JP2009013494A - 板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペースト - Google Patents

板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペースト Download PDF

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Abstract

【課題】好適な内部電極膜を得ることができる板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペーストを提供する。
【解決手段】板状ニッケル粉は、下記の要件を満足することを特徴とする。(1)平均厚さは、0.02〜0.14μmである。(2)厚さの変動係数は、0.45以下である。(3)平均粒径は、0.2〜1.5μmである。また、その製造方法は、原料ニッケル粉末と分散媒とからなるスラリーを粉砕メディアの共存下に高速流動処理に付し、粉砕メディアを分離した後に、固液分離することにより製造する方法であって、下記の要件を満足することを特徴とする。(a)前記スラリー中の原料ニッケル粉末と分散媒の固液比は、質量比で0.05〜0.5である。(b)前記原料ニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmである。(c)前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、0.4以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペーストに関し、さらに詳しくは、高容量積層セラミックコンデンサ内部電極等に使用される導電性ペースト用材料として用いる際に、特に、積層セラミックコンデンサの内部電極が薄層化されたときにも、平滑な膜表面と高い膜密度を有する好適な内部電極膜を得ることができる板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペーストに関する。
従来、微粒の原料ニッケル粉末が、種々の電極及び電気回路の形成のため使用される導電性ペースト用材料として使用されている。例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極として、一般的に原料ニッケル粉末が用いられている。なお、積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体と金属からなる内部電極とを交互に層状に重ねて圧着し、これを焼成して一体化したものである。この内部電極の形成方法としては、例えば、次のように行われている。まず、原料ニッケル粉末と、セルロース系樹脂等の有機バインダーをターピネオール等の溶剤に溶解させた有機ビヒクルとを混合する。次に、これをスリーロールミル等によって混練、分散して導電ペーストを得る。次いで、これを用いて、チタン酸バリウム(以下、BTOと呼称する場合がある。)等のセラミック誘電体のグリーンシート上に印刷した後、得られたグリーンシートを積層する。その後、積層体を所定の大きさに裁断し、中性又は還元雰囲気下で焼成して、ニッケルを内部電極とした積層セラミックコンデンサが得られる。
近年、電気機器類の小型化にともない電子部品も小型化しており、このため、積層セラミックコンデンサにおいても、小型化、多層化及び大容量化が強く望まれている。そのため、誘電体セラミックス層とニッケル内部電極層を極限まで薄くする試みが検討されている。このため、これに使用される原料ニッケル粉末の粒子径自体も暫時小さくなり、現在では、平均粒径が0.3μm以下の粒子が用いられるようになっている。
しかしながら、ニッケル内部電極層をさらに薄層化するため、原料ニッケル粉末の粒子径をさらに小さくする場合には、原料ニッケル粉末の製造時、及びペースト製造時において、ファンデル・ワールス力の影響が顕著になることに起因する粒子の凝集が大きな問題となってくる。例えば、粒径が0.1μm(100nm)を下回るようなナノ粒子では、粉末の製造は勿論のこと、その取扱いも難しくなる。また、原料ニッケル粉末の粒径がナノレベルまで小さくなると、該粉末の焼結温度が急激に低下するため、膜切れなどがおこるという問題があった。
この対策として、導電性ペースト中に、粒径が0.5μm以下、若しくは0.2μm以下のBTO粒子を添加することにより、原料ニッケル粉末の焼結温度の低下を抑制することができる。ここで、原料ニッケル粉末の粒径が微細化すると、それにともなって焼結温度も低下するため、前記BTO粒子の添加量を多くすることが必要である。しかしながら、前記BTO粒子は、焼成時にセラミック誘電体に吸収されるため、その添加量が多くなると誘電体層の厚みが増加するという問題が発生する。
上記のような導電性ペーストに用いられる原料ニッケル粉末としては、従来、その形状が球状のものが用いられてきたが、上記粒径の微細化に伴う問題を解決するため、近年、その形状を板状化(フレーク化)した原料ニッケル粉末が提案されている。これは、その粒径が従来どおりのサブミクロンで、かつ厚さ方向のみを薄くした形状を有する板状ニッケル粉を製造することができれば、凝集の軽減、及び電極膜内での原料ニッケル粉末の積層数の増加が期待されるからである。また、焼結による収縮開始温度が主に粒子の体積に依存するとすれば、板状粒子では、その厚さと等しい粒径を持つ球状粒子と比較して大きな体積を有しているので、原料ニッケル粉末を板状化することにより、前記収縮開始温度を低下することなく、積層数を増加することができると期待される。すなわち、前記収縮開始温度の低下を抑制することにより、BTO粒子の添加量を減少させることが可能となる。
このため、板状ニッケル粉を製造する方法として、例えば、下記の方法(イ)〜(ハ)が提案されているが、これらの方法により得られる板状ニッケル粉には、高容量積層セラミックコンデンサ内部電極等に使用される導電性ペースト用材料として用いる際に、平滑な膜表面と高い膜密度を有する内部電極膜が形成されることを保証する形状要因が充足されていないという問題があった。このため、特に、積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化を満足することができなかった。
(イ)アルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩および水酸化物からなる群から選ばれたすくなくとも一つのアルカリ土類金属塩と水酸化ニッケルを混合し、800〜1300℃の温度で水素還元を行い、水素還元後にそのアルカリ土類金属塩を酸で溶解することにより、扁平な形状の原料ニッケル粉末を得る(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、アルカリ土類金属塩は、還元され生成された金属ニッケル粒子の相互拡散の障壁として働き、粒子の粗大化を抑制している。しかしながら、粒子の粗大化を抑制できても、生成した粒子間の焼結を完全に抑制するのは困難である。すなわち、アルカリ土類金属塩を均一に被覆することには限界があり、また、800℃以上の高温度で還元を行うため、接触しているニッケル粒子同士は容易に焼結してしまう。そのため、得られる粒子は、扁平形状であり、その厚さは0.05〜0.9μmであるが、粒子同士が焼結して、所謂、連結粒子が発生する可能性が高い。これらの連結粒子は、積層セラミックコンデンサを薄層化すると、電極間の短絡の原因となる。
(ロ)磨砕によるニッケル粒子のフレーク化する方法として、磨砕メディアと、原料ニッケル粉末と、有機溶媒とからなる混合物を、磨砕装置を用いてフレーク化する(例えば、特許文献2参照。)。この方法では、平均粒径が0.5〜10μmで、平均厚さが0.03〜0.5μmで、アスペクト比が10〜100であるニッケルフレークが開示されている。
ここで、ドクターブレードを用いて、平均粒径が4.5μm、平均厚さが0.06μm、及びアスペクト比が約75.0、又は平均粒径が5.5μm、平均厚さが0.15μm及びアスペクト比が約36.7であるニッケルフレークを含むニッケルペーストを塗布して得られた乾燥膜の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で、それぞれ0.10μm又は0.13μmとなっており、比較的表面の平滑な膜が得られている。しかしながら、このように大きな粒径ではスクリーン印刷時にニッケルフレークが傾きやすく膜粗さが悪化する恐れがある。また、アスペクト比が大きすぎるため、粒子が充填しずらく、そのため膜密度が著しく低下して膜切れが起こりやすくなる。
(ハ)原料ニッケル粉末、分散媒及び磨砕メディアを含むスラリーを、高速に流動させる(例えば、特許文献3参照。)。この方法では、平均長径が0.1〜20μm、アスペクト比が2〜100、及び粒径の標準偏差が0.05〜10のフレークニッケル粉が開示されている。
しかしながら、これらのニッケルフレーク粉はペースト評価が全くなされておらず 、積層セラミックコンデンサの内部電極等に使用される導電性ペースト用材料として用いる際に、平滑な膜表面と高い膜密度を有する内部電極膜が形成できるか否かは不明である。
なお、上記(ロ)、(ハ)の方法により得られるニッケルフレーク又はフレークニッケル粉は、その平均粒径、平均厚さ、及びアスペクト比、或いは平均長径、アスペクト比及び粒径の標準偏差が規定されているが、積層セラミックコンデンサの内部電極として用いられる場合に内部電極膜の膜密度にかかわる重要な形状要因である板状ニッケル粉の厚さのバラツキが規定されていない。
以上の状況から、積層セラミックコンデンサの内部電極が薄層化された際にも、平滑な膜表面と高い膜密度を有する好適な内部電極膜を得ることができる板状ニッケル粉とその製造方法が求められている。
特開平11−152505号公報(第1頁、第2頁) 特開2004−84055号公報(第1頁、第2頁、表1) 特開2006−131928号公報(第1項、第2項)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、高容量積層セラミックコンデンサ内部電極等に使用される導電性ペースト用材料として用いる際に、特に、積層セラミックコンデンサの内部電極が薄層化された際にも、平滑な膜表面と高い膜密度を有する好適な内部電極膜を得ることができる板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペーストを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、高容量積層セラミックコンデンサ内部電極等に使用される導電性ペースト用材料として用いる板状ニッケル粉について、鋭意研究を重ねた結果、前記ペースト用材料として、特定の平均厚さ、厚さの変動係数及び平均粒径を有する板状ニッケル粉を用いたところ、積層セラミックコンデンサの内部電極が薄層化された際にも、その粒径のバラツキが十分に小さく、かつ均一な厚さを有することにより、平滑な膜表面と高い膜密度を有する好適な内部電極膜を得ることができること、また、その製造方法として、特定の平均粒径及び粒径の変動係数を有する原料ニッケル粉末と分散媒の特定の固液比でスラリーを形成し、該スラリーを粉砕メディアの共存下に高速流動処理する方法により、上記特定の平均厚さ、厚さの変動係数及び平均粒径を有する、粒径のバラツキが小さく、かつ均一な厚さを有する板状ニッケル粉、又は板状ニッケル粉有機スラリーが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の(1)〜(3)の要件を満足することを特徴とする板状ニッケル粉が提供される。
(1)平均厚さは、0.02〜0.14μmである。
(2)厚さの変動係数は、0.45以下である。
(3)平均粒径は、0.2〜1.5μmである。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、下記の(4)の要件を満足することを特徴とする板状ニッケル粉が提供される。
(4)粒径の変動係数は、0.5以下である。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、さらに、下記の(5)の要件を満足することを特徴とする板状ニッケル粉が提供される。
(5)アスペクト比は、3〜15である。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3いずれかの発明の板状ニッケル粉と有機溶剤とを用いてなる板状ニッケル粉有機スラリーが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、さらに、分散剤を含むことを特徴とする板状ニッケル粉有機スラリーが提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記分散剤は、不飽和脂肪族カルボン酸であることを特徴とする板状ニッケル粉有機スラリーが提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜3いずれかの発明の板状ニッケル粉と、樹脂及び溶剤とを用いてなる導電性ペーストが提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、原料ニッケル粉末と分散媒とからなるスラリー(A)を形成し、該スラリー(A)を粉砕メディアの共存下に高速流動処理に付し、次いで、粉砕メディアを分離した後に、得られたスラリー(B)を固液分離することにより、板状ニッケル粉を製造する方法であって、
下記の(a)〜(c)の要件を満足することを特徴とする第1〜3いずれかの発明の板状ニッケル粉の製造方法が提供される。
(a)前記スラリー(A)中の原料ニッケル粉末と分散媒の固液比は、質量比で0.05〜0.5である。
(b)前記原料ニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmである。
(c)前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、0.4以下である。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、前記原料ニッケル粉末は、塩化ニッケルのヒドラジン還元により合成したニッケル粉末であることを特徴とする板状ニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第8又は9の発明において、前記分散媒は、水であることを特徴とする板状ニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、原料ニッケル粉末と、水又は水及び水に溶解する有機溶剤を混合した水系溶媒とからなるスラリー(C)を形成し、該スラリー(C)を粉砕メディアの共存下に高速流動処理に付し、板状ニッケル粉を生成し、次いで、粉砕メディアを分離して得られたスラリー(D)に、さらに有機溶剤及び分散剤を混合撹拌し、該板状ニッケル粉が該有機溶剤中に移行して分散した有機スラリーと、水又は水及び水に溶解する有機溶剤を混合した水系溶媒とを形成することにより、板状ニッケル粉有機スラリーを製造する方法であって、
下記の(a´)〜(c)の要件を満足することを特徴とする第4〜6いずれかの発明の板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法が提供される。
(a´)前記スラリー(C)中の原料ニッケル粉末と、水又は水及び水に溶解する有機溶剤を混合した水系溶媒との固液比は、質量比で0.05〜0.5である。
(b)前記原料ニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmである。
(c)前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、0.4以下である。
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、前記分散剤は、不飽和脂肪族カルボン酸であることを特徴とする板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法が提供される。
本発明の板状ニッケル粉は、特定の平均厚さ、厚さの変動係数、及び平均粒径を有する、粒径のバラツキが小さく、かつ均一な厚さを有する板状ニッケル粉であり、また本発明の板状ニッケル粉有機スラリーは、上記のような特性を有する板状ニッケル粉を含む有機スラリーであり、これらを、高容量積層セラミックコンデンサ内部電極等に使用される導電性ペースト用材料として用いる際に、特に、積層セラミックコンデンサの内部電極が薄層化された際にも、平滑な膜表面と高い膜密度を有する好適な内部電極膜を得ることができる。また、本発明の板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法は、それらを効率的に製造する方法である。したがって、それらの工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペーストを詳細に説明する。
1.板状ニッケル粉
本発明の板状ニッケル粉は、下記の(1)〜(3)の要件を満足することを特徴とする。
(1)平均厚さは、0.02〜0.14μmである。
(2)厚さの変動係数は、0.45以下である。
(3)平均粒径は、0.2〜1.5μmである。
本発明の板状ニッケル粉において、特定の平均粒径を有することとともに、その平均厚さ及びその厚さのバラツキが小さいことが重要である。これにより、本発明の板状ニッケル粉においては、内部電極を薄層化するために肝要な内部電極膜の表面の平滑化と膜密度の向上が達成されるので、内部電極膜の薄層化が可能となる。
すなわち、板状ニッケル粉の平均粒径が一定の値より大きい場合には、それを用いて、ペースト化し、次いで内部電極としてグリーンシートに塗布したときに、板状粒子が傾いた際の凸凹が大きくなりやすいために膜粗さが大きくなりやすい。このため、電極膜表面の平滑性が低下してしまうという事態となる。また、板状ニッケル粉の厚さのバラツキが大きい場合には、それを用いて、ペースト化し、次いで内部電極としてグリーンシートに塗布したときに、内部電極の厚み方向での隙間が大きくなり、内部電極膜の膜密度が小さくなってしまう。また、同時に、電極膜内での不均一さから、電極膜表面の平滑性も低下してしまうという事態となる。
ここで、膜密度が低い場合には、一層あたりのニッケル重量が少なくなり、積層セラミックコンデンサの静電容量が低下し、また電極膜表面の凸凹が大きい場合には、誘電体層を突き抜け電極間での短絡が発生する。このため、特に、積層セラミックコンデンサの内部電極が薄層化された際には、好適な内部電極膜を得ることができない。
上記板状ニッケル粉の平均厚さとしては、0.02〜0.14μmであり、好ましくは0.05〜0.14μmである。すなわち、平均厚さが0.02μm未満では、板状ニッケル粉の強度が不十分であるため、ペースト作製時、或いはグリーンシート上へのペースト塗布時に、板状ニッケル粉が変形し易い。なお、板状ニッケル粉が変形する際には、電極膜内で隙間が増加することにより、膜密度を低下させるばかりでなく、膜表面の凹凸が増加することにより、電極間の短絡の原因となる。一方、平均厚さが0.14μmを超えると、板状ニッケル粉の電極膜内での積層数が少なくなり、内部電極膜の薄層化が困難となってしまう。なお、上記板状ニッケル粉の平均厚さは、板状ニッケル粉を埋め込んだ樹脂を研磨した後、電界放出型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、20000倍で観察して得られるFE−SEM像から、サンプルとして150個以上の板状ニッケル粉の厚さを測定し、平均化することにより得られたものである。
上記板状ニッケル粉の厚さの変動係数としては、0.45以下、好ましくは0.4以下であり、さらに好ましくは0.38以下である。すなわち、厚さの変動係数が0.45を超えると、平均厚さより大幅に厚い粒子の影響により板状ニッケル粉が傾きやすくなり、電極膜表面の平滑性が悪くなる。一方、厚さの変動係数の下限値としては、特に限定されるものではなく、変動係数の小さいものほど良好な電極膜が得られるが、板状ニッケル粉の製造時の効率を考慮すると、0.3〜0.4程度にすることが好ましく、さらには、0.3〜0.38にすることが好ましい。なお、上記板状ニッケル粉の厚さの変動係数は、上記平均厚さの測定に際して求められた標準偏差を、その平均厚さで除することにより得られたものである。
上記板状ニッケル粉の平均粒径としては、0.2〜1.5μmである。すなわち、平均粒径が1.5μmを超えると、板状ニッケル粉が傾いた際の凹凸が大きくなり、電極膜表面の平滑性が悪くなってしまう。一方、平均粒径が0.2μm未満では、粉末の取扱いが困難となるばかりか、これを用いたペーストの粘度が上昇するため、板状ニッケル粉が平面方向に並びにくくなる。なお、板状ニッケル粉の平均粒径は、マイクロトラックHRA(マイクロトラック社製)を用いたレーザー回析散乱法による累積体積50%における粒径(D50)を求めることにより得られたものである。
上記板状ニッケル粉は、さらに、その粒径の変動係数としては、特に限定されるものではないが、上記(4)の要件を満足すること、すなわち0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.38以下さらに好ましい。すなわち、粒径の変動係数が0.5を超えると、平均粒径より大幅に大きな粒子が存在することにより、電極膜表面の凹凸が大きくなり、平滑性が悪くなり易い。なお、板状ニッケル粉の粒径の変動係数は、上記平均粒径を測定する際に求められた粒径の標準偏差(SD)をその平均粒径(D50)で除することにより得られたものである。
上記板状ニッケル粉は、さらに、そのアスペクト比としては、特に限定されるものではないが、上記(5)の要件を満足すること、すなわち3〜15であることが好ましく、8〜14であることがより好ましい。すなわち、板状ニッケル粉のアスペクト比が上記範囲内にあるときには、充填しやすいため、膜密度が高い内部電極膜を得ることができる。ここで、アスペクト比が15を超えると、充填しにくくなり、膜密度が低下する。一方、アスペクト比が3未満では、形状が限りなく粒状に近くなり、もはや板状粉とは言えなくなる。なお、上記板状ニッケル粉のアスペクト比は、上記平均粒径(D50)を上記平均厚さで除することにより得られたものである。
上記板状ニッケル粉のアスペクト比と、板状ニッケル粉を含むペーストを塗布して得られた乾燥後の内部電極膜(以下、乾燥膜と呼称する場合がある。)の膜密度との関係について、図を用いて説明する。図1は、板状ニッケル粉のアスペクト比と乾燥膜の膜密度との関係の一例を表す。
図1より、アスペクト比が増加するにしたがい、膜密度が減少している。すなわち、アスペクト比が小さな板状ニッケル粉を用いると、密度の高い乾燥膜が得られやすいことが分かる。
2.板状ニッケル粉の製造方法
本発明の板状ニッケル粉の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、原料ニッケル粉末と分散媒とからなるスラリー(A)を形成し、該スラリー(A)を粉砕メディアの共存下に高速流動処理に付し、次いで、粉砕メディアを分離した後に、得られたスラリー(B)を固液分離することにより、板状ニッケル粉を製造する方法であって、下記の(a)〜(c)の要件を満足することを特徴とする。これによって、本発明の上記(1)〜(3)の要件を満足する板状ニッケル粉が得られる。
(a)前記スラリー(A)中の原料ニッケル粉末と分散媒の固液比は、質量比で0.05〜0.5である。
(b)前記原料ニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmである。
(c)前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、0.4以下である。
上記板状ニッケル粉の製造方法において、スラリー(A)の固液(原料ニッケル粉末/分散媒)比としては、質量比で0.05〜0.5である。これにより、得られる板状ニッケル粉の厚さの変動係数が小さくなり、かつアスペクト比を所定値に制御しやすくなる。すなわち、固液比が0.05未満では、板状ニッケル粉の厚さの変動係数も大きくなる。一方、固液比が0.5を超えると、分散媒に原料ニッケル粉末を均一に分散させ、均一に原料ニッケル粉末を流動させることができないので、板状ニッケル粉の厚さの変動係数、アスペクト比の制御が困難になる。なお、スラリー(A)の固液比を、0.2〜0.4とすれば、厚さの変動係数がより小さくなるので、好ましい。
上記板状ニッケル粉の製造方法において、前記原料ニッケル粉末の平均粒径としては、0.1〜0.5μmであり、0.1〜0.4であることが好ましい。すなわち、上記原料ニッケル粉末の平均粒径の平均粒径が0.5μmを超えると、板状ニッケル粉の平均粒径及び平均厚さが大きくなりやすい。ここで、前記平均粒径が本発明の板状ニッケル粉の要件に比べて大き過ぎると、前述のように、板状粒子が傾いた際に凹凸が大きくなりやすいため、膜の表面粗さが大きくなりやすい。また、前記平均厚さが本発明の板状ニッケル粉の要件に比べて大き過ぎると、板状ニッケル粉の電極膜内での積層数が少なくなり、内部電極膜の薄層化が困難となってしまう。一方、上記原料ニッケル粉末の平均粒径が0.1μm未満では、粒径が小さすぎるために板状化が困難となる。なお、上記原料ニッケル粉末の平均粒径は、電界放出形電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4700)を用いて原料原料ニッケル粉末を20000倍で観察して得られるFE−SEM像から、サンプルとして150個以上の粒子の粒径を測定し、平均化して求めた。
上記板状ニッケル粉の製造方法において、前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数としては、0.4以下であり、0.3以下であることが好ましい。すなわち、前記粒径の変動係数が0.4を超えると、板状ニッケル粉の形状のバラツキが大きくなる。一方、前記粒径の変動係数の下限値としては、特に限定されるものではなく、変動係数が小さいほど、厚さのバラツキが少なく均一な厚みの板状ニッケル粉が容易に得られるので、好ましい。なお、原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、上記平均粒径を測定する際に求められた粒径の標準偏差をその平均粒径で除することにより得られたものである。
上記板状ニッケル粉の製造方法で用いる原料ニッケル粉末としては、特に限定されるものではなく、上記(b)及び(c)の要件を満足するものが用いられるが、例えば、ニッケル塩水溶液を還元剤により還元して原料ニッケル粉末を析出させる液相還元法、塩化物蒸気を水素ガス中で気相から直接析出させる気相還元法、ニッケル水溶液を、例えば600℃以上の高温中で噴霧して熱分解させる噴霧熱分解法等の製造方法により得られたもの適宜選択して用いることができる。
ここで、液相還元法による原料ニッケル粉末の製造方法では、塩化ニッケルのヒドラジン還元により製造された原料ニッケル粉末が好ましい。すなわち、塩化ニッケルのヒドラジン還元により得られる原料ニッケル粉末は、粒径のバラツキが小さいため、粒径のバラツキがより少なく、かつより均一な厚さの板状ニッケル粉が得られやすい。なお、塩化ニッケルのヒドラジン還元による原料ニッケル粉末の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル水溶液を所定のpHに調整しながら、還元剤としてヒドラジンを添加する方法が用いられる。これにより、所望値に粒径制御がなされ、形状が略球状である原料ニッケル粉末が得られる。
上記板状ニッケル粉の製造方法で用いる高速流動処理としては、例えば、媒体攪拌ミル等の湿式分散機又は湿式粉砕機を用いて、原料ニッケル粉末、分散媒及び粉砕メディアを含むスラリーを高速流動処理する。ここで、高速流動処理に際して、スラリー(A)中に粉砕メディアが共存するように調製されていればよい。例えば、湿式媒体攪拌ミルのベッセル内に、予め所定量の粉砕メディアのみを充填しておき、別のタンク内で所定の固液比になるように調製したスラリー(A)を該ベッセル内に導入することで、原料ニッケル粉末、分散媒及び粉砕メディアを含むスラリーが調製される。その後、スクリーンを介して前記ベッセルを通過したスラリー(B)を前記タンク内に戻し、前記タンク内のスラリー(A)と混合した後、再び前記ベッセル内に導入する。すなわち、スラリーがタンクとベッセルの間を循環するようにする。
上記板状ニッケル粉の製造方法で用いる分散媒としては、特に限定されるものではなく、水又は有機溶媒が用いられ、これらの1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることできるが、この中で、特に、低コストでの製造が可能な、水を用いることが好ましい。すなわち、水を用いた場合、水自体が有機溶媒より安価であることや、設備を防爆仕様にする必要がないために、より低コストでの製造が可能となる。ここで、用いる水としては、原料ニッケル粉末に不純物が混入しなければ問題なく、工業的に通常用いられる純水が用いられる。
上記板状ニッケル粉の製造方法で用いる粉砕メディアとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ジルコニア、アルミナ、窒化珪素、ガラス等が挙げられるが、この中で、特に、粉砕メディアの耐摩耗性が高く、粉砕メディアの磨耗による板状ニッケル粉への不純物の混入が少ない、ジルコニア又はアルミナが好ましい。
上記粉砕メディアの寸法としては、特に限定されるものではないが、直径が0.03〜0.1mmであることが好ましい。これによって、板状化処理が均一に行なわれ、粒径のバラツキが少なく均一な厚みの板状ニッケル粉が得られる。すなわち、直径が0.1mmを超えると、板状ニッケル粉の粒径のバラツキが大きくなる。一方、直径が0.03mm未満では、原料ニッケル粉末を板状化することが困難となる。
また、原料ニッケル粉末、分散媒及び粉砕メディアを含むスラリー中の粉砕メディアの含有比率としては、特に限定されるものではないが、効率よく短時間で板状ニッケル粉を製造するため、通常70〜90容量%とすることが好ましい。
上記板状ニッケル粉の製造方法において、高速流動処理で得られるスラリー(B)から分散媒を除去する乾燥処理としては、特に限定されるものではなく、例えば、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。また、乾燥処理に先立って、スラリー(B)をデカンテーション、吸引除去、遠心分離除去、加熱蒸発等の公知の分離方法に付し、余分な分散媒を除去してスラリー(B)中の板状原料ニッケル粉末の濃度を高くすれば、乾燥時間を短くすることできるので好ましい。さらに、必要により、篩い工程で、乾燥処理して得られた板状ニッケル粉をほぐすことが好ましい。 上記製造方法で用いるニッケル粉末の粒径の変動係数としては、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。すなわち、変動係数が0.5を超えると、板状ニッケル粉の粒径のバラツキが大きくなる。一方、変動係数の下限値としては、変動係数が小さいものほど、粒径のバラツキが少なく均一な厚みの板状ニッケル粉が容易に得られるので好ましい。なお、ニッケル粉末の粒径の変動係数は、上記平均粒径を測定する際に求められた粒径の標準偏差をその平均粒径で除することにより得られたものである。
3.板状ニッケル粉有機スラリーとその製造方法
本発明の板状ニッケル粉有機スラリーは、有機溶剤中に板状ニッケル粉が分散されたものである。さらに、板状ニッケル粉有機スラリーは、必要に応じて、公知の消泡剤等を含むことができる。前記板状ニッケル粉有機スラリーに、樹脂と、適宜にBTOと、さらには必要に応じてペーストに添加することができる分散剤、消泡剤、増粘剤、及び炭化水素溶媒等の希釈剤等とを加えて混合することによって、導電性ペーストに加工することができる。
本発明の板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、次の(1)又は(2)の方法により有機スラリーを製造する。
(1)原料ニッケル粉末と、水又は水及び水に溶解する有機溶剤を混合した水系溶媒(以下、水系溶媒と呼称する場合がある。)とからなるスラリー(C)を形成し、該スラリー(C)を粉砕メディアの共存下に高速流動処理に付し、板状ニッケル粉を生成し、次いで、粉砕メディアを分離して得られたスラリー(D)に、さらに有機溶剤及び分散剤を混合撹拌し、該板状ニッケル粉が該有機溶剤中に移行して分散した有機スラリーと、水又は水系溶媒とを形成することにより、板状ニッケル粉有機スラリーを製造する。この際、下記の(a´)〜(c)の要件を満足する。
(a´)前記スラリー(C)中の原料ニッケル粉末と、水又は水系溶媒との固液比は、質量比で0.05〜0.5である。
(b)前記原料ニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmである。
(c)前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、0.4以下である。
なお、水に溶解する有機溶剤とは、後述する導電性ペーストに用いることができる有機溶剤のうちエタノールやプロパノール等のように室温で水に任意の比率で混合することができるものである。
(2)原料ニッケル粉末と有機溶剤とからなるスラリー(E)を形成し、該スラリー(E)を粉砕メディアの共存下に高速流動処理に付し、板状ニッケル粉を生成し、次いで、粉砕メディアを分離して、該板状ニッケル粉が該有機溶剤中に分散した有機スラリーを得る。この際、下記の(a´´)〜(c)の要件を満足する。
(a´´)前記スラリー(C)中の原料ニッケル粉末と有機溶剤の固液比は、質量比で0.05〜0.5である。
(b)前記原料ニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmである。
(c)前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、0.4以下である。
ここで、前記(2)の方法では、前記高速流動処理において、分散媒として、上記板状ニッケル粉末有機スラリーを構成する有機溶剤を用いるので、前記(1)の方法で必須である、板状ニッケル粉の分散媒を水又は水系溶剤から有機溶剤へ置換する工程が不要である。
また、必要により、前記(1)、(2)の方法において、前記高速流動処理に際し、上記板状ニッケル粉末有機スラリーに含まれる分散剤を添加してもよい。ここで、前記(1)の方法で用いる分散剤としては、前述したように、不飽和脂肪族カルボン酸が好ましい
上記(1)の方法において、高速流動処理で得られるスラリー(C)を、デカンテーション、吸引除去、遠心分離除去、加熱蒸発等の公知の分離方法に付し、余分な水又は水系溶剤を除去してスラリー(D)中の板状ニッケル粉末の濃度を高くすれば、板状ニッケル粉末を水又は水系溶剤から有機溶剤へ置換する時間を短くすることできるので好ましい。
上記(2)の方法において、得られた板状ニッケル粉有機スラリーを、導電性ペーストに加工する際、有機スラリー中の板状ニッケル粉末の含有率が、導電性ペーストへの加工に不適切な場合には、有機溶剤の添加又は除去による希釈又は濃縮などによる含有率の調整が行われる。ここで、有機溶剤の除去により濃縮する方法としては、加熱等により有機溶剤の蒸発除去が行われる。
上記板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法に用いる有機溶剤としては、例えば、後述する導電性ペーストに用いるアルコール類とその誘導体、グリコール類とその誘導体、エステル及びケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤が挙げられる。なお、上記(1)の方法において、上記板状ニッケル粉有機スラリーの製造に用いる有機溶剤としては、室温で水系溶媒と任意の比率で混合する有機溶剤を用いることができないことに留意することが必要である。すなわち、板状ニッケル粉を水又は水系溶剤から有機溶剤へ置換できないからである。
上記板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法に用いる分散剤としては、特に限定されるものではなく、上記板状ニッケル粉末有機スラリーに添加することにより、板状ニッケル粉の凝集を防ぐ作用を有する、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性、高分子界面活性剤等を用いることができる。ここで、前記カチオン型界面活性剤としては、アミンやその誘導体が挙げられる。また、前記カチオン系界面活性剤としては、カルボン酸やその塩等が挙げられる。また、前記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のエーテル結合を有する化合物やポリオキシエチレンモノオレート等のエステル結合を有する化合物やヒドロキシエチルラウリルアミンをはじめとするポリエーテルアミン等の化合物が挙げられる。また、前記両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。また、前記高分子界面活性剤としては、高分子ポリカルボン酸等が挙げられる。
なお、上記(1)の方法に用いる分散剤としては、特に限定されるものではなく、不飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。すなわち、不飽和脂肪族カルボン酸は、水系溶媒に分散した板状ニッケル粉を有機溶剤中に移行して分散させる際に、他の分散剤より有効な促進作用を示すからである。
前記不飽和脂肪族カルボン酸としては、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等が好適に用いられる。
4.導電性導電性ペースト
本発明の導電性ペーストは、上記板状ニッケル粉と樹脂及び溶剤とを用いてなるもの、或いは上記板状ニッケル粉有機スラリーと樹脂とを用いてなるである。
上記導電性ペーストに用いる樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、及びブチラール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
前記樹脂の分子量としては、特に限定されるものではなく、ペーストに粘性を付与できれば良く、適宜選択される。例えば、セルロース系樹脂のエチルセルロースであれば、質量平均分子量が5000〜400000のものを選択することができる。ここで、前記樹脂は、溶剤に予め溶解してビヒクルに加工されて用いられる。
上記導電性ペーストに用いる溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルコール類とその誘導体、グリコール類とその誘導体、エステル及びケトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤、又は水である。なお、有機溶剤と水を混合して用いても良い。
ここで、前記アルコール類とその誘導体としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、ウンデカノール、トリデカノール、シクロヘキシルアルコール等の脂肪族アルコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、テルピノール等のテルペン系アルコール、又はジヒドロテルピノール、ターピネオールアセテート等の誘導体が挙げられる。また、前記グリコールとグリコール誘導体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルグリコール、エチルグリコール、ブチルグリコール、エチルジグリコール、ブチルジグリコール、ソロソルブアセテート、ブチルセルソルブアセテート、カルビトーツアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。また、前記エステル類としては、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。また、前記ケトンとしては、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、シクロヘキサノン、メチルフェノールケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
上記導電性ペースト中の板状ニッケル粉の含有割合としては、特に限定されるものではないが、全量に対し、好ましくは30〜98質量%、より好ましくは40〜90質量%含有する。すなわち、この含有割合で、この導電性ペーストを用いて形成される、例えば積層セラミックコンデンサのニッケル内部電極等の内部電極膜が平滑になりやすく、かつ膜密度も高くなりやすい。ここで、板状ニッケル粉の含有割合が30質量%未満では、板状ニッケル粉の含有量が少なすぎるために膜密度が低くなりやすい。一方、板状ニッケル粉の含有割合が98質量%を超えると、板状ニッケル粉の含有量が多すぎるためにペースト粘度が上昇し、得られる内部電極膜の表面が粗くなりやすい。
上記導電性ペースト中には、さらに、必要に応じてBTO、ペーストに添加することができる公知の分散剤、消泡剤、増粘剤、又は脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒等の希釈剤を含むことができる。
上記導電性ペーストの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、次の(イ)又は(ロ)の工程からなるものである。
(イ)上記板状ニッケル粉の製造方法により得られる板状ニッケル粉を、乾燥し、次いで篩い分けして得た乾燥粉に、樹脂及び溶剤を添加して混錬してペーストを得る。
(ロ)上記板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法により得られる有機スラリーに樹脂を添加して混錬してペーストを得る。
ここで、(イ)の工程では、ペースト化に先立って、上記板状ニッケル粉の乾燥粉を得るため、高速流動処理に付した後に得られたスラリー(B)を固液分離し、次いで乾燥処理し、さらに必要に応じて、篩い分け処理することが含まれる。これに対して、(ロ)の工程では、上記板状ニッケル粉有機スラリーを原料として、ペースト化が行える。したがって、(ロ)の工程を用いると、乾燥粉を得るための固液分離、乾燥処理及び篩い分け処理が不用となり、より効率的である。
上記導電性ペーストの製造方法において、ペースト化に際しては、3本ロール、湿式媒体攪拌ミル、ボールミル等の公知の混錬装置を用いることができる。
なお、得られた導電性ペーストは、セラミック誘電体のグリーンシート上にスクリーン印刷、グラビア印刷等の公知の印刷方法で塗布することができるものである。特に、積層セラミックコンデンサの内部電極が薄層化された際にも、平滑な膜表面と高い膜密度を有する好適な内部電極膜を得ることができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた原料のニッケル粉末の平均粒径と粒径の変動係数、板状ニッケル粉の平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数及びアスペクト比、並びに、板状ニッケル粉を用いて、ペースト化し、塗布して得られた乾燥膜の表面粗さ及び膜密度の評価方法は、以下の通りである。
(1)原料ニッケル粉末の平均粒径と粒径の変動係数の測定:電界放出形電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4700)を用いて原料ニッケル粉末を20000倍で観察して得られるFE−SEM像から、サンプルとして150個以上の粒子の粒径を測定し、平均化して平均粒径を求めた。また、この測定の際に得られた粒径分布の標準偏差を平均粒径で除した値(標準偏差/平均値)を変動係数とした。
(2)板状ニッケル粉の平均粒径と粒径の変動係数の測定:100mlのビーカーに、板状ニッケル粉を約0.1g採取し、分散媒として0.2重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を約50ml添加した後、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所社製、US−300T)により、300μAの出力で1分間分散しサンプル液を調製した。このサンプル液を、マイクロトラックHRA(マイクロトラック社製)により、レーザー回析散乱法用いて測定し、累積体積が50%における粒径(D50)を平均粒径とした。また、この測定の際に得られた粒径分布の標準偏差を平均粒径(D50)で除した値(標準偏差/平均値)を変動係数とした。
(3)板状ニッケル粉の平均厚さと厚さの変動係数の測定:板状ニッケル粉を分散させた水スラリーをメンブレンフィルター(ミリポア社製、0.45μm)上に吸引濾過し、そのメンブレンフィルターを5mm×5mm程度の大きさに切断した後、スライドガラス上に置き、エポキシ樹脂(マルトー社製、ペトロポキシ154)を0.01〜0.05g滴下させ、上からカバーガラスを載せ、その後樹脂を硬化させた。硬化後、上記スライドガラスを切断し、クロスセクションポリッシャー(日本電子社製、SM−09010)を用いて断面加工を行なった。その試料を、オスミウム蒸着機(日本レーザー電子社製、オスミウムプラズマコーターOPC80N)にて蒸着後、電界放出形電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4700)にて断面観察を行なった。観察結果を元に、150点以上の粒子の断面の測定を行い、平均値、標準偏差、変動係数(標準偏差/平均値)を求めた。この際、樹脂に埋め込んだ板状粒子が傾いていた場合には正確な厚みを測定することができないので注意が必要である。正確な厚みを測長するためには、研磨面に対して垂直な状態の粒子を見分けることが必要であるが、加速電圧を変更して同じ視野を撮影することで垂直な状態の粒子を見分けることが可能である。高加速電圧(30kV)で撮影した場合、より深い位置の情報が得られるため、傾いた粒子は本来の厚みより厚くぼやけた像となる。一方、低加速電圧(5kV)で撮影した場合は表面の情報のみである。両者を比較すると、垂直な粒子はどちらの加速電圧でも同じ像となるため、その粒子を選別して測長することで正確な厚みを知ることができる。この方法により、板状粒子の厚みの平均値、標準偏差、変動係数(標準偏差/平均値)を正確に知ることが可能となる。
(4)板状ニッケル粉のアスペクト比の測定:上記方法にて測定した平均粒径を平均厚さで除した値をアスペクト比とした。
(5)乾燥膜の表面粗さの測定:まず、導電性ペーストをニッケル粉末と有機ビヒクルとから調整した。ここで、有機ビヒクルは、質量平均分子量180000の樹脂としてエチルセルロース10質量%とターピネオール90質量%とを混合し、60℃に加熱溶解して作製したものである。このペースト組成としては、質量比で、ニッケル粉末が50.0%、エチルセルロースが2.9%、及びターピネオールが47.1%である。これをロールミル等によって混練、分散して導電性ペーストを得た。次に、2インチ角のガラス基板を縦に3枚並べたのち、導電性ペーストを上段のガラス基板上にのせ、幅2.0cm、ゲージの隙間が40μmのアプリケータで下段まで延ばした。続いて、導電性ペーストが、幅2.0cm及び長さ2インチに塗布されている中段のガラス基板を、100℃で10分間乾燥し、表面粗さ計(東京精密社製、surfucom(登録商標)、E−MD−S01A、S39A)を用いて、乾燥膜の中心線平均粗さ(Ra)と最大高さ(Rmax)を測定して、表面粗さを求めた。
(6)膜密度の測定:上記乾燥膜の表面粗さ測定の場合と同様の方法で作製された乾燥膜の重量と厚さを測定し、測定した重量を算出した体積で除した値を膜密度とした。
なお、上記(5)、(6)による導電性ペーストの評価は、ニッケル粉末、有機バインダー及びターピネオールからなる、ごく単純な組成の導電性ペーストでの評価であり、製品規格と比較することはできないが、得られた評価結果はペースト特性を把握するには十分なものである。
(実施例1)
原料ニッケル粉末として、塩化ニッケルのヒドラジン還元により得られた形状が略球状で、平均粒径が0.47μm、及び粒径の変動係数が0.18であるニッケル粉末を用いて、その6kgに純水を加えて、固液比が0.2である原料ニッケル粉末の水スラリーを作製し、その30Lをタンクに保存した。一方、スターミル(アシザワファインテック株式会社製LMZ4)のベッセル(容量4.1L)に、ベッセルの内容積に対して80容量%になるように、粒径が0.1mmのジルコニアビーズを充填した。
上記スターミルを稼動するとともに、原料ニッケル粉末の水スラリーを、上記タンク内で攪拌しながら、ポンプを介してベッセル導入口からベッセル内に流速9L/minで連続的に導入し、ベッセル内においてジルコニアビーズとニッケル粉末の水スラリーとの合計量がベッセルの内容積の100容量%になるようにするとともに、一方、ベッセルを通過した後のスラリーを、スクリーンを介してベッセルの排出口から排出し、次いで上記タンクに戻した。ここで、タンク内に戻されたベッセルを通過した後のスラリーは、タンク内のスラリーと混合された後、再びベッセル導入口からベッセル内に前記流速で連続的に導入し、スラリーがタンクとベッセルとの間で循環するようにした。なお、ベッセル内では、ジルコニアビーズ、ニッケル粉末、及び水との混合物からなるスラリーを、周速9.4m/sで高速に流動させて、板状化処理を行なった。
上記操作を360分間行なった後、スターミルを停止し、次いでタンク内のスラリーを濾過し、濾過したケーキを100℃で12時間真空乾燥させて板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す。
また、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さの測定チャートを図2に示す。図2は、粗さ曲線を表し、ここで、縦軸は表面粗さの変動幅を、横軸は測定長さを表す。
(実施例2)
上記スターミルの操作時間を480分としたこと以外は実施例1と同様にして板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す。
(実施例3)
原料ニッケル粉末として、平均粒径が0.26μm及び粒径の変動係数が0.19であるニッケル粉末を用いたこと、及び上記スターミルの操作時間を480分としたこと以外は実施例1と同様にして板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す
また、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さの測定チャートを図3に示す。ここで、縦軸及び横軸のスケールは、図2と同様である。
(比較例1)
原料ニッケル粉末として、平均粒径が0.58μm及び粒径の変動係数が0.15であるニッケル粉末を用いたこと、及び上記スターミルの操作時間を480分としたこと以外は実施例1と同様にして板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す。
(比較例2)
原料ニッケル粉末として、平均粒径が0.58μm及び粒径の変動係数が0.15であるニッケル粉末を用いたこと、及び上記スターミルの操作時間を600分としたこと以外は実施例1と同様にして板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す。
また、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さの測定チャートを図4に示す。ここで、縦軸及び横軸のスケールは、図2と同様である。
(比較例3)
原料ニッケル粉末として、粒径の変動係数が0.45であるニッケル粉末を用いたこと、及び上記スターミルで固液比0.1の原料ニッケル粉末の水スラリーを用いたこと、及び上記スターミルの操作時間を180分としたこと以外は実施例1と同様にして板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す。
(比較例4)
原料ニッケル粉末として、粒径の変動係数が0.45であるニッケル粉末を用いたこと、及び上記スターミルで固液比0.1の原料ニッケル粉末の水スラリーを用いたこと、及び上記スターミルの操作時間を240分としたこと以外は実施例1と同様にして板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す。
(比較例5)
上記スターミルで固液比0.03の原料ニッケル粉末の水スラリーを用いたこと以外は実施例1と同様にして板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す。
(比較例6)
原料ニッケル粉末として、及び上記スターミルで固液比0.1の原料ニッケル粉末の水スラリーを用いたこと、及び上記スターミルの操作時間を180分としたこと以外は実施例1と同様にして板状ニッケル粉を得た。
得られた板状ニッケル粉について、上記測定方法により、平均粒径、粒径の変動係数、平均厚さ、厚さの変動係数、及びアスペクト比を求めた。結果を表1、2に示す。
その後、得られた板状ニッケル粉を用いて、上記測定方法により、得られた導電性ペーストから作製された乾燥膜の表面粗さと膜密度を評価した。結果を表3に示す。
Figure 2009013494
Figure 2009013494
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表1、2、3から、実施例1〜3では、スラリー中の原料ニッケル粉末と分散媒の固液比が質量比で0.05〜0.5、該ニッケル粉末の平均粒径が0.1〜0.5μm、及び該ニッケル粉末の粒径の変動係数が0.4以下であるように制御して、ニッケル粉末と分散媒とからなるスラリーを形成し、該スラリーを粉砕メディアの共存下に高速流動処理し、本発明の製造方法に従って行われたので、平均粒径が0.2〜1.5μm、平均厚さが0.02〜0.14μm、及び厚さの変動係数が0.45以下であるそれぞれの要件を満足した板状ニッケル粉が得られることが分かる。
また、積層セラミックコンデンサの内部電極を薄層化するためには、平滑な膜表面を有する内部電極膜を得ることが特に重要となるが、これを用いた乾燥後の内部電極膜では、中心線平均粗さ(Ra)と最大高さ(Rmax)が、それぞれ0.10〜0.12μmと1.02〜1.36μmと小さく、例えば、中心線平均粗さ(Ra)の合否基準を0.15μmとした場合、十分に平滑な膜表面が得られることが分かる。また、同時に高い膜密度も得られることが分かる。
これに対して、比較例1〜6では、原料ニッケル粉末の平均粒径、原料ニッケル粉末の粒径の変動係数、又は原料ニッケル粉末と分散媒の固液比が、これらの条件に合わないため、これを用いた乾燥後の内部電極膜では、中心線平均粗さ(Ra)と最大高さ(Rmax)が大きく、平滑な膜表面が得られないこと、さらに十分に高い膜密度が得られない場合があることが分かる。
また、図2、3と図4との比較からも、実施例1、3では、比較例2に比べて、中心線平均粗さ(Ra)と最大高さ(Rmax)が小さく、平滑な膜表面を有する板状ニッケル粉が得られることが裏付けられる。
また、表1、2より、実施例1〜3では、得られた板状ニッケル粉の粒径の変動係数が0.30〜0.42、アスペクト比が8.7〜13.6となり、上記平均粒径、平均厚さ、及び厚さの変動係数に関する要件のほかに、さらに、粒径の変動係数は0.5以下であること、及びアスペクト比が3〜15であることという要件も満足していることが分かる。
また、実施例1、2と比較例3〜6とは、板状ニッケル粉の製造において、原料ニッケル粉末の平均粒径が同様であり、上記スターミルでの固液比又は原料ニッケル粉末の粒径の変動係数が異なるが、これらの条件で得られた板状ニッケル粉では、厚さの変動係数が大きく異なり、さらにこれらを用いた乾燥後の内部電極膜では、表面粗さが大きく異なる。
この関係を図5に示す。図5は、板状ニッケル粉の厚さの変動係数と乾燥後の内部電極膜の中心線平均粗さ(Ra)の関係を表す。これより、板状ニッケル粉の厚さの変動係数が小さい程、乾燥後の内部電極膜の表面が平滑になることが分かる。すなわち、板状ニッケル粉の製造において、所定の平均粒径と粒径の変動係数を有する原料ニッケル粉末を用いることと、所定の固液比を用いることにより、板状ニッケル粉の厚さの変動係数が小さい板状ニッケル粉が得られ、これを用いた乾燥後の内部電極膜の表面が平滑になることが分かる。
以上より明らかなように、本発明の板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとそれらの製造方法、並びにそれらを用いた導電性ペーストは、電子部品用材料として用いる、特に、小型化・多層化が著しい積層セラミックコンデンサ内部電極の形成のために用いられる導電性ペーストの原料として好適に使用することができる板状ニッケル粉及び板状ニッケル粉有機スラリーとその効率的な製造方法である。さらに、導電性塗料等の分野にも用いる板状ニッケル粉としても有用である。
板状ニッケル粉のアスペクト比と乾燥膜の膜密度の関係の一例を表す図である。 乾燥膜の表面粗さの測定チャート図である。(実施例1) 乾燥膜の表面粗さの測定チャート図である。(実施例3) 乾燥膜の表面粗さの測定チャート図である。(比較例2) 板状ニッケル粉の厚さの変動係数と、乾燥後の内部電極膜の中心線平均粗さ(Ra)の関係を表す図である。(実施例1、2、比較例3〜6)

Claims (12)

  1. 下記の(1)〜(3)の要件を満足することを特徴とする板状ニッケル粉。
    (1)平均厚さは、0.02〜0.14μmである。
    (2)厚さの変動係数は、0.45以下である。
    (3)平均粒径は、0.2〜1.5μmである。
  2. さらに、下記の(4)の要件を満足することを特徴とする請求項1に記載の板状ニッケル粉。
    (4)粒径の変動係数は、0.5以下である。
  3. さらに、下記の(5)の要件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の板状ニッケル粉。
    (5)アスペクト比は、3〜15である。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の板状ニッケル粉と有機溶剤とを用いてなる板状ニッケル粉有機スラリー。
  5. さらに、分散剤を含むことを特徴とする請求項4に記載の板状ニッケル粉有機スラリー。
  6. 前記分散剤は、不飽和脂肪族カルボン酸であることを特徴とする請求項5に記載の板状ニッケル粉有機スラリー。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の板状ニッケル粉と、樹脂及び溶剤とを用いてなる導電性ペースト。
  8. 原料原料ニッケル粉末と分散媒とからなるスラリー(A)を形成し、該スラリー(A)を粉砕メディアの共存下に高速流動処理に付し、次いで、粉砕メディアを分離した後に、得られたスラリー(B)を固液分離することにより、板状ニッケル粉を製造する方法であって、
    下記の(a)〜(c)の要件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の板状ニッケル粉の製造方法。
    (a)前記スラリー(A)中の原料ニッケル粉末と分散媒の固液比は、質量比で0.05〜0.5である。
    (b)前記原料ニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmである。
    (c)前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、0.4以下である。
  9. 前記原料ニッケル粉末は、塩化ニッケルのヒドラジン還元により合成した原料ニッケル粉末であることを特徴とする請求項8に記載の板状ニッケル粉の製造方法。
  10. 前記分散媒は、水であることを特徴とする請求項8又は9に記載の板状ニッケル粉の製造方法。
  11. 原料ニッケル粉末と、水又は水及び水に溶解する有機溶剤を混合した水系溶媒とからなるスラリー(C)を形成し、該スラリー(C)を粉砕メディアの共存下に高速流動処理に付し、板状ニッケル粉を生成し、次いで、粉砕メディアを分離して得られたスラリー(D)に、さらに有機溶剤及び分散剤を混合撹拌し、該板状ニッケル粉が該有機溶剤中に移行して分散した有機スラリーと、水又は水及び水に溶解する有機溶剤を混合した水系溶媒とを形成することにより、板状ニッケル粉有機スラリーを製造する方法であって、
    下記の(a´)〜(c)の要件を満足することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法。
    (a´)前記スラリー(C)中の原料ニッケル粉末と、水又は水及び水に溶解する有機溶剤を混合した水系溶媒との固液比は、質量比で0.05〜0.5である。
    (b)前記原料ニッケル粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmである。
    (c)前記原料ニッケル粉末の粒径の変動係数は、0.4以下である。
  12. 前記分散剤は、不飽和脂肪族カルボン酸であることを特徴とする請求項11に記載の板状ニッケル粉有機スラリーの製造方法。
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