JP2009011991A - 塗料スラッジ分離装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗料スラッジの回収効率を向上させることができ、しかも小型化を図ることができる塗料スラッジ分離装置を提供すること。
【解決手段】塗料スラッジ分離装置10は分離槽21及び仕切板25を備える。分離槽21は、廃液A1を貯留する処理部22の上流側に注液部23を有し、処理部22の下流側に排液部24を有する。仕切板25は、分離槽21内において上流側から下流側に向かって多段状にかつ所定の間隔を隔てて配置される。第1処理状態では、廃液A1の深層部の流速が表層部の流速よりも速くなるとともに、塗料スラッジS1が仕切板25を乗り越えて下流側に通過できなくなる。第2処理状態では、塗料スラッジS1が仕切板25を乗り越えて下流側に通過可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、塗装ブースから回収された廃液を貯留し、廃液の液面に塗料スラッジを浮上させて分離除去する塗料スラッジ分離装置に関するものである。
通常、塗装ブースから回収された廃液には塗料が大量に含まれているため、廃液を再利用するためには塗料を十分に取り除く必要がある。そこで、廃液にキラー剤と呼ばれる薬剤を投入して、塗料が凝集した塗料スラッジ(塗料粕等)を生成した後、生成した塗料スラッジを除去することが一般的に行われている。塗料スラッジを除去する従来技術の一例としては、廃液を分離槽に貯留し、廃液の液面に塗料スラッジを浮上させて分離除去する塗料スラッジ分離装置が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。例えば図3に示されるように、塗料スラッジ分離装置100は、廃液を分離槽101から塗装ブース102に供給する循環ポンプ103と、廃液の液面に浮上した塗料スラッジ104を自動回収するスラッジ回収装置105と、塗料スラッジ104をスラッジ回収装置105に送り込む回収ポンプ106とを備えている。
特開平6−154729号公報(図1など)
ところが、図6に示される分離槽101では、廃液の表層部の流速(0.5m/秒〜1.0m/秒)が深層部の流速(0.1m/秒程度)よりも速くなる傾向にある。その結果、廃液が分離槽101を通過するまでの間に廃液の液面に塗料スラッジ104を浮上させることが困難になるため、分離槽101内の塗料スラッジ104の滞留時間を長くしなければならない(8〜10分)。ゆえに、塗料スラッジ104の回収効率が低下してしまう。しかも、塗料スラッジ104を含んだままの廃液が塗装ブース102に供給されてしまい、液全体が汚染される可能性がある。仮に、塗料スラッジ104が廃液の液面まで浮上したとしても、表層部を流れる廃液の勢いに負けて塗料スラッジ104が壊れてしまい、廃液を濁らせてしまう可能性が高い。
また、廃液の深層部の流速が表層部の流速よりも遅いため、比重の大きい塗料スラッジが分離槽101の底部に沈殿しやすい。ゆえに、塗料スラッジ104の回収効率が低下してしまう(50〜60%)。なお、沈殿した塗料スラッジ104は、分離槽101の底部に堆積していくため、塗料スラッジ104を定期的(例えば6ヶ月〜1年ごと)に回収しなければならない。その結果、人件費が高くなるため、塗装コストが高くなるという問題がある。なお、塗料スラッジ104の回収方法としては、例えば廃液内にエア(気泡)を含有させて、そのエアを塗料スラッジ104に付着させ、塗料スラッジ104を浮上させる方法がある。また、廃液内にキラー剤等の薬剤を注入して廃液中の塗料を凝集させ、結果として生成された塗料スラッジ104を浮上させる方法もある。
さらに、上記の従来技術では、分離槽101とスラッジ回収装置105との2段階で塗料スラッジ104を回収しているため、塗料スラッジ分離装置100の設置面積が大きいという問題がある。しかも、上記のようにスラッジ回収装置105及び回収ポンプ106を使用して塗料スラッジ104を回収する場合、回収効率を長期に亘って維持することが困難であるため、設備(回収ポンプ106など)の清掃や整備等を頻繁に行う必要がある。その結果、人件費が高くなり、しかも被塗物の塗装効率が低下するため、塗装コストが高くなるという問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料スラッジの回収効率を向上させることができ、しかも小型化を図ることができる塗料スラッジ分離装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被塗物を塗装するための塗装ブースから回収された廃液を貯留し、前記廃液の液面に塗料スラッジを浮上させて分離除去する塗料スラッジ分離装置であって、前記廃液を貯留する処理部の上流側に注液部を有し、前記処理部の下流側に排液部を有する分離槽と、前記分離槽内において上流側から下流側に向かって多段状にかつ所定の間隔を隔てて配置された複数の仕切板とを備え、前記廃液の液面が前記複数の仕切板の上端よりも低い位置にある第1処理状態では、前記廃液の深層部の流速が表層部の流速よりも速くなるとともに、前記塗料スラッジが前記複数の仕切板を乗り越えて下流側に通過できなくなり、前記廃液の液面が前記複数の仕切板の上端よりも高い位置にある第2処理状態では、前記塗料スラッジが前記複数の仕切板を乗り越えて下流側に通過可能となるように構成したことを特徴とする塗料スラッジ分離装置をその要旨とする。
従って、請求項1に記載の発明によると、第1処理状態で廃液の表層部の流速が深層部の流速よりも遅くなるため、廃液が分離槽を通過するまでの間に塗料スラッジを確実に浮上させることができる。しかも、廃液の表層部の流速が遅くなって勢いが弱められた結果、液面に浮上した塗料スラッジが壊れにくくなるため、塗料スラッジを効率良く除去できる。また、廃液の深層部の流速が速くなることで、塗料スラッジが分離槽の底部に沈殿しにくくなるため、塗料スラッジの回収効率が向上する。その結果、分離槽の清掃や整備等をあまり行わなくても済み、人件費を削減できるため、塗装コストが低減される。さらに、塗料スラッジの回収効率が向上することで分離槽の小型化が可能となり、しかも塗料スラッジを回収する回収装置が不要となるため、塗料スラッジ分離装置の小型化を図ることができる。
上記発明において、前記複数の仕切板の下端部に、上流側から下流側に向けて前記廃液を通過させる連通部を設けることが好ましい(請求項3)。このようにすれば、仕切板の下端部が抜けた形状となるため、廃液が深層部において流れやすくなる。よって、塗料スラッジの沈殿をより確実に防止できる。
また、前記処理部と前記排液部とを隔てるとともに、その上端が前記複数の仕切板の上端よりも高い位置に配置された下流側隔壁を備え、前記第2処理状態では前記廃液の液面を前記下流側隔壁の上端よりも低くすることが好ましい(請求項5)。このように構成すれば、廃液の液面に浮上し、複数の仕切板を乗り越えて下流側に通過した塗料スラッジを、下流側隔壁で止めることができる。その結果、塗料スラッジが下流側隔壁付近に集まるため、集まった塗料スラッジをひとまとめに除去することができる。
なお、前記第1処理状態では、前記廃液の表層部の流速が0.05m/秒未満となり、深層部の流速が0.05m/秒以上となることが好ましい(請求項4)。仮に、廃液の表層部の流速が0.05m/秒以上となると、塗料スラッジを廃液の液面に浮上させることが困難になる。また、深層部の流速が0.05m/秒未満となると、塗料スラッジが分離槽の底部に沈殿しやすくなる。
ところで、上記塗料スラッジ分離装置は、前記分離槽内に貯留された廃液を排出させる廃液排出手段を有していてもよい。この場合、前記廃液排出手段による排出量を増加させて前記廃液の液面を下降させるとともに、前記廃液排出手段による排出量を減少させて前記廃液の液面を上昇させる液面昇降手段を備えることが好ましい(請求項2)。この構成によれば、廃液の液面を確実に上昇または下降させることができるため、第1処理状態及び第2処理状態に移行させる制御を確実に行うことができる。
上記の内容は、前記分離槽内に貯留された廃液を排出させる廃液排出手段を有する場合を示しているが、その代わりに、前記分離槽内に廃液を注入する廃液注入手段を有していてもよい。この場合、前記廃液注入手段による注入量を増加させて前記廃液の液面を上昇させるとともに、前記廃液注入手段による注入量を減少させて前記廃液の液面を下降させる液面昇降手段を備えることが好ましい。この構成によれば、塗料スラッジ分離装置が廃液排出手段を有する場合と同様の効果を得ることができる。
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、塗料スラッジの回収効率を向上させることができ、しかも小型化を図ることができる塗料スラッジ分離装置を提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示されるように、塗料スラッジ分離装置10は、塗装ブース11から回収された廃液A1を分離槽21内に貯留し、廃液A1の液面A2に塗料スラッジS1を浮上させて分離除去する装置である。なお、塗装ブース11内では、図示しない塗装機により被塗物(自動車ボディなど)が塗装される。そして、被塗物に付着しなかった塗料は、洗浄液によって捕捉され、洗浄液が廃液A1となる。
また、塗料スラッジ分離装置10は、塗装ブース11と分離槽21内との間を連通しうる回収経路12及び供給経路13を備えている。供給経路13上には、廃液排出ポンプ14(廃液排出手段)及び廃液排出バルブ15が設置されている。廃液排出ポンプ14は、分離槽21内に貯留された廃液A1を、塗料スラッジS1を除去した状態の洗浄液にして排出させ、供給経路13を介して塗装ブース11側に供給するようになっている。さらに、廃液排出ポンプ14は、塗装ブース11から回収した廃液A1を、回収経路12を介して分離槽21内に貯留させるようになっている。廃液排出バルブ15は、廃液排出ポンプ14の下流側に配置されており、供給経路13を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。廃液排出バルブ15は、開状態に切り替えられた際に、塗装ブース11内に洗浄液を供給可能とするようになっている。なお、本実施形態の廃液排出バルブ15は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
図1に示されるように、塗料スラッジ分離装置10は、長さ10.0m×幅4.0m×高さ3.0mの略直方体状に形成された分離槽21を備えている。分離槽21の槽底部21aは閉塞され、分離槽21の槽上部は開口されている。分離槽21は、廃液A1を貯留する処理部22と、処理部22の上流側に位置する注液部23と、処理部22の下流側に位置する排液部24とを有している。処理部22内には、複数枚(本実施形態では3枚)の仕切板25が配置されている。各仕切板25は、分離槽21内の上流側(図1では右側)から下流側(図1では左側)に向かって多段状にかつ等間隔に配置されるとともに、それぞれ分離槽21の側壁21bと平行に配置されている。本実施形態において、各仕切板25の上端の高さ(槽底部21aから仕切板25の上端までの距離)は、1.6mに設定されている。また、各仕切板25の下端部には、上流側から下流側に向けて廃液A1を通過させる連通孔26(連通部)が設けられている。
なお、廃液A1の液面A2は、各仕切板25の上端よりも低い位置となる第1処理状態と、各仕切板25の上端よりも高い位置となる第2処理状態とに変化するようになっている。本実施形態において、第1処理状態での液面A2の高さ(槽底部21aから液面A2までの距離)は1.5mとなり、第2処理状態での液面A2の高さは1.7mとなる。また、第1処理状態での分離槽21内の廃液A1の水量は60mとなり、第2処理状態での分離槽21内の廃液A1の水量は68mとなる。
図1に示されるように、分離槽21内には、前記処理部22と前記排液部24とを隔てる下流側隔壁27が設けられている。下流側隔壁27は、各仕切板25と平行に配置されている。下流側隔壁27の上端は、各仕切板25の上端よりも高い位置に配置されており、下流側隔壁27の上端の高さ(槽底部21aから下流側隔壁27の上端までの距離)は、1.8mに設定されている。従って、各仕切板25間にある塗料スラッジS1は、第2処理状態となる場合に、下流側隔壁27付近(下流側隔壁27の上流側)に集まるようになる(図2参照)。また、下流側隔壁27の中央部には、処理部22側から排液部24側に向けて廃液A1を通過させる貫通孔29が設けられている。
さらに、分離槽21内には、処理部22と前記注液部23とを隔てる上流側隔壁28が設けられている。上流側隔壁28は、注液部23内の廃液A1が乗り越えて処理部22側に通過する際に、廃液A1を整流するようになっている。上流側隔壁28は、各仕切板25及び下流側隔壁27と平行に配置されている。上流側隔壁28の上端は、各仕切板25の上端や下流側隔壁27の上端よりも低い位置に配置されており、上流側隔壁28の上端の高さ(槽底部21aから上流側隔壁28の上端までの距離)は、1.0mに設定されている。
図1に示されるように、塗料スラッジ分離装置10は、キラー剤、助剤、pH調整剤などの薬剤を分離槽21内に注入する薬剤注入装置31を備えている。ここで、キラー剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化鉄等の無機系凝集剤や、ポリエチレンイミン等のカチオン系高分子凝集剤などを用いることが好ましい。助剤としては、ポリアクリル剤、ポリアクリルアミド等のアニオン系高分子凝集剤などを用いることが好ましい。pH調整剤としては、苛性ソーダ、消石灰、硫酸などを用いることが好ましい。
また、分離槽21には液面計32が設置されている。液面計32は、分離槽21内に貯留された廃液A1の液面A2の高さを測定して、液面測定信号を出力するようになっている。なお、本実施形態の液面計32は、静電容量式の液面計であるが、例えばフロート式、超音波式、圧力式の液面計であってもよい。
次に、塗料スラッジ分離装置10の電気的構成について説明する。
図1に示されるように、塗料スラッジ分離装置10は、設備全体を統括的に制御するための制御装置41を備えている。制御装置41は、CPU42、ROM43、RAM44、入出力回路等により構成されている。CPU42は、廃液排出ポンプ14及び廃液排出バルブ15に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
また、CPU42には、前記液面計32から出力された液面測定信号が入力されるようになっている。そして、CPU42は、液面測定信号が示す廃液A1の液面A2の高さに基づき、各種制御を行うようになっている。具体的に言うと、第1処理状態から第2処理状態に変化させる場合、CPU42は、廃液排出ポンプ14に駆動信号を出力し、廃液排出ポンプ14の出力を低下させる制御を行う。これにより、廃液排出ポンプ14による廃液A1の排出量が減少し、廃液A1の液面A2が上昇する。そして、液面測定信号が示す液面A2の高さが1.7mになると、CPU42は、廃液排出ポンプ14に駆動停止信号を出力し、廃液排出ポンプ14を停止させる制御を行う。それと同時に、CPU42は、廃液排出バルブ15に駆動信号を出力し、廃液排出バルブ15を閉状態に切り替える制御を行う。
一方、第2処理状態から第1処理状態に変化させる場合、CPU42は、廃液排出バルブ15に駆動信号を出力し、廃液排出バルブ15を開状態に切り替える制御を行う。それとともに、CPU42は、廃液排出ポンプ14に駆動信号を出力し、廃液排出ポンプ14の出力を増大させる制御を行う。これにより、廃液排出ポンプ14による廃液A1の排出量が増加し、廃液A1の液面A2が下降する。即ち、CPU42は『液面昇降手段』としての機能を有している。そして、液面測定信号が示す液面A2の高さが1.5mになると、CPU42は、廃液排出ポンプ14に駆動信号を出力し、廃液排出ポンプ14の出力を低下させる制御を行う。
次に、上記実施形態の塗料スラッジ分離装置10を用いて塗料スラッジS1を分離除去する方法を説明する。
まず、廃液排出バルブ15の切り替えや廃液排出ポンプ14の駆動などを行い、第1処理状態に変化させる。そして、廃液排出ポンプ14により、塗装ブース11から回収された廃液A1を、回収経路12を介して分離槽21の注液部23内に注入させる。なお、廃液A1は、注液部23内に落下する際に空気を巻き込むため、廃液A1には気泡が含まれるようになる。また、薬剤注入装置31から分離槽21内に薬剤を注入し、薬剤を廃液A1に添加させる。その結果、廃液A1中の塗料が凝集して塗料スラッジS1が形成されるとともに、塗料スラッジS1に気泡が付着する。
その後、注液部23内の廃液A1は、上流側隔壁28を乗り越えて処理部22内に到達する。さらに、廃液A1は、各仕切板25に設けられた連通孔26を上流側から下流側に向かって通過する。そして、廃液A1に含まれる塗料スラッジS1は、付着した気泡の浮力により、廃液A1の液面A2に浮上する。なお、このときの液面A2は、各仕切板25の上端よりも低い位置にあるため(即ち第1処理状態であるため)、浮上した塗料スラッジS1が仕切板25を乗り越えて下流側に通過できなくなっている。また、廃液A1の深層部の流れは連通孔26を通過する際に速くなり、廃液A1の表層部の流れは各仕切板25に妨げられて遅くなるため、廃液A1の深層部の流速(本実施形態では0.1m/秒)が表層部の流速(本実施形態ではほぼ0m/秒)よりも速くなる。従って、塗料スラッジS1が槽底部21aに溜まりにくくなる。
その後、塗料スラッジS1を除去するために第2処理状態に変化させると、液面A2が各仕切板25の上端よりも高くなるため、塗料スラッジS1は各仕切板25を乗り越えて下流側に通過可能となる。このとき、液面A2は、下流側隔壁27の上端よりも低いため、仕切板25を通過した塗料スラッジS1は下流側隔壁27付近(下流側隔壁27の上流側)に集まる。この状態で、スクレーパ51を用いて塗料スラッジS1を手回収(除去)すると、分離槽21内の廃液A1が浄化されて洗浄液になる。その結果、洗浄液が、供給経路13を介して塗装ブース11に送られて再利用される。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の塗料スラッジ分離装置10では、第1処理状態で廃液A1の表層部の流速が深層部の流速よりも遅くなる。このため、廃液A1が分離槽21を通過するまでの間に塗料スラッジS1を確実に浮上させることができ、分離槽21内の塗料スラッジS1の滞留時間が従来よりも短くなる(4〜5分)。しかも、廃液A1の表層部の流速が遅くなって勢いが弱められた結果、液面A2に浮上した塗料スラッジS1が壊れにくくなるため、塗料スラッジS1を効率良く除去できる。また、廃液A1の深層部の流速が速くなることで、顔料などを含むために比重の大きい塗料スラッジS1が分離槽21の槽底部21aに沈殿しにくくなるため、塗料スラッジS1の回収効率が向上する(95%以上)。その結果、分離槽21の清掃や整備等をあまり行わなくても済み、人件費を削減できるため、塗装コストが低減される。さらに、塗料スラッジS1を長時間滞留させなくても済むことで、分離槽21を短くして小型化することが可能となり、しかもスラッジ回収装置105(図6参照)が不要となるため、塗料スラッジ分離装置10の小型化を図ることができる。
(2)本実施形態では、廃液A1が仕切板25を通過する際に上向きの渦流が生じるため、塗料スラッジS1は、付着している気泡の浮力だけでなく、渦流の勢いの影響も受けて液面A2に浮上する。従って、塗料スラッジS1がより確実に液面A2に浮上するため、塗料スラッジS1の回収効率がよりいっそう向上する。
(3)本実施形態では、各仕切板25の下端部に連通孔26が設けられている。これにより、各仕切板25の下側を上流側から下流側に向けて流れる流路(連通孔26の部分)が狭くなるため、廃液の深層部の流速がよりいっそう速くなる。よって、塗料スラッジの沈殿をより確実に防止できる。
(4)本実施形態では、下流側隔壁27の上端部や下端部ではなく、下流側隔壁27の中央部に貫通孔29が設けられている。これにより、塗料スラッジS1が浮上している表層部の廃液A1や、塗料スラッジS1が溜まる可能性がある深層部の廃液A1ではなく、塗料スラッジS1があまり含まれていない中層部の廃液A1が、貫通孔29を通過しやすくなる。よって、排液部24から塗装ブース11に供給される廃液A1がより確実に浄化される。
(5)ところで、塗装ブース11内で作業(清掃作業など)を行っている際に、異物(スパナ、軍手など)を落としてしまうことがある。この場合、異物は、廃液A1とともに回収経路12を通過して、分離槽21内に運ばれてしまう可能性がある。しかし本実施形態では、分離槽21内に上流側隔壁28が設けられ、上流側隔壁28により注液部23と処理部22とが隔てられているため、廃液A1とともに運ばれてきた異物は、注液部23内に溜まるようになる。従って、異物の巻き込みに起因した廃液排出ポンプ14の破損などを防止することができる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、塗料スラッジS1を手回収していたが、塗料スラッジS1を自動回収してもよい。例えば図3〜図5に示されるように、下流側隔壁27の上半分を省略するとともに、省略した部分に樋61を設け、樋61によって塗料スラッジS1を回収するようにしてもよい。詳述すると、樋61は、底板62と、底板62の排液部24側の端部から上方に突出する下流側壁部63と、底板62の処理部22側の端部から上方に突出する上流側壁部64とからなっている。なお第1処理状態(図3参照)では、液面A2が上流側壁部64の上端よりも低い位置にあるため、塗料スラッジS1は上流側壁部64を乗り越えて樋61内に進入することができない。一方、第2処理状態(図4参照)では、液面A2が上流側壁部64の上端よりも高い位置にあるため、塗料スラッジS1は上流側壁部64を乗り越えて樋61内に進入可能となる。
また図5に示されるように、樋61の下流側には分離室71が設けられ、分離室71内にはフィルタ72が設けられている。フィルタ72は、メッシュフィルタであり、樋61から分離室71内に導かれた廃液A1が通過する際に、廃液A1中の塗料スラッジS1を除去するようになっている。そして、フィルタ72を通過した廃液A1は、ポンプ73によって再び分離槽21内に供給されるようになっている。なお、フィルタ72を用いる代わりに、パンチングメタルなどを用いてもよい。パンチングメタルは、板状部材に複数の貫通孔を規則的に配置することで構成される。
・上記実施形態の塗料スラッジ分離装置10は、分離槽21内に貯留された廃液A1を排出させる廃液排出手段(廃液排出ポンプ14)を有していた。しかし、廃液排出手段の代わりに、分離槽21内に廃液A1を注入する廃液注入手段(廃液注入ポンプ)を有していてもよい。この場合、廃液注入ポンプは回収経路12上に設けられる。また、CPU42は、廃液注入ポンプによる注入量を増加させて廃液A1の液面A2を上昇させる制御を行うとともに、廃液注入ポンプによる注入量を減少させて廃液A1の液面A2を下降させる制御を行う。
・上記実施形態では、廃液排出ポンプ14及び廃液排出バルブ15の制御を1つのCPU42で制御するようにしたが、各制御を別々のCPUで行うように構成してもよい。
・上記実施形態では、塗装ブース11内で塗装される被塗物として自動車ボディを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、バンパーや空力付加物(スポイラーなど)などの車両用部品を被塗物としてもよい。また、被塗物は、必ずしも車両用部品でなくてもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)請求項1において、前記分離槽内に廃液を注入する廃液注入手段を有し、前記廃液注入手段による注入量を増加させて前記廃液の液面を上昇させるとともに、前記廃液注入手段による注入量を減少させて前記廃液の液面を下降させる液面昇降手段を備えることを特徴とする塗料スラッジ分離装置。
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記処理部と前記注液部とを隔てるとともに、その上端が前記複数の仕切板の上端よりも低い位置に配置された上流側隔壁を備え、前記第1処理状態及び前記第2処理状態の両方において、前記廃液の液面を前記上流側隔壁の上端よりも高くすることを特徴とする塗料スラッジ分離装置。
(3)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記処理部と前記排液部とを隔てる下流側隔壁、及び、前記処理部と前記注液部とを隔てる上流側隔壁を備え、前記下流側隔壁の上端は前記複数の仕切板の上端よりも高く、前記上流側隔壁の高さは前記複数の仕切板の上端よりも低いことを特徴とする塗料スラッジ分離装置。
(4)被塗物を塗装するための塗装ブースから回収された廃液を貯留し、前記廃液の液面に塗料スラッジを浮上させて分離除去する方法であって、前記廃液を分離槽内に落とし込んで貯留することにより、前記塗料スラッジに気泡を付着させる貯留工程と、前記貯留工程後、前記分離槽内に凝集剤を含む薬剤を注入する薬剤注入工程と、前記薬剤注入工程後、前記分離槽内において上流側から下流側に向かって多段状にかつ所定の間隔を隔てて配置された複数の仕切板の上端よりも前記廃液の液面が低い位置にある第1処理状態において、前記廃液の液面に塗料スラッジを浮上させる塗料スラッジ浮上工程と、前記塗料スラッジ浮上工程後、前記廃液の液面が前記複数の仕切板の上端よりも高い位置にある第2処理状態において、前記塗料スラッジを、前記複数の仕切板を乗り越えて通過させて下流側に集める塗料スラッジ集約工程と、前記塗料スラッジ集約工程後、下流側に集めた塗料スラッジを除去する除去工程とを含むことを特徴とする塗料スラッジの分離除去方法。
本実施形態における塗料スラッジ分離装置の概略構成を示す断面図。 第2処理状態を説明するための断面図。 他の実施形態における塗料スラッジ分離装置の概略構成を示す断面図。 他の実施形態における第2処理状態を説明するための断面図。 樋や分離室などを示す概略断面図。 従来技術における塗料スラッジ分離装置の概略構成を示す断面図。
符号の説明
10…塗料スラッジ分離装置
11…塗装ブース
14…廃液排出手段としての廃液排出ポンプ
21…分離槽
22…処理部
23…注液部
24…排液部
25…仕切板
26…連通部としての連通孔
27…下流側隔壁
42…液面昇降手段としてのCPU
A1…廃液
A2…廃液の液面
S1…塗料スラッジ

Claims (5)

  1. 被塗物を塗装するための塗装ブースから回収された廃液を貯留し、前記廃液の液面に塗料スラッジを浮上させて分離除去する塗料スラッジ分離装置であって、
    前記廃液を貯留する処理部の上流側に注液部を有し、前記処理部の下流側に排液部を有する分離槽と、
    前記分離槽内において上流側から下流側に向かって多段状にかつ所定の間隔を隔てて配置された複数の仕切板と
    を備え、
    前記廃液の液面が前記複数の仕切板の上端よりも低い位置にある第1処理状態では、前記廃液の深層部の流速が表層部の流速よりも速くなるとともに、前記塗料スラッジが前記複数の仕切板を乗り越えて下流側に通過できなくなり、
    前記廃液の液面が前記複数の仕切板の上端よりも高い位置にある第2処理状態では、前記塗料スラッジが前記複数の仕切板を乗り越えて下流側に通過可能となるように構成した
    ことを特徴とする塗料スラッジ分離装置。
  2. 前記分離槽内に貯留された廃液を排出させる廃液排出手段を有し、前記廃液排出手段による排出量を増加させて前記廃液の液面を下降させるとともに、前記廃液排出手段による排出量を減少させて前記廃液の液面を上昇させる液面昇降手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の塗料スラッジ分離装置。
  3. 前記複数の仕切板の下端部に、上流側から下流側に向けて前記廃液を通過させる連通部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の塗料スラッジ分離装置。
  4. 前記第1処理状態では、前記廃液の表層部の流速が0.05m/秒未満となり、深層部の流速が0.05m/秒以上となることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗料スラッジ分離装置。
  5. 前記処理部と前記排液部とを隔てるとともに、その上端が前記複数の仕切板の上端よりも高い位置に配置された下流側隔壁を備え、前記第2処理状態では前記廃液の液面を前記下流側隔壁の上端よりも低くすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗料スラッジ分離装置。
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