JP2009043970A - 半導体素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】p型不純物が導入された窒化物半導体におけるp型不純物の活性化率を安定して向上できるようにする。
【解決手段】半導体素子は、第1のIII族窒化物半導体からなるMQW活性層43と、p型不純物がドーピングされた第2のIII族窒化物半導体からなるp型コンタクト層45とを有している。p型コンタクト層45には、ハロゲン元素、例えばフッ素又は塩素が導入されている。
【選択図】 図19

Description

本発明は、主成分がInAlGa1−x−yN(但し、x,yは、0≦x,y≦1、0≦x+y≦1である。)であるIII族窒化物半導体からなる半導体素子及びその製造方法に関し、特に、p型不純物をドープしたIII族窒化物半導体を含む半導体素子及びその製造方法に関する。
III族窒化物半導体は、短波長域の半導体レーザ素子(LD)若しくは発光ダイオード素子(LED)等の発光素子、フォトダイオード等の受光素子又は高速トランジスタ等の電子素子に広く用いられている。
図27に従来の窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子の断面構成を示す(例えば、特許文献1を参照。)。図27に示すように、例えば、有機金属気相成長(MOCVD)法により、n型窒化ガリウム(GaN)からなる基板102の主面上には、水素を主成分とするキャリアガスを用い、1050℃の基板温度でn型GaN層103、n型窒化アルミニウム(AlGaN)からなるクラッド層104及びn型GaNからなる光ガイド層105が順次より形成される。
続いて、光ガイド層105の上には、キャリアガスを窒素に切り替え、基板温度を700℃に設定して、窒化インジウムガリウム(InGaN)からなる多重量子井戸層106が形成される。
続いて、キャリアガスを再度水素に切り替え、且つ基板温度を1050℃に設定した後、多重量子井戸層106の上に、p型GaNからなる光ガイド層107、p型AlGaNからなる電子ブロック層108、p型AlGaNからなるクラッド層109及びp型GaNからなるコンタクト層110が順次成長により形成される。
通常、MOCVD法により成長し、マグネシウム(Mg)からなるアクセプタをドープされたp型窒化物半導体は、Mg濃度とほぼ同一の濃度(1019cm−3)の水素原子を含む。この水素原子がアクセプタによる正孔の生成を妨げることから、Mg原子はアクセプタとして十分には機能せず、不活性な状態である。従って、成長直後のp型窒化物半導体層は高抵抗である。このため、MOCVD法によるエピタキシャル成長の後には、p型窒化物半導体層を低抵抗化するための処理が必要である。このような処理は活性化処理と呼ばれる。活性化処理には、特許文献2に示されるような、温度が400℃以上の熱処理を行う方法が知られている。
この活性化処理を行った後に、ドライエッチングにより、p型のクラッド層109とp型のコンタクト層110とが、幅が5μmのストライプ状に残してエッチングされ、リッジ型光導波路が形成される。
続いて、p型のコンタクト層110の上にp側電極111が形成され、また、基板102の裏面にはn側電極101が形成される。
次に、リッジ型光導波路の導波路長が1mmとなるように劈開を行い、ミラーとなる端面を形成して、半導体レーザ素子が完成する。
特開2001−148357号公報 特開平2−257679号公報 特開平6−183189号公報
しかしながら、前記従来の半導体レーザ素子は、活性化処理を行った後においても、p型窒化物半導体層中に1018cm−3台もの水素が残留しているという問題がある。この残留水素がアクセプタの活性化率を抑制してしまうことから、p型窒化物半導体層の抵抗が高くなり、その結果、素子の動作電圧が高くなる要因となっている。
また、p型窒化物半導体層のアクセプタの活性化率が低く、すなわち正孔濃度が低いと、p型窒化物半導体層のフェルミレベルが低下する。このため、半導体レーザ素子及び発光ダイオード素子においては、活性層とp型窒化物半導体層との間における伝導帯のポテンシャル障壁が低くなる。その結果、活性層からp型窒化物半導体層への電子のオーバーフローが増大して、発光効率が低下するという問題もある。
以上のような高い動作電圧及び低い発光効率は、窒化物半導体を用いた半導体素子の性能及び信頼性に重大な悪影響を及ぼす。
また、アクセプタをドープした窒化物半導体層の残留水素が活性層にまで拡散して該活性層に結晶欠陥を発生させたり、また、外部から侵入した水素が活性化したアクセプタを再び不活性化することにより正孔濃度が低下したりするという問題もある。
本発明は、前記従来の問題を解決し、p型不純物が導入された窒化物半導体におけるp型不純物の活性化率を安定して向上できるようにすることを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明は、窒化物半導体からなる半導体素子を構成するp型半導体層にハロゲン元素、特にフッ素又は塩素を導入する構成とする。
この構成により、p型半導体層に導入されたハロゲン元素が、以下の4つの機構(メカニズム)により、p型導体層の正孔濃度を増大させる。以下、ハロゲン元素を単体の場合にはハロゲン原子に適宜呼び替える。
第1の機構は、ハロゲン原子が残留水素と結合するという機構である。残留水素は、アクセプタ原子と隣接する窒素原子の反結合軌道と結合して、マグネシウム(Mg)等のアクセプタの活性化を妨げている。従って、アクセプタの活性化率を高めるには、残留水素を窒素原子から引き離せばよい。ハロゲン元素のうちのフッ素又は塩素は、水素との原子結合エンタルピーがそれぞれ570kJ/mol、432kJ/molであり、水素と窒素との原子結合エンタルピーの343kJ/molよりも高い。このため、エネルギーの安定性の観点から、フッ素又は塩素は窒素と水素との結合を切断して水素と結合する。これは、ハロゲン原子による水素のゲッタ効果といえる。その結果、アクセプタが下記の反応式(1)のように活性化して、正孔hを生成する。
Mg−N−H + F → Mg−N + h + HF …(1)
ハロゲン原子は、電子を1個受取るとその原子軌道は閉殻となる。閉殻となったイオンは格子原子との相互作用が小さいため、窒化物半導体層中の格子間に導入されやすい。さらに、格子間に大量に導入されたハロゲン原子は、該ハロゲン原子と同様に電気的陰性度が強い窒素原子と置換して拡散する。ハロゲン原子が結晶格子と置換する格子置換型拡散をする場合は、格子位置に存在できるハロゲン原子の濃度が高い。この場合は、水素ゲッタ効果を利用すると、水素原子はp型窒化物半導体層中に従来の活性化処理よりも多く残留するおそれはあるものの、従来の活性化処理とは異なり、本発明の場合の残留水素はアクセプタの活性化を妨げることがないため、アクセプタの活性化率が向上する。
第2の機構は、拡散したハロゲン原子がアクセプタとして機能するという機構である。ハロゲン原子は電子を受取って負イオンになるイオン化傾向度が高い。このため、窒化物半導体層の格子間位置に拡散した場合は、アクセプタとして機能する。このハロゲン原子がアクセプタとして機能するという効果もp型窒化物半導体層の正孔濃度を増加させる。
第3の機構は、格子間位置に拡散したハロゲンイオンによる水素(H)イオンのゲッタ効果である。p型窒化物半導体中において、アクセプタと窒素原子との結合から解離した水素原子の安定な存在形態はHイオンと考えられている。水素はHイオンとしてp型窒化物半導体の表面にまで拡散して、該表面から脱離しようとする。ところが、青紫色半導体レーザ素子においては、一般的なp型クラッド層のように、Mgがそれぞれ添加されたGaN層とAlGaN層との超格子構造として構成される場合には、超格子構造中に複数に形成されたヘテロ接合とその内部電界のドリフト作用とによって、Hイオンの拡散が妨害される。また、p型窒化物半導体の表面にはピンニングによるバンド曲がりが存在しており、p型窒化物半導体の表面の近傍には表面から内部に向かう内部電界と約1.8eVのエネルギー障壁とが発生している。このエネルギー障壁が、Hイオンがp型窒化物半導体の表面に到達することを妨げている。しかしながら、本発明のように、格子間位置に拡散したハロゲンイオン、例えばFイオン又はClがHイオンと結合して形成されるフッ化水素(HF)又は塩化水素(HCl)は電気的に中性であるため、上記のようなヘテロ接合の内部電界及び表面のエネルギー障壁に妨げられることなく、p型窒化物半導体の表面に容易に到達することができる。閉殻となったFイオン又はClイオンは格子原子との相互作用が小さく、格子間拡散速度が大きいため、上記の水素イオンのゲッタ効果を高頻度で発生させることができる。
ところで、従来のアクセプタの活性化処理は、表面に達したHイオンはバンド曲がりにより表面に蓄積されている電子を獲得して、電気的に中性な状態となる。窒化物半導体の表面の水素は、表面のIII族原子のダングリングボンドを終端(パシベーション)しているため安定な状態であり、表面からは脱離しにくい。表面の水素原子が容易に脱離できるには、表面近傍の他の水素原子が表面マイグレーションにより衝突して、水素分子(H)が形成され、水素と表面近傍のIII族原子との結合を切断する必要がある。窒化物半導体の内部での水素濃度が1×1018cm−3の場合は、表面水素の隣接距離は100nmと大きいため、表面近傍に位置する水素同士の衝突確率は小さい。従って、p型窒化物半導体の表面からの水素脱離は発生しにくい。しかしながら、本発明の第3の機構の場合は、水素原子はHF又はHCl等の形態で表面にまで達するため、上記のように脱離を妨げる要因はなく、そのままの形態で表面から脱離することが可能である。
第4の機構は、表面に導入されたハロゲン原子による表面水素の除去効果である。従来の活性化処理では、上述したように窒化物半導体の表面の水素は、該表面の他の水素原子が表面マイグレーションにより衝突するまでは脱離することができない。一方、本発明の第4の機構の場合は、表面に導入されたハロゲン原子が表面の水素と結合するため、窒化物半導体の表面からの水素の脱離が促進される。一般に、窒化物半導体の内部からの水素の除去は、表面脱離によって律速されているが、本発明のように水素の表面脱離が促進されると、窒化物半導体の内部からの水素除去も促進される。すなわち、本発明は、従来の活性化処理よりも高効率の水素の除去効果が期待できるため、従来よりも残留水素濃度を低減することが可能となる。
具体的に、本発明に係る半導体素子は、p型不純物がドーピングされたIII族窒化物半導体からなる半導体層を備え、半導体層はハロゲン元素が導入されていることを特徴とする。
本発明の半導体素子によると、上述した4つの機構により、p型不純物が導入された半導体層におけるp型不純物の活性化率を安定して向上できるため、高性能で且つ高信頼性を有する半導体素子を実現できる。
本発明の半導体素子において、半導体層の上には、オーミック性の電極が形成されており、ハロゲン元素は半導体層における電極が形成されていない領域に選択的に導入されていることが好ましい。
ハロゲン原子が第2のIII族窒化物半導体からなるp型の半導体層の結晶格子の格子位置に高濃度に格子置換型拡散して、該半導体層のコンタクト抵抗率が増大する場合でも、この構成のように、半導体層におけるハロゲンが導入された領域以外に電極を形成するため、コンタクト抵抗率を増大させることがない。従って、ハロゲン元素を大量に導入することができる。また、ハロゲン原子を導入した後に、プラズマCVD法のように水素を高濃度に含む雰囲気で酸化シリコン(SiO)又は窒化シリコン(SiN)等からなるパシベーション膜をp側電極以外の領域の上に形成しても、製造プロセス又は動作時に水素がハロゲン原子によりゲッタリングされるため、パシベーション膜から半導体層に拡散することを防止できる。その結果、水素の拡散によるデバイス特性の劣化を抑制できる。
また、本発明の半導体素子において、半導体層は断面凸状のリッジ部を有し、ハロゲン元素は半導体層におけるリッジ部の側部及び側方の領域に選択的に導入されていることが好ましい。
このようにすると、p型の半導体層におけるコンタクト抵抗率の増大を招くことなく、ハロゲン原子を半導体層に高濃度に導入することができる。さらに、p型の半導体層の側面からもハロゲン原子を導入できるため、高濃度のハロゲン原子を短時間で導入することができる。
また、本発明の半導体素子は、半導体層の上方又は下方に形成され、前記半導体層を露出する電流狭窄層をさらに備えていることが好ましい。
このようにすると、p型の半導体層のコンタクト抵抗率の増大を招くことなく、該半導体層に対してハロゲン原子を電流が通過する領域にのみ高濃度に導入することができる。電流が通過する領域は、ジュール熱及びバイアス電界によって、水素が拡散する可能性が高いため、本構成であれば水素の拡散を効果的に防止することができる。
この場合に、電流狭窄層にはn型不純物がドーピングされていることが好ましい。
本発明の半導体素子において、ハロゲン元素はフッ素又は塩素であることが好ましい。
本発明に係る半導体素子の製造方法は、p型不純物がドーピングされたIII族窒化物半導体からなる半導体層を形成する工程(a)と、工程(a)よりも後に、形成された半導体層にハロゲン元素を拡散により導入する工程(b)とを備えていることを特徴とする。
本発明の半導体素子の製造方法によると、上述した4つの機構により、p型不純物が導入された半導体層におけるp型不純物の活性化率を安定して向上できるため、高性能で且つ高信頼性を有する半導体素子を実現できる。
本発明の半導体素子の製造方法において、工程(b)は、半導体層をハロゲン元素を含む雰囲気で加熱する工程であることが好ましい。
このようにすると、p型の半導体層に欠陥を生じることなくハロゲン元素を導入することができる。半導体に不純物をドーピングする工程には、大別すると、結晶成長時と結晶成長後との2種類の方法がある。しかしながら、結晶成長時のハロゲン原子のドーピングは困難である。なぜならば、窒化物半導体層の成長に必要な1000℃近い温度では、ハロゲン原子は成長炉を激しく腐食させるからである。また、結晶成長後のドーピングには、イオン注入が典型的である。しかしながら、窒化物半導体層へのイオン注入は、結晶中に窒素が抜けた空孔を発生させるという問題がある。窒素の空孔はドナーとして機能するため、p型の半導体層の正孔濃度を低下させてしまう。一方、ドーピングを拡散により行うことができれば、イオン注入のように窒素の空孔を発生させるという問題は生じない。また、ガスによるドーピングのさらなる利点として、ガス流量及び圧力等によりドーピング精度を高精度に制御できるということが挙げられる。
本発明の半導体素子の製造方法において、工程(b)における加熱温度は200℃以上であることが好ましい。
また、本発明の半導体素子の製造方法において、ハロゲン元素を含む原料は常温において固体であることが好ましい。
ハロゲン元素である、例えばフッ素又は塩素を含むガスは、人体に有毒でありまた引火性も高い。従って、工程(b)においては、熱処理装置における密封性及び排ガスの除害に注意が必要である。熱処理装置の密封性を高めることや排ガスの除害は一般的な対策で十分ではあるが、製造コストの増加の要因になり得る。これに対し、本発明のように、ハロゲン原子の原料として固体を用いれば、半導体ウェハと共にアンプルに封入して熱処理を行うことにより除害対策が容易となるため、製造コストの増加を抑制することができる。
この場合に、ハロゲン元素を含む原料には、F、Cl、N、NF、N、NCl、ClF、ClF、BrF、BrF、BrF、BrCl、IF、IF、ICl又はIClを含むことが好ましい。このうち、塩化ヨウ素(ICl)は常温で固体である。
本発明の半導体素子の製造方法において、 工程(b)は、半導体層に導入されたp型不純物を活性化する工程を含むことが好ましい。
また、本発明の半導体素子の製造方法は、工程(a)と工程(b)との間に、半導体層に導入されたp型不純物を活性化する工程(c)をさらに備えていることが好ましい。
本発明により、格子置換型として導入されたハロゲン原子は水素をゲッタリングして、窒化物半導体層中に残留させる。これらの水素はアクセプタ原子と窒素原子との結合により解離されているため、アクセプタの活性化率を向上させる。しかしながら、高温下においてはこれらの水素は再度ハロゲン原子から解離するおそれがある。このように、高濃度に水素が残留する要因は、ハロゲン原子を導入する前(すなわち結晶成長後)に、もともとアクセプタ濃度と同程度の高濃度の水素が存在するためである。それを避けるには、あらかじめ窒素(N)、酸素(O)若しくは二酸化炭素(CO)等のガス雰囲気でのアニール、又は電子線照射等の従来との活性化処理と組み合わせるとより効果的である。なぜなら、従来の活性化処理の後に、本発明によりハロゲン原子を導入した場合は、あらかじめ低い残留水素濃度をさらに低減することができるからである。このため、ゲッタ効果によってハロゲン原子と共に窒化物半導体層中に残留する水素も低濃度となる。従って、高温下においては、ハロゲン原子から再度解離する水素濃度を低減できるので、残留する水素の濃度を実質的に無視できる程度の低い濃度とすることができる。
本発明の半導体素子の製造方法は、工程(a)と工程(b)との間に、半導体層の上に、該半導体層の酸化を防止する保護膜を形成する工程(d)をさらに備えていることが好ましい。
このようにすると、ハロゲン原子の格子置換型拡散及びその後に生じる酸素導入を抑制することができる。
この場合に、本発明の半導体素子の製造方法は、工程(a)と工程(d)との間に、半導体層の上にオーミック性の電極を選択的に形成する工程(e)をさらに備え、工程(d)において、保護膜は半導体層の上に少なくとも電極を覆うように形成することが好ましい。
本発明に係る半導体素子及びその製造方法によると、p型不純物が導入された窒化物半導体におけるp型不純物の活性化率を安定して向上することができるため、高効率で且つ高信頼性を持つ半導体素子を実現することができる。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
−サンプルの構成−
図1は本発明の第1の実施形態に係るp型半導体層を含む窒化物半導体積層膜の断面構成を示している。第1の実施形態に係る半導体積層膜は、素子の構成を採ってはいないが、p型半導体層を含む窒化物半導体積層膜を構成要素とする窒化物半導体素子のサンプルとして説明する。
図1に示すように、例えばMOCVD法により、サファイア(単結晶Al)からなる基板11の主面上に、厚さが1μmのアンドープGaNからなる第1の半導体層12、厚さが0.7μmでMgのドープ濃度が1×1018cm−3のMgドープGaNからなる第2の半導体層13及び厚さが20nmでMgのドープ濃度が1×1019cm−3のMg高濃度ドープGaNからなる第3の半導体層14を順次エピタキシャル成長により形成する。
比較のため、第3の半導体層14までを結晶成長した後、以下の処理を施した3種類の窒化物半導体積層膜を用意した。
(1)第1の比較用であって、p型不純物(Mg)の活性化処理を施さない。
(2)第2の比較用であって、従来の活性化処理を行う。すなわち、窒素(N)の流量を100mL/min(0℃、1気圧)とし、圧力が30Paの窒素雰囲気において、750℃で20分間のアニールを行う。
(3)本発明に係るハロゲン雰囲気、ここではフッ素雰囲気でアニールを行う。すなわち、フッ素を含む雰囲気として、流量が50mL/min(0℃、1気圧)の三フッ化窒素(NF)と流量が100mL/min(0℃、1気圧)の窒素(N)とを圧力を30Paとして同時に処理炉に導入して、750℃で20分間のアニールを行う。
−評価及び分析−
図2に第1の比較用であって、活性化処理を施す前のサンプルの二次イオン質量分析(SIMS)法による分析結果を示す。図2からは、水素(H)原子がMgの濃度とほぼ同一の濃度の1.2×1018cm−3の水素原子が含まれていることが分かる。この状態では、Mgアクセプタが活性化しておらず、抵抗率が非常に高いため、ホール測定を行うことは困難であった。
図3(a)に第2の比較用であって、窒素雰囲気のアニールを施したサンプルのSIMISによる分析結果を示す。図3(a)から分かるように、窒素雰囲気でのアニールにより、水素濃度が活性化処理前よりも減少し、MgドープGaNからなる第2の半導体層13の平均値は4.7×1017cm−3である。但し、表面からの深さが0.2μmまでの領域の水素濃度は、活性化処理前とほとんど低下していない。このような分布となる原因は、第2の半導体層13の内部からの水素の除去が表面からの脱離により律速され、さらに、アニール温度が低く且つアニール時間も短いことから、第2の半導体層13の深い領域から表面にまで拡散した水素が表面の近傍に蓄積されているためである。
一方、図3(b)に示す本発明に係るNF雰囲気でアニールを施したサンプルにおいては、水素濃度が活性化処理前よりも増大しており、MgドープGaNからなる第2の半導体層13での平均値は2.4×1018cm−3である。なお、本明細書においては、NF雰囲気に窒素(N)が添加されているが、便宜上NF雰囲気アニールと呼ぶ。
図4に、上記の3つのサンプル(活性化処理前、窒素雰囲気アニール後及びNF雰囲気アニール後)に対して、SIMS測定により得られた水素(H)及びマグネシウム(Mg)の濃度とホール測定により得られた正孔の濃度とを示す。図4から分かるように、窒素雰囲気によるアニールと比べてNF雰囲気によるアニールの方が、残留水素濃度が高いにも拘わらず、正孔の濃度が増大している。
図5に、ホール測定により得られた正孔濃度のガス雰囲気及びアニール時間の依存性を示す。図5から分かる現象は、以下の2点である。
第1に、温度が700℃でのNF雰囲気アニールは、従来の温度が750℃での窒素雰囲気アニールと比べてほぼ同一の正孔濃度を得られている。すなわち、フッ素拡散の上述の効果の結果、本発明においては、NF雰囲気アニールにより活性化処理温度を50℃下げることができる。さらに、NF雰囲気アニール温度を750℃に上昇すると、窒素雰囲気アニールの場合よりも正孔濃度が大幅に増大する。従って、NF雰囲気アニールによるフッ素拡散は、700℃以上のアニール温度が必要である。
図5から分かる第2の現象は、温度が800℃でのNF雰囲気アニールは、750℃での窒素雰囲気アニールと比べて正孔濃度が低下することである。
ここで、図6に温度が800℃でのNF雰囲気によるアニールを行った他のサンプルに対するSIMS分析結果を示す。図6からは、表面からの深さが0.6μmまでの領域において濃度が1×1018cm−3以上で且つピーク濃度が1×1019cm−3に達する程に、酸素が高濃度に且つ深く導入されていることが分かる。一般に、GaNに混入した酸素原子は、ドナーとして機能することが知られている。従って、温度が800℃での比較的に高温下でのNF雰囲気アニールによって酸素原子が第2の半導体層13に高濃度に導入された場合は、酸素のドナーとしての正孔に対する補償効果により、正孔の濃度が低下したと考えられる。
このように、第1の実施形態によると、温度が700℃から750℃のNF雰囲気のアニールによって、Mgをドープした窒化物半導体層における正孔濃度を高くすることができる。
なお、本実施形態においては、半導体製造プロセスで広く用いられていることから、入手が容易なNFガスを用いて本発明の効果を説明したが、本発明の原理はハロゲン元素、特にフッ素又は塩素を窒化物半導体に拡散させることにある。従って、フッ素又は塩素の拡散原料として、NF以外にもN又はNCl等のガスを用いることができる。
また、Mgをドープした窒化物半導体層における高温下での表面酸化が促進される原因がNFから発生する窒素(N)ラジカルであるため、表面酸化を防止するにはフッ素又は塩素の原料として、窒素を含まないF、Cl、ClF、ClF、BrF、BrF、BrF、BrCl、IF、IF又はICl等を用いることが有効である。このうち、ClFは半導体製造プロセスにおいて一般に用いられているため、入手が容易である。
また、ハロゲン原料としてガスではなく、IClのような固体原料を用いてもよい。この場合、図7に示すように、固体ハロゲン原料16と窒化物半導体積層膜17とをアンプル18に封入し、電気炉等に投入して加熱すれば、窒化物半導体積層膜17にハロゲン元素を拡散することができる。このようにアンプル封入法を用いれば、ハロゲン原料としてガスを用いる場合よりも、ハロゲンの除害が容易となる。
−効果の物理的な説明−
残留水素濃度が高いにも拘わらず、正孔濃度が増大する理由は、拡散したフッ素による水素ゲッタ効果であると考えられる。このことは、図3(b)に示したSIMS分析結果から明らかである。NF雰囲気でアニールしたサンプル中には、フッ素が内部拡散していることが分かる。また、フッ素の拡散には2種類あることも図3(b)のグラフから分かる。なぜなら、表面からの深さが0.5μmを境として、それよりも浅い領域では3×1018cm−3のピークを有する一方、それよりも深い領域では1×1018cm−3〜2×1018cm−3の平坦な分布を示すからである。すなわち、高濃度だが拡散速度が遅い第1の拡散と、低濃度だが拡散速度が速い第2の拡散との2種類の拡散速度が異なる拡散が同時に生じている。これらはヒ化ガリウム(GaAs)中への亜鉛(Zn)の拡散と同様の挙動であり、第1の拡散が格子置換型拡散であり、第2の拡散が格子間拡散であると考えられる。
MgをドープしたGaNに対するフッ素の拡散は、GaAsに対する亜鉛の拡散を参考に、以下のように考えることができる。まず、GaN表面からのフッ素の導入は、拡散の当初は格子間拡散として生じる。なぜなら、共有結合に特有の大きい格子間空間があり、また、格子間拡散は、格子置換型拡散のようなGaNの格子を変化させるエネルギーが不要であるため、表面からのフッ素の導入の活性化エネルギーが低いからである。GaN表面に到達したフッ素原子は、MgをドープしたGaN表面のバンドの曲がりにより、表面に蓄積された電子を受け取ってフッ素(F)イオンとなる。これにより、フッ素の原子(イオン)半径が小さくなり且つ閉殻となることにより、該フッ素イオンは格子間に低い活性化エネルギーで導入される。すなわち、反応式(2)として以下のような現象が生じる。ここで、e は表面蓄積電子であり、 hは正孔である。また、添字のiは、格子間に存在する原子を示す。
F + e + h → F + h …(2)
反応式(2)からは、フッ素がアクセプタとして機能することも分かる。ところが、格子間拡散においては、単位格子当たりの格子間空間は数個に限られているため、格子間に導入されるフッ素濃度には限界がある。その限界以上に、表面から格子間にフッ素が導入された場合は、格子間に存在するフッ素は結晶格子を置換する。その理由には2つある。第1の理由は、格子間原子と格子位置原子との間には、必ず反応式(3)に示すような平衡状態が存在するからである。ここで、フッ素は原子陰性度が近い窒素と置換すると考えられる。
GaN + F ⇔ GaF + N …(3)
第2の理由は、格子置換型拡散は格子間拡散と比べてフッ素を格子間に導入する限界濃度が高いからである。格子置換型拡散は、単純にいえば窒素の密度分だけフッ素を導入することができる。実際には、GaNへのフッ素拡散の場合、フッ素はGaNへのGaFの固溶限界までしか導入できないが、それでも最大で1021cm−3台は導入できると考えられる。また、GaNにドープされているMgとフッ素とが結合しやすいため、1×1018cm−3もの高濃度のMgドーピングがフッ素の格子置換を促進すると考えられる。一方、単位格子当たりの格子間空間は数個に限られおり、格子位置の数よりも小さいため、格子間に導入されるフッ素濃度は低い。
以上をまとめると、格子置換型のフッ素は次のように発生すると考えられる。拡散の当初は、フッ素が格子間にのみ導入されたとしても、格子間に存在できる限界(固溶限界)以上に導入密度が増大すれば、格子位置の窒素を置換せざるを得ない。格子位置での固溶度は格子間の場合よりも高いため、次々と格子置換が進行する。その結果、格子置換型フッ素は高密度に存在することができる。
フッ素イオンとして格子間拡散するフッ素は低濃度ではあるが、閉殻でありイオン半径が小さいため、GaN格子との相互作用が小さい。このため、拡散に必要な格子変形エネルギーが小さいので、拡散速度が大きくなる。一方、格子置換型拡散をするフッ素は高濃度ではあるが、拡散先のGaN格子に窒素空孔が存在しない限りは拡散できないため、その拡散速度は小さい。
以上のことは、図8に示すNF雰囲気のアニールを750℃で10分間行うSIMS結果と、図3(b)に示すNF雰囲気のアニールを750℃で20分間行うSIMS結果とを比較することによって確認できる。具体的には、
(1)アニール時間が10分の段階で、平坦に分布するフッ素が深さ1.5μmにまで達している。拡散係数に換算すると、格子間フッ素の拡散係数は2.3×10−9cm/min以上となり、拡散係数が亜鉛の濃度に比例して増大するGaAs中のZn拡散の場合(亜鉛濃度1019cm−3台で且つ加熱温度が1000℃)と比較できる程に大きい。
(2)一方、1018cm−3台の高濃度の格子置換型拡散は、格子間拡散よりも拡散速度が小さい。図9は格子置換型拡散における濃度が平坦な分布から濃度が傾斜しながら減少する深さを拡散距離として、アニール時間の平方根に対して拡散距離をプロットしたグラフである。一般に、拡散距離Lは拡散係数Dと拡散(アニール)時間tとにより、L=(D×t)1/2と表すことができる。従って、格子置換型拡散の拡散係数は5.6×10−11cm/minとなり、格子間拡散の場合よりも小さい。
(3)アニール時間が10分と20分との間に、格子間フッ素の濃度はほとんど増大せず、1×1017cm−3〜2×1017cm−3であり飽和している。この濃度が、格子間フッ素の固溶限界である。
(4)一方、アニール時間が10分と20分との間に、置換型フッ素の濃度はピーク濃度で1.7×1018cm−3から3.4×1018cm−3と倍増している。すなわち、置換型フッ素の固溶限界には、まだ達していない。また、置換型フッ素の濃度は格子間フッ素の濃度より一桁多いことが分かる。
次に、拡散させたフッ素の水素ゲッタ効果について説明する。
結晶成長時には、Mg−N−Hの結合状態で存在する水素は、H−F結合の結合エンタルピーが大きいため、格子間拡散しているフッ素はFイオンであることから、Mg−Nから解離できるので、Mgアクセプタが活性化する。すなわち、反応式(4)の反応が生じる。
Mg−N−H + F → Mg−N + h + HF + e …(4)
このように発生したHFはHイオンとは異なり、表面バンドの曲がりによる電界障壁によって拡散を防止されず、また、表面ガリウムのダングリングボンドに捕獲されることもなくGaN表面から脱離する。すなわち、格子間拡散するフッ素のゲッタ効果により、水素の除去が効果的に行われる。なお、ここで発生した電子は、フッ素が表面から導入される際に、Fイオンにイオン化する際の表面蓄積電子として利用される。
また、熱エネルギーによりMg−Nから解離した水素は、図1に示す第2の半導体層13において安定な形態のHイオンとして格子間を拡散する。一方、格子間拡散しているフッ素はFイオンとして存在する。従って、HイオンはFイオンによりクーロン力により引き寄せられ、H−F結合の結合エンタルピーが大きいことから、容易にゲッタされてHF分子を生成する。さらに、HF分子が生成された場合は、水素とフッ素との電気陰性度の差が大きいため、Hδ+−Fδ−のように、HF分子内には電子分布に偏り(分極)が生じる。Hイオンが大量に存在する場合は、溶液中と同様にその分極を遮蔽するようにHδ+−Fδ−の周辺にHイオンが集まる。
Mg−N−Hからの水素解離度は、Mg−N−Hの状態と水素の解離状態との平衡で決まる。以上の作用により、Mg−N結合の周辺から解離水素が減少すれば、Mg−N−Hからの水素の解離がさらに促進され、その結果、水素の除去が有効に進行する。
フッ素が格子置換型拡散する領域においても、以下のメカニズムにより水素がゲッタリングされる。すなわち、フッ素が窒素を置換した領域では、Ga−Nの結合が切断されるため、Gaにダングリングボンドが発生する。このダングリングボンドを終端するように、水素がゲッタリングされる。
以上のことから分かるように、水素のフッ素によるゲッタリングは、フッ素の拡散の後に進行する。このことは、温度が750℃のNF雰囲気によるアニール時間が異なるサンプルに対するSIMS結果を比較すれば確認できる。例えば、図8から分かるように、アニール時間が10分の場合は、フッ素が格子間拡散した領域における水素濃度は測定限界以下にまで低下し、一方、フッ素が格子置換型拡散した領域では、導入されたフッ素の分布に沿うように水素濃度が増加しているものの、その濃度は6×1017cm−3台である。
これに対し、図3(b)から分かるように、アニール時間を20分とした場合には、フッ素が格子間拡散した領域の水素濃度は、Mgがドープされていない第1の半導体層12においても8×1017cm−3台に増大している。また、フッ素が格子置換型拡散した領域では水素濃度が、最大でフッ素のピーク濃度である3×1018cm−3にまで増大している。
ところで、窒素でアニールした場合に第1の半導体層12にまで拡散しない水素が、NF雰囲気でアニールした場合に第1の半導体層12にまで拡散する理由は、水素の拡散の形態が、窒素でアニールした場合にはHイオンであり、NF雰囲気でアニールした場合にはフッ化水素(HF)であるためである。アンドープGaNからなる第1の半導体層12とMgがドープされたGaNからなる第3の半導体層13との界面には、第1の半導体層12にバックグランドで1016cm−3台の電子キャリアが含まれる。このため、第1の半導体層12には空乏層が深い領域にまで広がって形成され、内部電界が生じている。この内部電界は、第1の半導体層12から第2の半導体層13に向くため、Hイオンは正電荷のためドリフト電界を受け、第2の半導体層13から第1の半導体層12への拡散が抑制される。一方、HFは電気的に中性であるため内部電界を感じることなく、第2の半導体層13から第1の半導体層12に拡散する。
このように、第1の実施形態においては、NF雰囲気のアニールにより、Mgがドープされた第2の半導体層13から水素を効率的に除去できるため、Mgアクセプタの活性化率を向上することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
−サンプルの構成−
図10は本発明の第2の実施形態に係るp型半導体層を含む窒化物半導体積層膜の断面構成を示している。第2の実施形態に係る半導体積層膜は、素子の構成を採ってはいないが、p型半導体層を含む窒化物半導体積層膜を構成要素とする窒化物半導体素子のサンプルとして説明する。
図10に示すように、例えばMOCVD法により、n型GaNからなる基板21の主面上に、厚さが6μmで且つドナーとなるシリコン(Si)のドープ濃度が1×1018cm−3のn型GaNからなる第1の半導体層22と、厚さが20nmのアンドープGaNからなる第2の半導体層23と、厚さが10nmで且つアクセプタとなるマグネシウム(Mg)のドープ濃度が2×1019cm−3のp型Al0.2Ga0.8Nからなる第3の半導体層24と、それぞれMgが2×1019cm−3の濃度にドープされ、厚さが共に1.5nmのp型Al0.06Ga0.94Nとp型GaNとを交互に0.48μmの厚さに積層してなる超格子層25と、厚さが40nmで且つMgのドープ濃度が2×1019cm−3のp型GaNからなる第4の半導体層26と、厚さが40nmで且つMgのドープ濃度が1×1020cm−3のp型GaNからなる第5の半導体層27とを順次成長する。
結晶成長の後に、それぞれ温度が750℃で20分間の、NF雰囲気による本発明のアニールと、比較用の窒素雰囲気による従来のアニールとを別々に実施する。
−評価及び分析−
図11(a)に従来のアニールを施した場合のサンプルのSIMS分析結果を示し、図11(b)に本発明のアニールを施した場合のサンプルのSIMS分析結果を示す。なお、窒素雰囲気による従来のアニールとNF雰囲気による本発明のアニールとのガス流量及びガス圧力は第1の実施形態と同等である。
図11(a)に示すように、窒素雰囲気による従来のアニールの場合には、超格子層25における水素濃度は平均で4×1018cm−3である。一方、図11(b)に示すように、NF雰囲気による本発明のアニールの場合には、第1の実施形態とは異なり、超格子層25における水素濃度は増加せず、平均で1×1018cm−3であり、さらに超格子層25よりも深い領域では6×1017cm−3にまで低下している。
また、従来のアニールの場合には、水素は第1の半導体層22に拡散していないが、NF雰囲気による本発明のアニールの場合には第1の半導体層22にまで拡散している。
第2の実施形態においては、フッ素の濃度が、第1の実施形態の第2の半導体層13及び第1の半導体層12とは異なり、超格子層25において5×1015cm−3であり、第1の半導体層22において1×1015cm−3と小さい。
但し、図12に示すように、第2の実施形態においても、NF雰囲気のアニールによるp型のコンタクト抵抗率は増大する。これは、SIMSによる分析結果では判別が困難であるが、第1の実施形態のように窒化物半導体層の最表面が酸化されているためである。
このように、第2の実施形態においても、Mgがドープ層された超格子層25の残留水素濃度を低下させることができる。
−効果の物理的な説明−
第2の実施形態に係るNF雰囲気のアニールによるフッ素の拡散は、以下のように説明できる。
図11(b)に示すように、拡散したフッ素は、低濃度ではあるが20分と短い時間に深さが1.5μmまでの領域に拡散していることから、格子間拡散である。フッ素はFイオンとして半導体積層膜の表面から導入され、格子間拡散により拡散するFイオンがMg−N−Hの結合から水素を直接にゲッタリングする。また、Mg−N−Hの結合から熱解離されたHイオンをゲッタリングした場合は、電気的に中性のフッ化水素(HF)を形成する。しかしながら、中性となった場合でも、HFは分子内に分極を有するため、分極を遮蔽されるようにHイオンを従えながら拡散する。このため、SiがドープされたGaNからなる第1の半導体層22に含まれる水素濃度はフッ素濃度よりも高くなる。また、HFはHイオンを従えながら拡散するため、p型の第3の半導体層24とn型の第1の半導体層22とにより生じる空乏層の内部電界により、第1の半導体層22への拡散は抑制される。このため、第1の半導体層11におけるフッ素濃度は、例えばMgがドープされた超格子層25よりも低い。
当然のことながら、第1の実施形態と同様に、フッ素にゲッタリングされた水素は、第5の半導体層27の表面のバンド曲がりによって、半導体積層膜の表面への拡散が抑制される。また、フッ素にゲッタリングされた水素は、第5の半導体層27の表面ガリウムのダングリングボンドに捕獲されることなく、雰囲気中に放出される。すなわち、NF雰囲気のアニールにおいては、第4の半導体層26からの水素の除去を律速する表面脱離過程を回避できるため、第5の半導体層27からの水素の除去が効率的に行われる。従って、超格子層25の水素濃度が窒素雰囲気でアニールを行う場合と比べて低減する。
なお、第2の実施形態においては、格子間拡散により導入されるフッ素の濃度が低いため、第1の実施形態で生じるような、高濃度の格子間拡散を要因とする格子置換型拡散は見られない。第2の実施形態においては、格子間拡散により導入されるフッ素の濃度が低い理由は、図13(a)及び(b)に示す表面近傍のバンドダイヤグラムを用いて説明できる。すなわち、図13(a)に示すように、第1の実施形態の場合は、最表面に形成された第3の半導体層14の表面においては表面準位に起因してバンド曲がりが生じる。ここで、Fはフッ素ラジカルを表す。
さらに、第2の実施形態のように、Mgがドープされた超格子層25が第4の半導体層26の下側に位置すると、図13(b)に示すように、AlGaNとGaNとのヘテロ接合によって、第4の半導体層26にバンド曲がりが生じる。いずれの場合でも、表面の蓄積電子を受けて半導体積層膜の表面から格子間に導入されるFイオンが、内部への拡散を抑制する方向に内部電界を発生する。しかしながら、その内部電界の電界強度は、Mgがドープされた超格子層25を有する第2の実施形態に係るサンプルの方が第1の実施形態に係る超格子層を有さないサンプルよりも大きい。従って、第2の実施形態においては、格子間拡散により拡散するフッ素の濃度が第1の実施形態と比べて小さくなる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。
−実施形態の背景−
図3(a)から分かるように、第1の実施形態で説明した温度が750℃で20分間の窒素雰囲気による従来の活性化処理により、半導体積層膜の表面から深さが0.6μmよりも深い領域において、酸素濃度が1×1017cm−3〜3×1017cm−3と大幅に増加している。活性化処理前は、図2から分かるように、酸素濃度は2×1016cm−3〜4×1016cm−3とSIMSの測定限界に近い低濃度である。さらに、図3(b)から分かるように、本発明に係る温度が750℃で20分間のNを含むNF雰囲気によるアニール処理であっても、表面からの深さが0.6μmよりも深い領域においては、酸素濃度が1×1017cm−3〜3×1017cm−3と増大している。従って、NFとは無関係に、窒素ガス中に微量に含まれる酸素(O)又は水(HO)から、酸素が格子間拡散により導入されていると考えられる。
なお、図3(b)及び図8から分かるように、温度が750℃のNF雰囲気のアニールによって、0.6μmよりも深い領域での酸素濃度は、活性化処理前の2×1016cm−3〜4×1016cm−3からアニール時間が10分で4×1016cm−3〜8×1016cm−3と増大し、アニール時間が20分で1×1017cm−3〜3×1017cm−3と増大している。従って、アニールにより酸素が格子間拡散により導入されていることが確認できる。
また、NF雰囲気によりアニールしたサンプルにおいて、図3(b)及び図5から分かるように、半導体積層膜の表面近傍に酸素が1018cm−3〜1019cm−3もの高濃度で導入されている原因は、格子置換型拡散しているフッ素が酸素導入を引き起こしているためと考えられる。なぜなら、温度が750℃のNF雰囲気によりアニールしたサンプルのSIMS分析結果において、高濃度拡散している酸素の拡散距離が格子置換型拡散しているフッ素よりも短いからである。さらに、酸素が高濃度拡散した表面近傍でフッ素の濃度が低下していることから、高濃度拡散している酸素は格子置換型拡散であり、窒素がフッ素に置換されたGaN(GaF)格子を狙って、酸素がフッ素を置換しながら格子置換型拡散をする。このため、温度が750℃でNF雰囲気中によりアニールを行ったサンプルにおいては、酸素のピーク濃度とフッ素のピーク濃度がほぼ同等となる。
一方、温度が800℃のNF雰囲気によりアニールを行ったサンプルは、図6から分かるように、格子置換型拡散するフッ素濃度が3×1017cm−3〜5×1017cm−3と、温度が750℃のNF雰囲気によるアニールを行った場合よりも低下している。これは酸素の格子置換型拡散がより一層進行し、フッ素が酸素に置換されているためである。酸素のピーク濃度が1×1019cm−3と大幅に増大しているのは、NFから発生した窒素ラジカルと800℃という高温のためにGaNがエッチングされて、窒素が脱離するためである。すなわち、窒素が脱離して窒素空孔が発生した領域は、酸素が侵入しやすくなるからである。
また、図6において、1020cm−3に達する程に高濃度に水素が存在し、濃度分布に2つのピークがある理由は、窒素ガス中に微量に存在する水から発生した水素が、窒素が脱離した領域(深さが0.4μmに水素濃度のピークがある領域)におけるGaのダングリングボンドを終端する現象と、格子置換型拡散する酸素を、深さが0.15μmの水素濃度のピークと酸素濃度のピークとが一致する領域で終端する現象とが生じているためである。
このように、本発明においては、NF雰囲気によるアニールを施すと、バルクとしての正孔濃度は増大するものの、半導体積層膜の表面においては酸素が導入されることから、p型のコンタクト抵抗率が増大する。図14にp型コンタクト抵抗率の活性化条件依存性を示す。図14に示すように、本発明に係るNF雰囲気のアニールは従来の窒素雰囲気のアニールよりも低い温度でも高い温度でも、短い時間でもp型コンタクト抵抗率が増大している。
このようにNF雰囲気のアニールを施すことによるp型コンタクト抵抗率の増大に対する対処法として第3の実施形態を説明する。
−サンプルの構成−
図15は本発明の第3の実施形態に係るp型半導体層を含む窒化物半導体積層膜の断面構成を示している。第3の実施形態に係る半導体積層膜は、素子の構成を採ってはいないが、p型半導体層を含む窒化物半導体積層膜を構成要素とする窒化物半導体素子のサンプルとして説明する。図15に示すように、例えばMOCVD法により、サファイアからなる基板31の主面上に、厚さが1μmのアンドープGaNからなる第1の半導体層32、厚さが0.7μmでMgのドープ濃度が2×1019cm−3のMgドープGaNからなる第2の半導体層33及び厚さが20nmでMgのドープ濃度が1×1020cm−3のMg高濃度ドープGaNからなる第3の半導体層34を順次エピタキシャル成長して、半導体積層膜35を形成する。
第1の実施形態でみられた表面酸化と半導体積層膜中でのフッ素の水素蓄積を低減するために、第3の実施形態においては、図16に示すように、図15の結晶成長の後に半導体積層膜35の上面に、絶縁性の保護膜36、例えば酸化シリコン(SiO)又は窒化シリコン(SiN)からなる保護膜36を設ける。その後、温度が800℃で30分間の窒素雰囲気のアニールにより活性化処理を行った後に、さらに、追加アニールとしてNF雰囲気のアニールを行う。ここでは、保護膜36として膜厚が0.4μmのSiO膜を用いている。
第3の実施形態によると、半導体積層膜35の上面に該半導体積層膜35を保護する保護膜36を設けたことにより、NFから半導体積層膜35に導入されるフッ素の流量を低減することができる。このため、第1の実施形態のように、高濃度の格子間のフッ素拡散による置換型フッ素拡散、及びその後に生じる酸素の導入を抑制することができる。
また、あらかじめ窒素雰囲気のアニールで活性化処理を行うことにより、NF雰囲気による追加アニールの前に残留水素濃度を低減できるため、フッ素の水素蓄積量を低減することができる。従って、表面酸化によるp型コンタクト抵抗率の増大を抑制できると共に、フッ素にゲッタリングされた残留水素がフッ素から解離してアクセプタを再不活性化する現象を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、保護膜36に膜厚が0.4μmのSiO膜を用いたが、保護膜36として好ましい膜厚は、0.1μm〜1.0μm程度である。
−評価及び分析−
図17に、半導体積層膜の上面に保護膜を設けた場合の正孔濃度及びp型コンタクト抵抗率の追加アニール条件依存性を示す。窒素雰囲気のアニール及びNF雰囲気の追加アニールにおけるガス流量及びガス圧力は、第1の実施形態と同様である。図17において、比較例として温度が850℃の窒素雰囲気のアニールと、温度が750℃のNF雰囲気のアニール、温度が800℃のNF雰囲気のアニール及び温度が850℃のNF雰囲気のアニールの3通りの追加アニールとを行った。ここでは、処理時間はいずれも20分としている。
図17からは、温度が850℃で20分間の窒素雰囲気によるアニールで得られる正孔濃度である1×1018cm−3よりも高い2×1018cm−3の正孔濃度を、それよりも低い温度の750℃で20分間のNF雰囲気のアニールにより得られることが分かる。
これに対し、温度が750℃で20分間のNF雰囲気の追加アニールで得られるp型コンタクト抵抗率は、温度が850℃で20分間の窒素雰囲気のアニールとほぼ同等の2×10−4Ωcm〜3×10−4Ωcmである。
すなわち、NF雰囲気の追加アニールによって、窒素雰囲気よりも活性化処理に必要な温度を低下させることができ、且つ処理時間を短縮することができる。
このように、第3の実施形態によると、高い正孔濃度と低いp型コンタクト抵抗率を両立することができる。
以下、図10に示した第2の実施形態に係るサンプルに保護膜を設けた場合と図15に示した第3の実施形態に係るサンプルに保護膜を設けた場合との残留水素濃度の追加アニールの条件依存性の測定結果を図面に基づいて説明する。
図18は第2の実施形態及び第3の実施形態の各サンプルに保護膜36を設けた場合の残留水素濃度をSIMSにより測定した結果を示している。図18において、比較例として温度が850℃の窒素雰囲気のアニールと、温度が750℃のNF雰囲気のアニール、温度が800℃のNF雰囲気のアニール及び温度が850℃のNF雰囲気のアニールの3通りずつの追加アニールとを行った。ここでは、処理時間はいずれも40分としている。
図18から分かるように、保護膜36を設けて行うNF雰囲気によるアニールは、いずれの温度下であっても、温度が850℃の窒素雰囲気によるアニールの場合と比べて残留水素が低減する。なお、図18においては、追加アニールとして温度が850℃のNF雰囲気のアニールを行った場合、温度が850℃の窒素雰囲気のアニールの場合よりも残留水素濃度は低い。しかしながら、図17においては、温度が850℃のNF雰囲気による追加アニールの方が温度が850℃の窒素雰囲気の追加アニールの場合よりも正孔濃度が低い。これは、Mgを1×1019cm−3以上に高濃度にドープした場合には、残留水素が少ないと、自己補償効果により窒素(N)欠陥が形成されるためであると考えられる。ここで、自己補償効果とは、セレン化亜鉛(ZnSe)で良く知られた現象であり、窒化ガリウム(GaN)でも生じることが指摘されている。この自己補償効果によると、バンドギャップが大きい、いわゆるワイドバンドギャップ半導体中のキャリア濃度が増大する際に、電気的に中性な状態からフェルミエネルギーが大幅に変化して結晶が不安定になることを避けるために、結晶欠陥が形成されてキャリア濃度が低下する。従って、NF雰囲気のアニール条件は、アニールの目的が残留水素濃度を低減するのか又は正孔濃度を増大するのかによって適切に選択する必要がある。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図19(a)〜図19(c)は本発明の第4の実施形態に係る窒化物半導体を用いた発光ダイオード素子の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図19(a)に示すように、例えばMOCVD法により、サファイアからなる基板41の主面上に、厚さが2.0μmでSiのドープ濃度が1×1018cm−3のn型GaNからなるn型コンタクト層42、InGaNからなる多重量子井戸(MQW)活性層43、厚さが100nmでMgのドープ濃度が2×1019cm−3のp型Al0.1Ga0.9Nからなるp型クラッド層44、及び厚さが20nmでMgのドープ濃度が1×1020cm−3のp型GaNからなるp型コンタクト層45を順次成長する。ここで、MQW活性層43は、例えばPL(photoluminescence)スペクトルのピーク波長が471nmとなるように成長させる。
次に、図19(b)に示すように、化学気相堆積(CVD)法により、p型コンタクト層45の上に、膜厚が0.4μmのSiOからなる保護膜46を形成する。続いて、温度が750℃で20分間のNF雰囲気によるアニールを行うことにより、フッ素(Fイオン)をp型クラッド層44及びp型コンタクト層45とに5×1015cm−3の濃度で拡散させると共に、結晶成長時にドープされたMgアクセプタを活性化する。なお、NF雰囲気のアニールにおけるガス流量及びガス圧力は、第1の実施形態と同一である。この活性化処理により、Mgがドープされたp型クラッド層44及びp型コンタクト層45における残留水素濃度は1×1018cm−3である。なお、比較のために、Mgアクセプタの活性化処理として上記のNF雰囲気のアニールではなく、従来の窒素雰囲気のアニール(800℃で且つ30分間)を施したウェハも作製した。この場合、高温且つ長時間のアニールにも拘わらず、p型クラッド層44及びp型コンタクト層45における残留水素濃度は4×1018cm−3とNF雰囲気の場合のアニールよりも高濃度であった。
次に、図19(c)に示すように、保護膜46をエッチング等により除去し、その後、ドライエッチングにより、n型コンタクト層42におけるn側電極形成領域を選択的に露出する。続いて、露出したn型コンタクト層42のn側電極形成領域に、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)との積層膜からなるn側電極47を形成する。続いて、p型コンタクト層45の上に、パラジウム(Pd)と銀(Ag)との積層膜からなるp側電極48を形成する。なお、n側電極47とp側電極48との形成順序は特に問われない。また、MQW活性層43からp側電極48へ伝搬した発光光は高反射率ミラーでもあるp側電極18に反射される。従って、作製した発光ダイオード素子は、発光光を基板41側から取り出す構成である。その後、ウェハ状態のダイオード素子を600μm角にチップダイシングして、発光ダイオードチップを得る。
第4の実施形態に係る発光ダイオード素子は、注入電流が300mAのときの動作電圧が3.2Vで、直列抵抗は10Ωである。比較用に作製した従来の窒素雰囲気のアニールによる活性化処理を行った発光ダイオード素子における動作電圧の3.8V及び直列抵抗の20Ωと比べていずれも低い値を得られている。
第4の実施形態と従来技術とでそれぞれ作製した発光ダイオード素子は、いずれも光束が17lmである。第4の実施形態においては、電力効率として15%の低減を実現した。また、動作電圧の低減により、注入電流を150mAとする連続発振状態(CW)で1000時間にわたって動作させた場合の光束の低下率は、従来技術の場合には20%であったが、第4の実施形態の場合は10%に抑制されており、ダイオード素子としての信頼性も向上している。
このように、第4の実施形態によると、窒化物半導体からなる発光ダイオード素子の動作電圧が低減して発光効率が向上し、その結果、高信頼性を実現することができる。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図20(a)〜図20(d)は本発明の第5の実施形態に係る窒化物半導体を用いた発光ダイオード素子の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図20(a)に示すように、例えばMOCVD法により、n型の炭化シリコン(SiC)からなる基板51の主面上に、厚さが2.0μmでSiのドープ濃度が1×1018cm−3のn型GaNからなるn型コンタクト層52、InGaNからなる多重量子井戸(MQW)活性層53、厚さが100nmでMgのドープ濃度が2×1019cm−3のp型Al0.1Ga0.9Nからなるp型クラッド層54、及び厚さが20nmでMgのドープ濃度が1×1020cm−3のp型GaNからなるp型コンタクト層55を順次成長する。ここで、MQW活性層53は、例えばpL線の波長が471nmとなるように成長させる。続いて、温度が800℃で30分間の窒素雰囲気によるアニールを行うことにより、結晶成長時にドープされたMgアクセプタを活性化させる。
次に、図20(b)に示すように、基板51のn型コンタクト層52と反対側の面上に、金(Au)からなるn側電極57を形成する。続いて、p型コンタクト層55の上に、径が60μmのニッケル(Ni)と金(Au)との積層膜からなるp側電極58を選択的に形成する。なお、n側電極57とp側電極58との形成順序は特に問われない。n側電極57は高反射率ミラーとしても機能するため、第5の実施形態に係る発光ダイオード素子は、MQW活性層53からの発光光をp側電極58側から取り出す構成を採る。
次に、図20(c)に示すように、CVD法により、p型コンタクト層55の上にp側電極56を覆うように全面にわたって、厚さが0.4μm程度の窒化シリコン(SiN)からなる保護膜56を形成する。該保護膜56により、p側電極58のフッ素による腐食を防止することができる。続いて、形成した保護膜56におけるp側電極58の周辺部分を選択的に除去することにより、p型コンタクト層55におけるp側電極58の周辺部分を露出する。その後、温度が750℃で20分間のNF雰囲気によるアニールを行うことにより、フッ素(Fイオン)をp型クラッド層44及びp型コンタクト層45に5×1015cm−3の濃度で拡散する。なお、NF雰囲気アニールにおけるガス流量及びガス圧力は、第1の実施形態と同一である。これにより、p型クラッド層54及びp型コンタクト層55におけるp側電極58の下側部分を除く領域には3×1018cm−3のフッ素が導入される。また、p型クラッド層54及びp型コンタクト層55におけるp側電極58の下側の領域においては、正孔の濃度が1×1018cm−3から2×1018cm−3にまで増大する。
次に、図20(d)に示すように、CVD法により、p型コンタクト層55の上にp側電極58を覆うように全面にわたって、SiNからなるパシベーション膜59を形成する。なお、パシベーション膜59は、保護膜56を形成した状態で形成してもよい。なお、比較のために、NF雰囲気によるアニールを施さない従来技術によるウェハも作製した。その後、ウェハを200μm角にチップダイシングし、発光ダイオードチップを作製する。
第5の実施形態に係る発光ダイオード素子は、p型クラッド層54及びp型コンタクト層55におけるp側電極58の周辺部の正孔の濃度が従来技術と比べて2倍程度に増大するため、p側電極58から注入される注入電流の横方向(基板面に平行な方向)への広がりが容易となる。従って、第5の実施形態においては、発光ダイオードチップの全体をほぼ均一の発光強度で発光することができるため、従来技術による発光ダイオードチップの四隅の発光強度がp側電極58の近傍の領域よりも低いという問題を解決できる。
また、従来技術によるアニールを施した発光ダイオード素子は、発光動作中に、CVD法により形成された際に大量の水素を含むSiNからなるパシベーション膜59からの水素がp型クラッド層54及びp型コンタクト層55に拡散して、Mgアクセプタを再不活性化するという問題をも有している。このため、注入電流を150mAとする連続発振状態(CW)で動作させた場合には、30分間の動作後にp側電極58からの横方向への電流の広がりが小さくなって、p側電極58の周辺部のみが発光するという劣化現象を生じる。一方、第5の実施形態に係る発光ダイオード素子の場合は、パシベーション膜59から拡散した水素が導入されたフッ素イオンに捕捉されるため、Mgアクセプタが再不活性化されることがない。
また、第5の実施形態によると、パシベーション膜59は、水分の内部拡散を抑制するという本来の機能を発揮できるため、注入電流を150mAとする連続発振状態(CW)で1000時間動作をさせても、発光ダイオードチップの表面からの発光強度はチップ全体でほぼ均一であり変化を生じない。
このように、第5の実施形態によると、窒化物半導体からなる発光ダイオード素子に対する高信頼性を実現できる。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図21〜図23は本発明の第6の実施形態に係る窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図21(a)に示すように、例えばMOCVD法により、n型の窒化ガリウム(GaN)からなる基板61の主面上に、n型GaN層62、n型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層63、n型GaNからなるn型光ガイド層64、InGaNからなる多重量子井戸(MQW)活性層65、p型GaNからなるp型光ガイド層66、p型Al0.2Ga0.8Nからなるp型電子ブロック層67、p型AlGaNからなるp型超格子クラッド層68、及びp型GaNからなるp型コンタクト層69を順次成長する。
ここで、n型GaN層62の厚さは1μmであり、n型ドーパントであるSiのドープ濃度は1×1018cm−3である。n型クラッド層63の厚さは1.5μmであり、Siのドープ濃度は5×1017cm−3である。n型光ガイド層64の厚さは0.1μmであり、Siのドープ濃度は5×1017cm−3である。MQW活性層65は、厚さが3nmのアンドープInGaNからなる井戸層と、厚さが7nmのアンドープIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層とを3重に含む多重量子井戸構造を有する。ここで、井戸層のIn組成は、発振波長が405nmとなるように制御する。p型光ガイド層66の厚さは0.1μmであり、Mgのドープ濃度は1×1019cm−3である。p型電子ブロック層67の厚さは10nmであり、Mgのドープ濃度は1×1019cm−3である。p型超格子クラッド層68は、Mgのドープ濃度が1×1019cm−3で、厚さがそれぞれ2nmのp型Al0.1Ga0.9Nとp型GaNとが0.5μmの厚さに積層されてなる超格子構造を有する。p型コンタクト層69の厚さは20nmであり、Mgのドープ濃度は1×1020cm−3である。
次に、図21(b)に示すように、CVD法により、p型コンタクト層69の上に、厚さが0.4μmのSiOからなる保護層70を形成する。その後、形成した保護膜70に対してリッジ部(リッジ導波路)形成領域を覆うようにパターニングする。続いて、保護膜70をマスクとして、ドライエッチングにより、p型超格子クラッド層68とp型コンタクト層69とに、基板61に対して結晶軸の方向が図面の前後方向において<1−100>方向となるストライプ状のリッジ部(リッジ導波路)71を形成する。p型超格子クラッド層68におけるリッジ部71の側方部分の厚さは0.1μmである。また、リッジ下部の幅は2μmとし、リッジ上部の幅は1.4μmとしている。なお、結晶軸に付した負符号(−)は該負符号に続く一の指数の反転を便宜上表している。
次に、図22(a)及び図22(b)に示すように、保護膜70を残した状態で、第1の実施形態と同一の条件でのNF雰囲気のアニールを行うことにより、p型クラッド層68及びp型コンタクト層69におけるリッジ部71の側面からフッ素(Fイオン)を拡散する。図22(a)及び図22(b)において、符号72a、72b及び72cは、フッ素がそれぞれ高濃度、中濃度及び低濃度に拡散した領域を示す。窒化物半導体における自発分極及びピエゾ分極等の内部電界は結晶成長方向に沿って生じるため、リッジ部71の側面からも拡散するフッ素の拡散速度が2〜3倍に増大する。その結果、p型超格子クラッド層68におけるリッジ部71の全域にわたって、濃度が3×1018cm−3もの高濃度のフッ素を拡散することができる。その結果、p型超格子クラッド層68におけるリッジ部71の正孔濃度は、従来技術における1×1018cm−3から2×1018cm−3に増大する。
これに対し、リッジ部71は、その上面に保護膜70が形成されていること、及びp型超格子クラッド層68によりp型コンタクト層69の表面のバンド曲がりが増強されていることから、図22(b)の符号72cに示すように、p型コンタクト層69に導入されるフッ素は5×1016cm−3と低濃度に抑制できる。その結果、p型コンタクト層69のp型コンタクト抵抗率は従来技術と同様に、2×1014Ωcmと低抵抗を維持することができる。
また、図22(b)の符号72bに示すように、p型超格子クラッド層68におけるリッジ部71の側方部分には、超格子構造の内部電界により抑制されつつも、5×1017cm−3の濃度でフッ素が拡散している。
なお、比較のために、本実施形態と同様に結晶成長し、リッジ部71を形成したウェハに対して、従来技術である温度が800℃で30分間の窒素雰囲気のアニールにより、Mgアクセプタを活性化した。この場合は、リッジ部71のp型超格子クラッド層68における正孔の濃度は、前述した通り1×1018cm−3であった。
次に、図23に示すように、保護膜70を除去した後、p型コンタクト層69におけるリッジ部71の上面にパラジウム(Pd)からなるp側電極73を形成する。続いて、基板61を劈開しやすいように研磨等により薄膜化した後、薄膜化された基板61におけるn型GaN層62と反対側の面上に、チタン(Ti)からなるn側電極74を形成する。続いて、リッジ部71の共振器の長さが600μmとなるように、劈開により半導体積層膜における面方位が(1−100)面からなるミラー面(共振器端面)を形成する。その後、半導体積層膜の酸化防止及び反射率の調整のために、共振器端面のレーザ光を出射する前端面には、反射率が10%の酸化アルミニウム(Al)からなる単層コート膜(図示せず)を形成し、共振器端面の後端面には反射率が90%の酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)とからなる積層コート膜(図示せず)を形成する。
以下、第6の実施形態に係る半導体レーザ素子の動作特性について説明する。従来技術の窒素雰囲気のアニールによりMgアクセプタを活性化した比較用の半導体レーザ素子においては、室温連続発振をさせた場合、閾値電流は30mAであり、スロープ効率は1.0W/Aであり、100mWの光出力時の動作電流は130mAであり、動作電流が50mA時の動作電圧は5Vであった。これに対し、第6の実施形態に係るNF雰囲気のアニールを施した半導体レーザ素子の場合は、閾値電流は25mAであり、スロープ効率は1.2W/Aであり、100mWの光出力時の動作電流は110mAであり、動作電流が50mA時の動作電圧は4.5Vである。このように、電気特性及び光学特性の双方においてデバイス特性が向上する。
第6の実施形態により作製された窒化物半導体からなる半導体レーザ素子のデバイス特性が向上する理由は、以下のように説明できる。まず、閾値電流の低減とスロープ効率の向上は、p型半導体層の正孔濃度の増大による内部量子効率の向上により実現される。正孔濃度の増大により、p型半導体層のフェルミ準位が低くなるため、MQW活性層65とp型半導体層(特にp型電子ブロック層67)との界面における電子に対するポテンシャル障壁が高くなり、p型半導体層への電子のオバーフローが抑制される。その結果、MQW活性層65へのキャリア注入効率である内部量子効率が向上して、発振キャリア密度を発現する電流が低減する。これにより、注入されたキャリアがMQW活性層65において誘導放出をする効率が高くなり、すなわちスロープ効率が向上するので、動作電流が低減する。
また、正孔濃度の増大は、p型半導体層の直列抵抗を低減し、ひいては動作電圧をも低減する。
以上のように、第6の実施形態に係る半導体レーザ素子は、動作電流と動作電圧とを低減できることから信頼性も向上する。例えば、動作温度が75℃で、連続発振により光出力を100mWの一定となるように動作させた場合は、従来技術の半導体レーザ素子では動作電流が10%も増大したが、第6の実施形態に係る半導体レーザ素子では動作電流の増大は5%である。
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図24〜図26は本発明の第7の実施形態に係る窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図24(a)に示すように、例えばMOCVD法により、n型の窒化ガリウム(GaN)からなる基板81の主面上に、n型GaN層82、n型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層83、n型GaNからなるn型光ガイド層84、InGaNからなる多重量子井戸(MQW)活性層85、p型GaNからなるp型光ガイド層86、p型Al0.2Ga0.8Nからなるp型電子ブロック層87、及びn型Al0.15Ga0.85Nからなるn型電流狭窄層88を順次成長する。
ここで、n型GaN層82の厚さは1μmであり、n型ドーパントであるSiのドープ濃度は1×1018cm−3である。n型クラッド層83の厚さは1.5μmであり、Siのドープ濃度は5×1017cm−3である。n型光ガイド層84の厚さは0.1μmであり、Siのドープ濃度は5×1017cm−3である。MQW活性層85は、厚さが3nmのアンドープInGaNからなる井戸層と、厚さが7nmのアンドープIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層とを3重に含む多重量子井戸構造を有する。ここで、井戸層のIn組成は、発振波長が405nmとなるように制御する。p型光ガイド層86の厚さは0.1μmであり、Mgのドープ濃度は1×1019cm−3である。p型電子ブロック層87の厚さは10nmであり、Mgのドープ濃度は1×1019cm−3である。n型電流狭窄層88の厚さは0.15μmであり、Siのドープ濃度は4×1018cm−3である。
次に、図24(b)に示すように、ClF雰囲気のアニールにより、フッ素(F)と塩素(Cl)とを拡散させる。ここで、ClFガスの流量は0.2L/min(0℃、1気圧)とし、これを流量が1.8L/min(0℃、1気圧)のアルゴン(Ar)ガスで希釈しながら、全圧を約300×133.3Pa(=300Torr)に調整する。また、アニール温度を200℃とし、処理時間を60分としている。
第7の実施形態においては、以下のようにフッ素と塩素とが拡散する。まず、n型電流狭窄層88が最表面となるため、最表面におけるバンド曲がりは電界の方向が内部から表面に向かう方向となる。このため、フッ素及び塩素がキャリアの電子を受け取って、Fイオン及びClイオンとなった負電荷を持つ場合には、格子間拡散による内部拡散が促進される。その結果、大量のFイオン及びClイオンが格子間に導入される。格子間に導入される負イオンの濃度が1018cm−3台にまで達すると、これら負イオンはn型電流狭窄層88を構成するAlGaN中の窒素を置換しながら拡散する。n型電流狭窄層88中にはAl原子が高濃度に存在するため、AlFの固溶体として、フッ素が特に高濃度に格子置換型拡散する。このため、n型電流狭窄層88中のフッ素の濃度は3×1020cm−3となり、塩素の濃度は1×1020cm−3となり、いずれも高濃度となる(符号89a)。
これに対し、n型電流狭窄層88とp型電子ブロック層87との界面にはpn接合に起因する内部電界が存在し、その内部電界の方向がn型電流狭窄層88からp型電子ブロック層87へ向かう方向となる。このため、Fイオン及びClイオンのような負イオンの場合は、内部電界によってn型電流狭窄層88からp型電子ブロック層87への拡散が抑制される。これにより、p型電子ブロック層87、さらにはp型光ガイド層86に拡散するフッ素の濃度は3×1018cm−3となり、塩素濃度は1×1018cm−3となり、いずれも中濃度となる(符号89b)。なお、フッ素と塩素とが拡散したp型半導体層(p型電子ブロック層87及びp型光ガイド層86)の正孔濃度は3×1018cm−3である。
なお、第7の実施形態においては、800℃程度の高温下でのNF雰囲気によるアニールとは異なり、加熱温度が200℃と比較的に低温であり、且つ雰囲気に窒素(N)ラジカルを含まないため、p型電子ブロック層87への酸素の導入が抑制される。その結果、n型電流狭窄層における酸素の濃度は2×1018cm−3〜4×1018cm−3となる。
また、比較のために、ClF雰囲気のアニールを施していない従来技術による半導体積層膜を形成したウェハも作製した。
次に、図25(a)に示すように、ドライエッチング又はウェットエッチングにより、n型電流狭窄層88にストライプ状(図面の前後方向)に延び且つp型電子ブロック層87を露出する開口部88aを形成する。開口部88aは、p型電子ブロック層87と接する下部の幅を1.5μmとし、上部の幅を2.0μmとする。この開口部88aは、内部ストライプ導波路として機能する。
次に、図25(b)に示すように、再度、MOCVD法により、n型電流狭窄層88の上に開口部88aを埋め込むように、p型AlGaNからなるp型超格子クラッド層90と、p型GaNからなるp型コンタクト層91とを形成する。ここで、p型超格子クラッド層90は、Mgのドープ濃度が1×1019cm−3で、厚さがそれぞれ2nmのp型Al0.05Ga0.95Nとp型GaNとが0.5μmの厚さに積層されてなる超格子構造を有する。p型コンタクト層91の厚さは40nmであり、Mgのドープ濃度は1×1020cm−3である。続いて、温度が800℃で30分間の窒素雰囲気のアニールを行うことにより、埋め込み成長したp型超格子クラッド層90及びp型コンタクト層91のMgアクセプタを活性化する。その結果、埋め込み成長したp型半導体層の正孔の濃度は1×1018cm−3となる。
次に、図26に示すように、p型コンタクト層91の上面にパラジウム(Pd)からなるp側電極73を形成する。続いて、基板81を劈開しやすいように、研磨等により薄膜化した後、薄膜化された基板81におけるn型GaN層82と反対側の面上に、チタン(Ti)からなるn側電極93を形成する。続いて、共振器の長さが600μmとなるように、劈開によりミラー面(共振器端面)を形成する。その後、半導体積層膜の酸化防止及び反射率の調整のために、共振器端面のレーザ光を出射する前端面には、反射率が10%のAlからなる単層コート膜(図示せず)を形成し、共振器端面の後端面には反射率が90%のAlとZrOとからなる積層コート膜(図示せず)を形成する。
以下、第7の実施形態に係る半導体レーザ素子の動作特性について説明する。
従来技術のように、ClF雰囲気のアニールを施さなかった場合の半導体レーザ素子は、閾値電流が30mAであり、スロープ効率が1.0W/Aであり、100mWの光出力時の動作電流が130mAであり、動作電流が50mA時の動作電圧は5Vであった。これに対し、ClF雰囲気のアニールを施した第7の実施形態に係る半導体レーザ素子の場合は、閾値電流が25mAであり、スロープ効率が1.2W/Aであり、100mWの光出力時の動作電流が110mAであり、動作電流が50mA時の動作電圧は4.5Vである。このように、電気特性及び光学特性の双方において、第6の実施形態と同様の効果により、デバイス特性の向上を図ることができる。
ところで、第7の実施形態においては、第6の実施形態と比べて、埋め込み成長したp型層であるp型超格子クラッド層90及びp型コンタクト層91の正孔の濃度は低い。しかしながら、p側電極92の面積が第6の実施形態と比べて大きく、p型コンタクト抵抗が低くなることから、動作電圧は第6の実施形態と同様の低い値を実現している。
また、第7の実施形態においては、フッ素と塩素とが拡散してp型コンタクト層91におけるp型コンタクト抵抗率が増大するというおそれがなく、従来技術と同様の低いp型コンタクト抵抗率を容易に実現することができる。
さらに、第7の実施形態における特徴は、半導体レーザ素子の著しい信頼性の向上である。例えば、動作温度が75℃の連続発振により光出力を100mWの一定値となるように動作させた場合に、動作電流は従来技術の半導体レーザ素子においては10%の増大がみられ、第6の実施形態においては5%の増大であったが、第7の実施形態においては1%だけ増大するに過ぎない。このように、第7の実施形態に係る半導体レーザ素子が動作電流の増大を大幅に抑制することができるのは、本実施形態ではMQW活性層85の上方に設けたp型電子ブロック層87にフッ素と塩素とを拡散できているためである。p型電子ブロック層87に拡散したフッ素及び塩素が、その上方のp型超格子クラッド層90から拡散してくる高濃度の水素をゲッタリングするため、p型電子ブロック層87のMgアクセプタが再不活性化されず、またMQW活性層85への水素の拡散をも防止する。すなわち、Mgアクセプタが再不活性化されることがないため、長期間の連続動作においてもp型電子ブロック層87中の正孔の濃度の低下を防止することができる。
また、MQW活性層85に対して水素が拡散しないため、拡散した水素による非発光再結合の発生及び結晶欠陥の増大が防止される。
このように、第7の実施形態により、窒化物半導体からなる半導体レーザ素子の信頼性を大きく向上することができる。
本発明に係る半導体素子及びその製造方法は、p型不純物が導入された窒化物半導体におけるp型不純物の活性化率が安定して向上し、高効率で且つ高信頼性を持つ半導体素子を実現することができ、従って、p型不純物をドープしたIII族窒化物半導体を含む半導体素子及びその製造方法等に有用である。
本発明の第1の実施形態に係るp型半導体層を含む窒化物半導体積層膜を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体積層膜の活性化処理を行う前の元素分析結果を示すグラフである。 (a)比較用であって、p型半導体層を含む窒化物半導体積層膜に窒素雰囲気による従来の活性化処理を行った後の元素分析結果を示すグラフである。(b)は本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体積層膜の活性化処理を行った後の元素分析結果を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体積層膜の活性化処理方法と元素濃度及び電気特性との関係を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体積層膜における正孔濃度のアニール条件依存性を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体積層膜に対するNF雰囲気のアニール(800℃、20min)による元素分析結果を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体積層膜に対する活性化処理方法の一例を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体積層膜に対するNF雰囲気のアニール(750℃、10min)による元素分析結果を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体積層膜における格子置換型拡散をするフッ素の拡散速度を表すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係るp型半導体層を含む窒化物半導体積層膜を示す断面図である。 (a)比較用であって、p型半導体層を含む窒化物半導体積層膜に窒素雰囲気による従来の活性化処理を行った後の元素分析結果を示すグラフである。(b)は本発明の第2の実施形態に係る窒化物半導体積層膜の活性化処理を行った後の元素分析結果を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る窒化物半導体積層膜におけるp型コンタクト抵抗率のアニール条件依存性を示すグラフである。 (a)及び(b)は本発明の第1の実施形態と第2の実施形態とにおける活性化処理の原理を示す模式図である。 本発明の第3の実施形態に係る窒化物半導体積層膜におけるp型コンタクト抵抗率のアニール条件依存性を示すグラフである。 本発明の第3の実施形態に係るp型半導体層を含む窒化物半導体積層膜を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る窒化物半導体積層膜に対する活性化処理方法を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る窒化物半導体積層膜に対するアニール条件と正孔濃度及びp型コンタクト抵抗率との関係を表すグラフである。 本発明の第3の実施形態に係る窒化物半導体積層膜における残留水素濃度の追加アニール条件依存性を表すグラフである。 (a)〜(c)は本発明の第4の実施形態に係る窒化物半導体からなる発光ダイオード素子の製造方法を示す工程順の断面図である。 (a)〜(d)は本発明の第5の実施形態に係る窒化物半導体からなる発光ダイオード素子の製造方法を示す工程順の断面図である。 (a)及び(b)は本発明の第6の実施形態に係る窒化物半導体からなる半導体レーザ素子の製造方法を示す工程順の断面図である。 (a)及び(b)は本発明の第6の実施形態に係る窒化物半導体からなる半導体レーザ素子の製造方法を示す工程順の断面図である。 本発明の第6の実施形態に係る窒化物半導体からなる半導体レーザ素子の製造方法を示す工程順の断面図である。 (a)及び(b)は本発明の第7の実施形態に係る窒化物半導体からなる半導体レーザ素子の製造方法を示す工程順の断面図である。 (a)及び(b)は本発明の第7の実施形態に係る窒化物半導体からなる半導体レーザ素子の製造方法を示す工程順の断面図である。 本発明の第7の実施形態に係る窒化物半導体からなる半導体レーザ素子の製造方法を示す工程順の断面図である。 従来の窒化物半導体からなる半導体レーザ素子を示す断面図である。
符号の説明
11 基板
12 第1の半導体層
13 第2の半導体層
14 第3の半導体層
16 固体ハロゲン原料
17 窒化物半導体積層膜
18 アンプル
21 基板
22 第1の半導体層
23 第2の半導体層
24 第3の半導体層
25 超格子層
26 第4の半導体層
27 第5の半導体層
31 基板
32 第1の半導体層
33 第2の半導体層
34 第3の半導体層
35 半導体積層膜
36 保護膜
41 基板
42 n型コンタクト層
43 多重量子井戸活性層
44 p型クラッド層
45 p型コンタクト層
46 保護膜
47 n側電極
48 p側電極
51 基板
52 n型コンタクト層
53 多重量子井戸活性層
54 p型クラッド層
55 p型コンタクト層
56 保護膜
57 n側電極
58 p側電極
59 パシベーション膜
61 基板
62 n型GaN層
63 n型クラッド層
64 n型光ガイド層
65 多重量子井戸活性層
66 p型光ガイド層
67 p型電子ブロック層
68 p型クラッド層
69 p型コンタクト層
70 保護膜
71 リッジ部
72a 高濃度拡散領域
72b 中濃度拡散領域
72c 低濃度拡散領域
73 p側電極
74 n側電極
81 基板
82 n型GaN層
83 n型クラッド層
84 n型光ガイド層
85 多重量子井戸活性層
86 p型光ガイド層
87 p型電子ブロック層
88 n型電流狭窄層
88a 開口部
89a 高濃度拡散領域
89b 中濃度拡散領域
90 p型超格子クラッド層
91 p型コンタクト層
92 p側電極
93 n側電極

Claims (15)

  1. p型不純物がドーピングされたIII族窒化物半導体からなる半導体層を備え、
    前記半導体層は、ハロゲン元素が導入されていることを特徴とする半導体素子。
  2. 前記半導体層の上には、オーミック性の電極が形成されており、
    前記ハロゲン元素は、前記半導体層における前記電極が形成されていない領域に選択的に導入されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
  3. 前記半導体層は断面凸状のリッジ部を有し、
    前記ハロゲン元素は、前記半導体層における前記リッジ部の側部及び側方の領域に選択的に導入されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
  4. 前記半導体層の上方又は下方に形成され、前記半導体層を露出する電流狭窄層をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
  5. 前記電流狭窄層は、n型不純物がドーピングされていることを特徴とする請求項4に記載の半導体素子。
  6. 前記ハロゲン元素は、フッ素又は塩素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体素子。
  7. p型不純物がドーピングされたIII族窒化物半導体からなる半導体層を形成する工程(a)と、
    前記工程(a)よりも後に、形成された前記半導体層にハロゲン元素を拡散により導入する工程(b)とを備えていることを特徴とする半導体素子の製造方法。
  8. 前記工程(b)は、前記半導体層を前記ハロゲン元素を含む雰囲気で加熱する工程であることを特徴とする請求項7に記載の半導体素子の製造方法。
  9. 前記工程(b)における加熱温度は、200℃以上であることを特徴とする請求項8に記載の半導体素子の製造方法。
  10. 前記ハロゲン元素を含む原料は、常温において固体であることを特徴とする請求項8に記載の半導体素子の製造方法。
  11. 前記ハロゲン元素を含む原料は、F、Cl、N、NF、N、NCl、ClF、ClF、BrF、BrF、BrF、BrCl、IF、IF、ICl又はIClを含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体素子の製造方法。
  12. 前記工程(b)は、前記半導体層に導入されたp型不純物を活性化する工程を含むことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
  13. 前記工程(a)と前記工程(b)との間に、
    前記半導体層に導入されたp型不純物を活性化する工程(c)をさらに備えていることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
  14. 前記工程(a)と前記工程(b)との間に、
    前記半導体層の上に、該半導体層の酸化を防止する保護膜を形成する工程(d)をさらに備えていることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
  15. 前記工程(a)と前記工程(d)との間に、
    前記半導体層の上にオーミック性の電極を選択的に形成する工程(e)をさらに備え、
    前記工程(d)において、前記保護膜は、前記半導体層の上に少なくとも前記電極を覆うように形成することを特徴とする請求項14に記載の半導体素子の製造方法。
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