JP2008537144A - 分析試料中のカルシウム、マグネシウムおよびナトリウムの定量にホスホナゾiiiを用いる方法 - Google Patents

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Abstract

体液中のカルシウム、マグネシウムおよびナトリウムを測定するために、ホスホナゾIIIを使用する新規な試薬製剤および方法を記載する。

Description

本発明は、ホスホナゾIIIを使用して、分析試料中のカルシウム、マグネシウムおよびナトリウムを定量する方法、および該方法に使用される新規な試薬組成物に関する。
発明の背景
カルシウムは、体内で5番目に多い元素であり、結晶性ヒドロキシアパタイトとして骨中に99%存在している。また、細胞外液は、体内総カルシウムの約0.1%を含有し、細胞外液中のカルシウムのうち、約30%は血漿中に存在している。
カルシウムの生理的機能は多種多様である。細胞内カルシウムは、数種の酵素、特にアデニル酸シクラーゼおよびカルモジュリン(受容蛋白)の活性を調整するとともに、受精、有系分裂、細胞運動および補助作用を含む多数の細胞機能の調整にも関与する。また、横紋筋において、カルシウムは、カルシウム結合タンパク質であるトロポニンと組合わされて筋原線維の収縮を活性化するとともに、膜透過性を調整する働きをし、神経伝達物質を放出させ、筋神経の興奮を弱める。カルシウム代謝およびカルシウム機能に関する掘り下げた考察については、Fundamentals of Clinical Chemistry,第3編、編集者Norbert W.Tietz,W.B.Saunders社(1987)を参照のこと。
臨床学的に、血清カルシウム値は、臨床診断を行う上で非常に重要な値である。血清カルシウム値の参照値の範囲は非常に狭く(2.20〜2.55mmol/L)、この範囲より上または下の僅かな偏差によって、数種の生理的障害を診断することになる。高カルシウム血症(血清カルシウム値の上昇)と関連する最も一般的な2つの疾患として、副甲状腺機能亢進症および悪性腫瘍が挙げられ、特に悪性腫瘍は、骨格に転移して骨融解を起こすおそれがある。血清カルシウム値の低下(すなわち、低カルシウム血症)は、通例、副甲状腺機能低下症を伴う。新生児のうち約1%は重大な低カルシウム血症(血清カルシウム値が1.75mmol/Lよりも小さい場合)を患い、早急な医学的処置が必要な、興奮、れん縮および痙攣を発症する。
マグネシウムは、カルシウムと同様、体内で見られる主な元素の1つである。70kgの標準的なヒトの成人は、約20〜28gのマグネシウムを有しており、その約55%が骨内に、27%が筋肉内に存在する。また、血清マグネシウム値の参照値の範囲は、0.65〜1.05mmol/Lと、かなり狭い。血清マグネシウム値の低下、すなわち低マグネシウム血症(<0.5mmol/L)は、上述した低カルシウム血症と殆ど同じ過剰興奮、テタニーおよび痙攣、つまり神経筋機能の障害を発症させる。逆に、血清マグネシウム値が上昇すると、体には鎮静効果がはたらく。
低カルシウム血症と低マグネシウム血症とは、臨床症状が殆ど同じであることから、どちらの元素が上述した臨床症状の原因となっているのかを判断しなければならない。このため、血清カルシウム値および血清マグネシウム値の両方を測定し、どちらの元素の値が低いのか、または両方の値が低いのかを知る必要がある。
カルシウム値およびマグネシウム値を測定するための方法として、原子吸光法を挙げることができる。原子吸光法は、干渉が殆どなく、小容量の試料しか必要とせず、また、精度が良いとともに再現性が高い。しかし、日常的に用いる測定方法として、原子吸光法は、やや使い難く、また、高価な装置とかなりの熟練者とを必要とする方法である。
カルシウムを測定するための臨床検査室において、現在、日常的には、オルト−クレゾールフタレインコンプレクソン(CPC)あるいはアルセナゾIIIを使用する方法が用いられている。両方法とも広く用いられており、互いに補完しあう関係にある。CPC法の感度はpHに非常に左右されることから、最高感度を得るため、反応はpH11.7付近で行われる。しかし、このアルカリ性pHの下で、試薬は、大気中の二酸化炭素を容易に吸収する。そして、吸収された二酸化炭素は、水と結合して炭酸となり、試薬のpH値を徐々に減少させる(つまり、酸性化する)ので、最終的にこの試薬によるカルシウム測定ができなくなる。さらに云えば、CPCは著しく選択性に乏しいことから、マグネシウムおよび他の重金属とも結合する。血清中で一般的に発生するマグネシウムの干渉を排除するため、8−ヒドロキシキノリンを加えてマグネシウムをキレート化するが、この化合物は、カルシウムもキレート化してしまうので、カルシウム測定の感度が25〜40%低減する。一方、アルセナゾIIIを用いる場合には、CPC法のような、pHを高くしなければならいという問題、およびマグネシウム干渉の問題はない。アルセナゾIIIは、弱酸性下、たとえばpH5〜6でカルシウムと結合するので、カルシウム測定をpH7未満で行うことにより、マグネシウムの結合を無視することができる。アルセナゾIIIは、CPC法における多くの欠点を解消できるが、アルセナゾIIIには、感度がやや低く、また、環境への悪影響という問題がある。すなわち、アルセナゾIIIは、1モル当たりに2モルのヒ素を含んでおり、アルセナゾIII試薬の廃棄がヒ素による上水の汚染につながることが、多くの国で重大な問題になりつつある。
Tanaka(米国特許第4,966,784号)およびKaufman(米国特許第5,589,348号)は、クロロホスホナゾIIIを使用して、カルシウムを測定する方法を開発した。この測定方法で用いられる発色団はヒ素を含まないものの、比較的高い試薬ブランクの吸光度を有する傾向があり、この試薬ブランクの吸光度により、多くの分析器においてカルシウム測定値に対する直線性が限定されることになる。一方、Chapoteauは、四酢酸のフェノール誘導体を使用するカルシウム分析方法を開発している(米国特許第5,262,330号)。しかし、この分析方法では、カルシウムを結合させるため、アルカリ性pHの下で行う必要があった。
カルシウム分析における問題は、マグネシウム分析における問題でもある。カルマガイト方法(Calmagite methods;米国特許第4,383,043号)は、多くの臨床検査室において日常的に使用されており、また、キシリジルブルー、キシルアゾバイオレットIおよびII(米国特許第4,503、156号)、およびErichrome Black T(米国特許第4,383,043号)を使用する他の方法が開発されている。カルシウム分析と同様に、先のマグネシウム測定方法の全ては、高pH(>>9)を必要とすることから、周囲の二酸化炭素の吸収により蓋をしていない試薬容器中の試薬のpH安定性が損なわれる。マグネシウムを測定する最近の方法として、クロロホスホナゾIIIを使用するものが公開されている(米国特許第5,589,348号および同第5,397,710号)。この発色団は、マグネシウムを結合するための高いpHを必要としないが、比較的高い試薬ブランクの吸光度を有する傾向があり、この試薬ブランクの吸光度により、多くの臨床化学分析器においてマグネシウム測定値に対する直線性が限定されることになる。
以上のように、分析試料中のカルシウムおよびマグネシウムを定量的に測定する方法に関してまだ解決されていない課題がある。それは、a)カルシウムおよびマグネシウムを中性から弱酸性pHの付近で結合させること、b)発色団が、たとえばヒ素などの毒性元素を含んでいないこと、c)発色体の試薬ブランクの吸光度が比較的低いこと、d)試薬が皮膚などに触れても安全な取扱い特性を備えていること(たとえばpHが中性付近であること)である。
ナトリウムは、細胞外液、ならびに血漿および血清において群を抜いて広く認められるカチオンである。体内におけるナトリウムの主な機能は、細胞外コンパートメント(extracellular compartment)における水バランスと浸透圧とを維持することである。
血清や血漿といった体液中のナトリウムは、炎光発光分光法あるいはナトリウムイオン電極法を用いて測定するのが通例である。両方法とも、一般的にきわめて良好に機能するものの、それぞれに欠点が存在する。すなわち、OSHA(米国労働安全衛生局)は、炎光光度計の燃料としてプロパンを使用することを定めているが、プロパンのガス漏れはタンク、バルブ、および管継ぎ手から簡単に起こることから、プロパンが作業エリアに流出して爆発災害を引き起こすおそれがある。また、プロパンタンクの残量が極めて少なくなった場合、フレームの火炎特性が変化するおそれがあることから、より頻繁にキャリブレーションを行う必要がある。さもないと、フレームの火炎特性が分析に適さないものとなるからである。
一方、ナトリウムイオン電極法には、炎光光度計を用いる場合のような安全性に関する問題がない。ところが、電極は、一般的にうまく機能するものの、堆積したタンパク質を取り除くためのクリーニングを頻繁に必要とするとともに、経費のかかる該電極の交換が必要となる。また、ナトリウムイオン電極法を行う装置は、多くの小さな臨床検査室が導入するには高価すぎる。
ナトリウムを比色的に測定するためのいくつかの試みがなされている。Chapoteau(米国特許第4,808,539号)およびCram(米国特許第5,011,924号)は、それぞれ、「発色性クリプタンド」および「発色性クリプタヘミスフェランド」を用いた血清中のナトリウムを測定する方法を開発した。また、酵素であるβ−ガラクトシダーゼを使用して、酵素活性を低濃度のナトリウムの存在下で活性化する動的酵素手段がBerryによって公開されている(Clin.Chem.34,2295−2298(1988))。
1966年、Budesinsky(Tschechoslow.Pat.Nr.122379)は、ホスホナゾIIIを含む一連のクロモトロピン酸誘導体の合成および数種の重金属および遷移金属イオンのキレートの現存するスペクトルデータを記載した(Coll.Czech.Chem.Comm.32,1967およびTalanta15(10),1063−4,1968)。該データの要約が後に、Chelates in AnalyticalChemistry,1969,第2巻、Marcel Dekker社,New York,NY(p1−91)において公開された。ほぼ同じ時、ロシアの科学者のグループが、ホスホナゾIIIおよび数種の2価の遷移金属イオンを持つ他の誘導体のスペクトルデータを提示し(Lukenら、Dokl,.Alad.Nauk.SSSR173(2),361−363,1967)、他の研究者らは、ホスホナゾIIIと数種の希土類金属との錯体形成およびスペクトル特性を例証した(Zh.Anal.Khim.,26(4),J,772−6,1971;Zh.Anal.Khim.32(4),674−678,1977;およびTr.Vses.Nauch.−Issled.Inst.Khim.Reaktivov Osobo Chist.Khim.Veshchesestv,1967,No.30,42−9)。
本発明の1態様によれば、たとえば、カルシウム、マグネシウムあるいはナトリウムの測定に用いられる診断試薬キットを提供することができる。該キットは、式Iに示す化合物を含む。
[式I]
Figure 2008537144
(但し、式I中のR〜Rは、H、C1−6アルキル、C1−6エーテルアルキル、C3−6分岐アルキル、C3−8シクロアルキルおよびハロゲンから個々に選択される。)
本発明の好ましい態様の多くにおいて、R〜Rは全てHである。つまり、診断試薬キット内に含まれる化合物は、以下に示す構造のホスホナゾIIIである。
Figure 2008537144
本発明の好ましい他の態様では、分析試料中のカルシウム、マグネシウムまたはナトリウムの濃度を定量的に測定する方法を提供することができる。該方法は、a)試料をホスホナゾIIIなどの式Iの化合物と接触(contact)させ;b)上記接触ステップa)で得られた、吸光度、反射率あるいは蛍光性の変化を測定するものである。
本発明の他の態様では、該方法は、a)式Iの化合物、すなわちホスホナゾIIIを含む試薬の吸光度、反射率あるいは蛍光性を測定し(試薬ブランク);b)試料を診断試薬に加え;c)試料を診断試薬に加えた後の吸光度、反射率あるいは蛍光性を測定し;d)ステップa)で得た吸光度、反射率あるいは蛍光性の測定値を、ステップc)の結果として得た測定値から減じて、試料中のカルシウム、マグネシウムあるいはナトリウムに基づく正味の吸光度、反射率あるいは蛍光性を得るものである。
本発明のさらに別の態様では、ナトリウムの測定に有用なキットおよび分析試料中のナトリウムの濃度を定量的に測定する方法を提供できる。これらの態様のそれぞれにおいて、キットおよび方法は、RおよびRがClである式I中の化合物を含んでいる。
本発明の利点の1つは、式Iの好ましい化合物であるホスホナゾIIIが、pHの広い範囲(約2〜11)でカルシウムと結合することであり、pHが約7のときに最高の感度となる。したがって、pHが7あるいは弱酸性のpHの緩衝液中で調製された試薬溶液は、試薬が大気中の二酸化炭素を吸収することによる影響を受けないので、劣化した試薬を廃棄する必要がなく、殆ど無駄がない。また、ホスホナゾIIIは、概ね6〜11のpH範囲においてマグネシウムとも結合する(pHが約7のときに最高感度となる)。したがって、カルシウム用と同様に、マグネシウム用の試薬溶液のpHも、大気中の二酸化炭素を吸収することによる影響を受ける範囲にない。また、ホスホナゾIIIは、概ね6〜11のpH範囲においてナトリウムと結合する(pHが約9のときに最高感度となる)。
本発明の他の利点は、ホスホナゾIII(上記式Iを参照)が、2モルのヒ素を含有するアルセナゾIIIの場合のように、毒性元素を含まないことである。したがって、使用済み試薬の廃棄に際してアルセナゾIIIの場合のように大きな毒性の問題がない。
ホスホナゾIIIを使用する試薬キットおよびこれを用いた分析方法のさらに他の利点として、マグネシウムの分析における試薬ブランクの吸光度は、マグネシウム測定用のクロロホスホナゾIIIのそれよりも幾分か低いことがあげられる。この結果、試薬ブランクの吸光度が高すぎるため、臨床化学分析器におけるマグネシウム試験値の直線性が損なわれるといったような心配はない。
カルシウムおよびマグネシウム用の試薬キットは、該試薬が皮膚などに触れても安全なように、pH7付近で調製することができる。
ナトリウム(特に血清中のナトリウム)の分析は、試料を混濁化する脂質の存在、および約440〜575nmのスペクトルの可視領域における吸収作用を有するヘモグロビンおよびビリルビンの存在によって複雑になるおそれがある。一方、ホスホナゾIIIを用いた場合、ナトリウム−ホスホナゾIII錯体の最大感度波長は約650nmであり、この波長では、ヘモグロビンおよびビリルビンによるスペクトル干渉は存在せず、また、混濁による干渉は極めて小さい。これは、先の[Chapoteau(米国特許第4,808,539号)およびCram(米国特許第5,011,924号)]ならびにBerry(Clin.Chem.34,2295−2298(1988))の手法における最大感度波長が、500nmあるいは405nmといったより短い波長であるのに比べて非常に進歩した点である。
このように、分析試料、特に生物学的試料中のカルシウム、マグネシウムおよびナトリウムを定量的に測定するための分析用試薬にホスホナゾIIIを用いることにより、カルシウム、マグネシウムおよびナトリウムを測定するために用いられている現在の方法が有する課題の多くを解決することができた。
式Iにおける好適な化合物のひとつであるホスホナゾIIIは、Chelates in Analytical Chemistry,1969,第2巻,Marcel Dekker社,New York,NY,p1−91およびJ.O.C.2450(1964)(これらの開示は参照によって本明細書に組み入れられる)などの文献によれば、種々の手順(Specialty Assays社,Manville,NJ)によって合成されている。該手順は、要約すると以下の通りである。
ステップ1. ジアゾ化o−クロロアニリンを三塩化リンと反応させてo−クロロフェニルホスフィンを形成し、
ステップ2. 該ホスフィンを加水分解した後、o−クロロフェニルホスホン酸をアンモニアと反応させてo−アミノフェニルホスホン酸を形成し、
ステップ3. 2モルのo−アミノフェニルホスホン酸をジアゾ化し、1モルのクロモトロープ酸と反応させてホスホナゾIIIを形成する。
また、式Iにおける他の化合物は、当業者が公知技術を用いて合成することができ、また、クロロホスホナゾIIIなどは、製造業者から入手することができる。ホスホナゾIIIのメチル、メトキシまたはエトキシ誘導体を上記手順で調製することができるが、これは単に説明のためのものであって、これに限定されるものではない。たとえば、p−メチルホスホナゾIIIを調製するために、上記ステップ1において、o−クロロアニリンの代わりに2−クロロ−5−メチルアニリンを代用することができる。同様に、p−メトキシホスホナゾIIIを調製するために、o−クロロアニリンの代わりに5−クロロ−o−アニシジンを代用することができる。
本発明は、分析試料中のカルシウム、マグネシウムおよびナトリウムの測定に有用な試薬組成物に関する。カルシウム、マグネシウムおよびナトリウムの測定は、1つまたは2つの試薬系を用いて行うことができる。試薬系の選択は、専門家の好みによるが、ビリルビン、ヘモグロビンおよび脂血症などの干渉スペクトル発色体を含む生物学的試料に関しては、これらのスペクトル干渉を補正するため、2バイアルシステムを用いるのが好ましい。ホスホナゾIIIは、2〜11という広いpH範囲でカルシウムと結合する。しかし、酸性pH値(たとえば2〜6.5)において、カルシウム結合は、マグネシウム結合よりも促進される。たとえば、pH7で、マグネシウムの感度は、カルシウムの感度の約1.2倍であるのに対し、pH5.8で、マグネシウムの感度は、カルシウムの感度の約1/10になる。したがって、カルシウムを測定する場合、マグネシウムの干渉を最小化するには、分析をpH7未満で行うのが好ましく、より好ましくは6未満で行うべきである。マグネシウム干渉を実質的に回避するため、キレート剤を加えてマグネシウムを錯体化し、マグネシウムがホスホナゾIIIと反応しないようにしてもよい。マグネシウムをキレート化するのに適切なキレート剤は、例えば1個のカルボン酸基、リン酸およびジカルボン酸基を含む化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち好ましいキレート剤は、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、酒石酸、フェニルホスホン酸、マロン酸塩、シュウ酸塩であり、マロン酸およびシュウ酸が最も好ましい。マグネシウム用のキレート剤の濃度は、試料中のマグネシウムに対するカルシウムの比率によって変化するが、一般的に、殆どの臨床応用において、キレート剤の濃度は約3mmol/L〜150mmol/Lが適切である。また、pHが7を超える場合、8−ヒドロキシキノリンなどの追加のキレート剤を使用してもよい。
好適な緩衝液の例として、以下のものを挙げることができる。もちろん、これらに限定されるものではない。
BIS−TRIS;ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン、
MES;2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、
BES;N,N−ビス(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、
DIPSO;3−(N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ)−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸、
MOPS;3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸、
MOPSO;3−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、イミダゾール、
TES;N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸、
ADA;N−(2−アセタミド)−イミノ二酢酸、
ACES;N−(2−アセタミド)−2−アミノエタンスルホン酸、および
TAPSO;N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸。
所望のpHを維持するのに十分な緩衝能力を持つ限り、他の緩衝液も使用可能である。適切な緩衝液の濃度は、約0.01〜約1mol/Lである。また、上述したキレート剤に緩衝能力がある場合、キレート剤を追加しなくてもよい。
図1から明らかなように、カルシウム−ホスホナゾIII錯体は、スペクトルの可視領域内で極大吸光度を示す。また、580nm付近の等吸収点を除く500〜700nmで任意の波長を使用することができる。
マグネシウム分析では、pHが約7のときに最高感度が得られる。pHが約6.5未満の場合、ホスホナゾIIIによるマグネシウムの結合が大きく減少し、pHが7よりも大きくなると、試薬ブランクが大きく増加する。しかし、pHが約7のとき、ホスホナゾIIIはカルシウムとも結合するため、とりわけ試料中に多量のカルシウムが存在する場合、カルシウムキレート剤を加える必要がある。ここで、ホスホナゾIIIに加えるカルシウムキレート剤は、マグネシウムと顕著に結合しないものを用いるべきである。
EGTAは、ホスホナゾIIIの存在下において、pH7でマグネシウムと結合しない、好適なカルシウムキレート剤であることがわかった。適切な濃度は、約1〜100mmol/Lである。また、約7あるいはそれより高いpHの下で、ホスホナゾIIIは、水溶液中のナトリウムとわずかに結合することがわかった。したがって、わずかな干渉を補正するため、塩化ナトリウムの生理的濃縮液をマグネシウム標準液に加える必要がある。あるいは、クリプトフィックス(Kryptofix)221(4,7,13,16,21−ペンタオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.5]トリコサン)などの適切なナトリウムキレート剤を試薬に加えてもよい。マグネシウム−ホスホナゾIIIキレートを測定するために使用する波長の選択は、カルシウムの場合とほぼ同じであり、580nm付近の等吸収点を除く500〜700nmの間の任意の波長を使用することができる。
ナトリウム分析に関し、ナトリウム結合は、pH5から11の範囲で生じるが、pH8.5〜9.5の間で最高感度となる。体液中のナトリウムを測定する場合、1または複数の適切な金属キレート剤を加えてナトリウム以外の金属イオンと結合させ、ナトリウム以外の金属イオンがホスホナゾIIIと反応するのを回避する必要がある。また、ホスホナゾIIIは、ナトリウムとほぼ同じホスホナゾIIIに対する親和性および感度を有するカリウムと結合する。したがって、ホスホナゾIIIがカリウムに結合するのを阻止することのできる適切なキレート剤が必要である。
リチウムもホスホナゾIIIと結合し、その結合特性は、ナトリウムに類似する。リチウム治療を受けていない限り、リチウムは通常体液中には存在しない。また、リチウム治療を受けている場合であっても、血清中における濃度は、正常血液の血清ナトリウム濃度が135〜145mmol/Lに対し、0.6〜1.2mmol/Lでしかない(Fundamentals of Clinical Chemistry,3ed.,Norbert W.Tietz編集者,p.971)。したがって、リチウムは、主要な干渉因子にならない。なお、リチウム結合化合物、たとえば、ジベンジル−14−クラウン−4を加えてもよい。
血清中において通常見られるカルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛と結合する好適な重金属キレート剤の例として、ジカルボン酸類、ホスホン酸類、リン酸、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、(1,2−シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CETA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸ニトリロ三酢酸(NTA)O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸(GEDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)およびN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N−三酢酸(EDTA−OH)を挙げることができる。該重金属キレート剤は、ナトリウム分析における緩衝液としての役目を果たすことができる。金属キレート剤の有効濃度は、約0.0005〜0.3mol/Lである。
カリウム干渉は、50%ジメチルスルホキシドの存在下、18−クラウン−6といったクラウンエーテルの添加によって、約80%減らすことができる。幸い、血清中のカリウム濃度は、ナトリウム濃度が通常135〜145mmol/Lであるのに対し、約3.5〜5mmol/Lでしかない。したがって、カリウムによる干渉は小さく、このカリウム分析値の較正に使用するナトリウム標準液に加えることによって完全に防ぐことができる。
ホスホナゾIIIとナトリウム、カリウムおよびリチウムとの錯体化の感度は、ホスホナゾIII緩衝液に対する吸湿性の溶剤または化合物の添加によって劇的に改善されることがわかった。このような感度の改善は、アルカリ性pH下で試薬の吸光度を低下させる、ホスホナゾIIIのホスホン酸基およびヒドロキシル基からのプロトンの解離を部分的に抑制するためと考えられる。これにより、緩衝液に添加するホスホナゾIIIをより多くすることができ、ホスホナゾIIIに結合するナトリウムをより多くすることができる(詳細については、以下の検討を参照のこと)。
吸湿性の溶剤または化合物を試薬に加えた時に感度の改善が見られる第2の理由は、ナトリウムおよび他のアルカリ金属イオンの周囲にある水和層(the hydration sphere)の部分的な除去または完全な除去にあると思われる。アルカリ金属イオン(この場合はナトリウム)を水溶液に加えた時、以下の式(1)により、アルカリ金属イオンは、水分子によって直ちに配位される(Advanced Inorganic Chemistry,F.Albert Cotton編集,第2編1967,第2および5章参照)。ナトリウムの配位数nは4であると考えられ、4個の水分子がナトリウムと強固に配位する。ナトリウムに関し、この反応は発熱量の大きな反応であり、97kcal/molのエネルギー放出を伴う。他のリガンドL(この場合ホスホナゾIII)との錯体化が生じる前、金属(この場合はナトリウム)は先ず、1個以上の強固に結合された水分子を失わなければならない。これらは式(2)および(3)に示されている。
nHO+M <−−−−> M(HO) +(n−j)HO (1)
M(HO) <−−−−> M(HO)j−k +kHO (2)
(式中、k=1〜4である)
M(HO)j−k +L <−−−−> ML(HO)j−k (3)
したがって、上述したような水分子の損失は、式(2)をさらに右にシフトさせ、これは次に式(3)をさらに右にシフトさせる。最終的な結果は、より多くの金属イオンがリガンド(金属錯化合物の中心金属に結合している原子団「配位子」であり、この場合はホスホナゾIII)によって結合されることになる。ホスホナゾIII、PH、によって放出されたプロトンは、水分子によって水和され、式(4)で示すようなヒドロニウムイオンを形成するので、前述した機構によるホスホナゾIIIのイオン化が抑制される。この場合、系からの遊離水を除去することにより、反応(4)が左にシフトし、アルカリ性pH下でのホスホナゾIIIのイオン化が抑えられ、吸光度が低下する。
PH+nHO<−−−>PH6−x −+(n−x)HO+xH (4)
(式中、x=1〜6)
アルカリ金属類との錯体反応において、ホスホナゾIIIの感度を増加する吸湿性剤としていくつかの化合物が有益であることがわかった。ジメチルスルホキシド(DMSO)は、非常に吸湿性があり、ホスホナゾIIIのナトリウム結合を増強する有用な化合物である。この化合物は、5〜11の広いpH範囲にわたって効果的であり、5%〜90%(ジメチルスルホキシド容量/緩衝液容量)の濃度範囲にわたって使用することができる。ホスホナゾIIIを使用したナトリウム測定における感度増加に有用とわかった吸湿性化合物の他の種類として、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類およびポリアルコールを挙げることができる。これらの化合物の例として、グルコース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、マルトトリオース、デキストラン、マンニトールおよびソルビトールが挙げられる。また、1種以上の上記吸湿性化合物を含む混合物を加えて、ナトリウム結合の増強を図ることもできる。たとえば、5mmol/LのDPTA緩衝液にpH9のナトリウム試薬を加え、さらに50%DMSOを加えると、感度の増加は、DMSOなしの同じ試薬に比べて、4.1倍となった。また、グルコースを加えて濃度を25%としたとき、感度はさらに倍になり、緩衝液のみの場合における感度と比べて8.3倍となった。
一般的に、吸湿性化合物を効果的に作用させるため、式(2)および(3)において平衡を右にシフトさせ、式(4)において平衡を左にシフトさせるのに十分な量を緩衝液に加える必要がある。この結果、より多くのホスホナゾIIIを試薬に加えることができ、より多くのアルカリ金属(この場合はナトリウム)が結合され、感度が増加する。大きな感度増強を得るためには、通例、緩衝液は、少なくとも約5重量%または容量%の吸湿性化合物を含んでいる必要がある。これにより、ナトリウム−ホスホナゾIII錯体を測定するために、約500〜700nmの間の任意の波長を使用することができる。また、クロロホスホナゾIIIがホスホナゾIIIと同じ条件でアルカリイオンと結合することも確認されている。
本発明の他の好適な態様は、カルシウム、マグネシウムまたはナトリウムの1つを測定するキットおよびそれを用いた測定方法である。いったん好適なキットについての説明がなされれば、公知の技術や装置を使用する比色定量分析に当該キットを用いることは、ことさら実験をすることなく当業者とって明らかなことである。たとえば、カルシウムを具体的に測定するための診断キットに含まれる化合物には、以下のものがある。
a)マロン酸(malonate)、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOからなる群から選択される1種以上の緩衝液;
b)マロン酸(malonic acid)、マロン酸塩、シュウ酸、シュウ酸塩、コハク酸、8−ヒドロキシキノリン、フタル酸、酒石酸およびフェニルホスホン酸からなる群から選択される1種以上のマグネシウムキレート剤;および
c)約10〜200μmol/LのホスホナゾIIIを含んでおり、
d)ホスホナゾIIIがpH約3〜10の溶液中に存在すること。
また、上記実施例は、以下の条件を満たすことが好適である。
a)約0.08mol/Lのマロン酸緩衝液;および
b)約83μmol/LのホスホナゾIIIを含んでおり、
c)ホスホナゾIIIがpH約5.5の溶液中に存在すること。
マグネシウムを測定するために有用な本発明における他の好適な診断キットには、以下のものがある。
a)BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOの群から選択される1種以上の緩衝液;
b)EGTAなどからなる群から選択されるカルシウムキレート剤;および
c)10〜200μmol/LのホスホナゾIIIを含み、
d)ホスホナゾIIIがpH約6.0〜10の溶液中に存在すること。
また、上記実施例は、以下の条件を満たすことが好適である。
a)約0.05mol/LのDIPSO緩衝液;
b)約6mmol/LのEGTA;および
c)約40μmol/LのホスホナゾIIIを含んでおり、
d)ホスホナゾIIIがpH約7.0の溶液中に存在すること。
ナトリウムを測定するために有用な本発明における他の好適な診断キットには、以下のものがある。
a)トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、DTPA、CETA、EDTA、EGTA、EDTA−OH、HIDA、IDA、NTAおよびGEDTAからなる群から選択される1種以上の緩衝液;
b)DTPA、CETA、EDTA、EGTA、EDTA−OH、HIDA、IDA、NTAおよびGEDTAからなる群から選択される1種以上の金属キレート化合物;
c)15−クラウン−5および18−クラウン−6からなる群から選択される1種以上のカリウム結合化合物;
d)30〜500μmol/LのホスホナゾIII;および
e)ジメチルスルホキシド、グルコース、マルトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、キシロースおよびキシリトールからなる群から選択される1種以上の吸湿性化合物を含み、
f)ホスホナゾIIIがpH約5〜11の溶液中に存在すること。
また、上記実施例は、以下の条件を満たすことが好適である。
a)約25mmol/LのDTPA;
b)約4mmol/Lの18−クラウン−6;
c)約200μmol/LのホスホナゾIII;および
d)約50%ジメチルスルホキシドを含んでおり、
e)ホスホナゾIIIがpH約9の溶液中に存在すること。
カルシウム分析
試料中のカルシウムの量を測定する場合の好適な測定方法は、上述した好適な診断試薬キットを準備し、
a)該診断試薬キットにおける試薬の吸光度を測定し(試薬ブランク);
b)カルシウムを含有する試料を上記試薬に加え;
c)該試料を試薬に加えた後の吸光度を測定し;
d)ステップa)で得られた吸光度をステップc)で得られた吸光度から減じて、試料中のカルシウムに基づく吸光度変化を得る測定方法である。
試料中のカルシウムの量を測定する他の好ましい測定方法は、
a)i)ホスホナゾIII;
ii)たとえば、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOから選択される緩衝液;および
iii)たとえば、マロン酸、マロン酸塩、シュウ酸、シュウ酸塩、マレイン酸、コハク酸、8−ヒドロキシキノリン、フタル酸、酒石酸およびフェニルホスホン酸から選択されるマグネシウムキレート剤を含む第1試薬を準備し;
b)試料を、前記第1試薬を入れたキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
c)たとえばEGTAから選択されるカルシウムキレート剤を含む第2試薬をステップb)のキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
d)ステップc)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光を、ステップb)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光から減じて、カルシウムに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得る測定方法である。
試料中のカルシウムの量を測定する他の好ましい測定方法は、
a)i)たとえば、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOから選択される緩衝液;および
ii)たとえば、マロン酸、マロン酸塩、シュウ酸、シュウ酸塩、マレイン酸、コハク酸、8−ヒドロキシキノリン、フタル酸、酒石酸およびフェニルホスホン酸から選択されるマグネシウムキレート剤を含む第1試薬を準備し;
b)試料を、前記第1試薬を入れたキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
c)ホスホナゾIIIを含む第2試薬をステップb)のキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
d)ステップb)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光を、ステップc)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光から減じて、カルシウムに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得る測定方法である。
試料中のカルシウムの量を測定するさらに好ましい測定方法は、
a)たとえば、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOから選択される緩衝液を含む第1試薬を準備し;
b)試料を、前記第1試薬を含むキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
c)i)ホスホナゾIII、および
ii)たとえば、マロン酸、マロン酸塩、シュウ酸、シュウ酸塩、マレイン酸、コハク酸、8−ヒドロキシキノリン、フタル酸、酒石酸およびフェニルホスホン酸から選択されるマグネシウムキレート化合物を含む第2試薬を、ステップb)のキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
d)ステップb)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光を、ステップc)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光から減じて、カルシウムに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得る測定方法である。
試料中のカルシウムの量を測定するさらに好ましい測定方法は、
a)i)ホスホナゾIII;および
ii)たとえば、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOから選択される緩衝液を含む第1試薬を準備し;
b)試料を、前記第1試薬を含むキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
c)たとえば、マロン酸、マロン酸塩、シュウ酸、シュウ酸塩、マレイン酸、コハク酸、8−ヒドロキシキノリン、フタル酸、酒石酸およびフェニルホスホン酸から選択されるマグネシウムキレート剤を含む第2試薬をステップb)のキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
d)ステップc)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光を、ステップb)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光から減じて、カルシウムに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得る測定方法である。
マグネシウム分析
試料中のマグネシウムの量を測定する場合の好適な測定方法は、上述した好適な診断試薬キットを準備し、
a)該診断試薬キットにおける試薬の吸光度を測定し(試薬ブランク);
b)マグネシウムを含有する試料を試薬に加え;
c)該試料を試薬に加えた後の吸光度を測定する;
d)ステップa)で得られた吸光度を、ステップc)で得られた吸光度から減じて、試料中のマグネシウムに基づく吸光度変化を得る測定方法である。
試料中のマグネシウムの量を測定する他の好ましい方法は、
a)i)ホスホナゾIII;
ii)たとえば、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACES、TAPSOから選択される緩衝液;および
iii)EGTAを含む第1試薬を準備し;
b)試料を、前記第1試薬を含むキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
c)EDTA、EDTA−OH、CETA、DTPA、HIDA、IDA GEDTAおよびNTAからなる群から選択されるキレート剤を含む第2試薬をステップb)のキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
d)ステップb)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光を、ステップc)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光から減じて、マグネシウムに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得る測定方法である。
試料中のマグネシウムの量を測定する他の好ましい方法は、
a)i)たとえば、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOから選択される緩衝液;および
ii)EGTAを含む第1試薬を準備し;
b)試料を、前記第1試薬を含むキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
c)ホスホナゾIIIを含む第2試薬をステップb)のキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
d)ステップb)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光を、ステップc)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光から減じて、マグネシウムに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得る測定方法である。
試料中のマグネシウムの量を測定するさらに別の好ましい測定方法は、
a)たとえば、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOからなる群から選択される緩衝液を含む第1試薬を準備し;
b)試料を、前記第1試薬を含むキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
c)i)ホスホナゾIII;および
ii)EGTAを含む第2試薬をステップb)のキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
d)ステップb)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光を、ステップc)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光から減じて、マグネシウムに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得る測定方法である。
試料中のマグネシウムの量を測定するさらなる好ましい測定方法は、
a)i)ホスホナゾIII;および
ii)たとえば、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOから選択される緩衝液を含む第1試薬を準備し;
b)試料を、前記第1試薬を含むキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
c)EGTAを含む第2試薬をステップb)のキュベットに加え、その吸光度、反射率または蛍光を測定し;
d)ステップc)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光を、ステップb)の結果として得られた吸光度、反射率または蛍光から減じて、マグネシウムに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得る測定方法である。
ナトリウム分析
試料中のナトリウムの量を測定する場合の好適な測定方法は、ホスホナゾIIIまたは式Iの化合物を含有する上述した好適な診断試薬キットを準備し、
a)該診断試薬キットにおける試薬の吸光度を測定し(試薬ブランク);
b)ナトリウムを含有する試料を上記試薬に加え;
c)該試料を試薬に加えた後の吸光度を測定し;
d)ステップa)で得られた吸光度をステップc)で得られた吸光度から減じて、試料中のナトリウムに基づく吸光度変化を得る測定方法である。
本発明の他の実施形態は、試料中のナトリウム量の測定に、2つのバイアルに入れたナトリウム試薬を用いる。ナトリウムを測定する方法は、先に記載したカルシウム試薬およびマグネシウム試薬と類似の方法で行う。この場合、ナトリウム緩衝液(複数を含む)は、以下の1種以上のものと置き換えられる。
ジカルボン酸類、ホスホン酸類、リン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、(1,2−シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CETA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、クエン酸ニトリロ三酢酸(NTA)O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸(GEDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)およびN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N−三酢酸(EDTA−OH)。重金属キレート剤は、上記キレート剤のリストから選択することもでき、緩衝液(複数を含む)としての役割も果たす。重金属キレート剤は、第1または第2試薬のいずれかに加えられていればよい。また、必要であれば、18−クラウン−6などのカリウムキレート剤を第1または第2試薬に加えてもよい。DMSOなどの吸湿性化合物(複数を含む)を、どちらか一方の試薬に加えてもよく、あるいは両方の試薬に対して同じ量を加えてもよい。
2つ試薬を用いたナトリウム分析において、カルシウムおよびマグネシウムの測定と同様に、第1の吸光度の読み取りは、試料および第1試薬を混合した後で行う。次いで第2試薬を加えた後、第2の吸光度の読み取りを行う。第1および第2の吸光度読み取り値の間における絶対差から、適当なナトリウム標準液を使用して、試料中のナトリウムに基づく吸光度を測定することができる。
上述した本発明の各分析方法において、吸光度は、約500〜700nmの波長の間で読み取る。
式Iの化合物がクロロホスホナゾIIIである本発明の一態様において、診断キットは、約25mmol/LのDTPA、約4mmol/Lの18−クラウン−6、約200μmol/LのクロロホスホナゾIII、約50%のジメチルスルホキシドも含み、該クロロホスホナゾIIIがpH約9の溶液中に存在する。
1試薬系のカルシウム試薬
200mL(リットル)の蒸留水に1.95gのMESと0.252gのシュウ酸2水和物を溶解する。pH(25℃)は、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの添加によって5.80に調整した。この溶液(10mL)に、0.6mgのホスホナゾIIIを加える。カルシウム分析は、37℃に設定されたCOBAS MIRA(自動分析装置;登録商標)により行った。180μLのホスホナゾIII試薬をピペットでMIRAのキュベットに入れる。50秒後、600nmにおける吸光度を読み取り、試薬ブランクの吸光度を測定した。2μLの水溶性試料を18μLの蒸留水に加え、75秒間インキュベート(incubation)した後、600nmにおける最終吸光度を読み取る。そして、最終吸光度の読み取り値から初期吸光度の読み取り値(試薬ブランクの吸光度)を減ずることにより、試料中のカルシウムに基づく正味の吸光度を求めた。この分析では、2.5mmol/Lのカルシウム標準液を使用して較正を行い、カルシウム標準液の回収は以下の通りであった。
Figure 2008537144
上記試薬に関し、約4.0mmol/Lまでの直線性が得られた。ホスホナゾIII濃度を増やすこと、および/または、試料容量を減らすことにより、より大きな直線性を得ることができる。さらに、カルシウムを測定するため、600nm以外の波長を使用することができる(図1参照)。特定の必要性や用途に応じて、どの波長および直線性の範囲が要求されるかは専門家が選択すべきことである。
上記試薬を用いて上記容量の試料を分析する場合、シュウ酸を添加することにより、マグネシウム濃度が10mmol/L以下であれば、マグネシウム干渉をほぼ排除することができる。カルシウム分析試料中におけるマグネシウム濃度について、以下に示す。
Figure 2008537144
2試薬系のカルシウム分析
試料ブランク吸光度を補正するのが望ましい場合、2試薬系のカルシウム分析を行ってもよい。2試薬系のカルシウム分析では、数種の試薬構成が可能である。例えば、ホスホナゾIIIは、濃縮調製され(必要に応じてオキサレートまたは他のキレート剤を加えてもよい)、「出発試薬」として加えられる。この出発試薬を、試料を含有する「一次試薬」に加え、試料中のカルシウムに基づく吸光度を測定するために使用する。一次試薬は、単なる水でもよいが、より好適には、ホスホナゾIIIとのカルシウム反応に適したpHの緩衝液がよい。また、一次試薬には、他の金属イオンがホスホナゾIIIと反応するのを防ぐためにキレート剤を含有させてもよい。
さらに別の2試薬系分析では、ホスホナゾIIIおよびオキサレートを一次試薬中に含有させ、出発試薬には他のキレート剤(複数を含む)を含有させてもよい。これにより、出発試薬中のキレート剤(複数を含む)がカルシウム−ホスホナゾIIIキレートを分裂させるので、試薬および試料に基づく吸光度のみが残存する。出発試薬に含めることのできる適切なキレート剤の例として、EDTA、EGTA、CETA、DTPA、NTA、GEDTA、IDA、HIDA、EDTA−OHおよびクエン酸が挙げられる。出発試薬における適切なキレート剤の濃度は約1〜約100mmol/Lである。出発試薬を加える前の吸光度から出発試薬を加えた後の吸光度を減じることにより、試料中のカルシウムに基づく正味の吸光度を得ることができる。
上述したように、ホスホナゾIIIおよびオキサレートを含む0.05mol/LのMES緩衝液中で一次試薬を調製した。93.1mgのEDTA(2ナトリウム2水和物塩)を9mL(あるいはこれよりも少量)の蒸留水に加え、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpHを5.8に調整後、蒸留水で希釈して10mLの出発試薬を調製した。COBAS MIRA(登録商標)を用いて、カルシウム分析を37℃で次のように実施した。180μLの一次試薬および2μLの試料、その後で8μLの蒸留水をピペットでMIRAキュベットに入れた。約10秒後、600nmにおける初期吸光度を読み取り、25秒後、20μLの出発試薬および5μLの蒸留水を加え、50秒間インキュベート(incubation)した後、600nmにおける最終吸光度を読み取った。初期吸光度から最終吸光度の読み取り値を減ずることにより、試料中のカルシウムに基づく正味の吸光度が得られた。2.0mmol/Lのカルシウム標準液を使用して較正を行い、結果は以下の通りであった。
Figure 2008537144
この分析は、基本的にマグネシウムからの干渉がなく、カルシウム濃度が4.0mmol/Lまでは直線的な傾向を示した。
1成分カルシウム分析
この実施例に係るカルシウムの測定において、緩衝液は、pHを維持するだけでなく、マグネシウムおよび他の重金属の干渉を排除するキレート剤としての役割も果たす。400mLの蒸留水に4.16gのマロン酸を加えた。トリエチルアミンでpHを5.5に調整し、250mgのソルビン酸を加えて溶解するまで撹拌した。この溶液に、1.0mLのTergitol NP9(Dow Chemical社,Midland,MI48678)と、1.5mLのCOLADET ACS1240(Colonial Chemical社,225Colonial Drive,South Pittsburg,TN37380)と、35mgのホスホナゾIIIとを加えた。蒸留水で500mlに希釈した後、25℃でトリエチルアミンを用いてpHを5.5に調整した。COBAS MIRA(登録商標)を使用し。37℃で以下のようにカルシウム分析を実施した。240μLのホスホナゾIII試薬をピペットでMIRAキュベットに入れた。50秒後、600nmにおける吸光度を読み取り、試薬ブランク吸光度を測定した。2μLの水溶性カルシウムまたはマグネシウム試料と10μLの蒸留水とを加え、75秒間インキュベート(incubation)した後、600nmにおける最終吸光度を読み取った。最終吸光度の読み取り値から初期吸光度の読み取り値を減じて、試料に基づく正味の吸光度を求めた。この分析では、2.5mmol/L(10mg/dL)のカルシウム標準液を使用して較正を行い、結果は以下の通りであった。
Figure 2008537144
1成分マグネシウム分析
200mLの蒸留水に、2.43gのDIPSO[3−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸]、0.447gのEGTAおよび8.2mgのホスホナゾIIIを溶解する。2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpHを7.0(25℃)に調整した。COBAS MIRA(登録商標)を使用し、37℃で次のようにマグネシウム分析を実施した。180μLの試薬をMIRAキュベットに加え、50秒後、600nmにおいて初期吸光度を読み取り、試薬ブランク吸光度を測定した。2μLの試料および18μLの蒸留水を加え、75秒間インキュベート(incubation)した後、600nmにおける最終吸光度を読み取った。最終吸光度の読み取り値から初期吸光度の読み取り値を減じた後、試料中のマグネシウムに基づく正味の吸光度を計算した。2.0mmol/Lのマグネシウム標準液を使用して較正を行い、結果は以下の通りであった。
Figure 2008537144
このように、上記試薬に関し、マグネシウムが約3.0mmol/Lまでの直線性が得られた。ホスホナゾIII濃度を増やすこと、および/または試料容量を減らすことにより、より大きな直線性を得ることができる。さらに、マグネシウムを測定するために、600nm以外の波長を使用することできる(図1参照)。特定の必要性や用途に応じて、どの波長および直線性の範囲が要求されるかに関しては専門家の選択に任せられる。
上記試薬を用いて上記容量の試料を分析する場合、EGTAを添加することにより、カルシウム濃度が4mmol/L以下であれば、カルシウム干渉をほぼ排除することができる。このことは、以下の表に示すように、マグネシウムが0.50mmol/Lの試料におけるカルシウム濃度の関係からも明らかである。
Figure 2008537144
カルシウム分析と同様に、マグネシウム分析も2試薬系で行うことができる。一方の試薬の構成は、たとえば、試料を水や好ましくはEGTAなどホスホナゾIIIと反応するカルシウムや他の金属イオンと結合するカルシウムキレート剤を含む緩衝液に加える。吸光度を読み取り、試料の吸光度寄与を得る。ホスホナゾIIIを含む出発試薬を加え、第2吸光度を読み取る。第1吸光度読み取り値を第2吸光度から減じた後、試料中のマグネシウムに基づく正味の吸光度を得る。他方の試薬は、一次試薬がEGTAまたは他の適切なカルシウムキレート剤と、ホスホナゾIIIとを含む緩衝液で構成され、これに試料を加える。EDTA、CETAまたはDTPAなどの緩衝化金属イオンキレート剤(複数を含む)で出発試薬を構成してもよい。第2試薬中のキレート剤(複数を含む)は、マグネシウム−ホスホナゾIII錯体を分裂させ、ホスホナゾIIIおよび試料ブランクに基づく吸光度を有する溶液となる。第2吸光度読み取り値を第1吸光度読み取り値から減じることにより、試料中のマグネシウムに基づく正味の吸光度が得られる。
2バイアルマグネシウム試薬
2バイアルマグネシウム試薬を以下のように調製した。上述したように、1バイアルマグネシウム試薬として一次試薬を調製した。37.2mgのジナトリウムEDTA2水和物を9mLの蒸留水に加え、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを用いてpHを25℃で7.0に調整し、蒸留水で10mLに希釈して出発試薬を調製した。この分析をCOBAS MIRA(登録商標)を使用し、37℃で次のように実施した。180μLの一次試薬をピペットでMIRAキュベットに入れ、25秒後、600nmにおいて初期吸光度を読み取り、20μLの出発試薬、次いで10μLの蒸留水を、キュベットに加え、75秒間インキュベート(incubation)した後、600nmにおいて最終吸光度を読み取り、試料中のマグネシウムに基づく正味の吸光度を、最終吸光度読み取り値を初期吸光度読み取り値から減じることによって計算した。分析は、2.0mmol/Lのマグネシウム標準液を使用して較正を行い、結果は以下の通りであった。
Figure 2008537144
上記試薬に関し、約3.0mmol/Lまでの直線性が得られた。ホスホナゾIII濃度を増やすこと、および/または試料容量を減らすことにより、より大きな直線性を得ることができる。さらに、マグネシウムを測定するために、600nm以外の波長を使用することできる(図1参照)。特定の必要性や用途に応じてどの波長および直線性の範囲が要求されるかに関しては専門家の選択に任せられる。
ヒト血清試料を、硫酸マグネシウムを含む水性較正物質でマグネシウム分析した場合、他のマグネシウム分析方法に比較して、わずかに正のバイアスが認められた。そして、この正のバイアスが、血清試料中のナトリウムによるわずかな干渉によるものであることがわかった。したがって、血清中のマグネシウムを測定する場合、わずかなナトリウム干渉を排除するために、血清較正物質を使用することが推奨される。あるいは、ナトリウム干渉を防止するため、Kryptofix(登録商標)などのナトリウムキレート剤をマグネシウム試薬に加えてもよい。
1バイアルナトリウム試薬
0.938gのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)に45mLの蒸留水を加えた。トリエチルアミンを加えてpHを9.5に調整し、蒸留水で50.0mLに希釈した。1.5mLのこの溶液に、1.5mLのジメチルスルホキシドとホスホナゾIIIとを加え、0.2mmol/Lの溶液とした。この溶液を、COBAS BIO(Roche Diagnostic Systems,Indianapolis IN)を用い、37℃で次のようにナトリウム分析を実施した。200μLのホスホナゾIII試薬をキュベットに加え、650nmにおける吸光度を読み取り、試薬ブランクの吸光度を測定した。約2分後、2μLの水性ナトリウム試料および4μLの蒸留水を加えた。90秒間インキュベート(incubation)した後、650nmにおける第2吸光度を読み取り、第1吸光度読み取り値(試薬ブランク)を、第2吸光度読み取りから減算することによって、試料中のナトリウムに基づく吸光度を得た。この分析では、140mmol/L水性ナトリウム標準液を使用して較正した。
Figure 2008537144
ホスホナゾIIIを使用するナトリウム試験は、ナトリウム濃度が120〜160mmol/Lの間で直線的応答を示す。この範囲は、血清中において予想されるナトリウムの濃度をカバーしている。
ナトリウム分析が2またはそれ以上の試薬系で行うことができるのは明らかである。この場合、ホスホナゾIII、吸湿性化合物(複数を含む)およびキレート剤、および緩衝液(複数を含む)をどの溶液に加えるかについては、数多くの選択肢がある。特定の用途に関してどの構成が最適であるかの判断は、専門家に任せられる。ナトリウム−ホスホナゾIII錯体を測定するために、650nm以外の波長も使用することができる(図2参照)。
0.6mgのホスホアゾIIIの代わりにp−メトキシホスホナゾIII、0.6mgを使用すること以外は、実施例1の手順と同じである。
試薬を200μmol/LのクロロホスホナゾIIIにしたこと以外は、実施例6の手順と同じである。
細菌の成長を抑制または阻止するため、防腐剤をカルシウム、マグネシウムおよびナトリウム試薬に加えてもよい。また、界面活性剤、洗浄剤または湿潤剤を添加してもよい。
図1は、0.05mol/LのDIPSO緩衝液(pH7.0)中のホスホナゾIII、Ca−ホスホナゾIII錯体およびMg−ホスホナゾIII錯体の吸光度スペクトルを示す。ホスホナゾIII、カルシウムおよびマグネシウムの濃度は、それぞれ、62、20および20μmol/Lである。 図2は、48%ジメチルスルホキシドおよび14.3%D−グルコースを含有する9.5mmol/Lのジエチレントリアミン五酢酸−トリエチルアミン緩衝液(pH8.5)中のホスホナゾIIIおよびNa−ホスホナゾIII錯体の吸光度スペクトルを示す。ホスホナゾIII濃度は200μmol/Lであり、ナトリウム濃度は930μmol/Lである。

Claims (19)

  1. カルシウム、マグネシウムまたはナトリウムの測定に有用な診断試薬キットであって、
    式Iに示す化合物を含む診断試薬キット。
    [式I]
    Figure 2008537144
    (但し、式I中のR、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれH、C1−6アルキル、C1−6エーテルアルキル、C1−6分岐アルキル、C3−8シクロアルキルおよびハロゲンからなる群から選択される。)
  2. 前記化合物は、下式に示すホスホナゾIIIであることを特徴とする請求項1に記載の診断試薬キット。
    Figure 2008537144
  3. カルシウムの測定に有用な診断試薬キットであって、
    a)マロン酸塩、BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOからなる群から選択される1種以上の緩衝液;
    b)マロン酸、マロン酸塩、シュウ酸、シュウ酸塩、コハク酸、8−ヒドロキシキノリン、フタル酸、酒石酸およびフェニルホスホン酸からなる群から選択される1種以上のマグネシウムキレート剤;および
    c)約10〜200μmol/LのホスホナゾIIIを含み、
    d)前記ホスホナゾIIIがpH約3〜10の溶液中に存在することを特徴とする請求項2に記載の診断試薬キット。
  4. 請求項3に記載の診断試薬キットであって、
    a)約0.08mol/Lのマロン酸緩衝液、および
    b)約83μmol/Lの前記ホスホナゾIIIを含んでおり、
    c)前記ホスホナゾIIIがpH約5.5の溶液中に存在することを特徴とする診断試薬キット。
  5. マグネシウムの測定に有用な診断試薬キットであって、
    a)BES、DIPSO、MES、MOPS、MOPSO、BIS−TRIS、イミダゾール、TES、ADA、ACESおよびTAPSOからなる群から選択される1種以上の緩衝液;
    b)EGTAなどからなるカルシウムキレート剤;および
    c)10〜200μmol/Lの前記ホスホナゾIIIを含み、
    d)前記ホスホナゾIIIがpH約6.0〜10の溶液中に存在することを特徴とする請求項2に記載の診断試薬キット。
  6. 請求項5に記載の診断試薬キットであって、
    a)約0.05mol/LのDIPSO緩衝液、
    b)約6mmol/Lの前記EGTA、および
    c)約40μmol/Lの前記ホスホナゾIIIを含んでおり、
    d)前記ホスホナゾIIIがpH約7.0の溶液中に存在することを特徴とする診断試薬キット。
  7. ナトリウムの測定に有用な診断試薬キットであって、
    a)トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、DTPA、CETA、EDTA、EGTA、EGTA−OH、HIDA、IDA、NTAおよびGEDTAからなる群から選択される1種以上の緩衝液;
    b)DTPA、CETA、EDTA、EGTA、EDTA−OH、HIDA、IDA、NTAおよびGEDTAからなる群から選択される1種以上の金属キレート化合物;
    c)15−クラウン−5および18−クラウン−6からなる群から選択される1種以上のカリウム結合化合物;
    d)30〜500μmol/Lの前記ホスホナゾIII;および
    e)ジメチルスルホキシド、グルコース、マルトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、キシロースおよびキシリトールからなる群から選択される1種以上の吸湿性化合物を含み、
    f)前記ホスホナゾIIIがpH約5〜11の溶液中に存在することを特徴とする請求項2に記載の診断試薬キット。
  8. 請求項7に記載の診断試薬キットであって、
    a)約25mmol/LのDTPA、
    b)約4mmol/Lの18−クラウン−6、
    c)約200μmol/Lの前記ホスホナゾIII、および
    d)約50%のジメチルスルホキシドを含んでおり、
    e)前記ホスホナゾIIIがpH約9の溶液中に存在することを特徴とする診断試薬キット。
  9. カルシウム、マグネシウムおよびナトリウムからなる群中における1のメンバーの量を測定する方法であって、
    a)請求項1の化合物を含有する試薬を準備し;
    b)前記試薬の吸光度、反射率または蛍光を測定し(試薬ブランク);
    c)前記群の前記メンバーを含有する試料を前記試薬に加え、その後、吸光度、反射率または蛍光を測定し
    d)ステップb)で得た吸光度、反射率または蛍光の値を、ステップc)で得た吸光度、反射率または蛍光の値から減じて、前記試料中の前記群の前記メンバーに基づく正味の吸光度、反射率または蛍光を得ること
    を含む方法。
  10. カルシウムの存在を測定する方法であって、
    a)請求項4の診断試薬キットを準備し;
    b)前記診断試薬キットにおける試薬の吸光度を測定し(試薬ブランク);
    c)カルシウムを含有する試料を前記試薬に加え;
    d)前記試料を前記試薬に加えた後の吸光度を測定し;
    e)ステップb)で得られた吸光度をステップd)で得られた吸光度から減じて、前記試料中のカルシウムに基づく吸光度変化を得ること
    を含む方法。
  11. マグネシウムの存在を測定する方法であって、
    a)請求項6の診断試薬キットを準備し;
    b)前記診断試薬キットにおける試薬の吸光度を測定し(試薬ブランク);
    c)マグネシウムを含有する試料を前記試薬に加え;
    d)前記試料を前記試薬に加えた後の吸光度を測定し;
    e)ステップb)で得られた吸光度をステップd)で得られた吸光度から減じて、前記試料中のマグネシウムに基づく吸光度変化を得ること
    を含む方法。
  12. ナトリウムの存在を測定する方法であって、
    a)請求項8の診断試薬キットを準備し;
    b)前記診断試薬キットにおける試薬の吸光度を測定し(試薬ブランク);
    c)ナトリウムを含有する試料を前記試薬に加え;
    d)前記試料を前記試薬に加えた後の吸光度を測定し;
    e)ステップb)で得られた吸光度をステップd)で得られた吸光度から減じて、前記試料中のナトリウムに基づく吸光度変化を得ること
    を含む方法。
  13. 吸光度を、約500〜700nmの波長において読み取る請求項10記載の方法。
  14. 吸光度を、約500〜700nmの波長において読み取る請求項11記載の方法。
  15. 吸光度を、約500〜700nmの波長において読み取る請求項12記載の方法。
  16. 式I(但し式I中、RおよびRはClである)の化合物を含む、ナトリウムの測定に有用な診断試薬キット。
  17. 請求項16に記載の診断試薬キットにおいて、
    a)約25mmol/LのDTPA;
    b)約4mmol/Lの18−クラウン−6;
    c)約200μmol/LのクロロホスホナゾIII;および
    d)約50%のジメチルスルホキシドを含み、
    e)クロロホスホナゾIIIがpH約9の溶液中に存在することを特徴とする診断試薬キット。
  18. 試料中のナトリウムの存在を測定する方法であって、
    a)請求項16の診断試薬キットを準備し;
    b)前記診断試薬キットにおける試薬の吸光度を測定し(試薬ブランク);
    c)ナトリウムを含有する試料を前記試薬に加え;
    d)前記試料を前記試薬に加えた後の吸光度を測定し;
    e)ステップb)で得られた吸光度をステップd)で得られた吸光度から減じて、前記試料中のナトリウムに基づく吸光度変化を得ること
    を含む方法。
  19. 吸光度を、約500〜700nmの波長において読み取る請求項18に記載の方法。
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