JP2009006294A - 有機皮膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 有機材料粉末Pを固体基材Kの表面に固着させて有機皮膜を形成する有機皮膜の形成方法において、材料粉末をその融点より低い温度に加温したガスに投入し、ガスを超音速流にして固体基材Kに対して噴射させるコールドスプレー方法を実現する低温溶射装置1を用い、有機材料粉末Pを材料粉末とし、有機材料粉末Pにガスの加温温度よりその融点が低く有機材料粉末Pより硬度が高い無機材料粉末Mを混合し、無機材料粉末Mを混合した混合物における有機材料粉末Pの容積率を10〜70%にした。
【選択図】 図1
Description
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、有機材料粉末を低温溶射により固体基材に固着できるようにし、有機材料の劣化を抑止するとともに、低温溶射であっても固体基材に確実に固着できるようにして結合強度の向上を図った有機皮膜の形成方法を提供することを目的とする。
また、ガスの加温温度は、有機材料粉末の融点より低い温度であって、有機材料粉末の軟化温度が望ましい。軟化温度とは、例えば、有機材料粉末が流動性をもつ柔らかな状態となる温度と定義される。
有機材料粉末の粉末サイズは10〜200μmが好ましい。この範囲より小さいと粉末が凝集し易く、その供給が安定しないし、大きいと付着効率が低下する。
また、有機材料粉末の平均粒径より、無機材料粉末の平均粒径を大きくしているので、固体基材に凹凸を形成しやすくなる。さらには、粒径の大きい無機材料粉末は初速が有機材料粉末より遅く、この流速の違いにより、無機材料粉末は有機材料粉末を凹部へ押し込む働きをすることになり、粒径の小さい有機材料粉末の付着が確実になる。かつ、大きな無機材料粉末は、基材への衝突によって微細化して散乱するため、皮膜内部に混入、付着し難くなる。
粒径の異なる粉末を用いると、流速分布の広がりが生ずることとなる。比較的遅い流速の大きな有機材料粉末で形成される皮膜には、気孔が形成しやすい。この気孔に速い流速の小さな粉末が入りこみ、気孔のない緻密な皮膜を形成することが出来る。
平均粒径が100〜200μmの粉末は、付着効率がよく、凝集も起こりにくい皮膜形成には最も好ましい粉末サイズである。この粉末で得られる気孔は5〜50μm程度であり、この粒径サイズを用いると、気孔に入り込み易く、緻密な皮膜を形成しやすい。
ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリサルホン,アクリル樹脂,ポリアセタール,ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンの何れかの熱可塑性樹脂、四フッ化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),4フッ化エチレン・6フッ化ポリピレン共重合体(FEP),4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の何れかの含フッ素有機材料から選択される樹脂粉末である。また、これらの混合材料としてよい。
本発明の実施の形態に係る有機皮膜の形成方法は、図1及び図2に示すように、有機材料粉末Pを固体基材Kの表面に固着させて有機皮膜を形成するもので、材料粉末をその融点より低い温度に加温したガスに投入し、このガスを超音速流にして固体基材Kに対して噴射させるコールドスプレー方法を用いる。
また、有機材料粉末Pは、粒径分布の異なる2種類の粉末からなる。有機材料粉末Pのうち、一方の粉末の粒径DA1はDA1=5〜50μm、他方の粉末の粒径DA2はDA2=100〜200μmになるように設定されている。
四フッ化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),4フッ化エチレン・6フッ化ポリピレン共重合体(FEP),4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の何れかの含フッ素有機材料、
から選択される樹脂粉末である。
<実施例1〜13>
実施例1〜13に係る固体基材Kとしては、縦100mm、横100mm、厚さ2mmのAl(アルミニウム)板(JIS規格:A5052)を用いた。この固体基材Kを、10容量%の苛性ソーダ水に3分間浸漬した後、10容量%の塩酸水溶液に浸漬、さらに水洗洗浄後、乾燥して用いた。
薄膜の原料となる有機材料粉末Pとして、平均粒径20μm(粒径範囲:5〜40μm)のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粉末を用い、無機材料粉末Mとして、平均粒径150μm(粒径範囲:80〜200μm)のアルミナ(Al2O3)の粉末を準備した。
実施例14は、固体基材KとしてNi基材を用い、これを10容量%の塩酸水溶液に浸漬、さらに水洗洗浄後、乾燥して用いた。固体基材KとしてNi基材を使用した以外、全て上記の実施例2(PTFE容積率10%)と同じ条件で皮膜を形成した。実施例15、16は固体基材KとしてNi基材を使用した以外、上記実施例7(PTFE容積率50%)、実施例10(PTFE容積率70%)と同じ条件で皮膜を形成した。
さらに、実施例17〜19について記述する。
平均粒径20μm(粒径範囲:5〜40μm)と150μm(粒径範囲:80〜200μm)のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粉末を準備し、1:1の容積率で混合した粉末を準備した。また無機材料粉末Mとして、平均粒径300μm(粒径範囲:150〜600μm)のアルミナ(Al2O3)の粉末を準備した。混合有機材料粉末の容積率を10%(実施例17)、50%(実施例18)、および70%(実施例19)とした以外、上記実施例2、7および10と同じ条件で皮膜を形成した。
水に対する接触角は液滴量を、1mlとし計測した。実施例1は110°、実施例2は145°、実施例14は105°、実施例3〜10、15〜19は着滴せず計測不能であって、150°以上の超撥水を示す。
エポキシ樹脂に対する接着試験では、155℃に加熱したホットプレートに皮膜形成基板を乗せ、熱硬化エポキシ樹脂(日東電工(株)製NT−600)を置いた。3分間加熱硬化した後、ホットプレートから基板を取り出して空冷した。室温になったところで基板と、エポキシ樹脂とが自然に離型することを調べた。その結果、実施例6〜9、15及び18は、エポキシ樹脂に対する接着試験で離型することを示す。
そして、この被膜は樹脂の種類を選択することにより、各種用途の表面改質にも有効である。
P 有機材料粉末
M 無機材料粉末
1 低温溶射装置
2 主配管
3 ガス加熱器
4 枝配管
5 粉末供給装置
6 粉末投入管
7 スプレーノズル
Claims (8)
- 有機材料粉末を固体基材の表面に固着させて有機皮膜を形成する有機皮膜の形成方法において、
材料粉末をその融点より低い温度に加温したガスに投入し該ガスを超音速流にして固体基材に対して噴射させるコールドスプレー方法を用い、
上記有機材料粉末を材料粉末とし、該有機材料粉末にガスの加温温度よりその融点が低く上記有機材料粉末より硬度が高い無機材料粉末を混合し、該無機材料粉末を混合した混合物における上記有機材料粉末の容積率を10〜70%にしたことを特徴とする有機皮膜の形成方法。 - 上記有機材料粉末の平均粒径DAをDA=10〜200μmとし、上記無機材料粉末の平均粒径DBをDB=200〜1000μmにしたことを特徴とする請求項1記載の有機皮膜の形成方法。
- 上記有機材料粉末の平均粒径DAと上記無機材料粉末の平均粒径DBとの関係を、3×DA≦DBにしたことを特徴とする請求項2記載の有機皮膜の形成方法。
- 上記有機材料粉末は、粒径分布の異なる2種類の粉末からなることを特徴とする請求項2または3記載の有機皮膜の形成方法。
- 上記有機材料粉末のうち、一方の粉末の粒径DA1をDA1=5〜50μm、他方の粉末の粒径DA2をDA2=100〜200μmにしたことを特徴とする請求項4記載の有機皮膜の形成方法。
- 上記有機材料粉末は、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリサルホン,アクリル樹脂,ポリアセタール,ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンの何れかの熱可塑性樹脂、
四フッ化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),4フッ化エチレン・6フッ化ポリピレン共重合体(FEP),4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)の何れかの含フッ素有機材料、から選択される樹脂粉末であることを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の有機皮膜の形成方法。 - 上記無機材料粉末は、酸化アルミナ,酸化クロム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化シリコン、酸化ボロン、酸化セリウム、酸化コバルト、アルミニウムカーバイド、タングステンカーバイド,クロムカーバイド、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化クロム、ダイヤモンドから選択されることを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の有機皮膜の形成方法。
- 上記固体基材としては、鉄,鋳鉄,ステンレス,パ−マロイ,銅,黄銅,リン青銅,ニッケル,キュプロニッケル,錫,鉛,コバルト,半田,チタン,アルミニウム,クロム,金,銀,白金,パラジウム,亜鉛の何れかの金属、あるいはこれらの合金、金属の酸化物、リン酸塩処理金属、クロム酸塩処理金属、木材、紙、プラスチックス、複合強化プラスチックから選択されることを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の有機皮膜の形成方法。
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