JP2008519304A - 全内部反射蛍光顕微鏡 - Google Patents

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Abstract

全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡は、主顕微鏡軸(AA)からずらされた共役レンズ(30)を有する。顕微鏡軸(AA)と共役レンズ軸(BB)との間の間隔を変更可能なように、このレンズ(30)はマウント(60)によって保持される。また、マウント(60)によって、レンズを顕微鏡軸まわりに回転させることが可能になる。レンズ(30)が回転すると、入射レーザビームによって生成された光のスポット(64)が、対物レンズ(34)の縁まわりを移動する。これによって、サンプル(44)が配置された内部でのエバネッセント波の偏光方向が変化する。放出される蛍光をレンズの角度の関数として調べることによって、研究対象の分子の空間的な振る舞いについての情報が得られる。

Description

本発明は、全内部反射顕微鏡に係り、特に全内部反射蛍光(Total Internal Reflectance Fluorescence,TIRF)顕微鏡に関する。
TIRF顕微鏡法は近年急速に普及してきており、特に、タンパク質等の巨大分子酵素が動く様子を実時間で研究するツールとして普及してきている。典型的には、確定された向きで、一つ以上のプローブをタンパク質や他の研究対象の分子に接触させる。その後、分子が動くと(例えば触媒作用を受けると)、プローブの向きの変化が検出される。大抵のプローブは蛍光性であり、自然の状態で双極子を有する。双極子に平行な偏光方向を有する光は選択的に吸収される。同様に、プローブによって放出された蛍光も、双極子軸に平行な方向に選択的に偏光される。
典型的なTIRF顕微鏡では、研究対象のサンプルは、プローブによる吸収に適した波長の平面偏光のレーザ光で照らされる。これによって、プローブが蛍光発光し(典型的には異なる波長で)、放出光は、二つの垂直な偏光成分へと分裂する。この比を調べることによって、異方性が決定可能である。
TIRF顕微鏡では、場の有効深さは極めて小さく保たれ、研究対象の分子をガラスまたは他の表面の極めて近くに配置して、或る視射角でガラスを介する光で照らして、サンプル近傍の内部表面における全内部反射が得られる。全内部反射が生じる点においては、エバネッセント波が発生して、ガラス表面外側のおよそ200nmに及ぶ。サンプルはエバネッセント波の内側に配置されて、偏光エバネッセント波が蛍光プローブを刺激して発光させ、上述のように放出光が検出及び分析される。
典型的なTIRF装置を図1に概略的に示す。研究対象のサンプル10は、二枚のガラスプレート14、16の間のサンプルスペース12内に保持される。対物レンズ18は、サンプルの前方に位置し、レンズとガラスプレート16の間には、通常オイルで満たされたギャップ13が存在する。
サンプル10を照らすレーザ光19は、レンズのエッジのみを介して照らされ、レンズはこの光を屈折させて、ガラスプレート16の前方のエッジに更にはサンプルに到達する際に、全内部反射するようにされる。この全内部反射によって、サンプルスペース12内部のエバネッセント波の光に、サンプルが晒される。サンプル内でプローブによって放出される蛍光は、レンズの全表面に亘って収集されて、分析用の他の光学素子(図示せず)に伝えられる。
界面に到達する光が偏光されると、エバネッセント波も偏光される。対象となる分子の蛍光が最大になるのは、吸収双極子の向きが、エバネッセント波の偏光の向きに一致する時である。放出される蛍光も偏光される。分子の向きがランダムであると、分子酵素に対しては偏光が観測されないが、時間領域における異方性の検査によって、双極子の回転速度についての情報が得られる。最近のCCDカメラ等で可能なように単一の分子が観測されると、単一の分子の向きが決定可能である。励起光の偏光角の関数として放出される蛍光の強度の角度変化を測定することによって、双極子の向きが計算可能である。蛍光双極子の角度の正確な計算は、多数の偏光角での測定を要する。
TIRF顕微鏡では、ガラス(16)の表面とサンプルスペース(12)(通常水で満たされている)との界面自体が、偏光器として機能する。単一方向からの光のみで照らして入射波及び反射波が単一平面内にあるようにすると、複数の或る方向において他の方向よりも励起双極子にとってより適切になる偏光エバネッセント波が形成される。この問題を克服する方法の一つが非特許文献1に開示されている。非特許文献1の装置では、ビームスプリッタとして機能するプリズムの複雑な組み合わせが用いられ、三次元的に等方性の励起が達成される。残念ながら、非特許文献1の装置は比較的複雑であるので、TIRF顕微鏡における使用には適さない(非特許文献1においては、放出される蛍光を受光するために用いられる対物レンズから完全に離されたプリズムの組み合わせによって、サンプルが照らされる)。
S.Wakelin、C.R.Bagshaw、"A prism combination for near isotropic fluorescence excitation by total internal reflection"、Journal of Microscopy、2003年2月、第209巻、第2号、p.143―148
本発明の第一の課題は、従来技術における難しさを少なくとも軽減することである。
更なる課題は、エバネッセント波の偏光を使用者が簡単に変更できるTIRF顕微鏡を提供することである。
本発明の第一側面によると、対物レンズ及び共役レンズを備えた全内部反射顕微鏡が提供される。共役レンズ上に入射する照明ビームは、対物レンズ上でビームスポットへと焦点が合わせられる。共役レンズは移動できるように調節可能マウントに保持されて、ビームスポットが対物レンズの縁まわりを動くようにされる。
顕微鏡はTIRF顕微鏡であることが好ましい。
対物レンズ及び共役レンズが平行な光軸を有する場合、マウントは、対物レンズの光軸/顕微鏡の光軸まわりに回転させるように共役レンズを保持することが好ましい。代わりに、レンズは、回転されるよりはむしろ選択的に角度がつけられて、ビームスポットが対物レンズの縁まわりを移動するようにもできる。この場合、共役レンズは、対物レンズの光軸上に中心があるようにしてもよい。
勿論、特許請求の範囲及び明細書において、“ビームスポット”という表現が、対物レンズの前方表面上の小さいがゼロではない領域を意味していることは理解されたい。このスポットは照明ビームの焦点である必要はなく、むしろ対物レンズの前方表面と光の入射ビームの収束する円錐との交差によって画定される領域のことであることは理解されたい。
更に、マウントは調節可能であり、ビームスポットが対物レンズの半径方向並びに円周方向に移動可能にされることが好ましい。一実施例では、対物レンズの光軸と共役レンズの平行な光軸との間の間隔を調節することによって、このようにすることが達成される。
本発明の第二側面によると、対物レンズ及び共役レンズを有する全内部反射顕微鏡の操作方法が提供される。共役レンズ上に入射する照明ビームは対物レンズ上でビームスポットへと焦点が合わせられる。本方法は、対物レンズに対して共役レンズを移動させる段階を備えて、ビームスポットが対物レンズの縁まわりを動くようにする。
更に、本方法は、ビームによって照らされるサンプルからの光を収集する段階と、収集された光を対物レンズ上のビームスポットの角度的な位置の関数として分析する段階とを備えるように拡張される。同様の分析が、対物レンズ上のビームスポットの半径方向の位置の関数として、実行されてもよい。
本発明は様々な方法で実行可能であるが、或る一つの実施例について、図面を参照して例示的に説明する。
図2は、本発明の一実施例によるTIRF顕微鏡の概略図である。この図は概略的なものであり、サイズや距離を正確に示すものではないことは理解されたい。
図に示すように、レーザ20はビームを発生させ、ビームは、ビーム拡大器22、ビーム調整器(例えば、光弾性変調器)24、絞り26を通過する。絞り26から、角度をつけたダイクロイックミラー28上へと、光は向けられる。ビームは反射されて、軸を外した共役レンズ30に向かう。このレンズを通過した後、参照符号32で示すように、或る角度で光は屈折されて、対物レンズ34の外側のエッジ上に当たる。その後、光は、このレンズを介して、参照符号36で概略的に示されるサンプルホルダ内へと屈折される。ホルダ内部では、下部ガラスプレート40と上部ガラスプレート42の間の水で満たされたギャップ内に、サンプル44が保持される。下部ガラスプレート40と対物レンズ34との間の空間38は、オイルで満たされている。
対物レンズ34のエッジからの入射光は、或る視射角でガラスプレート40上に当たり、ガラスと水との界面で全内部反射されて、上述のようにサンプル44の領域内にエバネッセント波を発生させる。反射光は、対物レンズの他のエッジを介して戻ってきて、共役レンズ30へと戻るか、代わりに、光経路上の絞り(図示せず)によってブロックされる。TIRF装置において、反射光は特に関心のあるものではない。
サンプルによって、全方位に蛍光が放出され、この放出光の一部は、点線48で示されるように(より正確には、破線32、46によって画定される円錐内部で)、対物レンズによって収集されて、共役レンズへと戻る。そこから、ダイクロイックミラー、フィルタ50、可動式偏光分析器52、半銀メッキミラー54を介して、カメラ56に向かう。接眼レンズ58によって、キャプチャされた像を実時間で見られるようになる。
共役レンズ30には、調節可能なマウント60が備わっていて、共役レンズの光軸BBと顕微鏡及び対物レンズ34の主光軸AAとの間隔を、使用者が手動または自動で変更することが可能になる。この調節は、例えば図3及び4aに示すような送りネジ62等の便利な手段によって、達成可能である。送りネジを回転させることによって、レーザスポットが当たる点と対物レンズの光軸の間の半径方向の距離を、使用者が調節することが可能になる。共役レンズを動かすと視射角が変化するが、この距離が短すぎると内部反射は全く生じない。しかしながら、必要とされる距離よりも長くなると、生じる全内部反射は最小になる。
また、共役レンズのマウント60も、軸を外した共役レンズ30を主顕微鏡軸AAと同軸の回転軸まわりに回転可能にするようにされている。図4aは、顕微鏡軸AAに沿って見た共役レンズ及びマウントの図である。双方向矢印66の方向にマウントを回転させることによって、対物レンズ34のエッジ上の入射レーザのスポット64が、レンズの円周まわりを移動する。スポットの円周上の位置に関わりなく、サンプル上のエバネッセント波は発生し続ける。一方、界面に発生する主偏光面は、レンズと共に回転する。従って、共役レンズの回転位置の関数として、放出される蛍光の強度を測定することによって、蛍光を生じさせる双極子の空間的な向き、更には研究対象の巨大分子の位置についての情報を使用者が得ることが可能になる。これによって、使用者が、回転する分子を実時間で研究することが可能になる。
図4aに示すように、共役レンズのマウント60は、顕微鏡軸AA上に中心点がある円形にされている。円形マウントは、上部表面に平行な平面が顕微鏡軸に垂直になるように位置合わせされている。共役レンズ30はマウントに取り付けられて、共役レンズの光軸BB上に円形マウントの中心点がないようにされる。つまり、共役レンズの光軸は、顕微鏡軸から軸が外されている。共役レンズの円形マウント60をその中心まわりに回転可能にするため(つまり、顕微鏡軸AAと同軸の回転軸まわりに回転させるため)、SKF社から入手可能な6210−2RS1等の市販のラジアルボールベアリングを、レンズの円形マウントの外縁まわりに使用することが可能である(図示せず)。
上述のように、ガラスと水との界面に発生するエバネッセント波の主偏光平面は、共役レンズ30の回転と共に、回転するので、本発明による実施例によって、サンプル44上に入射する光の偏光平面を回転させることが可能になる。
代わりの配置(図示せず)では、照明ランプを、サンプルホルダ36の遠方に配置することによって単純に、本装置を、明視野モードで作動する従来の顕微鏡に切り替えてもよい。これによって、TIRF像と同時に、サンプルの位相差の像を得られる可能性がある。このような配置とすることは、非特許文献1の方法では不可能である。何故ならば、プリズムの位置によって、明視野照明の追加的な源が必ずブロックされてしまうからである。
上述の装置を用いて、“遠視野”モードで、つまり、実時間の全視野を同時に得られるように、顕微鏡が機能する。従って、従来の共焦点顕微鏡で必要とされるような全視野に亘る走査を行わなくてよい。
図2を参照すると、他の可能性として、光弾性変調器24を用いて入射レーザビームの偏光平面と、全内部反射励起ビームの偏光表面を回転させることが挙げられる。一次近似では、これによって、エバネッセント波の偏光が変更されるとは考えられないが、二次のオーダーの効果が存在する可能性がある。反射光46に関心がある場合、反射光が、邪魔されずに光軸に沿って戻ってくれば、偏光分析器52を用いて追加的な分析を実行することが可能である。
TIRF顕微鏡の原理を概略的に示す。 本発明の一実施例によるTIRF顕微鏡の概略図である。 共役レンズ及び対物レンズの長軸方向の断面図である。 共役レンズを取り付ける方法を示す。 対物レンズの表面上に当たる入射レーザ光の動きを示す。
符号の説明
20 レーザ
22 ビーム拡大器
24 ビーム調整器
26 絞り
28 ダイクロイックミラー
30 共役レンズ
34 対物レンズ
36 サンプルホルダ
40、42 ガラスプレート
44 サンプル
50 フィルタ
52 偏光分析器
54 半銀メッキミラー
56 カメラ
58 接眼レンズ
60 マウント
62 送りネジ

Claims (9)

  1. 対物レンズ及び共役レンズを備え、前記共役レンズ上に入射する照明ビームは前記対物レンズ上でビームスポットへと焦点が合わせられ、前記共役レンズは移動できるように調節可能マウントに保持されて前記ビームスポットが前記対物レンズの縁まわりを動くようにした全内部反射顕微鏡。
  2. 前記マウントは、前記対物レンズの光軸まわりに回転するように前記共役レンズを保持する請求項1に記載の顕微鏡。
  3. 前記マウントによって、前記対物レンズの光軸と前記共役レンズの平行な光軸との間の間隔が調節可能になっている請求項1または請求項2のいずれかに記載の顕微鏡。
  4. 対物レンズ及び共役レンズを有する全内部反射顕微鏡の操作方法であり、前記共役レンズ上に入射する照明ビームは前記対物レンズ上でビームスポットへと焦点が合わせられ、前記対物レンズに対して前記共役レンズを移動させる段階を備えて前記ビームスポットが前記対物レンズの縁まわりを動くようにした方法。
  5. 前記対物レンズは第一光軸を有し、前記共役レンズは前記第一共役軸から間隔を空けた平行な第二光軸を有し、前記共役レンズを前記第一光軸まわりに回転させる段階を備えた請求項4に記載の方法。
  6. 前記ビームスポットを前記対物レンズの半径方向に移動させる段階を備えた請求項4または請求項5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記ビームによって照らされるサンプルからの光を収集する段階と、前記収集された光を前記対物レンズ上の前記ビームスポットの角度的な位置の関数として分析する段階とを含む請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記ビームによって照らされるサンプルからの光を収集する段階を含む請求項4から請求項6のいずれか一項に記載された方法を備え、前記収集された光を前記対物レンズ上の前記ビームスポットの半径方向の位置の関数として分析する段階とを備えた請求項6または請求項7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記サンプルからの光は前記サンプルによって放出される蛍光である請求項7または請求項8のいずれかに記載の方法。
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