JPH09314032A - 複合樹脂溶射皮膜形成法 - Google Patents

複合樹脂溶射皮膜形成法

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JPH09314032A
JPH09314032A JP8153322A JP15332296A JPH09314032A JP H09314032 A JPH09314032 A JP H09314032A JP 8153322 A JP8153322 A JP 8153322A JP 15332296 A JP15332296 A JP 15332296A JP H09314032 A JPH09314032 A JP H09314032A
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flame
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JP8153322A
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English (en)
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Mitsumasa Sasaki
光正 佐々木
Masahiro Nakagawa
政宏 仲川
Tomoko Miyazaki
智子 宮崎
Hidetada Mima
秀忠 美馬
Yasutami Yamaura
恭民 山浦
Hidenori Takahashi
秀法 高橋
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SURUZAAMETEKO JAPAN KK
YAMAURA KK
Original Assignee
SURUZAAMETEKO JAPAN KK
YAMAURA KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 例えば水門のゲート、バルブ、水管など、更
には、水力発電所の水路に存在するライナー、ベーン、
ゲートなどとされる被溶射基材の表面との密着性が高
く、剥離の無い、水環境下で耐食性、耐摩耗性に優れた
溶射複合被膜を形成することのできる複合樹脂溶射皮膜
形成法を提供する。 【解決手段】 アクリル系樹脂粉末90〜15重量%
と、硬質粒子10〜85%とを混合した溶射原料粉末を
低温ガス炎溶射法により被溶射基材表面へと溶射し、耐
食性、耐摩耗性に優れた複合被膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般には、溶射原
料粉末を低温ガス炎溶射法により被溶射基材表面へと溶
射し、耐食、耐摩耗性の複合被膜を形成する複合樹脂溶
射皮膜形成法に関するものであり、被溶射基材として
は、材木、陶器、セメント類及び金属などとすることが
できる。特に、本発明の複合樹脂溶射皮膜形成法は、鉄
系の基材表面に耐腐食性、耐キャビテーション性及び耐
土砂摩耗性に優れた保護皮膜を作業性良く且つ容易に形
成し、基材表面の長寿命化を可能にすることができる。
本発明が適用される被溶射基材の表面は、土砂、スラリ
ーにより摩耗する機器部品の表面或は耐衝撃性が要求さ
れる機器部品の表面とされ、本発明の具体的な応用とし
ては、水門のゲート、バルブ、水管など、更には、水力
発電所の水路に存在するライナー、ベーン、ゲートなど
がある。
【0002】
【従来の技術】従来、水門、水力発電機器などの部品
は、使用環境での水質の違いによる腐食、キャビテーシ
ョンによる摩耗及び土砂の形態による摩耗が発生する。
このような摩耗の進行が激しく減肉が早いと、部品の交
換又は修理の周期が短く維持管理が大変で有り、効率が
著しく低下する。
【0003】斯る部品の摩耗を防止するために、熱処
理、硬質クロムメッキ、セラミックス塗装、タールエポ
キシなどのライニングが行なわれている。又、補修方法
としては肉盛り溶接も用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、鉄又は
ステンレス材を腐食、キャビテーション摩耗及び土砂摩
耗から保護する従来法の硬質クロムメッキ、セラミック
ス塗装、タールエポキシなどのライニングでは、劣化が
早く、割れ、剥離が発生し寿命が短く頻繁に補修又は交
換する必要がある。又、皮膜厚さに制限があり、成膜に
多くの時間を要する、といった問題を有している。
【0005】又、補修方法の肉盛り溶接では、基材に与
える熱影響の問題で部品に歪みが発生する等の問題が生
じ、利用範囲が限定されている。
【0006】表面処理法として溶射などが採用されるこ
とがある。特に、溶射法としてNi基自溶性合金粉末を
用いたガス炎溶射法、アーク式溶射法によるステンレス
皮膜を形成する方法、及びプラズマ溶射法によるセラミ
ックスやWC複合皮膜を形成する方法が知られている。
【0007】一般に、金属及びセラミックス溶射皮膜は
封孔処理を行う方法で水力発電部品の表面に利用される
が、十分な封孔処理が不可能なため、時間が経過してい
くと溶射皮膜層に残る気孔より腐食性の溶液などが浸透
していき、基材が腐食され、溶射皮膜と基材との境界で
剥離を起こす。最近では高速ガス溶射法を用い緻密で気
孔の非常に少ない皮膜を形成することができるが、いず
れも皮膜層の気孔が問題となり製品、補修部品を問わず
基材の腐食は避けられなかった。
【0008】又、従来から溶射方法で用いられていたナ
イロン樹脂溶射では、ナイロン樹脂の融点(約180
℃)が高いために、大物の部品へ溶射する場合、温度管
理が困難で十分な皮膜管理が不可能である。又、ナイロ
ン樹脂溶射皮膜は弾力性が小さく脆いので、土砂摩耗や
キャビテーション環境では皮膜が破壊されることがあ
り、剥離し易いという欠点がある。
【0009】本発明者らは、上記問題を解決するべく多
くの研究実験を行なった結果、基材である水門、水力発
電機などの部品の表面に、粒状のAl23 を含むアク
リル系樹脂粉末を用いて低温ガス炎溶射法により被膜を
形成することにより、これら部品表面の耐食性、耐摩耗
性を大幅に向上せしめ得ることを見出した。本発明は斯
る本発明者らの新規な知見に基づくものである。
【0010】従って、本発明の目的は、例えば水門のゲ
ート、バルブ、水管など、更には、水力発電所の水路に
存在するライナー、ベーン、ゲートなどとされる被溶射
基材の表面との密着性が高く、剥離の無い、水環境下で
耐食性、耐摩耗性に優れた溶射複合被膜を形成すること
のできる複合樹脂溶射皮膜形成法を提供することであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的は本発明に係る
複合樹脂溶射皮膜形成法にて達成される。要約すれば、
本発明は、アクリル系樹脂粉末90〜15重量%と、硬
質粒子10〜85%とを混合した溶射原料粉末を低温ガ
ス炎溶射法により被溶射基材表面へと溶射し、耐食性、
耐摩耗性に優れた複合被膜を形成する複合樹脂溶射皮膜
形成法である。
【0012】好ましくは、前記アクリル系樹脂粉末は、
融点90〜100℃、粒径30〜350μmのエチレン
アクリルアセテート粉末であり、前記硬質粒子は、純度
90.0%以上、粒径10〜150μmのAl23
子である。
【0013】又、好ましくは、上記低温ガス炎溶射法
は、主燃焼ガスとしてプロパンガス、プロピレンガス、
ブタンガス、エタンガス、水素ガス又は灯油を用い、助
燃ガスとして酸素又は空気を用い、火炎温度500〜1
000℃、火炎速度80〜200m/秒に制御されたガ
ス炎で前記溶射原料粉末を溶射することにより実施され
る。好ましくは、前記被溶射基材の表面をRa1〜15
μmに粗面化し、且つ前記被溶射基材を70〜150℃
に予熱した後に溶射を行ない成膜する。
【0014】上記本発明にて溶射された複合皮膜は、前
記硬質粒子を5〜50体積%含んでおり、前記硬質粒子
の硬度は、ショア硬さHsD30〜80である。
【0015】本発明の複合樹脂溶射皮膜形成法は、土
砂、スラリーにより摩耗する機器部品の表面或は耐衝撃
性が要求される機器部品の表面に好適に適用される。
【0016】
【実施例】以下、本発明に係る複合樹脂溶射皮膜形成法
を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】図1に、本発明の複合樹脂溶射皮膜形成法
を実施する溶射装置(溶射ガン)1の概略構成を示す。
簡単に説明すると、溶射ガン1は、中心部に溶射原料粉
末を投入する粉末投入ポート2が配置され、その回りに
同中心にて、内方より外方へとノズル3及びエアキャッ
プ4が配置される。ノズル3は二重管構造とされ、外管
3Aと内管3Bをと有し、その間に環状の燃焼ガス通路
5が形成される。ノズル3の外管3Aとエアキャップ4
との間には環状の圧縮空気通路6が形成される。又、こ
の圧縮空気通路6は、ノズル3の半径方向に延びる連通
孔3Cにて粉末投入ポート2とノズル3の内管3Bとの
間に形成された環状空間に連通されている。更に、ノズ
ル3は、エアキャップ4の先端より前方へと突出してお
り、この外気に露出した突出先端部からノズル3を半径
方向へと貫通して連通孔3Dが形成される。従って、空
気が、この連通孔3Dの空気吸込み口7から連通孔3D
を介して粉末投入ポート2の粉末流出先端部に供給可能
とされる。又、上記粉末投入ポート2とノズル3の内管
3Bとの間、及びノズル3の外管3Aとエアキャップ4
との間には適宜O−リング10が配置され、それぞれの
環状空間部が適当に封鎖される。
【0018】上記溶射ガン1の構造は当業者には周知で
あるので、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0019】溶射原料粉末は、窒素ガスにより搬送され
て前記粉末投入ポート2へと供給され、ポート先端より
燃焼炎(フレーム)中に噴出される。一方、燃焼ガス通
路5から供給された燃焼ガスは、ノズル3の先端外周部
で燃焼し、燃焼炎は圧縮空気通路6及び連通孔3Cを介
して供給された圧縮空気により冷却されて適切な温度に
なる。
【0020】粉末投入ポート2の先端から噴出された溶
射原料粉末は、炎の中心部にて加熱され、溶融され、そ
して加速されて、溶射ガン1より外方へと噴射され、そ
して、所定の溶射距離に配置された所望の基材100へ
と衝突し、積層されて基材100の表面に溶射被膜10
2を形成する。
【0021】主燃焼ガスとしてプロパンガス、プロピレ
ンガス、ブタンガス、エタンガス、水素ガス又は灯油を
用い、助燃ガスとして酸素又は空気が用いられる。即
ち、前記燃焼ガスとしては、例えば酸素とプロピレンガ
ス、酸素とプロパンガス、酸素とエチレンガス、酸素と
エタンガス、酸素と水素、又は酸素と灯油の混合ガスが
好適に使用される。燃焼ガス通路5から供給されたこの
ような燃焼ガスは、圧縮空気通路6及び連通孔3Cを介
して供給された圧縮空気により冷却されて適切な温度、
即ち、火炎(フレーム)温度が500〜1000℃、好
ましくは700〜900℃となり、又、火炎(フレー
ム)速度は、80〜200m/秒、好ましくは100〜
180m/秒に制御される。このような制御された温度
と速度を有した燃焼フレームは、溶射粉末を溶融加速
し、基材表面へと衝突させ、溶融粒子を積層して気孔の
無い皮膜を形成する。火炎温度が1000℃を超えると
樹脂粉末まで燃焼して気化、炭化し、被膜を脆くすると
いった問題があり、又500℃より下がると溶射中に基
材への加熱が不足し、連続的に作業ができなくなるとい
った問題が起こる。又、火炎速度は、200m/秒を超
えると樹脂粉末の加熱時間が短く、溶融されないといっ
た問題あり、又、80m/秒より下がると、溶けて気
化、炭化するが粒子が加速されず、被膜内に気孔が含ま
れ密着性が劣るといった問題が発生する。
【0022】本発明によれば、溶射ガン1と基材表面1
00との溶射距離は200〜500mmに保持されるこ
とが重要である。この溶射距離が200mm未満では溶
射粉末が加熱されず、又500mmを超えると一旦加
速、加熱された粉末の温度及び速度が下がり、且つ気化
又は炭化が増加して基材と粉末粒子、及び粒子間の密着
強さが下がり好ましくない。
【0023】このように、本発明の低温ガス炎溶射法を
使用した複合樹脂溶射皮膜形成法によると、500〜1
000℃といった低い温度で、溶射原料粉末の液滴が、
被溶射基材(母材)100に衝突するために、溶射粉末
の気化又は炭化が抑えられ、基材と粉末粒子、及び粒子
間の密着強さが増大する。
【0024】なお、被溶射基材100の表面は、密着表
面を拡大し、溶射皮膜との密着強さを高く維持するため
に、皮膜形成する前に、溶射すべき基材表面の一部或は
全部のスケールを取り除き、予め洗浄化し、粗面化処理
を行うことが必要である。粗面化処理後の基材の表面粗
さは、Ra1〜15μmとされ、好ましくはRa5〜1
2μmとされる。
【0025】次に、本発明にて使用される溶射原料粉末
について説明する。
【0026】本発明では、使用する溶射原料粉末は、ア
クリル系樹脂粉末90〜15重量%と、硬質粒子10〜
85%とを混合して調製される。好ましくは、アクリル
系樹脂粉末50〜20重量%と、硬質粒子50〜80%
とが混合される。
【0027】本発明では、溶射原料粉末の混合比を上述
のように調製することにより、溶射被膜内に、硬質粒子
が体積%で5〜50%存在することとなり、又、被膜の
硬度を、ショア硬さHsD30〜80とすることができ
る。もし、溶射被膜内に存在する硬質粒子が5体積%以
下では、被膜の硬度がショア硬さHsD30以下とな
り、耐摩耗性の向上が小さく(約5%程度)、又、硬質
粒子が50体積%以上存在した場合には、被膜の硬度が
ショア硬さHsD80以上となり、被膜が脆くなり、密
着強さが小さくなる。
【0028】つまり、アクリル系樹脂粉末の重量%が1
5%より少ないと、即ち、硬質粒子が85%を超える
と、溶射被膜中の硬質粒子が50体積%以上となり、
又、アクリル系樹脂粉末が90重量%より多いと、即
ち、硬質粒子が10重量%より少ないと、溶射被膜中の
硬質粒子が5体積%以下となり、上述のように、いずれ
も好ましくない。
【0029】前記アクリル系樹脂粉末としては、エチレ
ンアクリルアセテートが好適に使用され、使用されるエ
チレンアクリルアセテート粉末の融点は90〜100℃
とされ、又、粒径は30〜350μm、好ましくは50
〜250μmとされる。使用されるエチレンアクリルア
セテート粉末の融点が100℃を超えると、被溶射基材
の予熱温度が高くなり、作業性が悪くなる。又、融点が
90℃より小さいと、軟化点も小さくなり、使用温度範
囲が50℃以下となり応用が限られるといった問題があ
る。又、エチレンアクリルアセテートの粒径が30μm
より小さいと粉末の搬送が安定せず、又燃焼フレーム中
で気化或は炭化し、被膜を劣化させ脆くなる。又、粉末
の粒径が350μmを超えた場合には、樹脂粉末が十分
に溶融せず、溶射肌が粗くなるため、温度管理が難し
く、これもまた作業性を悪くする。
【0030】又、前記硬質粒子としては、Al23
で、純度90.0%以上が好ましい。このようなAl2
3 粒子は、硬さが大きく、耐摩耗性に優れ、比重が小
さく、樹脂粉末と均一に混ぜることが可能である。又、
粒径は、10〜150μm、好ましくは、25〜75μ
mの範囲が好ましい。Al23 粒子径が10μmより
小さいと、被膜内に均質に分散せず、粉末の集合粒が点
在し、硬さのバラツキ幅が広く、局部摩耗が起こる。
又、粒径が150μmを超えると、被膜内の硬質粒子の
分布が下側(地面)に偏り被膜表面の耐摩耗性が劣る。
【0031】上述したように、本発明の複合樹脂溶射皮
膜形成法にて作製された被膜は、その硬度がショア硬さ
HsD30〜80とされ、気孔がなく、土砂、スラリー
により摩耗する機器部品の表面或は耐衝撃性が要求され
る機器部品の表面に適用することにより、より具体的に
は、水門のゲート、バルブ、水管など、更には、水力発
電所の水路に存在するライナー、ベーン、ゲートなどに
適用して、耐食性及び耐摩耗性を著しく向上させること
ができる。
【0032】次に、本発明を実施例について更に詳しく
説明する。
【0033】実施例1 アクリル系樹脂粉末として融点90℃、粒径30〜20
0μmのエチレンアクリルアセテート粉末を40重量
%、硬質粒子として純度98%、粒径15〜53μmの
Al23 粒子を60重量%、混合して、溶射原料粉末
を調製した。
【0034】被溶射基材としては、水力発電機の部品で
あるガイドベーン(材質:SUS410)を使用した。
【0035】先ず、前処理として、このガイドベーンの
一部表面に、アルミナグリット(粒度#20)を圧力
0.5MPaで吹き付け、ブラスト処理を行なった。こ
の前処理にて、ガイドベーンの表面粗さはRa=3〜5
μmとなった。
【0036】次いで、図1に示す溶射ガン1を使用し
て、予熱処理を行なった。このとき、溶射ガン1は、下
記に示す溶射条件にて、但し、溶射原料粉末を供給しな
いで、フレームのみを噴射するように作動させ、ガイド
ベーンを100℃に加熱して、ガイドベーン表面の湿
気、水、水蒸気を除去した。
【0037】次いで、溶射ガン1を使用して、低温ガス
炎溶射法に従って下記溶射施工条件にてガイドベーンに
被膜を形成した。
【0038】 (溶射施工条件) ・燃焼ガス 酸素 :圧力=3.5bar、流量= 37リットル/分(LPM) プロパンガス:圧力=3.5bar、流量= 15LPM 空気 :圧力=5.6bar、流量=240LPM ・フレーム温度 900℃ ・フレーム速度 150m/秒 ・溶射距離 350mm ・溶射原料粉末供給量 50g/分
【0039】このようにして得られたガイドベーン表面
の溶射被膜の厚さは1.5mmであり、被膜硬度はショ
ア硬さHsD60であった。
【0040】このようにして作製したガイドベーンに対
して溶射被膜の摩耗量を測定した。つまり、ガイドベー
ンを水力発電機用部品に組込み、実働条件にて耐摩耗試
験を行なった。その結果、従来品の溶射していないガイ
ドベーンと比較したところ、従来品(SUS410)は
3か月で腐食と摩耗で1.0mm減肉したのに対して、
本発明に従って被膜が形成されたガイドベーンは、1.
5年で0.5mmしか摩耗せず、優れた耐久性を示し
た。
【0041】実施例2 アクリル系樹脂粉末として融点95℃、粒径30〜30
0μmのエチレンアクリルアセテート粉末と、硬質粒子
として純度94%、粒径10〜74μmのAl23
子とを表1に示す割合(重量%)にて混合して、溶射原
料粉末を調製し、被溶射基材としての試験片(材質:S
US304)に被膜を形成して土砂摩耗試験及びキャビ
テーション試験を行ない、樹脂粉末と硬質粒子との混合
割合と摩耗量の関係を測定した。その結果をそれぞれ図
2及び図3に示す。
【0042】
【表1】
【0043】各試験片は、実施例1と同様にして作製し
た。つまり、先ず、前処理として、この試験片の一部表
面に、アルミナグリット(粒度#30)を圧力0.4M
Paで吹き付けてブラスト処理を行ない、試験片の表面
粗さをRa=3〜4μmとした。
【0044】次いで、図1に示す溶射ガン1を使用し
て、予熱処理を行なった。このとき、溶射ガン1は、下
記に示す溶射条件にて、但し、溶射原料粉末を供給しな
いで、フレームのみを噴射するように作動させ、試験片
を100℃に加熱して、試験片表面の湿気、水、水蒸気
を除去した。
【0045】次いで、溶射ガン1を使用して、低温ガス
炎溶射法に従って下記溶射施工条件にて試験片に被膜を
形成した。
【0046】 (溶射施工条件) ・燃焼ガス 酸素 :圧力=3.5bar、流量= 34LPM プロパンガス:圧力=3.5bar、流量= 15LPM 空気 :圧力=5.6bar、流量=250LPM ・フレーム温度 800℃ ・フレーム速度 180m/秒 ・溶射距離 400mm ・溶射原料粉末供給量 50g/分
【0047】このようにして得られた各試験片表面の溶
射被膜の厚さは1mmであり、被膜硬度はショア硬さH
sD45〜80であった。
【0048】図2に示すように、土砂摩耗試験では、本
発明に従ってエチレンアクリルアセテート及びそれにA
23 の混合粉末を溶射した場合には、被膜形成しな
かったSUS304と比較して約半分以下の摩耗量とな
り、優れた結果を示した。
【0049】又、キャビテーション試験では、図3に示
すように、本発明に従ってエチレンアクリルアセテート
及びそれにAl23 の混合粉末を溶射し、複合被膜を
形成した場合(ALO−10、30、50)には、被膜
としてエチレンアクリルアセテートのみが形成された単
体被膜の場合(ALO−0)と比較して約半分の摩耗量
となり、優れた結果を示した。
【0050】実施例3 アクリル系樹脂粉末として融点90℃、粒径30〜20
0μmのエチレンアクリルアセテート粉末を25重量
%、硬質粒子として純度96%、粒径15〜63μmの
Al23 粒子を75重量%、混合して、溶射原料粉末
を調製した。
【0051】被溶射基材としては、水力発電機の部品で
あるケーシング(材質:FC23)を使用した。
【0052】先ず、前処理として、このケーシングの一
部表面に、アルミナグリット(粒度#24)を圧力0.
5MPaで吹き付け、ブラスト処理を行なった。この前
処理にて、ケーシングの表面粗さはRa=2〜8μmと
なった。
【0053】次いで、図1に示す溶射ガン1を使用し
て、予熱処理を行なった。このとき、溶射ガン1は、下
記に示す溶射条件にて、但し、溶射原料粉末を供給しな
いで、フレームのみを噴射するように作動させ、ケーシ
ングを約60〜100℃に加熱して、ケーシング表面の
湿気、水、水蒸気を除去した。
【0054】次いで、溶射ガン1を使用して、低温ガス
炎溶射法に従って下記溶射施工条件にてケーシングに被
膜を形成した。
【0055】 (溶射施工条件) ・燃焼ガス 酸素 :圧力=3.5bar、流量= 35LPM プロパンガス:圧力=3.5bar、流量= 17LPM 空気 :圧力=5.6bar、流量=200LPM ・フレーム温度 1000℃ ・フレーム速度 150m/秒 ・溶射距離 300mm ・溶射原料粉末供給量 75g/分
【0056】このようにして得られたケーシング表面の
溶射被膜の厚さは2mmであり、被膜硬度はショア硬さ
HsD70であった。
【0057】このようにして作製したケーシングを水力
発電機用部品に組込み、実働条件にて耐摩耗試験を行な
った。その結果、従来品の溶射していないケーシングと
比較したところ、従来品(FC23)は3か月で腐食と
摩耗で0.5mm減肉したのに対して、本発明に従って
被膜が形成されたケーシングは、1.5年で0.3mm
しか摩耗せず、優れた耐久性を示した。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の複合樹脂
溶射皮膜形成法は、アクリル系樹脂粉末90〜15重量
%と、硬質粒子10〜85%とを混合した溶射原料粉末
を低温ガス炎溶射法により被溶射基材表面へと溶射する
ように構成されるので、例えば水門のゲート、バルブ、
水管など、更には、水力発電所の水路に存在するライナ
ー、ベーン、ゲートなどとされる被溶射基材の表面との
密着性が高く、剥離の無い、水環境下で耐食性、耐摩耗
性に優れた溶射複合被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合樹脂溶射皮膜形成法を実施する溶
射ガンの一実施例を示す断面構成図である。
【図2】試験片(材質:SUS304)に被膜を形成し
て土砂摩耗試験を行ない、樹脂粉末と硬質粒子との混合
割合と摩耗量の関係を測定した結果を示すグラフであ
る。
【図3】試験片(材質:SUS304)に被膜を形成し
てキャビテーション試験を行ない、樹脂粉末と硬質粒子
との混合割合と摩耗量の関係を測定したその結果を示す
グラフである。
【符号の説明】
1 溶射ガン 2 溶射原料粉末投入ポート 5 燃焼ガス通路 6 圧縮空気通路 7 空気吸込み口 100 被溶射基材 102 複合被膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮崎 智子 東京都千代田区二番町11番19号 スルザー メテコジャパン株式会社内 (72)発明者 美馬 秀忠 東京都千代田区二番町11番19号 スルザー メテコジャパン株式会社内 (72)発明者 山浦 恭民 長野県駒ケ根市東町19−16 株式会社ヤマ ウラ内 (72)発明者 高橋 秀法 長野県駒ケ根市東町19−16 株式会社ヤマ ウラ内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アクリル系樹脂粉末90〜15重量%
    と、硬質粒子10〜85%とを混合した溶射原料粉末を
    低温ガス炎溶射法により被溶射基材表面へと溶射し、耐
    食性、耐摩耗性に優れた複合被膜を形成する複合樹脂溶
    射皮膜形成法。
  2. 【請求項2】 前記アクリル系樹脂粉末は、融点90〜
    100℃、粒径30〜350μmのエチレンアクリルア
    セテート粉末であり、前記硬質粒子は、純度90.0%
    以上、粒径10〜150μmのAl23 粒子である請
    求項1の複合樹脂溶射皮膜形成法。
  3. 【請求項3】 前記低温ガス炎溶射法は、主燃焼ガスと
    してプロパンガス、プロピレンガス、ブタンガス、エタ
    ンガス、水素ガス又は灯油を用い、助燃ガスとして酸素
    又は空気を用い、火炎温度500〜1000℃、火炎速
    度80〜200m/秒に制御されたガス炎で前記溶射原
    料粉末を溶射することにより実施される請求項1又は2
    の複合樹脂溶射皮膜形成法。
  4. 【請求項4】 前記被溶射基材の表面をRa1〜15μ
    mに粗面化し、且つ前記被溶射基材を70〜150℃に
    て予熱した後に成膜する請求項1、2又は3の複合樹脂
    溶射皮膜形成法。
  5. 【請求項5】 前記溶射された複合皮膜は、前記硬質粒
    子を5〜50体積%含んでおり、前記被膜の硬度は、シ
    ョア硬さHsD30〜80である請求項1、2、3又は
    4の複合樹脂溶射皮膜形成法。
  6. 【請求項6】 前記被溶射基材の表面は、土砂、スラリ
    ーにより摩耗する機器部品の表面或は耐衝撃性が要求さ
    れる機器部品の表面である請求項1〜5のいずれかの項
    に記載の複合樹脂溶射皮膜形成法。
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