JP2009002364A - テンショナガイドを具備するベルト伝動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】歯付ベルトの耐久性が良く、且つ、軽量であって静粛性に優れた、テンショナガイドを具備するベルト伝動装置を提供する。
【解決手段】無端の歯付ベルト2を、クランクシャフト用のタイミングプーリ3と二本のカムシャフト用の各タイミングプーリ4・5との間に、潤滑装置6のオイルポンプ用のタイミングプーリ7を経由し巻き掛ける。そして、歯付ベルト2のベルト背面2aに布材からなる耐摩耗層2fを設け、ベルト背面2aにテンショナガイド8を押接することにより張力を付与する張力付与装置12を具備させるとともに、テンショナガイド8におけるベルト背面2aとの接触面又はベルト背面2aの少なくとも一方に、潤滑油Aを供給可能な潤滑装置6を具備させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ベルト方式の動力伝達装置に関連するものである。
従来、自動車エンジン等の内燃機関において、クランクシャフトの動力をカムシャフトに伝達する方式にチェーン方式やベルト方式等がある。チェーン方式の場合、チェーンをクランクシャフトのクランクスプロケットとカムシャフトのカムスプロケットとに巻き掛けてクランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達している。一方、ベルト方式の場合は、歯付ベルトをクランクシャフト及びカムシャフトのタイミングプーリに巻き掛けることでクランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達している。また、チェーンや歯付ベルトをオルタネータ、ウォーターポンプ、エアコン用コンプレッサ、パワーステアリングオイルポンプ等の補機のスプロケット或はタイミングプーリを経由させ、これらの補機をクランクシャフトの回転を利用して駆動させる場合もある。
このようなチェーン方式及びベルト方式のいずれの場合も、チェーンや歯付ベルトが使用中に伸びて緩みが生じるため、張りを自動調整する張力付与装置が設けられている。張力付与装置はチェーン方式の場合、スプリング式や油圧式等のオートテンショナで付勢したテンショナガイドをチェーンに押接することで、チェーンに常時一定のテンションが生じるようにしている(例えば特許文献1参照)。また、ベルト方式の場合は、テンショナプーリをオートテンショナによって付勢しベルト背面に押接することで、歯付ベルトに常時一定のテンションが生じるようにしている(例えば特許文献2参照)。
そして、発明者はチェーン方式に着目し、チェーン方式の問題点、即ち、チェーンの重量が重いことや走行中の騒音が大きいこと等の問題点を、チェーンの代わりに歯付ベルトを用いることで解決しようとした。
特開2001−108031号公報(第3頁、第1図) 特開2003−278862号公報(第4頁、第1及び2図)
しかしながら、歯付ベルトがテンショナガイド上を摺動しつつ走行するため、ベルト背面とテンショナガイドとの摩擦により、ベルト背面が短期間で著しく磨耗する不具合が発生した。
本発明は、歯付ベルトの耐久性が良く、且つ、軽量であり静粛性に優れた、テンショナガイドを具備するベルト伝動装置の提供を目的としている。
請求項1に記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置は、複数のプーリに歯付ベルトが巻き掛けられており、駆動側の前記プーリの回転を従動側の前記プーリに伝達するテンショナガイドを具備するベルト伝動装置において、前記歯付ベルトのベルト背面に布材からなる耐摩耗層を設け、前記ベルト背面にテンショナガイドを押接することにより張力を付与する張力付与装置を具備させるとともに、前記テンショナガイドにおける前記ベルト背面との接触面又は前記ベルト背面の少なくとも一方に、潤滑油を供給可能な潤滑装置を具備させることを特徴としている。
この請求項1に記載しているテンショナガイドを具備するベルト伝動装置によると、前記潤滑装置を設けて前記テンショナガイドの前記接触面又は前記ベルト背面の少なくとも一方に前記潤滑油を供給することで、前記ベルト背面と前記テンションガイドとの摩擦抵抗を低減することができる。これに加え、前記ベルト背面に前記布材からなる前記耐摩耗層を設けることで、前記ベルト背面の摩擦抵抗を低減するとともに耐摩耗性が向上するため、前記歯付ベルトの耐久性を高めることができる。また、前記歯付ベルトを用いることにより重量を抑え且つ騒音の低減を図ることができる。
請求項2に記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置は、耐摩耗層の布材をナイロン66繊維、ナイロン46繊維、アラミド繊維、綿、炭素繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、ポリウレタン弾性繊維から選ばれる少なくとも一種類の繊維で構成することを特徴としている。この請求項2に記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置によると、前記布材を強度の高い繊維で構成することで、前記耐摩耗層の性能向上を図ることができる。
請求項3に記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置は、布材にレゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理(RFL処理)を施し且つ前記布材の内周側の面に糊ゴムによる接着処理を施すことを特徴としている。この請求項3に記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置によると、前記布材の接着強度を強化することができる。したがって、動的負荷(例えば、プーリの通過毎に受ける曲げ応力)に対する性能が向上し、前記耐摩耗層の剥離を効果的に抑えることができる。また、前記糊ゴムによる接着処理を前記布材の前記内周側の面にのみ施すため、前記耐摩耗層と前記テンショナガイドと摩擦抵抗を小さくすることができる。
請求項4に記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置は、歯付ベルトをクランクシャフトに取り付けられたタイミングプーリとカムシャフトに取り付けられたタイミングプーリとの間に巻き掛け、前記クランクシャフトの前記タイミングプーリの回転を前記カムシャフトの前記タイミングプーリに伝達可能とした自動車エンジン用であることを特徴としている。
この請求項4のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置によると、自動車エンジンの軽量化及び騒音の低減を図ることができる。
請求項1のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置は、自動車エンジン等の内燃機関に適用すれば、内燃機関の軽量化を図ることができるとともに静粛性を高めることができる。また、歯付ベルトの耐久性が良いため交換頻度が少なくて済み、メンテナンスの手間を軽減することができる。
請求項2のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置は、ベルト背面の耐磨耗性が向上し耐久性が良くなるため、歯付ベルトの交換頻度が減少するなどメンテナンスの手間を省くことができる。
請求項3のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置は、ベルト背面の耐摩耗層の剥離強度が向上し且つ耐摩耗層が摩耗しにくいため歯付ベルトの耐久性が向上し、メンテンス性が良くなる。
請求項4のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置は、軽量で且つ静粛性に優れた自動車エンジンの提供が可能になる。
本発明に係るテンショナガイドを具備するベルト伝動装置の実施形態を図1〜3を参照しながら説明する。図1はテンショナガイドを具備するテンショナガイドを具備するベルト伝動装置1(以下、ベルト伝動装置1ともいう)を自動車エンジンに適用した例を示している。図1に示すように、無端の歯付ベルト2がクランクシャフト用のタイミングプーリ3と二本のカムシャフト用の各タイミングプーリ4・5との間に、潤滑装置6のオイルポンプ用のタイミングプーリ7を経由し巻き掛けられている。そして、クランクシャフト用のタイミングプーリ3とカムシャフト用のタイミングプーリ4・5とのスパン間において、テンショナガイド8をベルト背面2aに押接し、歯付ベルト2に常時一定のテンションが生じるようにしている。
テンショナガイド8は弓型の形状を有し、外側の湾曲面に合成樹脂からなるシュー9が装着されている。そして、シュー9とベルト背面2aとが相対するように配置されるとともに一端部が取付軸8aに回転可能に取り付けられ、他端部がスプリング式や油圧式などのオートテンショナ10と連結されている。このように、テンショナガイド8とオートテンショナ10とで構成されている張力付与装置12のテンショナガイド8は、オートテンショナ10によって歯付ベルト2の方向に付勢され、取付軸8aを中心に回転してベルト背面2aに押接されている。また、張力付与装置12のテンショナガイド8は張力を歯付ベルト2に付与するだけでなく、プーリ間において歯付ベルト2に生じるスパン振動を抑制している。
上記潤滑装置6は、オイルパン11に貯留されている潤滑油Aを汲み上げてテンショナガイド8及び各回転部に潤滑油Aを供給するようになっている。そして、潤滑や冷却等に供された潤滑油Aはオイルパン11に回収された後に異物が取り除かれ、再び潤滑装置6によって各部へ供給される。テンショナガイド8に供給された潤滑油Aは、シュー9とベルト背面2aとの接触面において摩擦抵抗の低減に供される。なお、潤滑装置6はベルト背面2aに潤滑油Aを供給する構成とすることもでき、両方に供給する構成とすることもできる。また、従来の潤滑装置を用いて潤滑油Aをテンショナガイド8やベルト背面2aに供給する構成とすることも可能である。
上記歯付ベルト2は複数本の心線2b・2b・2b・・・が幅方向に等間隔で埋設されている背ゴム層2cを有し、背ゴム層2cの内周側に歯ゴム層2dが設けられ複数の歯部2e・2e・2e・・・が周方向に一定間隔で形成されている。そして、歯付ベルト2の外周面(ベルト背面2a)には布材が被覆され耐摩耗層2fが設けられている。また、歯付ベルト2の内周面は歯布2gと呼ばれる布材で保護されており、各タイミングプーリとの接触による歯部2e・2e・2e・・・の摩耗を抑えて耐久性の向上を図っている。
上記背ゴム層2cと歯ゴム層2dの歯部2e・2e・2e・・・は、耐熱性、化学的安定性、機械的強度、耐摩耗性等に優れたHNBRが用いられ、丈夫で耐久性の高い歯付ベルト2となっている。心線2b・2b・2b・・・は、強度や柔軟性、靭性等に優れた複数本の直径1.02mmEガラス繊維のマルチフィラメントを下撚りし、これを複数本引きそろえて上撚りしたもので、優れた耐疲労性を有している。心線2b・2b・2b・・・の繊維として、Eガラス繊維の他にアラミド繊維、金属繊維等を用いることもできる。
これらの心線2b・2b・2b・・・は、背ゴム層2cとの接着性を良くするためにHNBRやNBRのラテックスを用いたRFL処理が施されている。このため、背ゴム層2cと心線2b・2b・2b・・・と剥離強度が向上し、動的負荷に対する強度が高められている。
耐摩耗層2fの布材は、ナイロン66繊維を2/2綾織りしたものにHNBRのラテックスを用いたRFL処理が施されるとともに、布材の内周側の面に糊ゴムによる接着処理が施されている。これにより、背ゴム層2cとの接着強度を強化することができるため動的特性が向上し、動的負荷に対する耐摩耗層2fと背ゴム層2cとの剥離が抑えられている。しかも、糊ゴムによる接着処理を布材の内周側の面にのみ施すことで、布材の外周側の面(耐摩耗層2fの表面)の摩擦抵抗を小さくしている。布材の繊維としてはナイロン66繊維の他に、ナイロン46繊維、アラミド繊維、綿、炭素繊維、PBO繊維、ポリウレタン弾性繊維などが用いることができる。また、耐摩耗層2fの布材は、上記の繊維から選ばれる一種類の繊維で織った布材を用いることもできるし、二種類以上の繊維で織った布材を用いることもできる。
次に、上記歯付ベルト2を用いたベルト伝動装置1の耐久試験の結果を説明する。試験に使用した歯付ベルト2は幅が10mmで105個の歯部2e・2e・2e・・・を形成したものである。
試験方法
図3に示すように、底部に潤滑油(ガソリンエンジン用エンジンオイル10W−40)が貯留されている箱型の試験装置100を用いて行った。試験装置100のケーシング101の内部には、小径の駆動プーリ(歯数21)102が回転軸を横向きにした状態で且つ外周部の一部を潤滑油Bに浸漬させた状態で配置されている。この駆動プーリ102の上方には大径の従動プーリ(歯数42のS8Mタイプ)103が駆動プーリと平行に配置されている。これらの駆動プーリ102と従動プーリ103とに歯付ベルト2をセットし、駆動プーリ102と従動プーリ103とのスパン間において、ベルト背面2aにテンショナガイド104を押接し、歯付ベルト2に100Nの張力が常時生じるようにした。この試験装置100の底部にはヒーター105が配設されており、潤滑油Bを一定の温度(120℃)に維持できるようになっている。
そして、歯付ベルト2を3500min-1で走行させて、100時間ごとに500時間まで、ベルト背面2aの磨耗状態を背面厚みの変化量で評価を行った。なお、摩耗状態の評価は、従来品、つまり、上記本発明の歯付ベルト2において耐摩耗層2fを設けていない歯付ベルトを用いて同様の試験を行い、ベルト背面2aの摩耗状態を比較することで行った。
その結果、本発明の歯付ベルト2は、300時間後においても摩耗が発生しておらず、400時間後に0.03mm、500時間後に0.05mmのわずかな摩耗が確認されただけである。これに対し、従来の歯付ベルトは100時間後に0.03mmの摩耗が発生し、200時間後には既に0.05mmの摩耗が発生していた。そして、400時間後には背ゴム層2cに達する0.2mmの摩耗が発生したため、ここで試験を中止した。この試験結果を表1に示す。
Figure 2009002364
このように、従来の歯付ベルトは、潤滑油Bで摩擦抵抗が低減されているにもかかわらず著しく摩耗しており、潤滑油を供給しなければさらに激しく摩耗することが予測できる。したがって、本発明のベルト伝動装置1は、歯付ベルト2の耐久性において優れた性能を有している信頼性の高い装置であり、且つ、歯付ベルト2の交換頻度が少なくメンテナンス性にも優れていることがわかる。しかも、歯付ベルト2を用いているので、軽量で且つ走行中の騒音が低減されている。
よって、自動車用エンジンにベルト伝動装置1を用いると、軽量化と静粛性の向上とを図ることができ、メンテンスの負担も軽減することができる。
本発明に係るテンショナガイドを具備するベルト伝動装置を示す概念図。 本発明に係るテンショナガイドを具備するベルト伝動装置の歯付ベルトを示す一部断面を含む斜視図。 発明を実施するための最良の形態で示した試験装置の概略図。
符号の説明
1 テンショナガイドを具備するベルト伝動装置(ベルト装置)
2 歯付ベルト
2a ベルト背面
3 クランクシャフト用のタイミングプーリ3
4・5 カムシャフト用のタイミングプーリ
6 潤滑装置
8 テンショナガイド
10 オートテンショナ
A 潤滑油

Claims (4)

  1. 複数のプーリに歯付ベルトが巻き掛けられており、駆動側の前記プーリの回転を従動側の前記プーリに伝達するベルト伝動装置において、
    前記歯付ベルトのベルト背面に布材からなる耐摩耗層が設けられ、前記ベルト背面にテンショナガイドを押接することにより張力を付与する張力付与装置が具備されるとともに、前記テンショナガイドにおける前記ベルト背面との接触面又は前記ベルト背面の少なくとも一方に、潤滑油を供給可能な潤滑装置が具備されていることを特徴とするテンショナガイドを具備するベルト伝動装置。
  2. 前記耐摩耗層の布材がナイロン66繊維、ナイロン46繊維、アラミド繊維、綿、炭素繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリウレタン弾性繊維から選ばれる少なくとも一種類の繊維からなることを特徴とする請求項1記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置。
  3. 前記布材にレゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理が施され且つ前記布材の内周側の面に糊ゴムによる接着処理が施されていることを特徴とする請求項1又は2記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置。
  4. 前記歯付ベルトがクランクシャフトに取り付けられたタイミングプーリとカムシャフトに取り付けられたタイミングプーリとの間に巻き掛けられ、前記クランクシャフトの前記タイミングプーリの回転を前記カムシャフトの前記タイミングプーリに伝達可能になっている自動車エンジン用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のテンショナガイドを具備するベルト伝動装置。
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Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002266957A (ja) * 2001-03-12 2002-09-18 Gates Unitta Asia Co ベルト張力調整装置および駆動伝達システム。
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JP2005098313A (ja) * 2003-04-28 2005-04-14 Mitsuboshi Belting Ltd 歯付ベルト及びその製造方法

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