JP2009018946A - 透明超撥水性膜の形成方法及び透明超撥水性膜を有するガラス基材 - Google Patents

透明超撥水性膜の形成方法及び透明超撥水性膜を有するガラス基材 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた撥水性を、ガラス基材に簡易に付与することができる超撥水性膜の形成方法、および、この方法によって得られる超撥水性膜を有する基材を提供すること。
【解決手段】透明超撥水性膜の形成方法は、ガラス基材表面に疎水性シリカの分散液を塗布した後、ガラス基材を構成するガラスのガラス転移温度以上、このガラスの軟化点以下の温度で熱処理し、その後、疎水化処理を施して、水に対する接触角が150°以上の超撥水性膜を形成する。また、透明超撥水性膜を有する基材は、ガラス基材表面に疎水性シリカの分散液を塗布した後、ガラス基材を構成するガラスのガラス転移温度以上、ガラスの軟化点以下の温度で熱処理し、その後、疎水化処理を施して得られた超撥水性膜を有する基材であって、超撥水性膜の水に対する接触角が150°以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明超撥水性膜の形成方法及び透明超撥水性膜を有するガラス基材に関し、特に、建築物や車両等のガラス、乗用車のフロントガラス、サイドミラー等のように、屋外に設置されたり、屋外で使用されるガラスやミラー等の表面に適用される、透明超撥水性膜の形成方法及び透明超撥水性膜を有するガラス基材に関する。
乗用車のサイドミラーやガラス、家屋の窓ガラス等のように、屋外に設置されたり、屋外で使用されるガラスやミラーは、雨滴等が付着すると、視覚的に識別しにくくなり、視認性が低下する。そのため、ガラスやミラーの表面に撥水性を付与する技術の開発が行われている。特に、乗用車のフロントガラスはワイパーによる摺動動作を避けることはできないので、フロントガラス等に撥水性を付与する技術は重要であり、ワイパー等の摺動によっても撥水機能が低下しないものであって、撥水付与工程が簡易なものが切望されている。
例えば、国際公開公報WO2003/039856には、基体表面に形成された微小凹凸を有する下地膜と、この微小凹凸上に形成された撥水性被膜とを含む超撥水性基体が開示されているが、この下地膜は例えばクロロシリル基含有化合物をシリコーン油等の溶媒に溶解させて塗布することにより微小凹凸を形成させているので、超撥水性膜は得られるがワイパー摺動等の機械的接触による耐久性に劣るものであった。
特開2000−144122号公報には、トリアルコキシシランの単独縮合物からなるコーティング液を基体上に塗布し、例えば、500℃で約1分間熱処理を行い、水に対する接触角が140°以上の超撥水性被膜を形成する方法が開示されているが、摺動等の機械的接触に対する耐久性は十分ではないであろう。
特開2003−238947号公報(特許第3533606号公報)には、物体表面を予めプラス又はマイナスに帯電させた後、その物体表面の電化とは逆の電化に帯電した電解質ポリマーに金属酸化物微粒子等を分散させた分散液を塗布し、次いで該電解質ポリマーとは逆の電化に帯電した電解質ポリマーを塗布する連続した2つの工程を1回以上繰り返すことによって超撥水性被膜を形成する方法が開示されているが、この工程は煩雑であり工業化に適したものではなかった。
したがって、簡易に、しかも機械的接触による耐久性に優れた撥水性被膜を付与することができる方法およびかかる撥水性被膜を有する基材は未だ存在せず、切望されていた。
国際公開公報WO2003/039856 特開2000−144122号公報 特開2003−238947号公報
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、優れた撥水性と機械的接触に対する耐久性とを有する透明超撥水性被膜を基材に簡易に設けることができる透明超撥水性膜の形成方法、および、かかる透明超撥水性膜を有するガラス基材を提供することにある。
上記問題点に鑑み、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の透明超撥水性膜の形成方法は、ガラス基材表面に疎水性シリカの分散液を塗布した後、前記ガラス基材を構成するガラスのガラス転移温度以上、該ガラスの軟化点以下の温度で熱処理し、その後、疎水化処理を施して、水に対する接触角が150°以上の超撥水性膜を形成することを特徴とする。
ここで、前記疎水化処理は、フルオロアルキルシラン化合物を用いて行われることが好ましい。また、前記フルオロアルキルシラン化合物を用いて行われる疎水化処理は、気相法によって行われることが好ましい。
本発明の透明超撥水性膜を有するガラス基材は、ガラス基材表面に疎水性シリカの分散液を塗布した後、前記ガラス基材を構成するガラスのガラス転移温度以上、該ガラスの軟化点以下の温度で熱処理し、その後、疎水化処理を施して得られた透明超撥水性膜を有する基材であって、該透明超撥水性膜の水に対する接触角が150°以上であることを特徴とする。
ここで、該透明超撥水性膜は、水に対する接触角がワイパー10回摺動後において130°以上であることが好ましい。
本発明によれば、優れた撥水性と機械的接触に対する耐久性とを有する被膜をガラス基材に簡易に設けることができ、また、かかる撥水性膜を有するガラス基材を実現することができる。
発明を実施するための形態
本発明において、撥水性膜を有するガラス基材は以下のようにして形成される。すなわち、まず、撥水性膜を形成するためのガラス基材上に、疎水性シリカ分散液を用いて被膜を形成した後、前記ガラス基材を構成するガラスのガラス転移温度以上、該ガラスの軟化点以下の温度で熱処理し、次いで、疎水化処理を行う。ここで、該ガラスのガラス転移温度未満の温度で熱処理して形成された撥水性膜は、機械的接触の耐久性が劣ったものになる。また、該ガラスの軟化点より高い温度で熱処理した場合には撥水性膜を形成することができない。
本発明においてガラス基材はガラスで構成されており、このガラスには、一般的なガラス、硬質ガラス、強化ガラス、特殊ガラス等が含まれる。本発明に好ましく使用されるガラスとしては、例えば、鉛ガラス、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、各ガラスの用途、例えば、蛍光灯用、ステム用、水銀灯用、集魚灯用、理化学用等の用途の別は問わずに、すべて本願発明におけるガラスに含まれるものとする。
この熱処理するための温度範囲は、被膜形成の対象物であるガラス基材のガラス種類等に応じて適宜決定されることが好ましく、例えば、鉛ガラスでは430℃以上620℃以下であり、ソーダ石灰ガラスでは520℃以上692℃以下であり、硼珪酸ガラスでは520℃以上820℃以下であり、石英ガラスでは1,000℃以上1,600℃以下である。
また、熱処理に要される時間は、ガラス基材を構成するガラスのガラス転移温度以上、該ガラスの軟化点以下の温度に保った状態で、疎水性シリカ被膜の全体が親水化する必要があり、疎水性シリカの種類、濃度によって適宜選択される。
本発明において「シリカ」とは、厳密にSiOの状態で存在するものだけではなく、珪素酸化物も含むことを意味する。本発明で用いられる疎水性シリカとは、シリカの表面が疎水化処理されているものを意味する。
シリカ表面を疎水化する方法としては、シリカ表面に疎水性を付与することができれば特に限定されることはなく、適宜採用される。例えば、表面にフッ素やアルキル基を含有させることが好ましい。シリカ表面にフッ素やアルキル基を含有させる方法としては、シリル化剤、シランカップリング剤、アルキルアルミニウム等の有機金属化合物を用いる方法等が挙げられる。ここでシリル化剤とは、無機材料に対して親和性あるいは反応性を有する加水分解性シリル基に、アルキル基、アリル基、フッ素を含有したフルオロアルキル基等を結合させた化合物である。珪素に結合した加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン、アセトキシ基等が挙げられるが、通常、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、塩素が好ましく使用される。例えば、トリメチルシリル化剤、アルキルシラン類、アリールシラン類、フルオロアルキルシラン類等を挙げることができる。
本発明においては、乾式による疎水化処理を行うことが好ましい。ここで、乾式による疎水化処理とは、気相中でシリカと疎水化剤とを反応させることをいう。疎水化剤としては、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル等を使用することができる。例えば、高熱合成した二酸化珪素を、ジメチルジクロルシランを用いて流動床中で疎水化することができる。なお、疎水化反応は、400〜600℃の温度で実施することが好ましい。また、湿式による疎水化処理とは、溶液中でシリカと疎水化剤とを反応させることをいう。
本発明に使用される疎水性シリカの粒径は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
例えば疎水性シリカの粒径が100nm以下であれば、撥水性膜の表面で光の散乱が生じることはなく、撥水性膜の透明性を保持することができる。すなわち、疎水性シリカを用いて成る撥水性膜は、この疎水性シリカと同等の大きさや高さの凹凸を有するので、平均一次粒子径が100nm以下の疎水性シリカを用いれば、可視光線の波長(主に、400〜800nm程度)より小さな凹凸となり、撥水性膜表面で光の散乱が生じず、透明性を保持することができる。したがって、基材がガラスである場合等には透明性が有効に生かされ効果的である。
シリカ表面にメチル基を含有する疎水性シリカとしては、例えば、商品名「レオロシールHM30S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)、商品名「レオロシールDM30S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)、商品名「レオロシールZD30S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)等を商業的に入手することができる。
疎水性シリカを安定に分散させるための溶媒としては、極性を有する有機溶媒でも、非極性の有機溶媒でも使用することができる。本発明に好ましく使用される有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類等のような極性溶媒が挙げられ、また、ヘキサン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の非極性溶媒が挙げられる。また、経時的安定性および超撥水性等の性能を損なわない範囲内で、有機溶媒に水を添加することもできる。
有機溶媒等の溶媒の使用量は、疎水性シリカ分散液をコーティング等する方法に応じて、適当な濃度や粘度となるように、適宜選択されることが好ましい。
本発明においては、疎水性シリカを溶媒中に分散させる方法としては、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミル等)、超音波分散機、コロイドミル分散機、ロールミル分散機、高圧分散機等の従来公知の分散機を使用する方法が挙げられるが、均一かつ微細に分散できるという点で超音波分散機もしくは高圧分散機を使用する方法が好ましい。
本発明においては、有機溶媒に溶解し、乾燥させると透明体を形成する成分を含有させても良い。有機溶媒に溶解し、乾燥させると透明体を形成する成分は、バインダー的な作用を発揮する。例えば、このバインダー的な成分を含む有機溶媒を塗布等し、乾燥させると、有機溶媒が蒸発して透明被膜を形成する。
本発明に用いられる、有機溶媒に溶解し、乾燥させると透明体を形成する成分としては、ジメチル、メチルフェニル、メチルハイドロジェン、アミノ変性、エポキシ変性、エポキシポリエーテル変性、カルボキシル変性、カルボキシルポリエーテル変性、アルコール変性、アルキル変性、アルキルアラルキル変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、ポリエーテル変性、フッ素変性のシリコーン等のシリコーン類、フェニルメチル系レジン、メチル系レジン、変性系レジン等のレジン類、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂類、陰イオン表面活性剤、陽イオン表面活性剤、非イオン系表面活性剤、両性の表面活性剤等の表面活性剤類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエーテル共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等の合成高分子類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、シリカ系無機コーティング剤、シラザン系無機コーティング剤、シリコーンゴム等のゴム類、デンプン、グリコーゲン、セルロース等の多糖類、スメクタイト等の鉱物類等が挙げられる。なお、陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、硫酸アルキル、硫酸アルキルポリオキシエチレン、リン酸アルキル、長鎖脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル及びそれらの塩等が挙げられ、陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられ、非イオン系界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルポリグルコシド等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルアミンオキシド、N−アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
疎水性シリカ分散液中の疎水性シリカ等の混合割合は、疎水性シリカ:溶媒が、質量比で、0.25〜10質量%:90〜99.75質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明の疎水性シリカ分散液には、本発明の効果を損なわない範囲内で、親水性シリカや、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモン、スズ、タングステン、亜鉛、セリウム、マンガン、銅、マグネシウム、ホルミウム、ニッケル等の酸化物または炭素を主成分とした微粒子を単独で、あるいは、2種類以上を混合して使用することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、香料、防腐剤、酸、アルカリ類等を添加することができる。
本発明において、疎水性シリカ等を有機溶媒に分散させた疎水性シリカ分散液を被覆対象物である基材に塗布等する方法は、特に限定されることなく、任意の塗布方法、印刷方法等を使用することができる。例えば、ディップコート、スプレーコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート、フローコート、スクリーン印刷法等が挙げられる。また、これらを適宜、組み合わせて使用してもよい。
疎水性シリカ分散液を上記方法によってコーティングした後、乾燥させて被膜を形成させるが、乾燥温度0℃〜100℃、乾燥時間0.1時間〜1時間で、乾燥させることが好ましい。
得られた被膜は、上記したように所定の条件下で熱処理される。なお、この熱処理後の被膜は親水性を示すことが分かっている。
本発明においては、次いで、疎水化処理が施される。すなわち、得られた熱処理後の被膜に、フルオロアルキルシラン等を用いて疎水化処理を行う。疎水化処理としては上述の疎水化処理と同様の処理を適用することができるが、具体的には、フルオロアルキルシランをガス状態で接触させる気相法(乾式法)によるか、あるいは、フルオロアルキルシランをアルコール類や環状シリコン等の溶媒に溶かした溶液に浸漬した後、乾燥させる湿式法等によって疎水化処理を行うことができる。なお、気相法における疎水化処理の温度条件は120℃以上であることが好ましい。また、一般的には、気相法における疎水化処理の時間は10分以上であることが好ましく、30分以上であることが更に好ましく、特に1時間以上であることが好ましい。
このようにして得られた本発明の撥水性膜を有する基材は、撥水性膜の水に対する接触角が150°以上である。すなわち、この撥水性膜は超撥水性膜である。しかも、ワイパー等の摺動によっても水に対する接触角の低下が少ないものであり、優れた機械的接触の耐久性を有するものである。また、この撥水性膜は透明であり、したがって、基材が透明なガラス基材であれば透明な超撥水性膜を有する基材が得られ、基材が曇りガラスであれば曇りガラスの本来有する機能を活かしつつ、ごみ等の付着防止機能を有する基材が得られる。
本発明の撥水性膜を有する基材は、例えば、建築物の窓ガラス、外灯のガラス、車両の窓ガラス、自動車のフロントガラスやサイドミラー、各種計器等の窓ガラス、浴室用鏡等として使用することができる。本発明により形成された撥水性膜を有する基材は、撥水性膜面にごみが付着しにくいので、美観を保持することができる。また、本発明によれば、少ない工程数で簡易に撥水性膜を形成することができるので、工業化にも適している。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、各実施例及び各比較例は以下に示す方法で測定および評価を行った。
(1)初期水滴接触角の測定
協和界面科学(株)製のCA−DT型接触角計を用い、大気中(約25℃)で2μLの水滴をサンプルガラスの撥水性膜に滴下して、水滴の静的接触角を測定した。
(2)ウォッシャビリティーテスト
ワイパーによる摺動を想定した試験方法であり、具体的には、ウォッシャビリティーテスター((株)東洋精機製作所製)に市販のワイパー(ノーマルゴム)をセットし、サンプルガラスの撥水性膜面を荷重38g/cmの条件で、所定回数往復させた。ワイパー1回摺動後、および、ワイパー10回摺動後に、上記(1)と同様にして水滴の静的接触角を測定した。
(実施例1)
表面が疎水性で、粒子径が約12nmの疎水性シリカ(商品名「レオロシールHM20S」、固形分100%、(株)トクヤマ製)2質量%を、イソプロピルアルコール(以下「IPA」と表記することもある)98質量%に入れ、超音波分散機を用い、周波数44kHzで1時間分散して疎水性シリカ分散液を作製した。
作製した疎水性シリカ分散液を、厚さ1.1mmのスライドガラス板(硼珪酸ガラス)上に、フローコート法によって塗工し、室温で乾燥させて被膜を形成した後、オーブンに入れ、熱処理温度600℃で30分間熱処理を行って親水性の被膜を形成した。この親水性の被膜をフルオロアルキルシランを用いて気相法により疎水化処理を行って撥水性膜を形成し、撥水性膜を有するガラス基材(サンプルガラス)を作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価を下記基準に基づいて行い、また、上記測定方法等に基づいて、初期の撥水性の評価として初期水滴接触角の測定を行い、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を行った。その結果を表1に示す。

仕上り性(透明性)の評価基準:
5 完全に透明である
4 わずかに曇っている
3 斜めから見ると曇っている
2 正面から見ると曇っている
1 白く見える
(実施例2)
表1に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を0.5質量%使用し、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を99.5質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液をガラス基板(実施例1と同様のスライドガラス板)に塗布し、かつ、熱処理条件を温度550℃、時間60分に変更した以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表1に示す。
(実施例3)
表1に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を0.5質量%使用し、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を99.5質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液をガラス基板(実施例1と同様のスライドガラス板)に塗布し、かつ、熱処理条件を時間10分に変更した以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表1に示す。
(実施例4)
表1に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を0.5質量%使用し、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を99.5質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製し、この分散液をガラス基板(実施例1と同様のスライドガラス板)に塗布し、実施例1と同様にして評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表1に示す。
(実施例5)
表1に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製し、この分散液をガラス基板(実施例1と同様のスライドガラス板)に塗布し、実施例1と同様にして評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表1に示す。
(実施例6)
表1に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液をガラス基板(実施例1と同様のスライドガラス板)に塗布し、かつ、FAS処理条件を処理温度25℃、処理時間2時間に変更した以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表1に示す。
(実施例7)
表1に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液をガラス基板(実施例1と同様のスライドガラス板)に塗布し、かつ、熱処理時間を60分に変更した以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表1に示す。
(実施例8)
表2に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液をガラス基板(実施例1と同様のスライドガラス板)に塗布し、かつ、熱処理時間を120分に変更した以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表2に示す。
(実施例9)
表2に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用し、バインダーとしてアミノ変性シリコーン「TSF4700」(固形分100%、モメンティブ製)0.2質量%を更に含有し、溶媒としてIPAを97.8質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製し、この分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表2に示す。
(実施例10)
表2に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM40S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表2に示す。
(実施例11)
表2に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールDM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表2に示す。
(実施例12)
表2に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールZD30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表2に示す。
(実施例13)
表2に示すように、疎水性シリカとして「レオロシールHM30S」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用し、溶媒としてIPAを98質量%使用した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製した。この分散液を厚さ1.1mmのスライドガラス板(鉛ガラス)に塗布し、かつ、熱処理条件を温度500℃、時間60分に変更した以外は実施例1と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価、初期水滴接触角の測定、ウォッシャビリティーテストによるワイパー1回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を上記測定方法等および上記評価基準に基づいて行った。その結果を表2に示す。
(比較例1)
表3に示すように、熱処理を行わず、かつ、疎水化処理(FAS処理)も行わなかった以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
(比較例2)
表3に示すように、熱処理を行わず、かつ、疎水化処理(FAS処理)も行わなかった以外は実施例9と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例9と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
(比較例3)
表3に示すように、熱処理を行わなかった以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
(比較例4)
表3に示すように、疎水化処理(FAS処理)を行わなかった以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
(比較例5)
表3に示すように、熱処理温度を200℃に変更した以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
(比較例6)
表3に示すように、熱処理温度を400℃に変更した以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
(比較例7)
表4に示すように、疎水性シリカの代わりに親水性シリカ「レオロシールQS102」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径12nm)を0.5質量%、溶媒としてIPAを99.5質量%使用した以外は実施例5と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製し、この分散液を用いた以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表4に示す。
(比較例8)
表4に示すように、疎水性シリカの代わりに親水性シリカ「レオロシールQS102」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径12nm)を2質量%使用した以外は実施例5と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製し、この分散液を用いた以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表4に示す。
(比較例9)
表4に示すように、疎水性シリカの代わりに親水性シリカ「レオロシールQS40」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を0.5質量%、溶媒としてIPAを99.5質量%使用した以外は実施例5と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製し、この分散液を用いた以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表4に示す。
(比較例10)
表4に示すように、疎水性シリカの代わりに親水性シリカ「レオロシールQS40」(固形分100%、(株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)を2質量%使用した以外は実施例5と同様にして、疎水性シリカ分散液を作製し、この分散液を用いた以外は実施例5と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表4に示す。
(比較例11)
表4に示すように、熱処理温度を500℃、熱処理時間を30分に変更した以外は実施例2と同様にして、評価用のサンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて実施例2と同様の測定および評価を行った。その結果を表4に示す。
(比較例12)
実施例5において疎水性シリカ分散液の代わりに、フェニルトリエトキシシランとホルムアミドとをモル比で1.25:5の割合で混合し、これに2Mの塩酸1mLを添加し、約30分攪拌した後静置して2層分離した液のアルコキシドリッチな上層の液を塗布用液として用い、ガラス基板上にディップコーティングにより塗布した後、膜がウェットな状態のうちに実施例5と同様にして焼成を行ったところ、被覆膜が形成される前に燃えてしまい、被覆膜を形成することができなかった。
Figure 2009018946
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表1および表2から明らかなように、実施例1〜13のサンプルガラスは、可視光に対して透明性を有するものであり、初期水滴接触角が150°以上であって超撥水性膜が形成されていることがわかった。しかも、ワイパー10回摺動後においても撥水性膜の水滴接触角が130°以上であり、撥水性がほとんど低下しておらず、ワイパー摺動等の機械的接触に対する耐久性に優れていることが分かった。
一方、比較例1〜7、9、11では、形成された撥水性膜にワイパーを10回摺動させると水滴接触角がかなり低下し、水滴接触角が130°以上を維持できなかった。特に、熱処理を行わなかった比較例1〜3、および、熱処理温度が低すぎる比較例5、6では、初期には150°以上の水滴接触角を有していたが、10回摺動後には122°以下にまで低下していることが分かった。疎水性シリカを用いずに親水性シリカを用いて成る分散液を使用した比較例8、10では、初期水滴接触角が138°であり、初期撥水性において実施例より劣ったものであることが分かった。
以上、詳しく説明したように、本発明によれば、優れた撥水性と機械的接触に対する耐久性とを有する被膜をガラス基材に簡易に設けることができる。また、ワイパー10回摺動後の水滴接触角が130°以上の優れた撥水性を実現することができる撥水性膜を有する基材を提供することができる。
本発明の撥水性膜を有する基材の活用例として、例えば、建築物の窓ガラス、外灯のガラス、車両の窓ガラス、自動車のフロントガラスやサイドミラー、各種計器等の窓ガラス、浴室用鏡等として使用することができる。

Claims (5)

  1. ガラス基材表面に疎水性シリカの分散液を塗布した後、前記ガラス基材を構成するガラスのガラス転移温度以上、該ガラスの軟化点以下の温度で熱処理し、その後、疎水化処理を施して、水に対する接触角が150°以上の超撥水性膜を形成することを特徴とする透明超撥水性膜の形成方法。
  2. 前記疎水化処理がフルオロアルキルシラン化合物を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の透明超撥水性膜の形成方法。
  3. 前記フルオロアルキルシラン化合物を用いて行われる疎水化処理が気相法によって行われることを特徴とする請求項2に記載の透明超撥水性膜の形成方法。
  4. ガラス基材表面に疎水性シリカの分散液を塗布した後、前記ガラス基材を構成するガラスのガラス転移温度以上、ガラスの軟化点以下の温度で熱処理し、その後、疎水化処理を施して得られた透明超撥水性膜を有する基材であって、該透明超撥水性膜の水に対する接触角が150°以上であることを特徴とする透明超撥水性膜を有するガラス基材。
  5. ガラス基材表面に透明超撥水性膜を有し、該透明超撥水性膜の水に対する接触角が、ワイパー10回摺動後において130°以上であることを特徴とする請求項4に記載の透明超撥水性膜を有する基材。
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