冷間圧延することに
より、製造されるフィン材の耐エロージョン性と熱伝導
性を向上させることができることを見出した。
製造方法は、上記組成の本発明の熱交換器のフィン材用
アルミニウム合金を用い、溶湯を作製する工程と、前記
溶湯を鋳造して板材又はスラブを作製する工程と、前記
板材若しくは前記スラブを熱間圧延することにより得ら
れた板材を冷間圧延する工程と、冷間圧延した前記板材
に少なくとも1回の中間焼鈍を施す工程と、中間焼鈍を
施した前記板材を所定の最終圧延率になるように、さら
に冷間圧延する工程とを有する熱交換器のフィン材の製
造方法であって、前記板材又はスラブを作製する工程に
おいて、鋳造時の冷却速度を15〜1000℃/sec
とし、前記中間焼鈍を施す工程において、460〜60
0℃の温度で、4時間以内の中間焼鈍を少なくとも1回
施し、最終圧延率を15〜50%とすることを特徴とす
る。なお、実際の製造工程では、板材を作製する場合に
は板材を作製した後、熱間圧延せずに冷間圧延を行い、
スラブを作製する場合にはスラブを作製した後、熱間圧
延を行うことにより板材を作製し、その後冷間圧延を行
う。
法によれば、ろう付け後に高い強度を有し、高熱伝導性
を有するとともに、自己耐食性、耐エロージョン性に優
れたフィン材を製造することができる。
ルミニウム合金は、Mn:0.3〜2.0重量%、S
i:0.5〜1.5重量%、Ce:0.005〜0.5
重量%を含有し、さらに、Feを0.05重量%以上
1.0重量%未満含有し、Cu及びNiの含有量がいず
れも0.1重量%未満であり、残部がAlと不可避不純
物からなることを特徴としている。
Mg:0.05〜0.5重量%のうち、少なくとも1種
を含有するものであることが望ましい。さらに、Zn:
0.01〜3.0重量%、In:0.001〜0.1重
量%、Sn:0.01〜0.2重量%のうち、少なくと
も1種を含有するものであることが望ましい。
付け後に高い強度を有し、高熱伝導性を有するととも
に、自己耐食性、耐エロージョン性に優れた熱交換器の
フィン材用アルミニウム合金を提供することができる。
との効果について説明する。 (a)Mn Mnを0.3〜2.0重量%含有させることにより、フ
ィン材を製造する際に、Mnが金属間化合物として晶出
又は析出し、製造されるフィン材のろう付け後の強度を
向上させることができる。また、フィン材を製造する際
に、(b)のSiとともに、Al−Mn−Si化合物を
形成して、マトリックス中のSi固溶度を低くし、マト
リックスの融点を向上させることができる。
した場合には、これらの効果を十分に得ることができな
い。また、Mnの含有量を2.0重量%より多くした場
合には、製造されるフィン材の強度を向上させることが
できるものの、熱伝導性が著しく低下するという問題が
発生する。
iが、(a)のMnとともに形成するAl−Mn−Si
化合物として分散されるか、あるいは、マトリックス中
に固溶して、製造されるフィン材の強度を向上させるこ
とができる。また、(a)のMnとともにAl−Mn−
Si化合物を形成することにより、製造されるフィン材
のろう付け後のMn固溶度を低下させ、熱伝導性を向上
させることができる。
した場合には、これらの効果を十分に得ることができな
い。また、Siの含有量を1.5重量%より多くした場
合には、製造されるフィン材の融点が低下するため、フ
ィン材を冷媒通路形成体にろう付けする際にフィン材が
溶融するという問題が発生する。また、Siの含有量を
1.5重量%より多くした場合には、製造されるフィン
材の熱伝導性が低下するという問題も発生する。
り、フィン材を製造する際の鋳造時の晶出物を微細化す
ることができ、製造されるフィン材のろう付け時の耐エ
ロージョン性を向上させることができる。また、ろう付
け時に過飽和に固溶した溶質元素が、ろう付け時の冷却
工程において析出することを促進し、ろう付け後のフィ
ン材の熱伝導性と強度を向上させることができる。
満とした場合には、これらの効果を十分に得ることがで
きない。また、Ceの含有量を0.5重量%より多くし
た場合には、製造されるフィン材の自己耐食性が低下す
るとともに、フィン材の加工性が低下し、また、フィン
材の原料コストが増加するという問題が発生する。
金、あるいはミッシュメタル(CeやYなどの希土類の
金属が数種類含有されたもの)で添加することができ、
添加後のCeの含有量が上記範囲となるように添加を行
えばよい。
ことにより、フィン材を製造する際に、Feが金属間化
合物として晶出又は析出し、製造されるフィン材のろう
付け後の強度を向上させることができる。また、(a)
のMn又は(b)のSiとともに、Al−Mn−Fe、
Al−Fe−Si、Al−Mn−Fe−Si系化合物を
形成して、マトリックス中のMnやSiの固溶度を低下
させ、製造されるフィン材の熱伝導性を向上させること
ができる。
とした場合には、これらの効果を十分に得ることができ
ない。また、Feの含有量を1.0重量%以上とした場
合には、製造されるフィン材の自己耐食性が低下して腐
食速度が速くなる、フィン材を製造する際に巨大晶出物
が出現し、鋳造性や圧延性が著しく低下するという問題
が発生する。
Zrが、製造されるフィン材をろう付けした後に微細な
金属間化合物として分散し、ろう付け後のフィン材の強
度を向上させることができる。なお、Zrの含有量を
0.01重量%未満とした場合には、この効果を十分に
得ることができず、Zrの含有量を0.2重量%より多
くした場合には、製造されるフィン材の加工性、自己耐
食性、熱伝導性が低下するという問題が発生する。
Mgがマトリックス中に固溶して、製造されるフィン材
の強度を向上させることができる。なお、Mgの含有量
を0.05重量%未満とした場合には、この効果を十分
に得ることができず、Mgの含有量を0.5重量%より
多くした場合には、製造されるフィン材のろう付け性を
低下させるという問題が発生する。
製造されるフィン材の電位を卑にして、冷媒通路形成体
に対する犠牲陽極材としての機能を持たせることができ
る。なお、Znの含有量を0.01重量%未満とした場
合には、この効果を十分に得ることができず、Znの含
有量を3.0重量%より多くした場合には、製造される
フィン材の自己耐食性が低下し、腐食速度が速くなると
いう問題が発生する。
り、製造されるフィン材の電位を卑にして、冷媒通路形
成体に対する犠牲陽極効果を向上させることができる。
なお、Inの含有量を0.001重量%未満とした場合
には、この効果を十分に得ることができず、Inの含有
量を0.1重量%より多くした場合には、それ以上の効
果を得ることができず、原料コストが増加するだけであ
る。
製造されるフィン材の電位を卑にして、冷媒通路形成体
に対する犠牲陽極効果を向上させることができる。な
お、Snの含有量を0.01重量%未満とした場合に
は、この効果を十分に得ることができず、Snの含有量
を0.2重量%より多くした場合には、それ以上の効果
を得ることができず、原料コストが増加するだけであ
る。
されるフィン材の自己耐食性、熱伝導性が低下するとい
う問題が発生する。また、Niの含有量が0.1重量%
以上である場合には、製造されるフィン材の自己耐食性
が低下するという問題が発生する。したがって、不純物
の中で、Cu及びNiの含有量をいずれも0.1重量%
未満に規制する必要がある。
材用アルミニウム合金を用いてフィン材を製造する方法
について説明する。はじめに溶解法などにより、上記組
成を有するアルミニウム合金の溶湯を作製する。次に、
この溶湯を鋳造することにより、板材又はスラブを作製
する。この工程において、冷却速度を15〜1000℃
/secに設定する。鋳造方法としては、例えば、水冷
双ロールを用いた連続鋳造圧延法などを採用することが
できるが、本発明はこの方法に限定されるものではな
い。
sec以上と、冷却速度を速く設定することにより、鋳
造工程において、元素を過飽和に固溶させることができ
るため、微細かつ均一な晶出物を分散させることができ
る。また、この後の中間焼鈍を施す際にAl−Mn−S
i化合物の析出を促進させることができ、Mnの固溶度
を減少させ、製造されるフィン材の熱伝導性を向上させ
ることができる。なお、冷却速度を1000℃/sec
より速く設定することは現実的に困難であるため、冷却
速度を15〜1000℃/secに設定する。
ずに冷間圧延し、スラブを作製した場合には熱間圧延を
行うことにより板材を作製し、その後冷間圧延する。次
に、冷間圧延した板材に少なくとも1回の中間焼鈍を施
す。このとき、460〜600℃の温度で、4時間以内
の中間焼鈍を少なくとも1回施す。このように、460
〜600℃の温度で、4時間以内の中間焼鈍を少なくと
も1回施すことにより、Al−Mn−Si系化合物の形
成を促進させ、製造されるフィン材のろう付け後のMn
固溶度を低下させることができ、熱伝導性を向上させる
ことができる。
15〜1000℃/secと速く設定することにより、
鋳造工程で得られる晶出物が微細でかつ少なくなるた
め、再結晶粒の核となり得る化合物が少なくなり、製造
されるフィン材をろう付けする際の熱処理において再結
晶しにくく、ろう材による侵食が著しくなってろう付け
性が低下する恐れがあるが、上記の条件で中間焼鈍を施
すことにより、晶出物が成長し、再結晶の核を形成する
ことができ、製造されるフィン材の耐エロージョン性を
向上させ、ろう付け性を向上させることができる。
合には、Al−Mn−Si系化合物の析出が不十分であ
り、再結晶の核となる晶出物の成長が促進されない。ま
た、600℃より高い温度で処理した場合には、元素が
固溶して、製造されるフィン材の熱伝導性が低下する。
また、4時間より長く処理した場合には、それ以上の効
果が得られないので、フィン材の生産効率を向上させる
ために4時間以下の処理を行うことが望ましい。なお、
中間焼鈍は連続式(CAL)で行ってもよいし、バッチ
式で行ってもよい。
ように、さらに冷間圧延することにより、熱交換器のフ
ィン材が製造される。最終圧延率を15〜50%とする
ことにより、成形性の良いフィン材を製造することがで
きる。また、製造されるフィン材をろう付けする際の熱
処理で再結晶させるとともに、再結晶粒径を大きくする
ことができるので、製造されるフィン材の耐エロージョ
ン性を向上させ、ろう材による侵食を抑制することがで
きる。
には、製造されるフィン材をろう付けする際の熱処理で
再結晶せず、最終圧延率を50%より高くした場合には
フィン材の成形性が低下するとともに、再結晶粒が微細
になって、フィン材の耐エロージョン性が低下し、ろう
材による侵食が大きくなるという問題が発生する。
る。 (実施例1〜6、比較例1〜7)表1に示す組成のアル
ミニウム合金No.1〜13を用い、溶解法により溶湯
を作製し、溶湯を幅:200mm×長さ:500mm×
厚さ:8mmの鋳型に鋳造して板材を作製した後、板材
を冷間圧延し、次いでソルトバスを用いて中間焼鈍を施
し、さらに冷間圧延することによりフィン材を製造し
た。いずれについても、用いるアルミニウム合金以外の
条件は同一条件で、フィン材の製造を行った。
の冷却速度、中間焼鈍の条件、最終圧延率、及び得られ
たフィン材の性能評価を行った結果を表2に示す。な
お、表2に示すように、いずれについても、鋳造時の冷
却速度を100℃/sec、中間焼鈍の条件を500
℃、50秒、最終圧延率を30%、最終板厚を100μ
mとした。得られたフィン材の性能評価の項目及び評価
方法については後述する。
o.1〜No.6が、本発明の熱交換器のフィン材用ア
ルミニウム合金であり、アルミニウム合金No.7〜N
o.13が、いずれかの成分が本発明の熱交換器のフィ
ン材用アルミニウム合金から外れたものである。(表1
において、本発明の熱交換器のフィン材用アルミニウム
合金から外れた成分を*印で示している。)また、表1
には、アルミニウム以外の成分についてのみ示し、いず
れのアルミニウム合金についても残部はアルミニウムと
なっている。
ミニウム合金No.1を用いて、鋳造時の冷却速度、中
間焼鈍の条件、最終圧延率を変えてフィン材の製造を行
った。鋳造時の冷却速度、中間焼鈍の条件、最終圧延
率、及び得られたフィン材の性能評価を行った結果を表
3に示す。表3に示すように、実施例1を基本とし、実
施例1の製造条件のうち、1つの条件のみを変えて、フ
ィン材の製造を行った。なお、鋳造時の冷却速度、中間
焼鈍の条件、最終圧延率以外の条件はすべて実施例1〜
6、比較例1〜7と同一条件でフィン材を製造した。表
3には、参考のために、実施例1についても合わせて記
載している。
〜16、比較例1〜7において、得られたフィン材の性
能評価の項目及び評価方法について説明する。 <ろう付け後の引張強さ(強度)>ろう付け後のフィン
材の強度の評価として、フィン材単体を高純度窒素雰囲
気下、600〜610℃で5分間保持した後、冷却速度
100℃/minで常温まで冷却する、ろう付け相当熱
処理を施した後、引張試験を行い、引張強さを測定し
た。AA3003合金等を用いて作製された従来のフィ
ン材の引張強さが約110N/mm2であることから、
引張強さが115N/mm2以上であったものを製品と
して問題がない程度の強度を有していると判定し、さら
に、引張強さが130N/mm2以上であったものを高
い強度を有していると判定した。なお、表2、表3にお
いて、引張強さが130N/mm2以上であったものを
○、引張強さが115N/mm2以上130N/mm2未
満であったものを△、引張強さが115N/mm2未満
であったものを×で示している。
伝導性は電気伝導度に置き換えて評価することができる
ので、フィン材単体に、上記のろう付け相当熱処理を施
した後、電気伝導度をダブルブリッジ法により測定し
た。AA3003合金等を用いて作製された従来のフィ
ン材の電気伝導度が約38%IACSであることから、
電気伝導度が40%IACS以上であったものを製品と
して問題がない程度の熱伝導性を有している判定し、さ
らに、電気伝導度が45%IACS以上であったものを
高い熱伝導性を有していると判定した。なお、表2、表
3において、電気伝導度が45%IACS以上であった
ものを○、電気伝導度が40%IACS以上45%IA
CS未満であったものを△、電気伝導度が40%IAC
S未満であったものを×で示している。
(耐エロージョン性)>耐エロージョン性の評価とし
て、コルゲート加工を施したフィン材と片面にろう材を
クラッドしたブレージングシートとを組み付け、これに
フラックスを塗布後、上記のろう付け相当熱処理を施
し、その後断面観察を行うことにより、ろう材によるフ
ィン材の最大侵食深さを測定した。
がAl−1重量%Mn−0.15重量%Cu(AA30
03)、ろう材がAl−7.5重量%Si(AA434
3)で、芯材:ろう材=90:10のクラッド率となる
ように芯材の片面にろう材をクラッドした板厚0.3m
mのものを用いた。また、板厚100μmのフィン材の
強度を確保できることから、ろう材による最大侵食深さ
が40μm以下のものを製品として問題がない程度の耐
エロージョン性を有していると判定し、さらに、ろう材
による最大侵食深さが30μm以下のものを高い耐エロ
ージョン性を有していると判定した。なお、表2、表3
において、ろう材による最大侵食深さが30μm以下で
あったものを○、ろう材による最大侵食深さが30μm
より大きく40μm以下であったものを△、ろう材によ
る最大侵食深さが40μmより大きかったものを×で示
している。
評価として、「ASTMB117」に準拠する塩水噴霧
試験(SST)を1週間実施し、フィン材の腐食減量を
測定した。AA3003合金等を用いて作製された従来
のフィン材の腐食減量が約200mg/dm2であるこ
とから、腐食減量が200mg/dm2以下であったも
のを製品として問題がない程度の自己耐食性を有してい
ると判定し、さらに、腐食減量が180mg/dm 2以
下であったものを高い自己耐食性があると判定した。な
お、表2、表3において、腐食減量が180mg/dm
2以下であったものを○、腐食減量が180mg/dm2
より大きく200mg/dm2以下であったものを△、
腐食減量が200mg/dm2より大きかったものを×
で示している。
の加工性、ろう付け性について評価を行い、加工性、ろ
う付け性が低かったものについて、表2の備考欄にその
旨を記載している。加工性が低いとは、具体的には、圧
延中にサイドクラック、若しくは表面クラックが発生す
ることを意味し、圧延時の製品歩留まりが50%以下の
ものを加工性が低いと判定した。また、ろう付け時の接
合率が95%未満であったものをろう付け性が低いと判
定した。
のアルミニウム合金を用いてフィン材の製造を行った実
施例1〜6では、高強度、高熱伝導性を有し、耐エロー
ジョン性、自己耐食性、加工性、ろう付け性に優れたフ
ィン材を製造することができた。
%より多く、Feの含有量が1.0重量%以上のアルミ
ニウム合金を用いた比較例1では、得られたフィン材の
熱伝導性がやや低く、また、自己耐食性が低かった。M
nの含有量が0.3重量%より低く、Siの含有量が
1.5重量%より多いアルミニウム合金を用いた比較例
2では、得られたフィン材の強度、熱伝導性、耐エロー
ジョン性、自己耐食性がいずれも低かった。
0.1重量%以上であるアルミニウム合金を用いた比較
例3では、得られたフィン材の熱伝導性がやや低く、ま
た、自己耐食性が低かった。Ceの含有量が0.005
重量%より少なく、Znの含有量が3.0重量%より多
いアルミニウム合金を用いた比較例4では、得られたフ
ィン材の自己耐食性が低く、強度、熱伝導性がいずれも
やや低かった。
ミニウム合金を用いた比較例5では、得られたフィン材
の熱伝導性がやや低く、また、加工性が低かった。Cu
の含有量が0.1重量%より多く、Znの含有量が3.
0重量%より多いアルミニウム合金を用いた比較例6で
は、得られたフィン材の自己耐食性が低かった。Mgの
含有量が0.5重量%より多いアルミニウム合金を用い
た比較例7では、得られたフィン材のろう付け性が低
く、ろう付け後の最大侵食深さを測定することができな
かった。このように、比較例1〜7においては、強度、
熱伝導性、耐エロージョン性、自己耐食性、加工性、ろ
う付け性のすべてを満足するフィン材を製造することが
できなかった。
ム合金No.1を用いてフィン材の製造を行っても、製
造条件によって、得られるフィン材の性能が変化するこ
とが判明した。表3に示すように、鋳造時の冷却速度を
15〜1000℃/sec、中間焼鈍を460〜600
℃で4時間以内、最終圧延率を15〜50%とした実施
例1及び実施例7〜11では、高強度、高熱伝導性を有
し、耐エロージョン性、自己耐食性に優れたフィン材を
製造することができた。
として問題がない程度の強度、熱伝導性、耐エロージョ
ン性、自己耐食性を有するフィン材を製造することがで
きた。しかしながら、鋳造時の冷却速度を15℃/se
c未満とした実施例12では、得られたフィン材の強
度、熱伝導性がいずれもやや低く、中間焼鈍の温度を4
60℃未満とした実施例13では、得られたフィン材の
熱伝導性がやや低く、中間焼鈍の温度を600℃より高
くした実施例14では、得られたフィン材の熱伝導性が
やや低く、最終圧延率を15%未満とした実施例15で
は、得られたフィン材の耐エロージョン性がやや低く、
最終圧延率を50%より高くした実施例16では、得ら
れたフィン材の耐エロージョン性がやや低いという結果
が得られた。
℃/sec以上、中間焼鈍の温度を460〜600℃、
最終圧延率を15〜50%にすることが望ましいことが
判明した。なお、冷却速度を1000℃/secより速
く設定することは現実的に困難であり、また、中間焼鈍
の処理時間を4時間より長くした場合には、それ以上の
効果が得られないので、フィン材の生産効率を向上させ
るために中間焼鈍の処理時間を4時間以下とすることが
望ましい。なお、実施例7〜16についてはいずれも加
工性、ろう付け性については良好であった。
ろう付け後に高い強度を有し、高熱伝導性を有するとと
もに、自己耐食性、耐エロージョン性に優れた熱交換器
のフィン材用アルミニウム合金及び熱交換器のフィン材
の製造方法を提供することができる。
Claims (4)
- 【請求項1】 Mn:0.3〜2.0重量%、Si:
0.5〜1.5重量%、Ce:0.005〜0.5重量
%を含有し、 さらに、Feを0.05重量%以上1.0重量%未満含
有し、 Cu及びNiの含有量がいずれも0.1重量%未満であ
り、 残部がAlと不可避不純物からなることを特徴とする熱
交換器のフィン材用アルミニウム合金。 - 【請求項2】 さらに、Zr:0.01〜0.2重量
%、Mg:0.05〜0.5重量%のうち、少なくとも
1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交
換器のフィン材用アルミニウム合金。 - 【請求項3】 さらに、Zn:0.01〜3.0重量
%、In:0.001〜0.1重量%、Sn:0.01
〜0.2重量%のうち、少なくとも1種を含有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱交換器の
フィン材用アルミニウム合金。 - 【請求項4】 請求項1から請求項3までのいずれか1
項に記載の熱交換器のフィン材用アルミニウム合金を用
い、 溶湯を作製する工程と、 前記溶湯を鋳造して板材又はスラブを作製する工程と、 前記板材若しくは前記スラブを熱間圧延することにより
得られた板材を冷間圧延する工程と、 冷間圧延した前記板材に少なくとも1回の中間焼鈍を施
す工程と、 中間焼鈍を施した前記板材を所定の最終圧延率になるよ
うに、さらに冷間圧延する工程とを有する熱交換器のフ
ィン材の製造方法であって、 前記板材又はスラブを作製する工程において、鋳造時の
冷却速度を15〜1000℃/secとし、 前記中間焼鈍を施す工程において、460〜600℃の
温度で、4時間以内の中間焼鈍を少なくとも1回施し、 最終圧延率を15〜50%とすることを特徴とする熱交
換器のフィン材の製造方法。
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