JP2009009718A - Dlc皮膜の加工方法及び電気接点構造 - Google Patents

Dlc皮膜の加工方法及び電気接点構造 Download PDF

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【課題】高耐摩耗性を損なうことなくDLC皮膜に導電性を付与する。
【解決手段】銀やSUS304ステンレス鋼等の基体1を用意する。プラズマCVD法,スパッタリング法,PBII法等の皮膜形成方法により基体1表面に絶縁性のDLC皮膜2を形成する。DLC皮膜2表面に適当なエネルギー密度のレーザ光を部分的に照射することにより、レーザ光の照射領域にあるDLC皮膜を変質させて導電性を有するグラファイト領域3を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、DLC皮膜(非晶質カーボン皮膜)の加工方法及びこの加工方法により形成されたDLC皮膜を備える電気接点構造に関する。
従来より、DLC皮膜は、高耐摩耗性を有することから、切削工具,金型,及び摺動機械部品用の耐摩耗保護皮膜から電子機器,光学部品までの幅広い分野において利用されている。
特開平10−261712号公報
しかしながら、DLC皮膜は、絶縁体であるために、高耐摩耗性と導電性の両方の特性が必要とされる電気接点構造に適用し、電気接点構造の長寿命化を図ることは困難であった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は高耐摩耗性を損なうことなくDLC皮膜に導電性を付与可能なDLC皮膜の加工方法及びこの加工方法により形成されたDLC皮膜を備える電気接点構造を提供することにある。
本発明に係るDLC皮膜の加工方法は、基体表面にDLC皮膜を形成する工程と、DLC皮膜にレーザ光を部分的に照射することによりレーザ光の照射領域をグラファイト化する工程とを有する。本発明に係る電気接点構造は、第1の部材と第2の部材とを接触させることにより第1の部材と第2の部材を電気的に接続する電気接点構造であって、第1及び第2の部材の少なくとも一方の接触領域に、レーザ光を照射することによって部分的に形成されたグラファイト領域を有するDLC皮膜を備える。
本発明に係るDLC皮膜の加工方法及び電気接点構造によれば、導電性を有するグラファイト領域がDLC皮膜に部分的に形成されているので、高耐摩耗性を損なうことなくDLC皮膜に導電性を付与することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となるDLC皮膜の加工方法について説明する。
〔DLC皮膜の加工方法〕
本発明の実施形態となるDLC皮膜の加工方法では、始めに図1(a)に示すような銀やSUS304ステンレス鋼等の基体1を用意する。次に図1(b)に示すようにプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法,スパッタリング法,PBII(Plasma-Based Ion Implantation)法等の皮膜形成方法により基体1表面に絶縁性のDLC皮膜2を形成する。そして最後にDLC皮膜2表面に適当なエネルギー密度(0.015[mJ/Pulse]程度)のレーザ光を部分的に照射することにより、図1(c)に示すようにレーザ光の照射領域にあるDLC皮膜を変質させて導電性を有するグラファイト領域3を形成する。
なお本実施形態では、図1(c)に示すようにグラファイト領域3をDLC皮膜2の面内方向に均一に分布させたが、図2に示すようにグラファイト領域3を面内方向に不均一に分布させてもよい。但しこの場合、グラファイト領域3が形成されている領域と形成されていない領域との間で応力分布が生じることによりDLC皮膜2が基体1表面から剥離しやすくなるので、応力分布を低減して基体1表面からDLC皮膜2が剥離することを防止するために、グラファイト領域3は面内方向に均一に分布させることが望ましい。
〔電気接点構造〕
グラファイト領域3を有するDLC皮膜2は、第1の部材と第2の部材とを接触させることにより第1の部材と第2の部材を電気的に接続する電気接点構造に適用することにより、導電性を維持しながら電気接点構造の摩耗を低減して電気接点構造の長寿命化を実現できる。具体的には、図3に示すような突起部11aを介して部材11と部材12が接触する電気接点構造において、突起部11aと接する部材12の表面領域にグラファイト領域3を有するDLC皮膜2を形成することにより、導電性を維持しながら突起部11aの摩耗を低減して電気接点構造の長寿命化を実現することができる。
なお突起部11aと部材12の接触領域の形状が、図3に示すような平面形状ではなく、図4に示すようなドーム形状の突起部11bによって円形形状となる場合には、図4に示すようにグラファイト領域3を接触領域の外周部に配置することが望ましい。このような構成によれば、接触による衝撃を最も受ける接触領域の中央部分の耐摩耗性を高めながら、その外周部において導通させることができる。またこのDLC皮膜2の適用範囲は、図3や図4に示すような電気接点構造に限定されることはなく、図5に示すような車輪部14a,14bを介して供給される電力を利用して移動する部材14(例えば鉄道模型)と部材13とを電気的に接続する電気接点構造にも適用できる。図5に示す形態において、グラファイト領域3を図6(a)に示すようにランダムに配置してもよいし、図6(b)に示すようにグラファイト領域3をレール状に配置してもよい。図6(a)に示す形態によれば、部材14は部材13から供給される電力を利用してランダムに移動することができ、図6(b)に示す形態によれば、部材14は部材13から供給される電力を利用してレール上を移動することができる。
〔実施例〕
以下、本発明の幾つかの実施例について説明する。
〔DLC皮膜の加工方法〕
〔実施例1〕
プラズマCVD法によりSUS304ステンレス鋼表面に膜圧1[μm]のDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.015[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。DLC皮膜の抵抗を測定した結果、抵抗値は10[Ω]であり、DLC皮膜が導電性を有することが確認された。またレーザ加工を施してないDLC皮膜に対する比摩耗量は1.0であり、DLC皮膜の耐摩耗性が良好であることが確認された。
〔実施例2〕
スパッタリング法により銀表面に膜圧1μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.015[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。DLC皮膜の抵抗を測定した結果、抵抗値は10[Ω]であり、DLC皮膜が導電性を有することが確認された。またレーザ加工を施してないDLC皮膜に対する比摩耗量は1.05であり、DLC皮膜の耐摩耗性が良好であることが確認された。
〔実施例3〕
PBII法によりSUS304ステンレス鋼表面に膜圧1.5μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.015[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。DLC皮膜の抵抗を測定した結果、抵抗値は10[Ω]であり、DLC皮膜が導電性を有することが確認された。またレーザ加工を施してないDLC皮膜に対する比摩耗量は0.97であり、DLC皮膜の耐摩耗性が良好であることが確認された。
〔比較例1〕
プラズマCVD法によりSUS304ステンレス鋼表面に膜圧1μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜の全面にエネルギー密度0.015[mJ/Pulse]のレーザ光を照射した。DLC皮膜の抵抗を測定した結果、抵抗値は10[Ω]であり、DLC皮膜が導電性を有することが確認された。但し、レーザ加工を施してないDLC皮膜に対する比摩耗量は20.0であり、DLC皮膜の耐摩耗性がほとんど消失していることが確認された。
〔比較例2〕
プラズマCVD法によりSUS304ステンレス鋼表面に膜圧1μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.005[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。DLC皮膜の抵抗を測定した結果、抵抗値は100[Ω]であり、DLC皮膜が導電性を有さないことが確認された。
〔比較例3〕
プラズマCVD法によりSUS304ステンレス鋼表面に膜圧1μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.180[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。この結果、レーザ光の照射領域部分のDLC皮膜が消滅していることが確認された。
〔電気接点構造〕
〔実施例4〕
プラズマCVD法により銀表面に膜圧1μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.013[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。このDLC皮膜を電気接点構造に適用した所、通常通り通電し、接点の寿命が従来の3倍になった。
〔実施例5〕
スパッタリング法により銀表面に膜圧1μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.013[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。このDLC皮膜を電気接点構造に適用した所、通常通り通電し、接点の寿命が従来の4倍になった。
〔実施例6〕
PBII法によりSUS304ステンレス鋼表面に膜圧1.5μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.017[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。このDLC皮膜を電気接点構造に適用した所、通常通り通電し、接点の寿命が従来の3.5倍になった。
〔実施例7〕
PBII法によりSUS304ステンレス鋼表面に膜圧1.5μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.017[mJ/Pulse]のレーザ光を照射領域が円形形状になるように照射した。このDLC皮膜を電気接点構造に適用した所、通常通り通電し、接点の寿命が従来の4.5倍になった。
〔比較例4〕
プラズマCVD法により銀表面に膜圧1μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.100[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。このDLC皮膜を電気接点構造に適用した所、通電しなかった。この原因を確認した所、レーザ光の照射領域部分のDLC皮膜が消滅し、銀表面が露出していることが確認された。
〔比較例5〕
イオン化蒸着法により銀表面に膜圧1μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.100[mJ/Pulse]のレーザ光を部分的、且つ、均一な分布状態になるように照射した。このDLC皮膜を電気接点構造に適用した所、通電しなかった。この原因を確認した所、レーザ照射領域がグラファイトにほとんど変質していないことが確認された。
〔比較例6〕
PBII法によりSUS304ステンレス鋼表面に膜圧1.5μmのDLC皮膜を形成した後、DLC皮膜表面にエネルギー密度0.017[mJ/Pulse]のレーザ光を照射領域が部分的、且つ、不均一な分布状態になるように照射した。このDLC皮膜を電気接点構造に適用した所、通常通り通電したが、使用中にDLC皮膜がSUS304ステンレス鋼表面から剥離した。
〔レーザ光のエネルギー密度〕
図7に示すように、DLC皮膜2に照射するレーザ光のエネルギー密度が0.038〜0.185[mJ/Pulse]の範囲内にある時は、レーザ光の照射領域部分のDLC皮膜は消滅し、露出した基体表面において導通が確認された。またレーザ光のエネルギー密度が0.009[mJ/Pulse]である時は、レーザ光の照射領域部分のDLC皮膜がグラファイト化せず、導通が確認されなかった。これに対して、レーザ光のエネルギー密度が0.015[mJ/Pulse]である時には、レーザ光の照射領域部分のDLC皮膜がグラファイト化し、グラファイト領域において導通が確認された。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
本発明の実施形態となるDLC皮膜の加工方法の流れを示す図である。 グラファイト領域が面内方向において不均一に分布している状態を示す図である。 本発明を適用した電気接点構造の一例を示す図である。 本発明を適用した電気接点構造の他の例を示す図である。 本発明を適用した電気接点構造の他の例を示す図である。 図5に示す電気接点構造におけるDLC皮膜の構成例を示す図である。 DLC皮膜に照射するレーザ光のエネルギー密度とDLC皮膜に形成されるグラファイト領域の関係を示す図である。
符号の説明
1:基体
2:DLC皮膜
3:グラファイト領域

Claims (5)

  1. 基体表面にDLC皮膜を形成する工程と、前記DLC皮膜にレーザ光を部分的に照射することによりレーザ光の照射領域をグラファイト化する工程とを有することを特徴とするDLC皮膜の加工方法。
  2. 請求項1に記載のDLC皮膜の加工方法において、前記グラファイト化した領域がDLC皮膜の面内方向に均一に分布するようにレーザ光を照射することを特徴とするDLC皮膜の加工方法。
  3. 第1の部材と第2の部材とを接触させることにより第1の部材と第2の部材を電気的に接続する電気接点構造であって、前記第1及び第2の部材の少なくとも一方の接触領域に、レーザ光を照射することによって部分的に形成されたグラファイト領域を有するDLC皮膜を備えることを特徴とする電気接点構造。
  4. 請求項3に記載の電気接点構造において、前記グラファイト領域がDLC皮膜の面内方向に均一に分布していることを特徴とする電気接点構造。
  5. 請求項3に記載の電気接点構造において、前記グラファイト領域が接触領域の外周部に位置することを特徴とする電気接点構造。
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