JP2009005584A - ゲル化剤、凍結保存剤、細胞保存用容器、細胞の凍結保存方法、細胞の融解方法、哺乳動物の細胞 - Google Patents
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Abstract
【課題】哺乳動物の卵子や胚等の細胞を高い生存性を維持したままで保存ができ、農家の庭先でも移植が可能な細胞の凍結保存方法、融解方法等を提供する。
【解決手段】細胞の一例である胚30を凍結保存する場合、胚30をガラス化液9,12で平衡化し、ゼラチンガラス化液11とともにミネラルオイル16に注入してゼラチンガラス化液11によって胚30を包埋し、カプセル化した胚30'を希釈液17とともに移植用ストロー2内に封入し、この移植用ストロー2を液体窒素21内に投入する。ゼラチンガラス化液11は、ゲル化剤であるゼラチン13を含むガラス化液12であり、ゲル化剤はゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチンの少なくともいずれかを含んで冷却されるとガラス化液12をゲル化して、胚30はゲル化したガラス化液12によって包埋される。カプセル化した胚30'を融解するには、移植用ストロー2を液体窒素21から取り出して微温湯24中に静置する。
【選択図】図1
【解決手段】細胞の一例である胚30を凍結保存する場合、胚30をガラス化液9,12で平衡化し、ゼラチンガラス化液11とともにミネラルオイル16に注入してゼラチンガラス化液11によって胚30を包埋し、カプセル化した胚30'を希釈液17とともに移植用ストロー2内に封入し、この移植用ストロー2を液体窒素21内に投入する。ゼラチンガラス化液11は、ゲル化剤であるゼラチン13を含むガラス化液12であり、ゲル化剤はゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチンの少なくともいずれかを含んで冷却されるとガラス化液12をゲル化して、胚30はゲル化したガラス化液12によって包埋される。カプセル化した胚30'を融解するには、移植用ストロー2を液体窒素21から取り出して微温湯24中に静置する。
【選択図】図1
Description
本発明は、哺乳動物の卵子や胚等を高い生存性を有したままで保存・融解・移植を可能にするゲル化剤,凍結保存剤,細胞保存用容器,細胞の凍結保存方法,細胞の融解方法,及びこれらの方法によって保存又は融解される哺乳動物の細胞に関する。
哺乳動物では、体外に取り出された卵子、胚、精子等の細胞を雌の体内に注入して受胎させるには、雌の性周期が受胎に適した状態になっていなければならない。このため、人工授精又は胚移植を適期に行うためには、卵子、胚、精子等の細胞を、代謝を停止させた状態で生きたままで長期間保存する必要があり、卵子、胚、精子等の細胞を凍結保存することが行われている。この凍結保存方法として、例えば、緩慢凍結法が知られている。
緩慢凍結法は、比較的低濃度の耐凍剤を用いて、卵子や胚等の細胞を毎分0.3〜0.5℃の速度で−30℃前後まで冷却した後に、液体窒素に浸漬して凍結する方法である。卵子や胚等の細胞は、液体窒素の温度まで冷却されると、細胞内外がガラス化されて固化して、実質的に分子の動きが無くなり、ガラス化された細胞は、液体窒素中で半永久的に保存できると考えられている。また、耐凍剤の濃度は比較的低濃度であるので、凍結した卵子や胚等の細胞は、大がかりな装置を用いることなく融解されて希釈され、農家の庭先等において直接に移植に供される。
しかしながら、緩慢凍結法は、冷却の過程において、細胞外に氷晶が形成し、この氷晶が卵子や胚等の細胞に物理的な損傷を与えるため、細胞の生存性が低くなるとともに受胎率も低くなる傾向がある。さらに、緩慢凍結法は冷却の温度制御に高価で大がかりな装置が必要となる。
そこで、このよう問題を解決するガラス化凍結法が提案されている。この凍結法は、保存溶液として高濃度の耐凍剤(ガラス化液)を用いて、卵子や胚等の細胞を液体窒素に浸漬して液体窒素の温度まで急速に冷却することにより、卵子や胚等の細胞内外に氷晶を形成することなく、細胞の内外をガラス化するものである。このガラス化凍結法は、温度制御が不要であるため、高価で大がかりな装置が不要であるという利点がある反面、高濃度の耐凍剤(ガラス化液)が卵子や胚等の細胞に与える毒性が高いという欠点がある。
このような欠点を補うガラス化凍結法も提案されている。このガラス化凍結法は、特許文献1〜3に記載されているように、卵子や胚等の細胞を少量のガラス化液とともに液体窒素に浸漬する方法である。
一方、特許文献4には、ストロー内に胚を有したガラス化保存液層と希釈液層を隣接して設け、これらの層の両端部に空気層を設けて、ストロー内で胚等の融解・希釈を行って、ストローをそのまま移植に使用するガラス化保存法も提案されている。
特許文献1〜3に記載のガラス化凍結法では、特殊な容器や用具を胚の保存用に使用しているため、胚を移植する場合には、胚を融解した後に一旦容器から取り出して希釈し、移植用の容器に移し直す必要がある。この作業は無菌室等で顕微鏡を用いる作業であるため、凍結された胚を農家の庭先で融解して直接に移植することはできない。さらに特許文献1,2に記載のガラス化凍結法では、卵子や胚等の細胞が直接に液体窒素に曝されて病原菌等に汚染される虞があるという問題がある。
また特許文献4に記載のガラス化保存法では、氷水中に保持したストロー内のガラス化液の中に、長く延びたピペットを用いて卵子や胚等の細胞を導入し、希釈液を重層した後にストローの先端をシールし、液体窒素内に静置して凍結し、融解は二段階で温水中に保持して行われるが、ストローは内径が小さいため、ストロー内に細胞を導入する操作は煩雑であって熟練を要する。またストロー内に注入されたガラス化液の量は多量であるため、ガラス化液が卵子や胚等の細胞に与える毒性の悪影響が高いと懸念される。
本発明は、このような問題や懸念を解消するためになされたものであり、哺乳動物の卵子や胚等の細胞を高い生存性を維持したままで保存が可能であり、農家の庭先でも移植を可能にするゲル化剤、凍結保存剤、細胞保存用容器、細胞の凍結保存方法、細胞の融解方法、哺乳動物の細胞を提供することを目的とする。
このような課題を解決するため、本発明は、以下の特徴を有する。特徴の一つは、哺乳動物の卵子や胚等の細胞を凍結する際に用いられるガラス化液と混合されるゲル化剤であって、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチンの少なくともいずれかを含有し、冷却されるとガラス化液をゲル化することを特徴とする。
この特徴によれば、ゲル化剤は、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチンの少なくともいずれかを含有し、冷却されるとガラス化液をゲル化することにより、ゲル化剤が混合されたガラス化液を冷却したオイル内に滴下すると、ガラス化液はゲル化してカプセルを形成する。このため、哺乳動物の卵子や胚等の細胞を、ゲル化剤が混合されたガラス化液とともに冷却したオイル内に滴下すると、ゲル化したガラス化液が卵子や胚等の細胞を包埋する。また融解時においては、ゲル化したガラス化液を加温すると、カプセル化したガラス化液が崩壊する。このため、極めて少量のガラス化液によって細胞を包埋することができ、その結果、ガラス化液が細胞に与える毒性の悪影響がより小さくなって、細胞を高い生存性を維持したままで保存することが可能になる。
また特徴の一つは、哺乳動物の卵子や胚等の細胞を凍結する際に用いられ、請求項1に記載のゲル化剤とガラス化液を混合してなる凍結保存剤(例えば、実施形態におけるゼラチンガラス化液11)であることを特徴とする。
この特徴によれば、哺乳動物の卵子や胚等の細胞を凍結する際に、請求項1に記載のゲル化剤とガラス化液を混合してなる凍結保存剤を用いることにより、凍結保存剤の溶液に卵子や胚等の細胞を浸漬すると、細胞内の水分が流出した後にガラス化液が細胞内に浸透する。そして、ガラス化液が内部に浸透した細胞を、凍結保存剤とともに冷却したオイル内に滴下すると、ゲル化したガラス化液が細胞を包埋する。その結果、細胞内外の液体の重量モル濃度を高めることができ、細胞内の氷晶形成を抑制して細胞の損傷を防止することができる。
また特徴の一つは、容器内に、請求項2に記載の凍結保存剤によって包埋された哺乳動物の卵子や胚等の細胞を、凍結保存剤に含まれるガラス化液を希釈する希釈液とともに封入した細胞保存用容器であることを特徴とする。
この特徴によれば、容器内に、凍結保存剤によって包埋された哺乳動物の卵子や胚等の細胞を、希釈液とともに封入したものを細胞保存用容器とすることにより、凍結時にカプセル化したガラス化液がゲル化すると、細胞が移植用ストロー内の希釈液中にありながらガラス化液が希釈液と混ざり合わないため、カプセル化したガラス化液を十分にガラス化することができ、細胞を高い生存性を維持したままでの保存を可能にすることができる。
また特徴の一つは、容器が移植用ストローであることを特徴とする。
この特徴によれば、容器を移植用ストローにすることにより、細胞の保存と移植作業を同一の容器で行うことができ、細胞を移植用の容器に移し直す作業が不要になり、移植作業を容易にすることができる。
また特徴の一つは、哺乳動物の卵子や胚等の細胞を請求項2に記載の凍結保存剤とともに冷却用オイル(例えば、実施形態におけるミネラルオイル16)に注入し、凍結保存剤によって細胞を包埋し、凍結保存剤とともに細胞を凍結する凍結保存方法である。
この特徴によれば、卵子や胚等の細胞を請求項2に記載の凍結保存剤とともに冷却用オイルに注入し、凍結保存剤によって細胞を包埋し、凍結保存剤とともに細胞を凍結することにより、卵子や胚等の細胞は、ゲル化剤を含むガラス化液によって包埋された状態でガラス化される。このため、ガラス化液は卵子や胚等の細胞を覆うだけの極少量で済み、ガラス化液が細胞に与える毒性の悪影響を小さく抑えることができる。
また特徴の一つは、凍結保存剤によって包埋された哺乳動物の卵子や胚等の細胞を、凍結保存剤に含まれるガラス化液を希釈するための希釈液に浸し、該希釈液とともに細胞を容器(例えば、実施形態における移植用ストロー2)に移し、容器ごと液体窒素に浸漬して凍結保存剤とともに細胞を凍結する凍結保存方法である。
この特徴によれば、凍結保存剤によって包埋された細胞を希釈液に浸し、該希釈液とともに細胞を容器に移して液体窒素に浸漬して凍結することで、凍結時にカプセル化したガラス化液がゲル化することによって、容器内の希釈液中にありながらガラス化液が希釈液と混ざり合わないため、カプセル化したガラス化液を十分にガラス化することができ、細胞を高い生存性を維持したままで保存することができる。
また特徴の一つは、請求項6記載の容器を液体窒素から取り出して微温湯中に静置して、容器(例えば、実施形態における移植用ストロー2)内の哺乳動物の卵子や胚等の細胞、凍結保存剤、希釈液を融解し、この融解した希釈液によって凍結保存剤に含まれるガラス化液を希釈することを特徴とする。
この特徴によれば、請求項6記載の容器を液体窒素から取り出して微温湯中に静置し、容器内の細胞、凍結保存剤、希釈液を融解し、この融解した希釈液によってガラス化液を希釈することで、容器を液体窒素から取り出して微温湯中に静置すると、カプセル化したガラス化液は希釈液中で崩壊し、細胞内外のガラス化液は容器内の希釈液で希釈される。このため、ガラス化液が融解するとすぐにガラス化液は希釈されるので、ガラス化液が細胞に与える毒性の悪影響を抑えることができるとともに、溶融・希釈作業を確実且つ簡便に行うことができる。
また特徴の一つは、請求項5〜7のいずれかに記載の方法によって保存又は融解される哺乳動物の細胞であることを特徴とする。
この特徴によれば、哺乳動物の細胞が請求項5〜7のいずれかに記載の方法によって保存又は融解されるものであることにより、哺乳動物の卵子や胚等の細胞を高い生存性を維持したままで保存されて容易な操作で移植に供される哺乳動物の細胞を提供することができる。
本発明に係わるゲル化剤、凍結保存剤、細胞保存用容器、細胞の凍結保存方法、細胞の融解方法、哺乳動物の細胞によれば、上記特徴を有することによって、哺乳動物の卵子や胚等の細胞を高い生存性を維持したままでの保存が可能になり、また農家の庭先等での細胞の移植を可能にすることができる。
以下、本発明に係わるゲル化剤、凍結保存剤、細胞保存用容器、細胞の凍結保存方法、細胞の融解方法、哺乳動物の細胞の好ましい実施の形態を図1に基づいて説明する。本発明において、哺乳動物とは、牛、馬、山羊、兎、マウス等の家畜や実験動物の他、他の哺乳動物全てが含まれる。先ず、細胞保存用容器について説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
細胞保存用容器1は、図1(h)(説明図)に示すように、細長の円筒形を有した移植用ストロー2と、その両端部の開口に挿着された栓3,4とを有して構成されている。移植用ストロー2内には、後述する凍結保存剤によって包埋された哺乳動物の卵子や胚等の細胞が、凍結保存剤に含まれるガラス化液12を希釈する希釈液17とともに封入されている。
次に、細胞保存用容器1内に封入された細胞を凍結して保存する凍結保存方法について説明する。なお、本実施の凍結保存方法では、細胞が牛の胚である場合について説明する。先ず、図1(a)(説明図)に示すように、シャーレ6内においてリン酸緩衝液7によって胚30を洗浄する。またガラス化液とこれを希釈する希釈液を用意する。ガラス化液としては、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、シュークロースを添加したリン酸緩衝液を用い、希釈液としては、シュークロースを添加したリン酸緩衝液を用いる。なお、ガラス化液及び希釈液は、これらに限るものではなく、ガラス化液としては、例えば、グリセロースを添加した化合物を使用することができ、希釈液としては、エチレングリコールとショ糖を添加した化合物を使用することができる。
洗浄された胚30は、図1(b)(説明図)に示すように、シャーレ6内でガラス化液を1/2に希釈したガラス化平衡液9に浸漬する。胚30はガラス化平衡液9に浸漬されると、胚30の細胞内の水分がガラス化平衡液9に流出した後に、細胞外のガラス化平衡液9が細胞内に透過して、細胞内外のガラス化平衡液9の濃度が平衡に達するまで(平衡化)、胚30はガラス化平衡液9に浸漬される。
そして、図1(c)(説明図)に示すように、シャーレ6内に、希釈していないガラス化液12にゼラチン13を混合したゼラチンガラス化液11を入れて、胚30をゼラチンガラス化液11に浸漬して平衡化を行う。このように、胚30をガラス化液9,12によって平衡化する場合、最初に濃度の低いガラス化平衡液9によって平衡化した後に濃度の高いガラス化液12で平衡化するのは、ガラス化液9,12が胚30に与える毒性のショックを緩和するとともに、ガラス化液9,12を胚30に迅速且つ確実に浸漬させるためである。
ゼラチン13はガラス化液12をゲル化するためのゲル化剤として機能する。このゲル化剤は、ゲル化剤を混ぜたガラス化液12を冷却すると、ガラス化液12をゲル化するものであり、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチンの少なくともいずれかを使用することができる。なお、ゲル化剤としてアルギン酸塩を使用してもよい。この場合には、アルギン酸塩を含んだガラス化液を塩化カルシウム溶液と反応させることで、ガラス化液がゲル化する。
そして、図1(d)(説明図)に示すように、ピペット15によって約1μlのゼラチンガラス化液11とともに胚30を吸引する。そして、図1(e)(説明図)に示すように、シャーレ6'内に入れられて予め冷却しておいたミネラルオイル16中に、ゼラチンガラス化液11と胚30を滴下する。
ゼラチンガラス化液11と胚30がミネラルオイル16中に滴下されると、ゼラチン13を含んだガラス化液12が胚30の回りを覆った状態で付着するとともにミネラルオイル16によって冷却されてゲル化する。その結果、ガラス化液12はカプセル化して胚30を覆う。そして、図1(f)(説明図)に示すように、予め希釈液17が入れられたシャーレ6''内にカプセル化した胚30'を滴下して、カプセル化した胚30'に付着したミネラルオイル16を除去する。
そして、図1(g)(説明図)に示すように、注射筒19によって移植用ストロー2内にカプセル化した胚30'を希釈液17とともに吸入する。なお、移植用ストロー2は、一端側端部が栓(綿栓)3によって塞がれて、他端側端部が開口しており、注射筒19によって移植用ストロー2の栓(綿栓)3側から空気を吸引して移植用ストロー2内にカプセル化した胚30'と希釈液17を吸入する。そして、開口した他端側端部に栓4を圧着して移植用ストロー2内に胚30'と希釈液17を封入した状態にする。
そして、図1(h)(説明図)に示すように、移植用ストロー2内に胚30'と希釈液17を封入してなる細胞保存用容器1を液体窒素ガス上に静置後、液体窒素21を収容した容器22内に投入すると、胚30の細胞内外のガラス化液12は急速に液体窒素21の温度(−196℃)まで冷却されてガラス化した状態で凍結する。このため、胚30の細胞内外で氷晶が形成されることはなく、胚30が氷晶によって損傷する虞はない。このため、胚30を高い生存性を維持したままで保存することができる。
なお、ゲル化剤としてアルギン酸塩を使用する場合には、アルギン酸ナトリウムを含有したガラス化液に胚30を浸透して平衡化した後に、ピペット15によってガラス化液とともに胚30を吸引し、これらを塩化カルシウム水溶液中に滴下して、ガラス化液によって胚30をカプセル化する。そして、カプセル化した胚30を希釈液17中に滴下し、希釈液17とともに胚30を吸引して移植用ストロー2内に注入して密封し、密封した移植用ストロー2を液体窒素ガス上に静置後、液体窒素21内に投入する。
次に、胚30の融解方法について説明する。凍結保存された胚30の融解は、液体窒素21を収容した容器22から細胞保存用容器1を取り出して空気中に5秒間保持し、その後、図1(i)(説明図)に示すように、25℃の微温湯24を入れた容器25中に3分間静置する。これによって、カプセル化したガラス化液12が融解してカプセル状態が崩壊し、胚30の細胞内のガラス化液12が融解して細胞外に流出するとともに、希釈液17が胚30の細胞内に透過して細胞内のガラス化液12を希釈する。このため、濃度の高いガラス化液12が胚30の細胞内で融解してもすぐに希釈液17によって希釈されるので、胚30に対するガラス化液12の毒性の悪影響を小さくすることができる。また、胚30を融解する作業は、微温湯24中に細胞保存用容器1を入れるだけなので、農家の庭先でも胚30の融解作業を容易に行うことができる。そして、この融解された胚30を収容する容器は移植用ストロー2であるので、この移植用ストロー2をそのまま用いて、胚30を雌の体内に直接に移植することができる。
このようにガラス化保存されて融解された胚30は、高い生存性を維持したままで保存されるため、移植後の受胎率も高い。また保存、融解作業は非常に簡便であり、凍結保存から融解・移植までを同一の容器(移植用ストロー2)内で行うことができるので、本願の発明に係わる細胞の凍結保存方法、融解方法及びこれらの方法に使用されるゲル化剤、凍結保存剤、細胞保存用容器1等は非常に高い普及性を有している。
なお、前述した実施例では、牛の胚を例にして説明したが、本願発明を牛以外の哺乳動物の胚や卵子に適用してもよい。
1 細胞保存用容器
2 移植用ストロー(容器)
9 ガラス化平衡液(ガラス化液)
11 ゼラチンガラス化液(凍結保存剤)
12 ガラス化液
13 ゼラチン(ゲル化剤)
16 ミネラルオイル(冷却用オイル)
17 希釈液
21 液体窒素
24 微温湯
30,30' 胚
2 移植用ストロー(容器)
9 ガラス化平衡液(ガラス化液)
11 ゼラチンガラス化液(凍結保存剤)
12 ガラス化液
13 ゼラチン(ゲル化剤)
16 ミネラルオイル(冷却用オイル)
17 希釈液
21 液体窒素
24 微温湯
30,30' 胚
Claims (8)
- 哺乳動物の卵子や胚等の細胞を凍結する際に用いられるガラス化液と混合されるゲル化剤であって、
ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチンの少なくともいずれかを含有し、冷却されると前記ガラス化液をゲル化することを特徴とするゲル化剤。 - 哺乳動物の卵子や胚等の細胞を凍結する際に用いられ、請求項1に記載のゲル化剤とガラス化液を混合してなることを特徴とする凍結保存剤。
- 容器内に、請求項2に記載の凍結保存剤によって包埋された哺乳動物の卵子や胚等の細胞を、前記凍結保存剤に含まれるガラス化液を希釈する希釈液とともに封入してなることを特徴とする細胞保存用容器。
- 前記容器は、移植用ストローであることを特徴とする請求項3に記載の細胞保存用容器。
- 哺乳動物の卵子や胚等の細胞を請求項2に記載の凍結保存剤とともに冷却用オイルに注入し、前記凍結保存剤によって前記細胞を包埋し、該凍結保存剤とともに前記細胞を凍結することを特徴とする細胞の凍結保存方法。
- 前記凍結保存剤によって包埋された哺乳動物の卵子や胚等の細胞を、前記凍結保存剤に含まれるガラス化液を希釈するための希釈液に浸し、該希釈液とともに前記細胞を容器に移し、前記容器ごと液体窒素に浸漬して前記凍結保存剤とともに前記細胞を凍結することを特徴とする請求項5に記載の細胞の凍結保存方法。
- 請求項6記載の容器を液体窒素から取り出して微温湯中に静置して、前記容器内の哺乳動物の卵子や胚等の細胞、凍結保存剤、希釈液を融解し、この融解した希釈液によって前記凍結保存剤に含まれるガラス化液を希釈することを特徴とする細胞の融解方法。
- 請求項5〜7のいずれかに記載の方法によって保存又は融解されることを特徴とする哺乳動物の細胞。
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