JP2009035447A - セラミックス粉体及びその焼結体とそれを利用した固体酸化物型燃料電池用空気極 - Google Patents

セラミックス粉体及びその焼結体とそれを利用した固体酸化物型燃料電池用空気極 Download PDF

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Abstract

【課題】 固体酸化物型燃料電池に用いて好適な空気極を作製するためのセラミックス粉体及びその焼結体を得る。
【解決手段】組成式(L1−xAE1−y(Fe1−z)O3+δで表され、Lはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及び希土類元素からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、AEはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)の群からなる一種又は二種の元素であり、Mはマグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、0<x<0.5、0<y≦0.04、0≦z<1であるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とするセラミックス粉体やその焼結体により空気極を形成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、セラミックス粉体及びその焼結体とそれを利用した固体酸化物型燃料電池用空気極に関する。さらに詳述すると、本発明は、固体酸化物型燃料電池に用いて好適な空気極を作製するためのセラミックス粉体及びその焼結体に関する。
化学エネルギーを電気化学的な反応により電気エネルギーに変換する装置として固体酸化物型燃料電池が知られている。固体酸化物型燃料電池の構造は、平板型と円筒型の2種類に大別できる。平板型固体酸化物型燃料電池は、図16に示すように平板状の緻密な固体電解質を多孔質である空気極101と燃料極103とで挟持した単電池をガス流路となるスペーサとセパレータ104とを利用して積層したものであり、燃料極103に燃料ガスを、空気極101に空気を供給することにより発電を行う。円筒型固体酸化物型燃料電池は、図17に示すように平板型と同様の材料構成の単電池が円筒状となり、インターコネクタ105を介して束ねられることによりモジュールが構成されている。いずれの構造においても、高い発電効率を目指す場合には、導電率の高い空気極若しくは燃料極を基板とし、導電率の低い緻密な電解質薄膜を基板上に形成する必要がある。特に、400℃〜600℃の中温領域で作動する固体酸化物型燃料電池(以下、IT−SOFCと呼ぶ)を考えた場合には、電極活性の優れたペロブスカイト酸化物である、例えばLa1−xSrCo1−yFeのようなランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物により空気極を作製するのが好ましいと考えられている。
例えば、特許文献1には、La1−xSrCo1−yFeを空気極として採用した固体酸化物型燃料電池が開示されている。
特開2004−273143
しかしながら、固体酸化物型燃料電池の発電効率の向上に際し、現状よりも電極活性の高い空気極材料が求められている。
そこで、本発明は、固体酸化物型燃料電池に用いて好適な空気極を作製するためのセラミックス粉体及びその焼結体を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者等は、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物の組成について種々検討した。その結果、ペロブスカイト酸化物の結晶構造が単相となる組成範囲を知見し、さらに、その組成範囲においては、熱収縮率が定比組成の場合と比較して高まることを知見し、本願発明に至った。
かかる知見に基づく請求項1に記載のセラミックス粉体は、組成式(L1−xAE1−y(Fe1−z)O3+δで表され、Lはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及び希土類元素からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、AEはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)の群からなる一種又は二種の元素であり、Mはマグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、0<x<0.5、0<y≦0.04、0≦z<1であるランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を主成分とするものである。
また、請求項2に記載のセラミックス粉体は、組成式(La1−xAE1−y(Fe1−z)O3+δで表され、AEはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)の群からなる一種又は二種の元素であり、Mはマグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、0<x<0.5、0<y≦0.04、0≦z<1であるランタンフェライト系ペロブスカイト型酸化物を主成分とするものである。
ペロブスカイト型酸化物は、ABOで表される。ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物の場合、AサイトにはLとAEが配置され、BサイトにはFeとMが配置されている。そして、Aサイトを上記範囲で欠損させても、このペロブスカイト酸化物の結晶構造は単相となる。したがって、スピネル(例えば、Fe、Co)等の不純物が析出することによる電極活性の低下が引き起こされない。また、0<y≦0.04の範囲では、定比組成(y=0)のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物と比較して熱収縮率が高まる。
尚、本明細書において組成式中に記載されている「δ」は、組成や温度等で種々変化する酸素量であり、規定することに意味の無い数値である。
次に、本発明のセラミックス粉体は、請求項1または2に記載のセラミックス粉体に、固体酸化物型燃料電池の電解質材料が50体積%未満の範囲で添加されているものである。
したがって、このセラミックス粉体により固体酸化物型燃料電池の空気極を構成することで、三相界面、即ち、空気極、電解質及び空気の接触面積を増大させることができる。したがって、反応場を増大させて発電効率を高めることができる。
次に、請求項4に記載の焼結体は、請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス粉体により形成されている。
さらに、請求項5に記載の固体酸化物型燃料電池用空気極は、請求項4に記載の焼結体により形成されている。
請求項1及び2に記載のセラミックス粉体によれば、主成分であるペロブスカイト酸化物の結晶構造は単相となるので、スピネル(例えば、Fe、Co)等の不純物が析出することによる電極活性の低下が引き起こされない。したがって、長期に亘って安定した電極活性を保持することができる。しかも、0<y≦0.04の範囲では、定比組成(y=0)のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物と比較して熱収縮率が高まることから、焼成した際に、定比組成のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体よりも密度が高まり易い。したがって、定比組成のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体と同じ温度で焼成することで、定比組成のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物よりも密度を向上させて導電率の向上を図ることができる。また、定比組成のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体よりも低い温度で焼成しても定比組成のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体と同等の密度が得られ、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物中のコバルトが電解質中に拡散する現象を抑制することができる。したがって、セル電圧の低下を防ぐとともに、空気極の作製コストも低減できる。
請求項3に記載のセラミックス粉体によれば、請求項1及び2に記載のセラミックス粉体の効果に加えて、三相界面、即ち、空気極、電解質及び空気の接触面積を増大させることができる。したがって、固体酸化物型燃料電池の空気極にこのセラミックス粉体を用いることにより、反応場を増大させて発電効率を高めることができる。
請求項4に記載の焼結体によれば、この焼結体は、請求項1〜3に記載のセラミックス粉体により形成されているので、固体酸化物型燃料電池の空気極に用いて好適な焼結体を提供することができる。
請求項5に記載の固体酸化物型燃料電池空気極によれば、空気極が本発明の焼結体により構成されているので、発電効率の高い固体酸化物型燃料電池を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明のセラミックス粉体は、組成式(L1−xAE1−y(Fe1−z)O3+δで表され、Lはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及び希土類元素からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、AEはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)の群からなる一種又は二種の元素であり、Mはマグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、0<x<0.5、0<y≦0.04、0≦z<1であるランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を主成分としている。
ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物は、ABOで表されるペロブスカイト型酸化物である。代表的な組成の一例として、La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.23+δが知られており、この場合、AサイトにはLaとSrが、BサイトにはFeとCoが配されている。AサイトはLaの代わりに、スカンジウム(Sc)やイットリウム(Y)を含む他の希土類元素(Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)により部分置換でき、Srの代わりに、Caで部分置換できることが知られている。BサイトはCoの代わりに、イオン半径がCoに近い遷移金属元素であるMg、Sc、Ti、V、Cr、Niにより部分置換できることが知られている。そして、このランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物は、0<y≦0.04の範囲ではBサイト過剰組成の不定比ペロブスカイト酸化物となるにもかかわらず、その結晶構造が単相となる。したがって、0<y≦0.04の範囲内では、スピネル(Fe,Co)等の析出が起こらず、空気極として用いた場合にその電極活性が十分に維持される。
Aサイト中のLとAEの組成比については、0<x<0.5であることが好ましく、より好ましくは0.1≦x≦0.4、さらに好ましくは0.2≦x≦0.3である。x=0、x≧0.5とした場合には触媒活性及び導電率が低下する。
Bサイト中のFeとMの組成比については、0≦z<1と幅を持たせているが、例えば、La1−xSrFeOは熱膨張率が外の部材と一致しやすいのに対し、La1−xSrMOは触媒活性や導電率が高い。つまり、zが1に近づけば熱膨張率が外の部材と一致し易くなり、zが0に近づけば触媒活性や導電率が高まる。したがって、必要とする電極特性との兼ね合いによりzの値を決定すればよい。
ここで、AサイトとBサイトの組成比を決定するyは、0<y≦0.04の範囲でそのペロブスカイト型酸化物の結晶構造が単相となり得る。したがって、スピネル(Fe,Co)等の析出が起こらず、空気極としての電極活性が十分に維持される。
但し、xの値とyの値が大きくなるにつれて、ペロブスカイト型酸化物が単相となるzの範囲が狭まる場合がある。(La0.8Sr0.21−y(Co1−zFe)O3+δ(x=0.2)を例に挙げ、単相となる範囲を図3に基づいて説明すると、y=0の場合には、0≦z<1.0の範囲で単相となるが、yの値が大きくなるにつれて、単相となる領域が減少し、y=0.02では、0.1<z≦0.9の範囲で、y=0.04では、0.2<z<0.9の範囲で単相となる。
次に、(La0.6Sr0.41−y(Co1−zFe)O3+δ(x=0.4)を例に挙げ、単相となる範囲を図4に基づいて説明すると、y=0の場合には、0≦z<1.0の範囲で単相となるが、yの値が大きくなるにつれて、単相となる領域が減少し、y=0.02では、0.1<z<0.9の範囲で、y=0.04では、0.3<z<0.8の範囲で単相となる。
したがって、イオン半径がCoに近い遷移金属元素であるMg、Sc、Ti、V、Cr、Niにより部分置換した場合にも、同様の傾向が見られる。
ここで、0<y≦0.04とすることで、このランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体により形成された成形体の熱収縮率を高める効果がある。この効果は、0.01≦y≦0.03とすることでより高まり、y=0.02とすることでさらに高まる。
つまり、ペロブスカイト酸化物が結晶構造をとり得る範囲と、熱収縮率の大きさを勘案した場合、0<y≦0.04とすることが好ましく、0.01≦y≦0.03とすることがより好ましく、y=0.02とすることが最も好ましいといえる。
したがって、上記組成を有するランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物によれば、定比(y=0)のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物と同じ温度(900℃〜1200℃)で焼成した場合、定比(y=0)のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物と比較して、焼結性が高まる。したがって、空気極に必要とされる導電性を高めやすい。換言すれば、定比(y=0)のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物よりも低温で焼成しても、焼結性を確保できるので、空気極に必要とされる導電性をより低コストに得ることが可能となる。
ここで、上記組成式で表されるランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物は、上記組成式を構成する元素を含む原料により合成される。即ち、Lを含む原料、AEを含む原料、Feを含む原料、Mを含む原料を出発原料とする。出発原料の形態としては、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、或いは構成元素そのもの等が挙げられるが、これらに限られるものではなく、上記組成式で表されるランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を生成し得る原料であれば用いることができる。
出発原料は上記組成式の組成比となる比で混合する。混合は、例えばエタノール等の有機溶媒を用いて湿式混合により行う。湿式混合後は乾燥して溶媒を揮発させる。次に、空気中で仮焼する。仮焼の条件としては、例えば800〜1200℃の温度で、5〜20時間程度行えばよいが、この条件に限られるものではない。この一連の工程を一度行えば目的の試料を合成できるが、合成が十分に行えない場合には、この一連の工程を数回繰り返してもよい。仮焼後の試料は、ボールミル等を用いて所望の粒径に粉砕する。尚、ここで挙げた合成方法は一つの例であり、この合成方法に限定されない。
試料の粒径や比表面積は、例えば、共沈法やクエン酸法等の各種液相方法、ボールミル等による粉砕の方法や処理時間、合成温度・時間により制御することができるが、これらの方法には限られない。
ここで、上記のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物から形成されたセラミックス粉体に、固体酸化物型燃料電池の電解質材料を50体積%未満の割合で添加したセラミックス粉体を用いることもできる。この場合には、三相界面、即ち、空気極、電解質及び空気の接触面積を増大させることができる。したがって、反応場を増大させて発電効率を高めることができる。
尚、電解質材料の添加量を50体積%以上とすると、空気極としての電極特性の低下が引き起こされる虞があるので、電解質材料の添加量は50体積%未満とすることが好ましい。
ここで、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物から形成されたセラミックス粉体に添加される電解質材料の一例として、セリウム系酸化物固溶体の粉体を添加した場合について説明する。尚、電解質材料はセリウム系酸化物固溶体の粉体に限られるものではなく、固体酸化物型燃料電池に用いる電解質材料と同じものあるいは性質が類似するものを適宜用いることができる。
セリウム系酸化物固溶体は、組成式Ce1−wLn2+δで表され、Lnはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及び希土類元素(但し、Ceは除く)からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、0<w≦0.4である。
このセリウム酸化物の代表的な組成の一例として、Ce0.9Gd0.11.95が知られている。そして、セリウム(Ce)とガドリニウム(Gd)は希土類元素であり、Gdの代わりに、スカンジウム(Sc)やイットリウム(Y)を含む他の希土類元素(La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)により部分置換できることが知られている。
部分置換範囲wは、0<w<0.5であれば、酸化物イオン導電性を確保できるが、0<w≦0.4とすることが好ましく、0<w≦0.3とすることがより好ましい。部分置換する前のCeOの結晶構造は、ホタル石形構造である。希土類元素でこのホタル石形構造をとるのは、セリウム系酸化物固溶体だけであり、その他の希土類元素は、A−希土構造、B−希土構造、C−希土構造をとる。したがって、wが0.5以上になると、ホタル石形構造をとらなくなる可能性があり、ホタル石形構造の特徴である酸化物イオン導電性が喪失してしまう。そのため、結晶系が確実にホタル石形構造をとるwが0.4以下とすることが好ましい。
上記組成式で表されるセリウム系酸化物固溶体は、上記組成式を構成する元素を含む原料により合成される。即ち、Ceを含む原料、Lnを含む原料を出発原料とする。出発原料の形態としては、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、或いは構成元素そのもの等が挙げられるが、これらに限られるものではなく、上記組成式で表されるセリウム系酸化物固溶体を生成し得る原料であれば用いることができる。
出発原料は上記組成式の組成比となる比で混合する。混合は、例えばエタノール等の有機溶媒を用いて湿式混合により行う。湿式混合後は乾燥して溶媒を揮発させる。次に、空気中で仮焼する。仮焼の条件としては、例えば700〜1200℃の温度で、5〜20時間程度行えばよいが、この条件に限られるものではない。この一連の工程を一度行えば目的の試料を合成できるが、合成が十分に行えない場合には、この一連の工程を数回繰り返してもよい。仮焼後の試料は、ボールミル等を用いて所望の粒径に粉砕する。尚、ここで挙げた合成方法は一つの例であり、この合成方法に限定されない。
試料の粒径や比表面積は、例えば、共沈法やクエン酸法等の各種液相方法、ボールミル等による粉砕の方法や処理時間、合成温度・時間により制御することができるが、所望の比表面積に制御できるのであれば、これらの方法には限られない。
ここで、セリウム系酸化物固溶体の導電率はランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物と比較して3桁程度低いため、添加量を50体積%以上とすると、空気極としての電極特性の低下が引き起こされる。したがって、添加量は50体積%未満とすることが好ましい。また、三相界面の増大と、電解質層の熱収縮率に近づけて共焼結し易くする観点からは、添加量を20体積%超とすることが好ましい。
上述のセラミックス粉体によれば、固体酸化物型燃料電池に用いて好適な空気極を形成することができる。以下に、その一実施形態として、空気極を基材として、電解質材料(セリウム系酸化物固溶体)をその表面に湿式法により形成し、共焼結する場合について図18及び図19に基づいて説明する。
図19に示すように、焼成した多孔質電極を基材50として、その基板上に電解質材料をコーティングして電解質層51を形成し、基材50と電解質層51とを同時に焼成すると、基材50は膨脹し、電解質層51は収縮挙動を示す。そのため、基材50と電解質層51にかかる応力の方向が異なることに起因して、強度の弱い電解質層51にクラック52が発生することになる。これを防ぐためには、未焼成の基材と電解質層とを同時に焼成する共焼結技術が有効である。
図18に示す空気極支持型の円筒状の中温域作動固体酸化物型燃料電池(以下、IT−SOFCと呼ぶ)用単セルを、共焼結技術を用いて作製するに際し、空気極管3と電解質層2の熱収縮率を近づけて、クラックを発生させないようにすることが重要である。上述したように、0<y≦0.04とした本発明のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物の粉体により形成された成形体は、熱収縮率が定比の場合より高まる。この効果は、0.01≦y≦0.03とすることでより高まり、y=0.02とすることでさらに高まる。さらに、以下に説明する条件により、より好適に共焼結を行うことができる。
空気極管3は、本発明のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物とセリウム系酸化物固溶体とバインダーとを混合して作製される。ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物の粉体の比表面積(S)をS>4m/gとすることにより、このランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物により形成された成形体の熱収縮率をセリウム系酸化物固溶体から形成された電解質層2の熱収縮率に近づけることができる。S≦4m/gの範囲では、熱収縮率が十分に高まらないため、電解質層2の熱収縮率に近づけることができず、空気極管3と電解質層2とを共焼結した際に電解質層2にクラックが発生する虞がある。
また、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体の比表面積(S)の上限値については、S≦13m/gであれば、問題なく使用できた。ここで、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体がペロブスカイト構造を有する複合酸化物であるため、結晶構造の形成に際し加熱する必要がある。したがって、比表面積が13m/gを超えるランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体は入手が困難であり、上限値を規定することが難しい。しかしながら、電解質層2の熱収縮率と近く、且つ空気極管3と固体電解質層2とを共焼結した際に電解質層2にクラックが発生したり、電解質層2が空気極管3から剥離することのない比表面積を有するランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体であれば、比表面積が13m/gを超えるものであっても使用することも可能である。
ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体に混合されるセリウム系酸化物固溶体粉体(以下、空気極用CLO粉体と呼ぶ)は、電解質層2として使用する電解質材料粉体であるセリウム系酸化物固溶体粉体(以下、電解質用CLO粉体と呼ぶ)と同じ組成を有するものである。即ち、空気極用CLO粉体は組成式Ce1−wLn2+δで表され、Lnはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及び希土類元素(但し、Ceは除く)からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、0<w≦0.4である。但し、比表面積の範囲を電解質用CLO粉体と異にし、比表面積(S)をS>30m/gとするものである。そして、電解質用CLO粉体の比表面積(S)は10m/g超〜40m/g未満としている。
ここで、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体に対する空気極用CLO粉体の混合割合αは、α≦20体積%の範囲では、熱収縮率が十分に高まらないため、電解質層2の熱収縮率に近づけることができず、空気極管3と電解質層2とを共焼結した際に電解質層2にクラックが発生する虞がある。また、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物はセリウム系酸化物固溶体と反応することは無いが、セリウム系酸化物固溶体の導電率はランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物と比較して3桁程度低いため、α≧50体積%の範囲では、空気極としての電極特性の低下が引き起こされる。したがって、混合割合αは20<α<50体積%とすることが好ましく、より好ましくは25<α<45体積%、さらに好ましくは30<α<40体積%である。尚、混合割合αは以下に示す数式1により計算される値である。
[数式1]
(混合割合α(体積%))=(空気極用CLO粉体の体積)/((空気極用CLO粉体の体積)+(ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体の体積))×100
また、空気極用CLO粉体の比表面積は、電解質用CLO粉体の比表面積よりも大きくすることが好ましい。この場合には、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体と空気極用CLO粉体との混合粉体を成形して得られる空気極管3の熱収縮率を電解質層2の熱収縮率に近づけ易くなる。本発明者等の実験によると、電解質用CLO粉体の比表面積が30m/gの場合、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物粉体(比表面積4m/g)をボールミル処理した粉体に対して空気極用CLO粉体の比表面積を40m/gとすることが好ましいことが確認されている。したがって、空気極用CLO粉体は、電解質用CLO粉体よりも大きい比表面積、特に電解質用CLO粉体よりも比表面積を10m/g程度大きくすることが好ましい。そして、30<S<50m/gとすることが好ましく、40≦S<50m/gとすることがさらに好ましい。
ここで、空気極管3は、多孔質性であることが不可欠である。したがって、バインダーと造孔剤を混合して成形することにより作製される。ここで、空気極管3は多孔性であることが不可欠である。バインダーの混合のみで所望の多孔性を確保しようとすると、押し出し用の粘度が柔らかくなりすぎて、押し出しの際の高い精度を確保できなくなるため、粘度の粘性に影響せず孔の形成を促進する造孔剤を混合する。また、溶媒の水系、非水系の選択、押し出す管の大きさによってもバインダーの添加量は大きく影響する。したがって、バインダーの添加重量はこれらの因子を考慮し、決定する必要があるが、一般的に、2mmφのチューブを押し出す場合、バインダーは3〜15重量%混合することが好ましい。3重量%以下では押し出す粘度が固すぎて押し出すことができず、15重量%以上では押し出す粘度が柔らかすぎて変形してしまう。押し出す圧力に関しては、押し出しチューブの大きさによって大きく依存するが、2mmφのチューブの場合、セラミックス粉体とバインダーの混合物を、200kgf/cm程度で加圧成形することにより空気極管3が得られる。この場合、空気極管3の厚みは例えば0.3mm程度である。尚、空気極管3の厚みは、空気極管の直径にも大きく依存するが、例えば2mm付近直径をもつ空気極管の場合、300μm〜800μmとすることが好ましい。空気極管3の厚みを300μm未満とすると、機械強度不足のため基材として十分に機能せず、また、電流が流れる部位の電気抵抗が高くなるため集電損失を十分に低減することができない虞がある。空気極管3の厚みを800μm超とすると、ガス流路も狭くなりガス拡散性が著しく劣る。
水系バインダーとしては、エチルセルロースなどのセルロースを用いることができる。本発明者等の実験によれば、エチルセルロースを混合することにより、空気極管3の熱収縮率にほとんど影響を与えることなく、さらに所望の気孔率も確保できることが確認されている。したがって、バインダーを混合することによる熱収縮率への影響は考慮する必要が無い。尚、バインダーはセルロースに限られるものではなく、セルロースと同様の効果を得られる物質を適宜用いることができ、例えばエマルジョン樹脂なども用いることができる。
空気極の多孔性はバインダーの添加量により調整することができるが、量を多くすると押し出し時に成型体が変形してしまう。そのため、多孔性をさらに高める為に、グラファイトやメタクリル樹脂(PMMA)等の有機物を造孔剤として混合してもよい。ただし、造孔剤を多く混合すると焼結体が脆くなってしまうため、造孔剤の添加重量はこれらの因子を考慮し、決定する必要がある。本発明者等の実験によれば、グラファイトを混合することにより、空気極管3の熱収縮率にほとんど影響を与えることなく、気孔率を高めることができることが確認されている。したがって、グラファイトを混合することによる熱収縮率への影響は考慮する必要が無い。グラファイトの混合量は20重量%未満とすることが好ましく、10重量%以下とすることがさらに好ましい。20重量%以上では焼結体が脆くなる。尚、造孔剤はグラファイトやメタクリル樹脂(PMMA)に限られるものではなく、これらと同様の効果を得られる物質を適宜用いることができる。
電解質層2は、固体酸化物型燃料電池の固体電解質層として機能し、空気極用CLO粉体と同様の組成を有するものを湿式法により空気極基材の外側表面にコーティングして形成する。比表面積(S)は10<S<40m/gとすることが好ましく、より好ましくは20≦S<40m/g、さらに好ましくは30≦S<40m/g、最も好ましくはS=30m/gである。粉体の比表面積(S)をS>10m/gとすることで、当該粉体から形成された電解質層2の相対密度(緻密性)の十分に高めてIT−SOFCに求められる電解質性能を満たすことができる。S≦10m/gの場合には、1200℃で焼成しても相対密度が十分に高まらない。その反面、S≧40m/gの場合には、1100℃程度で相対密度が十分に高まるものの、熱収縮率が高まり過ぎるため、空気極管3との共焼結が難しくなる。尚、S≧30m/gとすれば、1200℃で少なくとも5時間焼成することで92%以上の相対密度を確実に確保でき、好ましい。
湿式法としては、スラリーコーティング法が挙げられる。他にも、スプレー法、ディッピング法を用いることができる。電解質層2の厚みは例えば10〜30μmとすることが好ましい。30μmを超えると、IT−SOFC用単セルとしての性能を確保し難くなる。また、10μm未満とすると、電解質層2に電子伝導性が発現し、本来、外部回路を通ってエネルギーとして用いられるはずの電子が電解質層2の中を通過し、熱エネルギーとして放出されてしまう。その結果、IT−SOFC用単セルとしての性能を確保し難くなる。
次に、空気極管3と電解質層2を共焼結する。空気極は、焼成温度を1300℃とすると気孔率が10%程度になるため、空気極としての性能を確保できない。したがって、焼成温度を1300℃よりも低い温度とする必要がある。焼成温度を1200℃、焼成時間を10時間とした場合には30%の気孔率を確保できる。また、電解質層2を形成しているセリウム酸化物粉体は、焼成温度を1200℃として5時間以上焼成することで92%の相対密度を確保できる。したがって、共焼結する際の温度を1200℃、焼成時間を5〜10時間とすれば、焼成後の空気極管3の気孔率を30%以上、電解質層2の相対密度を92%以上とすることができる。尚、焼成後の空気極管3の気孔率が30%以上、電解質層2の相対密度が92%となるのであればこの焼成温度及び焼成時間に限定されるものではない。例えば、焼成温度xを1100℃<x<1300℃、好ましくは1150℃<x<1250℃の範囲として、5〜10時間焼成するようにするとよい。
また、共焼結時の昇温速度は、電解質層2の熱収縮に空気極管3の熱収縮が追随して電解質層2にクラックが発生しない速度であればよい。一般的には、0.5〜2℃/minであるが、この昇温速度に限定されるものではなく、空気極管3と電解質層2の熱収縮率がかなり近い値であり、且つ温度分布の存在しない電気炉などを用いればさらに速い昇温速度での共焼結が可能である。
次に、電解質層2の外面に燃料極4を塗布焼き付けする。燃料極4の材料としては、空気極管3の気孔率を低下させない焼き付け温度、例えば1200℃以下で焼き付け可能な材料を適宜選択できる。例えば、クエン酸法や共沈法で作製された焼き付け温度が低い酸化ニッケル−セリウム系酸化物の混合物を用いることができるが、この材料に限定されない。また、燃料極4は溶射法や電気化学的蒸着などの物理蒸着等を採用するようにしてもよいが、これらの方法には限定されない。尚、燃料極層4の厚みは例えば5〜50μmとすることが好ましい。5μm未満とすると、燃料極層4として要求される導電性の確保が難しくなる。また、50μm超とすると、燃料極層4が酸化・還元される際の体積変化により、燃料極層4が壊れやすくなる。このように、空気極を基材とすることで、燃料極を基材とすることなくその厚みを薄くすることができ、酸化・還元される際の体積変化により、燃料極層が破壊されるのを防止できるという利点を有する。しかも、酸化ニッケル−セリウム系酸化物の混合物の燃料極層は上述の空気極基材よりも導電率が高く、その厚みを5〜50μmとすれば集電損失を十分に防ぐことができる。
以上の工程により、空気極支持型のIT−SOFC用の単セルを作製することができる。
次に、IT−SOFCの形状及びモジュール構造について、図20〜図22に基づいて説明する。
図20に示す空気極支持形構造の円筒状IT−SOFC用単セルは、比較的大きい空気極円筒管への適用が考えられ、単セルにインターコネクタを有しているケースである。単セルが大きい場合、インターコネクタを単セルに設けることが容易となる。このIT−SOFC用単セル1は、円筒型の空気極管3と電解質層2と燃料極層4とにより同心状に形成されており、電解質層2と燃料極層4とを分断するように空気極管3上に形成されたインターコネクタ5によって空気極管3の電流が取り出せるように設けられている。インターコネクタ5と燃料極層4との間には電解質層2が露出しており、当該露出部分においてインターコネクタ5と燃料極4とは電気的に絶縁されている。上側の単セル1の燃料極層4と下側の単セル1のインターコネクタ5とは、集電体6を介して直列に接続され、左右の単セル1の燃料極層4同士は、集電体6を介して並列に接続される。さらに、上側の単セル1のインターコネクタ5と上部集電板7、下側の単セル1燃料極層4と下部集電板8とは、それぞれ集電体6を介して電気的に接続される。これにより、上部集電板7にはセル全体のプラス出力電圧が、下部集電板8にはセル全体のマイナス出力電圧が出力される。
この円筒型IT−SOFC用単セルにおいては、空気が空気極管3の内側を流れ、燃料極層4の外側には燃料(水素、炭化水素等)が流れる。燃料極層4の外側を流れる燃料には酸素が含まれていないので、インターコネクタ5が設けられているこの単セルを電気的に直列・並列に接続する金属材料からなる集電体6が酸化することがない。したがって、集電体6として酸化しやすい材料を用いることが可能となり、材料の選択の幅が広がる。また、集電体の酸化による劣化が無くなるので、長期に亘って安定に集電することができる。さらに、この場合、空気極管3の厚みを厚くすることが可能になるので、空気極管3に内部電気抵抗が発生するのを防いで、集電ロスを少なくすることが可能となる。また、単セルやモジュールを格納する容器に金属を用いることが容易となる。
インターコネクタ5は、例えば、ランタンクロマイト系酸化物やチタン系酸化物等の酸化物系セラミックス、銀および銀合金系等の金属を、スラリーコーティング法、溶射法や電気化学蒸着法を用いて形成することができるが、これらに限定されるものではない。
ここで、比較的小さい空気極円筒管、例えば50μm〜5mmのチューブ径の円筒管の場合、単セルにインターコネクタを設けることが極めて困難になる。この場合には、図21に示すように、単セルを電気的に並列に配置して、立方体形状としたサブモジュール10を形成することが考えられる(特開2005−166470号公報参照)。
図21は、IT−SOFCサブモジュールの分解斜視図であり、図22は、IT−SOFCサブモジュールの外観斜視図である。図21に示すように、IT−SOFCサブモジュール10は、固体酸化物型燃料電池部11と、第1導電性マニホールド12と、第1シール部材13と、インターコネクタ14と、第2導電性マニホールド15と、第2シール部材16と、集電部材17とを備えている。
固体酸化物型燃料電池部11は、複数本の単セル1と、管接合電極部19とを備えている。
単セル1は、図18に示すように、空気極管3の外側表面に、薄膜状に形成された電解質層2が接合され、電解質層2の表面上にさらに燃料極層4が形成されたものである。空気極管3の一端には、電解質層2が接合されることなく空気極管3の一部がむき出し状態とされることにより、露出部3’が形成されている。この露出部3’は、空気極の外部引き出し電極として機能する。尚、燃料極層4の形成は省略して、電解質層2と管接合電極部19を直接接合するようにしてもよい。
管接合電極部19は、燃料極材料より形成された通気性のある多孔質体である。管接合電極部19の外形としては、IT−SOFCサブモジュール10を集積し易いなどの観点から、立方体形状または直方体形状に形成されることが好ましいが、特に限定されるものではなく、直方体、円柱、三角柱形状など、他の形状に形成されていても良い。
管接合電極部19は、単セル1を並列接続して集電する集電体(電気的接続部材)として機能する。
また、管接合電極部19は、複数本の単セル1を互いに長手方向に平行に配列固定し、隣り合う複数本の単セル1同士を電気的に接続する役割も有している。
また、管接合電極部19中において、単セル1は、空気極管3の一端に形成された露出部3’とこの露出部3’に隣接する電解質層2の一部とが、管接合電極部19の面19aより外側に突出されて固定され、管接合電極部19と露出部3’とが電気的に接触してショートするのを回避するようにしている。管の他端も、管接合電極部19の面19bより外側に向かって僅かに突出されて固定されている。なお、管の他端は、管接合電極部19の面19bと一致していても構わない。
第1導電性マニホールド12は、LaCrOなどの導電性セラミックス、ステンレスなどの耐熱性金属などにより内部が空洞とされた箱状に形成されており、管接合電極部19の面19b側に設けられる。なお、この第1導電性マニホールド12は、単セル1と平行な方向に列設される他のIT−SOFCサブモジュール10の第2導電性マニホールド15との間で電気的接続を担う必要があることから、導電性が要求される。
また、第1導電性マニホールド12の面12aの下方には、アルミナ、ジルコニアなどの絶縁性セラミックスなどにより形成された絶縁性の管体24が設けられ、マニホールド12内部と連通されている。この管体24は、第1導電性マニホールド12内に酸化剤ガスを供給する役割や、単セル1と垂直な方向に一定間隔離れて列設される他のIT−SOFCサブモジュール10の第2導電性マニホールド15(直列接続時)、あるいは、第1導電性マニホールド12(並列接続時)に連通接続する役割を果たす。
また、第1導電性マニホールド12の面12aに対向する面12bの下方には、接続孔25が形成され、単セル1と垂直な方向に列設される他のIT−SOFCサブモジュール10の第2導電性マニホールド15に設けられた絶縁性の管体29(直列接続時)、あるいは、第1導電性マニホールド12に設けられた絶縁性の管体24(並列接続時)を接続することができるようになっている。
また、第1導電性マニホールド12の固体酸化物型燃料電池部11側の面12cには、単セル1の開口端の位置に対応してガス孔26が形成されており、管体24から第1導電性マニホールド12内に供給された酸化剤ガスを単セル1内に供給することができるようになっている。
第1シール部材13は、マイカガラス、スピネル(MgAl)などのセラミックスなどの材料より形成されており、管接合電極部19の面19bにおける単セル1の周縁部および単セル1同士の隙間に相当する部分に設けられる。なお、第1シール部材13は、管接合電極部19の熱膨張係数に整合している必要がある。
第1シール部材13は、第1導電性マニホールド12から単セル1内に導入される酸化剤ガスが、管接合電極部19内を通らないようにシールするとともに、単セル1の空気極管3と第1導電性マニホールド12との間で導通しないようにシールする役割を果たす。
インターコネクタ14は、LaCrO、LaCoOなどの導電性セラミックス、ステンレスなどの耐熱性金属などにより形成されており、第1シール部材13の周囲に設けられている。このインターコネクタ14は、管接合電極部19の集電を行うためのものであり、管接合電極部19と第1導電性マニホールド12との間に介在される。そのため、インターコネクタ14と管接合電極部19との間にこの第1シール部材13が介在されることはない。
第2導電性マニホールド15は、上記第1導電性マニホールド12と同様に、LaCrOなどの導電性セラミックス、ステンレスなどの耐熱性金属などにより内部が空洞とされた箱状に形成されており、管接合電極部19の面19a側に設けられている。なお、この第2導電性マニホールド15は、単セル1と平行な方向に列設される他のIT−SOFCサブモジュール10の第1導電性マニホールド12との間で電気的接続を担う必要があることから、導電性が要求される。
第2導電性マニホールド15の面15bの下方には、アルミナ、ジルコニアなどの絶縁性セラミックスなどにより形成された絶縁性の管体29が設けられ、マニホールド15内部と連通されている。この管体29は、第2導電性マニホールド15内の酸化剤ガスを排出する役割や、単セル1と垂直な方向に一定間隔離れて列設される他のIT−SOFCサブモジュール10の第1導電性マニホールド12(直列接続時)、あるいは、第2導電性マニホールド15(並列接続時)に連通接続する役割を果たすものである。
また、第2導電性マニホールド12の面15bに対向する面15aには、接続孔30が形成され、単セル1と垂直な方向に列設される他のIT−SOFCサブモジュール10の第1導電性マニホールド12に設けられた絶縁性の管体24(直列接続時)、あるいは、第2導電性マニホールド15に設けられた絶縁性の管体29(並列接続時)を接続することができるようになっている。
第2導電性マニホールド15の電池部19側の面15cには、単セル1の露出部3’の位置に対応して挿通孔39が形成されており、露出部3’を第2導電性マニホールド15内に挿通することができるようになっている。
第2シール部材16は、マイカガラス、スピネル(MgAl)などのセラミックスなどの材料より形成されており、管接合電極部19の面19aにおける露出部3’以外の部分を覆うようにして設けられる。なお、第2シール部材16は、管接合電極部19の熱膨張係数に整合している必要がある。
この第2シール部材16は、第2導電性マニホールド15内の酸化剤ガスが、管接合電極部19内を通らないようにシールするとともに、管接合電極部19と第2導電性マニホールド15との間で導通しないようにシールする役割を果たす。
集電部材17は、第2導電性マニホールド15の内部に設けられるものであり、第2導電性マニホールド15の内壁面と接触して電気的に接続されるとともに、第2導電性マニホールド15内に貫通された露出部3’と接触して電気的に接続されるものである。
集電部材17を形成する具体的な材料としては、銀や白金などの貴金属メッシュなど、通気可能な形態を有する金属であって、酸化雰囲気下でも導電性が損なわれにくいものを好適に用いることができる。また、LaCrO、LaCoOなどの多孔質導電性セラミックスなどを用いても良い。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では円筒状のIT−SOFC用単セルについて説明したが、平板型のIT−SOFC用単セルに適用することも可能である。この場合にも、空気極支持型構造とできるので、空気極の厚みを厚くすることにより集電ロスを抑えて、空気極からの集電をおこない易い形態にすることが可能となる。
また、図18に示す単セルには、露出部3’を設けるようにしているが、このような構造に限定されるものではなく、管状の空気極基材3の両端部まで電解質層2の形成領域を拡張し、この電解質層2の表面全体に燃料極層2を形成して、電解質層2により空気極基材3と燃料極層4とを絶縁するようにしてもよい。
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
不定比組成においても単相のペロブスカイト型構造を示すランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物の組成範囲について、詳細に検討した。
(1)材料合成
(La1−xSr1−y(Co1−zFe)O3+δは固相反応法を用いて合成した。出発原料は酸化ランタン(La、高純度化学製、純度99.9%、1500℃、1時間仮焼)、SrCO(純度99.9%、高純度化学)、Co(純度99.9%、高純度化学)、Fe(純度99.9%、高純度化学)を用い、所定のモル数で秤量し、アルミナ製乳鉢で混合した。この混合物を40MPaで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状とし、1000℃で10時間仮焼した。
以下に、試料の組成及び秤量した出発原料の重量を示す。仮焼粉末は乳鉢により混合し、この混合物を40MPaで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状とし、さらに、1200℃で10時間仮焼した。この工程を2回繰り返した。
(I)x=0.2
(i)0≦z≦1、y=0
試料1:(La0.8Sr0.2)CoO3:La2O3,1.5g;SrCO3, 0.3398g; Co3O4, 0.9229g;
試料2:(La0.8Sr0.2)(Co0.9Fe0.1)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.8315g; Fe2O3,0.0919g;
試料3:(La0.8Sr0.2)(Co0.8Fe0.2)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.7392g; Fe2O3,0.1838g;
試料4:(La0.8Sr0.2)(Co0.7Fe0.3)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.6466g; Fe2O3,0.2757g;
試料5:(La0.8Sr0.2)(Co0.6Fe0.4)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.5543g; Fe2O3,0.3676g;
試料6:(La0.8Sr0.2)(Co0.5Fe0.5)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.4619g; Fe2O3,0.4595g;
試料7:(La0.8Sr0.2)(Co0.4Fe0.6)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.3694g; Fe2O3,0.5514g;
試料8:(La0.8Sr0.2)(Co0.3Fe0.7)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.2772g; Fe2O3,0.6433g;
試料9:(La0.8Sr0.2)(Co0.2Fe0.8)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.1849g; Fe2O3,0.7532g;
試料10:(La0.8Sr0.2)(Co0.1Fe0.9)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.0923g; Fe2O3,0.8271g;
試料11:(La0.8Sr0.2)FeO3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Fe2O3,0.9190g;
(ii)0≦z≦1、y=0.02
試料12:(La0.8Sr0.2)0.98CoO3: La2O3, 1.5g; SrCO3,0.3398g;Co3O4, 0.9416g;
試料13:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.9Fe0.1)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.8484g; Fe2O3,0.09378g;
試料14:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.8Fe0.2)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.7542g; Fe2O3,0.1876g;
試料15:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.7Fe0.3)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.6598g; Fe2O3,0.2813g;
試料16:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.6Fe0.4)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.5656g; Fe2O3,0.3751g;
試料17:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.5Fe0.5)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.4714g; Fe2O3,0.4689g;
試料18:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.4Fe0.6)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.3769g; Fe2O3,0.5627g;
試料19:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.3Fe0.7)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.2912g; Fe2O3,0.6546g;
試料20:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.2Fe0.8)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.1886g; Fe2O3,0.7502g;
試料21:(La0.8Sr0.2)0.98(Co0.1Fe0.9)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.09417g; Fe2O3,0.84398g;
試料22:(La0.8Sr0.2)0.98FeO3: La2O3, 1.5g; SrCO3,0.3398g;Fe2O3, 0.93776g;
(iii)0≦z≦1、y=0.04
試料23:(La0.8Sr0.2)0.96CoO3: La2O3, 1.5g; SrCO3,0.3398g;Co3O4, 0.96137g;
試料24:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.9Fe0.1)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.8661g; Fe2O3,0.09573g;
試料25:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.8Fe0.2)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.76996g; Fe2O3,0.19146g;
試料26:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.7Fe0.3)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.67354g; Fe2O3,0.28719g;
試料27:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.6Fe0.4)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.5774g; Fe2O3,0.38292g;
試料28:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.5Fe0.5)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.4812g; Fe2O3,0.4787g;
試料29:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.4Fe0.6)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.3848g; Fe2O3,0.5744g;
試料30:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.3Fe0.7)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.2887g; Fe2O3,0.67g;
試料31:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.2Fe0.8)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.1926g; Fe2O3,0.7658g;
試料32:(La0.8Sr0.2)0.96(Co0.1Fe0.9)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.3398g; Co3O4,0.096g; Fe2O3,0.8616g;
試料33:(La0.8Sr0.2)0.96FeO3: La2O3, 1.5g; SrCO3,0.3398g;Fe2O3, 0.9573g;
(II)x=0.4
(i)0≦z≦1、y=0
試料34:(La0.6Sr0.4)CoO3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,1.2306g;
試料35:(La0.6Sr0.4)(Co0.9Fe0.1)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,1.109g; Fe2O3,0.1225g;
試料36:(La0.6Sr0.4)(Co0.8Fe0.2)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.9856g; Fe2O3,0.2451g;
試料37:(La0.6Sr0.4)(Co0.7Fe0.3)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.8621g; Fe2O3,0.3676g;
試料38:(La0.6Sr0.4)(Co0.6Fe0.4)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.7391g; Fe2O3,0.4901g;
試料39:(La0.6Sr0.4)(Co0.5Fe0.5)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.6159g; Fe2O3,0.6127g;
試料40:(La0.6Sr0.4)(Co0.4Fe0.6)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.4926g; Fe2O3,0.7352g;
試料41:(La0.6Sr0.4)(Co0.3Fe0.7)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.3695g; Fe2O3,0.8577g;
試料42:(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.2465g; Fe2O3,0.9803g;
試料43:(La0.6Sr0.4)(Co0.1Fe0.9)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.1231g; Fe2O3,1.1028g;
試料44:(La0.6Sr0.4)FeO3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Fe2O3,1.2253g;
(ii)0≦z≦1、y=0.02
試料45:(La0.6Sr0.4)0.98CoO3: La2O3, 1.5g; SrCO3,0.9062g;Co3O4, 1.2557g;
試料46:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.9Fe0.1)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,1.1312g; Fe2O3,0.125g;
試料47:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.8Fe0.2)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,1.0056g; Fe2O3,0.25005g;
試料48:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.7Fe0.3)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.8797g; Fe2O3,0.3751g;
試料49:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.6Fe0.4)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.7542g; Fe2O3,0.5001g;
試料50:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.5Fe0.5)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.6285g; Fe2O3,0.62517g;
試料51:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.4Fe0.6)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.50264g; Fe2O3,0.7502g;
試料52:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.3Fe0.7)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.3771g; Fe2O3,0.87525g;
試料53:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.2Fe0.8)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.2515g; Fe2O3,1.0003g;
試料54:(La0.6Sr0.4)0.98(Co0.1Fe0.9)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.12557g; Fe2O3,1.1253g;
試料55:(La0.6Sr0.4)0.98FeO3: La2O3, 1.5g; SrCO3,0.9062g;Fe2O3, 1.2504g;
(iii)0≦z≦1、y=0.04
試料56:(La0.6Sr0.4)0.96CoO3: La2O3, 1.5g; SrCO3,0.9062g;Co3O4, 1.281g;
試料57:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.9Fe0.1)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,1.1548g; Fe2O3,0.1276g;
試料58:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.8Fe0.2)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O41.0266g;Fe2O3,, 0.25528g;
試料59:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.7Fe0.3)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.8981g; Fe2O3,0.3829g;
試料60:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.6Fe0.4)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.7698g; Fe2O3,0.51056g;
試料61:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.5Fe0.5)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.6416g; Fe2O3,0.6382g;
試料62:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.4Fe0.6)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.5131g; Fe2O3,0.7658g;
試料63:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.3Fe0.7)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.3849g; Fe2O3,0.8935g;
試料64:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.2Fe0.8)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.2568g; Fe2O3,1.02112g;
試料65:(La0.6Sr0.4)0.96(Co0.1Fe0.9)O3:La2O3,1.5g; SrCO3, 0.9062g; Co3O4,0.12818g; Fe2O3,1.1488g;
試料66:(La0.6Sr0.4)0.96FeO3: La2O3, 1.5g; SrCO3,0.9062g;Fe2O3, 1.2764g;
(2)試料の評価法
合成した試料は粉末X線回折(Mac Science社 M18XHF22)装置によって、二次成分が残っているか分析した。
図1に、(La0.6Sr0.41−y(Co0.2Fe0.8)O3+δ(x=0.4、z=0.8)のX線回折測定結果を示す(y=0、0.02、0.04)。y=0.02はy=0と同じピークを示しており、ペロブスカイト形構造の単相であることが確認された。一方、y=0.04に関しては、CoやFe、あるいは(Co,Fe)のスピネル形構造に起因すると考えられる小さなピーク(図中の↓部分)が観察され、x=0.4、y=0.04、z=0.8では、ペロブスカイト相とスピネル相の2相混合相であることが確認された。
図2に、(La0.6Sr0.41−y(Co0.2Fe0.8)O3+δのX線回折測定結果(y=0、0.02、0.04)から計算した格子定数(a軸)の不定比組成依存性を示す。不定比性が増加する程、格子定数も増加していることが確認された。このことから、不定比性が増加する程、結晶格子のAサイト中に空孔が形成し、結晶格子を大きくすることがわかった。また、(La0.6Sr0.41−y(Co0.2Fe0.8)O3+δの場合、0≦y<0.04が、ペロブスカイト形構造単相で安定に存在できる組成領域であることがわかった。
図3に、固相反応合成法とX線回折測定法により得られた(La0.8Sr0.21−y(Co1−zFe)O3+δ(x=0.2、0≦z≦1.0)のペロブスカイト相の単相領域(斜線部)を示す。y=0の場合には、0≦z<1.0の範囲で単相となるが、yの値が大きくなるにつれて、単相となる領域が減少し、y=0.02では、0.1<z≦0.9の範囲で、y=0.04では、0.2<z<0.9の範囲で単相となることが確認された。
この結果から以下のことが明らかとなった。即ち、x=0.2で且つy=0の場合には、0≦z<1.0で単相となり、0≦z≦0.9の範囲であればより確実に単相となる。x=0.2で且つy=0.02の場合には、0.1<z≦0.9で単相となり、0.2≦z≦0.9であればより確実に単相となる。x=0.2で且つy=0.04の場合には、0.2<z<0.9で単相となり、0.3≦z≦0.8であればより確実に単相となる。
図4に、固相反応合成法とX線回折測定法により得られた(La0.6Sr0.41−y(Co1−zFe)O3+δ(x=0.4、0≦z≦1.0)のペロブスカイト相の単相領域(斜線部)を示す。y=0の場合には、0≦z<1.0の範囲で単相となるが、yの値が大きくなるにつれて、単相となる領域が減少し、y=0.02では、0.1<z<0.9の範囲で、y=0.04では、0.3<z<0.8の範囲で単相となることが確認された。
この結果から以下のことが明らかとなった。即ち、x=0.4で且つy=0の場合には、0≦z<1.0で単相となり、0≦z≦0.9の範囲であればより確実に単相となる。x=0.4で且つy=0.02の場合には、0.1<z<0.9で単相となり、0.2≦z≦0.8であればより確実に単相となる。x=0.4で且つy=0.04の場合には、0.3<z<0.8で単相となり、0.4≦z≦0.7であればより確実に単相となる。
(実施例2)
(La0.6Sr0.41−z(Co0.2Fe0.8)O3+δ(x=0.4、z=0.8)を不定比組成(Bサイト過剰組成)としたときの熱収縮率に与える影響について検討した。
比表面積が4m/gの(La0.6Sr0.41−z(Co0.2Fe0.8)O3+δ(y=0、0.02、0.04)(セイミケミカル株式会社、クエン酸塩法により合成)にボールミル処理を行った後、エチルセルロース(ユケン工業株式会社製、YB−132A)を12重量%加え、アルミナ乳鉢で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状の試料を複数作製した。
ボールミル工程は以下の様にしておこなった。即ち、試料40gに対して200gのイットリア部分安定化ジルコニアボールを用い、エタノール100mLを加えて回転式ボールミルで湿式混合した。回転速度は200〜240回転/分とした。また、混合時間は24時間とした。
これらの試料を昇温速度200℃/時間として、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃または1200℃まで昇温した後、保持時間無しの条件で焼成炉内で室温まで冷却し、熱収縮率を測定した。結果を図5に示す。
熱収縮率は以下に説明する計算方法により得た。まず、加圧成形直後(焼成前)のペレットの直径をノギスで測定し、この値を「初期長さ」とした。次に、焼成後のペレットの直径をノギスで測定し、この値を「焼成後長さ」とした。そして、数式1により熱収縮率を計算した。
[数式1] (熱収縮率)=−100×((初期長さ)−(焼成後の長さ))/(初期の長さ)
図5に、不定比組成の(La0.6Sr0.41−z(Co0.2Fe0.8)O3+δの熱収縮率を示す。熱収縮率は、y=0.02で最大となった。この理由は、不定比組成になるとAサイト空孔や酸素空孔が形成されて、元素拡散が促進されることによるものと考えられる。一方、y=0.04のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物は2相混合物であり、空孔形成による元素拡散の促進効果があるものの、不純物である(Fe,Co)スピネルが存在することにより熱収縮率が低下していると推測される。実施例9では、x=0.2の場合、0.2<z<0.9であれば、y=0.04でも単相となることが確認されており、x=0.4の場合、0.3<z<0.8であれば、y=0.04でも単相となることが確認されていることから、この範囲のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物であれば、不純物である(Fe,Co)スピネルが存在することによる熱収縮率の低下が生じることなく、Aサイト空孔や酸素空孔が形成されて、元素拡散が促進されることによる効果によって熱収縮率が高まるものと推定される。
以上、Aサイト欠損型の0<y≦0.04のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を用いた場合には、定比(y=0)の場合よりも熱収縮率が高まることから、電解質層との共焼結をさらに好適に実施できることがわかった。そして、熱収縮率を高める効果は、0.01≦y≦0.03とすることで向上し、y=0.02とすることでさらに向上することが示唆された。
以下に、空気極支持型構造のIT−SOFC用の単セルを作製するに際し、ランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物空気極とセリウム酸化物電解質を共焼結するための好適な条件について検討を行った実施例について説明する。尚、以下の実施例では、空気極材料として定比のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を用いているが、Aサイト欠損型の0<y≦0.04のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を用いた場合には、以下に示す結果よりも熱収縮率が高まり、電解質層との共焼結においてさらに好適となる。
(実施例3)
IT−SOFC用空気極材料の代表的な組成の一例であるLa0.6Sr0.4Fe0.8Co0.23+δ(以下、LSFC−Aと呼ぶ)を各種焼成温度で焼成し、試料の気孔率について検討した。
比表面積が4m/gのLSFC−A(セイミケミカル株式会社、クエン酸塩法により合成)にエチルセルロース(ユケン工業株式会社製、YB−132A)を12重量%加え、アルミナ乳鉢で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状とした。これらの試料を昇温速度200℃/時間として、以下に示す(a)または(b)の条件で焼成した後、保持時間無しの条件で焼成炉内で室温まで冷却した。焼成処理した試料表面を走査型電子顕微鏡(日立製、S−4300SE1N)により観察し、図6に示す結果が得られた。また、焼成した試料の直径をノギスで測定し、厚さをマイクロメーターで測定して、試料の体積を計算した。次に、試料の重さを電子天秤で測定して、試料の体積との関係から、試料密度を計算した。そして、下記の数式2により計算された相対密度を用いて、以下の数式3により気孔率を計算した。尚、LSFC−Aの理論密度は6.43g/cmである。
[数式2] (相対密度)=100×(試料密度)/(理論密度)
[数式3] (気孔率)=100−(相対密度)
(a)1200℃、10時間
(b)1300℃、10時間
この結果から、(a)の焼成条件では30%の気孔率が得られ、(b)の焼成条件では10%の気孔率しか得られないことが確認された。気孔率が30%程度であれば、パーコレーション理論により気孔同士が繋がっていると考えられるので、空気極に必要なガス拡散性能を確保することが可能である。したがって、焼成条件を1200℃、10時間とすれば、空気極として確保すべき気孔率が得られることがわかった。
(実施例4)
IT−SOFC用電解質材料の代表的な組成の一例であるCe0.9Gd0.11.95(以下、CGO−10と呼ぶ)粉体の比表面積とその焼結体の相対密度との関係について検討をおこなった。
比表面積が(a)10m/g、(b)30m/g、(c)40m/gのCGO−10(セイミケミカル株式会社、クエン酸塩法により合成)を、それぞれアルミナ乳鉢で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状の試料を複数作製した。これらの試料を、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃または1200℃まで昇温して焼成処理(昇温速度200℃/時間、各温度での保持時間無し)した後、保持時間無しの条件で焼成炉内で室温まで冷却し、相対密度を測定して、図7に示す結果を得た。
相対密度は数式2により計算した。尚、CGO−10の理論密度は7.21g/cmである。
図7において、破線以上(相対密度92%以上)の領域は気体透過性の無い相対密度領域である。この領域内に存在するのは、(b)の1200℃焼結体と(c)の1100℃焼結体と1200℃焼結体であった。したがって、30m/g以上の比表面積を有するCGO−10を1200℃で焼成すれば、気体透過性の無い相対密度を有する電解質を得られることがわかった。
(実施例5)
CGO−10粉体の比表面積とその焼結体の熱収縮率との関係について検討をおこなった。
比表面積が(a)10m/g、(b)30m/g、(c)40m/gのCGO−10(セイミケミカル株式会社、クエン酸塩法により合成)を、それぞれアルミナ乳鉢で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状の試料を複数作製した。これらの試料を、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃または1200℃まで昇温して焼成処理(昇温速度200℃/時間、各温度での保持時間無し)した後、保持時間無しの条件で焼成炉内で室温まで冷却し、熱収縮率を測定して、図8に示す結果を得た。
熱収縮率は数式1により計算した。
図8に示す結果から、CGO−10の比表面積が増加するほど、熱収縮率が大きくなり、(c)40m/gのCGO−10が最も熱収縮率が大きくなることがわかった。この結果は、CGO−10の比表面積が大きくなると表面エネルギーが増大し、焼結性が高まることに起因していると考えられる。
(実施例6)
CGO−10とLSFC−Aの熱収縮率を比較検討した。
比表面積が4m/gのLSFC−A(セイミケミカル株式会社、クエン酸塩法により合成)にエチルセルロース(ユケン工業株式会社製、YB−132A)を12重量%加え、アルミナ乳鉢で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状の試料を複数作製した。この試料を、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃または1200℃まで昇温して焼成処理(昇温速度200℃/時間、各温度での保持時間無し)した後、保持時間無しの条件で焼成炉内で室温まで冷却し、熱収縮率を測定した。この結果と実施例5で得られた比表面積(b)30m/g、(c)40m/gのCGO−10の熱収縮率を図9に示す。この結果から、比表面積30m/gのCGO−10とLSFC−Aの熱収縮率が近いことがわかった。そこで、比表面積30m/gのCGO−10が、空気極との共焼結を行う電解質材料として有望と考えられたので、比表面積30m/gのCGO−10とLSFC−Aの熱収縮率をさらに近づけるべく、以下の実施例において、さらに検討を行った。
(実施例7)
LSFC−A粉末のボールミル工程の有無による熱収縮率の影響について検討した。
比表面積が4m/gのLSFC−A(セイミケミカル株式会社、クエン酸塩法により合成)40gに対して200gのイットリア部分安定化ジルコニアボールを用い、エタノール100mLを加えて回転式ボールミルで湿式混合した。回転速度は200〜240回転/分とした。また、混合時間は48時間とした。ボールミル工程を行った後のLSFC−Aにエチルセルロース(ユケン工業株式会社製、YB−132A)を12重量%加え、アルミナ乳鉢で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状とした。この試料を昇温速度200℃/時間として、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃における試料の熱収縮率を測定した。この結果と実施例6で得られたボールミル工程を行う前のLSFC−Aの熱収縮率を図10に示す。この結果から、ボールミル工程を行うことで、熱収縮率を高めることができることが確認された。
粒子には、一次粒子と二次粒子があり、粒子の最小単位は一次粒子である。ここで、一次粒子が小さいと、一次粒子単独では存在できなくなり、静電気的な力で一次粒子同士が凝集する。これが二次粒子である。そして、ボールミル工程を行うことにより、凝集していた二次粒子が解砕されると共に、粒子の比表面積が若干高まる傾向にあるため、熱収縮率が高まったと考えられる。つまり、ボールミル工程を行うことが、非常に熱収縮率を高めるための非常に有効な手段となることが明らかとなった。
(実施例8)
実施例7の条件によりボールミル工程を行った後のLSFC−AにCGO−10を添加することによる熱収縮率への影響について検討した。
実施例7と同様の方法でボールミル工程を行ったLSFC−Aに、比表面積40m/gのCGO−10を添加した。LSFC−AとCGO−10の体積比は(a)8:2、(b)7:3、(c)6:4とした。これらの試料にエチルセルロース(ユケン工業株式会社製、YB−132A)を12重量%加え、アルミナ乳鉢で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状の試料を複数作製した。この試料を、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃または1200℃まで昇温して焼成処理(昇温速度200℃/時間、各温度での保持時間無し)した後、保持時間無しの条件で焼成炉内で室温まで冷却し、試料の熱収縮率を測定した結果を図11に示す。尚、図11には実施例7で得られたボールミル工程後のLSFC−Aの熱収縮率を参照データとして掲載した。この結果から、700℃〜1100℃の温度領域において、(a)の試料以外ではCGO−10の混合により熱収縮率を低下させることが可能であることがわかった。1200℃での熱収縮率は、(b)及び(c)の試料の熱収縮率とCGO−10無添加のLSFC−Aの熱収縮率がほぼ一致した。これは、LSFC−Aの方がCGO−10より融点が低いため、LSFC−Aは、1100℃〜1200℃の温度領域で熱収縮率が粒径ではなく粒成長に支配され易くなるためだと考えられる。
次に、比表面積30m/gのCGO−10と上記(b)及び(c)の試料の熱収縮率の比較図を図12に示す。(b)及び(c)の試料は、比表面積30m/gの表面積を有するCGO−10の熱収縮率と測定した全温度領域(500℃〜1200℃)で極めて近くなることがわかった。したがって、CGO−10とLSFC−Aを、昇温途中でクラックを発生させることなく共焼結できることがわかった。
尚、空気極の電極性能保持と上記結果を考慮すると、LSFC−AとCGO−10の好ましい混合比(体積比)は、50<(LSFC−A)<80体積%、20<(CGO−10)<50体積%であることがわかった。より好ましい範囲は、60≦(LSFC−A)<80体積%、20<(CGO−10)≦40体積%、さらに好ましい範囲は、60≦(LSFC−A)≦70体積%、30≦(CGO−10)≦40体積%である。
(実施例9)
CGO−10を添加したLSCF−Aにバインダーや造孔剤を添加したときの熱収縮率と気孔率に与える影響について検討した。
実施例7と同様の方法でボールミル工程を行ったLSFC−A(セイミケミカル株式会社、クエン酸塩法により合成)と比表面積が40m/gのCGO−10(セイミケミカル株式会社、クエン酸塩法により合成)を6:4の体積比で混合し、この中に、(a)グラファイト(関東化学製)を10、30重量%になるように添加し、さらに、エチルセルロース(ユケン工業株式会社製、YB−132A)を12重量%加えて、アルミナ乳鉢中で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状とした。この試料を昇温速度200℃/時間として、1200℃、10時間焼成して試料Aを作製した。また、(b)エチルセルロース(ユケン工業株式会社製、YB−132A)のみを添加して同様の処理を行い、試料Bを作製した。これらの試料の熱収縮率と気孔率を測定し、図13を得た。
セルロースはバインダーとして用いられており、10〜12重量%の添加量が最適であることが知られている。添加量を15重量%以上とした場合、気孔率が高くなるが、粘度が低くなってしまい、押し出し成型が困難になる。一方、グラファイトは、バインダーとして機能せず、造孔剤として働く。図13の結果から、セルロースやグラファイトの添加は、気孔率に与える影響が大きいが、熱収縮率に与える影響は小さく、所望の気孔率を得やすいことがわかった。
次に、試料A及びBを走査型電子顕微鏡(日立製、S−4300SE1N)により観察し、図14を得た。この結果、グラファイトの方が細かなミクロ構造を形成することができることがわかった。また、気孔率は30%以上維持しており、1200℃で焼成した後もガス拡散性を有することが確認された。
(実施例10)
比表面積が30m/gのCGO−10を電解質材料として、実施例7と同様の方法でボールミル工程を行ったLSFC−A及び比表面積が40m/gのCGO−10を6:4の体積比で混合した粉体を空気極材料として電解質/空気極構造を形成し、これを共焼結した際の電解質層の緻密性について検討した。
空気極材料粉体は、エチルセルロース(ユケン工業株式会社製、YB−132A)を12重量%加え、アルミナ乳鉢で5分間混合した後、100kgf/cmで加圧成形して20mmφ、厚さ2mmのペレット状とした。次に、電解質材料はスラリーにして、空気極ペレットの片側表面にコーティングし、1200℃で10時間焼成した。スラリー液は以下の組成とした。即ち、電解質としてCe0.9Gd0.11.95(比表面積30m/g)30gに対し、トルエン30mL、イソプロパノール35mL、日本油脂製ノニオン1mL、バインダーとしてナカライテスク社製ポリビニルブチラル5gを用い、ボールミルにより混合した。得られた試料の断面を走査型電子顕微鏡(日立製、S−4300SE1N)により観察し、図15を得た。この結果から、電解質層には気孔も無く、極めて緻密に焼結していることが確認された。
(実施例11)
空気極基材3と電解質層2とを共焼結した後、電解質層2の表面に燃料極層4をコーティングしてこれを焼成処理した単セルの発電性能の評価を行った。
空気極材料粉体として、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8(セイミケミカル社製13.648g(比表面積9m/g))とCGO(セイミケミカル社製10.3752g(比表面積40m/g))を水10mL、バインダーとして関東化学社製セルロース6g、関東化学社製グラファイト6g混ぜ、ボールミルで混合し、乾燥後、200MPaの圧力で3cmφのペレットにした。電解質は阿南化成社製CGO(30m2/g)を30g、トルエン30mL,イソプロパノール35mL、日本油脂製ノニオン1mL、バインダーとしてナカライテスク社製ポリビニルブチラル5gを用い、ボールミルにより混合し、スラリーにした後、空気極ペレットにコーティングし、1200℃で10時間共焼結した。燃料極スラリーとして、セイミケミカル社製NiO-CGO(比表面積14m/g、NiOをNi金属の体積換算量で50体積%含有)、トルエン30mL、イソプロパノール35mL、日本油脂製ノニオン1mL、バインダーとしてナカライテスク社製ポリビニルブチラル5gを用い、造孔材として関東化学社製グラファイト6gボールミルにより混合し、スラリーにした後、電解質上にコーティングした。その後、1100℃、1時間で焼成し、単セルとした。
この単セルの発電性能を図24に示す測定系39により評価した。空気極3側及び燃料極4側の集電は、電圧及び電流端子の白金線を白金ペーストで固定した白金メッシュ40で行った。燃料極4側のみパイレックス(登録商標)ガラスのOリング41でシールした。空気を50mL/分で供給し、燃料ガスとして水素を50mL/分で供給した。電流はカレントパルスジェネレータ(日厚計測NCPG-105S)で流し、電圧測定にはエレクトロメータ(北斗電工 HC-104)を用いた。
単セルの発電性能は作動温度を500℃、550℃並びに600℃として評価した。結果を図23に示す。図23において、(a)は500℃における測定結果を表し、(b)は550℃における測定結果を表し、(c)は600℃における測定結果を表している。この結果から、500℃では0.0185W/cm(0.37V、0.05A/cm)、550℃では0.034W/cm(0.34V、0.1A/cm)、600℃では0.05W/cm(0.27V、0.2A/cm)の出力が得られることが確認された。この結果から、空気極3と電解質層2とを共焼結して得られた電解質/空気極積層部材の電解質層表面に燃料極層4を形成することで、500℃〜600℃で0.0185〜0.05W/cmという優れた出力密度を有する単セルを作製することが可能であることが明らかとなった。この効果は、空気極基材と電解質層とを共焼結することにより空気極基材と電解質層との接着性が高まり、空気極基材と電解質層の界面における物質移動がスムーズに進行した結果、空気極の過電圧が低くなったことに起因するものと推定された。
以上の結果から、空気極材料として用いたランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を0<y≦0.04とした場合、同じ温度で共焼結を行う場合には定比(y=0)のランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物よりも電極活性が高まる。その結果、出力密度がさらに高まるものと推定される。
(La0.6Sr0.41−y(Co0.2Fe0.8)O3+δのX線回折測定結果を示した図である(y=0、0.02、0.04)。 (La0.6Sr0.41−y(Co0.2Fe0.8)O3+δのX線回折測定結果(y=0、0.02、0.04)から、計算した格子定数の不定比組成依存性を示した図である。 固相反応合成法とX線回折測定法により得られた(La0.8Sr0.21−y(Co1−zFe)O3+δ(0≦z≦1.0)のペロブスカイト相の単相領域(斜線部)を示した図である。 固相反応合成法とX線回折測定法により得られた(La0.6Sr0.41−y(Co1−zFe)O3+δ(0≦z≦1.0)のペロブスカイト相の単相領域(斜線部)を示した図である。 (La0.6Sr0.41−yFe0.8Co0.23+δ(y=0、0.02、0.04)の熱収縮率の温度依存性を示した図である。 LSFC−Aの電子顕微鏡写真である。 異なる比表面積(10m/g、30m/g、40m/g)を有するCGO−10の焼成温度と相対密度の関係を示した図である。 異なる比表面積(10m/g、30m/g、40m/g)を有するCGO−10の焼成温度と熱収縮率の関係を示した図である。 比表面積30m/g及び40m/gを有するCGO−10と比表面積4m/gを有するLSFC−Aの焼成温度と熱収縮率の関係を示した図である。 ボールミル工程前後のLSFC−Aの焼成温度と熱収縮率の関係を示した図である。 ボールミル工程後のLSFC−Aに比表面積40m/gを有するCGO−10を添加した試料の焼成温度と熱収縮率の関係を示した図である。 LSFC−AとCGO−10(比表面積40m/g)の混合物と、CGO−10(比表面積30m/g)の焼成温度と熱収縮率の関係を示した図である。 LSFC−AとCGO−10(比表面積40m/g)を6:4の体積比で混合した混合物にセルロース(バインダー)とグラファイト(造孔剤)を添加したときの添加量と熱収縮率、添加量と気孔率の関係を示した図である。 LSFC−AとCGO−10(比表面積40m/g)を6:4の体積比で混合した混合物にセルロース(バインダー)とグラファイト(造孔剤)を添加した試料の電子顕微鏡写真を示した図である。 比表面積30m/gのCGO−10を電解質材料とし、LSFC−AとCGO−10(比表面積40m/g)を6:4の体積比で混合した粉体を空気極材料として電解質/空気極構造を形成し、これを共焼結した際の電子顕微鏡による断面写真である。 平板型の固体酸化物型燃料電池を示す図である。 円筒型の固体酸化物型燃料電池を示す図である。 空気極支持型構造のIT−SOFC用単セルの一例を示した図である。 多孔質焼結チューブを用いたときの焼成時における部材の伸び縮みの概念を示した図である。 単セルを接続したIT−SOFCの例を示す図である。 単セルを接続したIT−SOFCの他の例を示す分解斜視図である。 単セルを接続したIT−SOFCの他の例を示す外観斜視図である。 空気極基材と電解質層とを同時共焼結した後、燃料極層を別途形成した空気極支持形単セルの発電特性を示した図である。 空気極基材と電解質層とを同時共焼結した後、燃料極層を別途形成した空気極支持形単セルの測定系を示す図である。
符号の説明
1 IT−SOFC用単セル
2 電解質層
3 空気極管
4 燃料極
5 インターコネクタ

Claims (5)

  1. 組成式(L1−xAE1−y(Fe1−z)O3+δで表され、Lはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及び希土類元素からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、AEはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)の群からなる一種又は二種の元素であり、Mはマグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、0<x<0.5、0<y≦0.04、0≦z<1であるランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を主成分とすることを特徴とするセラミックス粉体。
  2. 組成式(La1−xAE1−y(Fe1−z)O3+δで表され、AEはカルシウム(Ca)及びストロンチウム(Sr)の群からなる一種又は二種の元素であり、Mはマグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれた一種又は二種以上の元素であり、0<x<0.5、0<y≦0.04、0<z≦1であるランタンフェライト系ペロブスカイト酸化物を主成分とすることを特徴とするセラミックス粉体。
  3. 請求項1または2に記載のセラミックス粉体に、固体酸化物型燃料電池の電解質材料が50体積%未満の範囲で添加されているセラミックス粉体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス粉体により形成されている焼結体。
  5. 請求項4に記載の焼結体により形成されている固体酸化物型燃料電池用空気極。
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