JP2008515005A - マーク付き物品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
熱可塑性樹脂物品のマーキング方法は、熱可塑性樹脂を光マーキング添加剤と合わせて組成物を形成する段階、該組成物から、最大吸光波長を有する物品を形成する段階、及び約200mW以下の出力を有するデバイスを用いて物品の少なくとも一部をマーキング波長で照明することで光マークを形成する段階を含んでなり得る。光マークは、主軸に沿って測定して約10マイクロメートル以上のサイズを有し得る。光マークはまた、最大吸光波長から約±100nm以上離れたマーク吸収波長を有し得ると共に、分光吸収曲線を有し得る。
【選択図】 図10
【選択図】 図10
Description
本発明は、マーク付き物品及びその製造方法に関する。
会社、政府、機関などが直面している大きな問題は、身分証明書類(例えば、パスポート、社会保障カード、セキュリティカード、運転免許証など)の偽造である。例えば、パスポートは国境を越える個人の移動を管理するために使用される。会社、国立研究所などに関しては、会社、高セキュリティ区域、極秘データなどへのアクセスを可能にするため、従業員にセキュリティカードが提供されることが多い。偽造されたセキュリティカードは、許可されない個人が機密情報、企業秘密、国家安全情報などにアクセスする可能性をもたらす。偽造はまた、デビットカード、クレジットカード、商店買物カード、テレホンカードなどの支払いカードについてもますます一般化しつつある。これらのカードはまた、ますます複雑になってきており、(例えば、カードホルダーの画像を担持するクレジットカードのように)海賊行為に対して一層の保護を与えるために使用できるグラフィックス又はコードを担持している。
身分証明書類(例えば、パスポート、セキュリティカードなど)の発行に先立って厳格なバックグラウンドチェックなどを行うことでセキュリティを確保することが試みられているが、この方法は偽造書類の問題を解決しない。したがって、偽造に強くかつ客観的に認証可能な身分証明書類などに対するニーズは今なお存在している。
米国特許第6638593号明細書
米国特許第6545065号明細書
米国特許第4809022号明細書
米国特許第4816374号明細書
米国特許第4961077号明細書
米国特許第5786132号明細書
米国特許第5844593号明細書
米国特許第6423478号明細書
米国特許第6589626号明細書
米国特許第6600706号明細書
米国特許第6380547号明細書
米国特許出願公開第2002/0107305号明細書
米国特許出願公開第2002/0155381号明細書
米国特許出願公開第2003/0141491号明細書
米国特許出願公開第2003/0096192号明細書
米国特許出願公開第2003/0013041号明細書
米国特許出願公開第2003/0008234号明細書
米国特許出願公開第2004/0004922号明細書
米国特許出願公開第2004/0121268号明細書
米国特許出願公開第2004/0152008号明細書
米国特許出願公開第2004/0110088号明細書
米国特許出願公開第2004/0121262号明細書
国際公開第02/053553号パンフレット
国際公開第03/087888号パンフレット
国際公開第2004/052654号パンフレット
国際公開第03/107331号パンフレット
国際公開第94/12352号パンフレット
国際公開第98/31011号パンフレット
欧州特許第0438225号明細書
Yves Geerts et al.,"Quaterrylenebis(dicarboximide)s:near infrared absorbing and emitting dyes",J.Mater.Chem.,1998,8(11),2357−2369
William B. Tuemmler et al.,"Polymethine Dyes.I.A Comparison of Several Vinylogous Series in which the Polymethine Chains are Terminated by Aryl Groups",Journal of the American Chemical Society(1958),Volume 80,pp 3772−3777
本明細書中には、光マーキング可能な物品、光マーク付き物品、及びその製造方法が開示される。一実施形態では、物品のマーキング方法は、熱可塑性樹脂を光マーキング添加剤と合わせて組成物を形成する段階、該組成物から、最大吸光波長を有する物品を形成する段階、及び約200mW以下の出力を有するデバイスを用いて物品の少なくとも一部をマーキング波長で照明することで光マークを形成する段階を含んでなり得る。光マークは、主軸に沿って測定して約10マイクロメートル以上のサイズを有し得る。光マークはまた、最大吸光波長から約±100nm以上離れたマーク吸収波長を有し得ると共に、分光吸収曲線を有し得る。
一実施形態では、光マーキング可能な物品は、熱可塑性樹脂及び光マーキング添加剤を含んでなり得る。光マーキング添加剤は、約200mW以下の出力を有するデバイスを用いて約60秒以下の時間にわたりマーキング波長で照明した場合、主軸に沿って測定して約10マイクロメートル以上のサイズを有する光マークを形成することができる。光マークは分光吸収曲線を有し得る。
上記その他の特徴は、添付の図面及び以下の詳しい説明によって例示される。
図面の簡単な説明
次に、例示的な実施形態を示す図面について説明する。図面中では、類似の構成要素には同じ番号が付けられている。
次に、例示的な実施形態を示す図面について説明する。図面中では、類似の構成要素には同じ番号が付けられている。
図1〜6は、基板中の可能な集束レーザーマークプロフィルを例示する図である。
図7は、ガルボミラーを用いるレーザーマーキングシステムの一実施形態を示す図である。
図8は、改造ドライブを用いるレーザーマーキングシステムの一実施形態を示す略図である。
図9は、クリスタルバイオレットラクトン及び光酸発生剤をドープしたポリカーボネートからなる光ディスクをUV暴露した場合とUV暴露しない場合とで比較して示すグラフである。
図10は、色素2をドープしたポリカーボネートからなる光ディスクをUV暴露した場合とUV暴露しない場合とで比較して示すグラフである。
本明細書における「第一」、「第二」などの用語はいかなる数量、順序又は重要度も意味せず、むしろある構成要素を別のものから区別するために使用されることに注意すべきである。また、本明細書中に単数形で記載したものは数量の制限を意味するわけではなく、むしろ記載されたものの1以上が存在することを意味する。さらに、本明細書中に開示されるすべての範囲は、両端を含むと共に結合可能である(例えば、「25wt%まで、望ましくは5〜20wt%」という範囲は、端点を含むと共に、「5〜25wt%」などの範囲内のすべての中間値を含む)。数量に関して使用される「約」という修飾語は、記載された値を含むと共に、(例えば、特定の数量の測定に関連する誤差の程度を含め)前後関係から指示される意味を有する。化合物は標準的な命名法を用いて記載される。例えば、表示された基で置換されていない位置は、表示された結合又は水素原子で満たされる原子価を有するものと理解される。2つの文字又は記号の間に位置しないダッシュ(「−」)は、置換基の結合点を表すために使用される。例えば、−CHOはカルボニル基の炭素を介して結合される。
政府、雇用者,機関などは、真正の物品を偽造物品から識別できることを望んでいる。認証を容易にするため、グラフィックス及び/又はイメージを真正の物品上に形成することができる。また、物品を客観的に認証できるようにするため(例えば、単に個人の目視検査によるのではなく機械を用いて認証できるようにするため)、ユニーク識別子を物品中に配設すること(任意にはグラフィック又はイメージ中に埋め込む)こともできる。このような認証は、(例えば、会社のために)完全にローカルで実施したり、リモートで実施したり、或いはこれらの組合せで実施することができる(例えば、空港のスキャナーはセントラルデータベースにアクセスすることで、パスポートが真正であるか否かを判定したり、それが誰に発行されたかを調査したり、さらには当事者の写真を提供して空港職員による視覚的確認を可能にすることができる)。通し番号又はユニーク識別子(ID)はアクセス(例えば、コンピューター、ビルディング、施設、国家などに入ること)を防止するためにも使用でき、これらを任意に埋め込むことができる。
本明細書中には、射出成形可能かつ光マーキング可能(レーザーマーキング可能)な熱可塑性樹脂組成物(例えば、透明な熱可塑性組成物)、物品、バルク熱可塑性樹脂組成物中(例えば、基板中)に様々なタイプの光マーク(例えば、スポット)を形成するためのシステム及び方法、データをエンコードする方法、エンコードされたデータの使用方法、並びにエンコードされたデータをリードバックしてユニーク識別シーケンスを形成する方法が開示される。例えば、本明細書中には、低出力(即ち、約200mW)のダイオードレーザーを用いる熱可塑性樹脂物品の光マーキング方法、セキュリティ書類(例えば、身分証明(ID)カード)の製造におけるこの方法の使用、光マーキング方法を用いて熱可塑性樹脂物品(例えば、IDカード)中にセキュリティ層(例えば、ユニーク識別子)をインプラントする方法、物品中のユニーク識別子を検出する方法、検出されたユニークIDを用いてアクセスを達成する方法、などが開示される。
例えばIDカードは、コア層(例えば、白色熱可塑性樹脂層のような反射性熱可塑性樹脂層)及び光マーキング添加剤を含む透明フィルム層を含み得る。任意には、例えば、スクラッチに対する保護、追加の耐薬品性の付与、及び/又は耐光性の付与のため、コア層と反対側の透明フィルム層の表面上にキャップ層を配設できる。これらの層は、共押出法、コラミネーション法などで集成できる。まず、押出法、溶融流延法又は溶液流延法で(約100マイクロメートル以下の)極薄層を形成し、任意には延伸して所望の厚さを達成することができる。キャップ層及び他の任意層を(例えば、コーティングとして)追加できるが、これらはUVランプのようなエネルギー源で硬化させ得る。IDカード中で使用可能な他の層には、金属層、磁気層、角メタメリズム特性を有する層など、並びに上述の層の1以上を含む組合せがある。
コア層の厚さは約0.25〜約2ミリメートル(mm)、さらに詳しくは約0.5〜約1mmであり得る。光マーキング可能な層(例えば、透明フィルム層)は、約12〜約300マイクロメートル(μm)、さらに詳しくは約25〜約200μm、さらに一段と詳しくは約50〜約100μmの厚さを有し得る。
本明細書中では、記載を簡明にするため、熱可塑性樹脂組成物を時にはポリカーボネートとして記載するが、任意の透明な熱可塑性樹脂(例えば、(例えば、BYK Gardner社から商業的に入手できるHaze−gard Plusを用いて測定して)約3.5%以下、さらに詳しくは約2.5%以下、さらに一段と詳しくは約1.5%以下のヘイズを有すると共に、光学リーダーを使用するならば読出し波長で透過性を有するもの)が使用できることはいうまでもない。光学リーダーを使用しないならば、(ASTM D1003で測定した)全光透過率は約80%以上であり得る。個々の用途に適した熱可塑性樹脂が使用できる。例えば、熱可塑性樹脂は光学的に清澄、透明、不透明又は曇り状態であってよく、及び/又は粗面仕上を有し得る。さらに、組成物は熱可塑性樹脂の所望の機能性を向上させるために各種の添加剤を含み得る。使用可能な機能性の非限定的な例には、視覚効果、美的効果及びその他任意の効果、並びに耐溶剤性、耐汗性、耐燃性及びその他任意の性能の向上がある。若干の使用可能な熱可塑性樹脂には、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリレート、環状ポリオレフィンなど、並びに上述の熱可塑性樹脂の1種以上を含む組合せ(例えば、透明なポリカーボネートホモポリマー、コポリマー、ポリカーボネートブレンドなど)がある。
プラスチック組成物は、読出し波長での媒体の光学的性質の変化(吸収の増加又は減少或いは散乱特性の変化)を誘起する光マークを形成するため、マーキング波長で十分なエネルギー吸収量(波長及び出力の関数)を有し得る。通例、マーキング波長は読出し波長と異なるが、場合によっては、マーキング波長は読出し波長と同じであり得る。プラスチック組成物(即ち、光マーキング添加剤を含むポリカーボネート)は光学的に透明であって、BYK Gardner社から入手できるHazeGard又はHazeGard Plusを用いて厚さ2.5ミリメートル(mm)のカラープラークについて測定して約2%以下、詳しくは約1.5%以下、さらに詳しくは約1%以下のヘイズを有し得る。光学的に透明な射出成形基板は、当該フォーマット用の適当な条件を用いて成形した場合、特定の物品フォーマットに関する規格内の電気的エラーカウントを有する。
プラスチック組成物は十分な安定性を有し得る。例えば、(i)リードバック波長での透過特性が、適正な基板厚さでの基板成形後の透過率の約60%以上、詳しくは約75%以上、さらに詳しくは約85%以上に保持される安定性、(ii)プロセス条件を調整しなくても、厚さ及び複製の品質の変動を最小限に抑えながら物品の一貫した成形を可能にする、ポリマー分子量又はポリマー溶融粘度の安定性、及び/又は(iii)例えば、30分の滞留時間後における300℃での溶融粘度シフトが約15%以下、さらに詳しくは約10%以下、さらに詳しくは約5%以下である平行板レオロジーが、ある種の用途のために適している。
プラスチックは、約250℃以上、更に詳しくは約280℃以上、さらに一段と詳しくは約310℃以上の温度で射出成形できる任意の射出成形可能な熱可塑性樹脂であり得る。例えば、プラスチックは透明なポリカーボネート、さらに詳しくは射出成形可能で光学的に透明なポリカーボネートであり得る。ポリカーボネート組成物は、任意には、約15000〜約50000原子質量単位(amu)、さらに詳しくは約17500〜約18500amuの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
プラスチック組成物の光マーキング添加剤は、プラスチックの所望の性質(例えば、光学的性質)に悪影響を及ぼすことなくプラスチック中に分散し得る任意の物質からなり得る。例えば、光マーキング添加剤は、約50ナノメートル(nm)以下、さらに詳しくは約25nm以下、さらに一段と詳しくは約10nm以下の粒度を有する物質であり得る。任意には、光マーキング添加剤は、読出し波長での透明度に影響を及ぼさないが、続いて(例えば、光、レーザーなどに由来する)マーキング波長に接触させた後には読出し波長でのエネルギーの反射(及び/又は(該当する場合には)透過)を変化させる(例えば、エネルギー(例えば、光)を吸収し、光を屈折し、及び/又はエネルギーを散乱する)物質であり得る。かかる変化は光マークされた領域での反射の増加又は減少であり得るが、これは本質的に熱可塑性樹脂基板のマーキングに由来するものであって、バッキング層(例えば、メタライズ層のような反射層又はIDカード中の反射性白色コア層)の損傷に由来するものではない。例えば、かかる物質は光学的性質を変化し得る(例えば、マーキング波長による刺激及び/又はマーキング波長で励起される組成物中の二次成分による刺激を受けて状態を変化し得る)。例えば、マーキング波長での光の吸収は、吸光度単位として約0.5以上、さらに詳しくは約1.0以上、さらに一段と詳しくは約2.0以上であり得る。吸光度は、分光光度計を用いてカラープラークについて測定できる。このような吸収は、光マーク領域における読出し波長での反射率の変化をもたらす永久的な状態変化を可能にする(即ち、その状態変化は(例えば、吸収状態と非吸収状態との間で)容易に可逆的でない)。例えば、吸収状態の不可逆的な破壊を伴うプロセス以外では吸収状態を非吸収状態に戻すことができない。苛酷な暴露条件(例えば、長時間の日光暴露)にさらして退色させた場合でも、光マークは永久的に残存する。即ち、光マークは読出し波長での十分な変化をもたらし、元の状態に戻ることはない。反射率及び透過率は、バルク光学材料(即ち、基板の非マーク領域)とは異なるように光を吸収、屈折及び/又は散乱する光マークによって変化する。例えば、その反射率がバルク材料(例えば、材料の残部)より十分に低いか又は十分に高ければ、光マークは機械で読取り可能な信号を生み出すことができる。また、光マークを用いてコントラストゾーンを生み出すことで、形成されるパターンのサイズに応じ、(拡大の使用又は不使用下で)人間の目で検出可能なグラフィックス及び/又はイメージを形成することもできる。
例示的な光マーキング添加剤は、アリールカルボニウム前駆体(アリールメタン、アリールカルビノール、フタレイン、スルホンフタレイン、フルオランの誘導体など)、光不安定基を有する安定発色団(更に詳しくは、リレン類、アントラキノン類、アントラピリドン類の発色団)、ロイコ色素(例えば、ブロックトロイコアリールメタン色素、カルバメートブロックトロイコフェノキサジン、ロイコフェノチアジンなどの感光性及び/又は感熱性ロイコ色素)など、並びに上述の光マーキング添加剤の1種以上を含む組合せを包含し得る。若干のアリールカルボニウム前駆体の構造を下記に示す。フタレイン誘導体の例には、クリスタルバイオレットラクトン、フェノールフタレインなどがある。
これらの発色団はまた、裸のアミン官能基を有し得る。かかるアミノ官能基を改変して(例えば、アルカリ性条件下でクロロホルメート(R2OCOCl)を色素(−NH−R1)と反応させて)ウレタン結合を形成することで、分子の共役に影響を及ぼす熱不安定基を生成する(−NH−R1を−NR1−CO−O−R2に変換する)ことができる。R2置換基は、押出し及び成形には耐えて残存するが、光マーキング段階に際しては離脱するように設計できる。一般に、第三アルキル置換基はn−ブチル基のような第一アルキル基に比べて最低の熱安定性を示す(例えば、t−ブチル基の場合)。R2がベンジル誘導体(特にニトロ置換ベンジル基)であるならば、色素はUV域内で光不安定であり得る。その場合には、レーザーを用いて不安定基を直接に除去し、か
くして色素の最大吸収をシフトさせることができる。
くして色素の最大吸収をシフトさせることができる。
この部類の色素の非限定的な例には、式VII〜Xに示すようなアントラキノン化合物がある。他方、式XI〜XIIIはリレン誘導体(ペリレン類(n=0)、テルリレン類(n=1以上)及びクアテルリレン類(n=2))を例示している。
感光性ブロックトロイコ光マーキング添加剤は、ロイコ色素に不安定基を結合することで生成される分子であって、マーキング可能な組成物の製造(即ち、取扱い、押出し及び成形)中には色素はロイコ形にブロックされた状態に保たれるが、マーキングレーザーへの暴露時には脱ブロックすることができる。脱ブロック後には、ロイコ色素は、(例えば、酸素の存在を含む酸化プロセスにより)ロイコ形より高い波長で光を吸収する酸化形に容易に転化される。このような吸収は一般に電磁スペクトルの可視部分に位置しており、目に見える(有色)マークの形成をもたらす。ロイコ色素の例には、フェナジン類、フェノキサジン類、フェノチアジン類などのアジン色素がある。式XIVは、ブロックトアジン色素に関する一般構造を示している(フェナジン類についてはX=N、フェノキサジン類についてはX=O、フェノチアジン類についてはX=Sである)。
プラスチック組成物の各種成分の量は、光マーキング添加剤がバッキング層の損傷を最小限に抑えながら(例えば、ディスクの非読出し側又はラベル側(即ち、マークと反対の側)からはバッキング層/コア層の損傷が人間の目に見えず、マークと同じ側からは光学顕微鏡を用いてもメタライズ層の損傷が見えないように)基板のマーキングを可能にするのに十分であると共に、任意には光酸発生剤が光マーキング添加剤と反応するのに十分であることに依存する。光マーキング添加剤の量は、マーキング波長での添加剤の吸光係数に依存し、また読出し波長でのマークされた化学種の吸光係数にも依存する。マークされた場合、マークが光学リーダ及び/又は人間の目で検出できるように(例えば、反射率の十分な変化が存在するように)、十分な量の光マーキング添加剤が存在し得る。若干の光マーキング添加剤については、存在する量は基板の総重量を基準にして約0.001wt%以上であり得る。光マーキング添加剤の量は、約5wt%以下、さらに詳しくは約3wt%以下、さらに一段と詳しくは約1wt%以下、さらになお詳しくは約0.5wt%以下であり得る。通例、等モル比の光マーキング添加剤及び光酸発生剤(例えば、光マーキング添加剤1モル当たり0.9〜1.1モル%の光酸官能基)が使用できる。
プラスチック、光マーキング添加剤及び光酸発生剤に加えて、基板は特定の物品中に使用できる(例えば、物品の所望特性に悪影響を及ぼさない)追加の添加剤(例えば、充填材、補強材、熱安定剤、着色剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、追加の樹脂、発泡剤、難燃剤など、並びに上述の追加の添加剤の1種以上を含む組合せ)を含み得る。
光マーキング添加剤を含むプラスチックのサイズ及び幾何学的形状は用途に依存する。例えば、プラスチックが約0.3mm以下の厚さを有するコア層であり得る場合には、コア層及び光マーキング可能層を含む物品は約0.3mm以上、さらに詳しくは約0.6mm以上の厚さを有し得る。かかる基板はまた、例えば、光ディスクに類似した構造を有するデータ層(例えば、ピット及びランド、又は高反射率及び低反射率領域)を含むスマートIDカード、パスポートなどとしても使用できよう。
各種成分の量は変化し得る。例えば、組成物は約0.001〜約5wt%、さらに詳しくは約0.01〜約3wt%の光マーキング添加剤を含み得る。組成物はまた、用途及び充填材や他の添加剤などの存在に応じて約80wt%以上、さらに詳しくは約90wt%以上、さらに一段と詳しくは約95wt%以上の熱可塑性樹脂を含み得る。使用する場合、光酸発生剤はほぼ化学量論的な量以上で存在し得る。
この技術は、透明な熱可塑性樹脂の場合に特に興味深い。このような場合、低出力(例えば、200ミリワット(mW)以下の出力)のダイオードレーザー(例えば、可視光ダイオードレーザー、近赤外(NIR)ダイオードレーザーなど)を用いて有色の光マークを形成するための現行の技術は存在しない。使用する光マーキング添加剤の感度及び所望のマーキング時間に応じ、レーザーは約200ミリワット(mW)以下(この場合には、例えば、約10マイクロメートル以上(さらに詳しくは約50マイクロメートル以上、さらに一段と詳しくは約100マイクロメートル以上)のサイズを有するマークが約60秒以下の時間で形成される)、さらに詳しくは約100mW以下、さらに一段と詳しくは約50mW以下、さらに一層詳しくは約2〜約15mWの出力を有し得る。時間は、約30秒以下、さらに詳しくは約10秒以下、さらに一段と詳しくは約5秒以下、なお一層詳しくは約1秒以下、なお一層詳しくは約50ミリ秒ないし約1秒であり得る。
任意には、異なる色及び異なる吸光特性を有する複数(例えば、2種以上)の光マーキング添加剤と共に、異なるマーキング波長を有する複数(例えば、2以上)のレーザーを使用することで、多色レーザーマークを形成し、及び/又はただ1種の光マーキング添加剤を使用することでは得られない単一の色を得ることもできる。レーザーダイオードは約157〜約410nmの波長で動作し得る。
例えば、IDカードは、特殊反射領域(例えば、メタライズ層)又はコア層(例えば、約80%以上の反射率を有する高反射性白色層)の基礎反射率を含み得る。(独立した層からなるか、及び/又は基板表面のピット及びランドからなり得る)データ層の可読性を可能にするためには、非マーク領域の電気反射率は30%以上、さらに詳しくは45%以上、そして若干の用途では65%以上であり得る。反射率は、通例は光反射率をいい、例えば光ファイバー分光光度計(例えば、Ocean Optics社製のS2000)を用いて、1つの波長又はある波長範囲内で入射光の量に対する反射光の比を計算することで測定できる。
光マーク(その1以上が任意に暗号化されていてもよい)は物品を構成する1以上の基板中に形成できると共に、例えば、光マークと物品の非マーク領域との間の反射率の差のためにスキャナー(例えば、レーザースキャナー)で検出できる。反射率の差は、例えば、15%以上、さらに詳しくは30%以上、さらに一段と詳しくは45%以上であり得る。さらに、比マーク領域が最大吸光波長を有し得る一方、光マークは最大吸光波長から約±100nm以上離れたマーク吸収波長、さらに詳しくは最大吸光波長から約±200nm以上離れたマーク吸収波長、さらに一段と詳しくは最大吸光波長から約±300nm以上離れたマーク吸収波長を有し得る。換言すれば、マーキング前の最大吸光波長ピークが約350nmであれば、光マークは約450nm以上(又は約250nm以下)のマーク吸収波長を有する。
光マークのパターン(例えば、1つの光マークの長さ及び/又は幅、及び/又は複数の光マークの長さ、幅及び/又は間隔)は、ユニークな反射率パターン(例えば、正弦波、階段状変化など、並びにこれらのパターンの1以上を含む組合せ)を生み出すように調整できる。例えば、ディスク基板内部でのレーザー空間プロフィルは光マークのシグネーチャであり得る。集束レンズに入射するレーザービームに応じ、ディスク基板中の集束光マークは、例えば、ガウス形、エアリー形(sinc関数)、フラットトップ形など、並びに上述のものの1以上を含む組合せであり得る(図1〜6を参照されたい)。光マークは不明確な幾何学的形状を有することができ、或いは特別なパターン(例えば、ロゴ、商標、語、形状など、並びに上述のものの1以上を含む組合せ)を形成することもできる。加えて、光マークはCD−Rグルーブのような特定の経路に沿うことができ、或いは特別な周期性をもった独自の経路を形成することもできる。後者の場合、レーザー(又は光)出力を変調して高反射率及び低反射率の領域が交代するウォブル経路を生み出すことができ、かかる周期性はある形態のトラッキングを可能にするであろう。
微視的又は巨視的であり得る光マークのサイズは、光マークを形成するために使用するデバイスに依存する。例えば、光マークは(主軸(即ち、最長の軸)に沿って測定して)直径1マイクロメートルほどに小さいこともあり、これは(例えば、顕微鏡で)拡大しなければ見えない。例えば、光マークの直径は0.1〜100マイクロメートルであり得る。基板表面上では、光マークのサイズは0.5ミリメートル(mm)程度に大きいこともある。局在アドレス(例えば、1以上の隣接論理ブロックアドレス)の内容を光マークするためには、光マークは小さい(例えば、約100マイクロメートル以下である)と共に、反応層に近い深さにあり得る。一連の光マークが(例えば、個々の光マークが特別なフィーチャーをもった)パターンを形成することもできる。例えば、パターンは複数の光マークで形成された会社ロゴであり得る(例えば、ロゴマークなどである)。
光マークは、例えば、2つの基本的なカテゴリー(即ち、肉眼で見えるもの及び可視化装置を用いて見えるもの)に分類できる。肉眼で見えるマークの最小サイズは約5マイクロメートルであり得るが、これはマークの光学的コントラストに依存する。本明細書中で光学的コントラストとは、マークに隣接した領域から反射される光の量に対する、マークから目に向かって反射される光の量の比率である。可視化装置を用いて見えるマークは、近視野光学系を用いて形成されかつ探査されるならば、最小10ナノメートルであり得る。
ユニークな通し番号を生み出すための一方法は、各物品が識別子(例えば、通し番号)に変換されるユニークなパターンの光マークを有するように光マークの配置、サイズ及び/又はデザインを制御することであり、かかる識別子は任意にはイメージ又はグラフィック中に埋め込むことができる。ユニークIDは、所望のデータ及び任意には検査データ(例えば、ユニークIDに関する情報(例えば、位置など))を含む物品を成形することで形成できる。成形物品は、データ層、反射層及び任意には他の層を含んでいる。次いで、物品をエネルギー(例えば、レーザー光のような光)に接触させることで成形物品中にユニークIDを形成できる。エネルギーは基板中の光マーキング添加剤に接触し、検査データと一致した位置にマーク又は一連のマークを成形後に形成する。
光マークは、レーザー(例えば、ポンプト固体レーザー、色素レーザー及び半導体ダイオードレーザー)及び/又は他の光源(例えば、ホトマスク、空間光変調器などと共に使用されるUVランプ)のようなエネルギー源、並びに上述のエネルギー源の1以上を含む組合せのようなエネルギー源を用いて形成できる。低出力レーザーダイオードは、少ない資本投資、少ない保守や作業休止時間、並びに他の利点をもたらす。使用する光マーキング添加剤の感度及び所望のマーキング時間に応じ、レーザーは約200ミリワット(mW)以下、さらに詳しくは約150mW以下、さらに一段と詳しくは約100mW以下(例えば、約30〜約100mW)の出力を有し得る。低出力レーザーの非限定的な例を表1に示す。使用する光マーキング添加剤の感度、所望のマーキング時間及び所望のマークサイズに応じ、レーザーは約200ミリワット(mW)以下の出力(この場合には、例えば、約1秒(sec)以下の時間でマーキングが行われる)、さらに詳しくは約100mW以下の出力(この場合には、例えば、約10sec以下の時間でマーキングが行われる)、さらに一段と詳しくは約50mW以下の出力(この場合には、例えば、約30sec以下の時間でマーキングが行われる)、さらに一層詳しくは約2〜約15mWの出力(この場合には、例えば、約60sec以下の時間でマーキングが行われる)を有し得る。
光ドライブ及びテスターでの読出し及びトラッキングのために使用可能なレーザーダイオードには、例えば、青色レーザー(405±30nm)、赤色レーザー(650±30nm)及び近IRレーザー(780±30nm)がある。一実施形態では、光マークは、基板中に位置すると共に物品の他の部分(例えば、メタライズ層や表面)には物理的な損傷を与えず、それでも周囲の非マーク領域から十分な反射率の差(例えば、高い反射率又は低い反射率)を与えて明確な(即ち、測定可能な及び/又は目に見える)パターン(即ち、識別子)を生み出し得るように形成できる。物品(又は組成物)の光マークと非マーク領域との間の反射率の差は、読出しデバイス(人間の目であってもよい)が光マークを非マーク領域から識別し得るのに十分なものである。大きい光マークは、検出可能で訂正不可能なエラーが生み出されるように複数の小さい光マークを設けることで形成できる。小さい光マークが単独で配設されるか、又は低い密度で配設されれば、これらは光ドライブで訂正可能と解釈されるであろう。しかし、複数の光マークが互いに近接して配設されるので、これらは訂正不可能なエラーを生じる。
基板を光マークするためには(例えば、基板中にマークを配置するためには)、基板を、光マーキング添加剤が基板中にマークを形成する(例えば、エネルギーを吸収してスポットを形成する)のに十分なエネルギー(例えば、レーザーエネルギー)に接触させる。望ましくは、エネルギーは基板(例えば、ポリカーボネート)又はバッキング層に損傷を与える(例えば、それを焼くなどする)のに十分でない(例えば、人間の目に見える損傷を生じない)。例えば、レーザーは(10〜100キロヘルツ(kHz)で進行する)パルス波、連続波(CW)又は準CWであり得る。準CWは非常に早いパルス繰返し速度(通例は100メガヘルツ(MHz)以上)で進行するパルスレーザーであって、典型的な運動系に対してはCWレーザーのように動作する。レーザー波長は、紫外(UV)(例えば、UVレーザー、ダイオードポンプト固体レーザーなど)、可視(例えば、固体レーザー、ダイオードなど)、赤外(例えば、ダイオード、固体レーザーなど)などであり得る。望ましくは、レーザー波長は添加剤の化学的及び/又は物理的性質の変化を引き起こすのに十分な程度に光マーキング添加剤の吸収波長に一致している。
各種のレーザー集束方式を用いて基板内部の様々な深さにレーザーマークを集束させることができる。なお、読出しレーザーは反射層又はメタライズ層上に焦点を有する。例えば、光マークされた色素パターンが基板内部で漏斗状になるようにマーキングレーザーを集束させることができる。光マークのサイズが大きい(例えば、約100マイクロメートルである)場合には、平行化レーザービームを用いて、光マークされた添加剤が物品全体を通して同じ光マークサイズを有するようにすることができる。別法として、非線形吸収色素(例えば、色素の吸収特性がレーザー出力の線形関数でないもの)をコンテント層に集束させたレーザーと共に使用することで、基板内部にサブマイクロメートルのフィーチャーを書き込むこともできる。
図7に示すような例示的な光マーキングシステムは、ガルボミラーを用いて物品上に光マークを配設する。このシステムの利点はその速度である。脚を非常に長くできるので、ミラーのいかなる角運動も物品上では大きな運動を引き起こす。しかし、このシステムは物品上に10マイクロメートル未満のフィーチャーを書き込むことができない。
別の例示的な光マーキングシステムを図8に示す。このシステムは、物品を運動させかつ回転させる。このシステムでは、大きいフィーチャーについては、x−y線形ステージを運動させる。例えば、Aerotech Inc.又はNewport Corp.製の光学エンコーダー付き空気軸受式線形ステージは0.1マイクロメートルの精度を達成し得る。小さいフィーチャーについては、オートフォーカシング及びトラッキングシステムが使用できる。線形ステージを用いて物品のコンテントをx−y次元でマッピングすることで書込みを行うことができる。
次いで、人間の目(イメージ、テキスト及び/又はグラフィックスの観察)、(例えば、標準的なスキャナーでの)物品スキャニング或いは光学リーダーで識別子を認識し、及び/又はそれを解読してコードを得ることができる(例えば、数字ストリング、ユニーク通し番号などに変換できる)。例えば、このコードを1組のコードと比較することで物品の真正性を判定できる。加えて、識別子の構造を、ある種の通し番号ジェネレーターと同様な、真正コードを生成する特定のアルゴリズムにまでトレースすることができる。例えば、一実施形態では、光マークを光ディスクドライブによりエラーとして検出でき、エラーの位置を通し番号にコード化できる。光情報記憶ディスクからのデータ読出しに関するエラーは、通例、3つの起源(フォーカシングエラー、トラッキング/同期化エラー及び読出しエラー)に由来する。光マークを使用すれば、ドライブは光マークの位置にエラーを検出することができる。別の実施形態では、一連のマークによって生み出されるパターンはデータ又はデータとエラー(例えば、グルーブ上方のポリカーボネート中に設けられたマーク)の組合せに相当し得るか、或いはパターンがウォブリンググルーブを形成し得る。識別子が可読データの形態を有する場合には、それが標準的でないフォーマットをなすように構造化することで、公知技術による複写を回避できる。ウォブリング経路の特殊な周期性を、ユニークIDの出所を確認するための識別子として使用できることも考えられる。
実施例1:レーザーマーキング可能な色素を含むポリカーボネートフィルム
厚さ0.1mmのポリカーボネートフィルムを製造するため、溶融ポリカーボネート試料をクロロホルム中に溶解し(約10wt%)、約1〜5wt%(全溶液中のwt%)のクリスタルバイオレットラクトンを添加してポリカーボネート組成物を調製した。ガラス基体上にフィルムを溶液流延した。溶媒蒸発後、10cmの距離でフィルムの表面に垂直に配置された355nmレーザーを用いてフィルムに光マーキングを施した。レーザーは、15ミリワット(mW)の平均レーザー出力を有しながら5キロヘルツ(kHz)で動作する小形Nd:YAGレーザー(Nanolase社(フランス)から商業的に入手可能)であった。フィルムはXYステージ上に配置した。ステージは、所定パターンに従って1ミリメートル/秒(mm/s)の速度で移動して光マークを形成するように作動された。得られたフィルムは、ポータブル光ファイバー分光分析システムで検出できる直径約1〜2mmのマークを有していた。このシステムは、白色光源(ハロゲンランプ、Ocean Optics,Inc.(ダニーディン、米国フロリダ州))及びポータブル分光計(Ocean Optics社、モデルST2000)を含んでいた。分光計には、200μmのスリット、400nmのブレーズ波長を有すると共に30%を超える効率で250〜800nmのスペクトル範囲をカバーする600本/mmの回折格子、及び線形CCDアレイ検出器が備わっていた。光源からの光は、「シックス・アラウンド・ワン」二分岐型光ファイバー反射プローブ(Ocean Optics,Inc.、モデルR400−7−UV/VIS)の一方のアームに集束させた。光ファイバープローブの共通端を表面に対する垂線から10〜20度の角度で試料の近くに配置した場合、フィルムからの反射光が試料から捕集された。プローブの第二のアームは分光蛍光計に結合した。
厚さ0.1mmのポリカーボネートフィルムを製造するため、溶融ポリカーボネート試料をクロロホルム中に溶解し(約10wt%)、約1〜5wt%(全溶液中のwt%)のクリスタルバイオレットラクトンを添加してポリカーボネート組成物を調製した。ガラス基体上にフィルムを溶液流延した。溶媒蒸発後、10cmの距離でフィルムの表面に垂直に配置された355nmレーザーを用いてフィルムに光マーキングを施した。レーザーは、15ミリワット(mW)の平均レーザー出力を有しながら5キロヘルツ(kHz)で動作する小形Nd:YAGレーザー(Nanolase社(フランス)から商業的に入手可能)であった。フィルムはXYステージ上に配置した。ステージは、所定パターンに従って1ミリメートル/秒(mm/s)の速度で移動して光マークを形成するように作動された。得られたフィルムは、ポータブル光ファイバー分光分析システムで検出できる直径約1〜2mmのマークを有していた。このシステムは、白色光源(ハロゲンランプ、Ocean Optics,Inc.(ダニーディン、米国フロリダ州))及びポータブル分光計(Ocean Optics社、モデルST2000)を含んでいた。分光計には、200μmのスリット、400nmのブレーズ波長を有すると共に30%を超える効率で250〜800nmのスペクトル範囲をカバーする600本/mmの回折格子、及び線形CCDアレイ検出器が備わっていた。光源からの光は、「シックス・アラウンド・ワン」二分岐型光ファイバー反射プローブ(Ocean Optics,Inc.、モデルR400−7−UV/VIS)の一方のアームに集束させた。光ファイバープローブの共通端を表面に対する垂線から10〜20度の角度で試料の近くに配置した場合、フィルムからの反射光が試料から捕集された。プローブの第二のアームは分光蛍光計に結合した。
実施例2:色素ドープポリカーボネートからなる射出成形ディスク
ヘンシェルミキサー内で、ポリカーボネート粉末(500グラム)を、ポリカーボネートの総重量を基準にして0.672wt%のクリスタルバイオレットラクトン(CVL)及び0.34wt%の光酸発生剤(PAG)(1,2,3−トリヒドロキシベンゼントリス−フェニルスルホニルエステル)とブレンドした。280℃の射出温度を用いるMini−jector射出成形機で、ブレンドを直径57mmで厚さ1.2mmのディスクに成形した。3wt%のクリスタルバイオレットラクトンを含むが光酸発生剤を含まない比較試料及びクリスタルバイオレットラクトンも光酸発生剤も含まない試料も作製した。これらの試料を、355nmのUVレーザー又はフラッシュUVランプ(Xenon Corp.)を用いて紫外線(UV)に30秒間暴露した。UV暴露後、Ocean Optics UV−Vis分光光度計を用いて試料を測定した。PAGを含む試料及びPAGを含まない試料のUV−Visスペクトルをそれぞれ図9及び10に示す。キセノンフラッシュランプを用いて30秒のUV暴露を施す前及び施した後の試料のスペクトルも、これらの図中に示してある。表2には、複数の波長での試料の吸光度をまとめて示す。これらのデータは、532nm及び650nmでの吸光度の増加で示される通り、色素ドープポリカーボネートディスクがUVへの暴露に対して感受性を有していたことを表している。さらに、これらのデータは、クリスタルバイオレットラクトン及び光酸発生剤の両方を含む試料がUV暴露後に650nmでの吸光度の大幅な増加を示したことを表している。
ヘンシェルミキサー内で、ポリカーボネート粉末(500グラム)を、ポリカーボネートの総重量を基準にして0.672wt%のクリスタルバイオレットラクトン(CVL)及び0.34wt%の光酸発生剤(PAG)(1,2,3−トリヒドロキシベンゼントリス−フェニルスルホニルエステル)とブレンドした。280℃の射出温度を用いるMini−jector射出成形機で、ブレンドを直径57mmで厚さ1.2mmのディスクに成形した。3wt%のクリスタルバイオレットラクトンを含むが光酸発生剤を含まない比較試料及びクリスタルバイオレットラクトンも光酸発生剤も含まない試料も作製した。これらの試料を、355nmのUVレーザー又はフラッシュUVランプ(Xenon Corp.)を用いて紫外線(UV)に30秒間暴露した。UV暴露後、Ocean Optics UV−Vis分光光度計を用いて試料を測定した。PAGを含む試料及びPAGを含まない試料のUV−Visスペクトルをそれぞれ図9及び10に示す。キセノンフラッシュランプを用いて30秒のUV暴露を施す前及び施した後の試料のスペクトルも、これらの図中に示してある。表2には、複数の波長での試料の吸光度をまとめて示す。これらのデータは、532nm及び650nmでの吸光度の増加で示される通り、色素ドープポリカーボネートディスクがUVへの暴露に対して感受性を有していたことを表している。さらに、これらのデータは、クリスタルバイオレットラクトン及び光酸発生剤の両方を含む試料がUV暴露後に650nmでの吸光度の大幅な増加を示したことを表している。
実施例3:色素ドープポリカーボネートからなる射出成形ディスクの光マーキング
ヘンシェルミキサー内で、ポリカーボネート粉末(500グラム)を、ポリカーボネートの総重量を基準にして0.01〜0.3wt%の濃度の色素とブレンドした。上記の実施例と同じく、280℃の射出温度を用いるMini−jector射出成形機で、ブレンドを直径57mmで厚さ1.2mmのディスクに成形した。これらのディスクを、15ミリワット(mW)の平均レーザー出力を有しながら9キロヘルツ(kHz)及び400ピコ秒(ps)のパルス幅で動作する355nmのパルス式Nd:YAGレーザー、15mWの平均レーザー出力を有しながら5キロヘルツ(kHz)及び400ピコ秒(ps)のパルス幅で動作する532nmのNd:YAGレーザー、60mWの連続レーザー出力を有する650nmレーザーダイオード、並びに80mWの連続レーザー出力を有する780nmレーザーダイオードを含む各種の光源に暴露した。試料は、約10cmの距離で光源に垂直に配置した。光マーキング化合物(例えば、色素)には、アントラキノン類、ジ−及びトリ−アリールメチン類、オキサジン類、チアジン類、アントロキノン類、アザ及びアゾ色素、キノン類、インジゴ並びに他の色素が含まれていた。露光前及び露光後の成形品のUV−可視吸光度スペクトルを測定した。
表3には、PC組成物中に使用した各色素に関するレーザー露光の効果をまとめて示す。色素に応じ、露光は光マーク(露光後に高い吸光度(「暗色化」)又は低い吸光度(「明色化」)のスポット)を生じたか、或いはこれら特定の条件下でマークを生じなかった(「効果なし」)。若干の試料(「分解」)については、色素は高温成形プロセス中に分解した。表3中に示したホトクロミック色素の多くはコーティングのような適当な母材中に配置した場合には吸収状態と非吸収状態との間で可逆的に切換え可能であることが知られているが、これらの色素をディスク基板(例えば、ポリカーボネート基板)中に配置した場合には、可逆的な挙動を示さずに意外にも安定な(「永久的な」)状態変化を示したことに注意されたい。
射出成形プロセスに耐え、低出力レーザーからの光に暴露した際に検出可能なマークを形成し得るポリカーボネート/色素組成物は、意外にも少数であることが容易に理解できよう。また、(レーザー波長及び出力を含む)今回の実験条件を用いて光マーキング可能でなかった下記色素の一部は、別の実験条件を使用すれば(例えば、高いレーザー出力又は長いマーキング時間を使用すれば)光マーキング可能になるかもしれないことが理解できよう。
実施例4:光マーキング可能な色素をドープしたポリカーボネート基板を含む射出成形CD
高剪断ミキサー(ヘンシェルミキサー、モデルRL086202)内で、12kgの粉末ポリカーボネート樹脂(Lexan OQ1030L)と0.20wt%のクリスタルバイオレットラクトン及び0.30wt%の光酸発生剤(1,2,3−トリヒドロキシベンゼントリス−フェニルスルホニルエステル)との混合物をブレンドした。W&P28mm二軸押出機を用いて、ブレンドを約265℃で押し出した。押し出した樹脂系を細断して、光マーキング可能な色素/光酸発生剤系を含むペレットを形成した。Seikoh Giken J Type CD Moldを備えたSumitomo SD30射出成形機を用いてペレットを約335℃でディスクに成形し、アルミニウムでメタライズし、Steag Unijetでラッカー塗装することで、再生可能なCD−ROMディスクを形成した。
CD−ROMディスクを355nmレーザー(JDS Uniphase社のモデルNV−10210−100)で光マークして、約357×541マイクロメートルないし約579×825マイクロメートルの寸法を有する楕円形スポットを形成した。1枚のCD−ROMディスクは、CD−ROM上で8分及び18分に相当する概略位置に、548×747マイクロメートルの概略寸法を有する2つのスポットで光マークした。このディスクをマークしながら、ディスク上に0,1及び2のスポットを光マークするたびに試験した。
開示された方法は、ユニーク識別子を有する物品の製造を可能にする。例えば、物品のメタライズ層に損傷を与えることなく、或いは炭化領域を形成することなく(即ち、光マークはバーンマーク(例えば、光の分光吸収を示さない(フラットな直線を有する)黒色スポット)ではなくて(例えば、光の分光吸収を示す(分光吸収曲線を有する))有色マークである)、熱可塑性樹脂中にマーク(例えば、識別子)を配置できる。有色マークはまた、物品の表面の形態又はテクスチャーに損傷又は変化をもたらすことなく熱可塑性樹脂中に配置できる。さらに、これらの識別子は基板の内部にある場合、媒体に永久的な損傷を与えることなしに除去することは(不可能でないにしても)困難である。ユニーク識別子がコーティングとして適用されるのではなくプラスチック基板中に埋め込まれている場合、それを複写するのはさらに困難である。識別子がデータ又はエラーに相当する場合、特にそれが画像又はグラフィックのような他のパターン中に組み込まれている場合には、偽造者にとって一層の難問となる。
物品中にユニーク識別子が存在すれば、物品の真正性を確認できる。例えば、パスポート、セキュリティカード(例えば、病院職員、航空会社従業員、国家公務員など)、運転免許証、医療歴記録カード、買物及び/又は支払いカード(例えば、デビット/クレジットカード)並びに任意のピクチャーIDカードの真正性をスキャナーで確認できる。スキャナー及び/又は物品は、認証を容易にするコンピューターコードを含み得る。IDの検証は、ローカルに記憶され或いは(インターネット又はイントラネットを介してアクセスできる)データベース上に記憶され得るリファレンス、アルゴリズムなどと比較して行うことができる。例えば、リモートに配置されたコンピューター(例えば、中央政府データベース)にアクセスすることで、空港のセキュリティステーションに検証情報を提供することができる。このような手続きを使用すれば、盗まれた身分証明書を確認できる。例えば、そのIDは真正のものであるが、セントラルデータベースでは盗まれたものとして確認されたことがわかる。
以上、好ましい実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換を行い得ることが理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含するものである。
Claims (45)
- 熱可塑性樹脂物品のマーキング方法であって、
熱可塑性樹脂を光マーキング添加剤と合わせて組成物を形成する段階、
該組成物から、最大吸光波長を有する物品を形成する段階、及び
約200mW以下の出力を有するデバイスを用いて物品の少なくとも一部をマーキング波長で照明することで、主軸に沿って測定して約10マイクロメートル以上のサイズを有する光マークを形成する段階
を含んでなり、光マークは最大吸光波長から約±100nm以上離れたマーク吸収波長を有すると共に、光マークは分光吸収曲線を有する、方法。 - 光マーキング添加剤が、約200mW以下の出力で照明した場合に約60秒以下の時間で光マークを形成できる、請求項1記載の方法。
- 時間が約30秒以下である、請求項2記載の方法。
- 時間が約10秒以下である、請求項3記載の方法。
- 光マーキング添加剤がアリールカルボニウム前駆体、安定発色団、感光性ロイコ色素、及び上述の光マーキング添加剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択され、安定発色団がカーボネート基、カルバメート基、ウレタン基、スルホネート基、及び上述の光不安定基の1種以上を含む組合せからなる群から選択される光不安定基を含む、請求項1記載の方法。
- 出力が約2〜約100mWである、請求項1記載の方法。
- 出力が約2〜約50mWである、請求項6記載の方法。
- 出力が約2〜約15mWである、請求項7記載の方法。
- 光マーキング添加剤が、アリールメタン、アリールカルビノール、フタレイン、スルホンフタレイン、フルオラン、及び上述のアリールカルボニウム前駆体の1種以上を含む組合せからなる群から選択されるアリールカルボニウム前駆体からなる、請求項1記載の方法。
- 光マーキング添加剤が、リレン類、アントラキノン類、アントラピリドン類の発色団、及び上述の安定発色団の1種以上を含む組合せからなる群から選択される安定発色団からなる、請求項1記載の方法。
- 光マーキング添加剤が、ブロックトロイコアリールメタン色素、カルバメートブロックトロイコフェノキサジン、ロイコフェノチアジン、及び上述の感光性ロイコ色素の1種以上を含む組合せからなる群から選択される感光性ロイコ色素からなる、請求項1記載の方法。
- 物品を形成する段階がさらに、約250℃以上の温度で加工することを含む、請求項1記載の方法。
- 組成物が約5分以上の時間にわたり加工される、請求項12記載の方法。
- 温度が約280℃以上である、請求項12記載の方法。
- 温度が約310℃以上である、請求項14記載の方法。
- 光マークが約100dpi以上の解像度を有する、請求項1記載の方法。
- 光マークが光マーキング添加剤の吸収状態であり、吸収状態の不可逆的な破壊を伴うプロセス以外では吸収状態を非吸収状態に戻すことができない、請求項1記載の方法。
- さらに、熱可塑性樹脂及び光マーキング添加剤を非イオン性光酸発生剤と合わせる段階を含む、請求項1記載の方法。
- デバイスが約157〜約410nmの波長で動作する、請求項1記載の方法。
- デバイスが可視光ダイオードレーザーである、請求項1記載の方法。
- 組成物が異なる吸光特性を有する2種以上の光マーキング添加剤を含み、マーキング波長で照明する段階がさらに2以上のマーキング波長で照明することを含む、請求項1記載の方法。
- 物品が熱可塑性樹脂ペレットを含む、請求項1記載の方法。
- 物品が約3.5%以下のパーセントヘイズを有する、請求項1記載の方法。
- パーセントヘイズが約2.5%以下である、請求項1記載の方法。
- 熱可塑性樹脂が不透明である、請求項1記載の方法。
- 光マーキング添加剤がクリスタルバイオレットラクトンからなり、組成物がさらに1,2,3−トリヒドロキシベンゼントリス−フェニルスルホニルエステルを含む、請求項1記載の方法。
- 光マークが分光吸収曲線を有する、請求項1記載の方法。
- 熱可塑性樹脂及び光マーキング添加剤を含んでなる光マーキング可能な物品であって、
光マーキング添加剤は、約200mW以下の出力を有するデバイスを用いて約60秒以下の時間にわたりマーキング波長で照明した場合、主軸に沿って測定して約10マイクロメートル以上のサイズを有する光マークを形成することができ、
光マークは分光吸収曲線を有する、物品。 - 光マーキング添加剤がアリールカルボニウム前駆体、安定発色団、感光性ロイコ色素、及び上述の光マーキング添加剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択され、安定発色団がカーボネート基、カルバメート基、ウレタン基、スルホネート基、及び上述の光不安定基の1種以上を含む組合せからなる群から選択される光不安定基を含む、請求項28記載の物品。
- さらに1,2,3−トリヒドロキシベンゼントリス−フェニルスルホニルエステルを含み、光マーキング添加剤がクリスタルバイオレットラクトンからなる、請求項28記載の物品。
- 時間が約30秒以下である、請求項28記載の物品。
- 出力が約2〜約100mWである、請求項28記載の物品。
- 光マーキング添加剤が、アリールメタン、アリールカルビノール、フタレイン、スルホンフタレイン、フルオラン、及び上述のアリールカルボニウム前駆体の1種以上を含む組合せからなる群から選択されるアリールカルボニウム前駆体からなる、請求項28記載の物品。
- 光マーキング添加剤が、リレン類、アントラキノン類、アントラピリドン類の発色団、及び上述の安定発色団の1種以上を含む組合せからなる群から選択される安定発色団からなる、請求項28記載の物品。
- 光マーキング添加剤が、ブロックトロイコアリールメタン色素、カルバメートブロックトロイコフェノキサジン、ロイコフェノチアジン、及び上述の感光性ロイコ色素の1種以上を含む組合せからなる群から選択される感光性ロイコ色素からなる、請求項28記載の物品。
- 熱可塑性樹脂が、約250℃以上の温度で約5分以上の時間にわたり加工できる、請求項28記載の物品。
- さらに非イオン性光酸発生剤を含む、請求項28記載の物品。
- 異なる吸光特性を有する2種以上の光マーキング添加剤を含む、請求項28記載の物品。
- 当該物品が約3.5%以下のパーセントヘイズを有する、請求項28記載の物品。
- 当該物品が熱可塑性樹脂ペレットを含む、請求項28記載の物品。
- 当該物品が、IDカード、セキュリティカード、クレジットカード及びデビットカードからなる群から選択される、請求項28記載の物品。
- さらに光マークを含む、請求項28記載の物品。
- 光マークが約100dpi以上の解像度を有する、請求項42記載の方法。
- 光マークが光マーキング添加剤の吸収状態であり、吸収状態の不可逆的な破壊を伴うプロセス以外では吸収状態を非吸収状態に戻すことができない、請求項42記載の物品。
- 熱可塑性樹脂、1,2,3−トリヒドロキシベンゼントリス−フェニルスルホニルエステル及びクリスタルバイオレットラクトンを含んでなる光マーキング可能な物品であって、
光マーキング添加剤は、約200mW以下の出力を有するデバイスを用いて約30秒以下の時間にわたりマーキング波長で照明した場合、主軸に沿って測定して約10マイクロメートル以上のサイズを有する光マークを形成することができ、
光マークは分光吸収曲線を有する、物品。
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