JP2008520617A - 抗癌剤としての銅メルファラン及び銅テガフール - Google Patents
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Abstract
【課題】有効な抗腫瘍治療のための新規方法の提供。
【解決手段】一般式Cu(L)2の銅化合物又は水和物の使用に関する。リガンドLは独立に、抗癌剤としての4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニン(メルファラン)又は/及び5−フルオロ−1−(テトラヒドロ−2−フリル)−ウラシル(テガフール)である。2つのリガンドLは好ましくはメルファラン又はテガフールであり、特に好ましくは共にLメルファランリガンドである。式(I)の化合物は任意に結晶水、特に2分子のH2O(x=2)を含む。
【選択図】なし
【解決手段】一般式Cu(L)2の銅化合物又は水和物の使用に関する。リガンドLは独立に、抗癌剤としての4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニン(メルファラン)又は/及び5−フルオロ−1−(テトラヒドロ−2−フリル)−ウラシル(テガフール)である。2つのリガンドLは好ましくはメルファラン又はテガフールであり、特に好ましくは共にLメルファランリガンドである。式(I)の化合物は任意に結晶水、特に2分子のH2O(x=2)を含む。
【選択図】なし
Description
本発明は、一般式Cu(L)2の銅化合物又はその水和物の使用に関する(式中、リガンドLは独立に抗癌剤としてのメルファラン及びテガフールを意味する)。
現在行われている研究では、悪性腫瘍の治療に非常に効果的で、更に高い選択性を有し、それゆえ極めて副作用の少ない新規な化学療法の開発が重要な目標である。多数の細胞増殖抑制剤が現在公知であり、それらの作用機構の違いにより幾つかの群に分けられる。
例えば、ピリミジン、プリン及びプテリジン誘導剤(例えばフルオロウラシル又はブロモウラシル)が代謝拮抗剤として挙げられ、それらは天然の代謝産物に構造的に類似している特性や、生体内でこれらと置換又は競合可能な特性を有するため、生物学的プロセスの進行を阻害又は誤誘導する。
有糸分裂阻害剤の群としては、例えば植物成分であるコルセミド、ポドフィリン誘導剤及びビンカアルカロイドが挙げられ、それらは細胞の有糸核分裂の進行に影響を及ぼし、それにより細胞分裂が抑制され、増殖の速い腫瘍細胞が死に至る。
細胞増殖抑制剤の更なる群としては、アルキル化を触媒する化合物(その効果は主に核酸のアルキル化に基づく)であり、それによりDNAが変化し、その結果細胞分裂が妨害され、最終的に細胞死が起こる。アルキル化を触媒する細胞増殖抑制剤の例として、N欠失誘導体(例えばクロラムブシル、シクロホスファミド及びメルファラン(4−[ビス−(2−クロロエチル)−アミノ]−L−フェニルアラニン))が挙げられる。
例えばメルファランが様々な癌の治療用に提唱されている。アルケラン(登録商標)(有効成分としてメルファランを含む)は多発性骨髄腫、卵巣癌及び乳癌用の医薬品組成物である。進行した前立腺癌におけるメルファランの検討がこれまで実施されている(非特許文献1,2)。メルファランの使用に関する他の従来技術として、例えば非特許文献3から12が挙げられる。
R.Tobeyらの“Cancer Research 45(1985)”では、金属含有溶液とメルファラン含有溶液を異なる時点で投与する方法を記載する。この研究ではメルファランに対する細胞の耐性が解析されている。
実際、周知の抗腫瘍有効成分の多くが非常に有毒であり、さらにそれら自身が発癌物質又は突然変異誘発因子として作用するため、それは細胞増殖抑制剤の使用に際し深刻な問題となる。更に、有効な癌治療法は治療を受けている悪性腫瘍のタイプ、及びそれぞれの疾患の形態、進行及び段階に依存するため、該有効成分は非常に制限された使用にのみ用いられることが多い。それゆえメルファランの場合、それが抗腫瘍治療の効率及び用途の幅を制限するだけだったことが明らかとなった。
特許文献1には、メルファランと比較し改良された抗癌剤が開示されている。そこでは式D2−M−Tで表される化合物が記載され、それは金属原子(例えば銅又はマンガン)、2つのβジケトンリガンド及び例えばメルファランなどの少なくとも一つのN−、O−又はS−含有基を有する物質である一つのリガンドを含んでなる。in vivo試験において、これらの金属化合物は例えば、腺癌、肉腫、白血病、黒色腫及び腎細胞癌の治療に効果的であると判明し、それによりメルファランと比較した優れた効果を示すことが可能となった。
国際公開第2003/004014号パンフレット
Canada,A.,ら、Cancer Chemother.Pharmacol.1993,32(1),73−7
oughton,A.,ら、Cancer Treat.Rep.1977,61(8),923−4
Stolfi,R.L.ら、J.Natl.Cancer Inst.1988 80(/1),52−5
Fisher,B.ら、N.Engl.J.Med.,1975,292(16),117−122(乳癌)
Cornwell G.G.ら、Cancer Treat.Rep.,1982,66(3),475−81
Gola,A.ら、Folia Haematologica,1990,117,167(骨髄腫/白血病)
Hendriks,J.M.ら、Ann.Thorac.Surg.,1988,66(5),1719−25
Steven,M.P.ら、Gynecologic Oncology,1986,23,168(腺癌)
Vrouenraets,B.C.ら、J.Surg.Oncol.,1997,65(2),88−94
Haffner,A.C.ら、Br.J.Dermatol.,199,141(Suppl Nov.)935−36(肉腫)
Fraker D.L.ら、J.Clin.Oncol.,1996,14(2),479−489
Ferdy,L.ら、Annals of the New York Academy of Sciences,1993,680,391−400(黒色腫)
抗腫瘍効果を有する上記の化合物が多種存在するにもかかわらず、現在多様な腫瘍を伴う疾患を患っている多数の人々の側からは、高い効果及び最少の副作用の可能性を有する新規な細胞増殖抑制剤に対するニーズが今なお存在する。
以上より本発明の課題は、有効な抗腫瘍治療のための新規方法を提供することである。
鋭意研究の結果、以下の一般式の化合物が予想外にも高い抗腫瘍効果を有し、したがって悪性腫瘍の治療の際有効成分として使用するのに適するという発見に基づき本発明の課題を解決するに至った。
Cu(L)2・(H2O)x (I)
式中、Lはメルファラン及びテガフールから独立に選択され、xは0、1又は2である。
Cu(L)2・(H2O)x (I)
式中、Lはメルファラン及びテガフールから独立に選択され、xは0、1又は2である。
以上より本発明は、抗腫瘍治療における式(I)に係る1つ以上の化合物の使用に関する。
式(I)の化合物は任意に結晶水、特に2分子のH2O(x=2)を含む。
銅原子と配位するリガンドLは、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニン)(メルファラン)又は/及び5−フルオロ−1−(テトラヒドロ−2−フリル)−ウラシル(テガフール)である。2つのリガンドLは好ましくはメルファラン又はテガフールであり、特に好ましくは共にLメルファランリガンドである。
本発明において特に好ましい化合物は、Cu(メルファラン)2又はその対応する結晶水含有化合物である。この銅化合物は基本的には公知であり(M.D.Joestenら、Inorganica Chimica Acta,159(1989)143−148))、メルファラン分子が2つの歯状型のリガンドとして機能し、2つの水分子と共に銅原子周辺で正方両錐型の配置をとることが報告されている。メルファラン基は、銅周辺でエクアトリアルに位置し、水分子は該銅原子に対してアキシアルに位置する。Joestenらの文献は、本発明の化合物の合成可能性を示している。該化合物の抗腫瘍活性への可能性については記載がなく、又は検討もされていない。Cu(メルファラン)2の予想外の抗癌効果は、本発明において初めて確立されたものである。
式(I)の化合物は、非常に有効な抗癌剤であると判明した。本発明の化合物は、特に結腸癌、脳腫瘍、眼腫瘍、膵臓癌、膀胱癌、肺癌、乳癌、卵巣腫瘍、子宮癌、骨腫瘍、胆嚢及び胆道癌、頭頚部腫瘍、皮膚癌、精巣癌、腎臓腫瘍、胚細胞腫瘍、肝癌、白血病、悪性リンパ腫、神経腫瘍、神経芽細胞腫、前立腺癌、軟部組織腫瘍、食道癌及び未知の原発腫瘍の場合の癌腫の治療に適する。
解析の結果、式(I)の化合物、特にCu(メルファラン)2により主に腎臓及び肺癌の有効な治療が可能となることを見出した。その際に、本発明に従い使用する式(I)のCu化合物が、リガンド自身(すなわちメルファラン及びテガフール)より顕著に高い抗腫瘍効果を有することを見出した。式(I)の銅化合物を用いた治療の際に提供される効果のこのような増大は、本発明のCu化合物へのメルファラン及びテガフールリガンドの導入によって得られる相乗効果に起因するといえる。
腫瘍治療の際のそのような高い効果に加え、式(I)の化合物が免疫調節能及び抗増殖能、並びに抗血管新生効果をも有することを見出した。従来の抗癌剤と比較し、本発明の化合物はまた加水分解安定性が顕著に増大しており、それにより腫瘍治療の幅広い領域における使用が可能となる。更に、式(I)の化合物が選択的に腫瘍組織にダメージを与えるものの、健康な組織には実質的に影響を及ぼさないことを見出した。以上より、ほとんどの周知の化学療法とは対照的に、式(I)の化合物を用いることで副作用がないか、又はわずかな副作用のみを伴う抗癌治療が可能となる。
本発明にて使用する銅化合物の更なる効果としては、これらの化合物が医薬品組成物への耐性を誘発せず、特定の状況下では癌細胞のアポトーシスを誘導できるということである。
本発明において特に好ましい銅化合物であるCu(メルファラン)2は青い固体状の物質で、化学的に安定で、持続性の効果を有する。この化合物は更に血液脳関門を通過することができ、それにより脳腫瘍の治療が可能となる。この化合物はメルファランよりも顕著に効果的であることが見いだされ、それは例えば腎細胞癌及び肺転位形成の解析によって示すことができる。匹敵する効果は、本発明における別の好ましい化合物、すなわちCu(テガフール)2により示すことができる。効果が短期間に限られ、下痢及び口内炎などの副作用を引き起こし、ゆえに利用可能性が限られているテガフールそのものとは対照的に、本発明の銅−テガフール化合物は、これらの欠点を有さず、更に効果的な抗癌剤であることさえ見出すに至った。
本発明において、式(I)の化合物は個々に、又はこれらの抗腫瘍治療用の化合物の2つ以上の混合物として使用してもよい。式(I)の化合物は適宜、従来使用されている当業者に公知の医薬品添加物及び補助剤と共に製剤化又は投与できる。この種の添加物又は補助剤の例としては、生理的に許容できる担体、希釈剤、着色剤又は/及び香料が挙げられる。
本発明において、式(I)の銅化合物は局所投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、経皮投与に適する形態としてもよい。式(I)の銅化合物は、好ましくは錠剤の形であるか、又は静脈内注射若しくは注入の形で提供される。特定の場合において、式(I)の化合物は体腔に標的特異的に注入してもよく、又は腫瘍領域の血管若しくは腫瘍が存在する器官にカテーテル注入できる。
式(I)の化合物又はこの種の化合物の混合物は、他の有効成分と共に投与してもよく、これらの他の有効成分は例えば、他の効果を有する抗癌剤、抗生物質又は薬剤であってもよい。
本発明において、治療される腫瘍疾患の様々な段階において式(I)の化合物を使用できる。すなわち本発明において使用する銅化合物は、腫瘍疾患を伴う症状を軽減することができ、腫瘍疾患の範囲を減少でき(例えば腫瘍成長の減速)、腫瘍疾患の状態を安定化でき(例えば腫瘍成長の抑制)、腫瘍疾患の更なる拡散(例えば転移)を防止でき、腫瘍疾患の発生又は再発生を防止でき、並びに腫瘍疾患の進行を遅延又は減速(例えば腫瘍サイズの減少)できる。いずれの場合においても所望の目的を提供するのに十分な量の式(I)の化合物を投与する。有効量は個別的に、様々な要因(例えば複合体の選択、投与方法、腫瘍疾患のタイプ及び範囲、年齢、体重及び患者の健康状態)に依存する。式(I)の化合物は、好ましくは1μg/kg患者体重〜8mg/kg患者体重、より好ましくは〜7.5mg/kg患者体重、更に好ましくは〜5mg/kg患者体重の投与量で投与する。特に、本発明による化合物を1μg/kg患者体重〜0.5mg/kg患者体重、特に好ましくは10μg/kg患者体重〜0.1mg/kg患者体重で投与する。
式(I)の銅化合物は従来技術に記載されている合成手順に従って容易に調製されうる(例えばM.D.Joesten、Inorganica Chimica Acta、143−148 159(1989)を参照)。本発明の更に重要な効果は、本発明において使用する銅化合物の高純度での容易な合成、取得が可能であり、これは医薬品組成物として供給する際の重要な必要条件を意味するものである。
本発明はまた、腫瘍治療用の薬剤の調製のための、一つ以上の式(I)の化合物の使用に関する。
本発明は、以下の図、実施例及び試験結果によって更に詳細に記載される。
実施例1.Cu(メルファラン) 2 の合成
Joesten、M.D.,Inorganica Chimica Acta、159(1989)143−148に従って合成した。
Joesten、M.D.,Inorganica Chimica Acta、159(1989)143−148に従って合成した。
Cu(OH)2溶液(3.5mlの水に0.050g、0.52mmol)に、0.30gメルファラン(0.98mmol)を撹拌しながら添加した。1時間後に青紫色の沈殿物が生じ、それを真空濾過し、大過剰の熱湯で洗浄した。
実施例2.Cu(テガフール) 2 の合成
0.20027gのテガフールを0.1N NaOHのエタノール溶液10mlに添加し、62〜65℃で還流しながら加熱し、全て溶解させた。塩化銅(II)(無水)0.06901gをこの溶液に添加し、黄色がかった濃緑色の透明な溶液を形成した。混合物を還流しながら62〜65℃で2時間加熱し、約5分後に青い沈殿物を生成させた。溶液は黄色がかった濃緑色のままであった。反応混合物を冷却し、マグネチックスターラによって室温で更に48時間撹拌した。沈殿物を含む黄色がかった濃緑色の溶液を得た。その全溶液をガラス製の遠心管に充填し、4,000rpmで4分間遠心分離した。青色の物質を沈殿物として残留させた。上澄の溶液は黄色がかった緑色を示していた。上澄の溶液を廃棄した。5mlのエタノール(純粋)を沈殿物に添加し、振とうし、固体成分を4,000rpmで4分間再び遠心分離した。黄色がかった緑色を示す上澄の溶液を廃棄した。5mlのエタノール(純粋)を沈殿物に再び添加し、振とうし、固体成分を4,000rpmで4分間遠心分離した。黄緑色の溶液を廃棄した。上澄の溶液が無色になるまで精製を繰り返した。通常この目的に必要なエタノール(純粋)は合計約25mlである。固体を空気乾燥し、乾燥後、淡青色で肉眼で見ても均一な生成物を得、それは効率良くかつ微細な粉砕を容易に行える。
0.20027gのテガフールを0.1N NaOHのエタノール溶液10mlに添加し、62〜65℃で還流しながら加熱し、全て溶解させた。塩化銅(II)(無水)0.06901gをこの溶液に添加し、黄色がかった濃緑色の透明な溶液を形成した。混合物を還流しながら62〜65℃で2時間加熱し、約5分後に青い沈殿物を生成させた。溶液は黄色がかった濃緑色のままであった。反応混合物を冷却し、マグネチックスターラによって室温で更に48時間撹拌した。沈殿物を含む黄色がかった濃緑色の溶液を得た。その全溶液をガラス製の遠心管に充填し、4,000rpmで4分間遠心分離した。青色の物質を沈殿物として残留させた。上澄の溶液は黄色がかった緑色を示していた。上澄の溶液を廃棄した。5mlのエタノール(純粋)を沈殿物に添加し、振とうし、固体成分を4,000rpmで4分間再び遠心分離した。黄色がかった緑色を示す上澄の溶液を廃棄した。5mlのエタノール(純粋)を沈殿物に再び添加し、振とうし、固体成分を4,000rpmで4分間遠心分離した。黄緑色の溶液を廃棄した。上澄の溶液が無色になるまで精製を繰り返した。通常この目的に必要なエタノール(純粋)は合計約25mlである。固体を空気乾燥し、乾燥後、淡青色で肉眼で見ても均一な生成物を得、それは効率良くかつ微細な粉砕を容易に行える。
得られた銅−テガフール化合物の溶解性パターンは、実質的に銅(II)塩のそれと一致した。淡青色の水溶液となり、また撹拌により泡が形成された。その物質のそのような特性は、化合物Cu(Tf)2が塩としての性質を有するという事実を示すものである。
図4ではCu(Tf)2の合成を反応式を用いて示す。
実施例3.Cu(メル) 2 の抗腫瘍効果
Balb/cマウスの腎細胞癌モデル(RENCA)を使用し、メル−Cu−メルの効果の試験を、原発腫瘍、転移及び血管密度に関して実施した。腫瘍細胞をシンジェニックマウスの左側腎周囲被膜に局所的に投与した:(治療日当たりの投与量:5mg/kgマウス及び7.5mg/kgマウス。5匹の動物に薬剤を投与し、コントロールとして5匹の動物に溶媒を投与した)。本発明の抗癌剤Cu(メル)2を腹腔内投与した。処置モデルを以下に示す。
第0日目:腫瘍細胞の投与
第1〜9日目:腫瘍の成長
第10〜18日目:薬剤の投与
第19日目:動物のと殺及び所見
Balb/cマウスの腎細胞癌モデル(RENCA)を使用し、メル−Cu−メルの効果の試験を、原発腫瘍、転移及び血管密度に関して実施した。腫瘍細胞をシンジェニックマウスの左側腎周囲被膜に局所的に投与した:(治療日当たりの投与量:5mg/kgマウス及び7.5mg/kgマウス。5匹の動物に薬剤を投与し、コントロールとして5匹の動物に溶媒を投与した)。本発明の抗癌剤Cu(メル)2を腹腔内投与した。処置モデルを以下に示す。
第0日目:腫瘍細胞の投与
第1〜9日目:腫瘍の成長
第10〜18日目:薬剤の投与
第19日目:動物のと殺及び所見
コントロールとして活性成分を投与しない5匹の動物を使用し、またコントロールとしてメルファランのみを投与した、5匹の動物の一群を設けた。
図5から7に解析の結果を示す。それらを考察すると、コントロールと比較して本発明の化合物Cu(メル)2では腎臓重量及び腎臓体積が著しく低く(図5を参照)、これは悪性腫瘍の治療における本発明の化合物の効果を示すものである。図6においても、Cu(メル)2で処理した場合に、コントロールと比較し、またメルファランのみを投与したマウスと比較してもマウスの肺重量が減少していることが観察された。本発明の化合物の肺の転移形成における有益な効果は図6(本発明によって処置したマウス、コントロールマウス及びメルファランのみで処置したマウスで肺転位形成を比較した)の右の部分においても特に明確であった。
本発明によって処置されたマウスは、コントロールマウス、及びメルファランのみで処置されたマウスよりも顕著に低い肺転位形成を示した。
図7に示すように、マウスの血管密度に関する試験も行った。それによると、本発明の化合物が血管新生阻害効果を有することが明確に示された。
実施例4.マウスの局所性腎細胞癌モデル(RENCA)を用いた、銅メルファランの抗腫瘍性及び血管新生阻害効果に関するin vivo試験
Balb/cマウスの腎細胞癌モデル(RENCA)を用いて試験を実施した。腫瘍細胞をシンジェニックマウスの左側腎被膜に局所的に投与した。原発腫瘍(インプラントされた腎臓)、転移(主に肺、脾臓及び腸のリンパ節)及び血管密度に対する治療効果を試験した。
Balb/cマウスの腎細胞癌モデル(RENCA)を用いて試験を実施した。腫瘍細胞をシンジェニックマウスの左側腎被膜に局所的に投与した。原発腫瘍(インプラントされた腎臓)、転移(主に肺、脾臓及び腸のリンパ節)及び血管密度に対する治療効果を試験した。
方法:
イソフルラン麻酔法(約2.0LのO2流入、0.5〜1.5%のイソフルラン注入)による麻酔の後、マウスの左の横腹に小さい切傷を与えた。腎臓に処置を加え、腹膜がない状態にした。27Gの針を、目視検査しながら下部の腎臓の下端から腎被膜の下部を通して刺入し、4×105個の腫瘍細胞/70μLをそれぞれ注入した。腎実質と腎被膜間の液体充填水疱の発生及び腎臓の変色の肉眼による観察により、好適な投与か否かが基準として示されると考えられる。次いで腎臓を整形し、腹壁の切開部を、吸収性の糸による筋膜縫合及び皮膚縫合によって閉じた。10匹の動物を有する5つの試験群をそれぞれ構成した。
群1:陰性コントロール、
群2:陽性コントロールのメルファラン(Glaxo)、
群3及び4:MOCメルファラン、2.5mg/kg及び5mg/kg。
群5では、抗血管新生にとり有効な物質を陽性コントロールとして塗布した。
術後1日目を、Cu(メルファラン)2による治療開始日とした。治療は、第7日(治療モデルを参照)まで毎日継続した。試験を19日後に終了させた(コントロールにおける腫瘍サイズが、倫理的な理由から終了を余儀なくされる程になったため)。
イソフルラン麻酔法(約2.0LのO2流入、0.5〜1.5%のイソフルラン注入)による麻酔の後、マウスの左の横腹に小さい切傷を与えた。腎臓に処置を加え、腹膜がない状態にした。27Gの針を、目視検査しながら下部の腎臓の下端から腎被膜の下部を通して刺入し、4×105個の腫瘍細胞/70μLをそれぞれ注入した。腎実質と腎被膜間の液体充填水疱の発生及び腎臓の変色の肉眼による観察により、好適な投与か否かが基準として示されると考えられる。次いで腎臓を整形し、腹壁の切開部を、吸収性の糸による筋膜縫合及び皮膚縫合によって閉じた。10匹の動物を有する5つの試験群をそれぞれ構成した。
群1:陰性コントロール、
群2:陽性コントロールのメルファラン(Glaxo)、
群3及び4:MOCメルファラン、2.5mg/kg及び5mg/kg。
群5では、抗血管新生にとり有効な物質を陽性コントロールとして塗布した。
術後1日目を、Cu(メルファラン)2による治療開始日とした。治療は、第7日(治療モデルを参照)まで毎日継続した。試験を19日後に終了させた(コントロールにおける腫瘍サイズが、倫理的な理由から終了を余儀なくされる程になったため)。
治療モデル:
注入する日を第0日として計算した。試験期間は19日。試験の開始時は動物は50匹で、動物は手術の間生存していた。第14又は15日目に対照群において3匹の動物が死亡していた。試験物質の投与量の選択は、投与効果を決定するための事前の予備試験から導出した。
方法:
動物を選択した後、試験対象の組織をすぐに液体窒素中に移し、−80℃で凍結させた。5〜10μm厚い切片を組織の一部から作製した。切片を抗CD31抗体(Pecam−1)で免疫組織化学染色し、コントロール及び治療群の血管数を計数した。各腫瘍の2つの切片につき、それぞれ3つの領域ずつ、血管の数を計数した。
データシート:血管密度(各切片の3つの領域の計数値の平均)
試験の間に毒性は観察されず、副作用の徴候のような顕著な体重減少もなかった。解剖によっても特定の病理学的所見が観察されなかった。
動物を選択した後、試験対象の組織をすぐに液体窒素中に移し、−80℃で凍結させた。5〜10μm厚い切片を組織の一部から作製した。切片を抗CD31抗体(Pecam−1)で免疫組織化学染色し、コントロール及び治療群の血管数を計数した。各腫瘍の2つの切片につき、それぞれ3つの領域ずつ、血管の数を計数した。
データシート:血管密度(各切片の3つの領域の計数値の平均)
Cu(メルファラン)2は2.5mg/kg及び5mg/kgの投与量で顕著な抗癌効果を発揮し、メルファランのみの場合のほぼ2分の1モルの投与量によってより高い効果が得られた。メルファランとほぼ4分の1モルの投与量によって同等の効果が提供された。
肺転位形成の評価においては、Cu(メルファラン)2の5mg/kgの投与により顕著な転移抑制効果が得られることが試験により証明できた。
腸のリンパ節転移形成の評価においては、Cu(メルファラン)2の2.5mg/kg及び5mg/kgの投与により顕著な転移抑制効果が得られることが試験により証明できた。
選択された治療モデルを使用しても、2つの投与量においていかなる血管新生阻害効果も観察できなかった。この発見はこのモデルにおける、細胞安定性にとり有効な他の物質による結果と相関する。
実施例5
試験プロトコル
試験結果は実施例4のそれと同様であるが、治療間隔及び投与群のみが異なる。10匹の動物による4つの試験群をそれぞれ構成した。
群1:陰性コントロール、
群2:陽性コントロールのメルファラン(Glaxo)、
群3及び4:MOCメルファラン、5mg/kg及び7.5mg/kg。
術後10日目を、全群における治療開始日とした。第10日目から第17日目までの毎日の治療(治療モデルを参照)を意図していた。しかしながら、毒性のため、治療期間を第10〜14日目まで短縮した。試験を18日後に終了させた(コントロールにおける腫瘍サイズが、倫理的な理由から終了を余儀なくされる程になったため)。
試験プロトコル
試験結果は実施例4のそれと同様であるが、治療間隔及び投与群のみが異なる。10匹の動物による4つの試験群をそれぞれ構成した。
群1:陰性コントロール、
群2:陽性コントロールのメルファラン(Glaxo)、
群3及び4:MOCメルファラン、5mg/kg及び7.5mg/kg。
術後10日目を、全群における治療開始日とした。第10日目から第17日目までの毎日の治療(治療モデルを参照)を意図していた。しかしながら、毒性のため、治療期間を第10〜14日目まで短縮した。試験を18日後に終了させた(コントロールにおける腫瘍サイズが、倫理的な理由から終了を余儀なくされる程になったため)。
薬物耐性の理由から治療を第14日目に終了させた。Cu(メルファラン)2は原発腫瘍に対して8.8μmol/kg及び13.2μmol/kgの投与量で顕著な抗腫瘍効果を発揮した。転移抑制効果は、肺転位及びリンパ節転移に関して13.2μmol/kgの投与量で顕著であることが明らかとなった。Cu(メルファラン)2はまた、8.8μmol/kgの投与量において著しく血管新生を阻害した。
実施例6.OVCAR−3腫瘍細胞を注射したNOD/SCIDマウスにおける、メルファランと比較したCu(メルファラン) 2 の効果
2×106のOVCAR−3/P19腫瘍細胞を雌のNOD/SCIDマウスに皮下注入した。
マウスを以下の通りに治療した。
2×106のOVCAR−3/P19腫瘍細胞を雌のNOD/SCIDマウスに皮下注入した。
マウスを以下の通りに治療した。
80mm3の平均腫瘍量から治療を開始した。安定な及び一定速度での腫瘍成長がコントロール群において観察された。図8は、治療期間中の平均腫瘍体積を示す。
個々の群における治療の開始時における腫瘍体積の可能な相違を平均化し、治療群の低い絶対体積との相違を明確にするために、相対腫瘍体積(RTV)を解析した。相対腫瘍体積は、同じ試験動物の治療の開始時に、第x日の体積と腫瘍体積との比率として算出した。図9は、化学療法で処置された群における治療開始時点からのRTVを示す。これは銅メルファランがメルファランより効果的であることを明確に示す。群2の61.3%又はコントロールの8.2%のみが、群3(銅メルファラン)の37日目の平均RTVを示していた。腫瘍成長は群2においてちょうど7日後に停止した。銅メルファランで処置された試験動物では、第30日目(10回目の治療の日)から3日間腫瘍体積が一定で、その後に腫瘍退縮が開始した。
図10は2つの投与群における統計解析結果を示す。第37日目に、両治療群(群2及び3)は、コントロール群と比較して腫瘍体積及び相対腫瘍体積において統計的有意性(p<0.01、スチューデントt検定)を示していた。更に、メルファランと比較した銅メルファランの統計学的に有意に高い効果は、治療終了後(第37日目)に確認することができた。第37日目における平均腫瘍体積又は平均RTVに関するp値(マン−ホイットニー順位和検定を使用して試験)はp=0.021及びp=0.01であった。
以下の表に示すように、銅メルファランによる治療とは対照的に、メルファランのみで治療されたマウスの腫瘍体積が、試験終了後において、治療開始時の腫瘍体積よりも大きいことも明らかとなった。第37日目において、8匹のマウス(75%)のうち6匹がRTV>1であった。全体的に、群2の試験動物は治療終了時に20%の腫瘍退縮と98%の腫瘍成長との間に位置していた。群3において、1匹の試験動物が2.78のRTV(他の全てが0.43〜0.78の範囲)であった。すなわち22%〜57%間の腫瘍退縮が第37日目の群3のマウスの88%において観察できた。腫瘍退縮の頻度及び後退の程度の両方とも、銅メルファランで処置された群において非常に高かった。
群1
群2
群3
群1
Claims (8)
- 式(I)の化合物
Cu(L)2・(H2O)x (I)
(式中、Lが4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニン(メルファラン)又は/及び5−フルオロ−1−(テトラヒドロ−2−フリル)−ウラシル(テガフール)から独立に選択され、xは0、1又は2である。)
の、腫瘍の治療又は/及び予防用薬剤の調製のための使用。 - 両方ともLメルファラン又は両方ともLテガフールである、請求項1に記載の使用。
- 両方ともLメルファランである、請求項1に記載の使用。
- x=2である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
- 結腸癌、脳腫瘍、眼腫瘍、膵臓癌、膀胱癌、肺癌、乳癌、卵巣腫瘍、子宮癌、骨腫瘍、胆嚢及び胆道癌、頭頚部腫瘍、皮膚癌、精巣癌、腎臓腫瘍、胚細胞腫瘍、肝癌、白血病、悪性リンパ腫、神経腫瘍、神経芽細胞腫、前立腺癌、軟部組織腫瘍、食道癌及び未知の原発腫瘍の場合の癌腫の治療のための、請求項1から4のいずれか一つに記載の式(I)の化合物の使用。
- 腎臓又は/及び肺腫瘍の治療のための、請求項5に記載の式(I)の化合物の使用。
- 1つ以上の式(I)の化合物が局所投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、経皮投与に適する形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
- 1つ以上の式(I)の化合物を薬学的に許容できるアジュバントと共に投与する、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
Applications Claiming Priority (2)
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