JP2009032969A - 半導体薄膜の製造装置、その方法、その方法によって作製された半導体薄膜および半導体素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】最終結晶においてリッジ高さが高い結晶が含まれないように半導体薄膜を形成することが可能な半導体薄膜の製造装置を提供すること。
【解決手段】制御部8は、移動部7により被照射物80を相対的に移動させながら第1レーザ出力部4および第2レーザ出力部65に対して複数回の照射を行なわせることにより、重複する照射領域内で結晶の引継ぎ成長を行なわせる。このとき、あるスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突しないように第1レーザ出力部4および第2レーザ出力部65の照射タイミングを制御した後、移動部7により被照射物を相対的に移動させ、他のスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突するように第1レーザ出力部4および第2レーザ出力部65の照射タイミングを制御する。したがって、リッジ高さが高い結晶が含まれないように半導体薄膜を形成することが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】制御部8は、移動部7により被照射物80を相対的に移動させながら第1レーザ出力部4および第2レーザ出力部65に対して複数回の照射を行なわせることにより、重複する照射領域内で結晶の引継ぎ成長を行なわせる。このとき、あるスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突しないように第1レーザ出力部4および第2レーザ出力部65の照射タイミングを制御した後、移動部7により被照射物を相対的に移動させ、他のスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突するように第1レーザ出力部4および第2レーザ出力部65の照射タイミングを制御する。したがって、リッジ高さが高い結晶が含まれないように半導体薄膜を形成することが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガラス基板上に形成された非結晶Si薄膜にレーザ光を照射して結晶成長を起こさせる技術に関し、特に、均一な巨大結晶を作製するようにレーザ光を制御する半導体薄膜の製造装置、その方法、その方法によって作製された半導体薄膜および半導体素子に関する。
近年、ガラス基板上に機能回路を集積するSOG(System on Glass)技術が注目を集めている。また、このSOG技術の根幹となる多結晶Si薄膜の作製方法としては、SLS(Sequential Lateral Solidification)方式が有望視されている。
SLS方式とは、非結晶Si薄膜にマスクのスリットを介してレーザ光を照射して横方向の結晶成長を起こさせ、さらに、この横方向成長した結晶を順次引継ぎながら巨大結晶を作製する方式である。これに関連する技術として、下記の特許文献1に開示された発明がある。
特許文献1に開示されたポリシリコンの結晶化方法においては、非晶質シリコン薄膜が蒸着された基板にあって、固定手段とレーザー発生装置間の遮断領域と階段状の透過領域で構成されたマスクにレーザービームを照射して、非晶質シリコン薄膜に照射された領域が溶融した領域との界面でグレーンが各々成長して、第1グレーン領域と核生成領域と第2グレーン領域とで構成された階段状の領域を形成する第1結晶化段階と、マスクを横長さだけ移動して、同一な照射を行なった後に再結晶化して、重畳された部分のグレーンが成長して、横方向に新しい結晶領域が形成される第2結晶化段階とを含む。
図7は、特許文献1に開示されたポリシリコンの結晶化方法において用いられるマスク群を示す図である。このマスク群101は、横長の長尺状スリット(開口部)と遮光部とを含むスリットパターンが形成された第1〜第nのマスク(101−1〜101−n)によって構成され、第1マスク101−1、第2マスク101−2、・・・、第nマスク101−nの順に設けられる。図7においては、n=4である。
また、このマスク群101においては、各マスクのスリットが、101−1−a、101−2−a、・・・、101−4−aのように階段状に配置され、スリットグループ101−aが構成されている。マスク群101の横方向(X方向)に、各マスクの長さ分だけ相対移動させながらレーザ照射を繰返し行うことにより、結晶の引継ぎが行なわれる。
図8は、図7に示すマスク群101を用いた結晶の引継ぎ方法を説明するための図である。図8(a)は、マスク群101により、非結晶Si薄膜が形成された基板80上に照射されるレーザの照射パターンを示している。このレーザ照射によって、図8(b)に示すように、各スリットの上下端部に対応する位置から中央部に向けて結晶成長が起こる(1stショット結晶化)。たとえば、第1マスク101−1のスリット101−1−aに対応する第1レーザ照射領域102−1−aにおいては、結晶103−1−aが形成される。
なお、図中の結晶103−1−a内の縦線は、結晶成長方向に沿ってできる結晶粒界を模式的に示したものであり、スリットの上下端部に対応する位置から各々中央に向けて成長した結晶同士が、スリットの中央に対応する位置で衝突し、突起104−1−aが形成される。以下、この突起をリッジとも呼ぶ。
続いて、非結晶Si薄膜が形成された基板80に対して、マスク群101をX方向にマスク長さDだけ相対的に移動させてレーザ照射を行う(2ndショット)。図8(c)のAラインに着目すると分かるように、1stショットで形成された結晶103−1−a(リッジ104−1−a)と重複して、第2マスク101−2のスリット101−2−aによるレーザ照射が行われる(第2レーザ照射領域102−2−a)。
その結果、結晶103−1−aのリッジ104−1−aを消去しながら、1stショット結晶103−1−aを種結晶とする結晶成長(引継ぎ成長)が起こり、結晶103−2−aが形成される。
図8(d)および図8(e)に示すように、4thショットまで同様の動作を繰り返すことにより、スリットグループ101−a(スリット101−1−a、101−2−a、・・・、101−4−a)に対応する、第1〜第4レーザ照射領域102−1−a、102−2−a、・・・、102−4−aが順次重なり、その結果、1stショットの結晶103−1−aを種結晶として順次引継ぎ成長した最終結晶103−aが作製される。
ここで、作製された最終結晶103−aの長さは、スリットグループ101−aを構成する各スリットの結晶成長方向における開口長さ(以下、スリット幅と呼ぶ。)および階段状に構成された各スリットのずらし量により決定される。従来のSLS方式においては、特許文献1にも記載されているように、1回のレーザビーム照射工程における結晶成長の最大長さは、一般的に1.5μm〜3.0μmの長さとされている。したがって、最終結晶103−aの長さを長くする、たとえば20μm以上にするためには、スリットグループのグループ数nを増やさなければならないといった問題点がある。このような問題点を解決するものとして、下記の特許文献2に開示された発明がある。
特許文献2に開示された半導体薄膜の製造方法においては、前駆体半導体薄膜を溶融させる第1のレーザ光(主ビーム)と、第1のレーザ光によって溶融した前駆体半導体薄膜の凝固を制御する第2のレーザ光(副ビーム)を、いずれも前駆体半導体薄膜に略同時に照射する。このとき、第1のレーザ光の照射領域と同等以上の面積を有する第2のレーザ光が、少なくとも前駆体半導体薄膜が溶融している間、第1のレーザ光を包含する位置に照射される。なお、第1のレーザ光は固体状態の前駆体半導体膜に吸収される波長を有し、第2のレーザ光は液体状態の前駆体半導体薄膜に吸収される波長を有する。
このように、非晶質Si薄膜を厚み方向全域にわたって溶融および結晶化させ得るエネルギー量を有する第1のレーザ光を非晶質Si薄膜の第1照射領域に照射する工程と、非晶質Siを溶融させないエネルギー量を有する第2のレーザ光を、第1照射領域を包含する第2照射領域に照射する工程とを含んだ多結晶Si薄膜の製造方法をSLS方式に適用することよって、1回のレーザビーム照射工程における結晶成長の最大長さを著しく増大させることができ、少ない引継ぎ回数で最終結晶の長さを長くすることができる。
しかしながら、特許文献2に開示された製造方法をSLS方式に適用すると、各マスクの照射領域において、第2のレーザ光の照射による熱の影響度合いが異なる場合がある。
図9は、特許文献2に開示された発明における問題点を説明するための図である。図9(a)〜図9(d)に示すように、照射パターンに基づいて結晶を引継ぐ方法および結晶を成長させる方法は、図8を用いて説明したものと同様である。ここで、マスク群101を介して第1レーザ光が照射され、第1レーザ光による照射領域を包含する形で第2レーザ光が領域110に照射される。
図9(d)に示す4thショット後のAラインに着目すると、最終結晶103−aを構成する結晶103−1−aは、図9(e)に示すように、1stショットで作製される。すなわち、第2レーザ光の1stショットと同期した第1レーザ光照射によって結晶化されている。
一方、結晶103−4−aは、図9(f)に示すように、4thショットで作製される。すなわち、第2レーザ光が4ショット照射された後の第1レーザ光の照射によって結晶化される。そのため、第2レーザ光の3ショット分の熱の影響を余分に受けることになる。これによって、1つの引継ぎ結晶を作製する過程において、各マスクの照射領域における第2レーザ光照射による熱の影響度合いが異なるため、成長結晶の最大長さが異なってしまう。
上述のように、従来のSLS方式によるマスクスリットによって結晶化領域の引継ぎを問題なく行なうためには、1stショットにおいて、スリット両端部より成長する結晶の長さが、互いの衝突による妨げがない場合に成長し得る成長長さ(以下、フリーの結晶成長長さと呼ぶ。)の最小値の2倍以下となるように合わせる必要がある。しかしながら、この状態で結晶の長さが拡大されると結晶性が悪くなる、すなわち最終領域において作製された結晶のリッジ高さが著しく増大するといった問題点がある。このような問題点を解決するもとのとして、下記の特許文献3に開示された発明がある。
特許文献3に開示されたレーザビーム投影マスクは、透過エリアとしての長方形状の3つのスリットを有する。この3つのスリットは、X方向に所定の間隔を隔てて順次形成されており、順にX方向の幅が小さくなっている。すなわち、透過エリアの透過率は、シリコン膜の温度分布曲線に対応して変化している。
このレーザビーム投影マスクは、スリットグループが上下または左右方向に複数組整列されいる。スリットグループのスリットは、各マスクにおける照射領域の第2レーザ光の照射回数の違いによって生じるシリコン膜の温度分布に対応してスリットグループ毎に、スリット幅またはスリット透過エリアの透過率が変化するように構成されており、各マスクにおける照射領域形成時の結晶成長距離の増大に対応して、マスク毎にスリット幅が徐々に増加するような構成となっている。
図10は、特許文献3に開示されたレーザ加工方法を説明するための図である。図10(a)は、各マスクにおける結晶成長長さ、すなわち第2レーザ光の照射回数とフリーの結晶成長長さとの関係を示している。図10(a)に示すように、第2レーザ光の照射回数の増加に伴って結晶成長距離が増加する。これに対応して、図10(b)に示すように、各マスクのスリット幅を徐々に大きくする構成となっている。
特開2003−51445号公報
特開2004−207691号公報
特開2006−13050号公報
しかしながら、上述の特許文献3に開示されたレーザ加工方法においては、被照射物の相対移動方向がある一定方向(片側方向)の時にのみ効を奏し、往復移動を行って所望の結晶を作製することが不可能である。具体的には、図10(c)に示すように、ある一定方向(X方向)については、各マスクでの結晶成長長さの増加に伴い、各マスクのスリット幅を増加させている。すなわち、1stショット時のスリット幅がW1、2ndショット時がW2、3rdショット時がW3、4thショット時がW4と増加させている。
そのため、最終領域において作製された結晶のリッジ104−aの高さが著しく増大することなく、引き継ぎ結晶を作製することができる。しかしながら、このマスクを用いて反対方向(−X方向)に移動しながら照射を行うと、1stショット時のスリット幅がW4、2ndショット時がW3、3rdショット時がW2、4thショット時がW1とショット数の増加に伴ってスリッド幅が減少していく。
そのため、図10(d)に示すように、1stショット時のフリーの結晶成長長さに比べて、スリット幅W4がはるかに大きく、1stショット時に形成された結晶を種結晶として引き継ぐことができず、微結晶領域105−aが形成される。さらには、4thショット時のフリーの結晶成長長さに比べて、スリット幅W1がはるかに小さいため、最終領域において作製された結晶のリッジ104−aの高さが著しく増大し、品質の悪い結晶が作製されてしまうといった問題点がある。
また、良好な結晶品質を維持するためには、片側方向(X方向)に限ったレーザ照射を行う必要があるため、製造効率が低くなるといった問題点もある。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、第1の目的は、最終結晶においてリッジ高さが高い結晶が含まれないように半導体薄膜を形成することが可能な半導体薄膜の製造装置およびその方法を提供することである。
第2の目的は、マスク群をいずれの方向に相対移動させた場合でも引継ぎ結晶成長を問題なく行なうことが可能な半導体薄膜の製造装置およびその方法を提供することである。
第3の目的は、最終結晶においてリッジ高さが高い結晶が含まれないように形成された半導体薄膜および半導体素子を提供することである。
本発明のある局面に従えば、被照射物上に形成された前駆半導体薄膜に対してレーザ光の照射を行ない、前駆半導体薄膜を溶融し再結晶化させて半導体薄膜を形成する半導体薄膜の製造装置であって、第1レーザ光を出力する第1レーザ出力手段と、第2レーザ光を被照射物上に照射する第2レーザ出力手段と、開口部と遮光部とからなるスリットパターンが形成されたマスクが複数隣接して設けられるマスク群と、マスク群に設けられた開口部を通過した第1レーザ光を被照射物上に結像させる結像手段と、被照射物をマスク群に対して相対的に移動させる移動手段と、移動手段により被照射物を相対的に移動させながら第1レーザ出力手段および第2レーザ出力手段に対して複数回の照射を行なわせることにより、重複する照射領域内で結晶の引継ぎ成長を行なわせる際、あるスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突しないように第1レーザ出力手段および第2レーザ出力手段の照射を制御した後、移動手段により被照射物を相対的に移動させ、他のスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突するように第1レーザ出力手段および第2レーザ出力手段の照射を制御する制御手段とを含む。
好ましくは、マスク群は、nを2以上の整数とすると、相対移動方向に直交する方向において長さWを有し、結晶成長方向にpずつずらして階段状に配置された開口部をそれぞれ有する第1〜第nマスクを含む。
好ましくは、マスク群は、nを2以上の整数とすると、それぞれがマスク群の相対移動方向に配置された開口部を有する第1〜第nマスクを含み、第1〜第nマスク内に設けられた対応する開口部は、それぞれが相対移動方向と平行な方向において長さWを有し、相対移動方向におけるマスク端部からの距離がpずつずらして配置される。
さらに好ましくは、制御手段は、kを1以上でn−1以下の整数とすると、第1レーザ出力手段および第2レーザ出力手段を制御して被照射物上に第kマスクに対応する第k照射領域を形成した後、移動手段を制御して第k照射領域から結晶成長方向にpだけずれた位置に第k+1照射領域が形成されるように第k+1マスクを移動させ、第1レーザ出力手段および第2レーザ出力手段を制御して被照射物上に第k+1照射領域を形成することにより第1〜第n照射領域を順次形成し、第1照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをL1とし、第n照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをLnとすると、少なくともp≦L1<W/2≦Lnの関係を有する。
さらに好ましくは、第1〜第n照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをL1〜Lnとすると、p≦L1<L2<・・・<Ln−1<W/2≦Lnの関係を有する。
好ましくは、制御手段は、移動手段を制御してマスク群を相対的に第1の方向に移動させながら結晶の引継ぎ成長を行なわせた後、マスク群を第1の方向と逆方向に相対的に移動させながら結晶の引継ぎ成長を行なわせる。
本発明の別の局面に従えば、被照射物上に形成された前駆半導体薄膜に対してレーザ光の照射を行ない、前駆半導体薄膜を溶融し再結晶化させて半導体薄膜を形成する半導体薄膜の製造方法であって、マスク群に含まれる複数のマスクのそれぞれに設けられたスリットの中のあるスリットを介して第1レーザ光を被照射物上に照射し、第2レーザ光を被照射物上に照射することによって、あるスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突しないように結晶成長を行なわせるステップと、あるスリットに対応する照射領域とマスク群に設けられたスリットの中の他のスリットに対応する照射領域とが重複するように被照射物をマスク群に対して相対的に移動させるステップと、他のスリットを介して第1レーザ光を被照射物上に照射し、第2レーザ光を被照射物上に照射することによって、他のスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突するように結晶の引継ぎ成長を行なわせるステップとを含む。
本発明のさらに別の局面に従えば、上記半導体薄膜の製造方法によって作製された半導体薄膜であって、複数形成された最終照射領域内に横方向成長結晶以外の結晶および非結晶を含まない。
本発明のさらに別の局面に従えば、半導体薄膜の製造方法によって作製された半導体薄膜であって、周期的に形成された2つの突起部に挟まれた領域において、突起部よりも高さの低い微小な凹凸が不等間隔で形成される。
本発明のさらに別の局面に従えば、半導体素子は、上記半導体薄膜を含む。
本発明のある局面によれば、制御手段が、移動手段により被照射物を相対的に移動させながら第1レーザ出力手段および第2レーザ出力手段に対して複数回の照射を行なわせることにより、重複する照射領域内で結晶の引継ぎ成長を行なわせる際、あるスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突しないように第1レーザ出力手段および第2レーザ出力手段の照射を制御した後、移動手段により被照射物を相対的に移動させ、他のスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突するように第1レーザ出力手段および第2レーザ出力手段の照射を制御するので、リッジ高さが高い結晶が含まれないように半導体薄膜を形成することが可能となる。
また、マスク群は、相対移動方向に直交する方向において長さWを有し、結晶成長方向にpずつずらして階段状に配置された開口部をそれぞれ有する第1〜第nマスクを含むので、相対移動方向に直交する方向に結晶成長を行なわせることが可能となる。
また、マスク群は、それぞれがマスク群の相対移動方向に配置された開口部を有する第1〜第nマスクを含み、第1〜第nマスク内に設けられた対応する開口部は、それぞれが相対移動方向と平行な方向において長さWを有し、相対移動方向におけるマスク端部からの距離がpずつずらして配置されるので、相対移動方向と平行な方向に結晶成長を行なわせることが可能となる。
また、第1照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをL1とし、第n照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをLnとすると、少なくともp≦L1<W/2≦Lnの関係を有するので、リッジ高さが高い結晶が含まれないように半導体薄膜を形成することが可能となる。
また、第1〜第n照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをL1〜Lnとすると、p≦L1<L2<・・・<Ln−1<W/2≦Lnの関係を有するので、最終結晶においてリッジ高さが高い結晶が含まれないように半導体薄膜を形成することが可能となる。
また、制御手段が、移動手段を制御してマスク群を相対的に第1の方向に移動させながら結晶の引継ぎ成長を行なわせた後、マスク群を第1の方向と逆方向に相対的に移動させながら結晶の引継ぎ成長を行なわせるので、マスク群をいずれの方向に相対移動させた場合でも引継ぎ結晶成長を問題なく行なうことが可能となる。
本発明の別の局面によれば、あるスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突しないように結晶成長を行なわせるステップと、あるスリットに対応する照射領域とマスク群に設けられたスリットの中の他のスリットに対応する照射領域とが重複するように被照射物をマスク群に対して相対的に移動させるステップと、他のスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突するように結晶の引継ぎ成長を行なわせるステップとを含むので、リッジ高さが高い結晶が含まれないように半導体薄膜を形成することが可能となる。
本発明のさらに別の局面によれば、上記半導体薄膜の製造方法によって作製された半導体薄膜であって、複数形成された最終照射領域内に横方向成長結晶以外の結晶および非結晶を含まないので、信頼性の高い半導体薄膜を作製することが可能となる。
本発明のさらに別の局面によれば、半導体薄膜の製造方法によって作製された半導体薄膜であって、周期的に形成された2つの突起部に挟まれた領域において、突起部よりも高さの低い微小な凹凸が不等間隔で形成されるので、さらに信頼性の高い半導体薄膜を作製することが可能となる。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における半導体薄膜の製造装置の構成例を示す図である。この半導体薄膜の製造装置10は、マスク群1と、第1レーザ光E1を出力する第1レーザ出力部4と、第2レーザ光C2を出力する第2レーザ出力部65と、マスク群1の開口部を通過した第1レーザ光E1を、被照射物80上に結像させる結像光学系6と、マスク群1に対して被照射物80を相対的に移動させる移動部7と、第1レーザ出力部4および第2レーザ出力部65からの第1レーザ光E1および第2レーザ光C2の出射タイミングと、移動部7の移動とを制御する制御部8と、第1レーザ出力部4からの第1レーザ光E1を反射してマスク群1に入射させる第1のミラー9と、第2レーザ出力部65からの第2レーザ光C2を反射して被照射物80に照射させる第2のミラー12とから構成される。
図1は、本発明の第1の実施の形態における半導体薄膜の製造装置の構成例を示す図である。この半導体薄膜の製造装置10は、マスク群1と、第1レーザ光E1を出力する第1レーザ出力部4と、第2レーザ光C2を出力する第2レーザ出力部65と、マスク群1の開口部を通過した第1レーザ光E1を、被照射物80上に結像させる結像光学系6と、マスク群1に対して被照射物80を相対的に移動させる移動部7と、第1レーザ出力部4および第2レーザ出力部65からの第1レーザ光E1および第2レーザ光C2の出射タイミングと、移動部7の移動とを制御する制御部8と、第1レーザ出力部4からの第1レーザ光E1を反射してマスク群1に入射させる第1のミラー9と、第2レーザ出力部65からの第2レーザ光C2を反射して被照射物80に照射させる第2のミラー12とから構成される。
第1レーザ出力部4は、レーザ発振機4aと、その後段に配置され、レーザ光のサイズ、形状や均一性を所望のものとするための光学系4bとから構成される。なお、光学系4bは、レンズやホモジナイザを適宜に組み合わせた構成を有する。
同様に、第2レーザ出力部65は、レーザ発振機65aと、その後段に配置され、レーザ光のサイズ、形状や均一性を所望のものとするための光学系65bとから構成される。なお、光学系65bは、レンズやホモジナイザを適宜に組み合わせた構成を有する。
図2は、マスク群1の構成例を示す図である。このマスク群1は、照射面において幅Wを有する横長の長尺状スリット(開口部)と、遮光部とからなるスリットパターンが形成された第1〜第nのマスク(1−1〜1−n)によって構成される。そして、第1〜第nのマスク(1−1〜1−n)は、第1マスク、第2マスク、・・・、第nマスクの順に設けられる。図2においては、n=4である。
第1のレーザ光E1が第1〜第nマスク(1−1〜1−n)の各々を介して照射され、第2のレーザ光C2が第1レーザ光E1の照射領域を包含するように照射されて、被照射物80上に第1〜第nの照射領域が形成される。
さらに、このマスク群1は照射面において、各マスクのスリットが、1−1−a、1−2−a、・・・、1−4−aの順に段差pを有する階段状となるように、スリットグループを構成している。この段差pが、後述するマスクの相対移動に伴う、各マスク間での結晶引継ぎを行うためのずらし量に相当する。
なお、スリット1−1−a、1−2−a、1−3−a、1−4−aの間の各段差pは、スリット幅Wの1/2よりも小さくなっている。
次に、半導体薄膜の製造装置10による薄膜の製造方法について説明する。なお、本実施形態における被照射物80は、前駆体として非結晶Si薄膜が形成された基板である。この場合には、第1レーザ出力部4として、エキシマレーザや、高調波(2次、3次)YAGレーザ等が用いられる。また、第2レーザ出力部65として、被照射物80に直接吸収される波長域のレーザ光や、非結晶Si薄膜の下層に配置される絶縁膜を加熱する波長域のレーザ光が用いられる。なお、後者の場合には、炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)が有効である。
まず、制御部8が、第1レーザ出力部4による第1レーザ光E1および第2レーザ出力部65による第2レーザ光C2の出射タイミングと、移動部7の移動とを制御することによって、被照射物80上のある位置に第1ショット目のレーザ照射を行なう(1stショット)。
このとき、第1レーザ出力部4から出力される第1レーザ光E1がマスク群1の開口部を通過し、この開口部を通過した第1レーザ光E1が結像光学系6によって結像される。そして、同時に第2レーザ出力部65から出力された第2レーザ光C2が、マスク群1の開口部を通過した第1レーザ光E1による照射領域を包含する領域に照射される。その結果、被照射物80上にマスク群1のスリットパターンが投影される。
図3は、本発明の第1の実施の形態における半導体薄膜の製造装置10による薄膜製造方法を説明するための図である。図3(a)は、基板80上に形成されるレーザ照射パターンを示している。このレーザ照射によって、図3(b)に示すように、各スリットの上下端部に対応する位置から中央部に向けて結晶成長が起こる(1stショット結晶化)。たとえば、第1マスク1−1のスリット1−1−aに対応する第1照射領域2−1−aにおいて、結晶3−1−aが形成される。なお、図3(b)に示す結晶3−1−a内の縦線は、結晶成長方向に沿ってできる結晶粒界を模式的に示したものである。
本実施の形態の半導体薄膜の製造方法においては、スリットの上下端部に対応する位置から成長する結晶は、スリットの中央に対応する位置まで伸びない条件、すなわち、1stショットにおけるフリーの結晶成長長さL1は、スリットの幅の半分であるW/2よりも短くなる照射条件で照射される。
したがって、スリットの中央部には、(W−2L1)の幅で微結晶領域5−1−aが形成される。また、フリーの結晶成長長さL1は、スリット間の段差p、すなわち引継ぎ結晶成長を行うためのマスク間のずらし量pよりも大きい長さに制御されており、後述のように引継ぎ結晶成長が問題なく行われる。
次に、制御部8が、第1レーザ光E1および第2レーザ光C2の出射タイミングと、移動部7の移動とを制御することによって、基板80に対してマスク群1をマスク長さDだけX方向に相対的に移動させ、この状態で、第2ショット目のレーザ照射を行なう(2ndショット)。
このとき、図3(c)に示すAラインに着目して分かるように、1stショットで形成された結晶3−1−aと重複して、第2マスク1−2のスリット1−2−aによるレーザ照射が行われ、その照射領域が第2照射領域2−2−aとなる。第1照射領域2−1−aと第2照射領域2−2−aとの重複量は、スリット幅W−段差pである。
その結果、結晶3−1−aの一部と微結晶領域5−1−aを消去しながら、結晶3−1−aを種結晶とするY1方向の結晶成長(引継ぎ成長)が起こり、結晶3−2−aが形成される。
また、このとき、Aラインに着目すると、図9を用いて説明した従来技術と同様に、2ndショット照射時にこの領域において、前の1stショット照射時の第2レーザ光照射に加えて、再度第2レーザ光C2が照射される。そのため、1stショット照射時のフリーの結晶成長長さL1に比べ、2ndショット照射時のフリーの結晶成長長さL2は大きくなり、L1<L2の関係となるように、第1レーザ光および第2レーザ光の照射条件が設定されている。
また、2ndショット照射時のスリットの上下端部に対応する位置から成長する結晶においても、スリットの中央に対応する位置まで伸びない条件、すなわち、2ndショットにおけるフリーの結晶成長長さL2が、スリットの幅の半分であるW/2よりも短くなる条件で照射した場合、スリットの中央部には、(W−2L2)の幅で微結晶領域5−2−aが形成される。
また、本実施の形態において、結晶成長長さL2は、スリット間の段差p、すなわち引継ぎ結晶成長を行うためのマスク間のずらし量pよりも大きくなるように照射条件が設定されており、1stショット時と同様に、以後の引継ぎ結晶成長が問題なく行われる。
図3(d)〜図3(e)に示すように、4thショットまで同様の動作を繰り返すことにより、第1〜第4レーザ照射領域2−1−a、2−2−a、2−3−a、2−4−aがY1方向に順次重ねられ、1stショットの結晶3−1−aを種結晶としてY1方向に順次引き継ぎ成長して最終結晶3−aが作製される。
また、3rdショット時および4thショット時においても、以前に照射された第2レーザ光C2の影響が順次加わり、フリーの結晶成長長さはショット数の増加に伴い増加するように第1レーザ光および第2レーザ光の照射条件が設定されている。
ここで、最終結晶3−aが作製される4thショット照射時において、スリット上下両端部より成長する結晶のフリーの結晶成長長さをL4としたとき、成長長さL4は、照射面におけるスリット幅の半分であるW/2と等しいかそれよりも大きくなるように照射条件が設定されている。
それに加えて、1stショットから3rdショットまでのフリーの結晶成長長さL1〜L3がスリットの幅の半分であるW/2よりも短くなり、かつ、スリット間の段差p、すなわち引継ぎ結晶成長を行うためのマスク間のずらし量pよりも大きい長さとなるように照射条件が設定されている。
図4は、各マスク位置における結晶成長長さと、マスクスリット幅およびマスク間のずらし量との関係を説明するための図である。引継ぎ結晶成長を行うためのマスク間のずらし量p、マスクスリット幅の半分であるW/2、および各マスク(n=1〜4)におけるフリーの結晶成長長さL1〜L4の関係は以下のとおりとなる。
p≦L1<W/2 かつ W/2≦L4 …(1)
このように、第1および第2レーザ光の照射条件を、フリーの結晶成長長さL1〜L4が図4に示す関係となるように決定することで、引継ぎ結晶成長が問題なく行われ、最終結晶作製時のリッジ高さを低くすることができる。
このように、第1および第2レーザ光の照射条件を、フリーの結晶成長長さL1〜L4が図4に示す関係となるように決定することで、引継ぎ結晶成長が問題なく行われ、最終結晶作製時のリッジ高さを低くすることができる。
なお、第1および第2レーザ光の照射条件の設定は、各々のレーザ光の照射エネルギおよび照射周波数を好適に調整することで行われる。また、照射エネルギおよび照射周波数と、ショット数1〜nにおけるフリーの結晶成長長さL1〜Lnとの関係が制御部8内の参照テーブルに格納されており、制御部8が、スリット幅W、ずらし量p、マスク領域数nに応じて、適宜条件を選択するようにしてもよい。
図5は、マスク群1を−X方向に相対的に移動させて半導体薄膜を製造する場合を説明するための図である。図5(a)は、基板80上に形成されるレーザ照射パターンを示している。図3(a)と比較して、反対方向である−X方向にマスク群1が相対的に移動される点のみが異なっている。このレーザ照射によって、図5(b)に示すように、各スリットの上下端部に対応する位置から中央部に向けて結晶成長が起こる(1stショット結晶化)。たとえば、第4マスク1−4のスリット1−4−aに対応する第1照射領域2−1−aにおいて、結晶3−1−aが形成される。
2ndショット〜4thショットにおいては、図3を用いて説明したものと同様の照射条件でレーザ光が照射される。図5(c)に示すAラインに着目して分かるように、1stショットで形成された結晶3−1−aと重複して、第3マスク1−3のスリット1−3−aによるレーザ照射が行われ、その照射領域が第2照射領域2−2−aとなる。
また、図5(d)〜図5(e)に示すように、4thショットまで同様の動作を繰り返すことにより、第1〜第4レーザ照射領域2−1−a、2−2−a、2−3−a、2−4−aが、図3に示すY1方向と反対方向に順次重ねられ、1stショットの結晶3−1−aを種結晶としてY1方向と反対方向に順次引き継ぎ成長して最終結晶3−aが作製される。
引継ぎ結晶成長を行うためのマスク間のずらし量p、マスクスリット幅の半分であるW/2、および各マスク(n=1〜4)におけるフリーの結晶成長長さL1〜L4の関係は上記(1)式と同様となる。このように、マスク群1の相対移動方向を−Xとした場合でも、引継ぎ結晶成長が問題なく行われ、最終結晶作製時のリッジ高さを低くすることができる。
以上の説明においては、被照射物を非結晶Si薄膜とし、第1レーザ出力部4として、エキシマレーザや、高調波(2次、3次)YAGレーザ等を用い、第2レーザ出力部65として炭酸ガスレーザを用いる場合について説明したが、被照射物には非結晶Si薄膜以外の非晶質材料や結晶材料を前駆体として用いることも可能であり、それに応じて、適宜に第1レーザ出力部および第2レーザ出力部を選択するようにすればよい。
以上説明したように、本実施の形態における半導体薄膜の製造装置によれば、1stショット〜3rdショット時におけるフリーの結晶成長長さL1〜L3がマスク間のずらし量p以上、かつ、マスクスリット幅Wの半分未満となるような照射条件で第1レーザ光および第2レーザ光の照射を行ない、4thショット時におけるフリーの結晶成長長さL4がマスクスリット幅Wの半分以上となるような照射条件で第1レーザ光および第2レーザ光の照射を行なうようにしたので、引継ぎ結晶成長が問題なく行われると共に、最終結晶作製時におけるリッジ高さを低くすることが可能となった。
具体的には、上記リッジ高さは、非晶質Si膜厚や、マスクスリット幅Wによっても異なるが、たとえば、非晶質Si膜厚が50nmのとき、リッジ高さを約2/3に低減することが可能である。詳しくは、W=4μmのとき、リッジ高さは約150nmから100nmに低減され、W=6μmのときリッジ高さは約200nmから140nmに低減される。
また、マスク群1の各スリットの幅をWに統一し、第1レーザ光および第2レーザ光の照射条件の設定によって結晶の引継ぎ成長を行なうようにしたので、マスク群1をいずれの方向に相対移動させた場合でも、引継ぎ結晶成長が問題なく行われると共に、最終結晶作製時におけるリッジ高さを低くできるという効果を奏することが可能となった。
また、形成された最終結晶において、横方向成長結晶以外の結晶、たとえば微結晶、および非結晶が含まれていない結晶材料を作製することが可能となり、さらには、形成された最終結晶において、リッジ高さの高い結晶が含まれていない結晶材料を作製することが可能となった。
さらには、マスク領域ごとにフリーの結晶成長長さが異なるため、作成された結晶材料は、結晶成長方向に不等間隔の周期構造を有する微小な凹凸と、最終照射領域内における微小な凹凸よりも高いリッジとが繰返された集合体で構成される。この不等間隔の周期構造を有する微小な凹凸高さは、従来技術で作製された等間隔の周期構造を有する凹凸高さよりも小さくなる。したがって、このような結晶材料を用いることによって、高性能で特性ばらつきが小さく、信頼性の高い半導体素子を作製することが可能となった。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態における半導体薄膜の製造装置は、図1に示す第1の実施の形態における半導体薄膜の製造装置の構成と比較して、マスク群の形状が異なる点のみが異なる。したがって、重複する構成および機能の詳細な説明は繰返さない。なお、本実施の形態におけるマスク群の参照符号を11として説明する。
本発明の第2の実施の形態における半導体薄膜の製造装置は、図1に示す第1の実施の形態における半導体薄膜の製造装置の構成と比較して、マスク群の形状が異なる点のみが異なる。したがって、重複する構成および機能の詳細な説明は繰返さない。なお、本実施の形態におけるマスク群の参照符号を11として説明する。
第1の実施形態においては、マスク群1を横方向(X方向または−X方向)に相対移動させることにより、この移動方向(X方向または−X方向)と直交する方向にレーザ照射領域を重ねるものであった。本実施の形態においては、マスク群の相対移動方向(X方向または−X方向)と平行な方向にレーザ照射領域を重ねるものである。
図6は、本発明の第2の実施の形態におけるマスク群11の構成例を示す図である。このマスク群11は、照射面において幅Wを有する縦長の長尺状スリット(開口部)と、遮光部とからなるスリットパターンが形成された第1〜第nのマスク(11−1〜11−n)によって構成される。そして、第1〜第nのマスク(11−1〜11−n)は、第1マスク、第2マスク、・・・、第nマスクの順に設けられる。図6においては、n=4である。
第1のレーザ光E1が第1〜第nマスク(11−1〜11−n)の各々を介して照射され、第2のレーザ光C2が第1レーザ光E1の照射領域を包含するように照射されて、被照射物80上に第1〜第nの照射領域が形成される。
さらに、このマスク群11は照射面において、各マスクのスリットが、11−1−a、11−2−a、・・・、11−4−aの順に、マスクの右端部からの距離が順次pずつ減らされるようにして、縦スリットグループを構成している。この縦スリットグループをスリットグループ11−aと呼ぶ。
同様に、各マスクのスリットが、11−1−b、11−2−b、・・・、11−4−bの順に、マスクの右端部からの距離が順次pずつ減らされるようにして、縦スリットグループを構成している。この縦スリットグループをスリットグループ11−bと呼ぶ。
このような縦スリットグループが、11−a、11−b、・・・といった具合に、左右方向に複数組整列されている。また、隣接するスリットグループ11−a,11−bについては、マスク群11の横方向(X方向)の相対移動によって、スリットグループ11−b中の最も右寄りのスリット11−4−bによるレーザ照射領域が、その右側に位置するスリットグループ11−aの中の複数のスリット(図6においては、11−1−a、11−2−a、11−3−a)によって形成されていた照射領域と一部重複するように配置されている。
また、スリット11−1−a左端のマスク端部からの距離をb1、スリット11−2−a左端のマスク端部からの距離をb2、スリット11−3−a左端のマスク端部からの距離をb3、スリット11−4−a左端のマスク端部からの距離をb4とすると、b1>b2>b3>b4の関係にある。
なお、本実施の形態においては、各スリットの左右端部に対応する位置から中央部に向けて結晶成長が起こる。
引継ぎ結晶成長を行なうためのスリット間のずらし量p、マスクスリット幅の半分であるW/2、および各マスク(n=1〜4)におけるフリーの結晶成長長さL1〜L4の関係は上記(1)式と同様となる。したがって、第1の実施の形態において説明した効果と同様の効果を奏することが可能となる。したがって、引継ぎ結晶成長が問題なく行われ、最終結晶作製時のリッジ高さを低くすることができる。
また、マスク群1の相対移動方向を−Xとした場合でも、スリット間のずらし量p、マスクスリット幅の半分であるW/2、および各マスク(n=1〜4)におけるフリーの結晶成長長さL1〜L4の関係は上記(1)式と同様となり、引継ぎ結晶成長が問題なく行われ、最終結晶作製時のリッジ高さを低くすることができる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態における半導体薄膜の製造装置は、図1に示す第1の実施の形態における半導体薄膜の製造装置の構成と同様である。また、結晶引継ぎの基本的な方法も、第1の実施の形態において説明したものと同様である。したがって、重複する構成および機能の詳細な説明は繰返さない。
本発明の第3の実施の形態における半導体薄膜の製造装置は、図1に示す第1の実施の形態における半導体薄膜の製造装置の構成と同様である。また、結晶引継ぎの基本的な方法も、第1の実施の形態において説明したものと同様である。したがって、重複する構成および機能の詳細な説明は繰返さない。
本実施の形態においては、引継ぎ結晶成長を行うためのマスク間のずらし量p、マスクスリット幅の半分であるW/2、および各照射領域におけるフリーの結晶成長長さL1〜Lnが以下の関係を満たすように、マスクスリット幅W、ずらし量pおよび照射領域数nを決定する。
p≦L1<L2<・・・<Ln−1<W/2≦Ln …(2)
たとえば、ある照射条件で第1レーザ光および第2レーザ光が照射されるときに、図4に示すような各照射領域における結晶成長長さの関係が得られたとすると、マスクスリット幅Wおよびずらし量pを図4のように決定する。そして、上記(2)式を満たすように照射領域数nの値を“4”とする。
たとえば、ある照射条件で第1レーザ光および第2レーザ光が照射されるときに、図4に示すような各照射領域における結晶成長長さの関係が得られたとすると、マスクスリット幅Wおよびずらし量pを図4のように決定する。そして、上記(2)式を満たすように照射領域数nの値を“4”とする。
なお、第1および第2レーザ光の照射条件の設定は、各々のレーザ光の照射エネルギおよび照射周波数を好適に調整することで行われる。また、照射エネルギおよび照射周波数と、ショット数1〜nにおけるフリーの結晶成長長さL1〜Lnとの関係が制御部8内の参照テーブルに格納されており、制御部8が、スリット幅W、ずらし量p、マスク領域数nを好適に決定するようにしてもよい。
図4に示す関係は一例に過ぎず、たとえばW/2の値をL4よりもさらに大きくする場合には、nの値が少なくとも5以上の値に設定される。また、逆にW/2の値がL4よりも小さく、さらにはL3よりも小さくする場合には、nの値が3に設定される。
このように設定された照射条件に基づいて各照射領域における結晶成長長さL1〜Lnの関係を把握した上で、スリット幅W、ずらし量pおよびマスク領域数nの値を最適に決定することで、第1の実施形態において説明した効果と同様に、引継ぎ結晶成長が問題なく行われ、最終結晶作製時のリッジ高さを低くすることができ、さらには、基板の往復走査いずれに対しても、同様の結晶を形成することが可能となった。したがって、良好な結晶を高い製造効率で作製することが可能となった。
以上、第1〜第3の実施の形態における半導体薄膜の製造装置について説明したが、マスクスリットの形状、結晶成長方向、結晶引継ぎ方向などは適宜変更可能であり、上記の説明に限定されるものではない。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,11 マスク群、4 第1レーザ出力部、4a,65a レーザ発振既、4b,65b 光学系、6 結像光学系、7 移動部、8 制御部、9 第1のミラー、10 半導体薄膜の製造装置、12 第2のミラー、65 第2レーザ出力部、80 被照射物。
Claims (10)
- 被照射物上に形成された前駆半導体薄膜に対してレーザ光の照射を行ない、該前駆半導体薄膜を溶融し再結晶化させて半導体薄膜を形成する半導体薄膜の製造装置であって、
第1レーザ光を出力する第1レーザ出力手段と、
第2レーザ光を前記被照射物上に照射する第2レーザ出力手段と、
開口部と遮光部とからなるスリットパターンが形成されたマスクが複数隣接して設けられるマスク群と、
前記マスク群に設けられた開口部を通過した前記第1レーザ光を前記被照射物上に結像させる結像手段と、
前記被照射物を前記マスク群に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段により前記被照射物を相対的に移動させながら前記第1レーザ出力手段および前記第2レーザ出力手段に対して複数回の照射を行なわせることにより、重複する照射領域内で結晶の引継ぎ成長を行なわせる際、あるスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突しないように前記第1レーザ出力手段および前記第2レーザ出力手段の照射を制御した後、前記移動手段により前記被照射物を相対的に移動させ、他のスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突するように前記第1レーザ出力手段および前記第2レーザ出力手段の照射を制御する制御手段とを含む、半導体薄膜の製造装置。 - 前記マスク群は、nを2以上の整数とすると、相対移動方向に直交する方向において長さWを有し、結晶成長方向にpずつずらして階段状に配置された開口部をそれぞれ有する第1〜第nマスクを含む、請求項1記載の半導体薄膜の製造装置。
- 前記マスク群は、nを2以上の整数とすると、それぞれがマスク群の相対移動方向に配置された開口部を有する第1〜第nマスクを含み、
前記第1〜第nマスク内に設けられた対応する開口部は、それぞれが相対移動方向と平行な方向において長さWを有し、前記相対移動方向におけるマスク端部からの距離がpずつずらして配置される、請求項1記載の半導体薄膜の製造装置。 - 前記制御手段は、kを1以上でn−1以下の整数とすると、前記第1レーザ出力手段および前記第2レーザ出力手段を制御して前記被照射物上に第kマスクに対応する第k照射領域を形成した後、前記移動手段を制御して第k照射領域から結晶成長方向にpだけずれた位置に第k+1照射領域が形成されるように第k+1マスクを移動させ、前記第1レーザ出力手段および前記第2レーザ出力手段を制御して前記被照射物上に前記第k+1照射領域を形成することにより第1〜第n照射領域を順次形成し、
前記第1照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをL1とし、前記第n照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをLnとすると、少なくともp≦L1<W/2≦Lnの関係を有する、請求項2または3記載の半導体薄膜の製造装置。 - 第1〜第n照射領域において自由に結晶成長させるとしたときの結晶成長長さをL1〜Lnとすると、p≦L1<L2<・・・<Ln−1<W/2≦Lnの関係を有する、請求項4記載の半導体薄膜の製造装置。
- 前記制御手段は、前記移動手段を制御して前記マスク群を相対的に第1の方向に移動させながら結晶の引継ぎ成長を行なわせた後、前記マスク群を前記第1の方向と逆方向に相対的に移動させながら結晶の引継ぎ成長を行なわせる、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体薄膜の製造装置。
- 被照射物上に形成された前駆半導体薄膜に対してレーザ光の照射を行ない、該前駆半導体薄膜を溶融し再結晶化させて半導体薄膜を形成する半導体薄膜の製造方法であって、
マスク群に含まれる複数のマスクのそれぞれに設けられたスリットの中のあるスリットを介して第1レーザ光を前記被照射物上に照射し、第2レーザ光を前記被照射物上に照射することによって、前記あるスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突しないように結晶成長を行なわせるステップと、
前記あるスリットに対応する照射領域と前記マスク群に設けられたスリットの中の他のスリットに対応する照射領域とが重複するように前記被照射物を前記マスク群に対して相対的に移動させるステップと、
前記他のスリットを介して前記第1レーザ光を前記被照射物上に照射し、前記第2レーザ光を前記被照射物上に照射することによって、前記他のスリットに対応する照射領域の両端部から成長する結晶が衝突するように結晶の引継ぎ成長を行なわせるステップとを含む、半導体薄膜の製造方法。 - 請求項7記載の半導体薄膜の製造方法によって作製された半導体薄膜であって、
前記半導体薄膜は、複数形成された最終照射領域内に横方向成長結晶以外の結晶および非結晶を含まない、半導体薄膜。 - 請求項7記載の半導体薄膜の製造方法によって作製された半導体薄膜であって、
前記半導体薄膜は、周期的に形成された2つの突起部に挟まれた領域において、該突起部よりも高さの低い微小な凹凸が不等間隔で形成される、半導体薄膜。 - 請求項8または9記載の半導体薄膜を含んだ半導体素子。
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