JP7123288B1 - 樹脂複合材料皮膜及び樹脂複合材料皮膜の製造方法 - Google Patents

樹脂複合材料皮膜及び樹脂複合材料皮膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

樹脂複合材料皮膜は、母相を構成する複数の樹脂粒子と、熱伝導性を有する複数の無機粒子と、を含む樹脂複合材料皮膜である。無機粒子は、形状に異方性を有するものであって、膜厚方向に配向され、皮膜表面には、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸が形成されている。また、樹脂複合材料皮膜の製造方法は、母相を構成する複数の樹脂粒子と、形状に異方性を有し、熱伝導性を有する複数の無機粒子と、を含む樹脂複合材料皮膜の製造方法であって、複数の樹脂粒子と複数の無機粒子とを含む混合粉末を基材に吹き付けることによって、無機粒子を膜厚方向に配向させ、且つ皮膜表面に、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸を形成する。

Description

本開示は、無機粒子と樹脂粒子とを含む樹脂複合材料皮膜、およびその製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化及び薄型化と高出力化とに伴う発熱密度の増加により、放熱性能の向上が重要になっている。また、冷暖房機器では、省エネ性能の向上のために、熱交換器の熱交換性能の向上が求められている。電子機器および熱交換器の表面には、樹脂皮膜が施工され、これによって柔軟性と撥水撥油性とを付与することで、機器表面への衝撃の緩和及び汚れの付着防止を図っている。電子機器の放熱性および熱交換器の熱交換性能の向上のために、電子機器又は熱交換器の表面部材として、高放熱性を有した樹脂皮膜が求められている。樹脂皮膜に高放熱性を付与する技術としては、例えば、樹脂中に高熱伝導性繊維を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、膜厚方向に貫通配向した高熱伝導性繊維と、バインダ樹脂と、を含有した高熱伝導性シートの両面側に、熱硬化性樹脂に熱伝導性フィラーを含有した接着性樹脂層が配置された絶縁高熱伝導性シートが開示されている。
特開2017-135137号公報
一般に、放熱性の向上には、部材内部の熱伝導性向上に加え、部材表面からの熱放射性の向上が求められる。そして、部材表面からの熱放射性の向上には、表面凹凸により放熱面積を増やす手段が有効である。しかしながら、特許文献1には表面凹凸について言及されておらず、膜厚方向に配向された高熱伝導性繊維により部材内部の熱伝導性を向上させることはできるが、部材表面の表面積が小さく、部材表面からの熱放射性が不十分であるので、放熱性が十分に発揮できない。また、部材表面の形状により撥水撥油性が変わるが、特許文献1には、膜厚方向に熱伝導性を有する樹脂複合材料皮膜において放熱性と撥水撥油性とを向上させる適度な表面凹凸の大きさに言及されておらず、放熱性と撥水撥油性とを十分に発揮することができなかった。
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、放熱性および撥水撥油性を従来よりも向上させた樹脂複合材料皮膜、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本開示に係る樹脂複合材料皮膜は、母相を構成する複数の粉末状の樹脂粒子と、熱伝導性を有する複数の無機粒子と、を含む樹脂複合材料皮膜であって、前記無機粒子は、薄い円柱状の扁平状粒子または針状粒子であって、長軸方向が膜厚方向に配向され、長径を短径にて除した値であるアスペクト比が平均10以上かつ200以下であり、皮膜表面には、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸が形成されている。
また、本開示に係る樹脂複合材料皮膜の製造方法は、母相を構成する複数の粉末状の樹脂粒子と、薄い円柱状の扁平状粒子または針状粒子であり、長径を短径にて除した値であるアスペクト比が平均10以上かつ200以下である熱伝導性を有する複数の無機粒子と、を含む樹脂複合材料皮膜の製造方法であって、複数の前記樹脂粒子と複数の前記無機粒子とを含む混合粉末を基材に吹き付けることによって、前記無機粒子を長軸方向が膜厚方向になるように配向させ、且つ皮膜表面に、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸を形成する工程を備える。
本開示によれば、形状に異方性を有した熱伝導性を有する複数の無機粒子が膜厚方向に配向され、皮膜表面には、二乗平均平方根高さが40μm以上となる表面粗さを有した表面凹凸が形成されているので、複数の無機粒子によって膜厚方向の熱伝導性を確保しつつ、樹脂複合材料皮膜の皮膜表面の表面積が増加することで従来よりも高い熱放射性が得られる。そして、表面凹凸の二乗平均平方根高さは40μm以上且つ600μm以下であるので、皮膜表面における放熱性と撥水撥油性とを従来よりも向上させることができる。
実施の形態1に係る樹脂複合材料皮膜が基材に設けられた状態を示す模式図である。 実施の形態1に係る樹脂複合材料皮膜の第1変形例を示す模式図である。 実施の形態2に係る樹脂複合材料皮膜の製造工程を示す図である。 実施の形態2に係る樹脂複合材料皮膜の製造に用いるコールドスプレー装置を示す概略図である。
以下、高い放熱性および撥水撥油性を有する樹脂複合材料皮膜について、図面等を参照しながら説明する。なお、図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係および形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通するものとする。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る樹脂複合材料皮膜1が基材9に設けられた状態を示す模式図である。樹脂複合材料皮膜1は、例えば冷暖房機器の熱交換器あるいは他の電子機器の表面に設けられ、これらの機器表面に柔軟性と撥水撥油性を付与することで、機器表面への衝撃を緩和し、且つ汚れの付着を防止する。また、樹脂複合材料皮膜1は、熱伝導性を有する複数の無機粒子3を有し、樹脂複合材料皮膜1が設けられた機器表面から放熱させる機能を有する。以下、図1に基づき、実施の形態1の樹脂複合材料皮膜1の構成について説明する。
樹脂複合材料皮膜1は、凝集した複数の樹脂粒子2と、複数の無機粒子3とを備える。樹脂複合材料皮膜1は、基材9に設けられている。樹脂複合材料皮膜1は、基材9と接することのない皮膜表面において、凸部分12pと凹部分12rとを有する皮膜表面凹凸1aを備えている。以下、樹脂複合材料皮膜1における基材9の側の面を第1面11と定義し、また、第1面11と反対側の皮膜表面を第2面12と定義する。皮膜表面凹凸1aは、樹脂複合材料皮膜1の第2面12に形成されている。また、樹脂複合材料皮膜1において皮膜表面凹凸1aが形成された表層部分よりも基材9の側の部分を、皮膜基部1bと称する。また、皮膜表面凹凸1aにおける凸部分12p及び凹部分12rは、平均面を基準に定義される。
樹脂粒子2は、互いに凝着することで、皮膜表面凹凸1a及び皮膜基部1bの母相を構成している。ここで、凝着とは、2つの固体同士のそれぞれの面が液状に溶けて融合し、しっかりと付着することをいい、本開示では樹脂粒子2同士がそのような状態で凝集していることをいう。無機粒子3は形状に異方性を有し、かつ、樹脂複合材料皮膜1の膜厚方向D2に配向されている。すなわち、無機粒子3は、その長軸が樹脂複合材料皮膜1の膜厚方向D2に配向するように、皮膜表面凹凸1a及び皮膜基部1bに分散している。ここで、異方性を有する形状とは、針形状のような一方向に延びた柱状形状に限定されず、形状が方向によって異なるものであればよい。無機粒子3の形状及び材質については、後述する。
以下では、樹脂複合材料皮膜1に含まれる無機粒子3が占める体積を、樹脂粒子2および無機粒子3が占める体積にて除した値を、無機粒子3の体積割合と定義する。また、無機粒子3の長径L31を短径L32にて除した値を、無機粒子3のアスペクト比と定義する。また、樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3のなす角の角度が90°以下の場合は、この角度を樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3の角度と定義し、樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3のなす角の角度が90°を超える場合は、この角度の補角を樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3の角度と定義する。
本実施の形態1に係る樹脂複合材料皮膜1は、堆積した樹脂粒子2と、樹脂粒子2が堆積して形成された樹脂皮膜に分散した無機粒子3と、を含んでいる。樹脂粒子2が互いに強固に凝着し、かつ、無機粒子3が互いに強固に凝着し、さらに、樹脂粒子2と無機粒子3とが互いに強固に凝着することが望ましい。また、樹脂粒子2が堆積して形成された樹脂皮膜中に、すなわち母相中に、無機粒子3は互い樹脂皮膜を介するようにして離間して配置されることがより望ましい。
樹脂複合材料皮膜1において、複数の無機粒子3は、樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に分散している。皮膜基部1bだけでなく皮膜表面凹凸1aも、複数の樹脂粒子2と複数の無機粒子3とを備える。詳しくは、皮膜表面凹凸1aの凸部分12p内にも無機粒子3が配され、凸部分12pは、配向した無機粒子3の少なくとも一部分と、この一部分を覆うように設けられた複数の樹脂粒子2と、を有する。
また、図1に示される例では、複数の無機粒子3は、樹脂複合材料皮膜1の膜厚方向D2にも分散して、第1の無機粒子群と第2の無機粒子群と第3の無機粒子群とを有する。複数の無機粒子3のうち最も基材9の側に配置された第1の無機粒子群は、その基材9の側の端面が第1面11において露出して基材9と接触するように配置されている。また、複数の無機粒子3のうち皮膜表面である第2面12の側に配された第2の無機粒子群は、配向した無機粒子3の端部又は全体が皮膜表面凹凸1aの凸部分12p内に位置するように配置され、それぞれ、複数の樹脂粒子2によって覆われている。また、複数の無機粒子3のうち第1の無機粒子群よりも第2面12寄りに配置された第3の無機粒子群は、皮膜基部1bの母相内に配置され、全体が複数の樹脂粒子2により覆われている。
なお、図1には、複数の無機粒子3が、膜厚方向D2において分散している場合が示されるが、複数の無機粒子3のそれぞれが基材9の側の第1面11から皮膜表面凹凸1a内まで延び、複数の樹脂粒子2で覆われる構成であってもよい。
[皮膜表面凹凸1a]
以下、皮膜表面の表面粗さを、二乗平均平方根高さを用いて説明する。二乗平均平方根高さは、高さ分布の標準偏差に相当するもので、RMS値ともいわれる。皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さは、40μm以上である。皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さは、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは140μm以上である。皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さが40μm以上であることによって、樹脂複合材料皮膜1の表面積が増大し、熱放射性を高めることができる。一方で、皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さが40μm未満であると、樹脂複合材料皮膜1の表面に水滴または油滴などの液滴が付着した際に、皮膜表面凹凸1aの凹部に液滴が浸透することによって、撥水撥油性が低下するため好ましくない。また、皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さは、600μm以下であり、より好ましくは540μm以下、さらに好ましくは520μm以下である。皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さが600μm以下であることによって、樹脂複合材料皮膜1の表面に水滴または油滴などの液滴が付着した際に、皮膜表面凹凸1aの凸部が液滴を保持し、凹部および液滴の間に空気層が形成されることで、優れた撥水撥油性を発揮することができる。一方で、皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さが600μmを超えると、皮膜表面凹凸1aが擦過などで脱落しやすくなるため、高い撥水撥油性および熱放射性を長期間確保することができなくなる。
二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となるような表面粗さを有した表面凹凸を皮膜表面に設けることで、樹脂複合材料皮膜1の放熱性と皮膜表面における撥水撥油性とを向上させることができる。そのため、以降の説明において、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となるような表面粗さを有した皮膜表面凹凸1aを、適度な皮膜表面凹凸1aと称する場合がある。
皮膜表面凹凸1aは、樹脂粒子2の材質と、樹脂粒子2の粒径、無機粒子3の粒径、無機粒子3のアスペクト比、無機粒子3の体積割合、さらに、後述する皮膜形成の工程条件の選択などによって調整することができる。また、皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さは、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡、触針式表面形状測定器または断面観察などで測定することが可能である。二乗平均平方根高さは、観察位置における一視野から得られる統計量であり、十分な数(例えば10箇所)の異なる位置で測定して平均値として求めるとよい。
[無機粒子3]
無機粒子3は、樹脂複合材料皮膜1中において熱伝導性を発揮するものである。樹脂複合材料皮膜1を構成する複数の無機粒子3は、樹脂複合材料皮膜1の熱伝導性を向上させる観点から、例えば、針状粒子、繊維状粒子、鱗片状粒子、板状粒子、扁平状粒子および不定形状粒子などから選ばれる少なくとも1種で構成される。樹脂複合材料皮膜1を構成する複数の無機粒子3は、針状粒子および繊維状粒子から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、針状粒子を含むことがさらに好ましい。図1に示される例では、無機粒子3が針状粒子であるものと定義している。
樹脂複合材料皮膜1を構成する複数の無機粒子3は、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、黒鉛、窒化アルミニウム、酸化スズ、窒化ホウ素、雲母、タルク、ベーマイト、ムライト、炭素繊維およびこれらの複合酸化物または混合物から選ばれる少なくとも1種で構成される。
無機粒子3の短径L32は、0.2μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。無機粒子3の短径L32が0.2μm以上であることによって、後述する皮膜形成の工程において、無機粒子3は、樹脂粒子2と、他の無機粒子3と、に強固に密着し、樹脂複合材料皮膜1を機械強度の高い皮膜とすることができる。一方で、無機粒子3の短径L32が0.2μmに満たないと、後述する混合粉末を作製する工程において、無機粒子3の形状が崩れやすく、樹脂複合材料皮膜1を製造する上での実用性を確保できなくなる。また、無機粒子3の短径L32は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。無機粒子3の短径L32が20μm以下であることによって、無機粒子3の体積割合が同じ場合では、無機粒子3の短径L32が20μmを超える場合と比べて無機粒子3の本数が多くなるので、面方向D1における無機粒子3間の距離を短くすることができ、樹脂複合材料皮膜1の熱伝導パスを形成しやすくなり、高い放熱性を発揮できる。一方で、無機粒子3の短径L32が20μmを超えると、1つ当たりの無機粒子3が大きいため、樹脂複合材料皮膜1の表面に無機粒子3が露出し易くなり、水滴または油滴などの液滴が、樹脂複合材料皮膜1の表面に露出した無機粒子3のみに付着し、撥水撥油性の高い樹脂粒子2に付着しない場合があり、高い撥水撥油性を確保できなくなる。なお、無機粒子3の短径L32は、走査型電子顕微鏡により観察することで測定が可能である。無機粒子3の短径L32は、十分な数(例えば200個)の無機粒子3を観察して平均値として求めるとよい。
無機粒子3のアスペクト比は、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。無機粒子3のアスペクト比が10以上であることによって、後述する皮膜形成の工程において、皮膜表面凹凸1aが形成しやすいため、樹脂複合材料皮膜1の放熱性及び撥水撥油性を向上させることができる。具体的には、アスペクト比を大きくするほど無機粒子3が面方向D1でより細く、膜厚方向D2でより長くなるような細長い形状となるので、無機粒子3の一端が樹脂粒子2により覆われるようにして凸部分12pが形成され、無機粒子3間に凹部分12rが形成される。一方で、無機粒子3のアスペクト比が10に満たないと、樹脂複合材料皮膜1は熱伝導パスを形成しにくいため、高い熱伝導性を確保できなくなる。また、無機粒子3のアスペクト比は、200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。無機粒子3のアスペクト比が200以下であることによって、後述する皮膜形成の工程において、無機粒子3が樹脂複合材料皮膜1の膜厚方向D2に配向するため、膜厚方向D2の熱伝導性を高めることができる。一方で、無機粒子3のアスペクト比が200を超えると、後述する混合粉末を作製する工程において、絡み合った無機粒子3が解けにくく、また、形状が安定しないことで樹脂複合材料皮膜1に無機粒子3を均一に分散させることが困難となるので、高い放熱性を確保できなくなる。なお、無機粒子3のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡により観察することで測定が可能である。無機粒子3のアスペクト比は、十分な数(例えば200個)の無機粒子3を観察して平均値として求めるとよい。
無機粒子3の体積割合は、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましい。無機粒子3の体積割合が5体積%以上であると、アスペクト比の高い無機粒子3によって、皮膜形成の途中において皮膜表面凹凸1aが増幅されやすく、すなわち皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さが高くなりやすいので、熱放射性及び撥水撥油性が向上する。一方で、無機粒子3の体積割合が5体積%に満たないと、樹脂複合材料皮膜1の内部において熱伝導パスが形成されにくくなるため、高い放熱性を確保できなくなる。また、無機粒子3の体積割合は、40体積%以下であることが好ましく、35体積%以下であることがより好ましい。無機粒子3の体積割合が40体積%以下であることによって、樹脂粒子2により強固な樹脂皮膜が形成されるため、樹脂複合材料皮膜1は高い機械強度を発揮できる。一方で、無機粒子3の体積割合が40体積%を超えると、樹脂複合材料皮膜1の表面において、樹脂粒子2が占める割合が低下するため、高い撥水撥油性および熱放射性を確保することが難しくなる。なお、無機粒子3の体積割合は、走査型電子顕微鏡による観察から樹脂粒子2の断面積および無機粒子3の断面積を測定することで算出が可能である。無機粒子3の体積割合は、観察位置における一視野から得られる統計量であり、十分な数(例えば10箇所)の異なる位置で測定して平均値として求めるとよい。
無機粒子3は樹脂複合材料皮膜1の膜厚方向D2に長軸方向が配向していることが望ましい。具体的には、樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3の長軸の角度が70°以上であることが好ましく、80°以上がさらに好ましい。樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3の長軸の角度が70°以上であることによって、膜厚方向D2に配向した無機粒子3によって皮膜表面凹凸1aの機械強度が向上するため、樹脂複合材料皮膜1の実用性を高めることができる。一方で、樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3の長軸の角度が70°に満たない場合では、樹脂複合材料皮膜1の膜厚方向D2の熱伝導性が低下し、高い放熱性を確保できなくなる。
ここで、無機粒子3が、例えば、厚さが直径よりも小さくなるような円柱状の扁平状粒子である場合、無機粒子3の長軸方向は径方向である。すなわち、無機粒子3がこのような円柱状の扁平状粒子である場合、無機粒子3の径方向が樹脂複合材料皮膜1の膜厚方向D2で、無機粒子3の厚さ方向が樹脂複合材料皮膜1の面方向D1となるように配置される。
樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3の角度は、無機粒子3の粒径と無機粒子3のアスペクト比、無機粒子3の体積割合、後述する皮膜形成の工程条件の選択などによって調整することができる。また、樹脂複合材料皮膜1の面方向D1に対する無機粒子3の角度は、樹脂複合材料皮膜1の膜厚方向D2に平行な断面を、走査型電子顕微鏡により観察することで測定が可能である。
[樹脂粒子]
樹脂粒子2は、樹脂粉末の粒子であり、樹脂複合材料皮膜1の撥水撥油性を向上させる観点から、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂およびフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種で構成される。樹脂粒子2の粒径は、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。樹脂粒子2の粒径が1μm以上であると、後述する皮膜形成の工程において、樹脂粒子2は、樹脂粒子2および無機粒子3と強固に密着されるため、樹脂複合材料皮膜1を機械強度の高い皮膜とすることができる。一方で、樹脂粒子2の粒径が1μm未満であると、後述する混合粉末を作製する工程において、塊となった樹脂粒子2を解すことができず、樹脂複合材料皮膜1に無機粒子3を均一に分散させることが困難であるため、高い放熱性を確保できなくなる。また、樹脂粒子2の粒径は、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。樹脂粒子2の粒径が400μm以下であることによって、樹脂複合材料皮膜1の表面に露出した樹脂粒子2の単位体積当たりの表面積が増大し、樹脂複合材料皮膜1の高い熱放射性を発揮することが可能となる。一方で、樹脂粒子2の粒径が400μmを超えると、皮膜表面凹凸1aが過度に粗大となり、水滴または油滴が皮膜表面凹凸1aの凹部に入り込むことで、高い撥水撥油性を確保できなくなる。さらに、樹脂粒子2の粒径が400μmを超えると、後述する皮膜形成の工程において、樹脂粒子2の樹脂粒子2および無機粒子3との密着性が不十分となり、樹脂複合材料皮膜1の皮膜としての実用性を確保できなくなる。
図2は、実施の形態1に係る樹脂複合材料皮膜1の第1変形例を示す模式図である。図1には、樹脂複合材料皮膜1における無機粒子3が針状粒子である場合について図示したが、無機粒子3は、形状に異方性を有していれば、どのような形状でもよい。異方性を有する形状には、糸状又は繊維状といった一方向に長い形状以外に、扁平状が含まれる。図2に示される例では、樹脂複合材料皮膜1が扁平状(例えば、薄い円柱状)の無機粒子3を含む場合が示される。無機粒子3が薄い円柱状の扁平状粒子である場合、断面観察において、無機粒子3は、円形及び長方形といった断面を取り得る。
以上のように、実施の形態1の樹脂複合材料皮膜1は、母相を構成する複数の樹脂粒子2と、熱伝導性を有する複数の無機粒子3と、を含む樹脂複合材料皮膜1である。無機粒子3は、形状に異方性を有するものであって、膜厚方向D2に配向されている。樹脂複合材料皮膜1の皮膜表面には、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸(皮膜表面凹凸1a)が形成されている。
これにより、複数の無機粒子3によって膜厚方向D2の熱伝導性を確保しつつ、表面凹凸により皮膜表面の表面積が増加することで従来よりも高い熱放射性を有するので、放熱性が向上する。そして、表面凹凸は、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有しているので、皮膜表面における放熱性と撥水撥油性とを従来よりも向上させることができる。
また、複数の樹脂粒子2は、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂およびフッ素樹脂のうち1種類以上の樹脂を含むものである。これにより、放熱性と撥水撥油性とを向上させた樹脂複合材料皮膜1の母相の選択肢が増える。
また、複数の樹脂粒子2の平均粒径は、1μm以上かつ400μm以下である。これにより、製造時に適度な速度で樹脂粒子2を基材9に吹き付けることができるので、凝着により高い機械強度の樹脂複合材料皮膜1を得ることができる。
また、複数の無機粒子3は、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、黒鉛、窒化アルミニウム、酸化スズ、窒化ホウ素、雲母、タルク、ベーマイト、ムライト、炭素繊維およびこれらの複合酸化物または混合物のうち少なくとも1種以上で構成されたものである。これにより、放熱性と撥水撥油性とを向上させた樹脂複合材料皮膜1の熱伝導性材料の選択肢が増える。
また、無機粒子3は、扁平状または針状の形状を有し、複数の無機粒子3の平均アスペクト比は、10以上かつ200以下である。複数の無機粒子3の平均アスペクト比が10以上であることによって、皮膜形成の途中において、表面凹凸の凸部分に無機粒子3が凝着して皮膜表面凹凸1aが形成され易いので、樹脂複合材料皮膜1の放熱性及び撥水撥油性を向上させることができる。また、複数の無機粒子3の平均アスペクト比が200以下であることによって、皮膜形成の途中において、無機粒子3同士が絡み合うこと、及び無機粒子3が基材9に対して転倒することが回避でき、無機粒子3の配向と分散とにより樹脂複合材料皮膜1の熱伝導性をより高めることができる。
また、複数の無機粒子3の平均短径は、0.2μm以上かつ20μm以下である。複数の無機粒子3の平均短径が0.2μm以上であることによって、皮膜形成の工程において、無機粒子3が、樹脂粒子2と、他の無機粒子3と、に強固に密着し、機械強度の高い樹脂複合材料皮膜1が得られる。また、複数の無機粒子3の平均短径が20μm以下であることによって、無機粒子3の本数を多くできるので、樹脂複合材料皮膜1の熱伝導パスを形成しやすくなり、高い放熱性を発揮できる。
また、樹脂複合材料皮膜1は、無機粒子3を5体積%以上かつ40体積%未満含む。無機粒子3の体積割合が5体積%以上であることによって、皮膜形成の途中において皮膜表面凹凸1aの増大が容易となる。また、無機粒子3の体積割合が40体積%未満であることによって、樹脂粒子2の体積割合を確保して樹脂複合材料皮膜1の機械強度を高めることができる。
また、無機粒子3は、面方向D1に対して長軸が70°以上傾斜するように配向されている。これにより、膜厚方向D2に配向した無機粒子3によって皮膜表面凹凸1aの機械強度が向上するので、樹脂複合材料皮膜1の実用性を高めることができる。
また、樹脂複合材料皮膜1は、基材9上に設けられており、表面凹凸(皮膜表面凹凸1a)が形成された皮膜表面は、基材9の側の面(第1面11)とは反対側の面(第2面12)である。そして、表面凹凸の凸部分12pは、配向された無機粒子3の少なくとも一部分と、一部分を覆うように配されて凸部分12pの表面を構成する複数の樹脂粒子2と、を有する。
これにより、空気と接する表面の付近まで無機粒子3が配され、かつ無機粒子3を覆う複数の樹脂粒子2により放射面積が増す。よって、樹脂複合材料皮膜1の熱伝導性と熱放射性とを更に高めることができる。
また、複数の無機粒子3は、母相中において面方向D1および膜厚方向D2で分散するように配置されている。これにより、樹脂複合材料皮膜1の全体に無機粒子3が分散することで、各無機粒子3からの放熱を効率的に行うことができ、樹脂複合材料皮膜1の放熱性を更に高めることができる。
実施の形態2.
実施の形態2は、樹脂複合材料皮膜1の製造方法に関するものである。図3は、実施の形態2に係る樹脂複合材料皮膜1の製造工程を示す図である。
樹脂複合材料皮膜1の製造方法は、樹脂粒子2と無機粒子3とを含む混合粉末を作製する第1工程(ステップST101~ステップST103)と、この混合粉末を基材9に吹き付けて樹脂複合材料皮膜1を形成する第2工程(ステップST104~ステップST105)と、を含む。
第1工程の一例を示す。第1工程では、樹脂粒子2を含む粉末と、無機粒子3を含む粉末と、をそれぞれ設定された量となるように計量して(ステップST101~ステップST102)蓋つき容器に移し入れ、十分な時間(例えば10分)攪拌を行うことで樹脂粒子2と無機粒子3とを含む混合粉末を得る(ステップST103)。ここで、樹脂粒子2を含む粉末の量および無機粒子3を含む粉末の量は、例えば、製造後の樹脂複合材料皮膜1において無機粒子3の体積割合が予め決められた体積割合(例えば、5体積%以上かつ40体積%未満)となるように、予め質量比を決めておくとよい。以下、混合粉末に含まれる樹脂粒子2および無機粒子3を区別せずに呼称する場合に、混合粉末に含まれる樹脂粒子2および無機粒子3を混合粉末粒子と定義する。なお、混合粉末を作製する第1工程は、上記の場合に限定されない。
第2工程の一例を紹介する。第2工程では、基材9を準備し、第1工程で製作した混合粉末を基材9に吹き付けることにより(ステップST104~ステップST105)、基材9の表面に樹脂複合材料皮膜1を形成する。例えば、基材9の表面と垂直な方向から混合粉末を吹き付ける。混合粉末を基材9に吹き付けることにより、混合粉末粒子が基材9に衝突して凝着し、基材9に凝着した混合粉末粒子の上に、さらに混合粉末を吹き付けることにより、混合粉末粒子が衝突して凝着することによって樹脂複合材料皮膜1が形成される。混合粉末を吹き付ける過程で、無機粒子3は分散し、また、無機粒子3は空気抵抗の最も小さい方向、つまり無機粒子3の長軸方向が混合粉末の吹き付ける方向となるように配向する。これにより、樹脂複合材料皮膜1に分散した無機粒子3は皮膜の形成方向に配向した構成となる。樹脂粒子2と無機粒子3とは異なる粒子であり、形状が互いに異なるので、混合粉末の吹き付けを行っている最中の樹脂複合材料皮膜1の表面には微細な表面凹凸が生じる。混合粉末の吹き付けを行っている最中に形成される、樹脂複合材料皮膜1の微細な表面凹凸の凸部分には、吹き付けられた混合粉末粒子が衝突して凝着しやすい。一方で、微細な表面凹凸の凹部分には、吹き付けられた混合粉末粒子が衝突しにくく、かつ、凝着しにくい。そのため、混合粉末の吹き付けを行っている最中に、樹脂複合材料皮膜1の微細な表面凹凸は増大し、粗大な皮膜表面凹凸1aが形成される。
混合粉末を基材9に吹き付ける際には、コールドスプレー法による吹き付けを行うコールドスプレー装置が用いられる。コールドスプレー法は、コールドスプレー用粉末を溶融温度以下の固相状態で基材9へ衝突させ、皮膜を形成する技術である。ここでは、コールドスプレー用材料粉末に混合粉末が用いられる。コールドスプレー法による皮膜形成は、市販の低圧コールドスプレー装置、例えばプラズマ技研工業株式会社製のPCS-1000などを用いて行うことができる。コールドスプレー法は溶射の一種と分類されるが、熱エネルギーにより材料粒子を溶かして吹き付ける従来の溶射法と比較すると、材料粒子を溶融させず、主に運動エネルギーで皮膜を形成するという点で、大きな違いがある。
コールドスプレー法では混合粉末を固相状態で基材9へ衝突させるので、従来のように材料粒子を溶かして吹き付ける溶射法では使用できなかった結晶を用いて、樹脂複合材料皮膜1に熱伝導性を付与することができる。つまり、コールドスプレー法では混合粉末を溶融させないので、無機粒子3としては、熱伝導性を有する材質だけでなく、結晶構造を有することで熱伝導性を発揮するものも選択できる。
材料粒子すなわち混合粉末粒子が基材9に衝突して凝着するには、吹き付け速度として、臨界速度Vcr(Critical Velocity)を超える速度が必要である。吹き付け速度が臨界速度Vcr以下では、基材9に皮膜が形成されず、基材9がエロージョン摩耗し、基材9に小さなクレーター状のくぼみが形成される。一方、吹き付け速度が臨界速度Vcrを超えると、材料粒子が基材9に衝突する際、材料粒子と基材9との界面付近で塑性変形が生じる。この衝突および変形により、界面付近では温度が上昇し、外に向かって膜状のジェットが押し出される。これらの過程で、材料粒子と基材9との間、および材料粒子と皮膜界面との間に固相接合が生じ、皮膜が形成されるとされている。吹き付け速度が臨界速度Vcrを超える場合、材料粒子の熱変質を抑えることもできる。
本開示の樹脂複合材料皮膜1の製造方法は、前述のコールドスプレー装置を用いたコールドスプレー法に限定されるものではなく、実施の形態1の構造を有する樹脂複合材料皮膜1が形成できれば他の装置及び製造方法を用いても良い。しかし、樹脂複合材料皮膜1は、低圧型のコールドスプレー装置を用いて、基材9にコールドスプレー用粉末を吹き付けて形成することが好ましい。低圧型のコールドスプレー装置を用いることで、無機粒子3の長軸を皮膜の形成方向に配向できることが利点として挙げられる。また、液剤塗布型コーティング皮膜に比較して、粉末状の樹脂粒子2を用いることで、樹脂粒子2の形状に由来した微細な表面凹凸を形成し、高い撥水撥油性および高い放熱性を発揮することができる。高圧型のコールドスプレー装置を用いた場合、混合粉末粒子が吹き付けられる際の衝撃が強くなり、皮膜表面凹凸1aが脱落するため、良好な皮膜を形成できない。
また、第2工程のように混合粉末を基材9に吹き付けて樹脂複合材料皮膜1を形成することにより、複数の無機粒子3が樹脂複合材料皮膜1の面方向D1だけでなく膜厚方向D2にもが分散された構成が、容易に得られる。従来のように熱伝導性の材料を静電植毛して配置する製造方法では、熱伝導性の材料が樹脂複合材料皮膜の膜厚方向D2には分散されない。
図4は、実施の形態2に係る樹脂複合材料皮膜1の製造に用いるコールドスプレー装置4を示す概略図である。図4中、破線矢印はキャリアガスの流れ方向を表し、一点鎖線矢印は混合粉末の流れ方向を表す。また、図4中、実線矢印は、成膜方向を表す。図4に示されるコールドスプレー装置4は、ガス供給口5と、ヒーター6と、粉末供給部7と、ノズル8と、を有している。コールドスプレー装置4は、ガス供給口5から供給される加圧されたキャリアガスをヒーター6で加熱し、粉末供給部7から供給される混合粉末に含まれる樹脂粒子2および無機粒子3と共に、ノズル8の先端から基材9に向けて噴射し、基材9上に樹脂複合材料皮膜1を形成する。低圧型のコールドスプレー装置4は、キャリアガスの圧力が1Mpa以下であるものを指す。
キャリアガスを加熱する際の温度は、100℃以上、且つ500℃以下であることが好ましい。この温度が100℃未満であると、樹脂粒子2および無機粒子3の基材9への付着率が低くなるため、好ましくない。温度が500℃を超えると、樹脂粒子2が溶解し、防汚性が劣化するため好ましくない。また、キャリアガスの圧力は、0.2MPa以上、0.8MPa以下であることが好ましい。キャリアガスの圧力が0.2MPa未満であると、基材9と基材9上に形成された樹脂複合材料皮膜1との密着力が十分得られないため好ましくない。キャリアガスの圧力が0.8MPaを超えることは、装置上、実現困難であるため好ましくない。
樹脂複合材料皮膜1の形成において、樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径L32と、は混合粉末粒子の吹き付け速度に影響を及ぼす。
樹脂粒子2の粒径は、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。樹脂粒子2の粒径が1μm以上であることによって、樹脂粒子2の運動量が大きく、減速しにくいため、樹脂粒子2の吹き付け速度は臨界速度Vcrを上回り、樹脂複合材料皮膜1は高い機械強度を発揮できる。一方で、樹脂粒子2の粒径が1μm未満であると、第1工程において、塊状の樹脂粒子2を解すことができず、無機粒子3との混合が十分に行えないため、第2工程においても樹脂複合材料皮膜1に無機粒子3を均一に分散させることができない。また、樹脂粒子2の粒径は、400μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。樹脂粒子2の粒径が400μmを超えると、樹脂粒子2はキャリアガスによる加速がされにくく、樹脂粒子2の吹き付け速度が臨界速度Vcrを下回り、樹脂複合材料皮膜1の機械強度を確保できない。
無機粒子3の短径L32は、0.2μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。無機粒子3の短径L32が0.2μm以上であることによって、無機粒子3はキャリアガスの加速により大きな運動量を得ることができ、基材9の表面に形成されるキャリアガスの速度境界層においても減速しにくいため、吹き付け速度は臨界速度Vcrを上回り、樹脂複合材料皮膜1は高い機械強度を発揮できる。一方で、無機粒子3の短径L32が0.2μm未満であると、第1工程において混合粉末を攪拌する際に、無機粒子3の形状が崩れやすく、樹脂複合材料皮膜1を製造する上での実用性を確保できなくなる。
樹脂複合材料皮膜1の形成において、無機粒子3のアスペクト比は、無機粒子3の配向性に影響を及ぼす。無機粒子3のアスペクト比は、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。無機粒子3のアスペクト比が10以上であることによって、皮膜の形成途中において、アスペクト比が高い無機粒子3が樹脂複合材料皮膜1の表面に凝着し、皮膜表面凹凸1aが形成しやすいため、樹脂複合材料皮膜1の放熱性及び撥水撥油性を向上できる。また、無機粒子3のアスペクト比は、200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。無機粒子3のアスペクト比が200以下であることによって、皮膜形成の途中において、無機粒子3が基材9に衝突した際に転倒することなく、配向した状態で樹脂複合材料皮膜1を形成するため、高い熱伝導性を発揮できる。一方で、無機粒子3のアスペクト比が200を超えると、第1工程において混合粉末を攪拌する際に、絡み合った無機粒子3が解けにくく、樹脂複合材料皮膜1に無機粒子3を均一に分散させることができない。
以下、実施例および比較例により本開示の詳細を説明するが、これらによって本開示の内容が限定されるものではない。
(共通条件)
ここで、実施例および比較例のいずれにおいても共通の条件について説明する。基材9としては、JIS H4000に規定する合金番号がA3003のアルミニウムからなる板厚2mmのアルミニウム板を用いた。
実施例および比較例のそれぞれの条件、並びに面方向D1に対する無機粒子3の角度及び皮膜表面凹凸1aの二乗平均平方根高さの測定結果を、表1に示す。形成された樹脂複合材料皮膜1の断面観察には、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製;SU3800)が使用され、また、形成された樹脂複合材料皮膜1の表面観察には、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製;LEXT(登録商標)OLS5100)が使用された。
Figure 0007123288000001
<実施例1>
表1の「実施例1」に、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を示す。樹脂粒子2には、エムテック化学株式会社製PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粉末HMP-30を用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーPlatelets CFP 012Pを用いた。樹脂粒子2と無機粒子3とを混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例2は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例2」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、スリーエム社製ダイニオン(登録商標)TF9202Zを用いた。無機粒子3には、DIC株式会社製アルミナフィラーAP20を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度200℃、ガス圧0.45MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例3は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例3」に、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を示す。樹脂粒子2には、エムテック化学株式会社製PTFE粉末HMP-70を用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーPlatelets CFP 012Pを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度400℃、ガス圧0.55MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例4は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例4」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、PolySciences社製PTFE粉末Microdispers-3000を用いた。無機粒子3には、DIC株式会社製アルミナフィラーAP20を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例5>
実施例5は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例5」に、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を示す。樹脂粒子2には、AGC株式会社製Fluon(登録商標)G350を用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーPlatelets CFP 012Pを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例6>
実施例6は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例6」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、エムテック化学株式会社製PTFE粉末HMP-50を用いた。無機粒子3には、昭和電工株式会社製窒化ホウ素フィラーUHP-2を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例7>
実施例7は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例7」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、PolySciences社製PTFE粉末Microdispers-3000を用いた。無機粒子3には、タテホ化学工業株式会社製窒化炭化ケイ素ウィスカーSilar(登録商標)SCWを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例8>
実施例8は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例8」に、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を示す。樹脂粒子2には、AGC株式会社製Fluon(登録商標)G163を用いた。無機粒子3には、DIC株式会社製アルミナフィラーAP10を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.4MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例9>
実施例9は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例9」に、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を示す。樹脂粒子2には、AGC株式会社製Fluon(登録商標)G190を用いた。無機粒子3には、河合石灰工業株式会社製ベーマイトフィラーBMF-920を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.6MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例10>
実施例10は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3の体積割合と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例10」に、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を示す。樹脂粒子2には、スリーエム社製ダイニオン(登録商標)TF9205を用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーPlatelets CFP 012Pを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度250℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例11>
実施例11は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例11」に、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を示す。樹脂粒子2には、スリーエム社製ダイニオン(登録商標)TF9201Zを用いた。無機粒子3には、DIC株式会社製アルミナフィラーAP20を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度350℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例12>
実施例12は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「実施例12」に、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を示す。樹脂粒子2には、スリーエム社製ダイニオン(登録商標)TF9207Zを用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーPlatelets CFP 012Pを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度350℃、ガス圧0.7MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例13>
実施例13は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「実施例13」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、エムテック化学株式会社製PTFE粉末HMP-50を用いた。無機粒子3には、昭和電工株式会社製窒化ホウ素フィラーUHP-1Kを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例14>
実施例14は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「実施例14」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、PolySciences社製PTFE粉末Microdispers-3000を用いた。無機粒子3には、タテホ化学工業株式会社製窒化ケイ素ウィスカーNCWを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例15>
実施例15は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「実施例15」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、AGC株式会社製Fluon(登録商標)G163を用いた。無機粒子3には、DIC株式会社製アルミナフィラーAP05を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.4MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例16>
実施例16は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「実施例16」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、AGC株式会社製Fluon(登録商標)G190を用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーFlakes CFF 200-15を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.6MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例17>
実施例17は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「実施例17」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、スリーエム社製ダイニオン(登録商標)TF9205を用いた。無機粒子3には、DIC株式会社製アルミナフィラーAP20を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度250℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例18>
実施例18は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3の体積割合と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「実施例18」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、スリーエム社製ダイニオン(登録商標)TF9201Zを用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーPlatelets CFP 012Pを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度350℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<実施例19>
実施例19は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「実施例19」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、スリーエム社製ダイニオン(登録商標)TF9207Zを用いた。無機粒子3には、タテホ化学工業株式会社製窒化ケイ素ウィスカーNCWを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度400℃、ガス圧0.7MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<比較例1>
比較例1は、樹脂複合材料皮膜1に無機粒子3を含んでいない例であり、その他は実施例1と同様である。つまり、表1の「比較例1」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径を用いた。樹脂粒子2には、エムテック化学株式会社製PTFE粉末HMP-30を用いた。樹脂粒子2を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂皮膜を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。
<比較例2>
比較例2は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「比較例2」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、スリーエム社製ダイニオン(登録商標)TF9202Zを用いた。無機粒子3には、DIC株式会社製アルミナフィラーAP20を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度150℃、ガス圧0.4MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。比較例2の樹脂複合材料皮膜1では、表面凹凸の大きさが適度な表面凹凸よりも小さく、36μmであった。
<比較例3>
比較例3は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス温度と、樹脂複合材料皮膜1を形成する際のガス圧と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「比較例3」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、エムテック化学株式会社製PTFE粉末HMP-70を用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーPlatelets CFP 012Pを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度500℃、ガス圧0.6MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。比較例3の樹脂複合材料皮膜1では、表面凹凸の大きさが適度な表面凹凸よりも大きく、623μmであった。
<比較例4>
比較例4は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「比較例4」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、PolySciences社製PTFE粉末Microdispers-200を用いた。無機粒子3には、DIC株式会社製アルミナフィラーAP20を用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。比較例4の樹脂複合材料皮膜1では、表面凹凸の大きさが適度な表面凹凸よりも小さく、32μmであった。
<比較例5>
比較例5は、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2と、無機粒子3と、が実施例1と異なるものであり、その他は実施例1と同様である。表1の「比較例5」に示す、樹脂複合材料皮膜1を構成する樹脂粒子2の粒径と、無機粒子3の短径と、無機粒子3のアスペクト比と、無機粒子3の体積割合と、を用いた。樹脂粒子2には、ダイキン工業株式会社製PTFE粉末F-104を用いた。無機粒子3には、スリーエム社製窒化ホウ素フィラーPlatelets CFP 012Pを用いた。樹脂粒子2と、無機粒子3と、を混合した混合粉末を用いて、コールドスプレーによりガス温度300℃、ガス圧0.5MPaにて基材9に樹脂複合材料皮膜1を形成した。樹脂複合材料皮膜1の形成後、走査型電子顕微鏡による断面観察から、面方向D1に対する無機粒子3の角度を測定した。レーザー顕微鏡による表面観察から、皮膜表面凹凸を測定した。結果を表1に示す。比較例5の樹脂複合材料皮膜1では、表面凹凸の大きさが適度な表面凹凸よりも大きく、703μmであった。
また、実施例および比較例のそれぞれで得られた樹脂複合材料皮膜1の撥水性、撥油性、及び放熱性の評価結果を、表2に示す。
Figure 0007123288000002
撥水性については、室温(25℃)にて1時間放置した、基材9であるアルミニウム板を用いて評価した。内径0.1mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コートされた針の先端から約5μLの水滴を樹脂複合材料皮膜1の表面に滴下し、接触角計(共和界面科学株式会社製CX-150型)を用いて、接触角(初期水接触角)を測定した。接触角が大きいほど撥水性が良好であるといえる。撥水性は、下記の基準に従って評価した。つまり、1~5のうち小さい数字ほど、接触角が大きい、すなわち撥水性が良好である。結果を表2に示す。
1:接触角が150°以上のもの。
2:接触角が130°以上、150°未満のもの。
3:接触角が110°以上、130°未満のもの。
4:接触角が90°以上、110°未満のもの。
5:接触角が90°未満のもの。
撥油性については、室温(25℃)にて1時間放置した、基材9であるアルミニウム板を用いて評価した。内径0.1mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コートされた針の先端から約5μLの油滴(食用サラダ油)を樹脂複合材料皮膜1の表面に滴下し、接触角計(共和界面科学株式会社製CX-150型)を用いて、接触角(初期油接触角)を測定した。接触角が大きいほど撥油性が良好であるといえる。撥油性は、下記の基準に従って評価した。つまり、1~5のうち小さい数字ほど、接触角が大きい、すなわち撥油性が良好である。結果を表2に示す。
1:接触角が80°以上のもの。
2:接触角が70°以上、80°未満のもの。
3:接触角が60°以上、70°未満のもの。
4:接触角が50°以上、60°未満のもの。
5:接触角が50°未満のもの。
放熱性については、室温(25℃)にて一定出力で加熱した、基材9であるアルミニウム板の温度を測定することで評価した。加熱には、ラバーヒーター(ミズホクラフト株式会社製;MC50-50)を用いた。温度測定には、熱電対(株式会社八光電機製;HTK0219)を用いた。測定では、樹脂複合材料皮膜1を施工した面の対面にラバーヒーターを配置して、アルミニウム板と、ラバーヒーターと、の間に熱電対を配置した。ラバーヒーターを用いて出力を15Wとして1時間加熱を行った後に、熱電対を用いて温度を測定した。樹脂複合材料皮膜1を備えないアルミニウム板を用いた場合の温度を基準温度と定義して、測定された温度から基準温度を差し引いた値を放熱温度と定義した。放熱性は、下記の基準に従って評価した。つまり、1~5のうち小さい数字ほど放熱性が良好である。結果を表2に示す。
1:放熱温度が12℃以上のもの。
2:放熱温度が8℃以上、12℃未満のもの。
3:放熱温度が4℃以上、8℃未満のもの。
4:放熱温度が0℃以上、4℃未満のもの。
5:放熱温度が0℃未満のもの。
表2に示されているように、実施例1~19の樹脂複合材料皮膜1は、撥水性および撥油性の評価結果が3以下であり、接触角に基づく撥水性および撥油性が良好である。また、実施例1~19の放熱性を有する樹脂複合材料皮膜1は、放熱性の評価結果が3以下であり、一定加熱下での測定温度に基づく放熱性が良好である。中でも、実施例1の撥水撥油性および放熱性を有する樹脂複合材料皮膜1は、撥水撥油性が良好であると共に、放熱性が最も良好であった。実施例1~19では、複数の樹脂粒子2と複数の無機粒子3とを含む混合粉末を基材9に吹き付けることによって樹脂複合材料皮膜1が形成され、形成された樹脂複合材料皮膜1の皮膜表面には、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸が形成されている。実施例1~19は、このような材料および表面凹凸の大きさの条件を満たすことで、高い撥水撥油性および高い放熱性を有する樹脂複合材料皮膜1を製造できる。
一方、比較例1~5では上記の条件を満たさないので、所望の撥水撥油性あるいは放熱性が得られない。比較例1は、材料の条件を満たしておらず、比較例2~5は、表面凹凸の大きさの条件を満たしていない。具体的には、比較例1の樹脂皮膜は、無機粒子3を備えていないため、皮膜の熱伝導性が悪化し、放熱性が著しく悪化する結果となっている。また、比較例2の樹脂複合材料皮膜1は、表面凹凸が小さいため、表面形状の効果による撥水撥油性の向上が得られず、また、放熱面積が増えないため、放熱性が向上しない結果となっている。また、比較例3の樹脂複合材料皮膜1は、表面凹凸が過度に大きいため、表面凹凸の凹部分に水滴または油滴が入り込むことで、撥水撥油性が著しく悪化する結果となっている。また、比較例4および比較例5では、樹脂粒子2の粒径が小さすぎる又は大きすぎることにより、適度な表面凹凸が形成されず、また樹脂粒子2の密着性が悪くなるので樹脂複合材料皮膜1が脆くなり、皮膜が剥離してしまう。したがって、比較例4および比較例5の樹脂複合材料皮膜1は、撥水撥油性および放熱性が悪化する結果となっている。
以上のように、実施の形態2の樹脂複合材料皮膜1の製造方法は、母相を構成する複数の樹脂粒子2と、形状に異方性を有し、熱伝導性を有する複数の無機粒子3と、を含む樹脂複合材料皮膜1の製造方法である。樹脂複合材料皮膜1の製造方法は、複数の樹脂粒子2と複数の無機粒子3とを含む混合粉末を基材9に吹き付けることによって、無機粒子3を膜厚方向D2に配向させ、且つ皮膜表面に、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸を形成する工程(第2工程)を備える。
この製造方法によれば、上記の結果からも分かるように、高い撥水撥油性および高い放熱性を有する樹脂複合材料皮膜1の製造方法を提供することができる。
また、樹脂複合材料皮膜1の製造方法では、第2工程において、混合粉末を固相状態で基材9へ衝突させる。これにより、従来のように材料粒子を溶かして吹き付ける溶射法では使用できなかった結晶を用いて、樹脂複合材料皮膜1に熱伝導性を付与することができ、熱伝導性材料の選択肢が増す。
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略および変更することも可能である。
1 樹脂複合材料皮膜、1a 皮膜表面凹凸、1b 皮膜基部、2 樹脂粒子、3 無機粒子、4 コールドスプレー装置、5 ガス供給口、6 ヒーター、7 粉末供給部、8 ノズル、9 基材、11 第1面、12 第2面、12p 凸部分、12r 凹部分、D1 面方向、D2 膜厚方向、L31 (無機粒子の)長径、L32 (無機粒子の)短径、Vcr 臨界速度。

Claims (11)

  1. 母相を構成する複数の粉末状の樹脂粒子と、熱伝導性を有する複数の無機粒子と、を含む樹脂複合材料皮膜であって、
    前記無機粒子は、薄い円柱状の扁平状粒子または針状粒子であって、長軸方向が膜厚方向に配向され、長径を短径にて除した値であるアスペクト比が平均10以上かつ200以下であり、
    皮膜表面には、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸が形成されている、
    樹脂複合材料皮膜。
  2. 複数の前記樹脂粒子は、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂およびフッ素樹脂のうち1種類以上の樹脂を含む、
    請求項1に記載の樹脂複合材料皮膜。
  3. 複数の前記樹脂粒子の平均粒径は、1μm以上かつ400μm以下である、
    請求項1又は2に記載の樹脂複合材料皮膜。
  4. 複数の前記無機粒子は、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、黒鉛、窒化アルミニウム、酸化スズ、窒化ホウ素、雲母、タルク、ベーマイト、ムライト、炭素繊維およびこれらの複合酸化物または混合物のうち少なくとも1種以上で構成されたものである、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂複合材料皮膜。
  5. 複数の前記無機粒子の平均短径は、0.2μm以上かつ20μm以下である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂複合材料皮膜。
  6. 前記無機粒子を5体積%以上かつ40体積%未満含む
    請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂複合材料皮膜。
  7. 前記無機粒子は、面方向に対して長軸が70°以上傾斜するように配向されている
    請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂複合材料皮膜。
  8. 前記樹脂複合材料皮膜は、基材上に設けられており、
    前記表面凹凸が形成された前記皮膜表面は、前記基材の側の面とは反対側の面であり、
    前記表面凹凸の凸部分は、配向された前記無機粒子の少なくとも一部分と、当該一部分を覆うように配されて前記凸部分の表面を構成する複数の前記樹脂粒子と、を有する
    請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂複合材料皮膜。
  9. 複数の前記無機粒子は、前記母相中において面方向および膜厚方向で分散するように配置されている
    請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂複合材料皮膜。
  10. 母相を構成する複数の粉末状の樹脂粒子と、薄い円柱状の扁平状粒子または針状粒子であり、長径を短径にて除した値であるアスペクト比が平均10以上かつ200以下である熱伝導性を有する複数の無機粒子と、を含む樹脂複合材料皮膜の製造方法であって、
    複数の前記樹脂粒子と複数の前記無機粒子とを含む混合粉末を基材に吹き付けることによって、前記無機粒子を長軸方向が膜厚方向になるように配向させ、且つ皮膜表面に、二乗平均平方根高さが40μm以上且つ600μm以下となる表面粗さを有した表面凹凸を形成する工程を備える
    樹脂複合材料皮膜の製造方法。
  11. 前記工程において、前記混合粉末を固相状態で前記基材へ衝突させる
    請求項10に記載の樹脂複合材料皮膜の製造方法。
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