JP2009012467A - 相変化インクを使用する長尺ウェブ印刷用インクジェットプリンタ - Google Patents

Abstract

【課題】相変化インクを使用する長尺ウェブ印刷用インクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】スプール１０に巻かれているウェブＷを、その下流にあるローラ１２等を介して経路（プロセス方向Ｐ）沿いに印刷部２０に送り、印刷部２０内のプリントヘッド２１Ａ〜２１Ｄ（１個でもよい）を用いそのウェブＷ上に相変化インクを被着させる。スプール１０と印刷部２０の間にはウェブＷを所定の予熱温度まで予熱する予熱器１８があり、印刷部２０内にはウェブＷの温度を所定のインク受入温度域内で保つ手段例えば裏打ち材２４Ａ〜２４Ｄがある。印刷部２０内におけるウェブＷの温度を、プリントヘッド２１Ａ〜２１Ｄによる各色インク順次被着を好適に行えるように、制御することができる。
【選択図】図１

Description

本発明はインクジェット印刷、特に長尺ウェブ（substantially continuous web）上への相変化インク（phase-change ink）によるインクジェット印刷に関する。

インクジェット印刷システムでは多くの場合直接印刷方式か間接刷方式（オフセット印刷方式）が使用される。特許文献２（特許権者：本願出願人）には相変化インクを用いたオフセット印刷の例が、特許文献５、７及び１１にはインクジェット方式で印刷された画像を加圧する例が、特許文献１、３、６、９及び１０には長尺ウェブ用インクジェット印刷システムの例が、それぞれ示されている。

米国特許第５３４５８６３号明細書 米国特許第５３８９９５８号明細書 米国特許第５４０６３１５号明細書 米国特許第５７７４１５５号明細書 米国特許第５７７７６５０号明細書 米国特許第５７９３３９８号明細書 米国特許第６１１３２３１号明細書 米国特許第６１９６６７５号明細書（Ｂ１） 米国特許第６３６１２３０号明細書（Ｂ１） 米国特許第６４８５１４０号明細書（Ｂ１） 米国特許第６４９４５７０号明細書（Ｂ１）

本発明の目的は、相変化インクを使用する長尺ウェブ印刷用インクジェットプリンタ、特にその印刷を好適に行えるものを提供することにある。

このような目的を達成するため、本発明の一実施形態に係る印刷装置は、経路沿いに媒体を送る手段と、その媒体の温度を所定の予熱温度にする予熱器と、上記経路に沿って予熱器より下流に配置された印刷部と、を備える。その印刷部は、上記媒体に相変化インクを被着させる１個又は複数個のプリントヘッドと、その媒体の温度を所定のインク受入温度域内で保つ手段と、を有する。

図１に、直接印刷方式長尺ウェブ用相変化インクプリンタの概略立面を示す。このプリンタで使用する媒体は、紙、プラスチック等の印刷向け素材からなる長尺な（即ち実質的に途切れがない）ウェブＷである。ウェブＷはスプール１０に巻かれて装填されており、必要に応じスプール１０から引き出され、図示しない種々のモータによってプリンタ内に送られていく。引き出されて所定の経路沿いに運ばれていくウェブＷは、一組のローラ１２によってぴんと張った状態に保たれまたその張り具合が調節される。

その下流にあるプレヒータ即ち予熱器１８は、印刷に先立ちウェブＷの温度を所定の予熱温度まで加熱する。この加熱は接触、輻射、伝熱、対流等の方式で行い、その目標となる予熱温度は例えば約３０〜７０℃の範囲内で設定する。

ウェブＷはその下流の印刷部２０に入っていく。印刷部２０には一組のプリントヘッド２１（図中、２１Ａ〜２１Ｄ）が設けられている。各プリントヘッド２１はウェブＷのほぼ全幅をカバーするようウェブ横断方向に沿って延びており、また動いているウェブＷ上に直接即ち中間転写部材を介さずインクを被着させうるよう構成、配置されている。また、各プリントヘッド２１はいずれかの成分色（例えば四色のうち一色）を担当しており、画像伝送路２２経由で受け取った画像データに基づき、自分が担当する色の成分色画像を形成する。自明な通り、こうして複数の成分色画像をウェブＷ上の同一部位に重ねて形成することで、その画像データによって表されているフルカラー画像をウェブＷ上に形成することができる。なお、各プリントヘッド２１を単線状のリニアアレイにすること、同一の成分色を複数個のプリントヘッド２１に担当させること、同じ色を担うプリントヘッド２１同士でその位置をプロセス方向Ｐに沿ってずらすこと、その全体又は一部をプロセス方向Ｐと交差する方向に沿って動かしスポット色印刷を行えるようにプリントヘッド２１を実装すること等も可能である。

本実施形態でウェブＷ上に被着させるインクは相変化インクである。相変化インクは室温でほぼ固体であるので、ウェブＷに向け吐出する前に液化させる必要がある。相変化インクとしては、現在広く用いられているタイプのもの、即ち約１００〜１４０℃まで加熱すると液相になるものを使用するとよい。一般的に言って、ウェブＷに向け吐出されたインクは、ウェブＷに射突した直後から冷め始める。

各プリントヘッド２１に対応して設けられているバー状又はローラ状の部材はバッキング即ち裏打ち材２４（図中、２４Ａ〜２４Ｄ）である。裏打ち材２４は、対応するプリントヘッド２１とは逆側からウェブＷに面するよう配置されている。ウェブＷの位置は各裏打ち材２４によって規制されており、その位置規制によりプリントヘッド２１とウェブＷの間隔が所定距離に保たれている。各裏打ち材２４はその温度を制御できるよう構成されており、ウェブＷのうち裏打ち材２４の近くを通っている部分の温度が所定のインク受入温度例えば約４０〜６０℃の域内で設定した温度より低くなることを、その温度制御によって防ぐことができる。例えば、裏打ち材２４の内部に加熱素子や液体通流用空洞を設けて温度を制御するようにしてもよいし、気体例えば空気をウェブＷの一部分に流し（送り込み又は吸い出し）その気流を以てその部分の裏打ち“材”２４として使用してもよい。予熱器１８による予熱に加えて、裏打ち材２４の温度を所定の目標温度に保つことは、印刷部内ウェブ温度を所定の温度域例えば約４５〜６５℃の域内に保つのに役に立つ。

また、印刷部２０内に運ばれてきたウェブＷ上に様々な色のインクを順次被着させて画像を形成するには、印刷部内ウェブ温度ばらつきを所定程度以下に抑える必要がある。即ち、吐出されるインクの温度はその被着先たるウェブＷの温度よりかなり高く、インクが被着すると普通は被着個所周辺のウェブ形成素材（紙等）が昇温するので、印刷部内ウェブ温度ばらつきを所望限度内に抑えるには、印刷部２０内でウェブＷに接触又は接近する物体の挙動を然るべく調整する必要がある。印刷部内ウェブ温度は、裏打ち材２４の作用だけでなく例えばウェブＷの表面又は背面に流れる空気の温度や流速によっても大きく左右されるので、印刷部内ウェブ温度を制御する際にはそうした要素も考慮すべきである。即ち、例えばウェブＷの背面に空気を流すエアブロワやファンを印刷部２０に設け、それによって印刷部内ウェブ温度を調節するのが望ましい。

こうして印刷部内ウェブ温度をほぼ均一化すること、即ちプリントヘッド２１から吐出されるインクの被着による印刷部内ウェブ温度ばらつきを概ねなくすことは、形成される画像の品質を確保する上で有益である。とりわけ、ウェブ横断方向（幅方向）例えばクロスプロセス方向に沿ったインクの延び即ちスプレッドや、ウェブＷ内へのインクの浸透度即ちペネトレーションを安定化する上で、この温度均一性は重要である。使用するインク及びウェブＷの熱特性にもよるが、裏打ち材２４を制御せず専らウェブＷの予熱で温度均一性を実現するやり方でも、また印刷部内ウェブ温度ばらつきがほとんどなくなるよう各裏打ち材２４を互いに別々の温度に制御するやり方でも、こうした温度均一性を実現することができる。裏打ち材個別制御等を実現するには、例えば、図示しない温度センサによってウェブＷの温度を検知し制御するシステムと共に、各時点で各プリントヘッド２１から吐出されウェブＷに被着する各色インクの量を計測し又は画像データ等に基づき推量するシステムを設けるのが望ましい。裏打ち材個別制御に際しては、各裏打ち材２４に対応するプリントヘッド２１からの入力データだけでなく、印刷部２０内に存する他のプリントヘッド２１からの入力データも使用するとよい。

印刷部２０から出たウェブＷは、その下流にある一組のテンションローラ２６を通って、更にその下流にある１個又は複数個のミッドヒータ即ち中間加熱器３０に入っていく。中間加熱器３０は接触、輻射、伝熱、対流等の加熱方式によってウェブＷを加熱し目標温度まで昇温させる。その目標温度は例えば約３５〜８０℃の温度域内にするのが望ましい。中間加熱器３０でウェブＷを加熱することによって、ウェブＷ上のインクの温度を適切な温度、即ち圧延器４０を通る際にウェブＷ上のインクが有しているべき温度にすることができ、またインク・ウェブＷ間の温度差を約１５℃以内に抑えることができる。なお、ウェブＷ及びインクを中間加熱器３０で後述の圧延器温度より０〜２０℃高い温度にするのは、インク温度が低すぎるとラインをうまく押し延ばせなくなり、高すぎると印刷した画像が裏側から透けて見える印刷物になってしまうからである。

中間加熱器３０を出たウェブＷはその下流にあるスプレッダ即ち圧延器４０に入り、その圧延器４０によって所定の圧力で加圧（及び加熱）される。圧延器４０の役目は、隣接インク滴間の隙間が埋まり画像中の塗りつぶし部分が均質になるよう、ウェブＷにしっかりと付着していないインク滴を加圧（及び加熱）によってウェブＷ上に塗りつけ、インク層の途切れを減らすことである。圧延器４０を使用することによって、こうしてインクを押し延ばすことだけでなく、インク層の凝集度やインク・ウェブＷ間接着度を高めて画質を向上させることもできる。また、圧延器４０はローラによってウェブＷを加圧（及び加熱）する構成にするとよい。図示例では像側ローラ４２及び加圧ローラ４４を使用してウェブＷを加圧している。ウェブＷを加熱するなら、いずれかのローラに加熱素子（図示例では４６）を組み込み、例えば約３５〜８０℃の域内の温度まで加熱するとよい。

この圧延器内ローラ温度はとりわけ約５５℃に保つのが望ましい。それは、圧延器内ローラ温度が低すぎるとラインをうまく押し延ばせず高すぎると光沢欠陥が発生する傾向があるからである。圧延器内ローラ温度が５７℃より高い場合、インクがローラ上に転写されることもある。また、圧延器内ローラの間隙で発生させる圧力は、例えば約５００〜２０００ｐｓｉにするとよい（１ｐｓｉ＝約６８９５Ｐａ）。この圧力が低すぎるとラインをうまく押し延ばせず高すぎるとローラ寿命が短くなる。

圧延器４０には、更に、ローラ表面に清掃を施しまた物質層例えば潤滑層の形成処置を施す清掃潤滑部４８を設けるとよい。図示例では像側ローラ４２側に清掃潤滑部４８を設けている。清掃潤滑部４８にて圧延器内ローラ表面に層をなすよう被着させる潤滑剤は、例えばその粘度が約１０〜２００センチポイズのアミノシリコーンオイルである。ウェブＷによって運び去られる潤滑剤の量がＡ４用紙１枚分当たり約１〜１０ｍｇと僅かであるので、使用する潤滑剤の量も僅かですむ。

更に、中間加熱器３０と圧延器４０を単一ユニット化し、ウェブＷ上の同一部位に対し両者の機能を同時に発揮させるようにしてもよい。

そして、本実施形態のプリンタでは、画像の光沢を調整するグロッサ即ち光沢器５０が圧延器４０の下流に設けられている。但し、これを省いた形態で本発明を実施することもできる。光沢器５０は、圧延器４０によって押し延ばされた直後のインクに適当な温度及び圧力を加えその光沢状態を所望の状態にする部材であり、２個のローラ即ち像側ローラ５２及び加圧ローラ５４から構成されている。ウェブWはローラ５２とローラ５４の間隙に通されるので、いずれかのローラの表面に適当なテキスチャを形成しておくことで、ユーザが望む模様をインク層の表面に刻印することができる。圧延器４０における制御目標温度が約３５〜８０℃であるなら、光沢器５０における制御目標温度は約３０〜７０℃にするとよい。

圧延器４０及び光沢器５０を構成するローラのうち像側ローラ４２及び５２は、ウェブＷのインク被着面に接触するので十分な硬度が必要であり、従って陽極酸化アルミニウム等によって形成するのが望ましい。対するに、加圧ローラ４４及び５４としてはより硬度が低いものを使用する。そのデュロメータ値は約５０〜６５Ｄ程度でよく、弾性係数は約６５〜１１５ＭＰａ程度でよい。また、加圧ローラ４４及び５４には薄いエラストマ被覆を設けるとよい。例えばエラストマやラバーの層を有する単層型又は多層型加圧ローラなら、有効弾性係数を約５０〜２００ＭＰａの範囲内にすることができる。

圧延器４０内温度及び光沢器５０内温度は、いずれも、その時々の動作状態や必要とされる印刷（物）属性に応じ且つ図示しない制御システムによって、所望の光沢が得られるよう詳細に調整、制御するとよい。

圧延器４０内及び光沢器５０内でローラ対がウェブＷに加える圧力は、例えば約５００〜２０００ｐｓｉの範囲内にするとよい。インク組成が柔軟性に富んでおり高い圧力を加えると延びすぎるような場合には、インク組成に応じ圧力を調整するのが望ましい。また、光沢器５０内にある像側ローラ５２の表面テキスチャを様々に変えてインク表面にそれを刻印する際には、その刻印がうまくいくよう温度や圧力を高めにするとよい。

なお、本件技術分野において習熟を積まれた方々（いわゆる当業者）にはご理解頂ける通り、温度や圧力を加えることによってインクを押し延ばす手法は、そのインクがそれにふさわしい形態乃至組成及び熱特性を有している場合に有効である。例えば相変化インクではなく溶剤ベースや水ベースのインクを用い上記同様の構成のプリンタで印刷を行ったとしたら、ウェブW上に被着したインク滴が滴のままでいることは少なく、通常は自然に延び広がって滑らかな層を形成するので、溶剤ベースや水ベースのインクでは圧延器４０等の部材の効果がはっきりしない。同様に、例えば繊維製の編み物や織布等のような概ね多孔質の媒体にインク乃至染料を被着させそれを圧延器４０に通したとしたら、そのインクは圧延器４０によってその媒体例えば布から絞り出されてしまうので、その種の媒体及びインクに関する先行技術は本発明と相容れない。即ち、これらの論拠を含め種々の論拠によって裏付けられる通り、溶剤ベースや水ベースのインクを種々のウェブ上に被着させる従来技術は、本発明とは相容れないものである。

また、圧延器４０や光沢器５０を通過したウェブW即ちその片面への印刷が済んだウェブWは、必要なら再びプリンタに通して裏面に画像を印刷した上で、頁毎に切断して図示しないバインディング等の処置に供する。更に、実質的に途切れのない長尺ウェブW上への印刷を例として説明を行ったが、本発明はカットシート向け印刷システムにも同様に適用することができる。そして、予熱器１８、中間加熱器３０、圧延器４０等の設定温度は、使用する媒体例えばウェブWの種類、重量等に応じて定めるとよい。

直接印刷方式長尺ウェブ用相変化インクプリンタの概略立面図である。

符号の説明

１０ スプール、１２，２６，４２，４４，５２，５４ ローラ、１８ 予熱器、２０ 印刷部、２１Ａ〜２１Ｄ プリントヘッド、２２ 画像伝送路、２４Ａ〜２４Ｄ 裏打ち材、３０ 中間加熱器、４０ 圧延器、４６ 加熱素子、４８ 清掃潤滑部、５０ 光沢器、Ｐ プロセス方向、Ｗ ウェブ。

Claims (4)

1. 経路沿いに媒体を送る手段と、その媒体の温度を所定の予熱温度にする予熱器と、上記経路に沿って予熱器より下流に配置された印刷部と、を備え、
   上記印刷部が、上記媒体に相変化インクを被着させる１個又は複数個のプリントヘッドと、その媒体の温度を所定のインク受入温度域内で保つ手段と、を有する印刷装置。
2. 請求項１記載の印刷装置であって、上記予熱温度が約３０〜７０℃の範囲内である印刷装置。
3. 請求項１記載の印刷装置であって、上記印刷部が、上記プリントヘッドとは逆側から上記媒体に面する裏打ち材を有し、その媒体の温度が上記インク受入温度域より低くなることをその裏打ち材によって防ぐ印刷装置。
4. 請求項３記載の印刷装置であって、上記インク受入温度域が約４０〜６０℃の範囲であり、上記相変化インクを約１００〜１４０℃の温度にして上記媒体に被着させる印刷装置。

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