JP3212779B2 - 光学式分析装置の分光器の機差補正方法 - Google Patents
光学式分析装置の分光器の機差補正方法Info
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Description
度を測定して被検成分(アナライト)の含有量(濃度)
又は活性値を測定するための光学式分析装置に結合又は
組込まれている分光器の波長誤差(機差)に基づく測定
との誤差を補正する補正方法に関する。
層からなる分析要素であって、その少なくとも一層(ま
たは複数の層にわたって)に分析試薬を含有させ、層内
での反応により生じた生成色素を要素の外から透過光あ
るいは反射光により生成色素を比色定量するものであ
る。分析を行うまでは乾燥状態で保存・保管されるた
め、試薬を用時調製する必要がなく、また一般に乾燥状
態の方が試薬の安定性が高いことから、試薬溶液を用時
調製しなければならない湿式法より簡便性・迅速性に優
れている。このように乾式分析要素を用いる乾式法は、
多数の検体試料の取扱いがルーティン化している臨床検
査の分野で自動操作化が容易な分析方法として急速に普
及してきている。
ト)を含む液体試料を乾式分析要素に点着し、反応後の
分析要素の透過光または反射光の光学密度を、光学濃度
測定機(比色計、分光光度計など)で測定している。通
常は、濃度既知の標準試料と光学密度(透過光学濃度ま
たは反射光学濃度)との対応関係を標準曲線(検量線)
として作成し、この標準曲線を使って被検物の濃度を決
めている。
でも、光学濃度を測定する光学濃度測定機によって異な
る測定値となる機差が生じる。光学式濃度測定機は、回
折格子や干渉フィルターなどの分光器により照射光また
測定光を分光して、一定波長の光学濃度を測定するもの
であるが、その精度は分光器の性能(測定中心波長の正
確度、半値幅など)に依存する。特に、波長精度、半値
幅の設定ができない干渉フィルタ型分光光度計では、こ
の分光器の性能が機差の原因となる。測定対象物(すな
わち分析要素内での生成色素)の吸収波長スペクトルが
比較的緩やかで、このスペクトルの波長ピーク(または
谷)の光学濃度を測定する場合は、多少の測定波長、半
値幅のずれがあっても、得られる測定値(光学濃度)に
は影響が少なく、機差はそれほどは問題とならない。し
かし、測定対象物の吸収波長スペクトルの傾斜部分を測
定波長とする場合には、僅かな測定中心波長、半値幅の
ずれがあっても、得られる測定値(光学濃度値)は変動
することになり、測定機器間の誤差が無視できなくな
る。
を作成し定量分析の精度を確保している場合が多い。し
かし標準曲線を作成するには多くの標準試料が必要であ
り、アッセイごとに調製するのは煩雑であり、分析の迅
速性を損なうことになる。
ることを省略するため、予め既知濃度の被検物質で測定
値の誤差を検出し、測定機の機差を補正する方法が考え
られてきた。例えば、特開平4-60447 には、補正板(着
色標準板)を使用した光学式濃度測定機の機差補正方法
が提案されている。特開平4-60447 記載の方法は、測定
系の最終生成物(生成色素)と同じ色素(または測定波
長領域で類似する吸収スペクトルを有する着色物)を予
め乾式分析要素に含有させ、これを補正板(着色標準
板)として使用するものである。すなわち基準となるフ
ィルタで測定した場合に得られる光学濃度と(OD0 )
と、補正対象となる特定フィルタで測定した場合に得ら
れる光学濃度値(ODx )との関係を下記数式1で示す
一次関数として捉え、この補正式中の補正係数k,jを
求める。
光学濃度値(通常は反射光学濃度)をとる複数の補正板
(着色標準板)を用意し、これらを基準干渉フィルタと
補正対象の特定干渉フィルタ双方で測定し、各々のフィ
ルタにより得られたOD値から一次回帰解析するもので
ある。ここで用いる補正板が、分析要素内での最終生成
物(生成色素)と同じ又は類似した吸収スペクトルを有
する着色物を含有させたものであるため、単にモノクロ
フィルターを補正板とした場合よりも、測定値の補正精
度に優れるものとなっていた。
方法では、補正係数が2変数であるため、少なくとも2
つの異なる光学濃度の補正板(着色標準板)が必要であ
り、また実際には一次回帰式より算出するため、より多
くの補正板が必要となる。また、この補正板を作るため
には、測定系の最終生成物(生成色素)又は類似した吸
収スペクトルを有する色素を予め乾式分析要素に含有さ
せなければならず、分析用の乾式分析要素とは別に作成
しなければならない。測定系の最終生成物(生成色素)
が不安定で耐久性のないものである場合には、最終生成
物(生成色素)の測定波長領域で類似した吸収スペクト
ルを有する着色物を補正板に別途用意しなければならな
い。
ち検体液点着前の未反応の分析要素の光学濃度が高い場
合)や、反応後の発色濃度が低い場合には、補正効果が
低いということが判明した。
ものであり、1つの補正板で被補正測定機の測定値の補
正が可能であり、特に試薬ブランクの光学濃度が高い場
合や、発色濃度変化が小さい場合でも補正効果が大きい
光学濃度測定機の機差補正方法を提供することを目的と
する。
度を測定して被検成分(アナライト)の含有量(濃度)
又は活性値を測定するための光学式分析装置の分光器の
波長の機差を補正する補正方法において、アナライトと
未反応の乾式分析要素に含まれている指示薬色素又は前
記指示薬色素と少なくとも測定波長領域において類似す
る吸収スペクトルを有する色素を含む特定の光学濃度値
の標準色板の1枚を用意し、これを基準となる分析装置
で測定して基準光学濃度(ODST)を、被補正分析装置
で測定して被補正光学濃度(ODM )をそれぞれ得て、
検体を点着した乾式分析要素について前記被補正分析装
置によって得られた検体光学濃度測定値(ODS )を下
記の補正式; ODC =(ODST/ODM )×ODS で補正して補正された検体光学濃度ODC を得ることを
特徴とする光学式分析装置の分光器の機差補正方法によ
り達成された。
用して、予め基準となる分析装置(基準機)で測定され
た光学濃度(ODST)と、補正対象となる被補正分析装
置(被補正機)で測定された光学濃度(ODM )から補
正係数を求めるものである。基準機で測定された光学濃
度(特定光学濃度)は、通常、既知濃度として与えるこ
とができるので、被補正機では1枚の標準色板を1点測
定するだけで補正係数F=ODST/ODM が得られ、検
体点着時の光学濃度を補正することができる。
未反応の乾式分析要素に含まれている指示薬色素を含む
標準色板を使用する。この標準色板としては、試料液を
点着していない未使用の乾式分析要素(すなわち試薬ブ
ランク)をそのまま使用することができる。あるいは、
アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている指示
薬色素と少なくとも測定波長領域において同一又は類似
する吸収スペクトルを有する色素を含む特定の光学濃度
値の標準色板を使用することもできる。
る光学濃度測定値を補正するためには、検体を点着した
乾式分析要素を用いて基準機と被補正機の測定値から補
正するのが好ましい。しかし測定時にこれを行うことの
煩雑さを避けるためには、前述の特開平4-60447 記載の
方法では、測定系の最終生成物(生成色素)と同じ色素
(または測定波長領域と同一吸収波長領域で類似する吸
収スペクトルを有する着色物)を予め乾式分析要素に含
有させたものを補正板(標準色板)として用いていた。
しかし、実際にはこのような測定系の最終生成物(生成
色素)である必要は必ずしもなく、未反応の指示薬色素
であっても補正用の標準色板として使用できることを見
いだしたものである。これは乾式分析要素特有の以下の
特性によるものと考えられる。
は、定量域中のアナライトと反応するに足りるように実
際に分析されるアナライト量に比べ過剰量となってい
る。また反応効率を考慮しても過剰量が必要となる。こ
のため必要な化学量論量より数倍という量の指示薬色素
を含有させるのが常法である。従って、検体を点着して
アナライトと反応した乾式分析要素内では、生成色素以
外にも未反応の指示薬色素も多量に含まれることにな
り、検体点着後の乾式分析要素が示す吸収スペクトル
は、生成色素の吸収スペクトルと残余の未反応指示薬色
素の吸収スペクトルの合算されたものとなる。測定波長
における未反応指示薬色素の分子吸光係数が、生成色素
の分子吸光係数に比べ十分に低い値である場合には、こ
のような未反応指示薬による測定値への影響は少ない。
これは試薬ブランク(試料液を点着していない未使用の
乾式分析要素)の測定波長における光学濃度が十分低い
場合に相当する。
それに比べて反応後の発色濃度が低い場合(すなわちS
/N比が低い、ダイナミック・レーシオが低い場合)に
は未反応指示薬色素による吸収スペクトルが無視できな
くなる。このような場合には、検体点着後の乾式分析要
素が示す吸収スペクトルに対する未反応指示薬色素の吸
収スペクトルの寄与が大きいため、測定波長領域での検
体点着後の乾式分析要素の吸収スペクトルは未反応指示
薬色素の吸収スペクトルと類似するものとなる。このよ
うな場合に、未反応の指示薬色素を含んでいる乾式分析
要素であっても、補正用の標準色板として使用すること
ができることを見いだしたものである。しかもこの場合
には、試薬ブランクの光学濃度が高いため、測定値を補
正するための補正直線は事実上原点を通ることと近似で
き、その結果、異なる光学濃度の標準色板での測定の必
要がなくなったものである。
ム分析用乾式分析要素に、図中の数字で示される各種濃
度の塩化カルシウム溶液を点着した場合の、反射光学濃
度スペクトルである。濃度0(図中 H2O)から濃度上昇
に伴い、分析要素の反射光スペクトルは図1のように変
化する。このスペクトル変化の中から、光学濃度変化が
大きくその変化が直線性を有する波長として625 nmが、
分析時の測定波長に選ばれる。しかしこの測定波長はス
ペクトルのピーク頂点ではないため、測定機の分光器性
能により実際に測定する波長域がずれている場合には、
OD値に大きな影響を与える。一方、試料液を点着して
いない未使用の乾式分析要素(すなわち試薬ブランク)
の反射光スペクトルは図中破線で示すようになり、測定
波長625nmにおけるスペクトル曲線の傾斜は、各種濃度
の塩化カルシウム溶液点着時とほぼ同様である。このよ
うな条件の時に、被補正測定機で測定された分析測定値
は、以下の数式2で補正出来る。
学濃度、 ODM :被補正機で測定された試薬ブランク分析要素の
光学濃度、 F :補正係数、 ODS :検体を点着した乾式分析要素について被補正機
によって得られた光学濃度 ODC :補正された光学濃度
800nm の範囲で実施することができる。補正する光学濃
度(OD)は、0.1 から2.2 の範囲で補正可能であり、
好ましくは0.15から2.0 の範囲である。補正可能波長範
囲は基準測定機の測定中心波長の±40nmであり、好まし
くは±20nmであるが、測定試薬のスペクトルも考慮する
ことが必要である。
少ない測定系で本補正方法は効果を発揮する。すなわ
ち、被補正分析装置の分光器の測定波長において測定し
た標準色板(試薬ブランク)の光学濃度(ODB )と通
常定量域濃度範囲の検体試料を点着して所定の測定プロ
セスでアナライトを反応させた乾式分析要素の光学濃度
(ODR )との関係が、 (ODR −ODB )/ODB ≦0.7 の場合に本発明の補正方法は特に良好な補正効果が発揮
される。 0.7<(ODR −ODB )/ODB ≦1.0 でも補正効果は認められ、本発明の補正方法を適用でき
るが、この値が1.0をこえる場合には本補正方法は適
さない。
に、試薬ブランクに類似する色素を含む標準色板を使用
する場合には、例えば、当該乾式分析要素と同構成にし
て、指示薬色素を含有させる層に、指示薬色素の代わり
に測定波長領域で同一又は類似の吸収スペクトルを有す
る色素を含有させることにより標準色板を作製できる。
ここでいう測定波長領域とは、基準となる分析装置の分
光器の中心波長(λo )の前後±5nm の波長範囲をい
う。吸収スペクトルが類似するとは、基準となる分析装
置の分光器(干渉フィルタ又は回折格子)の中心波長の
前後5nm の波長範囲(測定波長領域)において、アナラ
イトと未反応の乾式分析要素の含まれている指示薬色素
の反射スペクトルの平均勾配(CT )と、基準色板に含
まれる色素(又は指示薬色素)の反射スペクトルの平均
勾配(ST )とが、0.5×ST ≦CT ≦2.0×ST
(CT ≧0;ST ≧0の場合) 又は 0.5×ST ≧CT ≧2.0×ST (CT <0;ST <0の場合)好ましくは、 0.7×ST ≦CT ≦1.5×ST (CT ≧0;ST ≧0の場合) 又は 0.7×ST ≧CT ≧1.5×ST (CT <0;ST <0の場合) の関係にあるこという。以上の関係を満たす基準色板に
含まれる色素(又は指示薬色素)を類似する吸収スペク
トルを有する色素(又は指示薬色素)という。なお、反
射スペクトルの平均勾配とは測定波長領域において波長
1nmごとに求めた反射スペクトルの勾配値(11個)
の算術平均値を意味する。
であるから、通常は試薬ブランクを1点のみ測定するこ
とで、補正係数Fを求めることができる。ただし、光学
濃度の異なる複数のロットの試薬ブランク(すなわち未
使用乾式分析要素)が準備できる場合には、複数の試薬
ブランクの光学濃度(ODS )から1次回帰相関で補正
係数Fを求めてもよい。
で、基準機で測定した試薬ブランクの光学濃度ODSTが
安定である場合、予め既知光学濃度として測定機にメモ
リしておくことにより、より迅速に補正係数Fを算出で
き、検体分析時の測定値を補正することができる。乾式
分析要素中の試薬が不安定で保存中に光学濃度が変化す
るような系では、本来本補正方法は好ましくないが、試
薬ブランクを基準機と測定機とで同時に測定することに
より、補正係数Fを求めることができる。しかし一般
に、乾式分析要素は保存・保管などによる経時変化がで
きるだけ少なくなるように試薬ブランクを安定に製造さ
れるのが本来の目的であるから、多くの乾式分析要素の
測定においては試薬ブランクは安定である。
最適であるが、測定機の光学系の変動が少ない場合に
は、一度測定して求めた補正係数Fを当該測定機にメモ
リしておくことにより、測定ごとに補正係数を求める必
要はなくなる。
濃度を測定して被検成分(アナライト)の含有量(濃
度)又は活性値を測定するための光学式分析装置の分光
器の波長の機差を補正する補正方法において、 (a) アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている
指示薬色素、 (b) アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている
指示薬色素と測定波長領域において実質的に同一又は類
似する吸収スペクトルを有する色素、又は (c) 指示薬がアナライトと反応して生成する色素と測定
波長領域において実質的に同一または類似する吸収スペ
クトルを有する色素、のうちのいずれか1種の色素を含
む特定の光学濃度値の標準色板の1枚を用意し、これを
基準となる分析装置で測定して基準光学濃度(ODST)
を、被補正分析装置で測定して被補正光学濃度(OD
M )をそれぞれ得て、これら両測定値(ODST,OD
M )と乾式分析要素の層構成から予め定められる層係数
(L:一定値)とを用いて、波長の機差補正係数勾配
(Φ)と波長の機差補正係数切片(Λ)とを、 Φ=(ODST−L)/(ODM −L) Λ=[(ODM −ODST)/(ODM −L)]×L で定め、検体を点着した乾式分析要素について前記被補
正分析装置によって得られた検体光学濃度測定値(OD
S )を下記の補正式; ODC =Φ×ODS +Λ =[(ODST−L)/(ODM −L)]×ODS +[(ODM −ODST)/(ODM −L)]×L で補正して補正された検体光学濃度値ODC を得ること
を特徴とする光学式分析装置の分光器の機差補正方法に
よっても達成される。
合には、分析要素の層構成によって反射光学濃度が変化
する場合がある。例えば、層構成中に光反射層や光遮蔽
層として機能させるために、硫酸バリウムや二酸化チタ
ンなどのを含む層を設けると、分析要素の反射光学濃度
は低くなる。このような層構成によって決まる特有の係
数(層係数L)を、それぞれの見かけの光学濃度値OD
ST、ODM 、ODS から減じた値、ODST' (=ODST
−L)、OD M '(=ODM −L)、ODS'(=ODS −
L)を真の値として代わりに使用することにより、補正
することができる。この場合の補正式は下記の数式3の
ようになる。
の光学濃度、 ODM :被補正測定機で測定された試薬ブランク分析要
素の光学濃度、 F :補正係数、 ODS :検体を点着した乾式分析要素について被補正測
定機によって得られた光学濃度 ODC :補正された光学濃度 L :層係数(一定値)
式4のように示すことができる。
DS )から直ちに、補正された検体光学濃度測定値(O
DC )を算出するためには、数式4で示されるような、
ODS とODC の座標系で計算する方が便利である。従
って、
の傾き(波長機差補正係数勾配)を表し、Λは同じく補
正関数の切片(波長機差補正係数切片)を表すことにな
る。すなわち、図2で示すように、標準色板の基準機で
の光学濃度ODSTと被補正機での光学濃度値ODM で決
まる点をプロットすることにより、前記数式4で定まる
補正関数を一義的に求めることができる。
度(ODST、ODM )に比べ極めて低い値である場合、
例えば、 L/ODST≦0.1またはL/ODM ≦0.1 の場合にはL≒0に近似して、 Φ=(ODST−L)/(ODM −L)≒ODST/ODM とすることができる。また通常試薬ブランクの光学濃度
(ODST、ODM )の絶対値に比べ、その差(機差)は
それほど大きくはないので、ODM ≒ODSTとできる場
合が多く、その場合には Λ=[(ODM −ODST)/(ODM −L)]×L≒0 に近似できる。結局この場合は、数式2で示した補正式
と同じものになる。
り定まり、一定値をとることが経験的に知られている層
構成固有の数値である。この値は通常、指示薬色素のみ
を含有させずに作製した乾式分析要素を、乾燥状態のま
まで測定した光学濃度として得ることができる。この層
係数Lを考慮した場合に、本発明で使用する標準色板に
求められる波長特性について、図3により説明する。
式分析要素Mについて、測定中心波長λの基準機で測定
した光学濃度がPとする。この測定値(ODM )光学濃
度Pは、基準機で示すはずの補正値(ODC )として同
じ値Pを示す。検体点着時の乾式分析要素Mが波長測定
領域において吸収スペクトルが傾斜している場合、基準
機に比べ測定中心波長がdλだけずれている被補正機で
は、その光学濃度測定値はdPだけずれることになる。
得られた測定値(P+dP)を、基準機であれば示すは
ずの値すなわち補正値Pに補正するためには、図3にお
いてラインBのような補正曲線を予め設定する必要があ
る。このための標準色板Nには、基準機における測定値
Qに対してdQだけずれた測定値Q+dQの値をとるも
のであれば、これを補正値Qにする補正直線Bを求める
ことができる。ここで、層係数Lは波長のずれによらず
ほぼ一定値をとる値とすることができ、図上固定された
点となる。従って、補正関数Bを求めるために必要な標
準色板Nには、波長のずれdλに対してdQ=[(Q−
L)/(P−L)]dPとなるような波長特性が求めら
れる。すなわち、通常定量域濃度の検体を点着した乾式
分析要素の示す測定波長でのスペクトルの傾斜(dP/
dλ)に対して、標準色板の測定波長でのスペクトルの
傾斜(dQ/dλ)は、以下の関係にある時が理想的な
補正を行うことができる。
λ)
は、dQが図3で0〜dQの範囲にあれば、少なくとも
補正を行わなわなかった場合よりも基準機であれば示し
たはずの値ODC に近づく。このためには
(dP/dλ) dP>0の場合、 0 < dQ/dλ ≦ [(Q−L)/(P−L)]
(dP/dλ)
補正が行うことができる。層係数Lが十分小さくL≒0
に近似できる場合には、数式7は
色板を使用すれば、本発明の補正方法は適用できる。試
薬ブランクの光学濃度が高く、それに比べて反応後の発
色濃度が低い場合(すなわちS/N比が低い、ダイナミ
ック・レーシオが低い場合)には未反応指示薬色素によ
る吸収スペクトル勾配への寄与が大きい。このため、指
示薬がアナライトと反応して生成する色素以外でも、測
定波長領域において実質的に上記関係を満たすように同
一または類似する吸収スペクトルを有する色素として、 (a) アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている
指示薬色素、又は (b) アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている
指示薬色素と測定波長領域において実質的に同一又は類
似する吸収スペクトルを有する色素、も、本発明の標準
色板に使用することができる。
を備えた富士写真フイルム(株)製アナライザー富士ド
ライケム5000の15台について、本補正方法の効果
を確認した。使用した乾式分析要素は、特願平03-26081
の実施例1のカルシウム分析用スライドと同様の方法
で、以下のように作成した。
フタレート(PET)平滑フィルムシート(支持体)上
に下記組成の水溶液が、以下の被覆率となるように塗布
し、乾燥して試薬層を設けた。 ゼラチン(アルカリ処理、脱イオン処理の後に精製) 12.6 g/m2 p-ノニルフェノキシポリグリシドール 350 mg/m2 (グリシドール単位:平均10含有) MES( 2-(N-Morpholino)ethanesulfonic acid ) 1.96 g/m2 クロロホスホナゾ−III 5.33 g/m2 ルチル型二酸化チタン 1.15 g/m2 KOH 1.4 mg/m2
ノニルフェノキシポリグリシドール0.25%の水溶液を塗
布量37.6g/m2で塗布した直後に、特開昭64-25061に記載
の処理でカルシウム含有量を低減させたポリエチレンテ
レフタレート紡績糸製トリコット編物布地をほぼ一様に
軽く圧力をかけて接着し展開層とした。
布し、乾燥した後、特開昭57-63452に記載のマウントに
収め、カルシウム分析用一体型多層分析要素を作成し
た。 ポリビニルピロリドン(平均分子量 約120 万) 5 g/m2 ノニルフェノキシポリエトキシエタノール 1.25 g/m2 (オキシエチレン単位:平均10含有)
調べた。前記のようにして得られたカルシウム分析要素
の未使用スライドを標準板として、補正対象である測定
機No.1のアナライザー富士ドライケム5000により62
5nm における反射光学濃度(ODM )を測定した。同様
に同じ標準板で基準機としたアナライザー富士ドライケ
ム50001台により反射光学濃度(ODST)を測定し
た。この結果から測定機No.1の補正係数F=ODST/O
DM を計算した。
常濃度域の人血清を点着し、4分間インキュベーション
した後、625nm における反射光学濃度を測定し、検体の
反射光学濃度(ODS )を求めた。得られた測定値OD
S は先に求めた補正係数Fを乗じて補正し、ODS ×F
=ODC を得た。補正後の検体光学濃度(ODC )を用
いて、別途人血清で求めた検量線により検体中のカルシ
ウム濃度を算出した。結果を表1の測定機No.1の行に示
す。なおここで使用したカルシウム分析要素の層係数L
は0である。
アナライザーについても、それぞれ別のカルシウム分析
要素の未使用スライドを標準板として試薬ブランク測定
値(ODM )を求め、その度に基準機で基準光学濃度
(ODST)を測定した後、同じ人血清検体を点着して検
体測定を行った。以下測定機No.1の場合と同じように補
正係数Fを求め、検体の反射光学濃度(ODS )を補正
し、検体光学濃度補正値(ODC )、さらにカルシウム
濃度を算出した。結果を同じく表1の測定機No.2-15 の
行に示す。なお基準機で得た検体測定値(ODS )及び
物質濃度を基準機の行に示す。ここで示した基準機によ
り求めた物質濃度値は、o−CPC(オルトクレゾール
フタレインコンプレクソン)を用いる湿式のカルシウム
標準測定法で測定した測定値(検定値)に合致するよう
に作成された標準検量線で波長625nmで検定された
干渉フィルタを備えた基準機で測定された値である。
検体測定値は補正により、基準機の示す検体測定値に近
い値となった。また検体測定値のばらつきは、補正前の
標準偏差0.0114から補正後の標準偏差0.0035と小さくな
り、本発明の補正方法が効果があることを示している。
5台について補正効果の確認を行った。まず、前記のよ
うにして得られたカルシウム分析要素の未使用スライド
を標準板として、基準機としたアナライザー富士ドライ
ケム50001台により反射光学濃度(ODST)を測定
した。ODST値は表2に示すように1.504 であった。次
に補正対象である測定機15台のアナライザーについて
もそれぞれ反射光学濃度(ODM )を測定した。この結
果から各測定機の補正係数F=ODST/ODMを計算し
た。別の未使用スライド(ただし同じ製造ロットであ
る)に人血清を点着し、4分間インキュベーションした
後、625nm における反射光学濃度を測定し、測定機にお
ける検体の反射光学濃度(ODS )を求めた。得られた
測定値ODS は先に求めた補正係数Fを乗じて補正し、
ODS ×F=ODC を得た。補正後の検体光学濃度(O
DC )を用いて、検量線により検体中のカルシウム濃度
を算出した。これを各測定機15台について行った。結
果を表2に示す。
検体測定値は補正により、基準機の示す検体測定値に近
い値となった。また各測定機における検体測定値のばら
つきは、補正前の標準偏差0.0114から補正後の標準偏差
0.0033と小さくなり、本発明の補正方法が同じ標準板を
使用した場合にも効果があることを示している。このこ
とは、単一の標準板について予め求めた光学濃度を既知
濃度として測定機にメモリすれば、測定ごとに基準機で
の測定する必要はないことを示している。
正方法は、アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれ
ている指示薬色素又は前記指示薬色素と少なくとも測定
波長領域において類似する吸収スペクトルを有する色素
を含む特定の光学濃度値の標準色板を用いて、基準機で
の測定値(ODST)と、被補正機での測定値(ODM )
から補正係数(F=ODM /ODST)を求める。補正の
ために求める変数は1つであるので1枚の標準色板で使
用測定機の検体測定値の補正が可能である。特に試薬ブ
ランクの光学濃度が高い場合や、発色濃度変化が小さい
場合に優れた補正効果を発揮する。また使用する補正板
(標準板)は、分析に使用する乾式分析要素の未使用ス
ライドをそのまま使用できるので、特別な補正板(標準
色板)を作る必要がない。又層係数Lを考慮した場合で
も、この層係数Lを一定値とみなすことにより、標準色
板の基準機での測定値(ODST)と、被補正機での測定
値(ODM )から2つの補正係数; Φ=(ODST−L)/(ODM −L) Λ=[(ODM −ODST)/(ODM −L)]×L を求めることができる。
を測定して被検成分(アナライト)の含有量(濃度)又
は活性値を測定するための光学式分析装置の分光器の波
長の機差を補正する補正方法において、アナライトと未
反応の乾式分析要素に含まれている指示薬色素又は前記
指示薬色素と少なくとも測定波長領域において類似する
吸収スペクトルを有する色素を含む特定の光学濃度値の
標準色板の1枚を用意し、これを基準となる分析装置で
測定して基準光学濃度(ODST)を、被補正分析装置で
測定して被補正光学濃度(ODM )をそれぞれ得て、検
体を点着した乾式分析要素について前記被補正分析装置
によって得られた検体光学濃度測定値(ODS )を下記
の補正式; ODC =(ODST/ODM )×ODS で補正して補正された検体光学濃度ODC を得ることを
特徴とする光学式分析装置の分光器の機差補正方法。 (2) 前記標準色板が、アナライトと未反応の乾式分
析要素に含まれている指示薬色素を含む標準色板である
(1)に記載の光学式分析装置の分光器の機差補正方
法。 (3) 前記標準色板が、アナライトと未反応の乾式分
析要素に含まれている指示薬色素と少なくとも測定波長
領域において類似する吸収スペクトルを有する色素を含
む標準色板である(1)に記載の光学式分析装置の分光
器の機差補正方法。 (4) 乾式分析要素の光学濃度を測定して被検成分
(アナライト)の含有量(濃度)又は活性値を測定する
ための光学式分析装置の分光器の波長の機差を補正する
補正方法において、 (a) アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている
指示薬色素、 (b) アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている
指示薬色素と測定波長領域において実質的に同一又は類
似する吸収スペクトルを有する色素、又は (c) 指示薬がアナライトと反応して生成する色素と測定
波長領域において実質的に同一または類似する吸収スペ
クトルを有する色素、のうちのいずれか1種の色素を含
む特定の光学濃度値の標準色板の1枚を用意し、これを
基準となる分析装置で測定して基準光学濃度(ODST)
を、被補正分析装置で測定して被補正光学濃度(OD
M )をそれぞれ得て、これら両測定値(ODST,OD
M )と乾式分析要素の層構成から予め定められる層係数
(L:一定値)とを用いて、波長の機差補正係数勾配
(Φ)と波長の機差補正係数切片(Λ)とを、 Φ=(ODST−L)/(ODM −L) Λ=[(ODM −ODST)/(ODM −L)]×L で定め、検体を点着した乾式分析要素について前記被補
正分析装置によって得られた検体光学濃度測定値(OD
S )を下記の補正式; ODC =Φ×ODS +Λ =[(ODST−L)/(ODM −L)]×ODS +[(ODM −ODST)/(ODM −L)]×L で補正して補正された検体光学濃度値ODC を得ること
を特徴とする光学式分析装置の分光器の機差補正方法。 (5) 前記標準色板が、アナライトと未反応の乾式分
析要素に含まれている指示薬色素を含む標準色板である
(4)に記載の光学式分析装置の分光器の機差補正方
法。 (6) 前記標準色板が、アナライトと未反応の乾式分
析要素に含まれている指示薬色素と同じ又は実質的に同
一の色素を含む標準色板である(4)に記載の光学式分
析装置の分光器の機差補正方法。 (7) 前記標準色板が、アナライトと未反応の乾式分
析要素に含まれている指示薬色素と測定波長領域におい
て類似する吸収スペクトルを有する色素を含む標準色板
である(4)に記載の光学式分析装置の分光器の機差補
正方法。 (8) 前記標準色板が、乾式分析要素に含まれている
指示薬色素がアナライトと反応して生成する色素と同じ
又は実質的に同一の色素を含む標準色板である(4)に
記載の光学式分析装置の分光器の機差補正方法。 (9) 前記標準色板が、乾式分析要素に含まれている
指示薬色素がアナライトと反応して生成する色素と測定
波長領域において類似する吸収スペクトルを有する色素
を含む標準色板である(4)に記載の光学式分析装置の
分光器の機差補正方法。 (10)前記層係数(L)及び波長の機差補正係数切片 Λ=[(ODM −ODST)/(ODM −L)]×L のいずれも予め定められた特定の数値として与えられる
ことを特徴とする(4)に記載の光学式分析装置の分光
器の機差補正方法。 (11)前記層係数(L)及び波長の機差補正係数切片 Λ=[(ODM −ODST)/(ODM −L)]×L のいずれも数値0として与えられることを特徴とする
(4)に記載の光学式分析装置の分光器の機差補正方
法。 (12)前記標準色板が、アナライトと未反応の乾式分
析要素に含まれている指示薬色素を含む標準色板である
(11)に記載の光学式分析装置の分光器の機差補正方
法。
する図である。
色板の波長特性の説明図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 乾式分析要素の光学濃度を測定して被検
成分(アナライト)の含有量(濃度)又は活性値を測定
するための光学式分析装置の分光器の波長の機差を補正
する補正方法において、 (a) アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている
指示薬色素;又は (b) アナライトと未反応の乾式分析要素に含まれている
指示薬色素と測定波長領域において実質的に同一又は類
似する吸収スペクトルを有する色素; を含む特定の光学濃度値の標準色板の1枚を用意し、 これを基準となる分析装置で測定して基準光学濃度(O
DST)を、被補正分析装置で測定して被補正光学濃度
(ODM)をそれぞれ得て、 これら両測定値(ODST,ODM)と乾式分析要素の層
構成から予め定められる層係数(L:一定値)とを用い
て、波長の機差補正係数勾配(Φ)と波長の機差補正係
数切片(Λ)とを、 Φ=(ODST−L)/(ODM−L) Λ=[(ODM−ODST)/(ODM−L)]×L で定め、検体を点着した乾式分析要素について前記被補
正分析装置によって得られた検体光学濃度測定値(OD
S)を下記の補正式; ODC =Φ×ODS +Λ で補正して補正された検体光学濃度値ODC を得ること
を特徴とする光学式分析装置の分光器の機差補正方法。 - 【請求項2】 前記層係数(L)及び波長の機差補正係
数切片(Λ)のいずれも予め定められた特定の数値とし
て与えられることを特徴とする請求項1に記載の光学式
分析装置の分光器の機差補正方法。 - 【請求項3】 前記層係数(L)及び波長の機差補正係
数切片(Λ)のいずれも数値0として与えられることを
特徴とする請求項2に記載の光学式分析装置の分光器の
機差補正方法。 - 【請求項4】 前記標準色板が、アナライトと未反応の
乾式分析要素である請求項1に記載の光学式分析装置の
分光器の機差補正方法。
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