JP4694574B2 - ベルト伝動システム - Google Patents

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Description

本発明は、ベルト伝動システムに関し、より具体的には、ベルトと、これと協働するスプロケットとを備え、ベルト歯数、ランド長さ、スプロケット溝間隔が、クランクシャフト1回転当たりのエンジン点火数に依存し、それによってベルト/プーリ噛み合い周波数をエンジン点火のオーダーと等しくして周波数と騒音を低減するベルト伝動システムに関する。
同期ベルト、すなわち歯付ベルトは、従動部を同期させる必要があるベルト伝動動力伝達システムにおいて使用される。同期は、ベルトに設けられた横方向への歯と、原動や従動スプロケットに設けられた溝との相互作用によって達成される。歯とそれぞれの溝との噛み合いは、スプロケットの回転が機械的に同調するように働き、それによって従動部品が機械的に同調するように働く。
同期ベルトは、ベルトの長さ方向に沿って相互に隣接して配設された複数の横方向に設けられた歯を備える。動力の伝達は、スプロケットと各歯とが噛み合う位置において、この噛み合い位置でのスプロケットの実質的接平面内において発生する。したがって、歯には殆どの部分において剪断力が掛かっている。一組の歯の間の領域は各々ランドと呼ばれる。
歯の間に相対的に大きいランド領域、すなわち相対的に大きな間隔を有する同期ベルトも知られている。このようなベルトは、トルクを伝達するために、ランドとスプロケット周縁部との間の摩擦による相互作用に部分的に頼っている。トルク伝達能力は、スプロケット周りのベルト巻き付け角、取付け張力、ベルト面の摩擦係数の関数である。
この技術の代表は、ジェフリー(Jeffrey)の米国特許第4,047,444号(1977)であり、離間したスプロケット間の駆動が主にベルトのスプロケット周縁部における摩擦接触によるものであるベルトとスプロケットの同期伝動を開示する。
従来技術は、もっぱら原動および従動スプロケットの間で異なる溝間隔を備えることによるもので、これはベルト張力を異ならせることに一部基づく。運転時の倍音や騒音を低減するという問題については、従来技術において説明されていないし、解決もされていない。
必要とされているのは、ベルト歯数、ランド長さ、スプロケット溝間隔が、クランクシャフトの1回転当たりのエンジン点火数に依存し、それによってベルト/プーリの噛み合いの周波数をエンジン周波数のオーダーと区別がつかないレベルまで低減する、ベルトと、これと協働するスプロケットとを提供するベルト伝動システムである。本発明はこの必要性に合致する。
本発明の第1の目的は、ベルトと、これと協働するスプロケットとを備え、ベルト歯数、ランド長さ、スプロケット溝間隔が、クランクシャフトの1回転当たりのエンジン点火数に依存し、それによってベルト/プーリの噛み合いの周波数をエンジン周波数のオーダーと区別がつかないレベルまで低減するベルト伝動システムを提供することである。
本発明の別の目的は、以下における本発明の詳細な説明と図面とによって指摘され明らかとされる。
本発明は、ベルト本体を有するベルトを備えたベルト伝動システムに関する。ベルト本体に配置される心線は、長手方向の軸に沿って配設される。ベルト本体の外側の面に複数のベルト歯が配列され、ベルト歯は長手方向の軸に対して横向きに配置される。ベルトランドはベルト歯の間に配置される。原動スプロケットはエンジンクランクシャフトに取り付けられ、エンジンは複数のシリンダを備える。従動スプロケット。原動スプロケットに設けられた溝の数は、エンジンシリンダの数を2で割った値の整数倍である。従動スプロケットに設けられた溝の数は、原動スプロケットに設けられた溝の数の整数倍である。ベルト歯の数、ランド長さ、スプロケットの溝の間隔は、クランクシャフトの回転毎のエンジン点火数に依存し、それによってベルト/プーリの噛み合いの周波数をエンジン周波数のオーダーまで低減する。
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を図解し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
同期ベルト伝動システムは、オルタネータの他、カムシャフト、燃料ポンプ、ウオータポンプなどの装置を駆動するために自動車エンジンのアプリケーションにおいて広く用いられる。
エンジン中には、1以上の従動コンポーネントの回転振動が大きいことから捩りダンピング装置が必要となるものもある。ダンピング装置の利用は、コストやエンジンに対する複雑さや重量を増大させる。
本発明は、場合によっては、取付け張力の変更、モデュラスの増大、ベルト歯/プーリの接触面の相互作用を通して、ベルト寿命を損なうことなく、あるいはシステムの騒音を増大させることなくベルト伝動システムのスティッフネスを増大させることにより、そのようなダンピング装置を不要なものとすることができる。
従来の歯付ベルトにおいてシステムの張力を増大させることは、より高いベルト/スプロケット間の衝撃によるシステムの騒音の増大とともに、ベルトランドとスプロケット間のより高い圧力での接触によるベルトランドの磨耗を増大させる可能性がある。
本発明は、歯同士の間にピッチP(図5参照)として表される特異な間隔を採用することによりベルトランドの磨耗を防止し、これは張力によりベルトランドに掛かる単位面積当たりの圧力を低減する。本発明の構成では、通常のピッチpよりも大きくなり、これにより、与えられたベルト長さに対してトルク負荷を伝達できるベルトに設けられる歯の数が少なくなる。しかし、本発明のベルトおよびシステムは、ベルト歯の外形を最適化し、トルク荷重のかなりの割合を歯同士の間のランド領域に担わせることによりこれを補償する。また、本発明は、ベルト振動の周波数および倍振のオーダーを低減するとともに、所定の望ましくないベルト振動の倍振のオーダーを著しく低減するものであるベルト歯と原動スプロケット溝の噛み合い周波数のエンジンシリンダ点火タイミング周波数への重畳により、高いベルト張力に連関する騒音の増大を防止する。
伝達負荷のかなりの部分は、ベルトランドにより担われる。したがって、平坦なベルトランドによる動力伝達は、トルク伝達を行うベルトの性状を記述するオイラーの平ベルトの式に従う。
運転状態において、ベルトは原動および従動スプロケットの間における張力のもとに置かれる。スプロケットへと入り込むベルトの張力(T)は、スプロケットから出て行くベルトの張力(T)とは異なる。オイラーの理論を使った平ベルトにおいて、ベルト張力TとTを摩擦係数(μ)およびラジアンでのベルト巻付け角(θ)に関連づける式は、
=Tμθ
となる。ここで、eは自然対数の底2.718であり、Tは張り側張力であり、Tは緩み側張力である。滑りの発生(impending slip)は、ベルトの摩擦伝動容量の上限に対応する。
Figure 0004694574
このグラフは、ベルト巻付けがθ=180°における平ベルトとスプロケットとの間の摩擦係数の関数としてのT/Tに対する大凡の限界比率を示す。
Figure 0004694574
上記表を参照して、この理論を用いると、T=750N、摩擦係数(μ)約0.35において、約1500Nの有効張力レベル(T)を摩擦のみで伝達することが可能である。有効張力はベルト張り側張力とベルト緩み側張力との差として定義される。緩み側張力は取付張力(Tinst)の関数である。張り側張力(T)は、この駆動で運ばれる負荷の関数である。
もしT/Tがeμθ以下であれば、ベルトはスプロケットの上で滑ることはない。これよりも大きい比率、すなわちT/Tがeμθよりも大きいときには滑りが発生する。
しかし、何れの場合にも、ベルトはスプロケット上をクリープする。張力Tのもと、第1スプロケットの上へと移動する単位長さのベルト片を考える。この単位長さのベルト片がスプロケットとともにその周囲を移動すると、それに掛かる張力はTからTへと減少する。その弾性からベルト片は長さ方向に僅かに縮む。したがって、第1(原動)スプロケットは連続して、それが送り出すよりも長いベルトの長さを受け取り、スプロケット面の速さはその上を移動するベルトよりも速い。同様に、第2(従動)スプロケットは、それが送り出すよりも短いベルトの長さを受け取り、スプロケット面の速さはその上を移動するベルトよりも遅い。ベルトがスプロケットの上を移動するときのこのベルトの「クリープ現象」は、効率を低減する不可避的な動力損失を発生させる。
の値がTの値に近づくと、すなわち(T/T→1)のとき、スプロケットの上を移動する単位ベルト片の長さの変化が小さいことからクリープ量は減少する。T=Tのとき、「取付けただけ」の状態となり、システムは動力を伝達することはできない。
ベルトランドに対する摩擦係数は、これまでの例示的な例では約0.35である。ベルトランド(110)に対する十分な摩擦係数(μ)の範囲は、約0.30から約0.40である。
上記平ベルト理論は、同期ベルト伝動に対してはベルト歯とスプロケット溝の相互作用によって制限される。動力の伝達は、ベルト歯荷重と摩擦効果の間で負荷を分担することにより達成される。現在の実用では、負荷の殆どはベルト歯によって担われる。
歯の形状は、負荷運搬およびベルト/スプロケットの噛み合わせのため、寸法上および幾何学的に最適化される。例えば、歯の形状は、ここで参照として組み入れられる米国特許第4,605,389号明細書に開示されたものであってもよい。米国特許第4,605,389号明細書は、形状の1例として参照されたもので、本発明において用いられ得る形状のタイプを限定することを意図したものではない。
既に述べたように、本発明のベルトは、ベルトランドの長さを最大化し、それにより、歯付ベルトの同期的な特質を維持しながらも、ベルトランドとスプロケットの周縁との間の接触面を最大化する。このシステムは更に、各ベルト歯の歯先と、これと協働する各スプロケット溝の歯底あるいは歯元との間の干渉を防止し、各ベルトランドとこれに協働するスプロケットの面との間の接触面において圧力が維持されることを確実なものとする。
従来技術における通常のピッチを有するベルトのランド領域(面積)(land area)の歯領域(面積)(tooth area)に対する比率は、約0.50:1である(図11参照)。図5、図6、図11〜13を参照すると、歯領域(面積)は、歯によって占有されるベルトのプラン領域(面積)(plan area)であり、歯長さ(W)にベルト幅を掛けたものである。ランド領域は、ランドによって占有されるベルトのプラン領域(面積)であり、ランド長さLにベルト幅を掛けたものである。ベルト幅は従来この分野で知られているもので、スタンダードな製造幅に対応する。本発明のベルトは、ランド領域(面積)の歯領域(面積)に対する比率が約1.5:1.0から約10.0:1.0の範囲にある(図12参照)。
図13を参照すると、別の実施形態では、ランド領域(面積)の歯領域(面積)に対する比率は逆となり、すなわち、ランド領域(面積)の歯領域(面積)に対する比率は約0.20:1.0から約0.09:1.0の範囲にある。したがって、この別の実施形態の比率は、歯(領域)面積がランド(領域)面積よりも顕著に大きいベルトを示すものである。この場合、動力はプーリ溝の歯底3002と、歯2010の歯先2012との間の摩擦を通して伝達される(図14参照)。そのため、この場合、ベルト歯の高さはプーリ溝の深さよりも大きく、プーリ歯3000の歯先とランド領域(land area)2011との間にはクリアランスがあり、負荷伝達のための面2012と3002との間の接触を確実なものとする。図14は、図13のベルトと係合するスプロケットの部分斜視図である。スプロケット3001は、歯先面2012と摩擦係合するプーリ溝面3002を備える。この別の実施形態では、動力はこの摩擦係合を通して伝達される。スプロケット歯3000は、歯2010同士の間のベルト溝領域2011に係合して同期を維持する。他のベルトの構造については、この明細書の何れかで別の実施形態として記載されるものと同様である。
ベルトの構造に話を戻すと、ベルト材料には更に、高い摩擦係数を示す帆布層106に用いられる表面素材が含まれる(図5参照)。帆布層には、アラミド、ポリアミド、PTFE、PBO、ポリエステルカーボン、あるいは他の合成繊維やこれらの2以上の組み合わせからなる糸を用いた例えば構造的(texturised)あるいは非構造的(non-texturised)な織布、または構造的あるいは非構造的な不織布が含まれる。これらは例えば連続的な層として用いられ、また例えばゴムコンパウンド材料に混入され、あるいは抗張力部材として用いられる。
帆布層の表面素材は、溶液型高分子接着剤や、いかなるグレードのHNBR、いかなるグレードのCR、硫化ポリエチレンあるいはEPDMを含有する水性レソルシン・フォルマリン・ラテックス(RFL)・システムで処理されてもよい。これらは耐摩耗性を最大化し、耐熱性および耐熱老化性を最大化するとともに、伝動システムの寿命に渡る全ての温度レベルでこの表面素材と他のベルト構成部との間で高い接着レベルを保証するために用いられる。全体の結果として、上述された平ベルト伝動理論を用いて、顕著なレベルの負荷を伝達するベルトランドの能力が最大化されたベルトが得られる。
再び図5を参照すると、ベルトは更に、循環する方向(an endless direction)に延在する長手方向軸に平行に配設される高弾性の抗張力部材107を備える。抗張力部材は、ガラス繊維、高強度ガラス、PBO、アラミド、針金、カーボンやこれらの組み合わせを含む撚糸、あるいは諸撚糸などからなる。心線は例えば、単芯がベルト幅方向に渡って螺旋を形成するように、あるいは異なる撚り方向(zとs)の対となる心線がベルト幅方向に渡って螺旋を形成するように用いられる。心線は溶液型高分子接着剤や、RFLにVPCSM/VPSBR/HNBR/CRを含有する水性RFLシステムによって処理されていもよい。これらは、糊付剤に加えて、いかなるグレードのHNBR、いかなるグレードのCR、硫化ポリエチレンあるいはEPDMを含んでもよい。これらの添加剤は、伝動システムの寿命に渡る全ての温度レベルで、抗張力部材と他のベルトのエラストマ構成部との間の高い接着レベルを保証する。また、それらは、伝動システムの寿命に渡る屈曲疲労、およびこれに関連する繊維間の摩滅によって発生する引張強度の低下を最小にする。また、それらは、ベルト寿命に渡る抗張力部材の流体抵抗を最大化するとともに、低温条件で発生する引張強度の低下を最小にする。
ベルト本体108は、任意のグレードのHNBR、CR、EPDM、SBR、ポリウレタンあるいはこれら2以上の組み合わせに基づいた高弾性エラストマ配合物などからなる。
ベルト本体は、随意、繊維充填材である不連続な繊維を含有していてもよく、これは例えば生成される配合物の弾性を増大させるのに利用される。ベルトエラストマの補強に利用される繊維40、400(図5、6参照)の種類には、メタアラミド、パラアラミド、ポリエステル、ポリアミド、綿、レーヨン、ガラスやこれら2以上の組み合わせなどが含まれるが、パラアラミドが好ましい。繊維は、それらの表面積を増大するために、従来周知のように、与えられた繊維の種類に可能な、例えばフィブリル化あるいはパルプ化され、あるいは、従来同様に周知のように、それらは細断すなわちステープルファイバーの形とされてもよい。本願の開示の目的としては、「フィブリル化」や「パルプ化」はこの周知の特徴を示すために読み替え可能に用いられ、用語「細断」あるいは「ステープル」は、周知の特徴とは性質が異なる性質を示すために読み替え可能に用いられる。繊維40は、好ましくは約0.1から約10mmまでの長さである。繊維は必要に応じてそのエラストマへの接着性を高めるために、ある程度繊維の種類に基づいて、随意処理されてもよい。繊維の処理剤の一例は、適当なレソルシノール・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)である。
繊維が、ステープルあるいは細断された類型のときの好ましい実施形態では、繊維は例えばポリアミド、レーヨンあるいはガラスからなり、アスペクト比“L/D”(繊維長さと直径の比)が10以上であることが好ましい。加えて、繊維の長さが約0.1〜約5mmであることが好ましい。
繊維が、パルプ化あるいはフィブリル化された類型のときの別の好ましい実施形態では、繊維は好ましくはパラアラミドからなり、約1m/g〜約15m/gの比表面積を持ち、より好ましくは約3m/g〜約12m/g、最も好ましくは約6m/g〜約8m/gであり、かつ/または、繊維の平均長さは約0.1mm〜約5.0mmであり、より好ましくは約0.3mm〜約3.5mm、最も好ましくは約0.5mm〜約2.0mmである。
本発明の好ましい実施形態で用いられるパラアラミド・フィブリル化繊維の量は、ニトリルゴム100重量部当たり約0.5〜約20重量部であり;ニトリルゴム100重量部当たり約0.9〜約10.0重量部であることが好ましく、ニトリルゴム100重量部当たり約1.0〜約5.0重量部であることがより好ましく、最も好ましくはニトリルゴム100重量部当たり約2.0〜約4.0重量部である。当業者であれば、繊維充填濃度が高いと、硬化されたエラストマが過剰に硬くならないように、例えば可塑剤などの添加物質が含まれるようにエラストマを変更することが好ましいであろうと理解されるでことであろう。
繊維は、伝動ベルト内のエラストマ材料全体にランダムに分散されてもよいし、所望の方向に配向されてもよい。また、本発明に基づいて加工される歯付ベルトにとって、例えば図13に示されるように、繊維が伝動ベルト内のエラストマ材料全体に渡って配向されることも可能であり、かつ好ましい。
歯104、105、201内の繊維40、400は、ベルト走行方向である長手方向に配向されていることが好ましい。しかし、歯104、105、201内の繊維40、400は全て心線107、203に全て平行なわけではない;歯内の繊維40、400は長手方向に配置されるながらも、フロー・スルー法(flow through method)を用いて成形が行われる際には、歯成形時におけるエラストマ材料の流れ方向に従う。これにより、繊維40、400はベルト歯104、105、201内において、概ね歯の形状に適合した正弦パターンで、長手方向に配向される。
繊維の方向が概ね歯付ベルトの走行方向に向けられるように、好ましい配置で配向されるときには、ベルトの背面部120、1200内に配置される繊維40、400は、ベルトの背面におけるクラックの信号を抑制することが分かってきており、特に過度の高温あるいは低温において運転されることにより発生するクラックにおいて顕著であり、このようなクラックは、背面部に繊維が配置されていなければ通常ベルト走行方向に垂直な方向に進展する。しかし、繊維40、400は、図示された方向に配向されている必要はなく、それとは異なる方向に配向されていてもよい。
以上の設計原理の適用について、以下の実施例で説明する。
図1を参照すると、従来技術のシステムの仕様は以下のとおりである。歯付ベルト(B)は135歯であり、ピッチ(P)が9.525mmである。駆動長さは1285.875mmである。スプロケットは以下の通りである:
・溝19個のクランクシャフトスプロケット(CRK)
・溝18個のウォーターポンプスプロケット(W_P)
・溝38個のカムシャフトスプロケット(CM1、CM2)
・4個のエンジンシリンダ
カムシャフトスプロケット(CM1、CM2)の直径は113.84mmである。TENとIDRは、テンショナとアイドラをそれぞれ表し、各々従来周知のものである。
図1を再び参照すると、上述した従来技術のシステムに置き換わる本発明のベルトとシステムは、駆動長さをそのままに維持し、スプロケットの直径も大きくなることはないように設計される。
本発明のシステムでは、ピッチ(P)がベルトの全駆動長さに部分的に依存する。クランクシャフトスプロケットの溝の数は、クランクシャフト1回転におけるエンジンの点火回数に依存する。ランド領域の長さに対する歯元幅(tooth shear area width)の比はピッチ(P)に依存する。
本発明のベルト(B)は長手方向軸に垂直に配置された整数個の歯を備え、本実施例では、従来技術のベルトの135歯に対して57歯備える。従来技術のシステムで9.525mmであるのに対して、本実施例ではベルトピッチ(P)は22.62mmである。クランクシャフトスプロケット(CRK)(原動スプロケット)は、エンジンのシリンダの数を2で割った値の整数倍である整数個の溝を備え、本実施例では8個の溝が選択される(4エンジンシリンダ×2)。カムシャフトスプロケット(CM1、CM2)は、クランクシャフトスプロケットの溝数(8個の溝)の2倍の数の溝を各々備え、すなわち本実施例では各カムシャフトスプロケットに16個の溝が設けられる。ウォーターポンプスプロケット(W_P)の溝の数も整数であり、本実施例では溝は8個である。必要であれば、異なるベルトの構成に対しては、ベルトピッチ(P)は要求されるテンショナアームの位置に合わせて調整可能である。
騒音に対する性能を向上するには、クランクシャフトスプロケットの溝の数はエンジンシリンダ数を2で割った値の整数倍である。これはクランクシャフトスプロケットの溝の数をクランクシャフト1回転毎のエンジンシリンダの点火回数に関係付ける。これにより、ベルト/スプロケット噛合周波数は大幅に低減され、それにより噛合騒音は他のエンジン周波数オーダーの騒音から区別がつかなくなる。
上述の4シリンダエンジンの実施例は8個の溝をクランクシャフトスプロケットに備えたが、クランクシャフトスプロケットはエンジンシリンダ数を2で割った値の任意の整数倍であってもよく、例えば溝は4個あるいは12個であってもよい。
運転時、各々のベルト歯は連続的に原動スプロケットの溝と従動スプロケットの溝と係合し、従動補機の適正な同期を維持する。適正な同期を維持するにはシステムは、常時少なくとも個のベルト歯が原動スプロケットの溝と噛み合い、個のベルト歯が従動スプロケットの溝と噛み合うことを必要とする。歯数、より詳細にはピッチは、巻き付け角(α)に直接関係する。すなわち、巻き付け角が減少すると、ベルト歯の間隔とスプロケット溝の間隔は、常時少なくとも個のベルト歯が対応するスプロケット溝と接触することを保証するために狭くなる必要がある。限界において歯ピッチ(P)は:
P≦(π/180°)×(r)×(α)
ここで、r=最小スプロケットのピッチ円直径の半径
α=最小スプロケットの周りのベルトの巻き付け角
本発明のスプロケットとベルトの側面図である図2を次に参照すると、(A)で示される位置は、最大負荷におけるベルトランドでのベルト張り側スパンの接点を表す。位置(A)は、ベルトが原動スプロケットに噛み合う位置である。ベルトBは、矢印で示される方向に駆動される原動スプロケット100と噛み合った状態で示される。動力、すなわちトルクは、ベルトランド面とプーリの周縁との摩擦接触により従動プーリに伝達される。
クランクシャフトスプロケット100は、ベルトと噛み合うための8個の溝を備える。点(A)は、シリンダの点火が発生したときのベルト−スプロケット位置を表す。位置(A)に関しては、ベルトが原動スプロケットに係合する点(A)と最初に隣接して噛み合うベルト歯(A’)との間の50%、少なくともベルトランドの50%が、シリンダの各点火時点においてスプロケットと接触している。エンジンのタイミングは、各シリンダの点火発生時において点(A)が、点(A)とベルト張り側の最初に隣接して噛み合っているベルト歯(A’)との間がランド領域の100%に至るまで調整可能である。
この駆動タイミングの方法は、エンジンの各点火により発生する歯の剪断荷重を最小化し、すなわち、ランドの最大部分がエンジン点火の発生時にはスプロケットと噛み合っており、動力伝達におけるランドの摩擦による寄与は、歯の剪断耐久性(tooth shear capacity)とともに最大化する。これにより、歯の噛み合いは、主に適正な同期を確保するために用いられる。動力すなわちトルクは、主にベルトランドとこれに協働するスプロケットの面との間の係合によって伝達される。
図3は、スプロケット溝の輪郭線である。各溝1000にはそれぞれ第1溝101と第2溝102が含まれる。歯103は、各々の一対の溝101、102の間に配置される。溝1000は、図5に示される協働するベルト形状と噛み合い、すなわち、歯104、105はそれぞれ溝101、102と協働するように係合する。ランド領域300、301は、ベルトランド領域110と係合する。図4は、スプロケット溝の輪郭線である。この例では、溝2000は、単独の溝200を備える。溝200は、図6に示されるベルト歯201と噛み合う。ランド領域500、501は、ベルトランド領域205と係合する。
図5は、ベルトの断面図である。ベルトは、ベルト本体108に設けられた歯部104、105を備える。窪みあるいは溝109が歯部104、105の間に配置される。この開示の目的のために、歯部104、105は窪み109と協同して1つの歯Tを構成する。歯Tは長さWである。各歯Tの間に配置されるのは長さLのランド領域110である。本発明のベルトランド領域110は歯長さ幅(tooth length width)Wよりも長い長さLを備える。ピッチPは引き続く歯同士にける対応点の間の距離である。窪み19は、協働する歯103を同様にスプロケットから省略して歯形状から省略してもよい(図6参照)。
心線107は、ベルトの長手方向軸に沿って配設される。長手方向軸は循環する方向に走る。帆布層106はベルトのスプロケット係合面に配設される。
図6はベルトの断面図である。ベルトはベルト本体204に設けられた歯201を備える。心線204はベルトの長手方向軸に沿って配設される。帆布層202はベルトのスプロケット係合面に配設される。歯201は長さWである。各歯201の間に設けられるのは長さLのランド領域205である。本発明のベルトランド205の長さLは、歯長さW以上である。
本発明のシステムは、従来技術のシステムに対する多くの改良を提供する。図7は、カムダンパー機構を必要としない場合のベルト取付張力の関数としてのエンジンカムシャフトの回転振動(AV)の低減を示すグラフである。本発明のベルトとスプロケットの使用により、回転振動が2.2°から0.9°へと大幅に低減されたことが分かる。ベルトとシステムの摩耗を最小にするには、システムにおける回転振動は1.5°よりも小さいことが好ましい。これにより、本発明は、カムダンパーを不要とすることによりシステムの複雑さとコストを低減することを可能にする。
運転中におけるベルト張り側スパンの振動振幅は、本発明のベルトを用いることにより約30%低減される。ベルト張り側のスパンで共振を発生させる速度は約2000RPMから3000RPMへと増大する。
図8を参照すると、有効張力(T)は、取付張力(Tinst)が、従来技術の230Nから本発明のシステムの375Nへと増大するにしたがって低減する。従来技術のシステムでは、このような張力の増大は寿命を短くし騒音を増大させる。しかし、これは上述した理由により本発明のシステムには当てはまらない。
システムによって生成された騒音に関しては、本発明のシステムは、従来のシステムにおいて、ベルト/スプロケットの噛み合いにより発生する特異な騒音に関わる19次のオーダーとこれに関連する調和周波数を大幅に低減する(図9参照)。付加的な8次のオーダーとこれに関連する調和周波数(図10参照)が誘起されるが、これらは点火のオーダーなど他のエンジンのオーダーと同じ周波数で発生する。図9、図10の各々において、本発明のシステムは、ダンパーなしで375Nの取付張力で取り付けられた。一方、他のシステムは各々ダンパーを備え、これは追加的にシステムにコストがかかることを示す。本発明のシステムは、ベルト/プーリの噛み合いで発生する振動の周波数をエンジン周波数のオーダーから区別できないレベルまで低減する。
本発明の幾つかの方式がここで説明されたが、当業者であれば、ここで説明された本発明の精神と範囲から外れることなく、その構成やパート同士の関係を様々に変形できることは明らかである。
従来技術のシステムの模式的なダイアグラムである。 本発明のベルトとスプロケットの側面図である。 スプロケット溝の側面図である。 スプロケット溝の側面図である。 本発明のベルトの側面図である。 本発明のべルトの側面図である。 本発明のシステムを用いたときの取付け張力に対する回転振動のグラフである。 本発明のシステムを用いたときの取付け張力に対する有効張力のグラフである。 19次のオーダーの倍振を比較するグラフである。 8次のオーダーの倍振を比較するグラフである。 従来技術のベルトの歯とランド長さを示す斜視図である。 本発明のベルトの歯とランド長さを示す斜視図である。 本発明のベルトの歯とランド長さを示す斜視図である。 図13のベルトと係合するスプロケットの部分斜視図である。

Claims (6)

  1. ベルト本体を有するベルトと、
    前記ベルト本体に長手方向軸に沿って配設される心線と、
    前記ベルト本体の内面に設けられる複数のベルト歯と、
    隣接する前記ベルト歯の間に設けられるベルトランドと、
    エンジンクランクシャフトに取付けられ、前記ベルトが掛け回される原動スプロケットと、
    前記ベルトが掛け回される従動スプロケットとを備え、
    前記ベルトランドに対応するランド領域は、前記ベルト歯に対応する歯領域よりも広く、前記ランド領域の前記歯領域に対する比率が、1.50から10.0の範囲にあり、
    前記原動スプロケットに設けられた溝の数がエンジンシリンダの数を2で割った値の整数倍であり、
    シリンダにおける点火発生時に、前記ベルトが前記原動スプロケットと係合する点(A)と最初に隣接して噛み合うベルト歯(A’)との間が、少なくとも前記ベルトランドの50%に渡り前記原動スプロケットと接触して前記ベルトランドが前記原動スプロケットから前記ベルトへ摩擦伝動により動力を伝達する
    ことを特徴とする同期ベルト伝動システム。
  2. 少なくとも1つのベルト歯が、前記ベルトと協働する各スプロケットのベルト溝と常時噛み合うように前記ベルトの間隔が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の同期ベルト伝動システム。
  3. 前記ベルト歯の歯先と、これと協働する各スプロケット溝の歯底あるいは歯元との間の干渉が防止されたことを特徴とする請求項2に記載の同期ベルト伝動システム。
  4. 前記ベルトランドと前記原動スプロケットの間の摩擦係数が0.30から0.40の範囲にあることを特徴とする請求項2〜3の何れか一項に記載の同期ベルト伝動システム。
  5. 前記ベルトが更に繊維充填材を含有することを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の同期ベルト伝動システム。
  6. 従動スプロケットの溝の数が、原動スプロケットの溝の数の整数倍であることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の同期ベルト伝動システム。
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