JPS6132188Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、動力伝動用Ｖベルト、特に耐側圧性
の大きい高負荷伝動用Ｖ形コグベルトに関するも
のである。

従来、動力伝動用Ｖ形コグベルトは、第１図に
図示する如く、ロープ抗張体１を並列埋設した上
下クツシヨンゴム層２，３表面にゴム付帆布４，
５を積層貼着し、ベルト下面、即ちプーリとの接
触面に波形状のコグ群を設けているため、屈曲性
は良好であるが、反面、通常コグ部のクツシヨン
ゴムは柔軟性を有するため、第１図に示す如く、
プーリＰに嵌合して駆動した際、ベルト全体が横
方向に彎曲変形してプーリＰ中に落ち込み、変形
による伝達力の低下、早期破損の原因になるなで
の問題があり、そのため、このような耐側圧性向
上の改善策として最近では短繊維群、帆布、スダ
レ布などをベルトコグ部に横方向に配向埋設する
ことが行なわれている。しかし、近時、高馬力用
のベルトに対する要求が高まり、その需要が増大
する傾向にあるが、前記のような繊維埋設ゴムで
は自動２輪車のトルクコンバーター用伝動機構、
大型農機のトルクコンバーターなどの高馬力用ベ
ルトを使用した場合には、今なお充分な耐久性を
発揮するには至つていない。

そこで、このような対策としてベルトコグ部に
樹脂を埋設したコグベルトが一部試みられている
が、これはベルト駆動中の発熱により樹脂が溶融
して摩耗、変形する問題があり、又、本出願人
も、さきに実願昭54−15467号において、ベルト
コグ部に硬質ゴムを埋設したコグベルトを提供し
たが、これも硬質とは云え、ゴム弾性体であるた
め前記耐側圧性には未だ充分でない。

そのため、本出願人は前記の如きコグベルトの
諸問題を解決せんとし、ベルトコグ部に特に剛性
の大きい金属パイプ又は金属棒を挿入することに
より耐側圧性を向上せしめることを提案した。

しかし、これにはなお、次のような欠点が見ら
れた。

即ち、上記提案では挿入する金属はすべて自己
潤滑機能を有しない金属であり、ベルト中にて走
行させるとき、外部より注油する必要があること
である。もし、潤滑油が正しく注油されなければ
ベルトの補強材金属と金属プーリとが運行中にお
ける摩擦によつて騒音を呈するのみならず、摩
耗、発熱を起して焼付けを生じる。従つて、外部
より注油をすることが要求されるが、用途によつ
ては例えば食品関係等のように衛生上の問題があ
る場合にはオイル潤滑は忌避される。

そして、このような場合には上記方式によるも
のは全く使用に堪えなくなる。

本考案は上述の如き実状に着目し、前記提案せ
る金属のもつ補強効果を更に改良せんとするもの
で、金属等の内部に含浸した潤滑剤により自己潤
滑機能をもたせ、外部より注油する欠陥を解消す
ることを目的とするものである。

即ち、本考案の特徴とするところは、低伸度高
強力のロープ抗張体を並列状に埋設したクツシヨ
ンゴム層表面に１〜複数層のゴム付帆布を積層貼
着し、かつ抗張体下部クツシヨンゴム層にベルト
長手方向に対し一定ピツチのコグ部を設けると共
に、コグ部外面をゴム付帆布で被覆せしめたコグ
部Ｖベルトにおいて、前記コグ部に、自己潤滑性
を有し、かつ下部クツシヨンゴムとの接触表面に
鍍金又は樹脂層で被覆せしめた任意形状断面の多
孔焼結構造体をベルト巾方向に挿入せしめた構成
にある。

以下、更に添付図面にもとづき本考案Ｖ形コグ
ベルトの実施例について詳述する。

第２図は本考案に係るＶ形コグベルトの一例を
示し、図においてａはＶ形コグベルト本体、２，
３はNR（天然ゴム）、SBR（スチレン．ブタジエ
ンゴム）、CR（クロロプレンゴム）、NBR（ニト
リルゴム）などの単一材又はこれらを適宜ブレン
ドしたゴムからなる上下のクツシヨンゴム層で、
上部クツシヨンゴム層２の上には経緯綿糸よりな
るバイアス帆布、もしくは広角度帆布４が１〜複
数層、通常は１〜３層積層貼着され、又、前記ク
ツシヨンゴム層２，３の間にはポリエステル、脂
肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、或いはガラ
ス繊維のような低伸度高強力のロープ抗張体１が
並列状に埋設されている。

そして、一方、下部クツシヨンゴム層３の下面
には一定ピツチのコグ部が設けられ、その外周に
は前記上部帆布４と同材質もしくはウーリー加工
した捲縮ナイロン経糸と通常のナイロン緯糸で織
成した伸縮性帆布５で被覆されている基本的な構
成は前記第１図における公知のコグベルトと同様
である。

しかして、上記構成において、６は本考案の要
部をなす自己潤滑性多孔焼結構造体を示し、前記
下部クツシヨンゴム層３のコグ部にベルト巾方向
に対し挿入されており、その両側面はコグ部側面
において露出されている。

この自己潤滑性多孔焼結構造体は潤滑油又はワ
ツクスからなる潤滑剤が含浸された焼結金属又は
焼結セラミツクスを素材としてなり、金属として
は鉄、銅単独の多孔性焼結金属、鉄−銅混合多孔
性焼結金属が最も一般的である。

そして、上記多孔性焼結構造体は、その断面形
状が第３図イ〜ヌに図示する如く各種任意形状の
断面からなる棒状体又はパイプが使用可能であ
り、随時、形状を選定することができるが、その
表面にはクツシヨンゴムとの接着性を良好ならし
めるため金属メツキ又は樹脂コートによる表面被
覆７が施される。

表面被覆７は前記多孔構造体は潤滑剤を含浸さ
せる前でも後でも良いが、表面被覆７を施した後
に含浸させるのが一般に普通である。

この表面被覆７は前述の理由から、通常クツシ
ヨンゴム層と接触する部分においてのみ実施さ
れ、コグ側面に露出した部分には特に必要としな
い。

なお、金属メツキとしては銅、真鍮、亜鉛、ニ
ツケル、錫、クロム等による鍍金が適用可能であ
る。又、樹脂被覆としては、耐熱性樹脂が好まし
く、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネー
ト等の樹脂が利用される。

又、前記焼結金属素材はベルト内部に有する熱
を外部に発散せしめる上から熱伝導度の高い他の
金属を用いることも好ましく、かつ断面積当りの
剛性を大きくする棒状と、中空パイプ形状のもの
は空冷効果と共にベルトの重量を下げ、高速走行
時の遠心張力を小さくする効果をも併せ有し頗る
効果的である。

本考案ベルトは以上の如く、コグ付Ｖベルトの
コグ部に自己潤滑性を有する多孔焼結構造体を挿
入せしめた構成であるから、該焼結構造体の補強
効果により、ベルトがプーリ中に懸架されて走行
するとき、Ｖプーリでのベルトの落ち込み現象を
なくすことができ、著しく耐側圧性を向上すると
共に、更に外部より注油によるオイル潤滑をせ
ず、焼結構造体内部に含浸した潤滑剤により自己
潤滑機能を持たせたことにより、最少限の潤滑剤
存在で走行可能となり、かつ外部より潤滑オイル
を注油する場合の摩擦係数（μ＝0.08）に対して
焼結金属を補強材とする場合都実験によればμ＝
0.16と大きくなり、走行中にかかる最大張力をよ
り少なくすることができ、ベルト形状をよりコン
パクトとなし得る効果を奏する。

又、本考案ベルトにあつては、コグ部の焼結構
造体の外表面はクツシヨンゴム間に鍍金又は樹脂
コートを介在しているため、接着性を低下させる
こともなく、ベルトライフを増大させることがで
きる。

かくして、自己潤滑方式によつてスムースな駆
動が可能となり、騒音、発熱、摩耗、焼付き防止
ができ、自動車用、農機具用、その他、一般産業
用ベルトとして頗る効用を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のＶベルトの駆動態様を示す部分
横断面図、第２図は本考案に係るＶ形コグベルト
の部分横断斜視図、第３図イ〜ヌは本考案ベルト
に挿入する焼結構造体の各変形態様を示す各断面
図である。 １……ロープ抗張体、２……上部クツシヨンゴ
ム、３……下部クツシヨンゴム、４……上部帆
布、５……下部帆布、６……金属パイプ。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 低伸度高強力のロープ抗張体を並列状に埋設
   したクツシヨンゴム層表面に１〜複数層のゴム
   付帆布を積層貼着し、かつ抗張体下部クツシヨ
   ンゴム層にベルト長手方向に対し一定ピツチの
   コグ部を設けると共に、コグ部外面をゴム付帆
   布で被覆せしめたコグ付Ｖベルトにおいて、前
   記コグ部に、自己潤滑性を有し、かつ下部クツ
   シヨンゴムとの接触表面を鍍金又は樹脂層で被
   覆せしめた任意形状断面の多孔焼結構造体をベ
   ルト巾方向に挿入せしめたことを特徴とする高
   負荷伝動用Ｖベルト。 ２ 自己潤滑性を有する多孔焼結構造体が潤滑剤
   を含浸せしめた多孔性焼結金属からなる棒状体
   又はパイプである実用新案登録請求の範囲第１
   項記載の高負荷伝動用Ｖベルト。 ３ 焼結金属が鉄、銅の各単独又は混合からなる
   焼結金属である実用新案登録請求の範囲第２項
   記載の高負荷伝動用Ｖベルト。 ４ 自己潤滑性を有する多孔焼結構造体が潤滑剤
   を含浸せしめた多孔性セラミツクス焼結体から
   なる棒状体又はパイプである実用新案登録請求
   の範囲第１項記載の高負荷伝動用Ｖベルト。