JP2009038885A - 信号抽出装置及びそれを含む無効電力補償装置 - Google Patents

信号抽出装置及びそれを含む無効電力補償装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高調波が重畳された基本周波数の三相交流信号から基本周波数のみを検出する際の検出遅れを抑制する。
【解決手段】信号抽出装置1は、三相交流信号を基本周波数と第1の直交座標系の二相信号に変換する第1の三相/二相変換演算処理にる三相交流信号を第1の直交座標系の二相信号に変換する基本周波数変換回路2と、基本周波数変換回路2による第1の直交座標系の二相信号に変換されたn次高調波の正相分と同一の二相信号を生成するn次高調波正相分生成回路3と、基本周波数変換回路2による第1の直交座標系の二相信号に変換されたn次高調波の逆相分と同一の二相信号を生成するm次高調波逆相分生成回路4と、基本周波数変換回路2の二相信号とn次高調波正相分生成回路3及びm次高調波逆相分生成回路4の二相信号との差分を演算し、基本周波数変換回路2の出力に含まれるn次数の高調波の正相分及び逆相分を相殺する高調波相殺回路5とを備える。
【選択図】図1

Description

本願発明は、複数の周波数成分を有する交流信号から所望の周波数成分を抽出するための信号抽出装置に関する。
従来、例えば配電系統に設けられ、配電系統に供給される系統電力を安定化させるための電力変換装置が提案されている。電力変換装置としては、例えば充電電池によって貯蔵した直流電力をインバータによって交流電力に変換して系統に供給する電力貯蔵システム(例えば特許文献1参照)や、配線系統に生じる無効電流の変動を抑制するための無効電力補償装置(「無効電力発生装置」ともいう)等が挙げられる。
特開2004−153957号公報
図12は、無効電力補償装置の一例の構成を示した図である。
この無効電力補償装置では、例えばインバータ61が誘導性インピーダンス62を介して系統電源63を有する系統に接続されている。インバータ61は、電圧制御回路64によって出力電圧が制御される。
電圧制御回路64は、三相/dq軸変換器65,66、d軸フィルタ67及びq軸フィルタ68、d軸電流制御回路69及びq軸電流制御回路70、減算器71,72、加算器73,74、dq軸/三相変換器75、パルス幅変調回路76及び電流検出器77によって大略構成されている。
この電圧制御回路64では、インバータ61の出力電流Ia,Ib,Icを検出し、三相/dq軸変換器65でdq軸変換したd軸電流Id、q軸電流Idと予め定める基準電流Id′,Iq′との差からd軸電流制御回路69及びq軸電流制御回路70でその差を0にするような制御信号Ucd,Ucqが生成される。この制御信号Ucd,Ucqは、系統の検出電圧Vsa,Vsb,Vscを三相/dq軸変換器65でdq軸変換し、d軸フィルタ67及びq軸フィルタ68で高調波成分を除去したd軸電圧Vsd2,q軸電圧Vsq2で補正され、電圧制御信号Vcd,Vcqが生成される。そして、この電圧制御信号Vcd,Vcqに基づいてインバータ61の出力電圧Vca,Vcb,Vccが制御される。これにより、系統に供給される系統電力の力率改善を図っている。
上記構成の電圧制御回路64では、フィードバック制御によりインバータ61の出力電流Ia,Ib,Icを目標値に制御する際、系統の検出電圧Vsa,Vsb,Vscからd軸電圧Vsd2,q軸電圧Vsq2を求め、このd軸電圧Vsd2,q軸電圧Vsq2で制御信号Ucd,Ucqを補正し、電圧制御信号Vcd,Vcqを生成するようにしているので、電圧制御信号Vcd,Vcqの更新期間はd軸電圧Vsd2,q軸電圧Vsq2の更新期間の影響を受けることになる。すなわち、系統の検出電圧Vsa,Vsb,Vscからd軸電圧Vsd2,q軸電圧Vsq2を求めるまでの時間が長くなると、電圧制御信号Vcd,Vcqを更新する期間が長くなる。
d軸電圧Vsd2,q軸電圧Vsq2を求めるために設けられているd軸フィルタ67及びq軸フィルタ68は、dq軸/三相変換器75の出力から高調波成分及び不平衡成分を除去し、基本波周波数(系統の周波数。日本では50Hzまたは60Hz)の正相分(以下、「基本波正相分」という。)のみを直流として抽出するためのものであるが、d軸フィルタ67及びq軸フィルタ68は、例えば、移動平均フィルタ、FIR(Infinite Impulse Response)フィルタ又はIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ等のディジタルローパスフィルタによって構成されている。
移動平均フィルタでは、除去したい周波数のデータを少なくとも1周期分サンプリングし、それらのサンプリングデータの移動平均を算出することによって当該周波数を除去する構成である。
このローパスフィルタを用いると、無効電力補償装置として基本波周波数の正相分の検出が遅れ、電圧制御信号Vcd,Vcqの生成を更新する期間が長くなるという問題点がある。すなわち、この無効電力補償装置では、d軸フィルタ67及びq軸フィルタ68にこのローパスフィルタが用いられているため、応答速度が遅くなる。
フィードバック制御によりインバータ61の出力電流Ia,Ib,Icを安定して目標値に制御するには、電圧制御信号Vcd,Vcqを可及的に高速で生成することが望ましいが、上記従来の無効電力補償装置では、移動平均フィルタからなるd軸フィルタ67及びq軸フィルタ68を用いているので、d軸電圧Vsd2,q軸電圧Vsq2の出力に一定時間以上の遅れが必ず生じ、電圧制御信号Vcd,Vcqの生成の高速化に限界がある。
本願発明は、低次数の周波数成分に対してもその検出が遅れることを抑制することができる信号抽出装置を提供することを、その課題とする。また、その信号抽出装置を含む無効電力補償装置を提供することを、その課題とする。
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
本願発明の第1の側面によって提供される信号抽出装置は、基本周波数に所定次数の高調波が重畳された三相交流信号から当該基本周波数を抽出するための信号抽出装置であって、前記三相交流信号を前記基本周波数と同一の回転速度で回転する第1の直交座標系の二相信号に変換する第1の三相/二相変換演算処理により、前記三相交流信号を前記第1の直交座標系の二相信号に変換する第1の三相/二相変換手段と、所定の演算処理により、前記三相交流信号から、前記第1の三相/二相変換手段によって前記第1の直交座標系の二相信号に変換された前記所定次数の高調波と同一の二相信号を生成する高調波生成手段と、前記第1の三相/二相変換手段から出力される二相信号と前記高調波生成手段から出力される二相信号との差分を演算することにより、前記第1の三相/二相変換手段の出力に含まれる前記所定次数の高調波を相殺する高調波相殺手段と、を備えることを特徴としている(請求項1)。
この発明によれば、第1の三相/二相変換手段によって三相交流信号が基本周波数と同一の回転速度で回転する第1の直交座標系の二相信号に変換される。三相交流信号には基本周波数以外に所定次数の高調波が含まれているので、第1の三相/二相変換手段の出力には、所定次数の高調波を第1の直交座標系の二相信号に変換したものも含まれる。高調波生成手段によって三相交流信号から、第1の三相/二相変換手段によって第1の直交座標系の二相信号に変換された所定次数の高調波と同一の二相信号が生成される。そして、高調波相殺手段によって、第1の三相/二相変換手段から出力される二相信号と高調波生成手段から出力される二相信号との差分が演算され、第1の三相/二相変換手段の出力に含まれる所定次数の高調波の二相信号が相殺される。
第1の三相/二相変換手段による三相交流信号を第1の直交座標系の二相信号に変換する演算処理と高調波生成手段による三相交流信号から第1の直交座標系の二相信号を生成する演算処理は同時に行われ、第1の三相/二相変換手段の出力に含まれる所定次数の高調波の二相信号の相殺処理はリアルタイムで行われるため、基本周波数に所定次数の高調波が重畳された三相交流信号から基本周波数のみを抽出する際の抽出遅れを抑制することができ、信号抽出の応答性を向上させることができる。
好ましい実施の形態によれば、前記高調波生成手段は、前記三相交流信号を前記所定次数の高調波と同一の回転速度で回転する第2の直交座標系の二相信号に変換する第2の三相/二相変換演算処理により、前記三相交流信号を前記第2の直交座標系の二相信号に変換する第2の三相/二相変換手段と、前記第2の三相/二相変換手段により変換された前記第2の直交座標系の二相信号に含まれる交流信号を除去するフィルタ手段と、前記第1の直交座標系に対する前記第2の直交座標系の相対的な回転速度で前記第2の直交座標系を回転させる演算処理により、前記フィルタ手段から出力される前記第2の直交座標系の二相信号を前記第1の直交座標系の二相信号に変換する座標変換手段と、によって構成されているとよい(請求項2)。
他の好ましい実施の形態によれば、前記高調波生成手段は、少なくとも前記基本周波数の三相交流信号の回転方向と同一方向に回転する7次の高調波の正相成分、または前記基本周波数の三相交流信号の回転方向と逆方向に回転する前記基本周波数及び5次の高調波の逆相分の二相信号を生成するとよい(請求項3)。
他の好ましい実施の形態によれば、前記フィルタ手段は、前記基本周波数の所定の応答時定数を有する第1のローパスフィルタで構成されているとよい(請求項4)。
更に、前記フィルタ手段は、前記第1のローパスフィルタに並列に接続された、前記第1のローパスフィルタの応答時定数よりも短い応答時定数を有する第2のローパスフィルタと、前記第2のローパスフィルタの出力値が一定値になってその一定値が所定の時間以上継続していることを検出する検出手段と、前記検出手段により前記一定値が所定の時間以上継続したことが検出されると、前記第1のローパスフィルタの出力値を前記第2のローパスフィルタの出力値に変更する出力変更手段とを備えるとよい(請求項5)。
本願発明の第2の側面によって提供される無効電力補償装置は、交流電源と電力系統との間に設けられ、前記交流電源から供給される交流電力の力率を改善させるために前記電力系統に流れる負荷電流に対して補償電流を供給する無効電力補償装置であって、前記負荷電流を検出する負荷電流検出回路と、前記補償電流を検出する補償電流検出回路と、を備え、前記負荷電流検出回路及び前記補償電流検出回路には、本願発明の第1の側面によって提供される信号抽出装置が用いられていることを特徴としている(請求項6)。
本願発明の第3の側面によって提供される無効電力補償装置は、交流電源と電力系統との間に設けられ、系統電圧を安定化させるために前記電力系統に対して補償電流を供給する無効電力補償装置であって、前記系統電圧を検出する系統電圧検出回路と、前記補償電流を検出する補償電流検出回路と、を備え、前記系統電圧検出回路及び前記補償電流検出回路には、本願発明の第1の側面によって提供される信号抽出装置が用いられていることを特徴としている(請求項7)。
本願発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本願発明に係る信号抽出装置の構成を示す図である。この信号抽出装置1は、ディジタル演算処理により複数の周波数成分を有する交流信号のうち所望の周波数(例えば基本周波数)成分を有する信号を抽出するための装置である。図1に示す信号抽出装置1は、複数の周波数成分を有する交流信号として三相交流信号(U相、V相、W相のディジタル信号)が入力され、抽出される所望の周波数成分を有する信号として基本周波数(例えば50Hz)の正相分が出力されるものである。
この信号抽出装置1は、本発明の「第1の三相/二相変換手段」として機能する基本周波数回転座標変換回路2(以下、「基本周波数変換回路2」という。)と、本発明の「高調波生成手段」として機能するn(n:2以上の整数)次高調波正相分生成回路3(以下、「n次正相分生成回路3」という。)とm次(m:1以上の整数)高調波逆相分生成回路4(以下、「m次逆相分生成回路4」という。)と、本発明の「高調波相殺手段」として機能する相殺回路5とを備えている。
基本周波数変換回路2は、入力される三相交流信号に含まれる基本周波数の正相分のdq変換を行うものである。なお、基本周波数変換回路2に入力される三相交流信号は、従来技術で説明したように、例えば系統の三相交流電圧を検出した信号であるので、基本周波数の正相分以外に逆相分や3次、5次、…等のn次高調波の正相分及びm次高調波の逆相分が含まれている。従って、基本周波数変換回路2からは基本周波数の正相分のdq変換値(直流信号)が出力されるが、その出力には、基本周波数の逆相分、n次高調波の正相分及びm次高調波の逆相分等のdq変換値(交流信号)も含まれている。
n次正相分生成回路3は、入力される三相交流信号から基本周波数変換回路2の出力に含まれるn次高調波の正相分のdq変換値(交流信号)と同一のdq変換値(交流信号)を生成するものである。また、m次逆相分生成回路4は、入力される三相交流信号から基本周波数変換回路2の出力に含まれるm次高調波の逆相分のdq変換値(交流信号)と同一のdq変換値(交流信号)を生成するものである。なお、m=1の場合、m次逆相分生成回路4は、基本周波数変換回路2の出力に含まれる基本波周波数の逆相分のdq変換値と同一のdq変換値を生成する回路となり、基本波周波数の高調波に対するものではないが、説明の便宜上、基本波周波数の逆相分に対する回路もm次逆相分生成回路4に含めている。
相殺回路5は、基本周波数変換回路2、n次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4のd軸出力同士、並びに基本周波数変換回路2、n次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4のq軸出力同士の差分をそれぞれ演算し、基本周波数変換回路2の出力信号に含まれるn次高調波の正相分およびm次高調波の逆相分を相殺し、基本周波数の正相分のみを後段に出力するものである。
すなわち、図2に示すように、基本周波数変換回路2の出力には、上述したように、基本周波数の逆相分、n次高調波の正相分及びm次高調波の逆相分等を基本周波数用のdq変換を行うことによって生成される交流成分(図2のf1,f2,f3参照)が基本周波数成分のdq変換値(図2のf0(=0)参照)に重畳されている(図2(a)参照)。そのため、この信号抽出装置1では、n次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4において、n次高調波の正相分及びm次高調波の逆相分を基本周波数用のdq変換を行うことによって生成される交流成分をそれぞれ生成し(図2(b)参照)、生成された交流成分を基本周波数変換回路2の出力から相殺回路5において相殺することにより、基本周波数の正相分のdq変換値(直流分)のみを抽出するようにしている(図2(c)参照)。
なお、n次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4は、それぞれ1つずつ記載されているが、例えば高調波が複数の次数からなる場合、その次数に応じた回路がそれぞれ設けられる。上記m次逆相分生成回路4には、例えばm=1(1次)としての基本周波数の逆相分に応じた回路も含まれる。
例えば信号抽出装置1は、後述するように系統電力の安定化を図るための無効電力補償装置等に適用されるが、系統電力にはその系統独自の高調波成分が存在する。信号抽出装置1は、系統独自の高調波成分を除去するためにそれらを生成する必要があり、n次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4は、それら系統独自の高調波成分についてそれぞれ設けられる。例えば、5次、7次、11次又は13次の正相分生成回路や逆相分生成回路が必要に応じて設けられる。また、基本波の逆相分生成回路も設けられる。
基本周波数変換回路2は、図3に示すように、三相/二相変換部6と、dq変換部7とによって構成されている。三相/二相変換部6は、三相交流信号(U相、V相、W相のディジタル信号)を静止座標系(α軸、β軸)における二相信号(α,β)に変換するものである。この変換には、例えば数式1が用いられる。
Figure 2009038885
ここで、三相交流信号(U相、V相、W相)が仮に基本周波数の正相分のみで構成されるとすると、三相交流信号は、U=Asin(ωt)、V=Asin(ωt−2π/3)、W=Asin(ωt+2π/3)で表される。なお、Aは三相交流信号の振幅を示し、ωは各周波数を示す。また、ωtは基本波正相分の回転角を示す。これらU,V,Wの値を数式1に代入すると、二相信号(α,β)は数式2によって表すことができる。
Figure 2009038885
数式2で表される二相信号(α,β)は、dq変換部7に入力される。dq変換部7は、二相信号(α,β)に変換された交流信号を、静止座標系(α軸、β軸)を基本波周波数と同一角速度ωで三相交流信号と同一の回転方向(例えば反時計回り)に回転させる回転座標系(d軸、q軸)の信号に変換するものである。この変換には、数式3が用いられる。
Figure 2009038885
数式3により、回転座標系(d軸、q軸)で表される信号は数式4によって表すことができる。
Figure 2009038885
このように、基本周波数変換回路2によってdq変換処理が行われることにより、三相交流信号の基本周波数の正相分をd軸及びq軸の直流分に変換することができる。
なお、この基本周波数変換回路2に入力される三相交流信号(U相、V相、W相)には、基本周波数の正相分以外の成分(基本周波数の逆相分やn次高調波の正相分又はm次高調波の逆相分など)が含まれているので、基本周波数変換回路2からはこれらの成分に対して上記の数1乃至数3を適用して得られるd軸及びq軸の成分(交流成分)も出力される。
すなわち、n次高調波の正相分が含まれている場合、n次高調波の正相分は、U=Asin(nωt)、V=Asin(nωt−2π/3)、W=Asin(nωt+2π/3)で表されるから、これらのU,V,Wの値を数式1及び数式3に適用すると、αβ変換値は数式5のようになり、dq変換値は数式6のようになる。従って、n次高調波の正相分は、基本周波数変換回路2から(n−1)次高調波(nは2以上の整数)と同一の周波数を有する交流信号で出力される。
Figure 2009038885
Figure 2009038885
また、m次高調波の逆相分が含まれている場合、m次高調波の逆相分は、U=Asin(mωt)、V=Asin(mωt+2π/3)、W=Asin(mωt−2π/3)で表されるから、これらのU,V,Wの値を数式1及び数式3に適用すると、αβ変換値は数式7のようになり、dq変換値は数式8のようになる。従って、m次高調波の逆相分は、基本周波数変換回路2から(m+1)次高調波(mは1以上の整数)と同一の周波数を有する交流信号で出力される。
Figure 2009038885
Figure 2009038885
なお、数式7,8でm=1にすると、基本周波数の逆相分のαβ変換値と基本周波数変換回路2から出力される基本周波数の逆相分のdq変換値が求められ、数式9,10のようになる。したがって、基本周波数の逆相分は、基本周波数変換回路2から基本周波数の2倍の周波数を有する交流信号で出力される。
Figure 2009038885
Figure 2009038885
図1に戻り、n次正相分生成回路3は、n次高調波正相分回転座標変換回路11(以下、「n次正相分変換回路11」という。)と、第1ローパスフィルタ12と、第2ローパスフィルタ13と、n次正相分副変換回路14とによって構成されている。
n次正相分変換回路11は、n次高調波の正相分のdq変換処理を行うものであり、その構成は、上述した基本周波数変換回路2と同様の構成とされ、三相/二相変換部6及びdq変換部7を含んでいる(図3参照)。
n次正相分変換回路11における三相/二相変換部6では、三相交流信号に含まれるn次高調波の正相分が静止座標系である二相信号(α,β)に変換される。三相交流信号に含まれるn次高調波の正相分は、U=Asin(nωt)、V=Asin(nωt−2π/3)、W=Asin(nωt+2π/3)で表されるから、これらのU,V,Wの値を上記の数式1に適用すると、二相信号(α,β)は、上記数式5で示されるように、α=Asin(nωt)、α=−Acos(nωt)となる。
dq変換部7では、二相信号(α,β)=(Asin(nωt),−Acos(nωt))が静止座標系(α軸、β軸)をnωtの回転速度で三相交流信号と同一の回転方向(例えば反時計回り)に回転させる回転座標系(d軸、q軸)の信号に変換される。この変換には、数式3に代えて下記の数式11が用いられ、そのdq変換値は上記の数式4と同じになる。すなわち、d=0、q=−Aとなり、三相交流信号のn次高調波の正相分は、n次正相分変換回路11からd軸及びq軸の直流分に変換されて出力される。
Figure 2009038885
一方、n次正相分変換回路11の入力信号は、基本周波数変換回路2の入力信号と同一であるから、その入力信号にはn次高調波の正相分以外の信号(基本周波数の正相分及び逆相分やs次高調波(s≠n)の逆相分など)が含まれているので、n次正相分変換回路11からはこれらの信号に対して上記の数式1及び数式11を適用して得られるd軸及びq軸の成分(交流成分)も出力される。
n次正相分変換回路11に入力されるn次高調波と異なる周波数の正相分を、U=Asin(sωt)、V=Asin(sωt−2π/3)、W=Asin(sωt+2π/3)(s≠n)で表すと、これらのU,V,Wの値を数式1及び数式11に適用すると、αβ変換値は数式12のようになり、dq変換値は数式13のようになる。
Figure 2009038885
Figure 2009038885
従って、n次高調波と異なる周波数の正相分は、n次正相分変換回路11から(s−n)次高調波と同一の周波数を有する交流信号で出力される。なお、n次正相分変換回路11に入力された基本周波数の正相分のdq変換値は、数式13でs=1にすれば求められ、d=−Asin{(n−1)ωt}、q=−Acos{(n−1)ωt}となる。
また、n次正相分変換回路11に入力されるn次高調波と同一若しくは異なる周波数(この周波数には基本波周波数も含まれる)の逆相分を、U=Asin(pωt)、V=Asin(pωt+2π/3)、W=Asin(pωt−2π/3)(p=1,2,…の整数)で表すと、これらのU,V,Wの値を数式1及び数式11に適用すると、αβ変換値は数式14のようになり、dq変換値は数式15のようになる。
Figure 2009038885
Figure 2009038885
従って、n次高調波と同一若しくは異なる周波数の逆相分は、n次正相分変換回路11から(p+n)次高調波と同一の周波数を有する交流信号で出力される。なお、n次正相分変換回路11に入力された基本周波数の逆相分のdq変換値は、数式15でp=1にすれば求められ、d=Asin{(n+1)ωt}、q=Acos{(n+1)ωt}となる。
n次正相分変換回路11のd軸出力には第1ローパスフィルタ12が接続され、n次正相分変換回路11のq軸出力には第2ローパスフィルタ13がそれぞれ接続されている。上記のように、n次正相分変換回路11の出力にはn次高調波の正相分以外の信号のdq変換値が交流信号として出力されるので、第1ローパスフィルタ12及び第1ローパスフィルタ13は、n次正相分変換回路11の出力からその交流成分を除去するために設けられている。
第1ローパスフィルタ12及び第2ローパスフィルタ13は、ディジタルフィルタ(例えば平均移動フィルタ)によって構成されている。第1ローパスフィルタ12にはn次正相分変換回路11のd軸出力が入力され、第2ローパスフィルタ13には、n次正相分変換回路11のq軸出力が入力される。n次正相分変換回路11から出力されるd軸成分の、例えば、Asin{(s−n)ωt}やAsin{(p+n)ωt}の交流成分は第1ローパスフィルタ12で除去される。また、n次正相分変換回路11から出力されるq軸成分の、例えば、−Acos{(s−n)ωt}やAcos{(p+n)ωt}の交流成分は第2ローパスフィルタ13で除去される。第1及び第2ローパスフィルタ12,13の出力には、n次正相分副変換回路14が接続されている。
n次正相分副変換回路14は、第1ローパスフィルタ12及び第2ローパスフィルタ13から出力されるn次高調波の正相分のdq変換値の座標を回転して基本周波数変換回路2から出力されるn次高調波の正相分のdq変換値(交流信号)と同一のdq変換値(交流信号)に変換する。
基本周波数変換回路2から出力されるdq変換値は、静止しているαβ座標系を反時計回りにωtの回転速度で回転する回転座標系(この回転座標系は、本発明の「第1の直交座標系」に相当する)に変換したものである。一方、n次正相分変換回路11から出力されるdq変換値は、静止しているαβ座標系を反時計回りにnωtの回転速度で回転する回転座標系(この回転座標系は、本発明の「第2の直交座標系」に相当する)に変換したものである。n次正相分変換回路11から出力されるdq変換値の回転座標系は、基本周波数変換回路2から出力されるdq変換値の回転座標系に対して(n−1)ωtの回転速度で反時計回りに回転しているから、n次正相分変換回路11から出力されるn次高調波の正相分のdq変換値を(n−1)ωtの回転速度で時計回りに回転する回転座標系に変換すれば、基本周波数変換回路2の回転座標系におけるdq変換値となる。
従って、n次正相分副変換回路14では、第1ローパスフィルタ12及び第2ローパスフィルタ13から出力されるn次高調波の正相分のdq変換値が下記数式16により基本周波数変換回路2の回転座標系における値(d′,q′)に変換される。
Figure 2009038885
第1ローパスフィルタ12及び第2ローパスフィルタ13からn次高調波の正相分のdq変換値のみが出力されている状態ではd=0,q=−Aであるから、これらの値を数式16に入れると、変換値d′,q′は、d′=Asin{(n-1)ωt}、q′=−Acos{(n-1)ωt}となる。この変換値d′,q′は、数式6で示した基本周波数変換回路2から出力されるn次高調波の正相分のdq変換値に一致している。n次正相分副変換回路14から出力される変換値d′,q′は、相殺回路5に入力される。
m次逆相分生成回路4は、m次高調波逆相分回転座標変換回路15(以下、「m次正相分変換回路15」という。)と、第3ローパスフィルタ16と、第4ローパスフィルタ17と、m次逆相分副変換回路18とによって構成されている。
m次逆相分変換回路15は、m次高調波の逆相分のdq変換処理を行うものであり、n次正相分生成回路3と同様に、基本周波数変換回路2と同様の構成とされ、三相/二相変換部6及びdq変換部7を含んでいる(図3参照)。
m次逆相分変換回路15における三相/二相変換部6では、三相交流信号に含まれるm次高調波の逆相分が静止座標系である二相信号(α,β)に変換される。三相交流信号に含まれるm次高調波の逆相分は、U=Asin(mωt)、V=Asin(mωt+2π/3)、W=Asin(mωt−2π/3)で表されるから、これらのU,V,Wの値を上記の数式1に適用すると、二相信号(α,β)は、上記数式7で示されるように、α=Asin(mωt)、α=Acos(mωt)となる。
dq変換部7では、二相信号(α,β)=(Asin(mωt),Acos(mωt))が静止座標系(α軸、β軸)をmωtの回転速度で三相交流信号と同一の回転方向(時計回り)に回転させる回転座標系(d軸、q軸)の信号に変換される。この変換には、数式3に代えて下記の数式17が用いられ、そのdq変換値はd=0、q=Aとなる。従って、三相交流信号のm次高調波の逆相分もm次逆相分変換回路15からd軸及びq軸の直流分に変換されて出力される。
Figure 2009038885
一方、m次逆相分変換回路15の入力信号も基本周波数変換回路2の入力信号と同一であるから、その入力信号にはm次高調波の逆相分以外の信号(基本周波数の正相分及び逆相分やk次高調波(k≠m)の正相分など)が含まれているので、m次逆相分変換回路15からはこれらの信号に対して上記の数式1及び数式17を適用して得られるd軸及びq軸の成分(交流成分)も出力される。
m次逆相分変換回路15に入力されるm次高調波と同一若しく異なる周波数(この周波数には基本波周波数も含まれる)の正相分を、U=Asin(kωt)、V=Asin(kωt−2π/3)、W=Asin(kωt+2π/3)(k=1,2,…の整数)で表し、これらのU,V,Wの値を数式1及び数式17に適用すると、αβ変換値は数式18と同じになり、dq変換値は数式19のようになる。
Figure 2009038885
Figure 2009038885
従って、m次高調波と同一若しくは異なる周波数の正相分は、m次逆相分変換回路15から(m+k)次高調波と同一の周波数を有する交流信号で出力される。なお、m次逆相分変換回路15に入力された基本周波数の正相分のdq変換値は、数式18でk=1にすれば求められ、d=Asin{(m+1)ωt}、q=−Acos{(m+1)ωt}となる。
また、m次逆相分変換回路15に入力されるm次高調波と異なる周波数の逆相分をU=Asin(hωt)、V=Asin(hωt+2π/3)、W=Asin(hωt−2π/3)(h≠m)で表し、これらのU,V,Wの値を数式1及び数式17に適用すると、αβ変換値は数式20のようになり、dq変換値は数式21のようになる。
Figure 2009038885
Figure 2009038885
従って、m次高調波と異なる周波数の逆相分は、m次正相分変換回路11から(m−h)次高調波と同一の周波数を有する交流信号で出力される。なお、m次逆相分変換回路15に入力された基本周波数の逆相分のdq変換値は、数式21でh=1にすれば求められ、d=Asin{(m−1)ωt}、q=Acos{(m−1)ωt}となる。
m次逆相分変換回路15のd軸出力には第3ローパスフィルタ16が接続され、m次逆相分変換回路15のq軸出力には第4ローパスフィルタ17がそれぞれ接続されている。上記のように、m次逆相分変換回路15の出力にもm次高調波の逆相分以外の信号のdq変換値が交流信号として出力されるので、第3ローパスフィルタ16及び第4ローパスフィルタ17は、m次逆相分変換回路15の出力からその交流成分を除去するために設けられている。
第3ローパスフィルタ16及び第4ローパスフィルタ17は、第1及び第2ローパスフィルタ12,13と同様にディジタルフィルタによって構成されている。第3ローパスフィルタ16にはm次逆相分変換回路15のd軸出力が入力され、第4ローパスフィルタ17にはm次逆相分変換回路15のq軸出力が入力される。m次逆相分変換回路15から出力されるd軸成分の、例えば、Asin{(m+k)ωt}やAsin{(m−h)ωt}の交流成分は第3ローパスフィルタ16で除去される。また、n次逆相分変換回路15から出力されるq軸成分の、例えば、−Acos{(m+k)ωt}やAcos{(m−h)ωt}の交流成分は第4ローパスフィルタ17で除去される。第3及び第4ローパスフィルタ16,17の出力には、m次逆相分副変換回路18が接続されている。
m次逆相分副変換回路18は、第3ローパスフィルタ16及び第4ローパスフィルタ17から出力されるm次高調波の正相分のdq変換値の座標を回転して基本周波数変換回路2から出力されるm次高調波の正相分のdq変換値(交流信号)と同一のdq変換値(交流信号)に変換する。
m次逆相分副変換回路18から出力されるdq変換値は、静止しているαβ座標系を時計回りにmωtの回転速度で回転する回転座標系(この回転座標系は、本発明の「第2の直交座標系」に相当する)に変換したものである。基本周波数変換回路2から出力されるdq変換値の回転座標系は反時計回りにωtの回転速度で回転しているから、m次逆相分副変換回路18から出力されるdq変換値の回転座標系は、基本周波数変換回路2から出力されるdq変換値の回転座標系に対して(m+1)ωtの回転速度で時計回りに回転している。従って、m次逆相分副変換回路18から出力されるn次高調波の逆相分のdq変換値を(m+1)ωtの回転速度で反時計回りに回転する回転座標系に変換すれば、基本周波数変換回路2の回転座標系におけるdq変換値となる。
m次逆相分副変換回路18では、第3ローパスフィルタ16及び第4ローパスフィルタ17から出力されるm次高調波の逆相分のdq変換値が下記数式22により基本周波数変換回路2の回転座標系における値(d′,q′)に変換される。
Figure 2009038885
第3ローパスフィルタ16及び第4ローパスフィルタ17からm次高調波の逆相分のdq変換値のみが出力されている状態ではd=0,q=Aであるから、これらの値を数式22に入れると、変換値d′,q′は、d′=Asin{(m+1)ωt}、q′=Acos{(m+1)ωt}となる。この変換値d′,q′は、数式8で示した基本周波数変換回路2から出力されるm次高調波の逆相分のdq変換値に一致している。m次逆相分副変換回路18から出力される変換値d′,q′は、相殺回路5に入力される。
相殺回路5は、基本周波数変換回路2及びn次正相分生成回路3のd軸出力同士の差分を演算する第1演算回路19と、第1演算回路19及びm次逆相分生成回路4のd軸出力同士の差分を演算する第2演算回路20と、基本周波数変換回路2及びn次正相分生成回路3のq軸出力同士の差分を演算する第3演算回路21と、第3演算回路21及びm次逆相分生成回路4のq軸出力同士の差分を演算する第4演算回路22とによって構成されている。
すなわち、第1演算回路19では、基本周波数変換回路2でdq変換された基本周波数成分及びそれに重畳されるn次高調波の正相分のd軸分に対して、n次正相分生成回路3で生成されたn次高調波の正相分のd軸分が相殺される。第2演算回路20では、第1演算回路19の出力に対して、m次逆相分生成回路4で生成されたm次高調波の逆相分のd軸分が相殺される。したがって、第2演算回路20からは、基本周波数の正相分のd軸成分(直流)のみが出力されることになる。
同様に、第3演算回路21では、基本周波数変換回路2でdq変換された基本周波数成分及びそれに重畳されるm次高調波の逆相分のq軸分に対して、n次正相分生成回路3で生成されたn次高調波の正相分のq軸分が相殺される。第4演算回路22では、第3演算回路21の出力に対して、m次逆相分生成回路4で生成されたm次高調波の逆相分のq軸分が相殺される。したがって、第4演算回路22からは、基本周波数の逆相分のq軸成分(直流)のみが出力されることになる。
上記構成によれば、三相交流信号に含まれるn次高調波(n;2以上の整数)の正相分が基本周波数変換回路2でdq変換されて出力される信号(dq変換された交流成分)と同一の信号がn次正相分生成回路3で生成される。また、三相交流信号に含まれるm次高調波(m;1または2以上の整数)が基本周波数変換回路2でdq変換されて出力される信号(dq変換された交流成分)と同一の信号がm次逆相分生成回路4で生成される。
そして、n次正相分生成回路3で生成されたn次高調波の正相分とm次逆相分生成回路4で生成されたm次高調波の逆相分の信号(基本周波数と同一の角速度で反時計回りに回転するdq座標系上の交流信号)は、相殺回路5に入力され、基本周波数変換回路2の出力との差分が演算される。基本周波数変換回路2の出力には、基本周波数の正相分の他にn次高調波の正相分及びm次高調波の逆相分のdq座標系上の交流成分が含まれているので、これらの交流成分がn次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4で生成されたn次高調波の正相分とm次高調波の逆相分の信号と相殺される。その結果、相殺回路5からは基本周波数の正相分のdq変換値(dq座標系上の直流信号)のみが出力されることになる。
このように、本実施形態の信号抽出装置1では、基本周波数の正相分を抽出するとき、従来の構成のように不要なn次高調波成分を移動平均フィルタやFIRフィルタやIIRフィルタなどを用いて移動平均演算をすることにより除去するのではなく、基本周波数の正相分を基本周波数変換回路2でdq変換したときにその出力に含まれる基本周波数の正相分以外の信号(基本周波数の逆相分、n次高調波の正相分またはm次高調波の逆相分の信号)のdq変換値(交流信号)と同一の信号をn次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4で別途生成し、基本周波数変換回路2の出力からその別途生成した信号を差し引くといった方法を用いている。
この方法によれば、基本周波数変換回路2のdq変換処理に同期してn次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4で基本周波数の正相分以外の信号の基本周波数変換回路2におけるdq変換値と同一の信号を生成する処理が行われ、その信号で基本周波数変換回路2の出力に含まれる基本周波数の正相分以外の信号のdq変換値(交流信号)を相殺する動作がリアルタイムで行われるため、基本周波数の正相分を迅速に抽出することができる。すなわち、従来の移動平均フィルタからなるローパスフィルタを用いた場合には、除去したい周波数のフィルタリング効果が生じるのにその周波数の1周期以上のタイムラグが生じるが、本実施形態の方法では、そのタイムラグは殆どなく、信号応答性を向上させることができる。
図4は、信号抽出装置1における三相交流信号のシミュレーション入力波形を示す図である。同図は、常時2次高調波(振幅A=0.1、周波数100Hz)が入力されている状態で時間0において振幅が「1」の基本周波数(周波数50Hz)の正相分(三相交流)を入力した場合を示している。すなわち、信号抽出装置1への入力信号として、時間0に振幅「0.1」の2次高調波が重畳された振幅「1.0」の基本周波数の正相分(三相交流)が入力されたときの信号波形を示している。
図5は、信号抽出装置1におけるシミュレーション出力波形を示す図である。同図において、実線で示す波形は、本実施形態に係る信号抽出装置1からの出力波形を示し、一点鎖線は、従来の移動平均フィルタからなるローパスフィルタ(以下、必要に応じて「移動平均ローパスフィルタ」という。)を用いて2次高調波を除去した場合の出力波形を示している。
同図に示すように、従来の構成では、時間0で2次高調波が重畳された基本周波数の正相分が入力されると、その後に2次高調波のdq変換値(交流成分)に対して移動平均演算が行なわれるので、そのdq変換値の振幅は漸減し、2次高調波の1周期(200msec)が経過した時点から完全なフィルタリング効果が生じ、振幅はゼロとなる。従って、2次高調波が重畳された基本周波数の正相分のdq変換値は、時間0.02から基本周波数の正相分直流のdq変換値(直流分)のみとなる。
これに対し、本実施形態に係る信号抽出装置1では、時間0で2次高調波が重畳された基本周波数の正相分のdq変換処理が開始されると同時に2次高調波のdq変換値(交流成分)の相殺処理が行われるので、2次高調波が重畳された基本周波数の正相分のdq変換値は、時間0からほぼ基本周波数の正相分直流のdq変換値(直流分)のみとなり、従来の構成のように、200msecのタイムラグは生じないことがわかる。
なお、図5において、信号抽出装置1の出力波形が時間0から時間0.04の近くまで微小変動を起こしているが、これはn次正相分生成回路3の第1,第2ローパスフィルタ12,13及びm次逆相分生成回路4の第3,第4ローパスフィルタ16,17として移動平均ローパスフィルタを用いているので、これらのローパスフィルタのフィルタリング効果が生じるまでのタイムラグの期間にn次正相分生成回路3またはn次正相分生成回路3からの出力に2次高調波の基本周波数変換回路2におけるdq変換値と同一の信号以外の成分が出力されることによるものである。
ところで、三相交流信号に含まれるn次高調波は、基本周波数に対する高調波であるから、基本周波数が何らかの要因で変動することがあれば、n次高調波はそれに応じて変動することになる。従って、n次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4に入力される基本周波数の正相分が変動すると、その変動に応じて基本周波数の正相分に重畳されている基本周波数の逆相分、n次高調波の正相分及びm次高調波の逆相分も変動する。基本周波数の正相分に重畳されている信号自身が変動した場合は言うまでもない。
上記のように、n次正相分生成回路3にはn次高調波の正相分以外の信号がdq変換された成分(交流成分)を除去するために移動平均ローパスフィルタからなる第1,第2ローパスフィルタ12,13を設けているが、基本周波数の正相分の変動に応じてn次正相分生成回路3に入力されるn次高調波の正相分以外の信号が変動した場合にもその信号を効果的に除去するためには、第1,第2ローパスフィルタ12,13の応答時定数を比較的長く設定する必要がある。m次逆相分生成回路4の移動平均ローパスフィルタからなる第3,第4ローパスフィルタ16,17についても同様である。
しかしながら、n次正相分生成回路3の第1,第2ローパスフィルタ12,13の応答時定数を長い応答時定数に固定すると、例えば、第1,第2ローパスフィルタ12,13の応答時定数の期間中に基本周波数の正相分の変動が収束し、その時点で十分なフィルタリング効果が得られる場合にも固定化された応答時定数の期間が経過するまでフィルタリング効果が得られないという不都合が生じる。
例えば、第1,第2ローパスフィルタ12,13の応答時定数を基本周波数の10周期分(200msec)に設定すると、第1,第2ローパスフィルタ12,13による除去したい周波数範囲と減衰効果が向上するが、十分なフィルタリング効果が生じるまでに200m秒の応答時間を要する。従って、第1,第2ローパスフィルタ12,13で移動平均演算処理が開始された後、例えば、100msecで基本周波数の変動が収束し、第1,第2ローパスフィルタ12,13の応答時定数が100秒であれば、その100秒が経過した時点で十分にフィルタリング効果が生じる場合にも第1,第2ローパスフィルタ12,13からは200秒を経過しなければ、十分にフィルタリング効果が生じない。このような不都合は、m次逆相分生成回路4の第3,第4ローパスフィルタ16,17についても同様である。
そこで、本実施形態では、上記の不都合を解消するため、第1ないし第4ローパスフィルタ12,13,16,17を以下に示すように構成している。
図6は、第1ないし第4ローパスフィルタ12,13,16,17の内部構成を示す図である。各ローパスフィルタ12,13,16,17は、その内部構成がそれぞれ同様とされている。なお、第1ないし第4ローパスフィルタ12,13,16,17は、いわゆる移動平均フィルタからなるディジタルローパスフィルタによって構成されており、図6に示す内部構成は具体的なハードウェア構成を示すものではなく、ディジタル演算処理される際のソフトウェア的な概念を示すものである。
各ローパスフィルタ12,13,16,17は、応答時定数の比較的大きいローパスフィルタ(以下、「ローパスフィルタ(大)」という。)23と、応答時定数の比較的小さいローパスフィルタ(以下、「ローパスフィルタ(小)」という。)24と、三相交流信号の変動が収束したことを検出するための変動検出部25とによって構成される。ローパスフィルタ(大)23は、本発明の「第1の移動平均ローパスフィルタ」として機能し、ローパスフィルタ(小)24は、本発明の「第2の移動平均ローパスフィルタ」として機能する。また、変動検出部25は、本発明の「検出手段」及び「出力変更手段」として機能する。
ローパスフィルタ(大)23の応答時定数は、少なくとも基本周波数の1周期(20msec)以上であれば、基本周波数以上の周波数を除去することができるが、ローパスフィルタ(大)23の減衰率を高くするために、例えば200msecとしている。また、ローパスフィルタ(小)24の応答時定数は、例えば10msecである。また、ローパスフィルタ(大)23は、データを格納するデータ領域23aを有し、ローパスフィルタ(小)24は、ローパスフィルタ(大)23のデータ領域23aに比べ、データの格納数が小さいデータ領域24aを有している。
第1ないし第4ローパスフィルタ12,13,16,17では、入力される三相交流信号の変動時の応答特性を向上させるために、通常時には、ローパスフィルタ(大)23の出力値を用いている。そして、三相交流信号が変動し、その変動が収束したことを変動検出部25が検出したとき、ローパスフィルタ(小)24の出力値をローパスフィルタ(大)23の出力値として用いるようにしている。
図7は、ローパスフィルタ(大)23及びローパスフィルタ(小)24のデータ領域におけるデータの遷移状態及びそれに伴う移動平均値を示した図であり、図8は、ローパスフィルタ(大)23及びローパスフィルタ(小)24の動作を示すフローチャートである。
ここで、仮にローパスフィルタ(小)24は、5個のデータを格納するデータ領域24aを有し、ローパスフィルタ(大)23は、50個のデータを格納するデータ領域23aを有するとする(図7(a)参照)。なお、サンプリング周期をτとした場合、ローパスフィルタ(小)24の応答時定数は5×τ、ローパスフィルタ(大)23の応答時定数は50×τでそれぞれ表される。
ローパスフィルタ(小)24は、サンプリング時毎にデータ領域数が5個の移動平均を算出し、ローパスフィルタ(大)23は、データ領域数が50個の移動平均を算出する。また、データ領域には、初期状態でデータ「0」が格納されているとする。従って、ローパスフィルタ(小)24及びローパスフィルタ(大)23とも初期状態の移動平均値は「0」である(図7(a)参照)。なお、図7では、n次正相分変換回路11及びm次逆相分変換回路15からのd軸出力及びq軸出力として入力されるデータを「1」で示している。
図8のフローチャートを参照すると、n次正相分変換回路11及びm次逆相分変換回路15からのd軸出力及びq軸出力のデータが入力されると、ローパスフィルタ(大)23は、そのデータをデータ領域23aにおいて記憶する(S1)。また、ローパスフィルタ(小)24もそのデータをデータ領域24aにおいて記憶する(S2)。
次いで、ローパスフィルタ(小)24及びローパスフィルタ(大)23においてフィルタリングが行われる(S3)。具体的には、ローパスフィルタ(小)24及びローパスフィルタ(大)23における移動平均値が算出される。すなわち、サンプリング1回目において、図7(b)に示すように、ローパスフィルタ(小)24及びローパスフィルタ(大)23の各データ領域の第1領域(各領域の上部に記載された数字(以下、「領域番号」という。)0参照)に「1」が格納されたとすると、ローパスフィルタ(小)24の移動平均値は1/5=0.2となり、ローパスフィルタ(大)23の移動平均値は1/50=0.02となる。
図7(c)では、サンプリング2回目にデータが格納された場合を示している。この場合、サンプリング2回目において、ローパスフィルタ(小)24及びローパスフィルタ(大)23の各データ領域24a,23aの各第2領域(領域番号1参照)に「1」が格納されたとすると、データ「1」が2個となるので、ローパスフィルタ(小)24の移動平均値は2/5=0.4となり、ローパスフィルタ(大)23の移動平均値は2/50=0.04となる。
その後、順次サンプリングが行われ、図7(d)に示すように、サンプリング5回目において、ローパスフィルタ(小)24及びローパスフィルタ(大)23の各データ領域24a,23aの各第5領域(領域番号4参照)に「1」が格納されると、第1〜第5領域(小文字0〜4参照)におけるデータ「1」が5個となるので、ローパスフィルタ(小)24の移動平均値は5/5=1となり、ローパスフィルタ(大)23の移動平均値は5/50=0.1となる。すなわち、ローパスフィルタ(小)24では、サンプリング5回目から正しいフィルタリング値が出力される。
図7(e)に示すように、サンプリング6回目においては、ローパスフィルタ(小)24のデータ領域24aの全てにデータが格納されているため、サンプリング6回目のデータ「1」は、データ領域24aの第1領域(領域番号0参照)に格納される。ローパスフィルタ(大)23では、データ領域23aの第6領域(領域番号5参照)にデータ「1」が格納される。このときのローパスフィルタ(小)24の移動平均値は5/5=1のままであり、ローパスフィルタ(大)23の移動平均値は6/50=0.12となる。
次いで、ローパスフィルタ(小)24の前回のフィルタリング結果(サンプリング1〜5回目における移動平均値)と、ローパスフィルタ(小)24の今回のフィルタリング結果(サンプリング2〜6回目における移動平均値)とが等しいか否かが判別される(S4)。
ローパスフィルタ(小)24の前回のフィルタリング結果と、今回のフィルタリング結果とが等しい場合(S4:YES)、基本周波数及びn次高調波の変動が収束したか否かを検出するための収束時間の計測を開始又は継続する(S5)。
すなわち、図7(e)に示すように、サンプリング6回目におけるデータ入力時に、ローパスフィルタ(小)24のデータ領域24aの第1領域(領域番号0参照)に「1」が格納される場合、ローパスフィルタ(小)24では、前回のフィルタリング結果と、今回のフィルタリング結果とが等しいので、収束時間の計測が開始される。
一方、ローパスフィルタ(小)24の前回のフィルタリング結果と、今回のフィルタリング結果とが等しくない場合(S4:NO)、収束時間の計測値を「0」にリセットする(S6)。この場合、入力されるデータが連続して同じデータでないことを示し、すなわち基本周波数及びn次高調波が変動したことを示す。
図7(f)に示すように、サンプリング9回目におけるデータ入力時まで、ローパスフィルタ(小)24のデータ領域24aの第2〜4領域(領域番号1〜3参照)に連続して「1」が格納されると、ローパスフィルタ(小)24における前回のフィルタリング結果と今回のフィルタリング結果とは等しい状態が継続され、収束時間の計測が継続される。
その後、収束時間の計測値がローパスフィルタ(小)24の応答時定数と等しくなったか否かの判別を行い(S7)、収束時間の計測値がローパスフィルタ(小)24の応答時定数と等しくなった場合(S7:YES)、ローパスフィルタ(大)23のデータ領域23aを全て、ローパスフィルタ(小)24の移動平均値に変更する(S8)。
すなわち、図7(g)に示すように、サンプリング10回目におけるデータ入力が「1」の場合、収束時間がローパスフィルタ(小)24の応答時定数と等しくなるので、ローパスフィルタ(大)23のデータ領域23aを全て、ローパスフィルタ(小)24の移動平均値である「1」に置き換える。
ステップS8においてローパスフィルタ(大)23のデータ領域23aを全てローパスフィルタ(小)24の移動平均値に変更した場合、ステップS6において収束時間の計測値を「0」にリセットした場合、あるいはステップS7において収束時間がローパスフィルタ(小)24の応答時定数と等しくなっていない場合(S7:NO)、ローパスフィルタ(大)23でフィルタリングした結果、すなわちローパスフィルタ(大)23の移動平均値を出力する(S9)。
図9は、ローパスフィルタ(小)24の移動平均値をローパスフィルタ(大)23の移動平均値に置き換えるときのq軸出力のシミュレーション結果を示す図である。なお、図9では説明の便宜上q軸に関する信号のみを示し、二点鎖線はローパスフィルタ(小)の出力値、点線はローパスフィルタ(小)の出力値(出力値を切り換えない場合)、上方の実線はm次逆相分副変換回路18の出力値、一点鎖線は基本周波数変換回路2の出力値(基本周波数の正相分)、下方の実線は相殺回路5の出力値をそれぞれ示す。
図9によると、時間「0msec」で変動が発生し、期間「20〜40msec」でローパスフィルタ(小)24の移動平均値が一定値で継続しているので(図9のア参照)、その変動が収束したと見做して時間「40msec」以降においてローパスフィルタ(小)24の移動平均値をローパスフィルタ(大)23の移動平均値に置き換える(図9のイ参照)。このようにすれば、相殺回路5の出力(下方の実線参照)は、期間「0〜40msec」で振動(フィルタリングされない交流成分)が生じていたが、時間「40msec」においてその振動が抑制され、出力「−1」(dq変換値の直流成分)のみが出力される。
このように、収束時間の計測値がローパスフィルタ(小)24の応答時定数と等しくなった場合、すなわち基本周波数及びn次高調波の変動が収束したと検出された場合、ローパスフィルタ(小)24の移動平均値をローパスフィルタ(大)23の出力に置き換えるようにする。これにより、n次正相分生成回路3及びm次逆相分生成回路4におけるn次高調波の正相分及び逆相分のみのdq変換値の検出を、入力される三相交流信号の変動の期間に応じた適切な速度で行なうことができる。
図10及び図11は、本願発明に係る信号抽出装置1が無効電力補償装置に適用された場合の電力変換システムの構成を示す図である。無効電力補償装置には、例えば負荷電流を検出するタイプと系統電圧を検出するタイプとがある。図10は、無効電力補償装置のうち負荷電流を検出するタイプを示している。この電力変換システムは、系統電源31、配電系統32及び無効電力補償装置33によって概略構成されている。
系統電源31は、例えば三相交流電源からなる。系統電源31には、配線系統32が接続され、配線系統32には、抵抗分34及びインピーダンス分35が設けられる。また、配線系統32には、系統電力の力率の改善を図るための無効電力補償装置33が接続されている。無効電力補償装置33は、配線系統32に生じる無効電流の変動を抑制するために、インバータ36によって配線系統32に対して補償電流が与えられるものである。
配線系統32には、電流検出器37を介して図示しない負荷に流れる負荷電流の無効電流分を抽出するための負荷電流抽出回路38が設けられている。負荷電流抽出回路38には、本願発明の信号抽出装置1が採用される。なお、負荷電流抽出回路38では、無効電流としてのq軸の直流分のみを検出するため、q軸に関する回路構成のみとなっている。
配線系統32とインバータ36の間には電流検出器39が設けられ、電流検出器37を介してインバータ36に流れる電流を抽出するための補償電流抽出回路40が設けられている。この補償電流抽出回路40にも、本願発明の信号抽出装置1が採用されている。
負荷電流抽出回路38及び補償電流抽出回路40には、系統電源31に同期した角速度(基本波の周波数)θがそれぞれ与えられる。すなわち、配線系統32には、変圧器41を介してPLL回路42が接続されている。PLL回路42は、上記角速度θを検出するためのものであり、検出された角速度θの値が負荷電流抽出回路38及び補償電流抽出回路40に出力される。
負荷電流抽出回路38のq軸出力は、演算器43によって補償電流抽出回路40のq軸出力との差分が演算され、積分処理を行うためのI(integral)制御回路44を介して逆dq変換回路45に入力される。
補償電流抽出回路40のd軸出力は、演算器46に入力され、直流電圧出力回路47の出力との差分が演算される。より詳細には、直流電圧出力回路47は、目標値(例えば700V)としての一定電圧を出力し演算器48(後述)を介してPI(proportional-integral)制御回路49においてPI制御されて演算器46に入力されて、補償電流抽出回路40のd軸出力との差分が演算される。演算器46の出力は、積分処理を行うためのI制御回路50を介して逆dq変換回路45に入力される。なお、演算器48では、インバータ36のコンデンサ36aの出力がLPF部51を介して入力される。
逆dq変換回路45では、I制御回路44の出力及びI制御回路50の出力が逆dq変換された後、二相/三相変換されてPWM(Pulse Width Modulation)回路52に出力される。インバータ36は、このPWM回路52の出力によって制御される。
この無効電力補償装置33では、負荷電流に含まれるq軸成分(無効成分)を抽出するとともに、補償電流に含まれるq軸成分(無効成分)を抽出して、q軸成分同士を相殺させて逆dq変換後、その信号によってインバータ36の出力を制御している。すなわち、補償電流がゼロになるようにインバータ36の出力が制御されているので、安定化した負荷電流が得られることになる。この場合、負荷電流抽出回路38及び補償電流抽出回路40には、本実施形態の信号抽出装置1が採用されているため、負荷電流抽出回路38のq軸出力並びに補償電流抽出回路40のd軸出力及びq軸出力は、信号応答性を損なうことなく出力される。
図11は、本願発明に係る信号抽出装置1が系統電圧を検出するタイプの無効電力補償装置に適用された場合の構成を示す図である。図10との構成の違いについて主に述べると、この無効電力補償装置33′では、変圧器41を介して系統電圧が検出され、本実施形態の信号抽出装置1が採用されている系統電圧抽出回路53に入力される。
系統電圧抽出回路53では、検出された系統電圧に基づいて基本周波数正相分のd軸及びq軸成分が抽出される。これらd軸及びq軸成分は、実効値算出回路54に出力され、実効値算出回路54において系統電圧の実効値が算出される。系統電圧の実効値は、例えばd軸成分の二乗とq軸成分の二乗との和の平方根を算出することにより求められる。
系統電圧の実効値は、演算器55に入力され、系統電圧出力回路56からの目標値としての系統電圧値との差分が演算される。実効値算出回路54からの系統電圧の実効値と、系統電圧出力回路56からの目標値との差分は、PI制御回路57においてPI制御され、演算器43において補償電流抽出回路40からのq軸出力との差分が演算される。これにより、系統電圧が目標値に一致するように制御される。
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、信号抽出装置1における各回路の構成は、各回路の機能を逸脱しない範囲で任意の構成にすることができる。
本願発明に係る信号抽出装置の構成を示す図である。 基本周波数成分の抽出方法を説明するための図である。 基本周波数変換回路の構成を示す図である。 信号抽出装置における三相交流信号のシミュレーション入力波形を示す図である。 信号抽出装置におけるシミュレーション出力波形を示す図である。 第1ないし第4ローパスフィルタの内部構成を示す図である。 ローパスフィルタ(大)及びローパスフィルタ(小)のデータ領域におけるデータの遷移状態及びそれにともなう移動平均値を示した図である。 ローパスフィルタ(大)及びローパスフィルタ(小)の動作を示すフローチャートである。 ローパスフィルタ(小)の移動平均値をローパスフィルタ(大)の移動平均値に置き換えるときのq軸出力のシミュレーション結果を示す図である。 本願発明に係る信号抽出装置が無効電力補償装置に適用された場合の電力変換システムの構成を示す図である。 本願発明に係る信号抽出装置が無効電力補償装置に適用された場合の電力変換システムの他の構成を示す図である。 従来の無効電力補償装置の構成を示した図である。
符号の説明
1 信号抽出装置
2 基本周波数回転座標変換回路
3 n次高調波正相分生成回路
4 m次高調波逆相分生成回路
5 相殺回路
5 フィルタ部
6 三相/二相変換部
7 dq変換部
11 n次高調波正相分回転座標変換回路
12 第1ローパスフィルタ
13 第2ローパスフィルタ
14 n次正相分副変換回路
15 m次高調波逆相分回転座標変換回路
16 第3ローパスフィルタ
17 第4ローパスフィルタ
18 m次逆相分副変換回路
19 第1演算回路
20 第2演算回路
21 第3演算回路
22 第4演算回路
23 ローパスフィルタ(大)
24 ローパスフィルタ(小)
25 変動検出部
31 系統電源
32 配電系統
33 無効電力補償装置
36 インバータ
38 負荷電流抽出回路
40 補償電流抽出回路
42 PLL回路
44 I制御回路
45 逆dq変換回路
47 直流電圧出力回路
49 PI制御回路
52 PWM回路

Claims (7)

  1. 基本周波数に所定次数の高調波が重畳された三相交流信号から当該基本周波数を抽出するための信号抽出装置であって、
    前記三相交流信号を前記基本周波数と同一の回転速度で回転する第1の直交座標系の二相信号に変換する第1の三相/二相変換演算処理により、前記三相交流信号を前記第1の直交座標系の二相信号に変換する第1の三相/二相変換手段と、
    所定の演算処理により、前記三相交流信号から、前記第1の三相/二相変換手段によって前記第1の直交座標系の二相信号に変換された前記所定次数の高調波と同一の二相信号を生成する高調波生成手段と、
    前記第1の三相/二相変換手段から出力される二相信号と前記高調波生成手段から出力される二相信号との差分を演算することにより、前記第1の三相/二相変換手段の出力に含まれる前記所定次数の高調波を相殺する高調波相殺手段と、
    を備えることを特徴とする信号抽出装置。
  2. 前記高調波生成手段は、
    前記三相交流信号を前記所定次数の高調波と同一の回転速度で回転する第2の直交座標系の二相信号に変換する第2の三相/二相変換演算処理により、前記三相交流信号を前記第2の直交座標系の二相信号に変換する第2の三相/二相変換手段と、
    前記第2の三相/二相変換手段により変換された前記第2の直交座標系の二相信号に含まれる交流信号を除去するフィルタ手段と、
    前記第1の直交座標系に対する前記第2の直交座標系の相対的な回転速度で前記第2の直交座標系を回転させる演算処理により、前記フィルタ手段から出力される前記第2の直交座標系の二相信号を前記第1の直交座標系の二相信号に変換する座標変換手段と、
    によって構成されている、請求項1に記載の信号抽出装置。
  3. 前記高調波生成手段は、
    少なくとも前記基本周波数の三相交流信号の回転方向と同一方向に回転する7次の高調波の正相成分、または前記基本周波数の三相交流信号の回転方向と逆方向に回転する前記基本周波数及び5次の高調波の逆相分の二相信号を生成する、請求項1または2に記載の信号抽出装置。
  4. 前記フィルタ手段は、
    前記基本周波数の所定の応答時定数を有する第1のローパスフィルタで構成されている、請求項2または3に記載の信号抽出装置。
  5. 前記フィルタ手段は、
    前記第1のローパスフィルタに並列に接続された、前記第1のローパスフィルタの応答時定数よりも短い応答時定数を有する第2のローパスフィルタと、
    前記第2のローパスフィルタの出力値が一定値になってその一定値が所定の時間以上継続していることを検出する検出手段と、
    前記検出手段により前記一定値が所定の時間以上継続したことが検出されると、前記第1のローパスフィルタの出力値を前記第2のローパスフィルタの出力値に変更する出力変更手段と、
    を更に備える、請求項4に記載の信号抽出装置。
  6. 交流電源と電力系統との間に設けられ、前記交流電源から供給される交流電力の力率を改善するために前記電力系統に流れる負荷電流に対して補償電流を供給する無効電力補償装置であって、
    前記負荷電流を検出する負荷電流検出回路と、
    前記補償電流を検出する補償電流検出回路と、を備え、
    前記負荷電流検出回路及び前記補償電流検出回路には、請求項1ないし5のいずれかに記載の信号抽出装置が用いられていることを特徴とする無効電力補償装置。
  7. 交流電源と電力系統との間に設けられ、系統電圧を安定化させるために前記電力系統に対して補償電流を供給する無効電力補償装置であって、
    前記系統電圧を検出する系統電圧検出回路と、
    前記補償電流を検出する補償電流検出回路と、を備え、
    前記系統電圧検出回路及び前記補償電流検出回路には、請求項1ないし5のいずれかに記載の信号抽出装置が用いられていることを特徴とする無効電力補償装置。
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