JP2009024951A - 冷蔵庫、冷凍保存方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】急速冷凍以外の方法で食品の冷凍品質を高める方法である過冷却冷凍を、簡単な構成で実現すること。また、高品質冷凍を簡単な構成で実現できる冷蔵庫および冷凍保存方法を得ることである。
【解決手段】冷却器3が発する冷気を利用して食品を保存し貯蔵する冷蔵庫であって、貯蔵した食品をその凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に少なくとも一定時間保持する過冷却ケース81を備える。過冷却ケース81は、例えば、複数の温度帯に切替可能な切替室200に配した上下2段式の下側ケースにより構成する。
【選択図】図6

Description

この発明は、過冷却を使用した冷凍保存技術に係り、それを利用した冷蔵庫(冷凍冷蔵庫とも称する)に関する。
冷凍した食品を解凍すると、凍結させていない生鮮食品に比べると品質が悪化することは知られている。通常冷凍の場合は、常温の食品を−18℃に設定された空間に入れると、該食品温度はある一定の時間を経て空間と同じ温度まで冷却される。そして、その温度が食品の凍結点以下であれば凍結する。低温環境に該食品をおくと、表面から除々に冷却され、最終的に中心部分までが周囲温度に至る。このとき、表面のほうが先に温度が下がるため、表面が先に凍りはじめるという現象が起き、食品表面にできた氷結晶が食品内部の未凍結状態の水分を引き出しながら拡大するため、中心部分に向かって大きな針状結晶ができる。大きな針状結晶は肉や魚など食品本来の構造を破壊するため、解凍時の食品形状を凍結前の状態に戻すことは非常に困難である。殆どの食品においても、凍結時にいかにして小さな氷結晶をつくるか、氷結晶によって食品本来の構造を破頓しないかが、凍結品質を良くする手段であるといえる。又、最近の家庭用冷蔵庫に対するニーズは、食生活、生活スタイルの変化により「冷凍」または「冷凍保存」に集まっている。更に業務用の冷蔵庫等も同様である。冷凍食品の多様化、利用量増加、作り置き、食品ストックなど、冷凍室利用頻度は高まる傾向にあり、大容量化が求められている。また一方では、食品品質に対する要求も高く、冷凍保存食品の品質を高める工夫は数多くなされている。
このような問題を解決し、高品質冷凍を実現するための代表的な技術としては、急速冷凍が知られている。即ち高品質冷凍技術の代表的なものは、急速冷凍で、急速冷凍の品質評価によく用いられている方法に、肉などの解凍時のドリップ流出量比較がある。ドリップ流出量は、食品が凍結する際の氷結晶の生成位置、大きさなどに左右される。氷結晶が大きいと細胞が破壊され、解凍時のドリップ流出量が増加し、品質低下につながる。一方、氷結晶が小さいと細胞の形状が維持され、解凍時のドリップ流出量は少なくなり、食品のうまみが保持されることになる。
急速冷凍した食品のドリップ流出量が少ない、即ち、食品内部に小さい氷結晶ができる理由としては、最大氷結晶生成帯である−1℃〜−5℃の温度帯を素早く通過させていることが挙げられる。氷結晶の成長が進むこの温度帯にある時間をできるだけ短縮することが、大きな氷結晶の生成を抑制することになる。したがって、急速冷凍は、食品内部に大きな氷結晶が生成されるのを抑制するための一手段といえる。
従来技術には、底面に金属板を有する急速冷凍容器と、急速冷凍容器の上面開口上方に急速冷凍容器内の食品を冷却するための冷気を吐出する冷気ダクトを設け、急速冷凍容器を急速冷凍室に設置するなどして、冷蔵庫での急速冷凍を実施しようとしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、急速冷凍にはいくつか問題点がある。まず、氷結晶について、急速冷凍では小さくなる傾向にあるとされているが、食品中心部まで本当に小さい氷結晶であるとは必ずしもいえない。凍結させる食品がある程度大きくなると、冷気が直接当たる表面は急速に冷やされて小さい氷結晶ができると考えられるが、中心部では温度が下がりきらず、最大氷結晶生成帯に留まり、大きな氷結晶、または、針状氷結晶ができていることも考えられる。次に、急速冷凍時には極低温冷気を吹き付ける為大きなエネルギーが必要であり、省エネについては逆行しているといえる。また、極低温冷気をつくりだすためには、高性能で、巨大な圧縮機を搭載する必要があるなど、コスト的なデメリットも考えられる。
このような急速冷凍の問題点を回避できる新たな高品質冷凍技術として、過冷却冷凍の技術が挙げられる。過冷却とは、食品を特定の冷却条件で冷却していくと、該食品の凍結点以下の温度でも凍っていない状態となることをいう。このような過冷却状態で食品を保存すると、凍結による蛋白質変性、細胞組織の損傷などの冷却障害を回避できるという利点がある。また、過冷却状態とした食品に強制的に刺激を与えて過冷却状態を解除すると、食品が急速に凍結すること、およびこのようにして得られた凍結状態は、過冷却状態を通過してしまう従来の急速凍結法に比べて細胞組織の損傷が少なく、品質劣化が極めて小さいことが報告されている(例えば、特許文献2参照)。過冷却状態を経て凍結した食品は、食品全体に均一に、針状ではなく粒状の細かい氷結晶が生成されるため、細胞組織の損傷が少なくなるのである。従来の過冷却冷凍では、食品等(野菜、果実、肉、魚等)の氷結点(凍結点)付近まで、常温から比較的急速に冷却する急速冷却処理を行い、続いて、氷結点以下まで0.01〜0.5℃/時間の緩慢な冷却速度で冷却するスロークーリング処理を行う方法で、過冷却状態をつくっているものがある(例えば、特許文献3参照)。
また、冷凍庫の内部空間に静磁場を発生させると共に、該静磁場内に位置した物体に対して、静磁場の磁界強度に応じて決定される所定周波数の電磁波を連続的または間欠的に照射し、該物体に含まれる水分子を構成する水素原子核に核磁気共鳴を生じさせて水分の氷結温度を降下させ、氷結温度を通常以下とする方法が記載されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2005−83687号公報(第6―17頁、第2図、第3図) 特開2003−180314号公報(0012欄) 特開平8−252082号公報(請求項1、0015欄) 特開2000−325062号公報(請求項1、0014欄)
従来の技術では、過冷却状態とするときの冷却スピードが遅く、過冷却状態が長すぎると、酸化や細菌繁殖などによって食品品質が低下する可能性があった。また、過冷却状態は不安定であるため過冷却状態での最低到達点温度が深く(低く)到達する前に過冷却が解除されやすい、最低到達点温度が浅い(高い)と解除されたときに出来る氷核が少ないため冷凍品質の良い冷凍ができないという問題点がある。
また、家庭用の冷蔵庫など、いくつかの食品が同時に混在して保存している冷蔵庫で過冷却冷凍を行う場合、過冷却から凍結までに時間がかかりすぎると、緩慢な凍結を行う環境、すなわち温度が高く維持された環境に既に冷凍された食品が長時間放置されることになり、そのような冷凍食品の品質への影響もでてくるという問題があった。
さらに、氷結点付近まで急速冷凍してから緩慢冷却に移行するという方法は、氷結点が異なる食品が混在する冷凍庫においては、最適な移行ポイントを設定するのが非常に困難であるという問題もあった。
また、上記特許文献2では、食品を、容器内にデッドスペースが無いように収容して密封した状態で、凍結点より高い温度から凍結点以下の温度まで−0.5℃/hを越え−5.0℃/h以下の冷却速度で冷却する工程を経て、該食品(水、乳製品、イチゴ)を過冷却状態とする方法が記載されている。このような方法を用いると、従来よりも速い冷却スピードで過冷却状態をつくることが可能であるが、食品を密封するための手間が生じる。また、冷凍庫で保存する可能性のあるすべての食品を密封するのは難しいという問題点が有った。
又、静磁場内に位置した物体に対して、静磁場の磁界強度に応じて決定される所定周波数の電磁波を連続的または間欠的に照射し、該物体に含まれる水分子を構成する水素原子核に核磁気共鳴を生じさせて水分の氷結温度を降下させ、氷結温度を通常以下とする方法で過冷却状態をつくることは、複雑で大きな装置を要する結果となり、食品に対する実用性は薄くなる。例え、業務用の冷凍倉庫にとっても大掛かりとなりすぎて、装置コストがかかりすぎることから、まして家庭用冷蔵庫に搭載することを考えた場合、実用化は難しいと考えられる。さらに、近年、電磁波による健康被害についても注目が集まっており、家庭用、業務用、流通用の冷蔵庫のように簡便に開閉できる装置へ適用するには、人体への影響にも十分注意を払う必要があるという問題点があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、食品の品質を損なうことなく少ないエネルギーで凍結することができる、すなわち、高品質冷凍を簡単な構成で実現できる冷蔵庫および冷凍保存方法を得ることである。
また、本発明の目的は、従来の冷凍方法で常識とされていた極低温冷気で一気に凍結させること無しに従来よりも高い冷却温度で冷却する簡単な構成で高品質冷凍を実現し、省エネ性と高品質冷凍の両方のメリットを発揮することができる冷蔵庫および冷凍保存方法を得ることである。
本発明の冷蔵庫は、冷却室の温度を設定し冷却室に導入される冷気により食品を過冷却状態とする第1の温度設定手段と、第1の温度設定手段にて設定した冷却室の温度より低い温度にて食品の過冷却状態を解除する第2の温度設定手段と、過冷却状態を解除した後で食品を冷凍保存する第3の温度設定手段と、を備え、第1の温度設定手段、第2の温度設定手段、第3の温度設定手段の設定する温度を、時間間隔を置いてもしくは食品の温度を計測して変化させるものである。
この発明に係る冷蔵庫は、冷却器から循環する冷気により収納する食品を0℃から冷凍温度帯の温度まで連続してまたは段階的に温度調整可能な冷凍室と、冷凍室の冷気吹出し口から吹出され冷却器に吸い込まれる冷気を取り入れ、食品を凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に維持する冷凍室内に配置された冷却室と、冷却室に貯蔵された食品が過冷却状態を得るように冷凍室の温度を−2℃以下で−15℃以上に設定する温度設定手段と、冷却室に収納した食品周囲の風速を抑え冷却室に貯蔵された食品を過冷却状態に維持するように冷凍室内に吹出し冷却室に取り入れる冷気を調整する冷気調整手段と、を備えたものである。
この発明の冷蔵庫は、高品質冷凍機能として、従来の急速冷凍ではなく、簡単な構造で過冷却冷凍機能を採用したので、従来よりも少ないエネルギーでの高品質冷凍、すなわち、地球環境対策として省エネルギー冷凍を実現することができるという効果を有する。
また、この発明の冷蔵庫は、過冷却をおこすためのスペース内に冷気を導入し、冷却温度を複数に変化できる温度制御された冷却構造を採用することで、従来と大きく変わらない冷蔵庫の構造、制御で、食肉などの食品の過冷却冷凍を実現できるという効果を有する。
実施の形態1.
まず、過冷却について詳しく説明する。図1は、過冷却なし(a)と過冷却あり(b)で水が凍結するときの温度変化を示したグラフである。グラフの縦軸は温度でありグラフ上方に向かうほど温度は上がる。横軸は時間であり矢印方向に時間経過を示す。過冷却状態とは、その物質の凍結点以下であるにも関わらず、100パーセント凍っていない状態をいう。ここで、凍結点とは、その物質が凍り始める温度のことをいう。すなわち、過冷却状態とは、凍り始めるべき温度ではあるが全く凍っていない状態のことである。例えば、水の凍結点は0℃である。この凍結点は物質によって様々であり、塩濃度や糖度が高い食品などにおいては0℃よりも低くなる傾向にある。過冷却状態と過冷却状態を経た凍結について水を例にさらに詳しく説明すると、過冷却状態とは、水を冷却したとき、凍結点である0℃を下回っても100パーセント水の状態であることをいう。過冷却状態にはいった水も、やがては凍結し、氷とすることが可能であるが、このときには何らかの刺激が必要である。この刺激とは、温度的なものであっても、物理的なものであってもよい。このように刺激によって凍結を開始させることができるのであるが、過冷却状態から凍結開始に移行するまでの時間は、数秒単位であり、瞬間的なものである。しかし、この凍結開始時に瞬間的に凍る水の割合は全体の数パーセントであり、これが100パーセント氷になるまでにはさらに冷却時間を要する。
ここで、通常凍結と過冷却凍結の違いについて比較しながら述べる。まず、通常凍結と過冷却凍結との一番の違いは、過冷却状態に入るか、入らないかの違いである。通常凍結の場合には凍結点を過ぎると、過冷却状態には入らずに凍結が開始する。そして、もうひとつ通常凍結と過冷却凍結の大きな違いは、凍結開始時の状態である。ここで、凍結開始時にはどのような現象が起こっているのかをペットボトルに入った水を例に説明すると、通常凍結の場合には、凍結が開始するとペットボトル表面付近の水から凍り始め、表面部分に薄氷がはったような状態になり、その後内部に向かって氷が広がり、最終的に全体が凍結する。氷の成長は、水分子がある一定以上の大きさのクラスターを形成した氷核を中心に起こるものであり、氷核形成は凍結開始時に起こるものである。したがって、通常凍結の場合には表面にはとんどの氷核が形成され、そこから水の状態である部分へ向かって氷が成長しているといえる。一方、過冷却凍結の場合には、凍結が開始するとペットボトル全体に均一に氷核が形成される。そして、内部も表面もペットボトル内のあらゆる部分で氷が成長するため、一定方向に向かって氷が成長するということはない。凍結完了後の通常凍結と過冷却凍結の違いとしては、その冷却過程の違いから、通常凍結の場合には表面から内部に向かった大きな針状氷結晶ができるのに対し、過冷却凍結の場合には表面と内部に、均一に小さな粒状氷結晶ができる。また、急速冷凍の場合には凍結開始時、凍結完了後にどのような状態であるかというと、表面に冷気を当てて素早く凍結させるという点でいうと通常凍結の場合と同様である。まず表面の温度が急激に下がるため、表面から凍り始める。しかし、通常凍結と異なる点は、内部まで冷却される速度が速くなるため、通常凍結に比べると内部にも氷核ができやすい状態となり、通常凍結時ほど大きな氷結晶ができることはない。食品冷凍について考えると、凍結完了後の氷結晶の大きさ、形状は解凍時の食品品質に大きな影響を与える。食品は、細胞、タンパク質、糖質などで構成されている場合がほとんどであるため、氷結晶によってその構造が一度破壊されてしまうと、完全に元にもどらない場合が多い。したがって、凍結時にできる氷結晶の大きさ、形状が食品本来の構造を破壊しないようなものであると品質の良い冷凍ができているといえるのである。
−60℃に設定された極低温冷凍の場合と、−18℃に設定された過冷却状態を経て冷凍の場合にて、冷却室内のアンガロースゲルを凍結させて結晶状態を比較すると前者の結晶は針状で大きく成長しているのに対し、後者の結晶は粒上で細かく全体的に均一に広がっている。このような差が食品凍結時に生じた場合前者では食品本来の構造が結晶によっては介されるのに対し、後者では氷結晶による影響を殆ど受けないことになり、過冷却状態を経て冷凍すると品質の良い冷凍食品が得られることになる。
次に、過冷却冷凍で食品を凍結させることのメリット及び斬新性について述べる。過冷却冷凍で食品を凍結させることの最大のメリットは、品質の良い冷凍ができるという点にある。これまでに述べてきたように、過冷却状態を経た凍結においては、過冷却状態となる過程で食品内部までも十分に冷却されるため、食品全体に均一に氷核が形成され、小さな粒状氷結晶に成長する。また、過冷却状態で達した最低温度と凍結点との差(図1(b)のA点とB点の差)が大きければ大きいほど凍結開始時に形成される氷核の数が多くなるため、より微細な氷結晶となる。したがって、過冷却が十分に起これば(過冷却状態で到達する温度が低ければ低いほど)、凍結→解凍後も凍結前により近い状態を維持することが可能となる。食品の冷却と氷結晶の大きさ、形状について考える際に、最大氷結晶生成帯である−1℃〜−5℃の温度帯の通過時間を考慮することは従来から行われている。それは、この最大氷結晶生成帯を短時間で通過させてやると氷結晶は小さくなるという考え方である。過冷却冷凍の場合には、最大氷結晶生成帯を含むこの近辺の温度帯(−1℃〜−10℃付近)に過冷却状態で留まる時間は長い。しかし過冷却状態とは凍っていない状態である。したがって、過冷却状態であれば、この温度帯通過時間が長くても凍結後の氷結晶が大きくならず、微細な氷結晶を作ることが可能である。最大氷結晶温度帯を含むこの近辺の温度帯での冷凍で、小さな氷結晶を形成させ、品質の良い冷凍とするという点では全く新規の冷凍方法である。また、過冷却状態が解除すると凍結が開始し、温度が変化しない相変化状態を経て完全に凍結するのであるが、過冷却状態を経ていれば、その後の凍結の過程で最大氷結晶生成帯に長時間留まったとしても、氷結晶が肥大化することはないことが確認できている。したがって、この点においても新規の冷凍方法であるといえる。過冷却を経ていれば、その後の凍結過程に長時間かかったとしても、氷結晶状態にほとんど影響はないが、凍結過程に入ったときに急速に冷凍してやると、氷結晶が肥大する可能性はさらに低くなり、また、氷結晶以外の食品品質低下要因についても回避することができるので、さらに品質の良い冷凍ができるといえる。また、これまでは過冷却状態に入った食品を過冷却解除して凍結させた場合のメリットについてのみ述べてきたが、過冷却状態に入った食品を必ずしも凍結させる必要はない。過冷却状態を維持するメリットとしては、凍結温度以下、すなわち通常であれば凍ってしまうような温度で保存しているにも関わらず100パーセント凍っていない、氷結晶が全くできていない状態であるため、低温で保存しながら氷結晶による食品構造の変化を全く受けないという点が挙げられる。より低温で保存することは食品の様々な化学変化を抑制できるという点で鮮度推持に有効であることは一般的に知られていることであるが、この低温保存と未凍結であるという両方のメリットを達成できる保存方法であるともいえる。また、食品を解凍する必要もない。しかし、未凍結状態であるということには、デメリットもある。食品中の水分が未凍結であるということは、細菌繁殖や様々な化学変化にその水分が利用可能であるということである。したがって、その点では凍結したものよりも注意を払う必要がある。
次に、この発明をその実施の形態に基づいて詳しく説明する。この発明の実施の形態に係る冷蔵庫は、過冷却を安定的に実現するために必要となる安定した温度環境を維持し、食品への冷気直接吹き付けの温度、風速、風量、タイミングなどの温度や冷気を調整する制御機構、食品を収納するケース等の構造と、過冷却解除を確実に実現するために必要となる過冷却完了を判断する装置または制御機構、および過冷却解除に必要とされる刺激を与える装置または制御機構とを備える。また、過冷却解除後の質のよい凍結を維持するための冷却および保存の機能も備える。
先ず、過冷却凍結は、食品温度により以下の5つの状態に分かれる。
(1)未凍結状態 食品温度が、その食品の凍結点以上である。
(2)過冷却状態 食品温度が、その食品の凍結点以下でありかつ凍結していない状態。食品温度が低下し続けるので、過冷却状態であることがわかる。
(3)過冷却解除 食品温度が凍結点以下の温度から凍結点に戻ったとき。
(4)凍結開始〜凍結完了状態:食品が凍結点に達して相変化(水であれば、液体の水から固体の氷に変化すること)を起こし、一定温度で推移する状態。
(5)凍結完了・冷凍保存状態:食品が(4)の過程を経て凍結した状態。
ここで、主な食品の凍結点を説明する。牛肉/豚肉であれば−1.7℃、マグロであれば−1.3℃、バレイショであれば−1.7℃、イチゴであれば−1.2℃、リンゴであれば−2.0℃である。(参考文献:総合食料工業、p.922(1975))
(1)−(2)の状態では、過冷却突入(食品を未凍結状態のまま凍結点以下の温度にすること)のために必要な条件と過冷却を深化させる(過冷却状態のときに到達する温度を低くすること)条件を、(3)では過冷却状態を解除し凍結を開始するための条件を、(4)、(5)では過冷却凍結した食品の良さを保つための条件がある。(1)−(3)をコントロールして十分に深い過冷却度(食品の凍結点と過冷却して到達した温度の温度差)を得ると(4)、(5)によりその効果が消失することはない。但し過冷却状態にあるとき、食品の出し入れで長時間扉を開放し、あるいは、設定温度を凍結点温度以上にして過冷却室内の温度が例えば0℃以上になり過冷却状態が解除された場合は、再び状態(1)から再スタートすることになる。次に(1)−(3)の工程について述べる。
先ず食品として厚さ15mm、150gの牛肉を投入したときの検討結果に基づいて述べる。本発明の冷蔵庫の過冷却室(過冷却スペースに同じ)における過冷却条件について説明する。過冷却の条件設定時に注意すべき点は、冷却速度および冷却される食品の芯温の最低到達点(過冷却状態で到達する温度)と凍結点との差等である。冷却速度が速すぎると、食品全体の温度が不均一な状態で冷却されるため、(食品の表面温度と芯温の差が大きい)凍結している部分と未凍結部分とができる。氷結晶は氷核を中心に成長するため、該食品の一部分でも凍結してしまうと、そこから未凍結部分の水分を取り込みながら成長することになる。その結果、針状の大きな氷結晶ができることになる。細胞間などに生じた針状氷結晶や大きな氷結晶は、細胞中の水分流出や細胞破壊の原因となり、該食品解凍時のドリップ流出を引き起こす。その結果として、食品本来のうまみが減少したり、遊離アミノ酸などの栄養分が減少したり、食感が悪くなったりする。一方、冷却速度が遅すぎると、過冷却状態の維持については問題ないが、未凍結状態が長くなることで、細菌繁殖、酸化促進などにより食品品質が悪化することが問題となる。つまり、凍結点までは表面温度と芯温の差が小さくなるように冷却し、凍結点以下の温度に達した場合(過冷却状態)は冷却速度を上げて、芯温の最低到達点に早く到達するようにして過冷却を解除することで未凍結状態が長くならないようにする。このように食品が凍結点まで、凍結点以下の過冷却状態まで、過冷却解除され、完全に凍結するまでのそれぞれの温度制御、冷気調整を連続してまたは段階的に行うようにする。このような問題を解決するために、過冷却スペースに抗菌機能をつける方法もある。抗菌機能としては、紫外線、オゾンを用いる方法が挙げられる。しかし、抗菌機能をつけるとコストがかかるという問題もある。
先ず過冷却突入条件に対し冷却速度を説明する。食品は表面から冷却され、食品の種類や厚みに応じて熱伝導で食品中心が冷却される。すなわち食品表面の冷却速度が決まってから中心の冷却速度が決まるものだからである。また、実際家庭用冷蔵庫で食品の温度変化を制御する場合、食品の表面温度を検知することが一般的であり、まずはこちらを規定する。食品が過冷却したときの食品表面と中心温度の経時変化では、食品中心の温度と食品表面の温度は略同様な傾向で低下する。厚さ15mm、150gの牛肉で、食品周囲の空気温度は30分程度で設定した温度、例えば−5、−7、−10℃に到達するが、食品表面温度が凍結点へ到達するのはそれぞれ120分程度、80分程度、60分以下と設定温度が高いほど遅れる。食品中心温度は食品表面温度差の差が少なく、それぞれの温度差は0.5−3.0度程度である。但し、空気設定温度が高いほど表面と中心の温度差は小さく、設定温度が低いほど過冷却度、即ち、冷凍時のエネルギーは小さくなる。冷却速度は食品表面温度が3℃から0℃になる範囲で計算する。この温度帯での冷却速度が冷却突入の可否に相関のある温度帯であり、食品周囲の設定温度がー5℃では食品表面の冷却速度は約3.5℃/h、設定温度―7℃では食品表面の冷却速度は約5℃/h、設定温度−10℃の過冷却が浅いときでは冷却速度は約10℃/hである。この結果より、過冷却に突入するための条件として、食品の表面と中心の距離があるときは、食品表面の冷却速度が10℃/h以下であること、望ましくは5℃/h以下であることが示される。また、このとき、食品表面と中心の温度差にも差異がある。設定温度―5℃では、食品表面と食品中心の温度差は約1度(K)(食品中心の冷却速度は約3.5℃/h)で、設定温度―7℃では、食品表面と食品中心の温度差は約2度(K)(食品中心の冷却速度は約5℃/h)である。これに対し、過冷却が浅かった設定温度―10℃では食品表面と食品中心の温度差は約3度(K)(食品中心の冷却速度は約10℃/h)である。この結果より、過冷却に突入するための条件として、食品表面と中心との温度差が3度(K)以下であること、望ましくは2度(K)以下であることが示される。食品の表面と中心の距離が小さく、即ち食品の熱容量が小さい場合、例えば薄い肉などでは設定温度がー10℃より低い、例えばー15℃であっても過冷却度は浅くならず良好な冷凍食品が得られる。
以上のことから、食品表面の冷却速度は、食品の表面と中心の温度差が3K以下となる冷却速度であることが条件と考えられる。このとき、以下の現象の発生が回避されると考えられる。イ)食品表面と中心で温度差が大きくなると、食品中に含まれる水分の密度が変わり、その密度差で食品に含まれる水分の対流が発生する。このため、水分子の会合率が増加し、幼核の成長を促進するので過冷却が解除されやすくなる。ロ)食品表面が先に凍結してしまうと、食品表面は凍結点の温度一定の状態で安定した環境を食品全体に形成してしまう。このため食品は安定的に凍結点に保持され食品表面から伝導する冷却熱は全て潜熱として利用され、凍結が進んでいく。このため、食品の表面が凍結すると、食品全体が過冷却しないことになる。一方、食品周囲の空気温度については、食品を、未凍結のまま凍結点以下にするためには、食品の種類や厚さにより変わるが、一般的に食品周囲の空気温度を−10℃以上にするとよく、食品周囲の空気温度の上限は過冷却させたい食品の凍結点以下であることは自明であり、例えば牛肉や豚肉であればー1.7℃以下であり、たいていの食品に対してはー2℃とする。温度差が3度(K)以下に抑える冷却速度は約3.5℃/h乃至約10℃/h程度、特に約5℃/h程度以下が望ましい。しかしながら、薄切り肉など厚さ10mm以下の場合は、300℃/h以下にすることで過冷却に突入するし、厚み40―50mm程度の塊肉は約2―3℃/hが必要である。いずれの食品でも食品表面と食品中心の温度差を3度程度に抑えればよい。但し、ヨーグルトのようにゲル状で水分が一定の位置に保持されやすい均質な過冷却しやすい食材では、約3.5℃/h乃至約10℃/h程度で過冷却するが、―18℃の設定温度で、温度差5―10度でも過冷却する。
過冷却に突入し、過冷却状態を維持する際の一つの阻害要因としての食品周囲の温度ムラに対しては、冷却速度のムラを抑制する、即ち、食品周囲の冷却速度を小さくすると良い。又、冷蔵庫が空気温度をある一定温度に制御するために圧縮機のオンオフ、庫内ファンのオンオフ、ダンパの開閉など、様々な機器動作の影響により食品周囲の空気温度に変動があることは避けられない。空気温度変動があることで、食品内部の温度変動が大きくなる。このため、食品内部の水分の対流が促進される、すなわち水分子の会合確率が高くなり、過冷却が解除されやすくなる。これを回避し過冷却に突入するには食品の凍結点を越える(例えば−1.7℃)まで、すなわち過冷却状態に突入するまでの温度変動幅は、実験では約6度(K)以内であった。食品の大きさや種類によらず、食品表面へ過冷却が解除する刺激を与えてはいけない。このため食品周囲の空気温度変動は、前述の通り6K以内であることが望ましい。ただし、多少過冷却度が浅くなったり過冷却が発現する確率が低くなっても過冷却状態を作ることは可能であり、例えば吹出口近傍で、温度変動が6Kより大きい、例えば15Kとなるような環境であっても過冷却に突入することはできるし、過冷却しやすい食材では過冷却を深化させることができる。過冷却状態に突入し、過冷却を深くするためには必ずしも同じ温度で冷却する必要はない。一定の温度で冷却していると食品が冷却され、食品表面温度が低下して食品周囲の空気温度との温度差が小さくなり、食品表面温度はほぼ食品周囲の空気温度で安定する。このため過冷却を深化させるためには、食品表面と食品周囲の空気温度の温度差を一定以上に保ちながら冷却(深化)していくと良い。このためには食品表面または中心温度に応じて食品周りの空気温度を下げるようにすれば良い。家庭用冷蔵庫におけるこの過冷却深化の工程では、あらかじめ定めた時間(あらかじめ実験で検討した、食品投入から食品中心温度が−1℃に到達するまでの時間;例えば2時間)してから、一定時間毎に(あらかじめ実験で検討した、食品温度が1℃低下する毎の時間;例えば0.5時間)に設定温度を1℃下げていくなどでも良い。このようにすることで、食品表面と食品周囲の空気温度との温度差を維持しつつ食品を冷却できるので過冷却を深化させることができる。逆にいうと空気温度にムラが大きい、あるいは空気温度が変動が大きいと、食品表面の温度の分布が大きくなり、あるいは食品表面の熱伝達率が大きくなり表面の冷却しやすい個所から結晶化が始まり過冷却が解除されることになる。
図2は、通常の急速凍結と過冷却凍結で肉を凍結したときと、一度凍結した肉を解凍したときの肉組織の状態を示した図である。このように、肉や魚などを冷凍したときに内部にできる氷結晶が大きいと、細胞を破壊し、解凍後のドリップ量が多くなることは知られている。そこで、過冷却冷凍と通常冷凍の牛モモ肉やマグロのドリップ量を比較すると、過冷却冷凍したもの通常冷凍の半分以下に抑えられる傾向が見られている。ジャガイモなど、芋類は従来冷凍に適さない食品とされていた。カレーなどを作ったとき、冷凍保存し、翌日以降に温めなおして食べるというようなことは一般家庭で日常的に行われていることであるが、その際、ジャガイモだけは取り除たり、つぶしたりして冷凍することがカレーをおいしく冷凍するための常識であるとされていた。これはジャガイモを冷凍し、解凍すると、スカスカになり、食感が悪くなる。しかし、過冷却冷凍でカレーを凍結させると、解凍後もジャガイモの食感が凍結前とはほとんど変わらず、スカスカあるいはべちゃっとした食感になったりしない。ジャガイモの主成分であるデンプンはアミロースとアミロペクチンで構成されているが、それらの立体構造を氷結晶の成長によって破壊するのが従来の冷凍で、一度破壊された構造は解凍しても元に戻らないため、解凍したジャガイモはスカスカになる。これに対して、過冷却冷凍でできる氷結晶は非常に微細であるため、凍結時にデンプンの立体構造をほとんど変形させることがなく、解凍しても、元の立体構造を維持できると考えられる。したがって、過冷却冷凍後、解凍したジャガイモの食感は悪くならないと考えられる。このような原理は、冷凍に適さないとされていた他の食品にもあてはまる場合があり、従って過冷却冷凍を用いると、これまで冷凍に適さないとされていた食品の冷凍が可能になることも示唆される。このように、冷却状態を経て食品などを凍結させた場合、微細な氷結晶ができるため、細胞やタンパク質などの本来の食品構造を変化させることなく維持できることが分かってきている。したがって、凍結→解凍した食品を再び凍結するなど、凍結→解凍を繰り返しても従来冷凍時のように品質が極端に悪化することがなくなる可能性もある。以上は一般家庭での活用によるメリットについて述べたが、食品加工においても過冷却冷凍は有効利用が可能であるといえる。過冷却冷凍で生じる氷結晶の細かさは−60℃の冷凍にも優るという結果が得られており、高品質冷凍を実現するという点で、業務用冷凍庫にも代替できるといえる。そして、業務用のように大きなエネルギーを使って極低温冷気をつくりだす必要がないため、省エネ性が高いというメリットがある。
以上の検討では食品周囲の冷気が流れる風速を0.5m/s程度を想定している。食品は、食品表面と食品周囲の空気温度との温度差と対流熱伝達率により冷却速度が決まる。対流熱伝達率が小さい方が食品表面と中心との温度差が小さくなる事と、早く過冷却状態としたいということからである。なお、食品表面温度の経時変化により冷却速度を規定しているが、実際の製品では食品表面温度の検出手段としてサーモパイルが挙げられる。これは食品表面から発する赤外線による輻射熱を受けて非接触で食品表面温度を検知するものである。これにより、食品が冷蔵庫の切替室などに投入されたときのサーモパイル検出温度から食品の温度や面積を推論し、さらにその後のサーモパイル検出温度の経時変化から投入された食品の熱容量を推論することで、各工程における制御時間を投入された食品に応じて延長または短縮することができる。
過冷却は元々不安定な状態であり、何らかの刺激が加わることで解除される。一般的に振動で解除されると言われているが、例えば密封容器に隙間なく水を充填したときなどは、例えば容器を激しくふっても解除しないし、冷蔵庫の引き出し式の部屋、例えば切替室に入れ、扉開閉を全開/全閉数十回繰り返しても過冷却は解除しない。ただし、密閉容器に1/2程度のみ水を入れた場合は、一度に解除する。このことから、振動で過冷却を解除するには液体が自由に流動する空間が必要であると考えられる。肉や魚、果物など食品の場合、各細胞および細胞間に隙間なく水分が充填されているため、隙間なく水を充填した密閉容器に相当する。実際、過冷却した肉を入れた切替室で、扉開閉を全開/全閉を繰り返しても過冷却は解除しない。又過冷却解除のときに食品全体の何パーセントで氷核が形成されるかは過冷却度の大きさにより決まる。例えば過冷却度が4度(K)であった場合には食品全体の水分の5パーセントで氷核が形成されることが次の凍結率の式から明らかである。
凍結率(%)=(Cp*rV*ΔT)/L*rV*100
Cp; 比熱(kJ/kgK)
r ; 密度(kg/m3)
V ; 体積(m3)
L ; 潜熱(kJ/kg)
ΔT; 温度差(K)
過冷却度が4度あれば、氷結晶形状は微小な粒状である。過冷却解除後、食品温度が凍結点以下の温度から凍結点に戻ったとき(このときの温度差が過冷却度)から次の工程で凍結を開始し凍結完了状態になるまでは、食品が凍結点に達して相変化(水であれば、液体の水から固体の氷に変化すること)を起こし、一定温度で推移する状態であり、この後、凍結が完了し設定された温度で冷凍保存状態する。過冷却さえ起こせばその後の凍結スピードは氷結晶形状には影響を与えないし、過冷却時に微小な氷核が形成され、その氷核が食品全体に分布していれば食品全体の氷結晶は細かくなる。以上のように過冷却解除のときに食品全体の水分の何パーセントで氷核が形成されるかを凍結率で求めることが出来、実験データによると、過冷却度が0.8度のとき凍結率は約1パーセントで氷結晶は大きな針状であった。過冷却度が2.6度まで大きくなると氷結晶はかなり微小になるが凍結率は約3パーセント程度で、過冷却度が4.1度まで大きくなると、肉眼では判別できないほど微小な氷結晶で凍結率は約5パーセント程度である。このように過冷却解除時に出来る氷核は食品全体の水分の数パーセントでしかないにもかかわらず、氷核が食品全体に均一に生ずることで、その後の冷凍保存時の氷結晶状態が左右される。また、過冷却状態のときに蓄えられるエネルギーは氷核生成時のエネルギーとして使われるため、過冷却度が大きく、蓄えられるエネルギー量が多ければ多いほど、過冷却解除時に生ずる氷核の数は多くなり、その分だけ氷結晶径も小さくなると考えられ、氷結晶による食品損傷の影響は小さくなると考えられる。
以上のように冷蔵庫に収納した食品を過冷却状態にするためには、ある範囲の冷却能力により冷却することが必要条件となる。これは食品を冷やす冷却能力が弱すぎても強すぎても過冷却状態にならない、もしくは過冷却状態がすぐに解除されてしまうことを意味する。冷却能力が弱い場合は収納食品が過冷却状態に入りやすいが食品周辺の冷却能力が弱い=温度が高いということになり、過冷却状態での食品温度の到達点も高くなってしまうので過冷却が深く(=より低い温度)ならずに過冷却解除してしまう。一般的には過冷却の深さが大きければ大きいほど大きなエネルギーとなり、食品内での微細結晶を生成し高品質冷凍になるため、より過冷却を深くするためには冷却能力が弱いだけでは成立しない。過冷却の深さについては3K(例えば食品が過冷却状態で−4℃まで到達してから解除して−1℃まで温度が瞬時に上がる)以上となると食肉解凍時のドリップ流出量にも大きな差異を発生するためそれ以上の過冷却深さに追い込むことが必要である。また逆に冷却能力が強い場合には食品の凍結温度に到達した時点でそのまま凍結する場合や、過冷却状態に入ってもすぐにその強い冷却能力が刺激となって解除してしまう現象につながるため深い過冷却度は得られない。よってある範囲の冷却能力で食品を冷やすことが必要条件となってくる。以上のとおり、冷却能力が弱い(=部屋温度が高い場合)には、食品を冷蔵庫に投入した際、部屋温度は約−3〜−4℃にて推移し、この温度のまま食品を冷却しても部屋温度が−3〜−4℃である以上は食品温度も当然それ以下にはならないため深い過冷却が得られないので、部屋温度を少しずつ下げることになるが、結局は食品温度が約−3℃になった時点で解除する。このように冷却能力が弱い(=温度が高い)場合には過冷却には入るものの深く入らないため、食品としての有意差をユーザーが感じることが少ない。又冷却能力が強い(=部屋温度が低い)と過冷却状態に入らず凍結温度に到達した時点で凍結を開始してしまう。
但しエア温度を−10℃以上とするとした場合、部屋温度は約−7〜−8℃レベルまでしか下げられないが、過冷却の深さとして3K以上を得ることは本温度で十分達成可能となる。また設定温度を下げる際には食品の凍結温度(約−1℃)付近から温度を下げるとより深く過冷却を追い込むことが可能となる。またその温度を低減する際には食品に対して強い刺激を与えないように少しずつ下げるのが良い。例えば設定温度を2度づつ低減させた場合に過冷却解除してしまうケースが発生しても1度づつ低減した場合には温度勾配による刺激が緩和されるため解除に至らない。続いてすでに説明したように、もう一つの過冷却必要条件として過冷却対象食品付近のエア温度分布(ムラ)がある。これはある範囲のエア温度分布(ムラ)に食品が設置されないと過冷却に入らない、もしくはすぐに過冷却が解除してしまう現象が発生するためである。これは食品の温度ムラにおける温度の低い箇所から凍結もしくは過冷却解除が発生してしまい、結果としてその影響が温度の高い箇所の食品まで達して追従するように凍結もしくは過冷却解除してしまうためである。よってある範囲の温度分布(ムラ)で冷却をすることが必要条件となってくる。具体的にはエア温度ムラが小さくなればなるほど良いが冷蔵庫の実機バラツキや収納食品の大きさや形などの様々な要因が発生するため温度ムラとしては約2K以下にすることが望ましい。部屋温度に関係なく温度ムラと過冷却の深さについて実験結果を統計的にまとめると温度ムラ2K以下になると過冷却の発現確率が上昇してくることが判る。この条件に上述の温度設定を掛け合わすことにより過冷却の発現確率は極めて100%に近づけることが可能となる。
冷却強さの調整のため冷蔵庫に搭載している圧縮機のON/OFFと各部屋に設置された温度センサにより調整するダンパなどで温度を一定に保つようになっている。よって必ず冷蔵庫の各部屋においては冷気が供給される時間とされない時間(冷気ON/OFF)が存在する。よってその設定された部屋の温度に調整するためにはその部屋温度よりも温度の低い冷気を供給しなければならない。しかし過冷却実現のためには上述のような温度にて食品を過冷却状態にする必要がある。このような場合はより食品付近エア温度の必要条件である−15℃以上、望ましくは−10℃以上の温度で一定に冷却し続けたいが、現実的に家庭用冷蔵庫において温度ハンチングの少ない雰囲気を実現するのは困難であり、過冷却対象食品の周囲にくる冷気温度を制御する。その実現手段としては大きく2つに別けられる。まず1つ目はその部屋を冷却する冷気温度を過冷却最適温度により近づける手段である。通常冷蔵庫における冷凍温度帯に温度設定できる部屋を冷却する場合の冷気温度はその冷気供給口(吹出口)で約−25℃レベルまで達する。この温度は過冷却最適温度とはかなりかけ離れた数値であり、この冷気供給の源流の温度を制御することは有効な手段となる。その手段については、まず圧縮機の冷凍能力を下げることにより冷気温度を上げる手段が挙げられる。とはいっても過冷却以外の本来の冷却能力は確保しておかなければならないので圧縮機自体の能力を低減させるのではなく、インバータ制御などで圧縮機の駆動回転数を低減することにより冷凍能力を低減させて冷気供給温度を上昇させる。実際に圧縮機を10rpsレベル回転数を低減させると吹出し温度も約3〜5Kの温度上昇は見込まれる。また冷気を供給する冷蔵庫内の送風ファンの回転数においても、その回転数を変更して供給冷気温度を制御することは可能である。実際にファンの回転数を下げると冷気速度が減少して対流熱伝達が抑制されるため冷気温度としても低くなる。よって逆にファンの回転数を上げることにより熱交換が促進されて冷気供給温度が上昇する。実際に庫内ファンが300〜400rpm上昇すると冷気温度としては約2〜3Kの温度上昇は見込まれる。そのほかにも冷気供給吹出し口周辺に保温ヒーターなどを設置して冷気温度を上昇させることも考えられる。
2つ目の手段として冷気供給温度を上げるのではなく、その冷気が食品に当たる前に冷気温度を上昇させて食品付近に温度の低い冷気をなるべく直接当てないことがその手段となる。その実現のためには、冷気供給口から食品への冷気到達距離を長くすることが挙げられる。例えば冷気供給口周辺に冷気整流ガイドを設けたりすることや、吹出し口と食品設置位置との間に障害物を設けるなどの構造により可能となる。これにより食品周辺到達冷気温度は途中の熱交換により上昇させることが出来る。さらに食品に対する冷気の吹き付け速度も落とせるため強い刺激を与えずにじっくりと冷却することができる。吹出し口と食品設置位置との間に障害物を設置した一例として食品収納ケース上方にフタ形状を追加した構成が可能である。蓋により冷蔵庫の背面側にある冷気吹出し口から扉側に設けたケースの開口までの距離をケースの長さの半分以上取れる。この場合の気流解析すると、フタ形状の追加により食品付近の冷気エア温度を上昇させる、更には風速を減少させることが可能となる。又冷蔵庫内に冷気を循環させる送風ファンと吹出し口との間に冷気供給を制御するダンパがその角度を調整して冷気量を絞るなどの冷気供給のシャッターの役割を果たす。ダンパは全閉、全開だけでなく、途中の角度に調整して冷気量を絞り食品へ吹付ける風速を抑制することが出来る。冷気吹出し口の風速をダンパ開度を調整し1.0−1.2m/sとし、ケースに蓋を設け、扉側からケース内に冷気を供給するようにしてケース内の風速を0.1−0.5m/sとして過冷却状態を維持している。この第1の手段と、第2の手段を個別に行っても良いが、組み合わせて食品付近の温度を過冷却に都合が良い温度とすることも出来る。
また温度ムラ改善についての実現手段については冷気供給のON/OFF回数を低減することにより温度ムラ、ハンチングを抑制する手段である。これは上述のように制御装置16にて圧縮機10の回転数を低減してより高い冷気温度を供給することにより設定温度に到達するまでに要する時間を長くしてON/OFF回数低減、温度ムラ、ハンチング改善へとつなげることが出来る。このようにON/OFF回数を低減させる手段=冷却能力を低減することとなるのでこれもまた上述のダンパ角度調整などによる冷気量の絞りなども有効な手段である。さらにその上で吹出し口のエアガイドの形状や冷気吹出し口と食品間の障害物の形状などで冷気温度や風速を調整することが可能となる。
次に、過冷却状態を実現する過冷却スペースの構造、過冷却状態解除時期の判断方法および過冷却解除方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、同じ符号は、同一物または相当物を表すものとする。
過冷却状態を経て冷凍保存が行われるこの発明の実施の形態1における冷蔵庫について詳しく説明する。図3は、この発明の実施の形態1における冷蔵庫1の断面図である。この冷蔵庫1の食品貯蔵室は、最上部に開閉ドアを備えて配置される冷蔵室100、冷蔵室100の下方に冷凍温度帯(−18℃)から冷蔵、野菜、チルド、ソフト冷凍(−7℃)などの温度帯に切り替えることのできる引き出しドアを備える切替室200、切替室200と並列に引き出しドアを備える製氷室500、最下部に配置される引き出しドアを備えた冷凍室300、冷凍室300と切替室200及び製氷室500との間に引き出しドアを備えた野菜室400等から構成される。冷蔵庫100の扉表面には、各室の温度や設定を調節する操作スイッチと、そのときの各室の温度を表示する液晶などから構成される操作パネル5と、この操作パネルにより操作されて設定された温度に各庫室に配置された温度検出器の温度を調整するように圧縮機やダンパの開閉を制御する制御装置16が設けられている。
冷蔵庫1の背面側には、冷凍サイクルを構成する圧縮機10及び冷却器3が配置され、さらに、冷却器3により冷却された冷気を冷蔵室100や切替室200に送風するためのファン2、冷却器3により冷却された冷気を冷蔵室100内に導入するための風路4が設けられている。又背面側上部の冷蔵庫1外郭の中に配置された制御装置16の制御基板に取り付けられたマイコンに記憶されたソフトウェアにより操作スイッチ、操作パネル5の制御動作や表示などとともに庫内に配置した温度センサの検出信号に基づき圧縮機10や送風ファン2などの制御が行われている。なお、切替室200には収納ケース201が、冷凍室300には収納ケース301が、野菜室400には収納ケース401が、それぞれ設置されており、それらのケース内に食品を収納することができる。
図4は、この発明の実施の形態1における冷蔵庫の風路構成を示す冷蔵庫の概略側面断面図である。冷却器3で冷却された冷気の一部は、冷凍室300に送風される。また、残りの冷気は風路4を通り、切替室200に送風される。風路4を通った一部の冷気は更に上段の冷蔵室100へと送風され冷蔵室100を冷却する。野菜室400は冷蔵室100の戻り冷気が冷蔵室用帰還路6より循環されて冷却され、野菜室400を通った空気は、野菜室用帰還路7を経て冷却器3に戻る。
図5は、この発明の実施の形態1における切替室200の側面断面図である。冷蔵室100と野菜室400の間に位置する切替室200には、風路4からの冷気をダンパ(切替室ダンパ)46を介して切替室200に導く切替室風路41が設けられている。そして、冷蔵庫の正面側からみて背面左上の切替室背面上側吹出し口42と、天井面手前側の切替室天井面吹出し口43とが冷気吹出し口として設けられている。また、切替室200には、背面右下に切替室背面吸込み口44と、底面に切替室底面吸込み口45とが設けられている。切替室200は、冷蔵(約3℃)、チルド(約0℃)、ソフト冷凍(約−5、−7、−9℃)、冷凍(約−17℃)など、6通りの温度帯に切替可能となっており、冷蔵室100の扉に設置された液晶パネル5によって、温度を切り替えることができる。切替室200の温度は、図示されていないサーミスタの設定温度およびその検出値により制御されている。
次に、切替室200内に過冷却室を設置する構造について説明する。図6は、この発明の実施の形態1における過冷却ケースの構造図である。図6では、図5で示した切替室収納ケース201を上下2段に分けて2段式のスライドケースとし、その上側ケース80を通常の切替ケースとし、その下側ケース81を食品を過冷却状態とする冷却室である過冷却スペースとしての過冷却ケースとしている。切替室200を引き出すと、切替ケース80と過冷却ケース81が同時に引き出される。過冷却ケース81使用時は切替ケース80を奥へスライドさせることで、過冷却ケース81から貯蔵品が取り出せる。上側ケース80と下側ケース81との間には周囲に15mm程度の隙間が開いている。冷凍温度が設定されているときは冷気吹出し口42、43などから約―20℃の冷気が切替室に吹出す。この構造によれば、室内に吹出された気流は上側の切替ケース80の内部や周囲を冷却し、上側ケースと下側の過冷却ケース81との間の隙間から下側ケースへ流入するが、気流の流れとは直角方向の隙間でもあり、下側ケース内へ気流が直接流入するのを抑制されるため、過冷却ケース81の空気温度上昇やケースない風速が抑制される。また、通常冷却時には、過冷却ケース81の上部が切替ケース80によりカバーされて、冷気が直接入りにくい構造となっているため、過冷却をつくるときに必要な緩慢冷却が可能となる。
また、切替ケース80の底面82に空気温度変化を抑制できるような熱容量の大きい物質(例えば金属板、蓄冷材をケースを2重構造にして注入するなど)を設置してもよい。
こうすれば、底面82は過冷却ケース81の上部にあたるため、扉開閉を含めた冷蔵庫通常使用時に、過冷却ケース81内の空気温度変動を抑制する効果が得られる。
切替ケース80と過冷却ケース81の間には1mmから30mm程度の空間があってもよく、その場合、この冷却室を過冷却時にするときは、すなわち過冷却ケース81に冷気を流入して冷えがよくなる効果、また、過冷却解除時には冷気の流れがよくなることで解除を効率的に行えるという効果が得られる。しかし隙間があまりに小さいと過冷却突入時や過冷却解除時に急速冷却や直接冷却のために下側ケースに別の開口を設ける必要があるなどのため、10−30mm程度の隙間がのぞましいともいえる。又解除用の開口を設けるのであれば、吹出された冷気が直接入り込むのではなく、自然対流レベルの気流であっても問題はない。直接冷気を流入させてもすでに述べてきたように風速を小さくしたり、冷気温度を高くすることで同様の効果が得られる。切替ケース80と過冷却ケース81の間に隙間がある構造の場合の動作としては、切替ケース80の底面に車輪をつけ、過冷却ケース81に設置したガイド上をすべらせる、あるいは、切替ケース80の底面に溝をつけ、過冷却ケース81上部に設置した支柱をはめ込んで滑らせることなどが考えられる。また、壁面に切替ケース80のみを前後にスライドさせるためのレールを設置してもよい。なお、切替ケース80と過冷却ケース81の間に隙間がない場合でも適度な冷却性能は得られる。隙間がない場合には、通常冷却時における空気温度変動の幅を小さく抑えることができる。
さらに、図6のように、高さのあるケースを2段に分けることで、ケース内の整理性が高まり、より使い勝手がよくなるという効果も得られる。また、2段ケースの下側を過冷却スペースとすることで、冷気が下方に溜まるという特性から過冷却スペースの冷却性を高めるという効果、上側のケースが下側のケースに吹出し気流の直接流入を抑制する役割を果たす場合の空気温度変動を抑制する効果も得られる。なお、過冷却ケースの深さとして70mm程度のものでも良いし、食パンの冷凍保存や大型ヨーグルトのチルド保存を想定し140mm程度やそれ以上、例えば300−600mm程度の深さにしても良い。上側ケースは下側ケースと同じ程度の容量、あるいは図のように下側ケースの数倍の容量などの深さが考えられる。2段ケースの下側を過冷却スペースとする構造としては、図7のように、上側ケースをその前側と後側で深さを相違させるように底面に段差を設け、下側ケースをその段差スペースに対応させて配置する構成としてもよい。図7においては、上側ケースが切替ケース83であり、下側ケースが過冷却ケース84である。図7の構造においては、切替ケース83の背面側には背の高い食品を収納でき、扉側には小物を収納できるというメリットがある。過冷却ケースには冷気を供給する隙間が上側ケースとの間に設けてある。また、2段ケースの下側を過冷却スペースとする構造としては、図8に示すようなものでもよい。図8においては、上側ケースが切替ケース85であり、下側ケースが過冷却ケース86である。切替ケース85と過冷却ケース86の奥行きは必ずしも同じである必要はなく、一部隙間が開いていてもよい。また、切替ケース85をはめ込み式とすることができるほかに、スライド式として、ケースを奥に押し込んで過冷却ケース86内の食品を取り出す構造としてもよい。図8の構造においては、上側ケースを追加するだけで過冷却スペースができることから、変更の際にコストが安くて済むというメリットがある。
すでに説明したように、冷却速度はある程度限定する必要がある。例えば、プリン、ヨーグルトなどの食品では、300℃/h〜0.35℃/hの範囲内、好ましくは3.5℃/h付近の冷却速度に設定し、過冷却状態をつくる。上記の冷却速度は、芯温が凍結点から凍結点よりも20℃低い温度の範囲内、好ましくは凍結点から−10℃の範囲内に至るまでのものである。
また、過冷却状態は一定時間保持する必要あり、例えば5秒以上必要である。これはより過冷却の温度を深くするためである。つまり食品が過冷却状態で到達する温度をより低くすることである。過冷却の温度が深いと良いとされる理由はすでに説明してきたように過冷却の温度が深くなると、過冷却で蓄えられる顕熱エネルギー量が多くなるので、結果的に過冷却解除時に使われる瞬間的な潜熱変化のエネルギーが大きくなり、そのエネルギーを利用して、過冷却解除時に発生する氷核が食品中に均一に一度に多く発生し、その氷核を核に氷結晶が成長するため、小さな氷の粒が食品内に均一に多数でき、細胞内の氷結晶が細胞の破壊を少なくし解凍時のドリップ流出を抑えるなど細胞への影響が小さくなるといえる。更に、食品に直接冷気を吹付けない、あるいは風速を抑える、温度変動を抑えるので、食品の乾燥や霜つきを抑えることが出来る。また過冷却状態にある時間が長いほど過冷却到達温度が低くなる可能性が高くなる。これにより過冷却度が大きくなるため、過冷却状態の保持はある程度の時間が必要である。
また、芯温が過冷却解除可能温度に達したときの表面温度との差は0℃〜10℃の範囲内、好ましくは5℃以内とするのが好ましい。牛モモ肉、厚さ15mmで150gであれば表面温度と芯温の差は1℃程度である。以上のような冷却条件についての範囲は、肉、魚、野菜、果物などの食品についても同様にいえる。
過冷却状態を維持するには過冷却スペース内の空気温度の変動(時間による温度の相違)についても重要である。食品周囲の温度や風速にも夜が、空気温度変動の幅は好ましくは5℃以内である。ただし、10℃以内であれば多少品質は悪化する場合もあるが、過冷却状態をつくることは可能である。空気温度変動幅が大きいと食品品質が悪化する理由としては、凍結融解を繰り返すことで氷結晶が若干大きく成長してしまうことが挙げられる。なお、空気温度変動幅を小さくする他の手段として、図示しないサーミスタの検出値による機器制御のため、あらかじめマイコンなどに定められている設定値の変動幅を小さくしてもよい。好ましくは4K(4℃)以内、さらに好ましくは1K(1℃)以内とする。
又、空気温度ムラは過冷却度数度以内であればよいが、過冷却突入のためには過冷却度2度程度以内が望ましく、空気温度ムラが大きすぎることの問題点としては、大きな食品を冷却しようとするとき、部分的な凍結がおきてしまうことが挙げられる。すなわち過冷却室の温度に関係なく、温度ムラと過冷却の深さについてを実験で求めると温度ムラが2K以下になると過冷却の発現確率が100パーセントに近付く。したがって食品近傍の温度を押さえ、風速を低減することが重要になるとともに、過冷却室の開口位置や大きさを過冷却室内全体に冷気が回り局所的な温度が低すぎることがないようにシミュレーションにより気流分布、温度分布を求め選定している。
過冷却冷凍の温度設定基準については、これまでに述べたような冷却速度等を満たし、過冷却発生確率が高い温度帯には、例えば、−3℃〜−10℃がある。この温度帯においては、冷凍するだろうと考えられるほとんどの食品の凍結点が含まれるため、過冷却を起こした後に安定的に凍結させることが可能である。また、このような温度帯での食品保存期間は2週間程度となり、例えば週末のまとめ買いで購入した食品が予定変更等により使いきれなかった場合でも安心して次の週まで保存できる。また、この温度帯で凍結後保存すると、解凍することなく包丁などで切り分けることができるため、調理の手間を省ける。ヨーグルトやプリンなどのデザート類を過冷却冷凍で凍らせると、非常に微細な氷結晶ができるため、通常冷凍や冷蔵とは異なった新食感を得ることができる。また、牛乳やジュース類などを過冷却冷凍すると、通常冷凍とは違った食感のシャーベットができるなど、微細な氷結晶ならではの新メニューができる可能性がある。
次に、冷却室である過冷却室(過冷却ケース)の過冷却制御について説明する。ここでは、過冷却解除時期の判断を過冷却開始からの積算時間を基に行い、過冷却解除を食品周囲の空気温度を低温側へ変化させることで行うこととする。図9は、制御装置16に記憶された過冷却制御である冷蔵庫の制御を示したタイミングチャートである。過冷却ケースに収容された食品を過冷却するには、過冷却ケース内の食品の芯温、但し表面温度と芯温との差が小さい場合は表面温度が凍結点を越え過冷却状態に達するまで(ステージ1)、圧縮機10、ファン2、ダンパ46などが、過冷却ケースのある室内(ここでは切替室200)を、例えば−2℃〜−20℃の範囲で選択される空気温度にするように動作する。なお、圧縮機10やファン2は別の部屋の温度でコントロールして、ダンパ46の開閉のみで温度を制御してもよい。このステージ1では、切替室200の温度を設定するサーミスタ(図示せず)の設定温度は通常時と同じ(図9で「Tset」として表示)とする。過冷却解除が可能(食品温度が凍結点より3℃以上低い温度まで過冷却されている状態を言う)な時間(過冷却状態を少なくとも5秒間保持した後)に達して(ステージ2)、過冷却解除した後、食品全体が完全に凍結するまで(ステージ3)は、サーミスタの設定温度は、通常温度設定(Tset)としてもよいが、その設定温度を下げ(図9で「Tset−down」として表示)、切替室200の温度をシフトダウンさせてもよい。その場合には、過冷却解除の確実性が増し、解除後の冷却速度が速いことから凍結品質も向上する。また、通常の急速冷凍のように、−20℃以下に過冷却ケース内温度が下がるように急速冷却し、一気に凍結させるとさらに凍結品質はよくなる。食品が完全に凍結した後(ステージ4)の保存温度設定に関しては、−15℃以上など高温側の温度設定とすると、省エネ性が高まり、−5〜−10℃では冷凍保存しても冷蔵庫から取り出してすぐに包丁で切れるため使い易い。また、−15℃以下など低温の温度設定とすると、保存性が高まる。
冷蔵庫1の以上の制御装置の制御動作をまとめると、図10のフローチャートのようになる。図3における液晶パネル5に設けられた過冷却ボタンを押すと、過冷却時間の積算がスタートする(ステップ1)。ここでは、常温から過冷却温度に達するまでの時間を予め5分〜72時間の範囲、好ましくは1〜24時間の範囲で定めておき、その時間経過後(ステップ2)、過冷却ケース内部を自動的に低温側へ温度変化させる制御とする(ステップ3)。なお、扉開閉など、実使用上の温度上昇を図示しないサーミスタが検出したときは、所定温度以下の時間のみを積算するものとする。図9に示したステージ2およびステージ3の積算時間が所定時間に達したと判断すると(ステップ4)、サーミスタの設定温度、圧縮機10およびファン2の速度を通常の値に戻す(ステップ5)。
収納された食品を過冷却状態に実現可能な冷却室である切替室200は、冷蔵(約3℃)、チルド(約0℃)、ソフト冷凍(約−5、−7、−9℃)、冷凍(約−17℃以下)などの複数の温度帯に切替可能となっており、これらの温度は冷蔵庫本体背面部の上部に設けられたマイコンなどで構成された制御装置16がダンパー、圧縮機、送風機などを制御して、設定された温度に切替設定が行われる。扉表面に設けた表示パネル5の一例を図25に示す。図25は本発明の実施の形態を表す液晶表示パネルを表す図である。図において、5は表示パネルであり、冷蔵室、野菜室、冷凍室、切替室のいずれかを選択する部屋選択スイッチ5a、選択された部屋(貯蔵室)の温度調節、あるいは急速冷凍を選択する温度調節・急冷スイッチ5b、過冷却冷凍(瞬冷凍)を選択する過冷却冷凍(瞬冷凍)スイッチ5c、製氷モードを通常、透明、急速、停止から選択する製氷切替スイッチ5dが設けられている。(ここで、過冷却冷凍は瞬時に凍結するため本発明では瞬冷凍とも言う。)また、表示パネル5には各温度帯の部屋(冷蔵室、冷凍室、切替室、野菜室、過冷却室など)ごとの設定温度や現在の温度を表示しても良い。また、食品温度の表面温度を非接触の赤外線センサやサーモパイルにて計測する場合には、この測定された食品表面温度(たとえば図9に示されるように食品温度)を液晶表示パネル5に表示すると過冷却状態や食品の表面温度が一目で分かり冷蔵庫の使用者にとって時間経過を把握したり、食品がどの程度冷却されていなかをドアを開けて確認したりする必要もなくなり便利である。ここで、急速冷凍を行いたい場合は、温度調節・急冷スイッチ5bを所定時間(3秒)押し続けることで、急速冷凍モードに入り、急速冷凍が行われる。また、過冷却冷凍(瞬冷凍)を行いたい場合は、過冷却冷凍(瞬冷凍)スイッチ5cを押すことで、過冷却モードに入り、過冷却冷却あるいは過冷却冷凍が行われる。本発明の冷蔵庫には、製氷皿お掃除モードを備えており、製氷切替スイッチ5dを所定時間(約5秒)押し続けると製氷皿お掃除モードに入り、製氷皿の掃除が行われる。選択された部屋(貯蔵室)の温度調節は温度調節・急冷スイッチ5bにて行われ、本実施の形態では温度を強、中、弱の3レベルで表示するようにしている。この温度表示は、設定温度を直接表示パネル5に表示させるようにしても良い。更にこの冷却室の設定温度は過冷却状態とする場合と、過冷却状態を解除する場合と、解除して冷凍保存する場合には順次段階的にもしくは連続的に設定値を切り替えることになる。この設定切替はあらかじめ設定されたタイマーによる時間間隔に基づき自動的にあらかじめ設定された各温度に切り替えることができる。但し、冷蔵室100の扉に設置された液晶パネル5にスイッチなど設けることによって、これらの設定する温度を手動で切り替えることも可能である。過冷却状態から解除し、更に冷凍保存までの冷却室200の温度は、図示されていないサーミスタの設定温度およびその室温を検出し、あるいは食品表面の温度を検出して設定値になるようにダンパーなど冷気調整手段にて制御される。なお、食品温度を計測する赤外線センサを室温計測のサーミスタの代りに用いて圧縮機やダンパーなどの制御をして良いことは当然である。
以上のように、過冷却状態に対し、第1の温度設定にて冷凍室や冷却室の温度を設定し冷却室に導入される冷気により食品を過冷却状態とすると、次にあらかじめ温度差を記憶させこの第1の温度より温度差分低い温度にて食品の過冷却状態を解除し、食品表面の温度状態で過冷却状態を解除したと判断されると食品を冷凍保存するように冷蔵庫扉の切替スイッチにて設定した第3の温度に応じて冷気を調整する。このように、第1の設定温度、第2の設定温度、第3の設定温度を、時間間隔を置いてもしくは食品の温度を計測して順次変化させるので、マイコンに記憶されたソフトウェアという簡単な構造で冷気を調整することにより、急速冷凍を実行しなくともあるいは−60℃のような極低温にしなくともエネルギーの少ない品質の良い食品冷凍が実現できる冷凍保存が可能である。時間間隔を設定する場合はあらかじめ記憶させた時間間隔でも良いし、扉表面の液晶パネル5にて時間を設定できるようにしても良い。これにより、食品に応じて早い処理が可能になる。また、食品の温度を計測して解除を判断することで過冷却度の深化が得られる。
また、収納する食品を過冷却状態にする場合、食品を収納する冷凍室や冷却室の温度をマイコンに記憶された温度である第1の温度にて設定手段として設定された温度にてこの温度を設定した冷却室に導入される冷気量を調整して過冷却状態に突入させ、且つ、この過冷却状態を続ける。次に過冷却状態を続け過冷却に必要な時間として設定された時間が経過した後で食品の過冷却状態を解除するように、第1の温度より低い温度の冷気を供給し食品の過冷却状態を解除し、この解除した食品を扉表面に設けた温度設定装置で設定した第3の温度で冷凍保存する。第1の温度設定があらかじめ記憶されているものとすれば、設定される第3の温度は簡単に手動で切替が出来るため、相互に無関係な設定が可能である。但し、第1の温度を設定する場合も食品の種類に応じて変更できるように温度設定装置を冷蔵庫の扉表面や冷却室側面に設け切り替えられるようにしておいても良い。これらの温度設定状態と食品表面の検出した温度の状態を液晶パネル5に表示することも可能であり、表示を見ながら設定温度を変えることも可能になる。第3の温度の設定に対しても、数ヶ月以上の長期保存を考え−30℃から−60℃の深温帯領域や、−5℃から−15℃の微細な氷結晶により包丁などを利用して人がで切り分けが出来る弱冷凍温度帯領域、あるいはその中間の冷凍保存温度領域などに切り替えられる構造としても良い。温度設定が行われるとセンサが検出した温度がその切り替えられ設定された温度帯になるように制御装置で圧縮機の回転数、ダンパー開閉などオンオフ制御が行われる。以上のように第1の設定温度と第3の設定温度がそれぞれ無関係に設定できるので、保存期間や利用状態に応じ、あるいは時期や収納する食品の種類に応じて必要な過冷却状態を続ける時間や過冷却の深さに応じて設定温度を変更できるので、フレキシブルな冷凍保存が可能である。
また、間接冷却の冷却室の温度を設定する場合、冷却室の中に設けたセンサにて室温を計測したり冷却される壁面の室温の経過時間から推定し、食品を過冷却状態として設定した第1の温度になっているかを判断することが出来る。冷却室に収納される食品を過冷却状態とする第1の温度より低い温度に間接冷却する冷気の温度を下げて壁面温度を低くして過冷却解除をすることが出来る。もしくは密閉された冷却室の中の送風ファンの回転数を上げて食品の周囲の風速を高くし食品表面の熱伝達率を上げて過冷却を解除しても良い。食品表面の温度分布が不均一になればなるほど過冷却は解除されやすくなる。このような食品の過冷却状態を解除する過冷却状態解除手段にて解除した冷却室の開口を開き直接室内へ導入した冷気にて前記食品を冷凍保存させる、あるいは間接冷却のまま壁面の温度を更に低下させたり、維持したりして室内の食品を冷凍保存しても良い。このように簡単な構造でエネルギーの少ない冷凍保存が可能である。
次に2段ケースでない場合の実施例について説明する。図11は、この発明の実施の形態1における切替室200の側面断面図である。図5と同一符号については同様の構成である。切替室風路41内に切替室背面上側吹出し口42と天井面手前側の切替室天井面吹出し口43への冷気分配を調節する仕切り壁41aが配置されており、ダンパ46の開閉角度により、冷気分配する。95は過冷却により冷凍したい食品の表面温度を測定する装置で例えば赤外線センサである。切替室200の天井面96に設定されており、食品の表面温度を検出できるようになっている。なお表面温度測定装置95は、天井面吹出し口43からの冷気の影響を受けない位置として例えば、吹出し口43が天井面96手前側の場合は天井面96の後方に設置されている。一方、背面吹出し口44による冷気は食品に対しての刺激が吹出し口43よりも強いので、吹出し口44の冷気による食品の状態を検知しやすくするために背面上部の天井面96に設置されている。
次に収納する食品を過冷却状態とする冷却室、すなわち過冷却室(過冷却ケース)の過冷却制御について説明する。過冷却ケースに収納された食品を過冷却するには、過冷却ケース内の食品の芯温が凍結点になるまでに食品の表面温度が下がりすぎて凍結を開始しないように食品の表面温度を表面温度測定装置95で検出しながら芯温と表面温度の差を少なくするように冷却する。例えば、ダンパ46の開閉角度を図12のように仕切り壁41a位置まで半開とし、吹出し口43への冷気分配を多くすることで過冷却ケース内に流入する冷気の風速を下げる。また、風路41内を通過する距離を長くすることで冷気温度が上昇し、吹出し口43からの冷気温度はダンパ46に近い吹出し口42から流入する冷気より高くなり、食品表面を急激に冷却しない効果がある。そのときの切替室設定温度は通常の冷凍室の設定温度よりも高くする。芯温が凍結点に達するまで上記のように冷却し、凍結点に達っするような表面温度になったと判断したら食品温度の最低到達点を下げるように急速に冷却する。これは、凍結点以下の温度は不安定な状態になるのでゆっくり食品の温度を低下させると過冷却状態での到達温度が高いままに解除されてしまう可能性がある。よって、凍結点に達したと判定できる温度に表面温度測定装置95の温度がなった場合は、FAN回転数を上げて、過冷却ケースに流入する冷気を多くするか、ダンパ46を全開にして(図11のダンパ46の状態)冷気流入量を多くして最低到達点温度を下げるように温度制御する。そのとき切替室設定温度は凍結点まで冷却した温度設定と同じか、設定温度を下げる。次に食品が過冷却解除されると表面温度測定装置95の温度が上昇する。これは食品が過冷却状態から過冷却解除されると食品温度は凍結点まで上昇し、凍結点と過冷却到達温度との差分の熱エネルギー(温度上昇分の熱エネルギー)により食品内に氷核を生成する現象によるものである。その判定を受けて過冷却室に冷気を流入させて、完全に凍結させるように温度制御する。ダンパ46を全開とし、FAN回転数、圧縮機回転数を上げて、より低温の冷気を流入できるようにする。そのとき切替室設定温度は通常温度より低くする。このように食品を凍結点まで、凍結点から過冷却最低達成点温度、過冷却解除、完全凍結までの各段階で連続的または段階的に設定制御を変える。例えば、過冷却ケースへの冷気温度、冷気風量、冷気風速をコントロールし、確実に過冷却状態にし、その過冷却最低到達温度を下げ、過冷却を解除し、解除後の凍結スピードを上げて質のよい冷凍を実現する。
一方で一定時間経過しても表面温度測定装置95の温度が凍結点から下がらない場合は、その食品が過冷却を起こさずに(過冷却失敗)、凍結点から相変化し、凍結状態に入ってしまったと判断し、過冷却解除後の温度制御と同様に急速に凍結できるように温度制御し、食品の凍結品質をできるだけ維持するように過冷却状態を経ての冷凍でなくてもより微細に氷結晶を形成できるようにする。失敗がない温度制御については凍結点までは例えば肉の場合は凍結点である−1℃で温度制御し、芯温まで−1℃の凍結点まで均一に食品を冷却する。次に温度設定を−4℃〜−7℃程度にコントロールできるようにして、過冷却到達温度をさげて行く、過冷却最低到達点温度は冷却温度以下には下がらないので凍結点より−3℃以下にしたい場合は−4℃以下の温度で冷却する必要がある。ただし、あまり低温にすると最低到達温度を低く出来ないままに過冷却解除されてしまうので−7℃としている。過冷却解除については過冷却最低到達点が凍結点よりも−3℃以下に到達したら(5秒以上過冷却状態にすると同様の効果)過冷却解除するための制御を実施し解除させる。過冷却解除後は、急冷制御により、早く食品が凍結するように制御する。すでに保存され、包丁で簡単に切れるように食品が保存されている場合(−5〜−10℃保存)は急冷においても、すでに保存されている食品が切れなくならないように食品温度を−10℃以下には下げないように温度制御することが望ましい。冷凍温度帯であれば、その必要はなく、より低温で急冷する。なお、自然対流などの風速が小さい環境下でも過冷却状態および過冷却最低到達温度は段階的な温度制御で実現可能であるが、風速、冷気温度の制御によっても同様の効果を得られ、さらに急冷や切替室を冷凍設定で使用する場合の急冷制御については自然対流では冷却スピードが得られないのに対して本実施例のように直接冷気を流入した場合は急冷が可能となり、更に時間間隔で過冷却状態の維持や解除を設定することで、過冷却冷凍時間の短縮化が図れ冷凍品質の向上につながり、過冷却冷凍を行う食品のスペースの有効利用や冷却室に対し過冷却を行わない食品との混在などより幅広い利用が可能となる。上記実施例では過冷却ケース上方開口部に蓋等を設置していないが、蓋等により冷気風量、冷気風速をコントロールすることも合わせて実施しても同様の効果が得られる。そのとき、蓋は上方開口部を完全に覆う必要はなく、冷気風量、冷気風速がコントロールできる範囲でもよい。
次に、上下2段に構成された切替ケース201の上段ケースを過冷却ケースとする場合について説明する。図13は、この発明の実施の形態1における図5に対応する切替室200の側面断面図である。図13に示すように、上下2段に構成された切替ケース201の上段ケースを過冷却ケース40としている。過冷却ケース40は、切替室天井面吹出し口43より後方に設置され、スライド式で引き出せる構造となっている。この構造によれば、過冷却ケース40内部およびそこに収納されている食品には切替室天井面吹出し口43から直接冷気が当たらないため、温度を安定な状態で維持することができる。
図14は、切替室天井面吹出し口43につながっているダクト50の上面図である。過冷却ケース40をよりよく冷却するためには、ダクト50の途中に穴51を開けて、ダクト50を流れる冷気を自然落下させるような構造にしてもよい。
図13の過冷却ケース使用時は、切替ケース201を引き出して、独立式の過冷却ケース40を引き出す。過冷却ケース40は使用時にのみ引き出されるので、切替室200の使用時に過冷却ケース40の温度が上昇しにくいというメリットがある。また、過冷却ケース40を切替室200の上方に設置することは、従来の切替ケースの大きさを変えることなく、新しくケースを追加できるというメリットもある。
次に過冷却ケースの構造について説明する。図15は、この発明の実施の形態1における過冷却ケースの構造図である。ここでは、切替室200に設けられる切替ケース201の上部を蓋60で覆って、切替ケース201の全体を過冷却ケースとしている。図15は、切替ケース201の全体が蓋60に覆われて、その全体が過冷却ケースを形成している例である。なお、切替ケース201の内部に、縦方向あるいは横方向に仕切りを設けるとともに、その仕切られた一部分のみを蓋60で覆い、蓋60で覆われた部分のみを過冷却ケースとする構造としてもよい。蓋60が設けられて過冷却ケースとされた空間内には冷気が直接吹き付けないため、ケース内は完全な間接冷却となる。また、このようにして形成した過冷却ケース内の温度変動はほとんどなく、さらに、それを最も低コストで実現することができる。なお、ケース内に風を入れないで冷却させる、例えば、壁内部に冷気または冷媒を循環させるなどして壁を冷却することによる輻射冷却を利用すれば、蓋60なしのケースを過冷却ケースとすることも可能である。
次に、切替室にファンを設ける構造について説明する。図16は、この発明の実施の形態1における図5に対応する切替室200の側面断面図である。図16に示すように、本実施の形態では、切替室200の上部にファン(切替室ファン)70を設けたものである。この構成によれば、ファン70の作用により、切替室200内の空気をゆっくり攪拌することができるため、冷却速度を高めることなく、空気温度を均一に保つことができる。過冷却ケース40内には大きな食品を投入することもあるが、この構成ではそのような場合に食品全体の冷却ムラをなくすことができ、過冷却を安定的に起こすことが可能になる。過冷却ケース40は切替室200内のどのような部分に設置されていてもよく、切替ケース201に対して独立なケースとしても、あるいは切替ケース201全体を過冷却ケース40としてもよい。
次に切替室内の切替ケースの下部に、過冷却スペースを構成する過冷却ケースを配置する構成について説明する。図17は、この発明の実施の形態1における図5に対応する切替室200の側面断面図、図18は、本実施の形態で使用される過冷却ケースの斜視図、図19は、本実施の形態による過冷却ケースへの冷気の流れを示した図である。図17に示すように、切替室200内の切替ケース201の下部に、過冷却スペースを構成する過冷却ケース81が配置されている。切替室200の周囲には切替室風路41が設けられ、また、冷却器3からの冷気が吹き出される3つの吹出し口、切替室背面上側吹出し口42、切替室背面下側吹出し口44、切替室天井面吹出し口43が設けられている。また、切替室風路41の入り口部に、切替室200へ向かう冷気量を調節するダンパ46が設けられている。ここで使用される過冷却ケース81は、図18に示すように、ケース背面に切替室背面下側吹出し口44からの冷気が流入する切欠き90が形成され、ケース前面に、切欠き90から流れこんだ冷気を排出するスリット91が形成されている。冷却器3からの冷気は、過冷却ケース81を図19の矢印で示すように流れるため、過冷却時と過冷却解除時では、その流量を、ダンパ46などの流量調整装置で調整することが好ましい。なお、ケース背面に冷気が流入する切欠や開口を形成し、ケース前面に流れこんだ冷気を排出するスリットや開口を形成する構成は、実施の形態1のいずれの過冷却ケースにも適用できる。
次に、図17、図18に示した過冷却ケース81を利用した実施の形態1における冷蔵庫の過冷却制御について説明する。図20は、その過冷却制御の例を示すタイミングチャートである。過冷却ケース81に収容された食品を過冷却するには、過冷却ケース81に収容された食品の芯温が凍結点を越え、過冷却状態に達するまで(ステージ1)、圧縮機10、ファン2、ダンパ46などが、切替室200内を、例えば−2℃〜−20℃の範囲で選択される空気温度にするように動作する。なお、圧縮機10やファン2は別の部屋の温度でコントロールして、ダンパ46の開閉のみで温度制御してもよい。ここでは、ダンパ46は、通常通り全開/全閉を繰り返すようにする。そして、過冷却解除が可能な食品芯温度に達すると(ステージ2)、ダンパ46の開度を半開にし、過冷却ケース81側に主に冷気が流れ込むようにする。ダンパ46の半開角度としては、気流に横方向のベクトルを与える角度であればよい。好ましくは10度〜60度である。ダンパ46を半開とする時間は、過冷却解除した後、凍結が完了するまでの時間(ステージ2,3)とする。食品の凍結が完了した後の保存期間(ステージ4)の制御は、通常通り、ダンパ46を全開/全閉を繰り返すように戻すこととする。
冷蔵庫1の以上の制御動作をまとめると、図21のフローチャートのようになる。過冷却制御を開始すると、ステージ1の時間の積算を開始する(ステップ51)。次にステージ1が所定時間経過したかどうかを判断し(ステップ52)、所定時間に達したと判断するとダンパ46を半開にし、ステージ2の時間を積算し始める(ステップ53)。そして、ステージ2が所定時間経過したかどうかを判断し(ステップ54)、所定時間に達したと判断するとダンパ46を全開にし、通常制御に戻す(ステップ55)。
過冷却状態を得るための制御時には、過冷却ケース81への冷気の流れ込みはほとんどないので、安定的に過冷却状態をつくることができ、かつ、過冷却解除時には過冷却ケース81のみほとんどの冷気が流れ込むようにするので、過冷却解除、確実に凍結が起こる。さらに、過冷却解除時に切替ケース201の空気温度に対する影響がほとんどなくなるというメリットもある。その他、切替室200においてダンパ46開度を変更したり、風量を調節したりすることで冷却量を調節し、空気温度変動を抑制するようにはたらきかけてもよい。
図22は、図3の冷蔵庫の切替室内に過冷却用の蓋付別置き過冷却ケース202を設置したときの断面図である。ここでは、過冷却ケース202を、過冷却ケース202上面を吹出し口203からの冷気が流れるような位置に設置している。また、図23は、切替ケース201内に過冷却ケース202を設置した様子を示したものである。このように、過冷却ケース202を蓋付別置きケースにした場合のメリットは、周囲に温度状態の異なる食品が収納された場合も過冷却ケース202内の食品はその影響を受けにくいことである。また、過冷却ケース202の蓋部分に断熱材を入れてもよいが、この場合においては、吹出し口203からの冷気の影響を受けにくくなり、安定的に過冷却を起こすことができるというメリットがある。また、直接冷気が吹きつけることで起こる温度ムラが過冷却解除の要因となる場合があるので、蓋の一部または全部に熱伝導性の良い部材を用いてもよいし、吹出し口の数と位置、吹出し口の形状、吹出し口と蓋の位置関係を所定の温度ムラ範囲に収まるようにしてもよい。所定の温度ムラ範囲とは、10K以内、好ましくは5K以内、さらに好ましくは2K以内である。
なお、これまで説明した全ての実施の形態において、切替ケースや過冷却ケースの一部または全体を熱伝導の良い素材(例えば、ステンレス、アルミ、銅などの金属板)とすると、ケース内の温度を均一にすることができる。2重構造としても温度を均一にすることが可能である。更に食品熱容量を吸収できる蓄熱剤を設けたケースにすると更に過冷却冷凍時間の短縮につながる。
以上、過冷却解除時期をあらかじめマイコン等に記録した時間を基に行う制御について説明してきたが、以下においては、過冷却解除時期を判断する別の方法について説明する。既に説明してきたように過冷却状態を深化させるように冷却室の温度を低下させ続けると、例えばー10℃より低下させた場合自動的に過冷却解除を起こす確率が高くなる。この自動的な解除が発生すると食品温度が高くなるので判別できる。この自動的な解除もしくは強制的な解除が発生した場合、解除時期をセンサで計測して確認すると良い。過冷却解除の時期の判断は、赤外線センサ、超音波センサ、電界センサなどを用いて、過冷却品の状態を判断して行うことができる。
赤外線センサを用いる場合、赤外線センサは過冷却ケースを設けるスペースの壁面に設置し、可動式でケース内全体を見渡せるようにするか、またはアレイセンサにしてケース内全体を見ることができるようにする。設置位置としては、例えば、切替室200背面に設置し斜め上方から過冷却ケースを見渡すことで、全体を見ることができる。過冷却モードに入ると、赤外線センサは、過冷却ケース内の食品の表面温度を検知し、食品の表面温度の変化を検出することが出来る。この変化により解除を知ることが用意である。更には、検出した表面温度から食品の芯温を算出し、そして、該食品の算出された芯温が上記の過冷却条件で示した温度で、且つ、あらかじめ設定されマイコンなどに記憶させた温度に達っ下と判断すると過冷却解除の刺激を加えることが出来る。これにより過冷却状態の時間短縮が可能になる。当然ながら、表面温度と芯温との差が小さい場合もあり、設定された制御の時間間隔が解除を行う時間に達しても温度差が小さいことを判断することを優先させて、更に冷却温度を下げて過冷却度を深化させることも可能である。このように表面温度計測を利用すると複雑な判断が簡単になる。
超音波センサを用いる場合は、超音波センサに過冷却ケースを接触させる。超音波センサは超音波の発振部とその反射波を受け取る受信部とから成る。設置位置は、過冷却ケースの扉を閉めたときにケースに接触する場所ならどこでも良く、例えば切替室200の背面にセンサ台座にバネを設けて設置することで、配線長が最も短くコストを抑えてかつ切替室を閉めたときに確実にケースに接触させることができる。過冷却モードに入ると、超音波センサは、過冷却ケース内の食品に向けて超音波を発振する。超音波は接触している物質内を伝播するので、センサがケースに接触していることでケース内に収められケースに接触している物質にも超音波が伝播する。このとき、食品が未凍結または過冷却の状態で水分が液体でいるときに比べ、過冷却が解除して氷結晶が生成すると、超音波は伝播しやすくなり発振した超音波が受信部に到達する速度が速くなる。この時間差または伝播速度の差から、過冷却解除し食品中の水分が凍結し始めたことを検知できるので、過冷却解除後の制御に移行できる。
電界センサを用いる場合は、過冷却スペースに電界センサを設置する。電界センサの電極部は金属製であればどのような形状でもよい。例えば、冷蔵庫の内箱などに簡便に貼り付けるためには、箔状であれば、内箱の凹凸に沿って貼り付けることができる。箔よりは厚めの板状にすることで、取り付け時に破損の恐れが少ない電極を得ることができる。また、非接触式であり、冷蔵庫の壁面であればどこに設置しても良く、測定したい物質との間に別の物質、例えばプラスチックの板などがあっても測定できる。電界センサは、食品内部の誘電率により出力が変化する。食品が未凍結または過冷却の状態で水分が液体でいるときに比べ、過冷却が解除されて氷結晶が生成すると、誘電率が大幅に小さくなるので、それを利用して過冷却解除時期を判断し、過冷却解除後の制御に移行できる。
また、上記のような装置を用いる以外にも、食品の温度を温度計で直接測り、過冷却解除時期を判断して過冷却解除の刺激を加えてもよい。温度計は、冷蔵庫に配線で接続されており先端が針金状になっている。食品を過冷却ケースに入れるとき、ユーザーが温度を測定したい食品にこの温度計を差し込む。これによって食品内部の温度が測定できるので所定の過冷却温度に到達したかどうかを直接認識することができる。食品内部が十分な過冷却温度に到達したら、過冷却解除のための制御に移行できる。
次に、これまでに説明した温度低下または冷気導入による過冷却解除ではない、他の過冷却解除方法について説明する。その他の過冷却解除方法としては、例えば、過冷却ケースに振動を加える方法、あるいは音波をかける方法などがある。振動を与える方法としては、機械を用いる方法、冷蔵庫内の動作機器の振動を利用する方法などがある。また、過冷却解除時に過冷却ケースのみを冷却し切替ケースの温度を下げないようにするための別の方法としては、例えば切替ケースの周囲壁にヒーターを設けておき、過冷却解除時に切替ケース側のみをヒーターで加温する方法がある。また、例えば過冷却ケースの周囲壁にヒーターを設けておき、過冷却中には過冷却ケースを加温するヒーターをオンにし、過冷却解除時にはオフにするなどの方法もある。なお、過冷却解除については必ずしも行わなければならないものではない。過冷却状態を維持したままそのまま放置しておいてもよい。
以上、本発明の実施形態に関連して、過冷却スペースの構造、過冷却解除時期判断の方法および過冷却解除方法などについて説明してきたが、以下では、過冷却解除後の保存方法について説明する。
過冷却解除後、−10℃以上の範囲で冷凍保存する場合は、凍結した後でも包丁でサクッと切れる状態を維持できる。過冷却状態を経て凍結したことによって、食品内部の氷結晶は細かくなっているので、通常凍結時に比べてより切れやすくなるという利点もある。
また、保存温度帯は凍結点以下なので、2週間程度のある程度長期の保存も可能である。
過冷却解除後、−10℃〜−15℃までの範囲で保存する場合は、通常の凍結方法では氷結晶が針状に大きく生成して凍結後に包丁で切れなかったが、本発明の方式では食品内部にできる氷結晶が細かいので、包丁で切れる状態を得られるという利点もある。また、保存期間に関しては、2週間以上1ヶ月程度の長期保存も可能である。
過冷却解除後−15℃以下の温度帯で保存すると、通常の冷凍と同様に1ヶ月程度の保存が可能であり、かつ、氷結晶が細かく食品の細胞を破壊しづらくなっているので、普通に凍らせた食品に比べてより質のよい味、食感などを感じることができる。
上記保存温度を変化させる手段として、1つの部屋で温度を切り替える方法がある。また、過冷却凍結させるために高めの冷凍温度帯の部屋を用い、保存時に低めの冷凍温度帯の部屋へ移動させてもよい。高めの冷凍温度帯とは、−15℃より上、低めの冷凍温度帯とは、−15℃以下の温度帯である。
また、過冷却状態を経て凍結すると、食品内部の氷結晶が小さな粒状でできるため、凍結率が高い、すなわち冷凍保存温度が従来よりも低くても、包丁でサクッと切ることが可能になる。すなわち、包丁などで切れる状態での保存期間が延びることになり、新たな機能的で高品質な冷凍温度帯を訴求できるというメリットがある。
なお、冷却室としての過冷却スペースが切替室200にある場合を説明してきたが、過冷却スペースは図3における冷蔵庫の冷蔵室100、冷凍室300、野菜室400、製氷室500のどの部分に設けてもよい。また、それらの室内の全部または一部を過冷却スペースに当てても良い。さらに、過冷却スペースは冷凍温度帯の独立した密閉スペースに形成してもよい。ただし、いずれの場合にも、過冷却スペース内またはそこに置かれた食品に直接強い冷気が当たらないような構造とするか、過冷却スペース内に入り込む冷気量を調節できるようにするのが好ましい。
本発明の冷蔵庫は、一般的な冷蔵庫の仕様を一部変更することで、過冷却冷凍を実施できる冷蔵庫を得ることができる。又家庭用冷蔵庫の構造を中心に説明してきたが、大型の極低温業務用冷凍倉庫でも本発明の考え、例えば食品を収納した後で、凍結点まで所定の冷却速度で温度を下げ、対象食品に対し高い冷凍温度で全体に分布の良い気流を利用して温度を少しずつ下げながら過冷却を維持する冷却を行い、所定時間後に更に低い温度を直接食品に吹き付けて急速冷凍し過冷却を解除し、その後は過冷却状態を得る温度より低い温度、たとえば−18℃程度の冷凍温度で保存するという制御を利用した構成が可能である。これにより大幅な省エネルギーを達成することが出来る。更に、有効なのは、冷蔵庫としての低温運搬車の中で食品を運搬しながら過冷却状態に突入させ、過冷却状態を維持し、より低温の冷気を直接食品に供給して過冷却を解除し、冷凍保存することが出来る。すなわち、肉や魚などの場合、各細胞及び細胞間に隙間なく水分が充填されているため、隙間なく水を充填した容器に相当するため、運搬中の振動による過冷却解除が無く、且つ、常温の食品を収納し、低すぎない温度で冷却し、最終的に冷凍温度も業務用冷凍庫のように−60℃などという極端に低い温度にしないで、せいぜい−20℃程度の冷凍温度で良いため、運搬車としてエネルギーを使わずに、しかも、運搬時間を利用して過冷却冷凍を行うなど運搬前後の省エネルギーにも役に立ち、冷凍品質の良い食品を届け先に渡すことが出来る。
また本発明の冷蔵庫において過冷却冷凍を実施した食品は、過冷却状態をつくるときの冷却速度がゆっくりであるので、食品内部まで均一に温度が下がってから同時に氷結晶ができはじめ、一部に生じた氷結晶が不均一に成長することがなく、食品内部にできる氷結晶の大きさが小さくなり、食品品質を維持することができる。図24には、冷却速度と食品内部の氷結晶の大きさとの関係を示した。図24からは、冷却速度が速くなるほど食品内部にできる氷結晶の大きさが大きくなる傾向にあることがわかる。
本発明の冷蔵庫は、冷却器から循環する冷気により収納する食品を0℃から冷凍温度帯の温度まで連続してまたは段階的に温度調整可能な冷凍室と、冷凍室の冷気吹出し口から吹出され冷却器に吸い込まれる冷気を取り入れ食品を凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に維持する冷凍室内に配置された冷却室と、冷却室に貯蔵された食品が過冷却状態を得るように冷凍室の温度を−2℃以下で−15℃以上に設定する温度設定手段と、冷却室に収納した食品周囲の風速を抑え冷却室に貯蔵された食品を過冷却状態に維持するように冷凍室内に吹出し冷却室に取り入れる冷気を調整する冷気調整手段と、を備えたので、省エネルギーで高品質冷凍を実現できる。
本発明の冷蔵庫は、冷却器からの冷気により収納する食品を冷凍させる冷凍室と、冷凍室の冷気吹出し口から吹出され冷却器に吸い込まれる冷気を取り入れ凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に貯蔵された食品を維持する冷凍室内に配置された冷却室と、冷却室は冷凍室に配置した上側ケースにより覆われる下側ケースにて構成するとともに、上側ケースと下側ケースとの間に設けた冷気を取り入れる隙間と、を備え、隙間は冷凍室内を流れる冷気の流れ方向とは異なる方向を向いた開口で、隙間が10−30mm程度の寸法であるので、簡単な構造で省エネルギーな高品質冷凍を実現できる。
本発明の冷蔵庫は、冷却器からの冷気により収納する食品を凍結点以下で−15℃以上の設定温度で凍らない過冷却状態に維持する過冷却室と、過冷却室内に吹出され過冷却室内を循環する冷気の温度を変化させる冷気調整手段と、冷気調整手段にて過冷却室に収納され過冷却状態にある食品に設定温度より2度乃至5度程度低い温度の冷気を供給して食品の過冷却状態を解除する過冷却解除手段と、を備えたので、品質の良い冷凍食品を簡単に得られる。
本発明の冷凍室もしくは冷却室の温度を設定する温度設定手段は、冷却室に収納された常温の食品が冷却される際に、食品の表面温度が3℃から0℃に低下する範囲の冷却速度が、−3.5℃/hr乃至−10℃/hrの範囲とするので、確実に過冷却状態に突入できる。
本発明の冷凍室又は冷却室へ冷気を吹出す冷気吹出し口、冷却室へ冷気を取り入れる取り入れ口および冷気吹出し口と取り入れ口の間の風路の少なくともいずれかに冷気を調整する冷気調整手段を設け、冷気調整手段にて冷気を調整して過冷却状態となる食品周囲の風速を0.1乃至0.5m/s程度に抑えるので、過冷却状態を維持できる。
本発明の冷気調整手段は、冷気吹出し口と前記取り入れ口の間の風路に複数回の曲がりを構成又は前記冷却室の奥行き相当の風路長さを設ける、あるいはこの冷気調整手段は、ダンパーにて前記冷凍室又は前記冷却室へ吹出す冷気の前記冷気吹出し口での風速を1.0乃至1.2m/s程度に抑えるものであり、これにより過冷却状態を維持できる。
本発明の冷凍室又は冷却室の温度を設定する温度設定手段は、食品の凍結点以下で−17度以上の冷凍温度帯に設定した冷凍室又は冷却室の温度を、食品の温度が凍結点としてあらかじめ設定された温度以下になった場合又は食品が冷却室に貯蔵されてから所定時間経過した場合に、食品の過冷却状態を深化させるように冷凍室の設定温度を1−2度程度下げるので、食品の冷凍品質を上げることが出来る。
本発明の冷気調整手段は、貯蔵した食品が過冷却状態とされるとき、食品周囲の空気温度の冷却状態変化による変動幅が10度以内となるように調整する、もしくは冷却室内部の空気温度ムラが2度以内となるように調整するので、過冷却状態を維持できる。
本発明の食品が収納されて一定時間経過後又は食品の温度急変を検知し、冷凍室内又は冷却室内の食品に温度、振動、超音波などの物理的衝撃を与えて過冷却を解除しあらかじめ設定された冷凍温度にて保存する、又は急速冷凍するので、食品の冷凍品質を上げることが出来る。この過冷却解除は、冷却室へ直接冷気を導入することで行うので簡単に行うことが出来る。
本発明の冷凍保存方法は、冷却器からの冷気により収納する食品を凍結点以下で−15℃以上の設定温度で凍らない過冷却状態に維持する冷却室と、冷却室内に吹出され過冷却室内を循環する冷気の温度を変化させる冷気調整手段と、を備えた冷蔵庫において、食品を−15℃以上に設定された冷却室に収納するステップと、冷気調整手段にて冷却室内の温度が−10℃以上もしくは冷却室内の風速が0.5m/s以下になるように一定時間調整するステップと、冷却室に収納され過冷却状態にある食品に設定温度より2度乃至5度程度低い温度の冷気を直接供給して食品の過冷却状態を解除するステップと、を備えたので、冷凍車両のような車両用冷蔵庫の場合、運搬中に時間を掛けて到着までの途中もしくは必要なときに少ないエネルギーで品質のよい冷凍保存食品を送り先へ提供できるなどの多様なビジネスシステムが可能となる。
また、上記実施の形態に係る冷蔵庫は、過冷却状態をつくるときは間接冷却であるので、冷気の直接吹きつけによる食品の乾燥が低減され、冷凍やけも抑制できる。そして、過冷却状態をつくるときに重要な条件である冷却スピードを、従来の急速冷凍に比べてゆっくりとしているため、温度変動が少なく、食品全体を均一に冷やすことができる。
また、上記実施の形態に係る冷蔵庫は、温度変化を抑制できるような熱容量の大きい物質を含む、あるいは吹出し気流の直接流入を抑制する構造を含む過冷却ケースを搭載しているので、扉開閉による温度変化の影響を受けることなく、過冷却ケース内の温度を安定して保つことができる。
また、上記実施の形態に係る冷蔵庫は、過冷却解除時のみに低温側に温度変化を与えるので、切替ケースなどの既存のスペースに与える影響が最小限に押さえられ、他の温度帯に設定されたスペースあるいはケースを併用することも可能である。
また、上記実施の形態に係る冷蔵庫は、過冷却解除が−2℃以下(たとえば−5℃以下)の温度で可能であるので、従来実施例の過冷却解除方法である急速冷凍と比べるとエネルギー消費量が少なくて済むため、省エネ性に優れている。
その他、上記実施の形態に係る冷蔵庫は、過冷却解除後の保存温度を実使用状況によってソフト冷凍や長期保存用冷凍など、選択可能であるため、使い勝手がよいといったメリットもある。
本発明の冷蔵庫は、冷却室の温度を設定し冷却室に導入される冷気により食品を過冷却状態とする第1の温度設定手段と、前記第1の温度設定手段にて設定した冷却室の温度より低い温度にて食品の過冷却状態を解除する第2の温度設定手段と、過冷却状態を解除した後で食品を冷凍保存する第3の温度設定手段と、を備え、第1の温度設定手段、第2の温度設定手段、第3の温度設定手段の設定する温度を、時間間隔を置いてもしくは食品の温度を計測して順次変化させるので、簡単な構造でエネルギーの少ない冷凍保存が可能である。
本発明の冷蔵庫は、冷却室の温度を設定し冷却室に導入される冷気により食品を過冷却状態とする第1の温度設定手段と、第1の温度設定手段にて設定した冷却室の温度より低い温度の冷気にて食品の過冷却状態を解除する過冷却状態解除手段と、過冷却状態解除手段にて解除した食品を冷凍保存する第3の温度設定手段と、を備え、第3の温度設定手段にて設定される冷却室の温度は、第1の温度設定手段にて設定される冷却室の温度とは無関係に設定可能であるので、フレキシブルな冷凍保存が可能である。
本発明の冷蔵庫は、冷却室の温度を設定し冷却室の冷却された壁面により食品を過冷却状態とする第1の温度設定手段と、冷却室に導入される食品を過冷却状態とする冷気の温度もしくは食品の周囲の風速より、低い温度もしくは早い風速の冷気を導入して食品の過冷却状態を解除する過冷却状態解除手段と、過冷却状態解除手段にて解除した冷却室に導入した冷気にて前記食品を冷凍保存する第3の温度設定手段と、を備えたので、簡単な構造でエネルギーの少ない冷凍保存が可能である。
本発明の第3の温度設定手段にて設定される冷却室の温度を変更可能に設定する温度設定手段と、を備えたので、食品の種類により、保存温度を変更するなど使い勝手の良い冷蔵庫が得られる。
以上説明したように、本発明では、食品を貯蔵する冷蔵庫本体に配置され冷却器からの冷気により魚、肉類、野菜、果実などの食品を収納する0℃以下の設定温度に設定されて過冷却状態で冷却される過冷却室を備え、過冷却室を食品の芯温が略凍結温度(凍結点、氷結点)になるまでは0℃よりも低く設定温度よりも高い第1温度にてゆっくりと冷却し、食品の芯温が略凍結温度に達したと判断された場合には第1温度よりも低い第2温度で凍結温度以下でも凍らない過冷却状態が維持できるようにゆっくりと過冷却最低到達温度まで冷却する制御装置を備えている。
また、本発明の制御装置は、過冷却室内に収納される食品の芯温が略凍結温度より低下した後に略凍結温度まで上昇して過冷却状態が解除された場合には、第2温度あるいは第2温度よりも低い温度で冷却風量あるいは冷却風速を大きくして急速に冷却する完全凍結される設定温度で保存されるものである。
このように本発明では、食品を凍結点まで、凍結点から過冷却最低達成点温度、過冷却解除、完全凍結までの各段階で連続的または段階的に設定制御を変えるようにしている。
例えば、過冷却ケースへの冷気温度、冷気風量、冷気風速をコントロールし、確実に過冷却状態にし、その過冷却最低到達温度を下げ、過冷却を解除し、解除後の凍結スピードを上げて質のよい冷凍を実現する。
したがって、この発明の冷蔵庫は、高品質冷凍機能として、従来の急速冷凍ではなく、過冷却冷凍機能を採用したので、従来よりも少ないエネルギーでの高品質冷凍、すなわち、エコ冷凍を実現することができるという効果を有する。
また、この発明の冷蔵庫は、過冷却をおこすためのスペース内に冷気が直接吹きつけることを軽減し、温度を均一化でき、冷却温度を複数で段階的に変化できる温度制御された新たな過冷却室構造または過冷却室ケース構造を採用することで、従来と大きく変わらない冷蔵庫の構造、制御で、食品の過冷却冷凍を実現できるという効果を有する。
なお、本発明に置ける冷蔵庫、冷凍保存方法は家庭用冷蔵庫におけるエネルギーの少ない高品質冷凍が実現できるだけでなく、簡単な構造と制御にて細胞を破壊せずに長期冷凍保管できることから業務用冷凍倉庫などでの大規模長期食肉保管、遠洋漁業の漁獲品の船舶内冷凍保管等にとどまらず、医療業務における内臓運搬や、細胞他を扱う医療研究装置など、幅広い分野で有用される見込である。
過冷却なし(a)と過冷却あり(b)で水が凍結するときの温度変化を示したグラフ。 通常の急速凍結と過冷却凍結とにより、肉を凍結したときと、一度凍結した肉を解凍したときの肉組織の状態を示した図。 この発明の実施の形態における冷蔵庫の側面断面図。 この発明の実施の形態における冷蔵庫の風路構成を示す側面断面図。 この発明の実施の形態1における冷蔵庫の切替室周辺の側面断面図。 この発明の実施の形態1における過冷却ケースの構造図。 この発明の実施の形態1における別の過冷却ケースの構造図。 この発明の実施の形態1における別の過冷却ケースの構造図。 実施の形態1における冷蔵庫の過冷却制御の例を示すタイミングチャート。 実施の形態1における冷蔵庫の過冷却制御の例を示すフローチャート。 実施の形態1における冷蔵庫の切替室周辺の側面断面図。 実施の形態1における冷蔵庫の切替室周辺の側面断面図。 実施の形態1における冷蔵庫の切替室周辺の側面断面図。 実施の形態1における切替室天井面のダクトの上面図。 実施の形態1における過冷却ケースの構造図。 実施の形態1における冷蔵庫の切替室周辺の側面断面図。 実施の形態1における冷蔵庫の切替室周辺の側面断面図。 実施の形態1における過冷却ケースの構造図。 実施の形態1における過冷却ケースへの冷気の流れを示す模式図。 実施の形態1における冷蔵庫の過冷却制御例を示すタイミングチャート。 実施の形態1における冷蔵庫の過冷却制御の例を示すフローチャート。 図3の冷蔵庫の切替室内に過冷却用の蓋付別置きケースを設置したときの断面図。 切替ケース内に過冷却ケースを設置した様子を示した図。 冷却速度と食品内部にできる氷結晶との大きさの関係図。 実施の形態1における冷蔵庫の表示パネルを表した図。
符号の説明
1 冷蔵庫、2 ファン、3 冷却器、4 風路、5 液晶操作パネル、6 冷蔵室用帰還路、7 野菜室用帰還路、10 圧縮機、16 制御装置、41 切替室風路、41a 仕切り壁、42 切替室背面上側吹出し口、43 切替室天井面吹出し口、44 切替室背面下側吹出し口、45 切替室底面吸込み口、46 ダンパ、50 切替室天井面ダクト、51 切替室天井面ダクトの穴、60 切替室の蓋、70 ファン、80 切替ケース、81 過冷却ケース、82 切替ケース底面、83 切替ケース、84 過冷却ケース、85 切替ケース、86 過冷却ケース、90 切替ケース背面の切欠き、91 切替ケース前面のスリット、95 表面温度測定装置、96 天井面、100 冷蔵室、200 切替室、201 切替ケース、202 過冷却ケース、300 冷凍室、301 冷凍ケース、400 野菜室、401 野菜ケース、500 製氷室。

Claims (20)

  1. 冷却室の温度を設定し前記冷却室に導入される冷気により食品を過冷却状態とする第1の温度設定手段と、前記第1の温度設定手段にて設定した前記冷却室の温度より低い温度の冷気を供給し前記食品の過冷却状態を強制的に解除する第2の温度設定手段と、過冷却状態を解除した後で前記食品を冷凍保存する温度に設定する第3の温度設定手段と、を備え、前記第1の温度設定手段、前記第2の温度設定手段、前記第3の温度設定手段の設定する温度を、時間間隔を置いてもしくは前記食品の温度を計測して変化させることを特徴とする冷蔵庫。
  2. 冷却室の温度を設定し前記冷却室に導入される冷気により食品を過冷却状態とする第1の温度設定手段と、前記第1の温度設定手段にて設定した前記冷却室の温度より低い温度の冷気等にて前記食品の過冷却状態を解除した前記食品を冷凍保存する温度に設定する第3の温度設定手段と、を備え、前記第3の温度設定手段にて設定される前記冷却室の温度は、前記第1の温度設定手段にて設定される前記冷却室の温度とは無関係に設定可能であることを特徴とする冷蔵庫。
  3. 冷却室の温度を設定し前記冷却室の冷却された壁面により食品を過冷却状態とする第1の温度設定手段と、前記冷却室の壁面の温度もしくは前記冷却室に導入される前記食品を過冷却状態とする冷気の温度より、低い温度の冷気等にて前記食品の過冷却状態を強制的に解除する過冷却状態解除手段と、前記過冷却状態解除手段にて解除した前記冷却室に収納する前記食品を冷凍保存する第3の温度設定手段と、を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
  4. 過冷却状態を解除する過冷却状態解除手段として、低い温度の冷気の代わりに収納する前記食品周囲の風速を早くして食品表面の温度分布もしくは熱伝達率を変化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷蔵庫。
  5. 前記食品の過冷却状態を低い温度等にて強制的に解除した場合、あるいは低い温度等の代わりに自動的に解除されたときは前記食品の温度計測にて解除と判断して、前記第3の温度設定手段にて設定される冷凍保存を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の冷蔵庫。
  6. 冷却器から循環する冷気により収納する食品を0℃から冷凍温度帯の温度まで連続してまたは段階的に温度調整可能な冷凍室と、前記冷凍室の冷気吹出し口から吹出され前記冷却器に吸い込まれる冷気を取り入れ前記食品を凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に維持する前記冷凍室内に配置された冷却室と、前記冷却室に貯蔵された前記食品が過冷却状態を得るように前記冷凍室の温度を−2℃以下で−15℃以上に設定する温度設定手段と、前記冷却室に収納した前記食品周囲の風速を抑え前記冷却室に貯蔵された前記食品を過冷却状態に維持するように前記冷凍室内に吹出し前記冷却室に取り入れる冷気を調整する冷気調整手段と、を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
  7. 冷却器からの冷気により収納する食品を冷凍させる冷凍室と、前記冷凍室の冷気吹出し口から吹出され前記冷却器に吸い込まれる冷気を取り入れ凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に貯蔵された食品を維持する前記冷凍室内に配置された冷却室と、前記冷却室は前記冷凍室に配置した蓋もしくは上側ケースにより覆われる過冷却ケースにて構成するとともに、前記蓋もしくは上側ケースと前記過冷却ケースとの間に設けた前記冷気を取り入れる隙間と、を備え、前記隙間は前記冷凍室内を流れる冷気の流れ方向とは異なる方向を向いた開口で、前記隙間が10〜30mm程度の寸法であることを特徴とする冷蔵庫。
  8. 冷却器からの冷気により収納する食品を凍結点以下で−15℃以上の設定温度で凍らない過冷却状態に維持する冷却室と、前記冷却室内に吹出され前記冷却室内を循環する冷気の温度を変化させる冷気調整手段と、前記冷気調整手段にて前記冷却室に収納され過冷却状態にある食品に前記設定温度より2度乃至5度程度低い温度の冷気を供給して前記食品の過冷却状態を解除する過冷却解除手段と、を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
  9. 前記冷却室に設けられ貯蔵される前記食品の温度を計測する食品温度計測手段と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の冷蔵庫。
  10. 前記冷凍室もしくは前記冷却室の温度を設定する温度設定手段は、前記冷却室に収納された常温の食品が冷却される際に、前記食品の表面温度が3℃から0℃に低下する範囲の冷却速度が、−3.5℃/hr乃至−10℃/hrの範囲とすることを特徴とする請求項9記載の冷蔵庫。
  11. 前記冷凍室又は前記冷却室へ冷気を吹出す冷気吹出し口、前記冷却室へ冷気を取り入れる取り入れ口および前記冷気吹出し口と前記取り入れ口の間の風路の少なくともいずれかに冷気を調整する冷気調整手段を設け、前記冷気調整手段にて冷気を調整して過冷却状態となる前記食品周囲の風速を0.1乃至0.5m/s程度に抑えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の冷蔵庫。
  12. 前記冷気調整手段は、前記冷気吹出し口と前記取り入れ口の間の風路に複数回の曲がりを構成又は前記冷却室の奥行き相当の風路長さを設けたことを特徴とする請求項11記載の冷蔵庫。
  13. 前記冷凍室又は前記冷却室へ冷気を吹出す冷気吹出し口に冷気を調整する冷気調整手段を設け、この冷気調整手段は、ダンパーにて前記冷凍室又は前記冷却室へ吹出す冷気の前記冷気吹出し口での風速を1.0乃至1.2m/s程度に抑えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の冷蔵庫。
  14. 前記冷凍室又は前記冷却室の温度を設定する温度設定手段は、食品の凍結点以下で−17度以上の冷凍温度帯に設定した前記冷凍室又は前記冷却室の温度を、前記食品の温度が凍結点としてあらかじめ設定された温度以下になった場合又は前記食品が前記冷却室に貯蔵されてから所定時間経過した場合に、前記食品の過冷却状態を深化させるように前記冷凍室の設定温度を1−2度程度下げることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の冷蔵庫。
  15. 前記冷気調整手段は、貯蔵した食品が過冷却状態とされるとき、前記食品周囲の空気温度の冷却状態変化による変動幅が10度以内となるように調整することを特徴とする請求項11又は12又は13記載の冷蔵庫。
  16. 前記冷気調整手段は、前記過冷却室内部の空気温度ムラが2度以内となるように調整することを特徴とする請求項11又は12又は13記載の冷蔵庫。
  17. 前記食品が収納されて一定時間経過後又は食品の温度急変を検知し、前記冷凍室内又は前記冷却室内の前記食品に温度、振動、超音波、風速変動などの物理的衝撃を加えて過冷却を解除しあらかじめ設定された冷凍温度にて保存する、又は急速冷凍することを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の冷蔵庫。
  18. 前記過冷却解除は、前記冷却室へ直接冷気を導入することで行うことを特徴とする請求項17記載の冷蔵庫。
  19. 冷却器からの冷気により収納する食品を凍結点以下で−15℃以上の設定温度で凍らない過冷却状態に維持する冷却室と、前記冷却室内に吹出され前記冷却室内を循環する冷気の温度を変化させる冷気調整手段と、を備えた冷蔵庫において、前記食品を−15℃以上に設定された前記冷却室に収納するステップと、前記冷気調整手段にて前記冷却室内の温度が−5℃以下で−10℃以上もしくは前記冷却室内の風速が0.5m/s以下になるように調整するステップと、前記冷却室に収納され過冷却状態にある前記食品に前記設定温度より低い温度の冷気を直接供給して前記食品の過冷却状態を解除するステップと、を備えたことを特徴とする冷凍保存方法。
  20. 前記過冷却状態を解除するステップの後で前記食品を冷凍保存する温度として、−5℃以下の温度帯であることを特徴とする請求項19記載の冷凍保存方法。
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