JP2009015959A - 垂直磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents

垂直磁気記録媒体および磁気記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】熱揺らぎ耐性を高めながら,記録に必要な磁界を小さくし、しかも信号ノイズ比を改善できる垂直磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】基板上に、第1磁性層と、第2磁性層とを有し、前記第1磁性層および第2磁性層について、一軸磁気異方性定数をKu,Ku、飽和磁化をMs,Ms、異方性磁界をHk>Hk、厚さをt,tとしたとき、KuおよびKuが3×10erg/cc以上,Ms<Ms,Hk>Hk,かつt>tであることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、垂直磁気記録媒体、およびこの垂直磁気記録媒体を具備した磁気記録再生装置に関する。
ハードディスク装置(HDD)の記録密度を高めるためには,磁気記録媒体上における1ビットの大きさを小さくする必要があり,小さくしても正しく信号を読み出せるようにするには,磁気記録層を構成する磁性粒子を微細化する必要がある。粒子径が小さくなるとその体積に比例して,記録した磁化の方向を保持するエネルギーが小さくなり,これが室温の熱エネルギーに近くなると,磁気ヘッドで記録を行わなくても磁化の反転が起きてしまう(熱揺らぎ現象)。
これを防ぐためには,単位体積当りの磁化反転に必要なエネルギー(一軸磁気異方性エネルギー;Ku)を大きくするという手があるが,記録に必要なヘッド磁界は基本的にはKuに比例するので,Kuを大きくした場合にはそれに合わせてヘッド磁界も大きくしないと,十分な記録ができなくなってしまう。しかしながら,磁気ヘッドの飽和磁束は現在ほぼ物理的な限界に近く,1ビットが小さくなるのに伴ってヘッドの磁極先端も小さくなっているため,ヘッドの記録能力を高めるのはかなり困難になってきている。
つまり,記録密度を高めるために磁性粒子を微細化しようとすると,記録が困難になるという状況になってきており,熱揺らぎ耐性を高めながら,記録に必要な磁界を小さくする方法が求められている。
その方法の一つとして,近年,1つの柱状粒子内を上下に硬磁性(高Ku)の領域と軟磁性(低Ku)の領域に分けて,それらを適度な相互作用で結合させるという方法が提案された(コンポジットメディア)(非特許文献1)。このような構成にすると,2つの領域が完全に交換結合していないために,外部から磁界を印加した際に2つの領域が一体では反転せず,先に軟磁性の領域が回転を始め,ある程度回転してから,適度な相互作用により硬磁性領域も回転させようとする力を加えて反転する。2つの領域を完全に交換結合させた場合には,外部磁界を印加すると平均したKuに対応する磁界(保磁力)で一体で反転するが,結合を適度に弱めることで,これよりも小さい磁界(保磁力)で反転すると報告されている。このコンポジットメディアを実際に作製し,その特性を評価した報告はいくつもなされているが(例えば非特許文献2),どれも最初の提案をベースにしていて一方の領域は軟磁性となっている。
確かに2つの領域間の結合を適度に弱めることにより,完全に結合させた場合に比べて保磁力は下げることはできるが(低下の程度はそれぞれのKuや飽和磁化Msなどに依存する),そのベースはKuの平均値(層厚に応じた加重平均)であり,おおまかには保磁力はKuの平均値で決まると言える。
ヘッド磁界がすでに上限いっぱいであるとして,保磁力(反転磁界)は記録できる範囲の最大値にするとなると,Kuの平均値はほぼ決まってしまうので,後は2つの領域でどう配分するかが重要になる。
いわゆるコンポジットメディアの考え方としては,軟磁性領域のKuがほぼ0で,硬磁性領域のKuは軟磁性領域がない時の2倍にできる。言い換えると,コンポジットメディアは,より高Kuの硬磁性層を扱うための方法でもあるが,平均のKuは硬磁性層のKuよりも大幅に低下してしまう。
一方,現在の垂直HDDメディアではCoCrPt−酸化物グラニュラー硬磁性層が主流となっており,Crを減らすことでKuを高めることはできるが,Crを増やした方がSNRm(メディアの信号ノイズ比)の改善やMsの低減ができるため,Cr組成は高めでKuは4×10erg/cc程度に抑えられている。また,FePt合金など非常に大きなKuが得られる材料も検討されているが,CoCrPt記録層のような高いSNRmが得られる目処は立っておらず,硬磁性層のKuを高めるのは実質的に難しい状況にある。
上記のほかにも、磁気記録層に2層の磁性層を用いた垂直磁気記録媒体が提案されている(特許文献1および特許文献2)。しかし、熱揺らぎ耐性を高めながら,記録に必要な磁界を小さくし、しかも信号ノイズ比を改善できるまでには至っていない。
R. H. Victora et al., IEEE Transactions on Magnetics, Vol. 41, p. 537 J. P. Wang et al., IEEE Transactions on Magnetics, Vol. 41, p. 3181 特開2003−168207号公報 特開2006−48900号公報
本発明の目的は、熱揺らぎ耐性を高めながら,記録に必要な磁界を小さくし、しかも信号ノイズ比を改善できる垂直磁気記録媒体を提供することにある。
本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体は、基板上に、第1磁性層と、第2磁性層とを有し、前記第1磁性層および第2磁性層について、一軸磁気異方性定数をKu,Ku、飽和磁化をMs,Ms、異方性磁界をHk>Hk、厚さをt,tとしたとき、KuおよびKuが3×10erg/cc以上,Ms<Ms,Hk>Hk,かつt>tであることを特徴とする。
本発明によれば、熱揺らぎ耐性を高めながら,記録に必要な磁界を小さくし、しかも信号ノイズ比を改善できる垂直磁気記録媒体を提供することができる。
磁性層においてKuから期待される反転磁界の大きさは,2Ku/Msで与えられ,異方性磁界(Hk)と呼ばれている。コンポジットメディアのポイントは軟磁性領域が先に反転するというところにあり,反転しやすさという意味ではKuが0に近づくとHkが0に近づくので好ましいが,Kuは必ずしも0に近くなくとも,Msとのバランスで,Hkが小さければ先に反転が起きる。
そこで我々は,第1磁性層は基本的に現行のCoCrPt−酸化物グラニュラー硬磁性層のまま,第2磁性層として軟磁性層の代わりにMsが高くHkの低い「硬」磁性層を用いることを考え出した。
第2磁性層のHkを低くすることで先に反転が始まり,第1磁性層の反転を促進して反転磁界(保磁力〜ヘッド記録に必要な磁界)が小さくなることが期待できる(2つの領域の磁気モーメントを各々1つと仮定した理論計算とは異なり,実際には非常に多くの磁気モーメントの集まりなので,領域内のモーメントの向きは一様ではなく,完全に交換結合している場合でも,Hkの低い領域の境界から遠い部分から磁化回転が始まる)。さらに2つの磁性層の間に非磁性中間層を設けて,2つの磁性層間の相互作用を弱めることで,さらに記録に必要な磁界を小さくすることができる。
また,第2磁性層の方が多少でもKuが高ければ平均のKuが大きくなる分だけ熱揺らぎ耐性を高めることができ,Kuが同程度か低ければ熱揺らぎ耐性も同程度か低下することになるが,Kuが6乗のオーダーであれば,層厚を薄くすることや第1磁性層のKuを調整したりすることで,熱揺らぎ耐性の低下は抑制できると考えられる(上述したように,第1磁性層が現行の硬磁性層のままで第2磁性層に軟磁性層を用いた場合には,平均のKuが大幅に低下してしまう)。第1,第2磁性層ともKuが3×10erg/cc以上であれば,層厚などの自由度をあまり犠牲にすることなく,高い熱揺らぎ耐性が期待できる。
したがって,この方法により,SNRmの良好なCoCrPt−酸化物グラニュラー硬磁性層を用いたまま,熱揺らぎ耐性をほぼ維持しながら記録に必要な磁界を低減(上書き特性/OWを改善)するか,記録に必要な磁界を維持しながら熱揺らぎ耐性を向上させることができると考えられる。
本発明によれば、垂直磁気記録層を第1磁性層/第2磁性層の2層構造とし,Ku,Kuとも3×10erg/cc以上,Ms<Ms,Hk>Hk,t>tとすることにより,媒体ノイズ,熱揺らぎ耐性,上書き特性を改善した磁気記録媒体および面記録密度を向上させた磁気記録再生装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の断面図である。この垂直磁気記録媒体は、基板1上に、下部軟磁性層2aと非磁性中間層2bと上部軟磁性層2cとを含む軟磁性裏打ち層2、シード層3、非磁性下地層4、第1磁性層5、非磁性中間層6、第2磁性層7、および保護層8が積層された構造を有する。以下、好適な材料について説明する。
<基板>
基板としては、例えばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板や、酸化表面を有するSi単結晶基板等を用いることができる。ガラス基板の材料としては、例えばアモルファスガラス、結晶化ガラスがあげられる。アモルファスガラスとしては、例えば汎用のソーダライムガラス、及びアルミノシリケートガラス等を使用できる。また、結晶化ガラスとしては、例えばリチウム系結晶化ガラスを用いることができる。セラミック基板としては、例えば汎用の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化珪素などを主成分とする焼結体や、これらの繊維強化物などが使用可能である。あるいは、基板として、上記金属及び非金属の基板等の表面にメッキ法やスパッタ法を用いてNiP層が形成されたものを用いることもできる。
<軟磁性裏打ち層>
本発明において、高透磁率な軟磁性裏打ち層を設けることにより、軟磁性裏打ち層上に垂直磁気記録層を有するいわゆる垂直二層媒体が構成される。この垂直二層媒体において、軟磁性裏打ち層は、垂直磁気記録層を磁化するための磁気ヘッド例えば単磁極ヘッドからの記録磁界を、水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという磁気ヘッドの機能の一部を担っており、磁気記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる役目を果たし得る。
軟磁性裏打ち層には、例えばFe、Ni、及びCoを含む材料を用いることができる。このような材料として、FeCo系合金例えばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金例えばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金、FeSi系合金例えばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金例えばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金例えばFeZrNなどを挙げることができる。また、Feを60原子%以上含有するFeAlO、FeMgO、FeTaN、FeZrN等の微結晶構造、あるいは微細な結晶粒子がマトリクス中に分散されたグラニュラー構造を有する材料を用いることができる。
軟磁性裏打ち層の他の材料として、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、Ti、及びYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることができる。Coは、好ましくは80原子%以上含まれる。このようなCo合金は、スパッタ法により製膜した場合にアモルファス層が形成されやすく、アモルファス軟磁性材料は、結晶磁気異方性、結晶欠陥および粒界がないため、非常に優れた軟磁性を示す。このようなアモルファス軟磁性材料としては、コバルトを主成分とし,ジルコニウムを副成分として含有する合金例えばCoZr、CoZrNb、及びCoZrTaなどのCoZr系合金を挙げることができる。以上の材料には、アモルファスを形成しやすくするなどの目的で,さらにBを加えることができる。
軟磁性裏打ち層にアモルファス材料を用いた場合には,アモルファス系の基板と同様に、その上に形成する金属層の結晶配向に直接的な影響をほとんど与えなくなるために,材料を変更しても磁気記録層の構造や結晶性に大きな変化はなく,基本的に同様の磁気特性および記録再生特性が期待できる。CoZr系合金のように3つ目の元素が異なる程度であれば,飽和磁化(Ms),保磁力(Hc),及び透磁率(μ)などの違いも小さいので,ほぼ同等の磁気特性および磁気記録再生特性が得られる。
なお、図1に示したように、軟磁性裏打ち層を下部軟磁性層と反強磁性結合層と上部軟磁性層とを含む3層構造とし、下部軟磁性層と上部軟磁性層とを反強磁性結合させてもよい。
<シード層>
本発明の垂直磁気記録媒体においては、軟磁性裏打ち層と非磁性下地層との間にシード層を設けてもよい。シード層を設けることにより,非磁性下地層を通して,磁気記録層の結晶粒径や結晶配向を改善することができる。これらの改善によって非磁性下地層を薄くすることができれば,磁気ヘッドと軟磁性裏打ち層の距離(スペーシング)を短くして記録再生特性を改善することもできる。シード層の磁性については,軟磁気特性を持たせることができれば,裏打ち層としても機能するので,さらに磁気ヘッドとの距離を短くすることができて好適である。
シード層の厚さは,好ましくは0.1ないし20nm,より好ましくは0.2ないし10nmである。平均層厚が1原子層以下となると完全に均一に形成できたとしても完全に連続した層とはならないが,島状に点在した構造となっても結晶粒径や結晶配向を改善する効果は期待できる。一方,シード層が良好な特性を示す軟磁性体であればスペーシングの観点からは最大値の制限はなくなるが,磁性がない場合にはスペーシングを増加させてしまうことになる。
シード層の材料としては,hcpやfccの金属が結晶配向を高めやすいという利点があるが,bccの金属を用いた場合でも下地層との結晶構造の違いにより下地層の結晶粒径を微細化する効果が期待できる。シード層は必須ではないが,設けるのであれば好適な材料は、例えばPd,Pt,Ni,Ta,Ti、及びその合金からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。さらに特性を改善するために,これらの材料を混ぜ合わせても良いし,別の元素を混ぜても良く,またそれらを積層しても良い。
<非磁性下地層>
非磁性下地層としては,例えばRuを使用することができる。Ruは記録層の主成分のCoと同じhcpであり,Coとの格子ミスマッチも大き過ぎず,粒径も小さくて柱状成長させやすいなどの点で好ましい。
また,製膜中のArガス圧を高めることにより,さらに粒径を微細化した上に,粒径の分散も改善し,粒子間の分断も促進することができる。この場合,結晶配向は悪化する傾向にあるが,必要に応じて,結晶配向を高めやすい低ガス圧のRuと組み合せることでそれを補うことができる。前半を低ガス圧,後半を高ガス圧とする方が好ましく,後半のガス圧については,相対的に前半のガス圧より高ければ同様の効果が期待でき,10Pa以上でも構わない。また,層圧比は,結晶配向を優先するのであれば低ガス圧層の方を厚く,粒径の微細化などを優先するのであれば高ガス圧層の方を厚くすると良い。
粒子間の分断に関しては,酸化物を添加することによりさらに促進することができる。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化クロム、及び酸化チタンからなる群から選択されるもののうち少なくとも1種が好適である。
非磁性下地層の厚さは,好ましくは2ないし50nm,より好ましくは4ないし30nmである。Ruに限らず,下地層が薄過ぎると十分な連続膜とならず,結晶性も高めにくいために,その上に形成する磁気記録層の微細構造を改善することが難しくなる。厚くした方が結晶性は高めやすくなり,その上の磁気記録層の保磁力も高めやすくなるが,厚くし過ぎるとスペーシングの増加により磁気ヘッドによる記録能力や記録分解能の低下を招くことになる。
なお,ここまでは主にRuについて述べたが,非磁性下地層にはfccの金属を用いても,(111)配向とすることによりCo系記録層をhcp(00.1)配向とすることができるので,Coとの格子ミスマッチも考慮して例えばRhやPd,Ptなどを使用することができる。また,Ru、Rh、Pd、及びPtからなる群から選択される少なくとも1種と、Co、及びCrからなる群より選択された少なくとも一種とからなる合金を使用することもできる。さらに,例えばB,Ta,Mo,Nb、Hf、Ir、Cu、Nd、Zr、W、及びNdからなる群より選択された少なくとも一種を添加することができる。
<垂直磁気記録層>
本発明に用いられる第1磁性層は例えば強磁性層であり、好ましくは飽和磁化Msが200≦Ms<700emu/ccである。
本発明に用いられる第1磁性層としては、例えばCoPt系合金を使用することができる。CoPt系合金中におけるCoとPtの比率は、高い一軸結晶磁気異方性Kuを得るという観点からは、2:1ないし9:1が好ましい。CoPt系合金は、さらにCrを含むことが好ましい。
第1磁性層は、さらに酸素を含むことが好ましい。酸素は、酸化物として添加することができる。酸化物としては、特に酸化シリコン、酸化クロム、及び酸化チタンからなる群から選択されるもののうち少なくとも1種が好適である。このような酸化物により、第1磁性層は、Coを含有する磁性結晶粒子と、その周りを取り囲む非晶質酸化物を含有する粒界相とを含む、いわゆるグラニュラー構造となる。
この磁性結晶粒子は、垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造であることが好ましい。このような微細構造を形成することにより、垂直磁気記録層の磁性結晶粒子の結晶配向および結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した再生信号出力/ノイズ比(S/N比)が得ることができる。
このような微細構造を得るための酸化物の含有量は、Co、Cr、及びPtの総量に対して、3mol%ないし20mol%であることが好ましい。さらに好ましくは5mol%ないし18mol%である。垂直磁気記録層中の酸化物の含有量として上記範囲が好ましいのは、層を形成した際、磁性結晶粒子の周りに磁性が弱いかほとんどない非晶質粒界層が形成され、磁性結晶粒子の孤立化、微細化をすることができるためである。
第1磁性層は、その酸化物の含有量が20mol%を超えた場合、酸化物が磁性結晶粒子中に残留し、磁性結晶粒子の配向性、結晶性を損ね、さらには、磁性結晶粒子の上下に酸化物が析出し、結果として、磁性結晶粒子が垂直磁気記録層を上下に貫いた柱状構造が形成されなくなる傾向がある。また、酸化物の含有量が3mol%未満である場合、磁性結晶粒子の分離、微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなる傾向がある。
第1磁性層は、そのCrの含有量が、2原子%ないし30原子%であることが好ましい。Cr含有量が上記範囲であると、磁性結晶粒子の一軸結晶磁気異方性定数Kuを下げすぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られる傾向がある。Cr含有量が30原子%を超えると、磁性結晶粒子のKuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁化が小さくなり再生信号出力が低下することで、結果として記録再生特性が悪くなる傾向がある。
第1磁性層は、そのPtの含有量が、10原子%ないし25原子%であることが好ましい。Pt含有量が上記範囲であるのは、垂直磁気記録層に必要なKuを得、さらに磁性結晶粒子の結晶性、配向性が良好であり、結果として高密度記録に適した熱揺らぎ特性、記録再生特性が得られるため、好適だからである。
Pt含有量が25原子%を超えた場合、磁性結晶粒子中にfcc構造の層が形成され、結晶性、配向性が損なわれる傾向がある。また、Pt含有量が10原子%未満である場合、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るためのKuが得られない傾向がある。
第1磁性層は、Co、Cr、Pt、及び酸化物等の主成分のほかに、さらなる副成分としてB、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、及びReから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含む事により、磁性結晶粒子の微細化を促進、あるいは結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。
上記副成分の合計の含有量は、8原子%以下であることが好ましい。8原子%を超えた場合、磁性結晶粒子中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性結晶粒子の結晶性、配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られない傾向がある。
また、第1磁性層としては、上記合金の他、他のCoPt系合金、CoCr系合金、CoPtCr系合金、CoPtO、CoPtCrO、CoPtSi、CoPtCrSi,およびPt、Pd、Rh、およびRuからなる群より選択された少なくとも一種を主成分とする合金とCoとの多層構造、さらに、これらにCr、BおよびOを添加したCoCr/PtCr、CoB/PdB、CoO/RhOなどを使用することができる。いずれにしても,Coはhcp構造で一軸結晶磁気異方性を持ち,高い保磁力を得やすいことから,垂直磁気記録層はCoを主成分とすることが好ましい。
従来のコンポジットメディアとは異なり、本発明に用いられる第2磁性層は硬磁性層であり、好ましくは飽和磁化Msが700≦Ms≦1422emu/ccである。実用的なCoCrPt−酸化物グラニュラー硬磁性層の膜平均のMsは700emu/cc未満であるため,700emu/cc以上であれば一般に第2磁性層の方が高いMsが得られると言える。また,純Coの理想的な連続膜が形成できた場合にはバルクと同じMs=1422emu/ccが期待できるが,非磁性の粒界層が形成された場合には結晶粒子の充填密度に比例して膜平均のMsは小さくなる。例えば,純Coでも充填密度が50%であればMs=711emu/ccとなるので,膜平均のMsは製膜条件や第1磁性層の構造などに応じて変動する。
第2磁性層としては、高いMsと高いKuが必要であるため,Coを主成分とするのが好ましく,Msが大幅に低下しやすいCrを使用することは好ましくない。CoにPtを加えた場合,Msの低下はPtの組成にほぼ比例する程度であるのに対し,Kuを高めることができるので,CoPt合金を使用しても良い。Ptの含有量は、0原子%ないし25原子%であることが好ましい。第2磁性層は純Coでも構わないので、Pt含有量は0原子%でも良い。また、Pt含有量が25原子%を超えた場合、磁性結晶粒子中にfcc構造の層が形成され、hcp−CoPt合金の結晶性、配向性が損なわれる傾向がある。PdもPtと同様な作用を示す。副成分としてB、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、及びReから選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含む事により、磁性結晶粒子の微細化を促進、あるいは結晶性や配向性を向上させることができる。
第1磁性層および第2磁性層の一軸磁気異方性定数Ku,Kuはともに3×10erg/cc以上である。
第1磁性層の厚さは、好ましくは3ないし40nm、より好ましくは5ないし20nmである。この範囲であると、より高記録密度に適した磁気記録再生装置として動作し得る。第1磁性層の厚さが3nm未満であると、結晶配向も低く偏析も不十分で再生出力も低過ぎるためノイズ成分の方が高くなる傾向があり、第1磁性層の厚さが40nmを超えると、再生出力が高過ぎて波形を歪ませる傾向がある。第2磁性層は、1ないし10nmの厚さを有することが好ましい。
垂直磁気記録層の保磁力は、237000A/m(3000Oe)以上とすることが好ましい。保磁力が237000A/m(3000Oe)未満であると、熱揺らぎ耐性が劣る傾向がある。
垂直磁気記録層の垂直角型比は、0.8以上であることが好ましい。垂直角型比が0.8未満であると、熱揺らぎ耐性に劣る傾向がある。
<保護層>
保護層は、垂直磁気記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐことができる。その材料としては、例えばC、SiO、ZrOを含むものがあげられる。保護層の厚さは、1ないし10nmとすることが好ましい。これにより、ヘッドと媒体の距離を小さくできるので、高密度記録に好適である。
また、保護層上には、図示しない潤滑層を設けることができる。潤滑層に使用される潤滑剤としては、従来公知の材料、例えばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
<磁気記録再生装置>
図2に、本発明に係る磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図を示す。
図示するように、ディスク装置としてのハードディスクドライブ(以下HDDと称する)は、上面の開口した矩形箱状のケース110と、複数のねじによりケースにねじ止めされてケースの上端開口を閉塞する図示しないトップカバーとを有している。
ケース110内には、記録媒体としての磁気ディスク112、この磁気ディスク112を支持および回転させるスピンドルモータ113、磁気ディスクに対して情報の記録、再生を行なう例えば単磁極型磁気記録ヘッド等の磁気ヘッド133、この磁気ヘッド133を本発明に係る磁気ディスク112に対して移動自在に支持したヘッドアクチュエータ114、ヘッドアクチュエータをピボット124の周りに回動させて位置決めするボイスコイルモータ(以下VCMと称する)116、磁気ヘッドが磁気ディスクの最外周に移動した際、磁気ヘッド133を磁気ディスク112から離間した位置に保持するランプロード機構118、HDDに衝撃等が作用した際、ヘッドアクチュエータを退避位置に保持するイナーシャラッチ機構120、およびプリアンプ等の電子部品が実装されたフレキシブルプリント回路基板ユニット(以下、FPCユニットと称する)117が収納されている。
また、ケース110の外面には、FPCユニット117を介してスピンドルモータ113、VCM116、および磁気ヘッドの動作を制御する図示しないプリント回路基板がねじ止めされ、ケースの底壁と対向して位置している。
磁気ディスク112は、例えば、直径65mm(2.5インチ)に形成され、磁気記録層を有している。磁気ディスク112は、スピンドルモータ113の図示しないハブに嵌合されているとともにクランプばね121によりクランプされている。そして、磁気ディスク112は、駆動部としてのスピンドルモータ113により所定の速度で回転駆動される。
磁気ヘッド133は、図示しないほぼ矩形状のスライダに形成されたいわゆる複合型ヘッドであり、単磁極構造のライトヘッドと、GMR膜やTMR膜などを用いたリードヘッドと記録再生用のMR(磁気抵抗)ヘッドとを有し、スライダと共にサスペンション132の先端部に形成されたジンバル部に固定されている。
以下、本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
<垂直磁気記録媒体の作製>
非磁性基板として、ディスク状の洗浄済みのガラス基板(オハラ社製、外直径2.5インチ)を用意した。このガラス基板をマグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ社製C−3010)の製膜チャンバ内に収容して、到達真空度2×10−5Pa以下となるまで製膜チャンバ内を排気した後、特に断らない限りガス圧約0.6PaのAr雰囲気中で、以下のようにマグネトロンスパッタリングを行った。
非磁性基板上に、まず、軟磁性裏打ち層として、厚さ30nmのCoZrNb合金,厚さ0.7nmのRu,及び厚さ30nmのCoZrNb合金を順次形成した。なお,これら2層のCoZrNb層は,その間に設けたRuにより反強磁性的に結合している。次に、CoZrNb層上に、厚さ6nmのPdシード層を形成した。続いて、厚さ10nmのRu層を形成した後,Arガス圧を6Paまで高めてから,さらに厚さ10nmのRu層を積層して,合計20nmの非磁性下地層を形成した。その後,第1磁性層,非磁性中間層,および第2磁性層を順次積層して垂直磁気記録層を形成した。
第1磁性層は,(Co−16原子%Pt−10原子%Cr)−8mol%SiOコンポジットターゲットを用いて,6PaのAr雰囲気中でスパッタリングを行うことにより形成し,厚さは15nmとした。
非磁性中間層としては,厚さ1nmのPtを製膜した。
第2磁性層は,CoとSiOの別々のターゲットを同時にスパッタリングすることにより,厚さ3nmのCo−30vol%SiO(設計値)を形成した。なお,ここでは,組成の変更がしやすいことからコスパッタリングを行ったが,コンポジットターゲットを用いた方が,放電のタイミングがずれる心配もなく,組成の均一性や再現性,パーティクルなどの観点から好ましいと考えられる。
続いて、厚さ6nmのC保護層を積層した。上述のように保護層まで積層した後,製膜チャンバから取り出し、ディッピング法により、保護層上に厚さ1.5nmのパーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を形成して、垂直磁気記録媒体を得た。得られた垂直磁気記録媒体は、潤滑層が図示されていないこと以外は、図1の構成を有する。
<断面TEM(透過電子顕微鏡)測定>
得られた垂直磁気記録媒体の微細構造を調べるため,断面TEMによる観察を行った。断面TEMでは電子線の透過方向の粒子の重なりなどから粒径は評価しにくいが,Ru下地層の粒径は8〜10nm程度に見え,第1磁性層においては酸化物による非晶質粒界層の形成と,それにより結晶粒が小さくなっている様子が観察できた。その上の非磁性中間層および第2磁性層は、層厚が薄いこともあり境界は判別しにくいが,Ru下地層から第2磁性層まで,一つの柱状粒子としてエピタキシャル成長している様子が観察できた。
<記録再生特性の測定>
記録再生特性に関しては、リードライトアナライザ及びスピンスタンド(米国GUZIK社製)を用いて評価を行った。
また、情報の記録再生には、補助磁極先端が主磁極近くまで伸びるように形成された単磁極型(シールデッドポール型)記録素子と巨大磁気抵抗効果(GMR)再生素子を備えた垂直記録用の複合型ヘッドを用いた。なお、ここではシールデッドポール型の記録素子を用いたが,補助磁極が主磁極から離れた従来型の単磁極型記録素子を用いても良い。また,記録磁極の材料としてはCoFeNiを用いたが、例えばCoFe,CoFeN,NbFeNi,FeTaZr、及びFeTaNなどの材料を用いても良い。また、これらの磁性材料を主成分としてさらに添加元素を加えても良い。
得られた垂直磁気記録媒体について,オーバーライトおよび再生信号出力/媒体ノイズ比を測定したところ,それぞれ−44.3dB,22.1dBという良好な値が得られた。
ここで,オーバーライトとは,[線記録密度60kFCIで記録を行った上に線記録密度450kFCIで記録した時の60kFCIの再生信号出力/元の60kFCIの再生信号出力]であり,上書きすることにより元の信号がどれくらいきれいに消えているか/書き込めているかの指標である(以下,OWと表記)。また,再生信号出力/媒体ノイズ比とは、[線記録密度75kFCIにおける振幅/線記録密度900kFCIで記録を行った時の媒体ノイズの2乗平均値]である(以下,SNRmと表記)。
<磁化曲線の測定>
得られた垂直磁気記録媒体の磁気特性を調べるため,極Kerr効果評価装置(ネオアーク社製),VSM(振動試料型磁力計;理研電子社製),およびベクトルVSM(ADEテクノロジーズ社製)を用いて磁化曲線の測定を行った。
極Kerr効果評価装置は(軟磁性裏打ち層付きの)垂直磁気記録媒体そのものの磁化曲線を測定することができるが飽和磁化Msを測定することができない。VSMは軟磁性裏打ち層が付いている場合,それと垂直磁気記録層を合わせて測定してしまい,必ずしも上手く分離して評価できる訳ではない。そのため,VSMでMsなどを測定する場合には軟磁性裏打ち層は製膜せず,代わりにほぼ同様の磁化曲線を得ることができるほとんど磁性のないNiTa層を形成したサンプルを用いている。
以下では特に断らない限り,どの磁化曲線も膜面垂直方向の測定結果であり,メジャーループを測定する際の標準的な掃引時間は,極Kerr効果評価装置が45秒,VSMが3分,ベクトルVSMが40分とした。
図3に,実施例1に係る垂直磁気記録媒体の磁化曲線を示す。実線が測定結果であり,四角プロットと三角プロットは計算結果である(計算については後述)。垂直角型比はほぼ1,Mが低下し始める磁界(Hn)が2〜3kOeと大きい一方で,飽和磁界Hs(全ての粒子の反転が完了する磁界)も10kOe以下と小さく,垂直磁気記録媒体として非常に良好な特性を示していることが分かる。
実施例1に係る垂直磁気記録媒体の残留磁化曲線を,印加する外部磁界の垂直方向からの角度を変えて測定し,その時の残留保磁力(Hcr)を角度に対してプロットした結果を図4に示す。三角プロットがその測定結果であり,それ以外の測定結果については後で述べる。他の測定結果との比較の都合上0°の時の値で規格化してあるが,約70°以上においてHcrが0°の時のそれよりも大きくなっていることが分かる。当初提案されたコンポジットメディア(非特許文献1)の計算結果においては,0°から角度が大きくなるにしたがってHcrが増加し続ける角度依存性を示すことから,それに近い傾向が現れているものと考えられる。
図5に,実施例1に係る垂直磁気記録媒体の保磁力Hcの掃引時間依存性を示す。三角プロットがその測定結果であり,それ以外の測定結果については後で述べる。この結果から,いわゆるSharrockの式(M. P. Sharrock, IEEE Transactions on Magnetics, Vol. 35, p. 4414)を用いたフィッティングを行い,ヘッドによる磁化反転速度に近い1nsにおける保磁力H,および熱揺らぎ耐性の指標であるvKu/kT(v:活性化体積(磁化反転の最小単位の平均値),Ku:一軸磁気異方性定数,k:ボルツマン定数,T:絶対温度)を求めたところ,それぞれ,H=8.4kOe,vKu/kT=112という値が得られた。HDDにおける情報磁化の保持期間からvKu/kTの下限は60くらいが目安とされているので,この垂直磁気記録媒体の熱揺らぎ耐性は十分に高いことが分かる。
[比較例1]
非磁性中間層および第2磁性層を製膜しなかった以外は,実施例1と同様にして垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体について,実施例1と同様にして記録再生特性の測定を行ったところ,OW,SNRmは,それぞれ−24.0dB,20.5dBであった。OWは十分に記録ができているとは言えない値であり,このような時には十分に記録ができたときに比べてSNRmが低下する傾向にあることを考慮すると,比較例1の本来のポテンシャルとしては必ずしも実施例1に劣るとは限らない。しかしながら,逆の言い方をすると,実施例1において非磁性中間層および第2磁性層を付加したことによるSNRmの低下はあっても少ないと考えられ,OWの改善も含めて実施例1の方が高いSNRmを得られていることが分かる。
比較例1に係る垂直磁気記録媒体の磁化曲線を測定した結果を図6に示す。実線が測定結果であり,四角プロットと三角プロットは計算結果である(計算については後述)。垂直角型比はほぼ1,Hnが実施例1よりも大きいのは良いが,Hcが7kOe以上,Hsが約13kOeというのは,今回用いたヘッドで十分な記録を行うには大き過ぎると予想され,このためにOWが悪化したものと考えられる。
比較例1に係る垂直磁気記録媒体の残留保磁力Hcrの角度依存性は,図4において菱形プロット(破線)で示してある。85°におけるHcrがほぼ1であり,45°を中心に左右対称の下に凸の曲線となっていることが分かる。一軸磁気異方性を持つ単磁区粒子の磁化反転モデル(Stoner-Wohlfarthモデル)では,45°におけるHcrの相対値は0.5であることから,何らかの理想的でない部分はあるものと考えられるが,おおむね磁気記録層の磁性粒子は単磁区になっているものと考えられる。
これに対して実施例1の規格化したHcrは,先程も述べたように,高角側ほど比較例1のそれよりも大きくなる傾向は示すが,当初提案されたコンポジットメディア(非特許文献1)の計算結果においては,0°のHcrが最小で80°では0°の3.5倍近くにも達することを考えると,実施例1の角度依存はSWモデルに近い比較例1の方に似ていると考えられる。
実際,Hcrの角度依存性が大きく異なると,ヘッドからの磁界が広がりやすいトラック幅方向の記録ビット端部に明らかな変化が現れるはずであるが,実施例1と比較例1ではOWの差から予想される以上に大きな記録トラック幅の変化は見られなかった。また,面内方向の磁界が比較的多いシールデッドポール型の記録素子では線方向の記録分解能などに影響が出やすいと考えられるが,こちらでも明らかな変化は見られなかった。つまり,記録再生特性上においても実施例1の角度依存は比較例1のそれに近いとみなして良いと解釈することができ,このことは,SWモデルの磁化反転をベースに設計された現在のヘッドを大幅な変更なしに使用できるという点ではむしろ好ましいと考えられる。
比較例1に係る垂直磁気記録媒体の保磁力Hcの掃引時間依存は,図5において菱形プロット(破線)で示してある。実施例1と同様のフィッティングを行ったところ,H=11.5kOe,vKu/kT=108となり,熱揺らぎ耐性に関しては,実施例1とほぼ同程度の値が得られた。なお,“vKu”という表記は,一般によく用いられているのでここでもそのまま使用しているが,実際には磁化反転のエネルギーバリアΔEと呼ぶ方が正確で,SWモデルを前提にしてvとKuに分解している。実施例1の結果をvとKuに分解すると,vは増えていると考えられるのでKuが減っていることになるが,コンポジットメディアの磁化反転はSWモデルと異なるので,vとKuに分解して比較例1と比べるのは適切とは言えない。コンポジットメディアでは,反転磁界に対するエネルギーバリア比が改善する(非特許文献1),熱揺らぎを維持しながら記録のし易さが改善する(非特許文献2),と報告されており,その意味では,比較例1はHが高過ぎてOWが不十分であるのに対し,実施例1はほぼ同じvKu/kTにおいて大幅なHの低減が実現でき,良好なOWが得られている。
参考までに,比較例1において第1磁性層の層厚を9nmまで薄くして,Hcを実施例1に近づけた媒体の掃引時間依存を,図5中に丸プロットで示してある。Kuの低下もあるとは考えられるが主にvの低下により,熱揺らぎ耐性が大幅に低下して掃引時間依存が大きくなっており,外挿したHは15nmの場合からあまり低下していないことが分かる。つまり,第1磁性層のみで掃引時間が遅いときの磁気特性を揃えても,実施例1と同様の特性は得られないと言える。
したがって,垂直磁気記録層を実施例1のような構成とすることにより,Hcrの角度依存および熱揺らぎ耐性をほぼ維持したまま,OWおよびSNRmを改善できるという効果があることが分かった。
[実施例2]
非磁性中間層厚を0〜2nmまで変更した以外は,実施例1と同様にして垂直磁気記録媒体を作製した。
非磁性中間層厚を0nmとした(形成しなかった)垂直磁気記録媒体について,実施例1と同様にして記録再生特性の測定を行ったところ,OW,SNRmは,それぞれ−40.3dB,22.0dBであった。OWは実施例1よりは低下しているが記録が不十分というレベルではなく,SNRmは実施例1とほぼ同じであることから,記録再生特性上は良好な媒体であると言える。
非磁性中間層厚を0nmとした(形成しなかった)垂直磁気記録媒体の磁化曲線を測定した結果を図7に示す。実線が測定結果であり,四角プロットと三角プロットは計算結果である(計算については後述)。Hcが約6kOe,Hsが約12kOeと,どちらも比較例1よりは小さいが,それでも比較例1と同様の磁気記録層が1層のみ(単層)の媒体であれば,ヘッドで十分な記録を行うには大き過ぎると予想される。しかしながら,実際には良好なOWが得られており,単層の場合とは異なる磁化反転機構や,ヘッド記録時の反転磁界がHcが同じ単層媒体のそれよりも小さくなっていることが期待される。
非磁性中間層厚を0nmとした(形成しなかった)垂直磁気記録媒体の残留保磁力Hcrの角度依存性は,図4において四角プロットで示してある。この角度依存はほとんど比較例1のそれと重なっており,SWモデルに近いカーブになっている。第1磁性層上に第2磁性層が直接形成され,第1磁性層の粒子と第2磁性層の粒子は十分に交換結合していると考えられることから,柱状粒子中の第2磁性層の領域のみの反転が先に完了するという状態は起きにくく,磁化反転がSWモデルに近くなっていることが予想され,それを裏付ける結果となっている。
また,この媒体の記録再生特性評価時のトラック幅は実施例1とほとんど同じであったことから,中間層の有無による角度依存性の実施例1との差(規格化Hcrの差が45°で0.1,75°で0.2程度)は大きな違いではないと解釈することができる。このことは,先に述べた,実施例1と比較例1のトラック幅の差は主にOWの差から生じたものであり,実施例1の角度依存は比較例1のそれとほぼ同様とみなして良いという解釈を裏付けている。したがって,Hcrの角度依存に関しては,非磁性中間層を形成しなかった場合でも形成した媒体と同様の効果が得られると言える。
非磁性中間層厚を0nmとした(形成しなかった)垂直磁気記録媒体の保磁力Hcの掃引時間依存は,図5において四角プロットで示してある。実施例1と同様のフィッティングを行ったところ,H=9.1kOe,vKu/kT=109となり,熱揺らぎ耐性に関しては,実施例1および比較例1とほぼ同程度の値が得られた。実施例1と比較すると,Hは0.7kOeほど高く,OWは4dBほど低下してはいるが,比較例1からの改善は明らかであり,非磁性中間層を形成しなかった場合でも,熱揺らぎ耐性をほぼ維持したまま,OWおよびSNRmを改善できるという効果が得られることが分かった。
非磁性中間層厚を2nmとした垂直磁気記録媒体の磁化曲線を測定した結果を図8に示す。実線が測定結果であり,四角プロットと三角プロットは計算結果である。磁化曲線が2段になっていることから,第1磁性層と第2磁性層が独立して反転しており,2nmのPt形成により2つの磁性層間の相互作用がなくなったものと考えられる。
<シミュレーション>
ここで,第2磁性層の磁気特性および第1磁性層と組み合わせた時の磁化反転機構を検討するために,市販のソフトウェア“LLG Micromagnetics Simulator(M. R. Scheinfein他作成)”を用いてシミュレーションを行った。シミュレーションは磁化反転機構の検討にはもちろん有効であるが,第2磁性層のKuなどについても,直接測定するとなると,第1磁性層と合わせて測定してから後から分離するとしてもその方法や精度とか,測定をしやすくするため層厚を厚くした場合や第1磁性層をなくして測定した場合には構造や磁気特性が変わってしまう可能性があるなど様々な困難があるため,その点でも有効な方法と考えられる。
主な計算上のパラメータとしては,サンプルサイズは192×192×20nmとし,それを4nm/辺の立方体のセルで分割した構成とした。1粒子の面内での大きさは8nm/辺の四角形をベースとしているが,2nmの分散を持たせたVolonoiセルとしたことで,多角形の粒子が密に詰まった構造となっている。また,セルの大きさの都合上,第1磁性層,第2磁性層とも実施例1より1nm厚く,それぞれ16nm,4nmとした。熱揺らぎを考慮して温度は300Kとし,収束しなくなることから反復回数は1000回で計算を打ち切ることにした。時間刻みは安定した解が得られる範囲でなるべく大きい値としており,減衰定数αは1とした。磁化容易軸の分散は5°とし,MsとKuには20%の分散を持たせた。
なお,第1磁性層の磁気特性の測定に関しては上記のような困難はないので,VSMおよびトルク磁力計(東英工業社製)による測定を行った結果,Ms=570emu/cc,Ku=4.2×10erg/ccであった。実媒体ではサンプルによるバラツキもあるということで,計算上はおおまかにMs=600emu/cc,Ku=4×10erg/ccとした。また,粒子内の交換スティフネス定数はA=1.0μerg/cmとした。これらのパラメータを用い,粒間結合Exを変数として第1磁性層との合わせ込みを行った結果が,図6における四角プロット(Ex=0.05μerg/cm)と三角プロット(Ex=0.1μerg/cm)である。MsやExの微調整も可能ではあるが,ここでは第1磁性層の粒間結合としておおまかにEx=0.1μerg/cmを選ぶこととした。
また,実施例1のMsは650emu/ccと比較例1のMsよりも高かったことから,第2磁性層のMsが第1磁性層のそれよりも高いことは明らかであり,第2磁性層のMsに関しては層厚平均から逆算を行った結果,Msもおおまかに800〜900emu/cc(層厚平均すると640〜660emu/cc)と幅を持たせることにした。
以上の計算条件に加え,第2磁性層のMs,KuとEx,および非磁性中間層を設ける代わりに第1磁性層と第2磁性層間の交換結合A12を変数として,非磁性中間層厚が0,1(実施例1),2nmの場合について,計算値が実測の磁化曲線およびHcrの角度依存に近くなるようにシミュレーションを行った。
その結果,Ms=800emu/cc,Ku=3×10erg/cc,Ex=0.2μerg/cmの時,および,Ms=900emu/cc,Ku=4×10erg/cc,Ex=0.2μerg/cmの時に,総合的に見て最も実測に近い計算値が得られた。
非磁性中間層厚が0,1(実施例1),2nmの場合について,それぞれA12が1.0,0.3,0μerg/cmとした時の計算結果を,それぞれ図7,図3,図8に示す。それぞれの図中で四角プロットがMs=800emu/cc,Ku=3×10erg/ccとした時の,三角プロットがMs=900emu/cc,Ku=4×10erg/ccとした時の計算結果であり,どの図においてもほとんど重なっていることが分かる。
なお,それぞれの計算結果において,Msだけを100emu/cc単位で増減したり,Kuだけを1×10erg/cc単位で増減したり,Exだけを0.1μerg/cm単位で増減したりすると,明らかに上記の2通りの計算結果よりも実測値から遠くなった。一方,MsとKuを比例して変化させた場合には磁化曲線があまり変化しないという傾向が得られているので,2通りの計算結果の中間においても(例えば,Ms=850emu/cc,Ku=3.5×10erg/cc)同様に実測に近い結果が得られることが予想できる。以上の結果から,第2磁性層のKuは3×10〜4×10erg/ccと,第1磁性層とほぼ同程度の高いKuを有していることが推定できた。
バルクのCo(hcp)のKuは4.53×10erg/ccであり,バルクで作製することはできないため薄膜で作製されたfcc−Coの立方結晶磁気異方性定数は,K=0.5×10〜0.7×10erg/cc,Kは1×10erg/ccのオーダーと報告されている(T. Suzuki et al., Appl. Phys. Lett. 64, p. 2736 : J. A. Wolf et al., Appl. Phys. Lett. 65, p. 1057)。第2磁性層は3nmと薄いためX線や電子線回折で直接結晶構造を分析することは困難であるが,Kuの大きさから第2磁性層のCoの結晶構造はhcpになっていると考えるのが妥当と言える。なお,実際の第2磁性層の結晶粒子の組成や充填率は分析が困難なこともあって調べていないが,グラニュラー構造となっていて充填率が低い分だけKuは低くなり,Pt中間層との界面では界面磁気異方性や合金化によりKuが高くなっていることが考えられる。特にPtが拡散してCoPt合金を形成している可能性は高く,中間層をPdとした場合でも同様の効果が期待できる。
上述のように第2磁性層のKuは大きな値であるが,Msは第1磁性層のそれよりも大きい。反転磁界の大きさのベースは異方性磁界Hk=2Ku/Msであるため,Hkを計算すると,Hk=13.3kOe,Hk=7.5〜8.9kOeとなる。つまり,第2磁性層は,Kuは高いもののMsが高いことにより,Hkは第1磁性層のそれよりも明らかに小さくなっていることが分かる。
そのため,非磁性中間層を形成して第1磁性層と第2磁性層間の結合を弱めた場合,1つの柱状粒子内でも第2磁性層の領域から先に磁化反転が始まるものと推定できる。実際,シミュレーションにより磁化反転の様子を観察すると,A12=0μerg/cmの時には図8からも明らかであるが,第2磁性層が先に反転し,それが完了してから第1磁性層が反転し,A12=0.3μerg/cmの時には1つの柱状粒子内で見ると第2磁性層の領域が先に反転してその直後に第1磁性層の領域も反転するという機構となっていた。
さらにA12=1.0μerg/cmの時についても見てみると,確かに反転する時には柱状粒子内全体が一度に反転するが,第2磁性層の領域が先に傾いている様子が観察できた。これは非特許文献1に示されている反転機構に近く,非特許文献1では半分がKu=0の軟磁性領域であることや,計算のモデルやパラメータが異なることにより,層間結合の強さの最適値が異なっているようである。それでもHkの低い領域が先に反転を開始するという点では共通しており,実際,既に述べたように,単層(比較例1)の場合に比べてHcの低減やOWの大幅な改善が実現できている。よって,磁化反転機構の点からも,非磁性中間層がなくても,第2磁性層のHkが低いことによる効果が得られると言える。
ここで,現在主流となっているCoCrPt−SiO記録層のKuはおよそ4×10erg/ccであるが,今後のHDDの高密度化,記録層の微粒子化,およびそれに伴う熱揺らぎ耐性の向上を考えると,Kuはさらに高める必要はあっても大きく下げるのは好ましくないと考えられる。また,上記実施例において第2磁性層のKuが第1磁性層と同程度か多少低い3×10〜4×10erg/ccであったことを考えると,Ku,Kuは3×10erg/cc以上とするのが好ましいと考えられる。Kuが大きく違わないとすると(例えば1桁),上述の通り,第2磁性層のMsを高くすることによりHkを低くする点は重要であるが,その範囲内であれば4×10erg/cc以上であっても同様の効果が得られると推定される。
磁性層厚に関しては,第2磁性層を厚くすると,Hkの低い領域の比率が高まるので,記録層全体のHk,したがってHcが低下し,トラック幅が広がるので,高密度化を進める上では好ましくない。また,Msが大きいため,層厚を厚くすると再生信号および媒体ノイズに影響を与えやすい。CoCrPt−SiO記録層も含め,CoCr系の記録層はある程度までCr組成を高めることにより媒体ノイズが低減できることが分かっているが,CrはMsを大幅に低下させやすいため,第2磁性層に添加するのは好ましくない。一般的にも,高いMsを得るためには,添加物を減らす必要があるので媒体ノイズの低減は難しくなる。したがって,第2磁性層の層厚は第1磁性層よりも薄い方が好ましいと考えられる。
以上のことから,Ku,Kuとも3×10erg/cc以上,Ms<Ms,Hk>Hk,t>tとした時に,媒体ノイズ,熱揺らぎ耐性,上書き特性を改善する効果が得られると言える。
また,高Msと高Kuを両立できる材料は,これまでのHDDメディアの延長で考えると,3d遷移金属のCoが好ましく,先に述べたようにPtやPdが含まれていても良いが,上記の通りCrを加えるのは好ましくない。第1磁性層も上記の通り,Kuが高くSNRmでも実績のあるCoCrPt−SiOが好ましいと考えられる。
次に,非磁性中間層厚を0〜2nmまで変更した垂直磁気記録媒体について,HcおよびHsを中間層厚に対してプロットした結果を図9に示す。非磁性中間層をPdに変更した場合についても合わせてプロットしており,Pt中間層の場合を菱形プロット(Hc)および四角プロット(Hs),Pd中間層の場合を三角プロット(Hc)および丸プロット(Hs)で示す。PtをPdに変更してもほぼ同様の結果が得られていることから,これらを混ぜ合わせた材料を中間層に用いてもよいと考えられる。
中間層厚が0nmの時の図7の磁化曲線,1nmの時の図3,および2nmで層間結合が切れている時の図8と,図9の連続的な変化を合わせて考えると,層間結合は,反強磁性的になる部分はなく,常に強磁性的であり,中間層厚の増加とともにその強度が低下しているものと推定できる。この図からも層厚1nm前後は適度に弱く上下層が結合している状態であり,この時にHc,特にHsが最も低減できていることが分かる。
上下層が適度に結合している時の磁化反転機構は既に述べたが,柱状粒子中の第2磁性層の領域が先に反転して第1磁性層の領域の反転を促進する機構が,Hc,Hsの低減に寄与しているものと考えられる。よって,これまでに述べた結果も含め,第1磁性層および第2磁性層間に強磁性的な結合が得られる範囲の層厚で,非磁性中間層を設けた方がさらに良好な結果が得られると言える。
また,先に述べたシミュレーションの結果において,Ex=0.1μerg/cmであるのに対し,Ex=0.2μerg/cmと,第2磁性層の方が粒間結合が強かったことから,この粒間結合も第2磁性層の領域が先に反転するのを助けているものと考えられる。これはシミュレーションからの推定であるが,例えば比較的磁化曲線の傾きが小さい非磁性中間層がない媒体について,Hcにおける傾きαを求めてみると(図7),
α=4πdM/dH=4π・650/4500≒1.8
であり,粒子間結合がない場合の目安のα=1より明らかに大きく,媒体全体(平均)としてある程度の粒間結合があることは明らかである。垂直角型比Rsをほぼ1にし,なるべく大きい核生成磁界Hnを確保する意味でも,SNRmを悪化させない程度の粒子間結合は好ましいと考えられる。
また,第2磁性層の高Kuも,記録層全体平均でのKuを下げずにHkを高めることで,RsおよびHnの増加に寄与している。Ku=0の軟磁性層を用いたコンポジットメディアは磁化容易軸を垂直方向から傾けたチルトメディアを比較的容易に作製できる方法としても紹介されているが(非特許文献1),RsおよびHnを高めるためには,第2磁性層は垂直磁化となるようにKuを高める方が好ましいと考えられる。
[実施例3]
第2磁性層におけるSiOの組成(設計値)を0〜40vol%まで変更した以外は,実施例1および実施例2において非磁性中間層厚を形成しなかった場合と同様にして垂直磁気記録媒体を作製した。
図10にHcおよびHsのSiO組成依存を示す。四角プロット(Hc)および丸プロット(Hs)がPt非磁性中間層がある場合であり,菱形プロット(Hc)および三角プロット(Hs)が非磁性中間層がない場合である。中間層がある場合のHsはやや飽和傾向が見えるが,基本的にはSiO組成の増加とともにHc,Hsは増加傾向にある。SiOが0vol%の時には中間層があってもなくてもほとんど同じ値となっているが,SiOの添加とともに差が生じている。Pt中間層を設けた場合にSiO組成を30vol%程度にするとHsとHcの差が小さく傾きの大きい磁化曲線が得られることが分かる。
また,SiOが0vol%の時のHcrの角度依存は,図4中に菱形プロットで示してある。SiOがある場合(四角プロット)と比べて磁界の角度を傾けた時にHcrが高くなっていることが分かる。ただし,既に述べたとおり,最もHcrの大きい中間層がある場合(三角プロット)でも,記録再生特性上は単層(破線)と大きな違いが見られておらず,その中間であるので,それらと同様の結果が得られると予想される。
以上の結果から,SiO添加は,必須ではないが,Hcを増加させる効果や,中間層を設けた場合にHsを抑える効果などが得られるため好ましいと考えられる。
また,SiOの代わりに,Cr,TiOを用いた場合でも,同様の結果が得られた。
[実施例4]
第2磁性層の層厚を0〜5nmまで変更した以外は,実施例1および実施例2において非磁性中間層厚を形成しなかった場合と同様にして垂直磁気記録媒体を作製した。
図11にHcおよびHsの第2磁性層厚依存を示す。四角プロット(Hc)および丸プロット(Hs)がPt非磁性中間層がある場合であり,菱形プロット(Hc)および三角プロット(Hs)が非磁性中間層がない場合である。基本的には層厚の増加とともに,Hc,Hsは減少傾向にあるが,(SiO組成依存同様)中間層のあり/なしによる差が生じている。Pt中間層を設けた場合に,第2磁性層厚が3nm前後でHsとHcの差が小さく傾きの大きい磁化曲線が得られることが分かる。
層厚5nmでも大きな違いはないが,既に述べた通り,第2磁性層を厚くすると媒体ノイズの増加傾向が予想されるため,少なくとも第1磁性層よりも薄い方が好ましい。
[実施例5]
上記実施例の各垂直磁気記録媒体を,スピンスタンド評価で用いたものと同様のヘッドと組み合わせて磁気記録再生装置を作製した。
記録再生動作を行い、ビット誤り率の評価を行ったところ,上述したSNRm改善に対応するビット誤り率の改善が得られた。面内磁気記録用のリングタイプヘッドでも評価を行ったところ,単磁極型ヘッドと比較してビット誤り率が悪化した。記録素子の形状の違いから記録能力の低下などが起こり,SNRmや記録分解能が低下したと考えられ,単磁極型ヘッドの方が好ましいことが分かった。
また、ここでは磁気記録再生装置における有効性を示したが,本発明が効果を示す磁気記録媒体の性質上,本発明は,磁気ディスク装置に限らず,テープ媒体やドラム状媒体などを用いた場合など,磁気記録媒体の形状に依存することなく,広く垂直磁気記録方式を採用した磁気記録再生装置全般において,その効果を発揮することが可能である。
本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の断面図。 本発明の一実施形態に係る磁気記録再生装置を一部分解した斜視図。 実施例1における垂直磁気記録媒体の磁化曲線。 実施例1における垂直磁気記録媒体の残留保磁力の傾斜角依存性を示す図。 実施例1における垂直磁気記録媒体の保磁力の掃引時間依存性を示す図。 比較例1における垂直磁気記録媒体の磁化曲線。 実施例2における非磁性中間層厚を0nmとした垂直磁気記録媒体の磁化曲線。 実施例2における非磁性中間層厚を2nmとした垂直磁気記録媒体の磁化曲線。 実施例2における垂直磁気記録媒体について,HcおよびHsの中間層厚依存性を示す図。 実施例3における垂直磁気記録媒体について,HcおよびHsのSiO組成依存を示す図。 実施例4における垂直磁気記録媒体について,HcおよびHsの第2磁性層厚依存を示す図。
符号の説明
1…基板、2…軟磁性裏打ち層、3…シード層、4…非磁性下地層、5…第1磁性層、6…非磁性中間層、7…第2磁性層、8…保護層、110…ケース、112…磁気ディスク、113…スピンドルモータ、114…ヘッドアクチュエータ、116…ボイスコイルモータ、117…FPCユニット、118…ランプロード機構、120…イナーシャラッチ機構、121…クランプばね、124…ピボット、132…サスペンション、133…磁気ヘッド。

Claims (12)

  1. 基板上に、第1磁性層と、第2磁性層とを有し、前記第1磁性層および第2磁性層について、一軸磁気異方性定数をKu,Ku、飽和磁化をMs,Ms、異方性磁界をHk>Hk、厚さをt,tとしたとき、KuおよびKuが3×10erg/cc以上,Ms<Ms,Hk>Hk,かつt>tであることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  2. 前記第1磁性層はCo,PtおよびCrを含む結晶粒子と,非晶質粒界層とを有し、前記第2磁性層はCoを含みCrを含まないことを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  3. 前記第2磁性層は,Coのみを含むか、またはCoとPtおよびPdのうち少なくとも1種とを含むことを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  4. 前記第2磁性層は非晶質粒界層を有し、前記非晶質粒界層はSi,CrおよびTiからなる群より選択される少なくとも1種を結晶粒子よりも多く含むことを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  5. 前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に非磁性中間層を有し,前記第1磁性層と前記第2磁性層は強磁性的に結合していることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  6. 前記非磁性中間層はPtおよびPdのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5に記載の垂直磁気記録媒体。
  7. 垂直角型比がほぼ1であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  8. 垂直方向の磁化曲線の保磁力Hcにおける傾きαが1以上であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  9. 前記基板と前記第1磁性層との間に,CoおよびZrを含む軟磁性裏打ち層を有することを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  10. 前記軟磁性裏打ち層と前記第1磁性層との間に,Ruを含む非磁性下地層を有することを特徴とする請求項9に記載の垂直磁気記録媒体。
  11. 前記軟磁性裏打ち層と前記非磁性下地層との間に,Pd,Pt,Ni,TaおよびTiからなる群より選択される少なくとも1種を含むシード層を有することを特徴とする請求項10に記載の垂直磁気記録媒体。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体と、単磁極型磁気記録ヘッドとを具備したことを特徴とする磁気記録再生装置。
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