JP2009024131A - ポリアリーレンメチレン類を含有する熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンメチレン類を含有する熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高弾性率かつ低線熱膨張係数で、成形品の表面平滑性に優れ、特に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の場合には優れた透明性の兼備といった特徴をも有する熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類と熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物。アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類の重量平均分子量(Mw)は20000以上であることが好ましく、熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン系樹脂又は芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類と熱可塑性樹脂を溶液中で混合する工程を有する該熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明はアルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類を含む熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法に関する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高弾性率かつ低線熱膨張係数で、成形品の表面平滑性に優れ、特に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の場合には優れた透明性の兼備といった特徴をも有し、自動車部品、表示・投影装置の光学部品(レンズや拡散板等)、あるいは建材等に有用である。
従来、熱可塑性樹脂材料の弾性率の向上や線熱膨張係数の低減には、ガラス繊維などの無機物充填材(フィラー)の配合が広く行われている。しかし、無機物フィラーの配合は比重の増大や、焼却時に膨大な灰(不燃性の残渣)が発生するため焼却処理コストが大きくなるといった欠点があった。
かかる欠点の解決手段として、有機物充填材(以下、「有機フィラー」と記す。)の使用が考えられる。
従来、この種の用途に供される有機フィラーとして、炭素繊維、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素材料、延伸した樹脂繊維(例えば延伸したポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなど)、セルロース繊維などが挙げられる。このうち、炭素材料は、軽量で高剛性である特徴を有する優れたフィラーであるが、黒く着色してしまうこと、成形品の表面平滑性の悪化(毛羽立ちや凹凸)が問題となる場合があること、並びに比較的高価であることなどから利用範囲に制限があるといった欠点がある。延伸した樹脂繊維やセルロース繊維も、同様に成形品の表面平滑性悪化が欠点であり、特に、セルロース繊維は熱安定性が悪い(高温で焦げやすい)欠点もある。更に、芳香族ポリカーボネート樹脂のような透明樹脂の場合には、一般に、これらの有機フィラーを混合すると不透明になってしまうという欠点もある。
前記有機フィラーに共通の欠点である成形品の表面平滑性悪化や不透明化を解決するには、フィラーの大きさを小さくしていわゆるナノ粒子とする手段(以下、「ナノフィラー」と記す場合がある。)が考えられる。
従来提供されている有機ナノフィラーとしては、セルロース結晶の微細繊維が挙げられる(特開平3−152130号公報)が、通常のセルロース繊維と同様に熱安定性が悪い(高温で焦げやすい)欠点がある。
WO2005/103104号公報には、芳香族系ナノ微粒子(化学構造はアルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類)が開示されている。
しかしながら、ここに開示されている技術では、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂などの工業材料に、該芳香族系ナノ微粒子を均質に分散することにより高弾性率や低線熱膨張係数などの特徴を有する熱可塑性樹脂組成物を得ることはできなかった。
特開平3−152130号公報 WO2005/103104号公報
本発明は、熱可塑性樹脂に有機ナノフィラーを混合した熱可塑性樹脂組成物における、弾性率の向上、線熱膨張係数の低下、成形品の表面平滑性の向上、特に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の場合には優れた透明性の兼備を達成することを課題とする。
本発明者らは、アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類(以下「PAM」と略記する場合がある。)を有機ナノフィラーとして熱可塑性樹脂に混合する際に、PAMを溶液状態で混合することにより非常に優れた熱可塑性樹脂へのPAMの分散状態を達成すること、更にPAMの分子量を特定値よりも高めることによりその有機ナノフィラーとしての効果を顕著に向上させることができることを見出して、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類と熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物、に存する。
本発明の別の要旨は、アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類の重量平均分子量(Mw)が20000以上である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物、に存する。
本発明の別の要旨は、熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂又は芳香族ポリカーボネート樹脂を含有するものである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物、に存する。
本発明の別の要旨は、アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類と熱可塑性樹脂とを溶液中で混合する工程を有する請求項1ないし3のいずれかの熱可塑性樹脂組成物の製造方法、に存する。
本発明によれば、高弾性率かつ低線熱膨張係数で、成形品の表面平滑性に優れ、特に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の場合には優れた透明性の兼備といった特徴をも有する熱可塑性樹脂組成物が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類と熱可塑性樹脂とを含むものである。
{アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類}
本発明におけるアルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類(本発明では「PAM」と略記する場合がある。)とは、炭素数1〜6のアルコキシ基(好ましくはメトキシ基又はエトキシ基、最も好ましくはメトキシ基)が結合した芳香族誘導体(好ましくはベンゼン誘導体。置換基として炭素数6以下のアルキル基を芳香環に結合していてもよい。)とアルデヒド類(好ましくはホルムアルデヒド、またはその前駆体であるパラホルムアルデヒド)を原料とする縮合高分子であり、芳香環がメチレン基で連結された高分子鎖構造を特徴とする。
前記アルコキシ基は、高分子への化学反応により水酸基に誘導可能であるので、本発明においてはメトキシ基の一部が水酸基に変換された分子構造を有するPAMも使用可能である。かかるメトキシ基の水酸基への変換率は、通常0〜90%、耐酸化性や熱安定性の点からはその上限は好ましくは70%、更に好ましくは50%である。かかる水酸基への変換により、それを起点とする化学反応が可能となることや、樹脂材料や溶剤との相溶性を制御できる、という利点もある。
原料として用いる前記アルコキシ基が結合した芳香族誘導体の例として、1,3,5−トリメトキシベンゼン、3,4,5−トリメトキシトルエンなどのトリアルコキシベンゼン類、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシ−4−メチルベンゼンなどのジアルコキシベンゼン類、メトキシベンゼン、1−メトキシ−4−メチルベンゼン、1−メトキシ−3−メチルベンゼンなどのモノアルコキシベンゼン類が挙げられ、中でも1,3,5−トリメトキシベンゼン、3,4,5−トリメトキシトルエンなどのトリアルコキシベンゼン類が好適なものとして挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
PAMの一般的な合成方法としては、このようなアルコキシ基が結合した芳香族誘導体とアルデヒド類とを、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸などの酸を触媒とし、反応溶媒としてジエチルエーテルやテトラヒドロフラン(THF)などの脂肪族エーテル類、クロロホルムやジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸や蟻酸などの脂肪酸などを用い(これらは必要に応じ任意の組み合わせと割合での混合溶媒として用いてもよい。)、反応温度は−30℃〜100℃、好ましくは−10℃〜80℃、更に好ましくは10℃〜60℃の範囲で縮合反応させる方法が挙げられる。更に、後処理として、溶液をアルカリ水で洗浄して酸触媒を取り除くことが、熱安定性や着色を抑制する点において好ましい。
反応に供するアルコキシ基が結合した芳香族誘導体とアルデヒド類(好ましくはホルムアルデヒド、またはその前駆体であるパラホルムアルデヒド)との割合は、ベンゼン誘導体に対するホルムアルデヒドのモル比で通常0.7〜2.0、特に0.9〜1.2とすることが好ましい。この比より小さいと得られたアルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類の分子量の低下が見られ、大きいと分子量分布の広いものとなるので、いずれの場合もフィラーとしての補強効果が低下する。
このようにして得られるPAMは、合成条件により、線状、分岐状、架橋状の3種のいずれかの高分子鎖コンフィギュレーションとすることができる。このうち好ましいのは線状又は分岐状であり、最も好ましいのは線状である。
特に、後述する二次硬化の前駆体としては、線状の高分子が好ましい。
PAMの分子量は、後述の二次硬化に供する前駆体の場合は、二次硬化によるフィラー形成反応の効率や反応溶液の粘度(即ちハンドリング性)などの点で、通常1000〜300000、好ましくは5000〜100000、更に好ましくは10000〜50000である。ここでいうMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(通称GPC、単分散ポリスチレンを対照とする。)により測定される。Mwと数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、二次硬化反応の制御性の点で、通常1.1〜5.0、その上限は好ましくは4.0、更に好ましくは3.0である。
また、二次硬化に供さず、そのままフィラーとする場合は、数平均分子量(Mn)は、補強効果の点で通常2000〜100000、好ましくは5000〜80000、更に好ましくは8000〜60000であり、重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)は、補強効果の点で、通常1.1〜5.0で、その上限は好ましくは4.0、更に好ましくは2.0である。
更に、後述の電界紡糸に供する場合、数平均分子量(Mn)は、紡糸性の点で通常1000〜100000、好ましくは2000〜80000、更に好ましくは5000〜50000であり、重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)は、補強効果の点で、通常1.1〜5.0で、その上限は好ましくは4.0、更に好ましくは2.0である。
本発明において、熱可塑性樹脂と混合されるPAMとして、最も好ましいPAMのMwの条件は、二次硬化の有無に関わらず、Mwが20000以上で、特に30000以上である。熱可塑性樹脂に混合されるPAMのMwが20000未満ではフィラーとしての補強効果が不十分である。ただし、PAMのMwが大き過ぎると低線熱膨張係数とする効果や透明性が不十分となるので、通常300000以下である。
{PAMフィラー}
本発明において、PAMは、特に、アスペクトの大きい微細フィラーとして熱可塑性樹脂組成物中に分散していることが好ましい。
以下に、本発明に好適な高アスペクト比のPAMフィラー及びその製造方法について説明する。
<形状及び寸法>
本発明に好適なPAMフィラーは、短径が1〜10000nm、アスペクト比が1.5以上という形体上の特徴を有するものである。その形状には、繊維状および薄膜状があり、ここでいう短径とは、ぞれぞれの形状において、繊維の直径及び薄膜の厚さに該当する。また、繊維の長さ、薄膜の膜面における最も径の大きい部分の長さが、フィラーの長手方向の長さ(以下、「長径」と称す場合がある。)に該当し、この長径を短径で除した値がアスペクト比に該当する。
フィラーの短径の下限は、フィラーとしての補強効果の点で、好ましくは3nmであり、一方、その上限は、樹脂材料に微細に分散させて成形表面平滑性、機械的強度、若しくは透明性を改善する点で、好ましくは5000nm、更に好ましくは1000nmである。
また、フィラーのアスペクト比は大きいほどフィラーとしての補強効果の点で好ましい。従って、アスペクト比は好ましくは5以上、更に好ましくは10以上とするのがよい。
また、フィラーの長手方向の長さは20μm以上であることがフィラーとしての性能上好ましく、この長さは更に好ましくは50μm以上、最も好ましくは100μm以上である。
このように長手方向の長さの長い高アスペクト比のフィラーは、後述する電界紡糸などの製造手段で達成可能である。
なお、前記フィラーの寸法やアスペクト比は、顕微鏡(電子顕微鏡や原子間力顕微鏡)観察により決定する。即ち、顕微鏡(電子顕微鏡や原子間力顕微鏡)で、無作為に選んだ100個のフィラーについて、短径と長径を測定し、その平均値として各々短径と長径を求め、この平均値からアスペクト比を算出することができる。
<その他の成分>
本発明に好適なPAMフィラーには、前述の主成分としてのPAMに、必要に応じて他の高分子や添加剤といった異種成分を混入させてもよい。かかる異種成分としては、PAMとの相溶性に優れた芳香族高分子、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂が例示され、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの異種成分の混合により、フィラーの分散媒質への相溶性、機械的強度、屈折率、若しくはガラス転移点などの物性を制御することが可能となる。かかる異種成分の混合割合は、フィラー全体の重量に対して、通常0〜50重量%であり、その上限は、フィラーの機械的強度、耐熱分解性や耐酸化性の点で好ましくは40重量%、更に好ましくは30重量%である。
<屈折率>
PAMフィラーの屈折率を、熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂である透明な熱可塑性樹脂、例えば後述のポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などの屈折率と近接させると、かかる透明樹脂の透明性を高度に保持したままPAMフィラーによる補強効果を十分に発現させることができる。
かかる目的では、フィラーの屈折率は、好ましくは1.56〜1.65、好ましくは1.57〜1.63に制御するのがよい。かかる制御は、前記PAMの原料である前記アルコキシ基が結合した芳香族誘導体の選択(例えばアルコキシ基やアルキル基の炭素数の選択)、前記異種成分として屈折率調整作用のある低分子を用いる手段(必要に応じて化学反応させてもよい)などにより可能である。
<PAMフィラーの製造方法>
本発明に好適なPAMフィラーの製造方法としては、例えば、前記PAMの溶液において後述する高分子鎖間の架橋反応を行わせる二次硬化法、前記PAM(溶液又は融液)を電界紡糸(以下ESと略記する場合がある)するES法、押出機などのオリフィスから融液を押し出してストランドを伸長して紡糸あるいは製膜する溶融押出法、押出機などのオリフィスから溶液を押し出して紡糸あるいは製膜する溶融紡糸法、かかる融液又は溶液の押出に空気や窒素ガスの導入機構を組み込んだブロー成形により風船状に膨らませ、次いでそれを割ることで薄片を製造するブロー押出法などが挙げられる。
これらのうち、微細なフィラーを得る上で好ましいのは、二次硬化法とES法であるので、以下、この2法について説明する。
(二次硬化法)
二次硬化法は、溶液中で高々数nmの慣性半径を有する物体であるPAMの分子を、好ましくは分子鎖方向に配向させた状態で互いに、新たに芳香環への縮合反応による分子間架橋を起こさせることで、フィラーとして有意義な大きさに成長させ、かつ架橋により不溶不融化と機械的強度の向上を意図する方法である。
二次硬化法は、前記PAMの溶液を調製し(このPAM溶液は、前述のPAMの合成方法で得られたPAMを単離精製したものを再度溶液としたものであっても良く、合成反応液をそのまま用いても良い。)、ここに架橋反応試剤を加えて実施される。架橋反応試剤としては、PAMの合成において、アルコキシ基が結合した芳香族誘導体との縮合反応に供されるアルデヒド類(好ましくはホルムアルデヒド、またはその前駆体であるパラホルムアルデヒド)と同様のものを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、PAMの溶液の調製に用いられる溶媒としては、前述のPAMの合成における反応溶媒と同様のものを用いることができる。
反応に供するPAMとアルデヒド類(好ましくはホルムアルデヒド、又はその前駆体であるパラホルムアルデヒド)の割合は、PAMの繰り返し単位から算出したPAMの仕込み量に対するホルムアルデヒドのモル比で0.05〜0.3、より好ましくは0.08〜0.15とすることが好ましい。この比より大きいと一部有機溶媒に不溶な化合物が見られ、小さいと未反応のPAMが残るのでいずれの場合も補強効果が低下する。また、PAM溶液中のPAM濃度は、0.1〜0.25g/mL、特に0.15〜0.20g/mLとすることが好ましい。この範囲よりも高濃度では、一部有機溶媒に不溶な化合物が得られるのでフィラーとしての補強効果が低下する。
かかる架橋反応は、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムや酢酸を溶媒とし、塩酸や硫酸などの酸触媒を加えて行う。好ましくは酢酸を5〜50重量%含む溶媒組成が好適である。
また反応温度は室温から60℃、反応時間は30分〜12時間、好ましくは1〜3時間である。
なお、上述の二次硬化による意図から、二次硬化反応における分子鎖方向の配向を助長する目的で、二次硬化反応液に剪断をかけ流動させることが有効である場合がある。このような剪断流動場とする手段として、毛管中や薄層中を流動させるいわゆるマイクロリアクターの手法が有利である。
以下に、1,3,5−トリメトキシベンゼンを原料とするPAMの、架橋反応試剤としてパラホルムアルデヒドを用いた二次硬化法の反応式例を示す(以下において、Meはメチル基を示す。)。
Figure 2009024131
このような二次硬化で得られるフィラーのPAMの数平均分子量(Mn)は、通常5000〜500000、好ましくは8000〜400000、更に好ましくは10000〜300000であり、重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)は、通常1.1〜5.0で、その上限は好ましくは4.0、更に好ましくは3.0である。
(ES法)
電界紡糸(エレクトロスピニング)の形式は、汎用装置として市販されている高分子溶液を原料とするものでも、溶媒を含まない融液として押出すもので行ってもよい。また、前記二次硬化法の後段としてES法を行うこともできる。即ち、二次硬化法である程度の大きさのフィラーとした後、その溶液を電界紡糸にかけることで、フィラーの長手方向の長さを飛躍的に大きくできる場合がある。
溶液ES装置の操作条件としては特に制限はないが、好適な運転条件としては、次のような条件が挙げられる。
原料溶液温度:通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃
吐出速度:通常0.01〜100mL/min、好ましくは0.5〜50mL/min
電界の強度:5〜50kV、好ましくは10〜30kV
電界間の距離:5〜50cm、好ましくは10〜30cm
溶液吐出のニードルの直径:0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mm
代表的な運転条件は次の通りである。
原料溶液温度:室温
吐出速度:0.1mL/min
電界の強度:15kV
電界間の距離:17cm
ニードル直径:1.2mm
なお、前記任意の製造方法(例えば二次硬化法やES法)において、前記異種成分を混合(必要に応じて反応)させることが可能である。これにより、例えば前記屈折率調整などが好ましく行われたフィラーを製造することが可能である。
かかる異種成分の混合は、前記PAMの溶液又は融液に対して、若しくは前記二次硬化法で得られるフィラー溶液に対して行うことができる。
{熱可塑性樹脂}
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、当業者に公知の射出成形、押出成形及び熱プレス成形のいずれかが可能な限り、その単量体単位(高分子の繰返し単位)の化学構造、末端基の化学構造、分子量及び分岐構造に制限はない。かかる熱可塑性樹脂は、その熱可塑性(加熱により軟化し賦形可能となる性質)を保持する限りにおいて、架橋高分子成分を含有していてもよく、任意数の異種樹脂を混合して使用してもよい。
本発明に使用可能な熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等)、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、セルロースアセテート樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等が例示される。これら例示の熱可塑性樹脂として可視波長領域での透明性が高いものを選ぶ場合に好ましいものは、ASTM規格D1003による光線透過率が好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上のものである。以下、特に好適に用いられる熱可塑性樹脂について説明する。
(1)アクリル樹脂
アクリル樹脂は、アクリル酸またはそのエステル類、メタクリル酸またはそのエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリル酸誘導体の単独重合体または共重合体である。かかるアクリル酸誘導体としては、例えば日刊工業新聞社刊の「プラスチック材料講座」第16巻等に記載されている。代表的なものとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルナンメチル、メタクリル酸ノルボルネンメチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸フェニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
アクリル樹脂の製造方法には特に制限はなく、従来から知られている塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の任意の重合法によるラジカル重合により製造することができる。
代表的なアクリル樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸シクロヘキシル(PCHM)、ポリアクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、等が挙げられ、これらは1種単独でも複数種の併用であってもよい。
光線透過率や機械的物性の点で最も好ましいのはPMMA樹脂である。本発明に用いられるPMMA樹脂の分子量に特に制限はないが、例えばAldrich社の試薬カタログに記載されているPMMA樹脂の品種にあるように通常はGPCで測定される重量平均分子量Mwが10,000〜1,000,000の範囲であり、機械的物性と溶融流動性の点で好ましいのは該Mwが20,000〜800,000の範囲である。重合の立体規則性は、ランダム、アイソタクチック、シンジオタクチックなどが可能であるが、特に制限はなく、いずれのものも採用可能である。
(2)スチレン樹脂
スチレン樹脂とは、スチレン誘導体の単独重合体、およびスチレン誘導体を主成分としこれと共重合可能なビニル化合物との共重合体樹脂を言う。スチレン誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、等の芳香族ビニル化合物を挙げることができる。上記芳香族ビニル化合物を重合させる際に、ゴム成分を共存させることもできる。
スチレン系樹脂の製造方法には特に制限はなく、従来から知られている塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合等の任意の重合法によるラジカル重合により製造することができる。
代表的なスチレン樹脂としては、ポリスチレン(PS樹脂)、ポリ(α−メチルスチレン)(MS樹脂)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)等が例示でき、これらは1種単独でも複数種の併用であってもよい。
MS樹脂は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、液晶テレビ等の直下型液晶ディスプレイに使用される拡散板の原料として用いる場合のマトリクス樹脂として非常に好ましい。
本発明に用いられるスチレン樹脂の分子量に特に制限はないが、通常はGPCで測定される重量平均分子量Mwが10,000〜1,000,000の範囲であり、機械的物性と溶融流動性の点で好ましいのは該Mwが20,000〜800,000の範囲である。重合の立体規則性は、ランダム、アイソタクチック、シンジオタクチックなどが可能であるが、制限はなく、いずれのものも採用可能である。
(3)非晶質ポリオレフィン樹脂
非晶質ポリオレフィン樹脂は、炭素−炭素多重結合を含有する炭化水素の配位重合やラジカル重合により得られ、水素添加ポリスチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリテトラシクロドデセン類、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体の二重結合に水素添加して得られるシクロオレフィンポリマー類やエチレンとノルボルネン系炭化水素共重合体等のポリシクロオレフィン樹脂、及びこれらの構造を主体とする共重合体(例えば極性モノマーの共重合による親水性の制御された共重合体等)等が例示される。よく知られた登録商標名としては、例えばJSR社製のアートン、ゼオン社製のゼオネックス及びゼオノア、三井化学社製のアペル等が好適な具体例であり、中でもJSR社製のアートン、ゼオン社製のゼオネックス及びゼオノア等のポリシクロオレフィン樹脂は最も好ましい。
本発明に用いられる非晶質ポリオレフィン樹脂の分子量に特に制限はないが、通常はGPCで測定される重量平均分子量Mwが10,000〜1,000,000の範囲であり、機械的物性と溶融流動性の点で好ましいのは該Mwが15,000〜700,000の範囲である。ポリシクロオレフィン樹脂においては、残留二重結合が可及的に少ないことが耐光性や熱安定性の点で好ましい。
(4)芳香族ポリカーボネート樹脂
芳香族ポリカーボネート樹脂は、3価以上の多価フェノール類を共重合成分として含有しても良い1種以上のビスフェノール類と、ビスアルキルカーボネート、ビスアリールカーボネート、ホスゲン等の炭酸エステル類との反応により製造される重合体であり、必要に応じ芳香族ポリエステルカーボネート類とするために共重合成分としてテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(例えば芳香族ジカルボン酸ジエステル)を使用してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に制限はなく、例えば
(a)ビスフェノール類のアルカリ金属塩と求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体(例えばホスゲン)とを原料とし、生成ポリマーを溶解する有機溶剤とアルカリ水との界面にて重縮合反応させる界面重合法
(b)ビスフェノール類と前記求核攻撃に活性な炭酸エステル誘導体とを原料とし、ピリジン等の有機塩基中で重縮合反応させるピリジン法
(c)ビスフェノール類とビスアルキルカーボネートやビスアリールカーボネート等の炭酸エステル(最も好ましい例はジフェニルカーボネート)とを原料とし、溶融重縮合させる溶融重合法
(d)最近開発されたビスフェノール類と二酸化炭素の反応で製造する方法
等、公知のいずれの方法によって製造されたものでもよい。
原料のビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ(略号はアルドリッチ社試薬カタログを参照)等が例示され、中でもビスフェノールAとビスフェノールZは好適に用いられ、ビスフェノールAが最も好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、1種単独でも複数種の併用であってもよい。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量には特に制限はなく、通常、40℃のクロロホルム溶媒によるGPC(単分子量分散ポリスチレンを対照)で測定される重量平均分子量Mwが10,000〜500,000、機械的物性と溶融流動性の点で好ましくは15,000〜200,000、更に好ましいのは20,000〜100,000の範囲のものである。ガラス転移点は通常120〜190℃、耐熱性と溶融流動性の点で好ましくは130〜180℃、更に好ましくは140〜180℃である。
(5)ポリアリレート樹脂
ポリアリレート樹脂は、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸等)又はその誘導体(例えばジメチルテレフタレートやジメチルイソフタレート等の芳香族ジカルボン酸ジエステル類)と前記ビスフェノール類とを原料とする全芳香族ポリエステルである。好ましい重合体は、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とビスフェノールAとが重縮合したポリエステル構造である。よく知られた登録商標名としては、ユニチカ社製Uポリマーが好適な具体例である。ポリアリレート樹脂は1種単独でも複数種の併用であってもよく、前記芳香族ポリカーボネート樹脂や後述するポリエステル樹脂との優れた相溶性やエステル交換反応による相溶化が可能なので、これら樹脂とのブレンドも可能である。
ポリアリレート樹脂の分子量には特に制限はないが、通常、40℃のクロロホルム溶媒によるGPC(単分子量分散ポリスチレンを対照)で測定される重量平均分子量Mwが8,000〜200,000、機械的物性と溶融流動性の点で好ましくは10,000〜100,000、更に好ましいのは15,000〜80,000の範囲のものである。
(6)ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂は、芳香族ポリエステル類と、脂肪族ポリエステル類とに大別される。
芳香族ポリエステル類は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールとの縮合反応により得られる芳香族環を分子鎖中に有するポリエステルである。本発明への使用に適する芳香族ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリ1,3−プロピレンテレフタレート等が挙げられる。
脂肪族ポリエステル類は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールとの縮合反応により得られる芳香族環を分子鎖中に有さないポリエステルである。本発明への使用に適する脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリ4−ヒドロキシブチレート、ヒドロキシブタン酸とヒドロキシ吉草酸の共重合体、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の生分解性を有するポリエステル、シクロヘキサンジメタノールとシクロヘキサンジカルボン酸とのポリエステル(本発明では以下「PCC」と略記する場合がある。)等が挙げられる。
これらポリエステル樹脂は、芳香族ポリエステル類又は脂肪族ポリエステル類であるを問わず単独でも複数種の併用であってもよい。あるいは相溶性に優れる前記芳香族ポリカーボネート樹脂とのブレンドも可能であり、好適な市販のポリエステル樹脂ブレンド材料として前記PCC樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂の相溶ポリマーアロイ材料でガラス転移点が100℃程度である日本ジーイープラスチックス社製の登録商標ザイレックス(Xylex)が例示される。
本発明で用いられるポリエステル樹脂の分子量には特に制限はなく、好ましくは、フェノールとテトラクロロエタンとの重量比1:1の混合溶媒を使用し、濃度1g/dLとし30℃で測定した極限粘度[η]が、0.5〜3.0dL/gの範囲のものである。極限粘度がこの範囲よりも小さい場合には、靭性が極端に低下し、逆にこの範囲よりも大きい場合には、溶融粘度が大きすぎて熱可塑成形に支障を来すため好ましくない。本発明に好ましいポリエステル樹脂はASTM規格D648で荷重455kPa(4.6kgf/cm)とする荷重たわみ温度が50〜130℃の範囲であり、前記例示の全てのポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂ブレンド材料を含む)はこれに該当する具体例である。
本発明においてポリエステル樹脂ブレンド材料を用いる場合、脂肪族ポリエステル類の割合が大きければ大きいほど耐光性の点で優れる場合がある。これは紫外線を吸収するベンゼン環等の芳香環の含有量が減少するためである。同じ理由で脂肪族ポリエステル類は耐光性の点で芳香族ポリエステル類よりも優れる場合がある。
(7)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを必須モノマーとして遷移金属触媒の存在下、付加重合して得られる重合体である。かかる重合体は、メチレン鎖炭素の一つおきにメチル基が結合した構造であって、このメチル基の結合した炭素元素は不斉中心であるため、その連鎖の立体規則性により、シンジオタクチック、アイソタクチック、アタクチック等の分類が可能である。これらいずれの立体規則構造のもでもよく、複数を併用することもできる。またポリプロピレン系樹脂は、分岐構造を有するものを含んでいてもよい。末端基は水酸基、アミノ基等の炭素と水素以外の元素を含む官能基であってもよい。エチレンやブタジエン等の柔軟性を付与するコモノマーを共重合したものであってもよい。
ポリプロピレン系樹脂は、その製造方法は特に制限されるものではない。
また、これらのポリプロピレン系樹脂の分子量には特に制限はなく、当業者が常用するメルトインデックスが0.1〜50の通常範囲のものが好ましく用いられ、特に0.5〜30の範囲のものが好ましい。
GPCで測定されるポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量としては、通常2000以上、好ましくは5000以上、より好ましくは1万以上であって、通常300万以下、好ましくは100万以下、より好ましくは50万以下である。ここでのGPC測定条件は、単分散ポリスチレンを対照とし、オルトジクロルベンゼンを溶媒とし、測定温度は135℃である。
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、上記例示熱可塑性樹脂のうち、特に、ポリプロピレン系樹脂又は芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
{配合割合及び分散状態}
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、PAMの含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の固形分(熱可塑性樹脂組成物が溶剤を含む場合は、当該溶剤を除いた全固形分)において、通常0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは2〜30重量%である。PAMの含有量がこの下限値に満たないとPAMが有機ナノフィラーとして熱可塑性樹脂マトリクスを補強する効果が不十分となり、この上限値を超えると熱可塑性樹脂組成物の熱安定性や機械的強度が低下する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、PAMの熱可塑性樹脂マトリクス中における分散状態は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察される相として分散していても、分子レベルに近い非常に均質な分散状態であってもよい。
TEMなど電子顕微鏡的に観察されるPAMの好ましい分散状態は、樹脂組成物の機械的強度、弾性率、線熱膨張係数、透明性などの物性の点で数平均粒径として通常1〜10000nm、好ましくは5〜1000nmであり、この上限値は更に好ましくは500nm、最も好ましくは300nmである。PAMの数平均粒径がこの上限値よりも大きいとフィラーとしての補強効果や透明性が低下する。
なお、与えられた熱可塑性樹脂組成物にPAMが分散していることは、透過電子顕微鏡法(TEM)の他、元素分析、核磁気共鳴、赤外吸収などの化学分析手段の組合せで検出することが可能である。
{その他の成分}
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、PAMと上記熱可塑性樹脂以外に、通常の樹脂の添加剤として用いられる酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤などを0.001〜1重量%程度含んでいても良い。
また、更なる機械的強度の向上などの目的で、無機物質を強化材として配合してもよい。
かかる無機物質としては、シリカ類(コロイダルシリカなど湿式合成品、フュームドシリカなどの乾式合成品、珪石粉末、石英ガラス、ガラスビーズ、珪藻土など)、アルミナ類(α−アルミナ、γ−アルミナ、ベーマイト、Diaspore、Bayerite、非晶性アルミナなど)、酸化チタン類(ルチル型、アナターゼ型、非晶性など)、酸化亜鉛(ナノ粒子、ウイスカーなど)、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化鉄類(ヘマタイト、マグネタイト、ゲーサイト、Lepidocrociteなど)、酸化マグネシウム、酸化アンチモン等の金属酸化物類、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩類、亜硫酸カルシウム、亜硫酸バリウム等の亜硫酸塩類、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム類(重質、軟質、コロイド、胡粉など)、炭酸バリウム等の炭酸塩類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄(II)等の多価金属の水酸化物、フッ素アパタイトやヒドロキシアパタイトなどのアパタイト類(針状結晶、板状結晶、非晶性など)、モンモリロナイト、ベントナイト、合成雲母、フッ素化合成雲母、合成スメクタイト(ルーセンタイト)、フッ素化合成スメクタイト、合成サポナイト等の陽イオン交換能を有する層状珪酸塩類、パイロフィライト、カオリン、タルク、アタパルジャイト、セリナイト、雲母(フロゴバイト、マスコバイト等)等の各種の層状珪酸塩、珪酸カルシウム類(合成非晶性、ゾノライト、ワラストナイト等)、珪酸亜鉛、珪酸ジルコニウム等の珪酸塩類、アスベスト類(クリソタイル、アモサイト、アンソフィナイト等)、ハイドロタルサイト等の陰イオン交換能を有する層状塩、ゼオライト類、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩類、ホワイトカーボンなどが例示される。
かかる無機物質は、機械的強度の点で、その平均粒径(特に粒子短軸方向の粒径)が2〜100nm、好ましくは4〜50nmの超微粒子であるのが好ましい。
かかる無機物質の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常0.1〜30重量部程度である。この範囲よりも少ないと十分な配合効果が得られず、多いと機械強度や透明性が低下する。
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記PAMと前記熱可塑性樹脂と、必要に応じて配合される他の成分を混合して製造されるものであり、PAMが熱可塑性樹脂マトリクス中に良好に分散した構造を有するものである。かかる本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に制限はないが、好ましい製造方法は、溶融混練や溶液混合であり、特にPAMと熱可塑性樹脂とを溶液状態で混合する工程を有する製造方法(以下、「PAM溶液法」と呼ぶ場合がある。)がPAMの熱可塑性樹脂マトリクス中における分散状態の点で好ましい。
PAM溶液法の具体的な方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
(1) PAMの溶液と熱可塑性樹脂とを混合する。
(2) PAMの溶液と熱可塑性樹脂の溶液とを混合する。
(3) PAMと熱可塑性樹脂の溶液とを混合する。
(4) PAMと熱可塑性樹脂とを溶媒中に添加して混合する。
前記PAM溶液法で用いる溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン含有有機溶媒、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、トルエン、キシレン、ピリジンなどの芳香族系溶媒などが挙げられ、中でもテトラヒドロフランなどの環状エーテル類が好ましく用いられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、熱可塑性樹脂溶液に用いられる溶媒としては、当該熱可塑性樹脂の溶解性に優れたものであれば良く、特に制限はないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂又は芳香族ポリカーボネート樹脂の溶媒としては次のようなものが挙げられる。
<ポリプロピレン系樹脂の溶媒>
トルエン、キシレン、テトラリンなどの芳香族炭化水素、四塩化エチレン、四塩化エタン、オルトジクロルベンゼン、モノクロルベンゼンなどの塩素化炭化水素が挙げられる。各溶媒のポリプロピレン系樹脂溶解性は用いるポリプロピレン系樹脂の分子量や立体規則性等また溶媒の温度に依存するため、適宜溶解可能な溶媒ならびに溶解温度を選択すればよいが、沸点や低毒性の点で、通常キシレンが最も好ましい。
<芳香族ポリカーボネート樹脂の溶媒>
ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどの塩素化炭化水素、テトラヒドロフラン(略称THF)、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの含窒素溶媒が挙げられる。これらのうち、低毒性と溶解度のバランスからはTHF及び1,3−ジオキソランが好ましく、中でもTHFが最も好ましい。
上記(1)〜(3)のいずれの方法であっても、混合系内の溶液中のPAM濃度は、通常0.1〜70重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは3〜40重量%であり、熱可塑性樹脂濃度は、通常0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜40重量%であり、PAMと熱可塑性樹脂との合計濃度は、0.1〜70重量%である。この下限値に満たないと生産性が悪化し、この上限値を超えるとPAMの熱可塑性樹脂マトリクス中における分散状態が悪化する。
PAMと熱可塑性樹脂とを溶液中で混合する方法は、溶融混練(溶媒の蒸留除去工程も含む)でも、混合後脱溶媒を行う溶液混合でもいずれでも良く、生産性の点では前者が、PAMの熱可塑性樹脂マトリクス中における分散状態の点では後者がそれぞれ優れる。後者の溶液混合の場合、その後段として溶融混練を行ってもよい。
使用する熱可塑性樹脂としては、前述の如く、ポリプロピレン系樹脂又は芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、それぞれを用いる場合の溶融混練温度は、通常、前者が150〜250℃、後者が180〜300℃である。
好ましい熱可塑性樹脂であるポリプロピレン系樹脂(以下、PPと略記する場合がある。)及び芳香族ポリカーボネート樹脂(以下、PCと略記する場合がある。)を用いる場合に、特に好ましい熱可塑性樹脂組成物の製造方法を更に説明する。
<PPを用いる場合>
後述する実施例1のように、PPの加熱キシレン溶液(温度は通常還流温度とする。)中に前記PAMを添加してこれも溶解させ、次いでキシレンを蒸留などの方法で除去して樹脂組成物を得る。この場合、PP溶液の溶媒としてはキシレンの他、前記例示の有機溶媒が使用可能であり、かかるPP溶液中のPPの濃度は通常0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜40重量%であり、PAM添加後のPPとPAMの合計の濃度は好ましくは0.1〜70重量%である。この下限に満たないと生産性が悪化し、この上限値を超えると得られる樹脂組成物においてPAMのPPマトリクス中での分散状態が悪化する。なお、こうして得た樹脂組成物には、後工程として必要に応じて溶融混練(温度条件は通常180〜300℃)を付け加えてもよい。
<PCを用いる場合>
PCは溶解性のよい樹脂なので、PAMと同時に溶媒に溶解する方法が特に好ましい。この場合に好適な溶媒は、前記例示の中でもジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどの塩素化炭化水素、THF、1,3−ジオキソランなどの環状エーテルであり、低毒性と溶解度のバランスからクロロベンゼン、THF、1,3−ジオキソランが更に好ましい。溶解温度は、通常0℃〜還流温度(即ち最低沸点の溶媒の沸点近傍)であり、この下限は好ましくは20℃である。かかるPCとPAMの混合溶液におけるPCとPAMの合計の濃度は通常0.1〜70重量%、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。この下限に満たないと生産性が悪化し、この上限値を超えると得られる樹脂組成物においてPAMのPCマトリクス中での分散状態が悪化する。なお、こうして得た樹脂組成物には、後工程として必要に応じて溶融混練(温度条件は通常150〜300℃)を付け加えてもよい。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
[熱可塑性樹脂]
以下の実施例及び比較例において、熱可塑性樹脂組成物の熱可塑性樹脂として用いたものは以下の通りである。
アイソタクチックポリプロピレン樹脂(以下「iPP」と略記する場合がある。):日本ポリプロ製ノバテック(登録商標)PP38。重量平均分子量376000、数平均分子量77100、メソペンタン度98%。
酸変性ポリプロピレン樹脂(以下「MAPP」と略記する場合がある。):三洋化成製ユーメックス(登録商標)1001。疎水性(非極性)のポリプロピレン部分と親水性(極性)の無水カルボン酸部分を有する。重量平均分子量40000、酸価26。
芳香環ポリカーボネート樹脂(以下「PC」と略記する場合がある。):三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバレックス(登録商標)7030A。粘度平均分子量(ジクロロメタン溶液、20℃)30000。前記GPCによるMwは65000。
[共通する装置及び手順]
(1) 引張り試験・・・230℃で熱プレス成形(20MPa、10分間)して厚さ約0.2mmのフィルムとし、これを沸騰水中に10分間浸漬してアニールして直ちに氷水中に入れて5分間急冷した。こうして得たフィルムをダンベル型に切り抜き、島津製作所製SBL−1KN型を用いてクロスヘッド速度10mm/分の引張り速度で試験を行った。
(2) 結晶化度(Xc)・・・前記引張り試験サンプル(実施例2,3及び比較例1,2)又は組成物の溶融状態から直ちに氷水(0℃)に投入した状態のサンプル(実験例1)について、DSC(パーキンエルマー製DSC−7型)を用い、10℃/分の昇温速度で観測された融解熱(単位:J/g)を、iPPの完全結晶の融解熱(209J/g)で除し、更に樹脂マトリクス(つまり有機ナノフィラーであるアルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類を除いた部分)の重量分率で除して100倍した百分率として算出した。
(3) 線熱膨張係数・・・後述の井元製作所製微量混練機により溶融した樹脂材料を、手動で金型に押出すことにより、直径5mm、長さ10mmの円筒形試料に成形し、長手方向の初期寸法を実測した。次いで、熱膨張測定装置(Thermal Dilatometer。ブルカー・エイエックスエス製TD5000型。昇温速度5℃/分)を用いて円筒の長手方向の温度に対する寸法変化を測定し、60〜80℃の間の変化量を長手方向の初期寸法実測値で除して線熱膨張係数を算出した。
(4) H NMR・・・日本電子製核磁気共鳴装置「JNM−LA400/WB」にて、溶媒はCDClを用い、得られたシグナルのケミカルシフト(単位:ppm)とその帰属を記載した。
(5) GPC・・・日本分光製「JASCO UV−2075Plus」、「JASCO RI−2031Plus」、「TSL gel G3000 HXL」及び「TSK guard Column HXL−H」のシステムを用い、テトラヒドロフラン(略称THF)を溶媒とし、単分散ポリスチレンを対照試料として、数平均分子量(Mnと略記)と重量平均分子量(Mwと略記)を測定した。
(6) DSCによるガラス転移点・・・エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220を用い、窒素ガス雰囲気下10℃/分の速度で昇温した際のガラス転移点を測定した。
(7) 動的粘弾性(DMA)・・・Dynamic mechanical analyzer(DVE−V4, Rheology Co,Japan)を用い、2℃/分の昇温速度で、周波数は10Hzに固定して測定し、100℃、180℃及び200℃における貯蔵弾性率(E')を求めた。
[PAMの合成例]
合成例1:ポリ(1,3,5−トリメトキシベンゼン)(以下「K1」と略記)
200mL容一口ナス型フラスコに、1,3,5−トリメトキシベンゼン(50ミリモル、8.4g)と、パラホルムアルデヒド(アルデヒド成分として50ミリモル、1.5g)と、溶媒としてTHF(40mL)を秤量し、しばらく撹拌した後、氷冷下において12規定濃度の塩酸(10mL)を徐々に滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌し、反応溶液を大量のメタノールに投入することで、粗生成物を回収した。クロロホルムに再溶解しメタノールに投入して沈殿を得る再沈殿操作を数回繰り返すことで、白色生成物を収率74%で得た。H NMRスペクトルにより、化学構造が目的とする高分子であることを確認した。
H NMR:6.12(芳香環、1H)、3.88(メチレン基、2H)、3.56〜3.38(メトキシ基、9H)
GPC:Mn=5600、Mw=10080
合成例2:二次硬化させたK1(溶媒可溶型。以下「K2」と略記)
50mL容一口ナス型フラスコに、合成例1で合成したK1(20ミリモル、3.6g)と、パラホルムアルデヒド(アルデヒド成分として2ミリモル、0.06g)を秤量し、溶媒としてクロロホルム(12mL)及びTHF(8mL)を加え、しばらく撹拌した後に、氷冷下において12規定濃度の塩酸(4mL)を徐々に滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌し、反応溶液を大量のメタノールに投入することで、粗生成物を回収した。クロロホルムに再溶解しメタノールに投入して沈殿を得る再沈殿操作を数回繰り返すことで、白色生成物を収率51%で得た。
H NMR:6.12(芳香環、1H)、4.04〜3.65(メチレン基、3.6H)、3.64〜3.12(メトキシ基、9H)
GPC:Mn=8200、Mw=22140
[iPP系組成物の調製と評価]
実施例1:K2とiPPの溶液混合
iPPを5重量%の濃度にて120℃のキシレンに1時間かけて溶解した。次いで、前記合成例2で得たK2を、iPPとK2の合計重量に対して3.8重量%となるようにこのiPPのキシレン溶液に加え、加熱還流条件で30分間溶解させ、60℃の真空オーブン中でキシレンを蒸発除去した。こうして得たK2/iPP組成物を前記引張り試験により評価した。
なお、iPP系組成物中のK2は、光学顕微鏡により調べたところ、短径1〜50μm、長径1〜150μm、アスペクト比1〜10程度の分布を持つ微細フィラーとして分散していた。
実施例2:K2、MAPP及びiPPの二軸式溶融混練
iPPに対して0.1重量%となる量の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを酸化防止剤として加えて東洋精機製作所製ラボプラストミルSOR150型(バッチ式二軸混練機)により、185℃で5分間(スクリュ回転速度300rpm)二軸式溶融混練後、ここに前記合成例2で得たK2とMAPPを追加投入して更に30分間混練を継続した。iPPとK2とMAPPとは、iPP:K2:MAPP=87.5:5:7.5(重量%)の割合となるように用いた。こうして得たK2/MAPP/iPP組成物を前記引張り試験により評価した。また、結晶化度を求めた。
光学顕微鏡により調べたK2の分散状態は次の通りであった。
短径:1μm未満〜10μm
長径:1μm未満〜50μm
アスペクト比:1〜10程度
実施例3:K1とiPPのロール式溶融混練
井元製作所製2本ロール混練機(特注品。ロール直径75mm、温度制御±1℃)を用いて、以下の手順と条件でロール式溶融混練を行った。
まず、iPPに対して0.1重量%となる量の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを酸化防止剤として加えて2本のロール温度設定187℃/180℃(回転速度はそれぞれ25rpm/6rpm)にて5分間混練溶融し、ここに前記合成例1で得たK1を、iPPとK1の合計重量に対して5重量%となるように、少しずつ添加して更に15分間混練を継続した。こうして得たK1/iPP組成物について前記引張り試験により評価した。また、結晶化度を求めた。
光学顕微鏡により調べたK1の分散状態は、直径1〜50μmの球状(アスペクト比は約1)であった。
比較例1:iPPの二軸式溶融混練
実施例2において、K2とMAPPを添加せずに二軸式溶融混練を行ったこと以外は同様に操作して、前記引張り試験により評価した。また、結晶化度を求めた。
比較例2:MAPPとiPPの二軸式溶融混練
実施例2において、K2を添加しない代わりにそれと同重量のiPPを加えて(即ちMAPP/iPP=7.5/92.5重量%の組成とした)二軸式溶融混練を行ったこと以外は同様に操作して、前記引張り試験により評価した。また、結晶化度を求めた。
これらの結果を表1にまとめる。
Figure 2009024131
[K1のiPPに対する結晶核剤効果の検証]
実験例1
実施例3におけるロール式溶融混練の仕込み量を、iPPとK1の重量の合計に対するK1の重量%(以下「C」と記す場合がある。)として0〜15重量%の範囲で7水準振り、この7種の組成物を溶融状態から直ちに氷水(0℃)に投入した状態の結晶化度Xc(%)を評価したところ、その結果は、Xc=40.7+0.306C(即ち、K1を含まないものでは40.7%)なる1次式で近似された。このことから、K1はiPPの結晶核剤としての効果を有することが確認された。
[PC系組成物の調製と評価]
実施例4:K2とPCの溶液混合、次いで熱プレス成形(その1)
PC(97.5重量%)と前記合成例2で得たK2(2.5重量%)を、ジクロロエチレンに室温で溶解し、PCとK2の合計で1g/50mL濃度の溶液とした後、エバポレータで濃縮した。60℃で3日間真空乾燥後、240℃で10分間熱プレスし、氷水中に投入して20秒急冷させ、厚さ約200μmのシート状として前記動的粘弾性測定を行った。
実施例5:K2とPCの溶液混合、次いで熱プレス成形(その2)
実施例4において、PC/K2の比を95/5(重量%)とした他は、同様の操作を行った。
実施例6:K2とPCの溶液混合、次いで微量混練
PC(87.5重量%)と前記合成例2で得たK2(12.5重量%)を、クロロホルムに溶解して室温においてPCとK2の合計で10重量%濃度の溶液とした後、エバポレータで濃縮した。120℃で一晩真空乾燥後、240℃で5分間、井元製作所製微量混練機(一軸ローター式)を用い、約3gスケールでの簡易溶融混練操作を行って線熱膨張係数、DSC及びHazeの測定を行った。
比較例3:PC
前記PCペレットを120℃で一晩真空乾燥後そのまま用い、表2に示す全項目の測定を行った。
これらの結果を表2にまとめる。
Figure 2009024131
[考察]
以上の結果から、次のことが分かる。
(1) 表1から、iPPに有機ナノフィラーとしてK1又はK2を添加すると弾性率が向上することが分かる。
(2) 表1から、iPP/K2系にMAPPを添加すると、弾性率は更に向上することが分かる(実施例2)。この場合、比較例1及び比較例2に比べて結晶化度は大差ないことから、こうした高弾性率化の効果は、結晶性の向上は主因ではなくフィラーの補強効果の寄与が大きいと推測された。
(3) 表1の実施例3から、K1の添加での高弾性率化は、靱性(引張伸び率)をほとんど損なわないことが分かる。
(4) 表2において、実施例4及び実施例5(PC/K2系)と比較例3(PCのみ)の動的粘弾性結果を比較すると、各温度でのE'が顕著に向上している(高弾性率化)。特に、K2含有量の多い実施例5ではガラス転移点(約150℃)をはるかに超える200℃においてもある程度の弾性を保持している(溶融弾性が大)ことから、ブロー成形など溶融状態での「コシ」が必要な用途に適していることが分かる。
(5) 表2において、実施例6(PC/K2系)の線熱膨張係数は、比較例3(PCのみ)より低下している。この時、ガラス転移点(Tg)はほとんど不変であり、しかもHazeに多少の悪化あるものの優れた透明性を維持しているので、K2(それ自身のTgは120℃程度)は可塑剤的にPCマトリクスにほとんど相溶しておらず、屈折率の近接した有機ナノフィラーとして分散して機能していると考えられた。
なお、以上の実施例1〜6の成形品の表面平滑性は、目視においていずれも良好であった。

Claims (4)

  1. アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類と熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物。
  2. アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類の重量平均分子量(Mw)が20000以上である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂又は芳香族ポリカーボネート樹脂を含有するものである請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. アルコキシ基含有ポリアリーレンメチレン類と熱可塑性樹脂とを溶液中で混合する工程を有する請求項1ないし3のいずれかの熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011147097A (ja) * 2009-05-26 2011-07-28 Nippon Dempa Kogyo Co Ltd 圧電部品及びその製造方法
JP2011147098A (ja) * 2009-08-19 2011-07-28 Nippon Dempa Kogyo Co Ltd 圧電部品及びその製造方法

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