JP2009040244A - 車両用サスペンションシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクチュエータのモータを流れる通電電流の目標である目標通電電流iUA *,iVA *,iWA *の決定において、電源からモータへ電流が供給される状況下において、目標通電電流の成分であって、モータの磁石によって生じる磁界の方向と平行な方向であるd軸方向の成分であるd軸電流成分idA *を、電源の充電状態に基づいて増大可能に構成する(S28)。モータに流れる通電電流のd軸電流成分idA *は、磁石の磁界の方向に平行であることから、モータが発生させる力、つまり、アクチュエータ力への影響は小さい。本サスペンションシステムによれば、アクチュエータ力を大きく変化させることなくモータへの供給電流を増大させて、電源の過充電を回避することが可能である。
【選択図】図9
Description
前記電磁式モータと電源とを接続するとともに、前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力を制御する制御装置であって、前記電磁式モータを流れる電流である通電電流の目標となる目標通電電流を決定する目標通電電流決定部を有し、通電電流をその目標通電電流となるように調整することで、アクチュエータ力を制御する通電電流調整制御を実行可能な制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記目標通電電流決定部が、電源から前記電磁式モータへ電流が供給される状況下において、前記目標通電電流の成分であって、前記アクチュエータモータが有する磁石によって生じる磁界の方向と平行な方向であるd軸方向の成分であるd軸電流成分を、電源の充電状態に基づいて増大させるd軸電流成分増大部を有し、
前記制御装置が、前記d軸電流成分を増大させることで前記電磁式モータへの供給電流を増大させる電流増大制御を実行可能に構成されたことを特徴とする車両用サスペンションシステム。
前記電磁式モータと電源との間に配設され、前記電磁式モータを流れる通電電流を調整しつつその電磁式モータを駆動するとともに、起電力に依拠して前記電磁式モータによって発電された電流を電源に回生可能な構造とされた駆動回路を有する(1)項に記載の車両用サスペンションシステム。
前記電磁式モータと電源との間に配設され、前記電磁式モータを流れる通電電流を調整しつつその電磁式モータを駆動するとともに、起電力に依拠して前記電磁式モータによって発電された電流を電源に回生可能な構造とされた駆動回路を有し、
前記d軸電流成分増大部が、前記放電必要閾量を、車両が走行している路面の状態であって当該車両用サスペンションシステムの回生効率の高さが依存する路面の状態に基づいて変更するように構成された(3)項に記載の車両用サスペンションシステム。
前記電磁式モータと電源との間に配設され、前記電磁式モータを流れる通電電流を調整しつつその電磁式モータを駆動するとともに、起電力に依拠して前記電磁式モータによって発電された電流を電源に回生可能な構造とされた駆動回路を有し、
前記通電電流調整制御に代えて、前記電磁式モータによって発電された電流の電源への回生を禁止する制御である回生禁止制御を実行可能に構成された(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
前記通電電流調整制御に代えて、前記電磁式モータの各相の通電端子間を導通させる導通制御を実行可能に構成された(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
前記導通制御が、電源の残存エネルギ量が、前記放電必要閾量より大きい値に設定された過充電閾量より多い状況下において実行される制御である(10)項に記載の車両用サスペンションシステム。
ばね上部に連結されるばね上部側ユニットと、ばね下部に連結されてばね上部とばね下部との接近・離間に応じた前記ばね上部側ユニットとの相対移動が可能なばね下部側ユニットとを有し、前記電磁式モータの力に依拠して前記ばね上部側ユニットと前記ばね下部側ユニットとの相対移動に対する力を発生させる電磁式のショックアブソーバである(1)項ないし(16)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
前記制御装置が、前記電流増大制御を、前記複数のアクチュエータのうちの1以上のものに対して選択的に実行可能に構成された(1)項ないし(17)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
前記アクチュエータとは別に、電磁式モータを有してその電磁式モータが発生させる力に依拠して作動する電磁式作動装置を備えた車両に搭載され、
前記制御装置が、
前記電磁式作動装置の電磁式モータと電源とを接続するとともにその電磁式モータを流れる通電電流を調整することで、前記電磁式作動装置の作動を制御することが可能とされ、
前記アクチュエータに対する供給電流を増大させる前記電流増大制御である対アクチュエータ電流増大制御に加え、
電源から前記電磁式作動装置の電磁式モータへ電流が供給される状況下において、その電磁式モータの目標となる通電電流の成分であって、その電磁式モータが有する磁石によって生じる磁界の方向と平行な方向であるd軸方向の成分であるd軸電流成分を増大させることで前記電磁式作動装置の電磁式モータへの供給電流を増大させる対作動装置電流増大制御を実行可能に構成された(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
前記対アクチュエータ電流増大制御と、前記対作動装置電流増大制御とを選択的に実行可能に構成された(21)項または(22)項に記載の車両用サスペンションシステム。
前記アクチュエータの温度が閾温度より高くなった場合に、前記対アクチュエータ電流増大制御の実行を禁止するように構成され、
前記対アクチュエータ電流増大制御の実行が禁止された場合に、前記対作動装置電流増大制御を実行するように構成された(21)項ないし(23)項に記載の車両用サスペンションシステム。
図1に、請求可能発明の実施例であるサスペンションシステム10を備えた車両を模式的に示す。本サスペンションシステム10は、前後左右の車輪12の各々に対応する独立懸架式の4つのサスペンション装置を備えており、それらサスペンション装置の各々は、サスペンションスプリングとショックアブソーバとが一体化されたスプリング・アブソーバAssy20を有している。車輪12,スプリング・アブソーバAssy20は総称であり、4つの車輪のいずれに対応するものであるかを明確にする必要のある場合には、図に示すように、車輪位置を示す添え字として、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪の各々に対応するものにFL,FR,RL,RRを付す場合がある。
本サスペンションシステム10を備えた車両には、ステアリングシステム180も搭載される。そのステアリングシステム180は、パワーステアリングシステムであり、大きくは、操作装置182と、転舵装置184と、ステアリング電子制御ユニット186(以下、「ステアリングECU186」略す場合がある)とに区分することができ、それらを構成要素として含んで構成されている。
車両には、イグニッションスイッチ[I/G]280,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ[v]282,各車輪12についてのばね上ばね下間距離を検出する4つのハイトセンサ[h]284,車高変更指示のために運転者によって操作される車高変更スイッチ[HSw]286,ステアリングホイール190の操作角を検出するための操作角センサ[δ]288,トーションバーを主体として構成されたステアリングホイール20の操作力を検出する操作力センサ[Tq]290,車体に実際に発生する前後加速度である実前後加速度を検出する前後加速度センサ[Gx]292,車体に実際に発生する横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ[Gy]294,各車輪12に対応する車体の各マウント部24の縦加速度(上下加速度)を検出する4つのばね上縦加速度センサ[Gzs]296,各車輪12の縦加速度を検出する4つのばね下縦加速度センサ[Gzg]298,アクセルスロットルの開度を検出するスロットルセンサ[Sr]300,ブレーキのマスタシリンダ圧を検出するブレーキ圧センサ[Br]302,電源の充電状態に関する指標としてのバッテリ150の残存エネルギ量を検出するための充電量センサ[E]304等が設けられており、それらはサスペンションECU140,ステアリングECU186のコンピュータに接続されている。サスペンションECU140,ステアリングECU186は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、スプリング・アブソーバAssy20,転舵装置184の作動の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]内の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、サスペンションECU140のコンピュータが備えるROMには、後に説明するところのアクチュエータ26の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶され、ステアリングECU186のコンピュータが備えるROMには、後に説明するところの転舵装置184の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
本サスペンションシステム10では、4つのスプリング・アブソーバAssy20の各々を独立して制御することが可能となっている。それらスプリング・アブソーバAssy20の各々において、アクチュエータ26のアクチュエータ力が独立して制御されて、車体および車輪12の振動、つまり、ばね上振動およびばね下振動を減衰するための制御(以下、「振動減衰制御」という場合がある)が実行される。また、車両の旋回に起因する車体のロールを抑制するための制御(以下、「ロール抑制制御」という場合がある),車両の加減速に起因する車体のピッチを抑制するための制御(以下、「ピッチ抑制制御」という場合がある)が実行される。上記振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御は、各制御ごとのアクチュエータ力の成分である振動減衰成分,ロール抑制成分,ピッチ抑制成分を合計して目標アクチュエータ力が決定され、アクチュエータ26がその目標アクチュエータ力を発生させるように制御されることで、総合的に実行される。なお、以下の説明において、アクチュエータ力およびそれの成分は、ばね上部とばね下部とを離間させる方向(リバウンド方向)の力に対応するものが正の値,ばね上部とばね下部とを接近させる方向(バウンド方向)の力に対応するものが負の値となるものとして扱うこととする。
振動減衰制御では、車体および車輪12の振動を減衰するためにその振動の速度に応じた大きさのアクチュエータ力を発生させるべく、アクチュエータ力の振動減衰成分FVが決定される。つまり、いわゆるスカイフックダンパ理論に基づいた制御と、擬似的なグランドフック理論に基づいた制御との両者を行う制御である。具体的には、車体のマウント部24に設けられたばね上縦加速度センサ296によって検出されるばね上縦加速度から計算される車体のマウント部24の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね上速度Vsと、ロアアーム22に設けられたばね下縦加速度センサ298によって検出されるばね下縦加速度から計算される車輪12の上下方向の動作速度、いわゆる、ばね下速度Vgとに基づいて、次式に従って、振動減衰成分FVが演算される。
FV=Cs・Vs−Cg・Vg
ここで、Csは、車体のマウント部24の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインであり、Cgは、車輪12の上下方向の動作速度に応じた減衰力を発生させるためのゲインである。つまり、Cs,Cgは、いわゆるばね上,ばね下絶対振動に対する減衰係数と考えることができる。
車両の旋回時においては、その旋回に起因するロールモーメントによって、旋回内輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、旋回外輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ロール抑制制御では、その旋回内輪側の離間および旋回外輪側の接近を抑制すべく、旋回内輪側のアクチュエータ26にバウンド方向のアクチュエータ力を、旋回外輪側のアクチュエータ26にリバウンド方向のアクチュエータ力を、それぞれ、ロール抑制力として発生させる。具体的に言えば、まず、車体が受けるロールモーメントを指標する横加速度として、ステアリングホイールの操作角δと車速vとに基づいて推定された推定横加速度Gycと、横加速度センサ294によって実測された実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。
Gy*=K1・Gyc+K2・Gyr (K1,K2:ゲイン)
そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、ロール抑制成分FRが、次式に従って決定される。
FR=K3・Gy* (K3:ゲイン)
車体の制動時等、減速時に発生する車体のノーズダイブに対しては、そのノーズダイブを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが接近させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが離間させられる。また、車体の加速時に発生する車体のスクワットに対しては、そのスクワットを生じさせるピッチモーメントによって、前輪側のばね上部とばね下部とが離間させられるとともに、後輪側のばね上部とばね下部とが接近させられる。ピッチ抑制制御では、それらの場合の接近・離間距離を抑制すべく、アクチュエータ力をピッチ抑制力として発生させる。具体的には、車体が受けるピッチモーメントを指標する前後加速度として、前後加速度センサ292によって実測された実前後加速度Gxが採用され、その実前後加速度Gxに基づいて、ピッチ抑制成分FPが、次式に従って決定される。
FP=K4・Gx (K4:ゲイン)
なお、ピッチ抑制制御は、スロットルセンサ300によって検出されるスロットルの開度、あるいは、ブレーキ圧センサ302によって検出されるマスタシリンダ圧が、設定された閾値を超えることをトリガとして実行される。
アクチュエータ26は、それが発生させるべきアクチュエータ力である目標アクチュエータ力となるように制御される。詳しく言えば、上述のようにして、アクチュエータ力の振動減衰成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定されると、それらに基づき、次式に従って制御目標値である目標アクチュエータ力FA *が決定される。
FA *=FV+FR+FP
そして、アクチュエータ26に、その目標アクチュエータ力FA *を発生させるべく、モータ54の制御が、いわゆるベクトル制御法に従って行われる。ベクトル制御法は、図6に示すように、モータ54の三相における電流,電圧等を、モータ54の永久磁石60によって生じる磁界の方向と平行な方向であるd軸方向の成分と、その磁界の方向に直交する方向であるq軸方向の成分との二相における値に変換して扱う制御法である。なお、図に示すφは、固定された方向となるU相の方向と、回転座標系の軸の方向となるd軸方向とのなす角度(電気角)である。モータ54は、三相ブラシレスDCモータであり、三相のコイルのインダクタンスのd軸方向の成分とq軸方向の成分が等しくされたものである。そのことから、モータ54が発生させるトルクは、モータ54の通電電流のq軸方向の成分であるq軸電流成分に比例することとなる。つまり、モータ54の通電電流のd軸方向の成分であるd軸電流成分を0とすることにより、あるアクチュエータ力を発生させるのに必要なモータ54の通電電流が最小となる。したがって、通常時においては、目標となる通電電流のd軸電流成分を0として、q軸電流成分をFA *に比例させるように制御されるのである。
idA *=0
iqA *=KA・FA * (KA:定数)
ステアリングECU186では、転舵助勢制御が実行される。その転舵助勢制御は、前述した転舵装置184の助勢機構232に関する制御であり、詳しくは、助勢モータ230の制御である。この制御では、車速センサ282によって検出された車速vが早くなるほど助勢力が小さくされるようになっており、その車速vと操作力センサ290によって検出されたステアリングホイール190に加えられた操作力としての操作トルクTqに基づいて目標となる助勢力FS *が決定され、その決定された目標助勢力FS *を発揮するように、助勢モータ230への目標となる供給電流が決定されるのである。具体的には、助勢モータ230は、上述したモータ54と同様に、ベクトル制御法に従って制御される。つまり、通常時においては、助勢モータ230への目標となる供給電流のd軸電流成分を0として、q軸電流成分を目標となる助勢力FS *に比例させるように制御されるのである。
idS *=0
iqS *=KS・FS * (KE:定数)
次いで、上記のように決定された目標供給電流のd軸電流成分と、q軸電流成分とが、図7に示す変換行列によって三相の電流成分に変換されることで、助勢モータ230のU相,V相,W相の目標通電電流iUS *,iVS *,iWS *が決定される。その決定された目標供給電流に基づいて、目標となるデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ262に送信される。インバータ262は、その適切なデューティ比の下、スイッチング素子の開閉を制御して助勢モータ230への供給電流を調整することで、転舵力が助勢されるのである。
本サスペンションシステム10では、4つのアクチュエータ26への供給電流を増大させる制御(以下、「対アクチュエータ電流増大制御」と呼ぶ場合がある)を実行可能とされている。詳しくは、モータ54への目標通電電流の決定の際に、バッテリ150からモータ54へ電流が供給される状況下における目標通電電流のd軸電流成分idA *を増大させることで、アクチュエータ26への供給電流を増大させる。先に述べたように、モータ54が発生させるトルクは、通電電流のq軸電流成分に比例するため、d軸電流成分を増大させても、アクチュエータ26が発生させるアクチュエータ力は変わらない。したがって、本システム10によれば、アクチュエータ力を変化させることなく、電源を放電させることが可能である。
idA *=KE・(E−EDN)
上記の式から分かるように、残存エネルギ量Eが多いほど、d軸電流成分idA *が大きくされるようになっている。
idS *=KS・(E−EDN)
そして、その決定された助勢モータ230の目標通電電流のd軸電流成分が、ステアリングECU186に送信される。なお、対転舵装置電流増大制御も、対アクチュエータ電流増大制御と同様に、助勢モータ230の温度TSが、閾温度TS0より高い場合に、実行が禁止されるようになっている。
上述したように、対アクチュエータ電流増大制御,対転舵装置電流増大制御は、それの実行が禁止されることがあるため、バッテリ150の放電が充分にできず、過充電となる虞がある。そこで、本サスペンションシステム10においては、残存エネルギ量Eが、前述の放電必要閾量EDNより大きい値に設定された過充電閾量EOCより多い状況下において、モータ54の各相の通電端子間を短絡させることによって、アクチュエータ力を制動力として発生させる短絡制動制御が実行されるようになっている。具体的に言えば、インバータ146のhigh側のスイッチング素子HUS,HVS,HWSのすべてをON状態(閉状態),low側のスイッチング素子LUS,LVS,LWSのすべてをOFF状態(開状態)とすることで、スイッチング素子HUS,HVS,HWSと、それらに並設された還流ダイオードとにより、モータ54の各相の通電端子間を、あたかも相互に短絡させられた状態とするのである。本短絡制動制御においては、バッテリ150からモータ54に電流が供給されず起電力に依存したアクチュエータ力を発生させるとともに、バッテリ150に回生される電流を0とすることができる。そのため、本短絡制動制御は、バッテリ150がそれ以上充電されることを防止することが可能である。ちなみに、そのアクチュエータ力は、モータ54の回転速度ωに応じて、図4に示した短絡特性線に従った特定の大きさの制動力、換言すれば、固定の減衰係数に従った大きさの制動力となる。ちなみに、この場合には、バッテリ150に接続された転舵装置184等の他の装置に、バッテリ150から電流が供給されるため、バッテリ150の残存エネルギ量は、徐々に減少することになる。なお、本短絡制動制御は、対アクチュエータ電流増大制御,対転舵装置電流増大制御の両者の実行が禁止された場合にも実行される。
上述したように本サスペンションシステム10は、通常状態における通電電流調整制御に加えて、対アクチュエータ電流増大制御と対転舵装置電流増大制御とのいずれかが実行可能であり、また、通常の通電電流調整制御に代えて短絡制動制御を実行可能である。それらの制御のうちいずれを実行するかを判定するために、図8にフローチャートを示す実行制御判定プログラムが、イグニッションスイッチ160がON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいてサスペンションECU140により繰り返し実行されることによって行われる。また、先に述べたようなアクチュエータ26の制御は、図9にフローチャートを示すアクチュエータ制御プログラムが、実行制御判定プログラムと同じ期間、サスペンションECU140により繰り返し実行されることによって行われる。さらに、先に述べたような転舵装置184の制御は、図10にフローチャートを示す転舵助勢制御プログラムが、上記2つのプログラムと同じ期間、ステアリングECU186により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、それら制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。なお、アクチュエータ制御プログラムは、4つの車輪12にそれぞれ設けられたスプリング・アブソーバAssy20のアクチュエータ26の各々に対して実行されるため、以降の説明においては、説明の簡略化に配慮して、1つのアクチュエータ26に対しての本プログラムによる処理について説明する。
サスペンションECU140において実行される実行制御判定プログラムにおいては、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、バッテリ150の残存エネルギ量Eが、過充電閾量EOCより多いか否かが判定される。過充電閾量EOC以下である場合には、S2〜S4において、放電必要閾量EDNの決定が行われる。ナビゲーションシステムから、現在走行している路面が回生効率が高い路面であるか否かが判断され、回生効率が高い路面である場合には、通常状態における閾量EDN1より小さな閾量EDN2に変更される。次いで、S5において、残存エネルギ量Eが、その決定された放電必要閾量EDNより多いか否かが判定される。放電必要閾量EDNより多い場合には、供給電流増大制御を実行する必要があるため、S6において、4つのアクチュエータ26に対して、対アクチュエータ電流増大制御が実行可能であるか否かが、アクチュエータ26の各々の温度TAが閾温度TA0より高いか否かによって判定される。アクチュエータ温度TAが閾温度TA0以下のアクチュエータ26に対応するモータ54のd軸電流成分の増大分δidAが式δidA=KE・(E−EDN)によって決定され、その他のモータ54のd軸電流成分の増大分δidAおよび助勢モータ230のd軸電流成分の増大分δidSが0とされる。
サスペンションECU140において実行されるアクチュエータ制御プログラムにおいては、S21において、上述した短絡フラグがONにセットされているか否かが判定され、通常の通電電流調整制御と短絡制動制御とのいずれを実行するかが判定される。通電電流調整制御が実行される場合には、S22〜S24において、先に説明したような手法で、振動減衰成分FV,ロール抑制成分FR,ピッチ抑制成分FPが決定され、S25において、それら3つの成分を足し合わせて、目標アクチュエータ力FA *が決定される。次に、S26において、モータ54の通電電流が供給電流か否かが、3つの通電電流センサ164の検出結果から判断される。供給電流でない場合には、d軸電流成分増大分δidAが0とされる。そして、S28において、その決定された目標アクチュエータ力FA *と、決定されたd軸電流成分増大分δidAとに基づいて、二相に変換したモータ54の目標通電電流の成分であるd軸電流成分idA *とq軸電流成分iqA *とが決定される。次いで、それらd軸電流成分idA *とq軸電流成分iqA *とが、モータ54のU相,V相,W相に対応する目標通電電流iUA *,iVA *,iWA *に変換され、その目標通電電流に基づいて目標デューティ比が決定され、その目標デューティ比に基づいた指令がインバータ146に送信される。また、短絡制動制御が実行される場合には、スイッチング素子のON/OFF状態を、前述したように、high側のスイッチング素子HUS,HVS,HWSのすべてをON状態(閉状態),low側のスイッチング素子LUS,LVS,LWSのすべてをOFF状態(開状態)とするように、制御信号がインバータ146に送信される。以上の一連の処理の後、アクチュエータ制御プログラムの1回の実行が終了する。
ステアリングECU186において実行される転舵制御制御プログラムにおいては、S41,S42において、先に説明したような手法で、目標となる助勢力FS *が決定され、それに基づいて二相に変換した助勢モータ230の目標通電電流のq軸電流成分iqS *が決定される。また、d軸電流成分idS *が、実行制御判定プログラムにおいて決定されたd軸電流成分増大分δidSに基づいて決定される。次いで、それらd軸電流成分idS *とq軸電流成分iqS *とが、助勢モータ230のU相,V相,W相に対応する目標通電電流iUS *,iVS *,iWS *に変換され、その目標通電電流に基づいて目標デューティ比が決定され、その目標デューティ比に基づいた指令がインバータ262に送信される。以上の一連の処理の後、転舵制御制御プログラムの1回の実行が終了する。
上述の実行制御判定プログラムおよびアクチュエータ制御プログラムを実行するサスペンションECU140、および、転舵助勢制御プログラムを実行するステアリングECU186は、それらのプログラムに従う各種の処理を実行する各種の機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、図11に示すように、サスペンションECU140は、上記アクチュエータ力制御プログラムのS22〜S25の処理を実行する機能部として、目標アクチュエータ力決定部320を有している。この目標アクチュエータ力決定部320によって、4つのサスペンション装置の各々のアクチュエータ26が発生させるアクチュエータ力が決定されるのであり、先に説明した振動減衰制御,ロール抑制制御,ピッチ抑制制御が実行されるのである。
上記実施例のサスペンションシステム10において実行されていた図8の実行制御判定プログラムに代えて、図12にフローチャートを示す実行制御判定プログラムを採用することも可能である。本変形例においては、実行制御判定プログラムのS56において、停車中か否かが判定され、停車中である場合にのみ、対アクチュエータ電流増大制御が実行される。停車中であれば、アクチュエータ26は作動していないため、通常の制御によってアクチュエータ26の負担はそれ以上大きくならないと予測される。つまり、本変形例は、通常の制御によってアクチュエータ26の負担が大きくならないと想定される場合に供給電流増大制御が実行されるようになっているため、上記実施例に比較して、アクチュエータ26の過熱の防止が、より図られたシステムとなっている。
Claims (11)
- ばね上部とばね下部との間に配設され、電磁式モータを有し、その電磁式モータが発生させる力に依拠してばね上部とばね下部とに対してそれらが接近・離間する方向の力であるアクチュエータ力を発生可能なアクチュエータと、
前記電磁式モータと電源とを接続するとともに、前記アクチュエータが発生させるアクチュエータ力を制御する制御装置であって、前記電磁式モータを流れる電流である通電電流の目標となる目標通電電流を決定する目標通電電流決定部を有し、通電電流をその目標通電電流となるように調整することで、アクチュエータ力を制御する通電電流調整制御を実行可能な制御装置と
を備えた車両用サスペンションシステムであって、
前記目標通電電流決定部が、電源から前記電磁式モータへ電流が供給される状況下において、前記目標通電電流の成分であって、前記アクチュエータモータが有する磁石によって生じる磁界の方向と平行な方向であるd軸方向の成分であるd軸電流成分を、電源の充電状態に基づいて増大させるd軸電流成分増大部を有し、
前記制御装置が、前記d軸電流成分を増大させることで前記電磁式モータへの供給電流を増大させる電流増大制御を実行可能に構成されたことを特徴とする車両用サスペンションシステム。 - 前記電流増大制御が、電源の残存エネルギ量が放電必要閾量より多い状況下において実行される制御である請求項1に記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記制御装置が、
前記電磁式モータと電源との間に配設され、前記電磁式モータを流れる通電電流を調整しつつその電磁式モータを駆動するとともに、起電力に依拠して前記電磁式モータによって発電された電流を電源に回生可能な構造とされた駆動回路を有し、
前記d軸電流成分増大部が、前記放電必要閾量を、車両が走行している路面の状態であって当該車両用サスペンションシステムの回生効率の高さが依存する路面の状態に基づいて変更するように構成された請求項2に記載の車両用サスペンションシステム。 - 前記d軸電流成分増大部が、前記d軸電流成分の増大量を、電源の残存エネルギ量が多い場合に、少ない場合に比較して大きくするものである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記制御装置が、前記アクチュエータの温度が閾温度より高くなった場合に、前記電流増大制御の実行を禁止するように構成された請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記制御装置が、停車中であることを条件として、前記電流増大制御を実行するように構成された請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。
- 前記制御装置が、
前記電磁式モータと電源との間に配設され、前記電磁式モータを流れる通電電流を調整しつつその電磁式モータを駆動するとともに、起電力に依拠して前記電磁式モータによって発電された電流を電源に回生可能な構造とされた駆動回路を有し、
前記通電電流調整制御に代えて、前記電磁式モータによって発電された電流の電源への回生を禁止する制御である回生禁止制御を実行可能に構成された請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。 - 当該車両用サスペンションシステムが、車両が有する複数の車輪に対応して、それぞれが前記アクチュエータである複数のアクチュエータを備え、
前記制御装置が、前記電流増大制御を、前記複数のアクチュエータのうちの1以上のものに対して選択的に実行可能に構成された請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。 - 当該車両用サスペンションシステムが、
前記アクチュエータとは別に、電磁式モータを有してその電磁式モータが発生させる力に依拠して作動する電磁式作動装置を備えた車両に搭載され、
前記制御装置が、
前記電磁式作動装置の電磁式モータと電源とを接続するとともにその電磁式モータを流れる通電電流を調整することで、前記電磁式作動装置の作動を制御することが可能とされ、
前記アクチュエータに対する供給電流を増大させる前記電流増大制御である対アクチュエータ電流増大制御に加え、
電源から前記電磁式作動装置の電磁式モータへ電流が供給される状況下において、その電磁式モータの目標となる通電電流の成分であって、その電磁式モータが有する磁石によって生じる磁界の方向と平行な方向であるd軸方向の成分であるd軸電流成分を増大させることで前記電磁式作動装置の電磁式モータへの供給電流を増大させる対作動装置電流増大制御を実行可能に構成された請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の車両用サスペンションシステム。 - 制御装置が、
前記対アクチュエータ電流増大制御と、前記対作動装置電流増大制御とを選択的に実行可能に構成された請求項9に記載の車両用サスペンションシステム。 - 前記制御装置が、
前記アクチュエータの温度が閾温度より高くなった場合に、前記対アクチュエータ電流増大制御の実行を禁止するように構成され、
前記対アクチュエータ電流増大制御の実行が禁止された場合に、前記対作動装置電流増大制御を実行するように構成された請求項9または請求項10に記載の車両用サスペンションシステム。
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