JP2008514952A - 陽電子放出断層撮影(pet)システム - Google Patents

陽電子放出断層撮影(pet)システム Download PDF

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Abstract

乳房、腋窩領域、脳、及び前立腺領域、又はその他の四肢に最適化された寸法を有する少なくとも2つの検出プレート(検出器ヘッド)と、手動又はコンピュータの制御下においてプレートの動きを実現し、断層撮影画像の再構築に必要ないくつかの向きにおけるデータの収集を実現する電動機械手段と、検出器ヘッド上に物理的に配置されているフロントエンド電子回路システムと電子クレート内において検出器外に配置されているトリガ及びデータ取得システムから構成された電子回路システムと、データ取得及び制御ソフトウェアと、検査の際に生成されたデータの再構築、視覚化、及び分析を実現する画像再構築及び分析ソフトウェアと、から構成された、乳房、腋窩、頭、首、肝臓、心臓、肺、前立腺領域、及びその他の身体の四肢などの人体の一部分の検査に専用の陽電子放出断層撮影(PET)システムである。

Description

医療画像の生成は、長い間、主にX線撮影法又は超音波検査法という物理的原理に基づいて行われてきた。これら2つの技法における改善は、主に画像の検出、画像処理用のソフトウェア、及びデータ保存の面において実現されている。最近、異なる物理的メカニズムに基づいた別の技術により、人体の形態構造及び機能の調査に関する新しい展望が医療画像生成の分野において開かれている。
その一例が、主に癌の検出に使用されている陽電子放出断層撮影法(Positron Emission Tomography:PET)であり、この方法による、癌の検出、段階判定、及び治療効果の評価において、費用対効果の有効性が実証されている。PETシステムの基礎をなしている原理は、その他のあらゆる核医学の方法と同様に、人体内に注入された放射性物質からガンマ放射線を検出するというものである。PETの場合には、放射性物質は、生物分子内に存在する放射性同位体原子を含んでおり、従って、特定の生化学的メカニズムと細胞に対する相対的に大きな親和性を有している(例えば、グルコースに基づいたFDGは、その相対的に高い代謝率に起因し、優先的に癌細胞に取り込まれる)。生理病理学的プロセスのラベルとして使用される分子を陽電子の放射によってマーキングすることにより、原子内電子との対消滅の後に、2つのモノエネルギー光子が反対方向に放出される。光子の存在と空間的な起源を識別するには、放射線検出システムが必要である。光子ペアの放射によって生成された、いくつかのラインの交点から光子の空間的起源を判定するのである。
(1.1 癌の検出)
癌の早期検出を健康管理政策の優先課題としている国々が増加している。特に重要なのは、乳癌の検出である。非常に多くの女性(女性の約9人に一人)が乳癌を発症しており、これは、全年齢の女性の癌死における第2の主原因であり、40歳〜49歳の女性の場合には、主な死亡原因となっている(L. W. Basset、Jackson V. P.による「Diagnosis of Disease of the Breast」(W. B. Saunders Company、1997年、第23章)。一方、早期の検出は非常に大きな治癒率に結び付いている(P. A. Newcomb、P. M. Lantzによる「Breast cancer research and treatment」(28(2)、97〜106頁、1993年)。
残念ながら、従来のX線乳房撮影法の性能は満足できるものではない。X線乳房撮影法は、乳房のタイプに応じて、約80%という総合的な感度(全陽性に対する真陽性の数)を具備している。脂肪質の乳房の場合には、95%の感度を実現可能であり、検出可能な腫瘍サイズの下限は、約5mmであるが、高密度の乳房の場合には、感度が70%に低下し、サイズの下限は、10〜20mmとなっている。癌の予後は、そのサイズに関係しているため、検出可能な腫瘍のサイズは重要である。一方、その無病正診率(全陰性に対する真陰性の数)は、相当に低く、通常、約30%である。従って、女性の心理的な側面を考慮することなしに、社会的に高コストである多数の不要なバイオプシー(或いは、場合によっては、腋窩の切開)が行われているのである。
一方、FDG(18F−fluoro−deoxy−glucose)を使用したPET代謝法は、癌細胞のグルコース消費量が正常な組織と比べて格段に大きいことに起因し、悪性の組織に対する優れた感度(略100%)を実証している。腫瘍のグルコース代謝活動のトレーサーとしてFDGを使用するPETは、構造ではなく組織及び器官の機能を精査している非侵襲的な画像生成技術である(米国特許第5,453,623号及び米国特許第5,961,457号)。
本発明は、ステージ1aの癌を効果的に検出するべく1mmの空間分解能を具備した非常に専門的なPET装置に対する需要に応えるものである。
(1.2 機能的画像生成装置に関する動機付け)
従来のX線乳房撮影法又は超音波検査法などの形態構造的な方法は、身体内部の組織の密度変化の画像を提供している。相対的に高密度の領域と癌腫瘍間における相関性の確立は、常に容易であるというわけではなく、且つ、癌が、低エネルギーのX線領域における低コントラスト構造によって特徴付けられていることも非常に多く、これが低感度に結び付いている。具体的には、これは、高密度の乳房を有する女性の40%に当て嵌まるものであり、この場合には、X線乳房撮影法は、癌の約50%を見逃すことになる。
高率の偽陽性が多数の不要なバイオプシーに結び付いており、X線又は超音波によって得られた画像生成標識に準拠したバイオプシーの60〜85%が悪性の病変に対応していない(L. P. Adlerによる「Beast Imaging Conference」、ローマ、2000年5月)。米国内だけで、1年当たりに600,000件の不要なバイオプシーが10億ドルの費用を所要しているものと推定される。更に劇的であるのが、過大な数の偽陰性であり、これは、しばしば、患者にとって致命的な結果を伴っている。MRI(Magnetic Resonance Imaging)や超音波検査法などのその他の方法は、X線を上回る有効性をまだ証明できてはいない。
格段に高い感度及び無病正診率に対するニーズが存在していることは明らかである。又、乳癌の診断が必要とされているのみならず、生物学的な評価が益々有用になっている。腫瘍細胞は、正常な細胞と比べて、グルコースを格段に高速に代謝することが知られている。従って、放射性トレーサーとしてFDG(18F−fluoro−deoxy−glucose)を使用する陽電子放出断層撮影法(PET)は、高感度を具備する可能性が高い。実際に、259人の患者に対して行われたメタ分析研究は、92%の感度(真陽性/全陽性)、94%の無病正診率(真陰性の数/全陰性の数)、及び92%の正確性(真陽性の数+陰性/全体数)を示している(L. P. Adler、「Beast Imaging Conreference」、ローマ、2000年5月)。
臨床例は、まだ限られているが、陽電子放出断層撮影法は、乳癌の診断に大きな改善をもたらすことができると考えられる。18F−FDGを使用することにより、既に次のような結果が得られている。
(a)悪性腫瘍の診断において、77%(Yutani K.他による「Detectability of FDG−PET and MIBI−SPECT to breast tumor」(J Nucl Med.、1997年、38:68頁)と100%(Yutani K.他による「Correlation of F−18−FDG and Tc−99m−MIBI uptake with proliferative activity in breast cancer 〔abstract〕」、J Nucl Med.、1999年、40:16〜17頁)の間において変化する感度と、84%(Avril N.他による「Metabolic characterization of breast tumours with positron emission tomography with F−18 fluorodeoxyglucose」(J Clin Oncol.、1996年、14:1848〜1857)と100%(Noh D.他による「Diagnostic value of positron emission tomography for detecting breast cancer」(World J Surg.、1998年、22:223〜228)の間における無病正診率が観察されている。
(b)神経節局所浸潤の診断に関連し、初期の疾病段階判定の基礎として、それぞれ、97及び93%のレベルの感度及び精度値が計測されている(Bender H.他による「Breast imaging with positron emission tomography」及びTaillefer R.、Khalkhali I.、Waxman A. D.他による「Eds. Radionuclide Imaging of the breast」(ニューヨーク、Marcel Dekker、1998年、147〜75))。
全身PETスキャナにおける経験によれば、感度は、病変のサイズによって左右されると考えられ、2cmを上回る腫瘍サイズにおいては、90%を上回っているが、1cmを下回っている場合には、約25%に過ぎない(Rose C.他、Nucl. Med. Commun.、2002年、23、613〜618)。これらの結果は、本発明において提案されている専用のPET装置により、(特に、小さな腫瘍に対する感度を)大幅に改善可能である。
(1.3 部分的身体カメラの概念に関する動機付け)
様々な癌の診断及び段階判定のために、全身PETスキャナが臨床に使用されている。全身PETシステムと比べて、専用の部分的身体装置は、きめの細かな結晶セグメンテーションによって得られる、潜在的に良好な空間分解能を具備しており、且つ、相対的に良好な感度に結び付く、分析対象領域の相対的に厳密なカバレージが可能である。又、全身PETシステムは、その開放的な形状に起因し、身体からのバックグラウンドの影響を非常に受けやすく、この結果、ターゲット/バックグラウンド比が低下することになる。又、全身PETシステムは、高価であり、且つ、嵩張ってもいる。
イベントカウント感度は、その向上によって検査時間の短縮と注入線量の低減が可能であり、結果的に患者に対する放射線負荷の軽減をもたらすことから、PETにおける重要なパラメータである。感度は、検出器の幾何学的及び物理的なパラメータによって左右される。検出器の形状は、可能な限りの立体角カバレージを目標とする必要があるが、画像の再構築における考慮事項と人体解剖構造及び検査法の仕様により、いくつかの制限が課せられている。検出器の厚さと結晶の物理特性(密度及び組成)は、放射光子の光電相互作用の確率を決定しており、この結果、PETの感度に対する直接的な影響を具備している。
一方、結晶の長さは、画像再構築プロセスにおける視差の影響と位置分解能における結果的な劣化の原因である。視差の影響は、特に、検査対象物体のそばに配置された平坦な検出器を使用する際に重要な課題となる。従って、本発明者らは、高密度結晶を相互作用の深さ情報を提供する方法と組み合わせる必要がある。
良好な画像の再構築に必要なイベントの統計情報を短い時間インターバルで蓄積する能力は、データ取得システムの性能に依存している。本発明者らは、1秒当たりに百万イベントを上回るデータ取得レートを必要としている。このイベントレートは、例えば、10mCiの合計注入線量、乳房内における2%の摂取量、並びに、検出器の幾何学的な適合性、及び10%という高い効率に対応している。一方、検出器は、全身内において発生する崩壊による大きな光子束の影響を受けることになる。従って、検討対象の器官に対する良好な適合性と、身体の残りの部分に対する低減された適合性を具備することにより、専用の装置によって、これを可能な限り低減することが重要である。そして、データ取得システムが10MHzのレベルの単一光子バックグラウンドレート(10mCiの合計崩壊の2.5%の線量)に対処することも必要である。このような条件下において、読み出し電子回路及びデータ取得を組み合わせた効率が95%を上回る必要がある。
大きな単一光子バックグラウンドにおいて非常に良好な時間分解能を実現することにより、偶発的な2光子イベントを極小化することが極めて重要である。前述のレート及び1nsの光子時間計測値r.m.s.において、バックグラウンド一致(coincidence)率は、真の比率の30%未満である必要がある。
単位時間において収集されるイベントの数は、検出器の立体角カバレージによって左右される。リング直径(全身PET)又は2つのプレート間の離隔(部分的な身体PET)が値Dを具備している概略レイアウトにおいては、立体角カバレージは、D-2によって変化する。一例として、全身PETが、D=60cmのリング直径と、D=10cmだけ離隔した2つのプレートを具備していると考えた場合に、デュアルプレート構成の不完全な角度カバレージに起因した2.5の損失係数を考慮すると、部分的な身体PETの立体角カバレージは、全身PETの立体角カバレージの約15倍となる。
本発明のデュアルプレートシステムは、通常の全身PETシステムと比べて、約5倍も良好である1〜2mmの空間分解能を具備している。相対的に良好な分解能及び大きな立体角カバレージに起因し、小さな腫瘍(1〜2mm以下)に対する有意性が、全身PETと比べて、10倍のレベルに改善されるというのが本発明者らの結論である。
(2.最新技術)
(2.1 平行プレートPET装置)
過去において、いくつかの平行プレートPET装置が、特に陽電子放出乳房撮影法として提案されている。この主題に関する入門的な最初の文献の1つ(Thompson他による「Positron Emission Mammography(PEM): A Promising Technique for Detecting Breast Cancer」(IEEE Tarns. Nucl. Sci、42巻、第4号、1995年、1012)は、陽電子放出乳房撮影法に関する動機付けについて記述している。Hamamatsu R3941−5型位置感知光電子増倍管及びBGO結晶に基づいて、従来の乳房撮影ユニット内に適合するべく設計されたPEM検出器について記述している。
全身PETスキャナと乳房画像生成専用のPETスキャナの設計を比較するコンピュータシミュレーションが、様々なグループによって行われている(例えば、R. Freifelder他による「Dedicated PET scanners for breast imaging」(Phys. Med. Biol.、42、1997年、2463〜2480)に記述されている研究)。例えば、コントラスト、バックグラウンドの標準偏差、及び再構築画像の信号対雑音比などの性能エスティメータについて、異なる設計を比較している。一般に、これらのシミュレーションの結果は、専用スキャナが、全身スキャナよりも良好な病変検出能力を具備していることを示している。
2001年に発表された論文(N.K. Doshi他による「maxPET: A dedicated mammary and axillary region PET imaging system for breast cancer」(IEEE Trans. Nucl. Sci、第48巻、2001年、811)と米国特許公開第2001/040219号明細書は、LSOシンチレータ及び光導波路の結合構成を使用する乳癌用の装置及び方法について記述している。このPET画像生成システムは、シンチレーション結晶のアレイ、光電子増倍管、及び結晶を光電子増倍管に結合する光導波路からなる2つの平坦なシンチレータ検出器に基づいている。従来の設計(例えば、米国特許第5,864,141号)と比べると、光導波路により、検出器の詰込み率と、従って、検出器の感度を改善可能である。しかしながら、光導波路が重要な光損失を導入している。システム全体の一致タイミング分解能が8.1nsである。投影画像内における推定分解能は4mmである。
これらの設計は、光電子増倍管の読み出し情報に基づいている。これらは、相互作用の深さ(Depth−of−Interaction:DoI)の計測方法を提供しておらず、且つ、コンプトン(Compton)イベントに対する感度を有してもいない。この結果、空間分解能が、周知の視差の影響を受けることになり、全体的な感度も、両光子が(25%のその他のものの)光電相互作用を具備する相対的に低い確率の影響を受けることになる。又、前述の発明が対処しているのは、光子検出原理のみである。これらの発明は、高速のデータ取得におけるデッドタイムに起因した感度の損失を解決してはいない。2光子一致イベントを選択する方法についても、説明されてはいない。
大視野及び広角度の適合性を有する平坦な検出器の場合には、DoIの計測が重要な課題であるとすぐに認識されている。光電子増倍管の読み出し情報に基づいた前述の設計は、DoIを計測する方法を提供してはいない。W.W. Moses他による「A room Temperature LSO/Pin Photodiode PET Detector Module that Measures Depth of Interaction」(IEEE Trans. Nucl. Sci、第42巻、第4号、1995年、1085)という論文に記述されている研究は、PET検出器においてDoI計測を提供するソリューションを提案した最初のものの1つである。ピクセル化結晶の検出器モジュールを、一方の側では、PINフォトダイオードアレイにより、他方の側では、単一のPMTにより、読み出している。DoIのFWHM分解能は、ダイオードの端部においては、4mmであり、PMTの端部においては、13mmである。この研究は、二重読み出し法が、その実現される性能は良好ではないものの、DoI計測を恐らくは提供可能であることを示している。以降、J.S. Huber他による「Development of the LBNL Positron Emissoin Mammography Camera」(Proceedings IEEE Medical Imaging Conference、2003年)に記述されているPEMスキャナなどの初期の概念の改善されたバージョンが開発されている。
P. Lecoq及びJ. Varelaによる「ClearPEM,a dedicaed PET camera for Mammography」(Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 486、2002年、1〜6)という論文は、高感度を目標とするDoI能力を有するPEMシステムの概念について記述している。この検出器は、その基本的なコンポーネントとしてLuAP結晶を使用している。この結晶は、LYSOの場合における7.4g・cm-3と、BGOの場合における7.1g・cm-3と比較し、8.34g・cm-3の密度を具備している。しかしながら、これは、LYSOの場合における27光子/keVと、BGOの場合における9光子/keVと比較し、約10光子/keVの発光量を具備している。放射スペクトルは、365nmにピークを有しており、この信号は、LYSOの場合における40nsと、BGOの場合における300nsと比較し、18nsの時定数を具備している。この検出器アセンブリは、2つの検出プレーンに基づいており、このそれぞれは、特定数の結晶マトリックス(8×4の結晶)から形成されている。全体として、結晶の数は、約10×12cm2の面積をカバーしている1プレーン当たりに約3000個である。相互作用の深さ情報は、ホスウィッチ法によって入手しており、長さが20mmの単一結晶の代わりに、2つの異なる時定数を有する2つの10mmの結晶を使用している。信号の形状により、相互作用が発生した長手方向のセグメントを弁別可能である。或いは、この代わりに、両方の端部において結晶光を電気信号に変換する2つのAPD(Avalanche Photo−Diodes)と関連し、結晶の前面及び後面の読み出し情報に基づいた方法も提案されている。本システムは、小型のシステムを実現するべく、低雑音増幅器と、フロントエンド電子回路の高度な統合(単一チップ内に64個の増幅チャネル)と、を必要としている。最大信号をチャネル識別バイナリコードと共にチップ出力において多重化している。完全同期アーキテクチャに基づいたデータ取得システムを提案している。本発明は、この初期の入門的な研究によって触発された検討における結果物である。
PEM検出器をバイオプシー装置と組み合わせるという可能性は、Raylman他による「An Apparatus for Positron Emission Mammography Guided Biopsy」(J. Nucl. Med.、42、2001年、960)という論文において最初に実証されている。PEMシステムは、GSO結晶の個別の(3mm × 3mm × 10mmの)ブロックの2つの正方形(10cm × 10cm)検出器アレイから構成されている。シンチレーション光は、位置感知PMTアレイによって収集している。検出器ヘッドは、Lorad定位固定バイオプシーテーブル上に18cmだけ離隔して取り付けられている。このPEM検出器は、当時においては、なんらの重要な革新ももたらさなかったという事実にも拘わらず、この商用バイオプシーシステムとの統合は、関連する際立った出来事であった。
シンチレーション光を変換するべくPET検出器内において通常使用されている標準又は位置感知光電子増倍管を、なんらかのタイプの半導体フォトセンサによって置換するべく過去において様々な調査研究が試みられている。半導体センサは、格段に小型であって、潜在的に安価であり、且つ、磁界に対する耐性を有し、潜在的にPET及びMRIの同時記録に好適である。A. Saoudi他による「A Novel APD−Based Detector Module for Multi−Modality PET/SPECT/CT Scanners」(IEEE Trans. Nucl. Sci、第46巻、1999年、1089)及びZiegler他による「A Prototype high−resolution animal positron tomograph with avalanche photodiode arrays and LSO crystals」(European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging、第28巻、第2号、2001年、136〜143)の両論文は、結晶シンチレータをアバランシェフォトダイオード(Avalanche PhotoDiode:APD)と組み合わせた小さなプロトタイプ装置について記述している。
APDは、小型のPETシステムに至る洗練された経路を提供してはいるが、その独自の欠点を具備している。最も重要なものは、光電子増倍管と比較した場合に格段に小さな利得である。この事実は、最新技術による低雑音増幅電子回路の使用を意味しており、これは、少ないチャネルを有するプロトタイプよりも大規模な画像生成システムの場合に問題となる。更には、フォトダイオードのピクセル化された特性に起因し、読み出しチャネルの合計数が検出器の寸法に伴って2次関数的に増大するのに対し、位置感知光電子増倍管の場合には、線形で増大するのみである。これは、アバランシェフォトダイオードに基づいて高感度で大視野のPETスキャナを構築するための高性能データ取得電子回路システムの必要性を意味している。多数のチャネルを有するPETシステム内においてAPDを広範に使用するには、電子回路システムにおける新しい開発が必要であることが明らかとなった。本発明者らの研究によって導入されたこの新しい発明は、特に、この課題にも応えている。
最近になって、米国特許公開第2003/0105397号明細書が、LSO(Lutetium ortho−o×ysilicate)シンチレータとアバランシェフォトダイオード(APD)アレイに基づいた、高分解能で小型のPET画像生成装置用の読み出し電子回路方式について記述している。この読み出しは、乳癌の診断に適用されるLSO/APDアレイ用のマルチチャンネルASIC(Application Specific Integrated Circuit)に基づいている。この回路は、トランスインピーダンス増幅器入力段を使用すると共に、タイミングピックオフのためにリーディングエッジ弁別器を使用している。個別の電子回路のプロトタイプによって得られた結果は、3.6nsのFWHM時間分解能を示している。相互作用の深さは、LSO結晶の両方の端部の読み出しによって入手しており、2.5mmのFWHM分解能が報告されている。多数のチャネルを有する小型のPETシステムを目標としているこの研究の極めて重要な部分がASIC回路である。この研究においては、APD信号の高速の立ち上がり時間と互換性を有する高速のフロントエンド増幅器に注力している。トリガのために、このASICは、従来のリーディングエッジ弁別器を使用しており、この弁別器は、異なる振幅のパルスと関連したタイムウォークに起因し、限られた時間精度しか提供していない。このソリューションは、いくつかの欠点を具備している。時間分解能が、信号の振幅レンジに依存しており(大きな振幅ダイナミックレンジほど、大きな弁別器のタイムウォークを意味している)、この結果、ランダムな一致2光子イベントの低いレートと互換性を有する時間分解能を維持するべく、振幅ダイナミクスを制限することを余儀なくされる。しかしながら、振幅ダイナミクスの制限は、フロント/バック信号エクスカーションの低減と、結果的にDoI分解能の劣化を意味している。又、これは、異なるエネルギー蓄積のマルチヒットを有するコンプトンイベントが良好に計測されないことをも意味している。最後に、米国特許公開第2003/0105397号は、データ取得の問題を解決しておらず、且つ、高レートにおいて高感度を維持する能力を有するアーキテクチャの提案も行われてはいない。
(2.2 PETシステム内における電子回路及びデータ取得)
電子回路及びデータ取得システムは、最終画像をもたらす複雑なプロセスの一部分である。これは、人体内における放射線の相互作用によって始まり、粒子の検出と、対応した電気信号の生成を伴う物理学的プロセスが後続している。従って、電子回路システムは、検出器の電気信号のアナログ処理に対する責任を担っており、通常は、検出器のパルスを増幅し、アナログ信号をデジタル表現に変換している。トリガシステムが、検出器内における粒子相互作用の発生(イベント)を識別する責任を担っており、データ取得プロセスの段階を準備している。次いで、データ取得システムが、デジタルデータを収集し、関連する情報をオンザフライで選択する。最後に、これらのデータが、データ取得コンピュータに転送され、ここで、永久的な媒体(ハードディスク又は磁気テープ)内に保存される。保存されたデータファイルは、イベントのリスト(リストモード)と、それぞれのイベントごとに検出された粒子のレコード及びその特性(座標、時間、エネルギーなど)(或いは、画像再構築プロセスに好適なフォーマット(例えば、サイノグラム)を有する前処理済みの情報)を含んでいる。
現代の医療画像生成システムは、画像空間分解能の改善を試みるべく、多数の個別のセンサ(結晶やピクセルなど)を具備する傾向を有している。それぞれの基礎的なセンサは、検出チャネルを形成しているアナログフロントエンド電子回路に関連付けられている。チャネルの数は、デバイスごとに大幅に異なっているが、今日においては、1万個レベルの値に到達している。
データ取得システムは、これまで、医療画像生成システムの効率の制限要因であり(J. Vareraによる「Electronics and Data Acquisition in Radiation Detectors for Medical Imaging」(Nuclear Instruments and Methods in Physics Rearch、A 527、2004年、21〜26)、最大イベントレートを制約してきた。患者に加えられる線量を極小化し、且つ、検査の遅延を低減するべく、これらのシステムの効率の大幅な向上が必要である。本設計は、1秒当たりに百万イベントのレベルのトリガレートを処理する能力と、最大500Mbyte/sのデータレートを必要としている。デッドタイムの影響に起因した効率の損失を伴うことなしに、この性能を実現する必要がある。これらの要件を充足するのは容易ではなく、この結果、医療画像生成の性能は、依然として相対的に低いものになっている。
データ取得システムの効率は、様々な原因を有するデッドタイムの影響を受けている。尚、本発明者らは、デッドタイムを、システムが新しいイベントを受け付け及び記録することができない時間として定義している。基本的にデッドタイムには、3つの原因が存在している。第1のものは、電気パルスを生成するべくセンサ及び関連電子回路が所要する時間である。デッドタイムの第2の原因は、アナログからデジタルへの変換である。電荷蓄積型のADCが使用される場合には、1変換当たりのデッドタイムは、100μsのレベルであり、これは、深刻な制限となりうる。最後に、トリガアルゴリズムを実行すると共に、デジタルデータを読み取り、次のイベントのためにローカルメモリをクリアするべくシステムが所要する時間が、通常、デッドタイムの最も重要な原因である。
相対的なデッドタイムは、次の式によって付与される。
D=1−e-Rδ (1)
ここで、δは、1イベント当たりの絶対デッドタイムであり、Rは、実際のレートである。データ取得レートは、次式によって付与される。
A=R・e-Rδ (2)
積R・δが1に等しくなると、取得レートは、実際のレートのわずかに37%となる。R・δ=1超においては、取得レートは、実際のレートが増大した場合にも減少することになる。
(3.本発明の概要)
本節においては、乳房、腋窩、頭、首、肝臓、心臓、肺、前立腺領域、及び四肢などの身体の一部分の検査に専用の完全なPET画像生成システムに関する説明を要約している。具体的には、本装置は、人体の様々な部分における様々なタイプの癌の検出及びフォローアップを意図したものである。
又、本システムは、人体の特定の領域、器官、組織、活動、又は機能に対する陽電子エミッタによってマーキングされた特定の分子の親和性に基づいて、人体の一部分の内部の機能的な画像を生成するべく使用することも可能である。
又、本画像生成システムは、小動物のPET検査を実施するべく使用することも可能である。
異なる革新的な側面を組み合わせ、且つ、統合することにより、従来のシステム又は提案との関係において改善された画像生成性能を提供している。
(3.1 システムの説明)
部分的な身体PETシステムは、・乳房、腋窩領域、脳、及びうつ伏せになった領域用に最適化された寸法を有する複数の検出プレート(検出器ヘッド)から形成されたPET検出器と、・コンピュータ又は手動による制御下においてプレートの動きを実現することにより、断層撮影画像の再構築に必要とされるいくつかの向きにおけるデータの取得を実現する電動機械手段と、・検出器ヘッド内に物理的に配置されたフロントエンド電子回路システムとクレートシステム内において検出器以外の場所に配置されたトリガ及びデータ取得システムから構成された電子回路システムと、・データ取得及び制御ソフトウェアと、・動作の際に生成されたデータの再構築、視覚化、及び分析を実現する画像再構築及び分析ソフトウェアと、から構成されている。
(3.2 装置の構成)
検出器プレートは、コンピュータの制御下においてPET軸を中心として回転可能であり、断層撮影画像の再構築に必要ないくつかの向きにおけるデータの取得を実現している。
PET検出器システムは、90°回転可能であり、前述の回転軸が水平又は垂直になるように、2つの異なる構成における検査を実現している。
電動機械システムは、コンピュータ又は手動による制御下においてプレートの動きを実現している。その他の動き、即ち、プレートの高さの調節を実現する垂直方向の動き、プレートの位置の調節を実現する水平方向の動き、断層撮影画像の再構築を実現するPET軸を中心としたPETプレートの回転、及びPETシステムの90°の回転が可能である。
(3.3 その他のシステムとの統合)
この新しい発明による部分的な身体PETは、デジタルCT(Computer Tomography)システム又はPET画像とマージ可能な調査対象である身体の一部の画像を提供する光学画像生成システムとの容易な統合を実現する。
又、この部分的な身体PETは、特に乳房検査の場合に、定位固定バイオプシーシステムと組み合わせることも可能である。
(3.4 革新)
本発明のPETシステムの概念は、次のような革新的な側面を内蔵している。
1.後述する革新的な側面の結果である高い感度と優れた分解能を特徴とする、CT、光学画像生成、又は定位固定バイオプシーとの統合に好適な複数の検出器プレート(検出器ヘッド)に基づいた新しい部分的な身体PETシステム。
2.個別の光子相互作用(光電又はコンプトン)を識別することにより、2つのPET光子の少なくとも1つが検出器内においてコンプトン拡散を具備しているイベントの約75%を画像の再構築において検出及び使用する能力。所謂コンプトンイベント(これは、合計イベント数の約70%を占めている)は、通常、PETシステム内において破棄されている。コンプトンイベントの大きな比率を回収することにより、本システムは、光電イベントのみを感知するシステムと比べて、3倍も感度を向上させることができる。
3.結晶ピクセルの2つの端部におけるシンチレーション光の共有に基づいたきめの細かい結晶粒度及び第3座標(DoI(Depth−of−Interaction)を計測する方法を使用することにより、1mmのレベルの再構築画像の空間分解能を実現する、3空間方向における1mmのレベルの精度を有する検出器内の光子相互作用ポイントの座標の計測。
4.小型の機械システム内において、それぞれが2×2×20mm3のレベルの寸法を有する多数のLYSO結晶ピクセル(数千)と、両方の結晶端部上のシンチレーション光を検出する能力を有する1結晶ピクセル当たりに2つのフォトセンサ(アバランシェフォトダイオード)と、1フォトセンサ当たりに1つの電子回路増幅チャネルと、を内蔵する検出器ヘッド。
5.第3.2節の記述に従って検出器プレートの動きのコンピュータ化された制御を実現する新しい電気機械システム。
6.固定レイテンシーにより、100MHzのレベルの周波数においてパイプラインモードにおいて動作する、低雑音増幅、信号サンプリング、アナログパイプライン保存、イベント検出、及び出力の多重化を含むフロントエンドアナログ信号処理用の新しいデータ駆動型の同期アーキテクチャ。このアーキテクチャは、検出器ヘッド内に配置されたフロントエンドチップ内に実装されている。出力多重化段は、コンプトンイベントにおいて良好な効率を実現する2つのチャネルを選択している。
7.検出器パルスサンプルのアナログからデジタルへの変換と、パルス時間のデジタル演算に基づいた、光子検出時間をオンライン計測するための新しいアーキテクチャ。PETの2光子一致における精度は、0.5nsのレベルであり、ランダムな一致雑音を低レベルに維持可能である。時間計測アルゴリズムは、高周波数において動作するパイプラインアーキテクチャを実装するデジタル電子回路によって実行され、データ取得プロセスにデッドタイムを導入しない。
8.1秒当たりに1千万光子のバックグラウンド光子相互作用において95%を上回る効率で1秒当たりに百万PETイベントのレートで動作する能力を有するトリガ及びデータ取得システムの新しいアーキテクチャ。このアーキテクチャは、パイプライン化された同期セクションと、これに後続するデュアルバス非同期読み出しシステムの組み合わせに基づいている。
(4.本発明の説明)
本節においては、乳房、腋窩、頭、首、肝臓、心臓、肺、前立腺領域、及びその他の四肢などの身体の一部分の検査に専用の完全なPET画像生成システムについて記述する。この画像生成システムは、小動物のPET検査を実施するべく使用することも可能である。本システムの主要な特徴の1つは、異なる革新的な側面を組み合わせ、且つ、統合することにより、従来のシステム及び提案と比べて改善されたPET画像生成性能を提供する方法にある。
(4.1 部分的な身体PETシステム)
(装置構成)
部分的な身体PETシステムは、次のような幾何学的構成を具備している。
(a)PET検出器は、乳房、腋窩領域、脳、及び前立腺領域用に最適化された寸法を有する複数の検出プレート(検出器ヘッド)から形成されている。
(b)これらのプレートは、コンピュータの制御下においてPET軸を中心に回転可能であり、断層撮影画像の再構築に必要ないくつかの向きにおけるデータの取得を実現する。
(c)PET検出器システムは、90°回転可能であり、(b)において前述した回転軸が水平又は垂直になるように、2つの異なる構成における検査を実現する。
図1は、乳房及び腋窩検査用に配置されたPETシステムの概略図を示している。
検出プレート(1)(検出器ヘッド)がPET検出器自体を形成している。プレート(1)間の離隔距離は、オペレータの制御下において調節可能である。安全のために、プレート間における最小の離隔が組み込まれている。
電動機械システムが、コンピュータ又は手動による制御下においてプレート(1)の動きを実現している。・プレートの高さの調節を実現する垂直方向の動き、・プレートの位置の調節を実現する水平方向の動き、・断層撮影画像の再構築の最適化を実現するPET軸を中心としたPETプレート(1)の回転、及び・PETシステムの90°の回転という動きが可能である。
(CT(Computer Tomography)との統合)
この新しい発明の部分的な身体PETは、デジタルCT(Computer Tomography)システムとの容易な統合を実現している。この概念が図2に示されている。
ベース(2)が、部分的な身体PET検出器ヘッド(1)と、X線源(6)及びX線検出器(5)の設置を実現している。コンピュータの制御下における軸(3)を中心としたシステムの回転により、断層撮影画像の再構築に必要な異なる角度においてPET及びCTデータを同時に取得可能である。
この組み合わせは、特に、脳を検査するために興味深いものである。この機械システム構成は、PET及びCT検出器(1)が頭部を中心に回転できるようになっている(図3)。
PET及びCTデータから再構築された2つの画像は、機能的及び構造的な情報を同時に提供する単一画像としてマージ可能である。
(光学画像生成システムとの統合)
部分的な身体PETシステムは、PET画像とマージ可能な調査対象である身体の一部の画像を提供する光学画像生成システムと統合可能である。3D光学画像は、図2の場所(5)及び(6)に配置されたビデオカメラによって撮影されるいくつかの写真から再構築される。
これら2つのカメラは、回転軸を含むプレーン内において補完的な向きを具備している。回転に沿った異なる角度の向きにおいて撮影される異なる写真により、外部皮膚表面を3Dで再構築可能である。皮膚上のインクマークを光学画像上において視認可能である。PET画像とマージされた後に、これらのマークは、腫瘍の除去が必要な場合に、外科的な介入を容易にする基準を提供することになる。
(定位固定バイオプシーとの統合)
必要に応じて、臨床医は、PET画像内に悪性として検出された領域の生検を行う可能性を有している。PET画像によってガイドされた定位固定バイオプシーシステムにより、最良の精度を入手可能である(PET画像上において選択された所定のポイントの座標が、針の先端を必要な位置に自動的に移動させる定位固定コントローラに伝送される)。
本発明において説明するシステムは、自動バイオプシー装置と容易に統合する能力を含んでいる。バイオプシー装置は、図4に示されているようにPETシステムに固定される。
部分的な身体PETの検出器ヘッド(1)は、そのベース(2)に固定されている。検出器ヘッド間の距離は調節可能である。ベース(2)は、軸(4)を中心に回転可能である。
バイオプシーシステムは、ベース(8)、針制御システム(9)、針(7)、及び固定部(10)から構成されている。針制御システム(9)は、針(7)の変位を制御して針の先端を既定の空間点に配置する。固定部(10)は、ベース(8)の主軸に沿って移動可能であり、調査対象である身体の一部分を加圧して固定するべく使用される。
バイオプシーシステムは、回転軸(4)を通じて部分的な身体PETシステムと統合されている。これら2つのシステムは、独立的に回転可能である。回転制御システムが、2つのシステム間における角度の関係を自動的に判定する。この角度の変位は、PETシステムからバイオプシーシステムの座標への座標変換に必要な唯一のパラメータである。PETの検出器ヘッド(1)が固定部(10)を中心として回転することにより、加圧及び固定されている身体の一部分のPET画像を形成できるように、バイオプシー制御システム(9)は、ベース(8)から容易に着脱可能である必要がある。
定位固定バイオプシーとPETの統合は、特に、乳房を検査する場合に興味深い。
この場合には、以下の臨床シーケンスが後続する。
(a)完全な検査シーケンス(2つの乳房と2つの腋窩)を実行する。完全な画像の再構築を並行して進めることができる。シーケンスの終了後、間もなく(約5mn)、乳房の画像を入手可能である。
(b)バイオプシーが必要であると判明した場合には、以前の検査の乳房の配置を可能な限り再現することにより(インクマーカーを使用可能である)、関連する乳房を検査するべく患者を再度配置する。腫瘍の場所が既に判明しているため、画像の再構築を実行する相対的に小さな領域を(1cmのレベルの精度で)定義可能である。この手順により、待ち時間を相当に低減可能であろう。PET画像上において腫瘍の場所を観察できるようになったら、バイオプシー制御システム(9)を所定の位置に配置することにより、バイオプシーを実行可能である。
乳房固定部を除去することなしに、バイオプシーを実行する必要があることは、明らかである。又、針の入射方向は、腫瘍が針の影響によって変位しないようにするべく、加圧方向と同一である必要がある。
固定部は、針の通過を実現する孔を具備している。一方、バイオプシーシステムは、針の入射方向の角度の調節を実行可能である。乳房固定部とバイオプシーシステムの能力により、針の先端を乳房の容積内の任意のポイントに到達させることができる。
(4.2 PET検出器の概念)
(光子の検出及び計測)
光子検出器は、高密度シンチレーション結晶(セリウムがドーピングされたLYSO(Lutetium Yttrium Orthosilicate))に基づいており、20×2×2mmの寸法を有している。結晶の横方向の寸法(2×2mm2)は、所望の空間分解能によって決定され、長手方向の寸法(20mm)は、必要な検出器感度によって決定される。
2つの511keVの光子が光電相互作用を経験する確率は、わずかに30%である。従って、コンプトン相互作用を少なくとも部分的に回収するという強力な動機が存在している。本明細書に記述されているPETシステムは、光電相互作用が後続するコンプトン散乱に対する感度を有しており、75%の効率で2ヒット光子に伴うイベントを識別及び再構築している。
ヒットエネルギーは、チャネル較正の後の結晶パルスの振幅の和によって付与される。ヒットの長手方向の座標は、光学システムの光収集特性に依存したアルゴリズムを使用することにより、両方の結晶端部におけるパルスの相対的な振幅から抽出する。ヒットの時間は、システムクロックに対するパルス位相の計測値から推定している。
511keVの合計エネルギーと互換性を有する検出器プレート内において一致(coincidence)状態にある2つのヒットを識別することにより、二重ヒットのコンプトンイベントを回収する。コンプトン拡散の運動学に基づいたアルゴリズムを使用することにより、コンプトン拡散に対する又は光電相互作用に対するヒットを識別する。この識別は、(90%のレベルの)高効率で実行されている。
本PET装置は、511keVの光子の場合に、500psの光子時間計測r.m.s.を具備するべく設計されており、これは、偶発的な2光子イベントを極小化するために極めて重要である。
(感度及び幾何学的構成)
検出器の形状は、人体の解剖構造及び検査法の仕様によって課される限度内において、分析対象である領域の大きな立体角カバレージを目標としている。検出器の厚さ及びLYSO結晶の物理特性(密度及び組成)は、放射光子の相互作用の確率を決定し、従って、感度に対する直接的な影響を具備している。本発明者らは、10cmのプレート間距離において、視野(FOV)の中央における40cps/kBqの2光子イベント感度を実現している。
一般に、結晶の長さは、PET画像の再構築プロセスにおける視差の影響と、この結果である位置分解能の劣化の原因である。PETシステム内における視差の影響は、特に、検査対象物体に近接して配置された平坦な検出器を使用している場合に重要な課題となる。このため、本発明者らは、感度を極大化させるための高密度の長い結晶の使用に、相互作用の深さ情報を提供する方法を組み合わせている。本発明者らは、すべての空間方向において1mmのレベルの精度によって個別の光子相互作用ポイントを計測することにより、視差の影響を除去している。
(信号処理)
本PETシステムは、アバランシェフォトダイオード(Avalanche Photo−Diode:APD)を使用することにより、結晶光を電気信号に変換している。アバランシェフォトダイオードは、位置感知光電子増倍管と比べて、いくつかの利点(即ち、高い量子効率、良好な横方向の均一性、及び小さなチャネル間クロストーク)を具備している。又、これらによれば、非常に小型の検出器アセンブリの構築が可能であり、特に、DoI計測に使用される二重読み出し方式が可能である。APD及び関連電子回路内における光子相互作用の確率は、数パーセントと推定される。又、APDの利得は、PMの利得よりも低く、これは、低雑音前置増幅器の使用を意味している。電荷増幅器の雑音仕様は、エネルギー及び時間分解能要件に基づいた関数である。そのエネルギーをLYSO結晶内に蓄積する511keV光子の前置増幅器入力における合計電荷は、約30fc(最大値)である。約1000e-r.m.s.のENC(Equialent Noise Charge)は、511keVにおけるr.m.s.エネルギー分解能に対して2%未満だけ寄与している。この雑音レベルは、30nsの信号ピーキング時間の場合に、0.5nsのレベルの時間分解能を必要とすることを意味している。
小型のシステムを実現するには、高度なフロントエンド電子回路の内蔵が必要である。低電力消費も重要な仕様である。本発明者らは、現在、192個のチャネルを内蔵するフロントエンドチップを設計している。このチップは、信号の増幅を実行すると共に、2つの出力に伝送するべき2つの最大信号を選択する。2つの出力デジタルラインが、選択されたチャネルの識別情報を提供している。
出力の多重化は、信号イベントとバックグラウンド光子の重畳に起因し、非効率性の原因である。しかしながら、この非効率性は、LYSO結晶によって生成される高速の信号に起因して低レベルに維持されている。重畳の確率は6%のレベルである。
(トリガ及びデータ取得の原理)
データ取得システムの効率は、マルチイベントストレージ及びパイプライントリガ処理に基づいた革新的なアーキテクチャに起因し、入手可能なPETシステムと比べて大幅に改善されている。サンプリングADCが、デジタルデータの入力ストリームをトリガシステムに供給している。トリガアルゴリズムは、パイプラインモードにおいて実行される基礎的な動作のシーケンスに分解されている。
パイプラインのデジタルトリガにより、デッドタイムを導入することなしに、複雑なトリガアルゴリズムを実装可能である。トリガのパイプライン処理と平行して、データをクロックレートで継続的にメモリ内に保存し、トリガの結果を待つ。トリガ信号が存在している場合には、選択されたデータが、第2メモリに転送され、ここで、読み出されるべく待機する。第2メモリは、イベントレートのポアソン変動を処理するべく、マルチイベントバッファとして編成されている。
(検出器上及び検出器外の電子回路の分離)
本発明者らの設計においては、検出器上の電子回路は、増幅器とアナログ多重化回路、並びに、アナログ/デジタルコンバーターを含んでいる。
信号を検出器ヘッドから伝送するべく、デジタルシリアライザを使用することにより、トリガ及びデータ取得システムに接続するライン数を極小化している。検出器外のシステムは、クレートシステム内に実装されたトリガ及びデータ取得カードを含んでいる。
このソリューションは、検出器ヘッドの機械設計内への電子回路の相対的に単純な内蔵を実現すると共に、発散した熱を除去するための単純な冷却システムと互換性を有している。この結果、柔軟な移動可能なシステムに必要とされる小型の検出器プレートを設計可能である。検出器の動き(例えば、検出器の回転)の必要性は、検出器ヘッドをデータ取得システムに接続するためのケーブルの量に制約をもたらすことになる。本発明者らのアーキテクチャにおいては、この問題は、チャネル数を低減するアナログ多重化段を導入することによって解決されている。
(4.3 部分的な身体PETの能力)
(全般的な能力)
本明細書に記述されている部分的な身体PETシステムは、次のような全般的な臨床能力を具備している。
(1)PETシステムは、局所的な身体領域(例えば、乳房、腋窩、脳、前立腺領域など)の検査を実現する。
(2)PETシステムは、小動物の検査を実現する。
(3)検査により、外科的な介入又は自動定位固定バイオプシーシステムをガイドする能力を有する3D断層撮影画像が生成される。
(4)画像の空間分解能は、3つの空間座標において1mmのレベルである。このパラメータは、本技法によって病変を特定する際の精度を決定する。
(5)検出器は、FDGの摂取量が検出器の感度とマッチングしており、且つ、バックグラウンド雑音を上回っている限り、スキャナが小さな腫瘍(1mmのレベル)に対する感度を有するように、設計されている。
(6)部分的な身体PETシステムは、PET画像によって駆動される定位固定バイオプシーシステムと統合可能である。
(7)部分的な身体PETシステムは、画像の同時記録のために、X線CT(Computer Tomography)又は光学画像生成システムと統合可能である。
(性能パラメータ)
以下に、本発明者らは、部分的な身体PETシステムの性能パラメターを要約する。
1.本発明の専用の部分的な身体PETシステムは、高い感度(最大で100cps/kBq)と良好な空間分解能(1mmのレベル)により、人体又は動物の特定の領域の検査を実現する。
2.本システムは、必要な注入線量と検査時間を低減するべく、検出感度を最適化している(受け付けられる2光子イベントの割合)。乳癌の場合には、これは、女性の走査頻度の判定において特に重要である。
3.乳房からの2光子イベントにおける本装置の感度は、PETプレートが10cm離隔している場合に、視野(Field Of View:FOV)の中央において40cps/kBqである。
4.PET検出器は、分析対象の領域外の身体内に蓄積されている活動に起因し、大きな放射線場に晒されることになる。この放射線は、画像の品質に影響を及ぼすと共に、分解能を劣化させるバックグラウンドイベント(ランダムな一致)の原因である。本PETシステムは、最悪の場合にも、このバックグラウンドを真のレートの20%未満のレベルに低減する。
5.PETシステムは、検出器のカウント感度の大きな劣化を伴うことなし、最大1MHzの真の一致レートと最大10MHzの合計単一レートに耐えるように設計されている。
6.PETシステムは、10cm離隔した検出器ヘッドによって検査を実行可能であるとしたときに、注入線量が10mCiであり、病変と正常な組織間におけるFDG吸収の比率が3に等しいと仮定した場合に、スキャナが、3を上回る有意性と1mnのレベルのデータ取得時間とを有して小さな腫瘍(1mm)に対する感度を有するように設計されている。
(4.4 検出器ヘッド)
PET画像生成システムは、それぞれが特定数の検出器モジュールを保持している2つの平行な検出器ヘッドに基づいている。構築中のプロトタイプは、1つの検出器ヘッド当たりに96個のモジュールを具備することになる。
検出器モジュールは、両端においてAPDアレイに結合された4×8の構成において光学的に隔離された32個の検出器結晶を提供するユニットである。結晶及びAPDアレイは、プラスチックの機械アセンブリ内に収容されている。検出器モジュールは、更に大きな検出器構造内に内蔵するのに好適な機械的に安定したユニットである。
(結晶)
PETシステムの基本コンポーネントは、LYSO(5%のイットリウム)結晶である。LYSO結晶は、7.4g・cm-3の密度と約27光子/keVの発光量を具備している。放射スペクトルは、430nmにピークを有しており、信号は、40nsの時定数を具備している。
横方向の結晶表面は、良好な分解能を有するDoI計測に必要な衝突位置を共有する光の勾配を最適化するべく、わずかに研磨されている。
(光センサ)
PETシステムは、アバランシェフォトダイオード(APD)を使用することにより、結晶光を電気信号に変換している。4×8個のダイオードのAPDアレイは、Hamamatusu社から入手可能である(S8550)。この装置の新しいパッケージ(S8550−SPL)が、本アプリケーション用に特別に設計及び生産されている。ピクセルの有効サイズは、1.6×1.6mm2であり、計画されている結晶の横方向サイズと互換性を有している。LYSOの放射ピークにおけるこの装置の量子効率は約75%である。APDの利得は、約50であり、暗電流は2〜4nAのレベルであり、端子間容量は9pFである。
APDシステムは、360〜400Vのバイアス電圧において動作する。利得は、−2.4%/℃の温度勾配を具備しており、これは、本システムが、安定した熱条件下において動作しなければならないことを意味している。
(検出器ヘッドの構造の統合)
参照符号(17)によって表されている検出モジュールの概略図が図5に示されている。
それぞれの検出器モジュールは、4×8のLYSO:Ce(lutetium yttrium oxyorthosilicate)結晶のアレイから構成されている。結晶は、2×2mm2の断面と20mmの長さを具備しており、且つ、250μmのラッピングによって光学的に隔離されている。ラッピングは、結晶に対して支持とエンクロージャ(13)を提供することにより、個別の結晶が挿入される2×2×20mmのサイズの容積を定義しており、且つ、結晶光収集の最適化に必要な拡散反射表面を提供している。
結晶マトリックスのそれぞれの側部は、DoI計測用の32ピクセルのHamamatsu S8550−SPL APDアレイ(2及び4)に光学的に結合されている。APDアレイは、温度センサを具備する小さなPCB(11及び16)内に取り付けられている。検出器モジュールのコンポーネントは、0.1mmの機械的精度で専用のプラスチックの機械アセンブリ(15)内に収容及び密封されている。それぞれのモジュールは、約12×20×35mmの外部寸法を具備している。それぞれのモジュールは、それぞれの側部内に40ピンコネクタを具備している。
実装に応じて、12又は24個の検出器モジュールが前面及び後面電子回路PCBに機械的に固定されると共に電気的に接続されることにより、スーパーモジュールを形成している。スーパーモジュールアセンブリング(12個のモジュール)の原理が図6に示されている。
検出器(17)は、フロントエンドプリント回路基板PCB(19)のコネクタ内に取り付けられている。第2のPCB(20)がスーパーモジュールを閉鎖している。電子回路チップ(21)が2つのPCBの外部面上に取り付けられている。データ取得システムにリンクするケーブル用のコネクタもPCB内に取り付けられている。
それぞれが24個のモジュールを有する4つのスーパーモジュールが1つに取り付けられ、検出器プレートを形成している。結晶の容積と検出器プレートの容積間の比率として定義される検出器のパッケージング比は、52%のレベルである。コンテナボックスが、検出器ヘッドを形成している検出器プレート、補助電子カード、及び冷却コンポーネントを内蔵している。
(4.5 電子回路及びデータ取得システム)
フロントエンド及びデータ取得電子回路システムは、部分的な身体PETシステムの極めて重要なコンポーネントである。これらの電子回路システムの性能が、微細セグメント化された結晶によって実現される空間分解能を損なうことなしに、大きな検出感度と小さなランダムバックグラウンド雑音を実現するのに決定的な役割を果たしている。
フロントエンドシステムは、閾値を上回るチャネルのアナログ信号を識別及び多重化するデータ駆動型の同期設計に基づいている。検出器外のシステムは、デジタル化されたデータストリームを受信し、検出器パルスの振幅及びタイミングの演算に基づいて一致トリガを印加し、且つ、データをデータ取得コンピュータ内に収集する。デッドタイムを極小化するべく、本アーキテクチャは、パイプライン処理構造とマルチイベント能力を有するデランダマイザメモリを広範に使用している。本システムは、入力クロック周波数100MHzにおいて動作し、且つ、10MHzの検出器内における合計単一光子バックグラウンドレートにおいて、95%を上回る効率により、1秒当たりに百万イベントのデータ取得レートを維持可能である。これらのパラメータは、予想アプリケーションにおいて本電子回路及びデータ取得システムがPETの感度の制限要因とならないように定義されている。
フロントエンドシステムの基本的なコンポーネントは、現在開発中の低雑音増幅器/マルチプレクサチップである。検出器外のシステムは、システムモジュール間における高速相互通信用のデュアルバスクレートバックプレーンの周りに設計されている。
要すれば、本システムの主要な能力は、次のようなものである。
(1)1秒当たりに百万イベントを上回るデータ取得レート
(2)10MHzのレベルの単一光子バックグラウンドレートを維持する能力
(3)前述の条件において、読み出し電子回路とデータ取得を組み合わせた効率が、光電イベントにおいて95%を上回っている。
(4)アナログフロントエンド電子回路の特性(信号成形、雑音、デジタル変換)は、511keV光子の場合に、光子計測における500ps r.m.sの時間分解能を実現している。
(5)システムレイアウトは、小型の移動可能な検出器プレートと互換性を有しており、検出器上の電子回路及びコネクタと相互接続ケーブルを極小化している。
PET電子回路システム及びデータ取得は、次の2つの主要なシステムから構成されている。
(1)物理的に検出器ヘッド上に配置されているフロントエンド電子回路システムは、信号増幅、チャネル選択、及びアナログ多重化、並びに、アナログからデジタルへの変換を実行している。
(2)電子回路クレートシステム内において検出器外に配置されたトリガ及びデータ取得システムは、一時的なデータ保存、トリガ演算、データ選択、及び取得コンピュータに対するデータの転送を実行している。
(フロントエンド電子回路システム)
フロントエンドシステムは、検出器モジュールとの直接的なインターフェイスを提供するフロンドエンドボード(Front−End Board:FEB)と、クロックの分配、電力の分配、バイアス電圧の調節、及び温度の監視用のサービスボードと、から構成されている。それぞれのFEBは、アプリケーションに応じて特定数の結晶モジュールに対応している(この設計においては、24個のモジュールである)。FEBは、次のものを含んでいる。
(1)固定レイテンシーにより、高周波数においてパイプラインモードで動作する192個のチャネルを有するフロントエンド集積回路チップ(この回路は、低雑音増幅、APD信号の成形、アナログパイプライン保存、パルス検出、及び出力の多重化を実行している。出力の多重化においては、コンプトンイベントの良好な効率を実現するチャネル識別子と共に所定の閾値を上回る2つのチャネルを選択している)。
(2)パラレル/シリアルコンバータ及びデジタルラインドライバが後続しているアナログ/デジタルコンバータ(ADC)。
(3)出力デジタル信号、制御、及びクロックライン用、低電圧及びAPDバイアス電圧の分配用、並びに、温度センサの読み取り用のコネクタ。
図7は、フロンエンドチップのアーキテクチャを示している。増幅器(1)の仕様は次のとおりである。
(1)最大入力電荷30fc
(2)1000e-未満の入力ENC
(3)1チャネル当たりに3mW未満の電力損失
(4)最大5kradの合計線量の放射線許容値
(5)30nsのピーキング時間を有する出力信号成形
マルチプレクサを使用し、2つのチップ出力(23)内において、所定の閾値を上回る信号を収集することにより、データ取得システムに対する接続を低減している。多重化回路は、次のコンポーネントを具備している。
(1)クロック周波数において動作するサンプル及び保持回路(22)
(2)パルスサンプルの電荷を保存するコンデンサアレイ(24)
(3)閾値を上回るチャネルを判定するデジタルロジック(28)が後続している比較器(27)
(4)入力を2つのアナログ(23)及び2つのデジタル出力(30)に接続しているマルチプレクサ回路(29)
(トリガ及びデータ取得システム)
トリガシステム及びデータ取得(トリガ/DAQ)は、関心の対象である2光子イベントを識別し、イベントデータを永久的な媒体内に保存する責任を担っている。トリガ/DAQシステムに対する入力は、フロントエンドシステムから供給されるデジタル信号である。このデジタル化信号は、デシリアライズされ、パイプラインメモリ内に保存された状態で、トリガの判定を待つ。そのイベントが受け付けられた場合に、DAQシステムは、関連する情報を一時メモリ内において読み取り、そのトリガによって識別されているチャネルを選択し、情報をデータ取得コンピュータに転送する。
トリガ/DAQのアーキテクチャが図8に示されている。これは、3つのロジック(即ち、データ取得及びフィルタ(DAQ)モジュール(31)、トリガモジュール(32)、及び2つのバス(34)の間に相互接続されたデータコンセントレータ(DCC)モジュール(33))から構成されている。DCCモジュールは、高速のデータリンク(36)によってPC(35)に接続されている。
DAQモジュールは、フロントエンドシステム(37)からデジタル信号を受信している。DAQモジュールは、すべての入力チャネルのヒットエネルギー及び相互作用時間を評価する責任を担っている。それぞれのものごとに、システム周波数において、デジタル信号をデシリアライズし、デジタルパイプラインメモリ内に保存している。対応するチャネル識別子も保存している。並行して、データサンプルを処理し、パルスの特徴を抽出している。
DAQモジュールは、次の動作をパイプラインモードにおいて実行している。
(1)ピークのサーチ(それぞれのチャネル内において2つの隣接者を上回っているサンプルのサーチ)
(2)チャネルのソート及びマッチング(フロントエンドデジタルラインから受信された検出器チャネル識別子のソートと、検出器プレートの2つの側部内の検出器チャネルID間におけるマッチング)
(3)ペデスタル推定(ペデスタルの演算とデータサンプルからの減算)
(4)正規化(正規化係数によるペデスタル補正済みサンプルの乗算)
(5)エネルギーの加算(フロントエンドチップに対応した4つのチャネルのパルス振幅の加算)
(6)パルス時間(パルスのピークとクロック間の位相を演算する)。
4チャネルのエネルギーの合計を2つのプログラム可能な閾値(イベント閾値及びComton閾値)と比較している。コンプトン閾値は、コンプトン拡散の発生を識別するべく使用され、イベント閾値は、511keV光子の吸収を識別するべく使用されている。エネルギーが閾値レベルのいずれかのものを上回っている際には、そのチャネル情報が後続のモジュールに伝送されることになる。スループットを改善するべく、フィルタモジュールが、関連していない情報を除去している。トリガモジュールは、光電吸収又はコンプトン拡散のいずれかの発生を検出したすべてのDAQモジュールから情報を受信している。異なる結晶プレーン内においてイベント閾値を上回る2つのエネルギー蓄積がプログラム可能な時間ウィンドウ内において検出された場合には、一致が発生している。
有効な一致が識別された際には、トリガは、イベントが有効であり、且つ、関連付けられているデータを次の処理モジュールに供給しなければならないという旨を、対応するDAQモジュールに対して通知することになる。DCCは、すべての対応しているDAQからデータを受信し、分離されたデータリンクを通じてデータ取得PCに対して送信するべく、単一のパッケージとして編成する。
ランダムな一致のバックグラウンドを推定するべく、ランダムなイベントも収集している。ランダムなイベントとは、所定の時間インターバルにおいて一致状態にある2つの結晶プレーンの中の1つと関連付けられたデータを遅延させることによって得られる架空のイベントである。
トリガ/DAQシステムは、物理的には、2つのバックプレーンを有する6Uクレート内に収容されたボードの組として実装されている。2つのタイプの電子基板(即ち、デシリアライゼーション、一時的なデータ保存、及びアルゴリズム的な処理を実行するデータ取得ボード(DAQボード)と、一致イベントを選択し、高速リンク(〜500Mbyte/s)を通じてデータ取得コンピュータにインターフェイスするトリガ及びデータコンセントレータボード(トリガ/DCCボード))が使用されている。トリガ及びデータ取得ロジックは、4百万ゲートを有する大規模なFPGA内に実装されている。
(4.6 データ取得及び制御ソフトウェア)
データ取得及び制御ソフトウェアによって実行されるタスクは、次の通りである。
(a)取得及び制御タスク
1.取得の開始/停止/中断/再開(これは、スキャナの検出システムを制御し、且つ、これと通信するためのダイアログボックスの形態のユーザーインターフェイス及び低レベルのルーチンを含んでいる。)
2.取得プロトコル定義ツール(取得プロトコルの生成及び実行を実現するその独自のユーザーインターフェイスを有するツールである。)
3.緊急停止(必要に応じてスキャナの動きを即座に停止可能な低レベルのルーチンであり、オペレータによる自由な手動の動きを実現している。)
4.取得の際のスキャナの位置及び回転の開始/停止/定義(スキャナの位置及び回転を制御する低レベルのルーチンである。)
5.リアルタイムにおける取得データの表示(これは、検出されたカウント数情報、経過/残り時間、主要な取得パラメータ、スキャナの状態、及び取得されたデータのプレビュー画像を表示する段階を含んでいる。)
6.取得データの異なるフォーマットにおける保存(スキャナ検出システムを制御することにより、データストリームを読み取り、ローカルディスクに保存する低レベルのルーチンである。)
7.補助データの読み取り及び保存:データ補正(正規化、デッドタイム、及び散乱補正)において使用されるパラメータを読み取り及び保存するルーチンである。)
(b)データ補正タスク
1.ランダム補正(この補正は、偶発的な一致を推定し、ランダム一致トリガによってトリガされたイベントを使用することにより、それらを即発一致から減算する。)
2.正規化補正(この補正は、固有の結晶効率のランダムな変動と、システムの形状に起因した検出システム内における効率の変動に対処している。これらの効率パラメータの計測は、本システムによる68Geリニアソースを中心とした回転に伴って即発一致を検出することにより、このソースによって実行される。)
3.デッドタイム補正(この補正は、システムのデッドタイムを補正するものであり、カウントレートのフルレンジにわたって減衰ソースによって実行される動的な取得から算出されたパラメータを使用している。)
4.散乱補正(散乱補正は、画像の最終的なコントラストを劣化させるコンプトン散乱と、多少空間分解能を補正する。本ソフトウェアは、この補正を任意の取得された検査に対して適用している。検出システムが、一致状態における光子のそれぞれのペアによって検出器システム内において蓄積されたエネルギーに関するリストモード情報を付与しているため、エネルギーに基づいた散乱補正法が実装されており、この理由は、これらの方法が視野(FOV)外の活動から到来する散乱成分に対処可能であるためであり、この成分は、部分的な身体PETのアプリケーションの場合に、大きい。)
5.減衰補正(ユーザーから供給された一定の減衰係数を使用する単純な計算による減衰補正が実装されている。)
(c)性能、診断、品質制御、及び試験タスク
1.スキャナとの通信(フロントエンドレジスタとの間において値を読み取り/書き込むソフトウェア)
2.診断及びエラー検出(カメラと制御コンピュータとの間における通信エラーについてすべてのモジュールをチェックするソフトウェア)
3.正規化手順(正規化データの取得を実行し、結晶の効率を算出するソフトウェア)
4.部分的な身体PETに対して適合されたNEMA計測(部分的な身体PETの状況に対して適合されたカメラの主要性能の計測を実行するルーチン)
(4.7 画像の再構築及び分析ソフトウェア)
画像の再構築及び分析ソフトウェアは、動作の際に生成されたデータの再構築、視覚化、及び分析を実現している。画像の再構築により、異なる位置において取得された多数のその投影から2次元又は3次元オブジェクトの表現を入手可能である。
(画像再構築アルゴリズム)
Radon変換の反転に基づいたタイプの分析アルゴリズム(フィルタリングされた逆投影を使用するアルゴリズム)が広範に使用されている。この場合には、入手された投影は、オブジェクトの画像を形成するべく逆投影される前に、フーリエ空間内においてフィルタリングされている。フィルタリングされた逆投影アルゴリズムの主要な欠点の1つは、再構築の前にすべての画像補正の実行を要するという点にある。
或いは、この代わりに、反復的な再構築アルゴリズムにより、オブジェクトの真の活動の更に正確な推定を連続的に入手するべく試みることになる。この手順によれば、検出プロセスのモデルをアルゴリズム内に内蔵可能であり、この場合には、オブジェクトの散乱特性、システムの幾何学的な制約、又はデータ取得の統計的特性などの側面を考慮可能である。又、反復的なアルゴリズムによれば、ネガティブな活動の不存在や、CT又はMRI画像からの、その解剖学的構造の空間的な分布などのオブジェクトに関するなんらかの先験的な既知の情報を考慮することも可能である。
実際的な観点においては、反復的な画像再構築アルゴリズムは、(1)活動分布の画像、(2)画像マトリックスfを予想投影活動値pを含むマトリックスに関連付けるマトリックスAの形態を有する使用されるシステムの転送機能、(3)カウントの分布を表す統計的/幾何学的モデル、(4)極大化するべき目的の機能、及び(5)目的の機能を極大化するべくオブジェクトの活動を変化させる責任を担っている反復的なアルゴリズム、という5つの異なるコンポーネントと共に機能している。
部分的な身体PETシステムは、3DのPET情報を取得するための準備が整っている。従って、リビニングされたデータを使用する3D再構築アルゴリズム又は2D再構築アルゴリズムを使用可能である。第1のケースにおいては、3D画像を形成するための再構築プロセスにおいて、すべてのLOR(Line Of Response)を使用する。第2のケースにおいては、オブジェクトの画像を軸方向のスライスとして入手するためのデータセットなどの一連の2Dを生成するべく、これらのLORを再構成する。3D再構築アルゴリズムは、潜在的に、相対的に良好な最終空間分解能を提供可能ではあるが、2Dアルゴリズムは、既に実績を有しており、相対的に高速である。2D再構築法は、ライノグラムとARTアルゴリズムを使用しており、3D再構築は、OSEMアルゴリズムに基づいている。
画像再構築アルゴリズムは、データ取得システムによってリストモードにおいて取得されたデータを使用している。データ取得により、検出器と相互作用する光子のいくつかの特徴(例えば、そのエネルギー、相互作用の場所、時間など)を記録している。リストモードデータは、サイノグラム又はライノグラムにビニング可能である。画像の再構築に使用する前に、光子エネルギー及び時間を正確に判定している。
再構築手順は、データ取得後の5〜10分以内に病変の場所の再構築画像の入手を実現する高速再構築法を使用することによって開始される。本発明者らは、すべての病変を取り囲む領域を最適な再構築手順の「標的」として設定するべく、ARTアルゴリズムの1回又は2回の反復によって、又は、FBPアルゴリズムを使用することによって、得られたこの情報の使用法を調査している。この領域は、異なるサイズであってよく、メモリ、画像生成分解能、及び再構築時間の最適化が可能である。
(画像視覚化及び画像分析ソフトウェア)
画像視覚化ソフトウェアは、IDLシステム(Research Systems)を使用することによって実装されている。特殊な処理能力を必要とするルーチンをC++を使用して開発し、IDLとインターフェイスさせている。画像視覚化及び画像分析は、同一のソフトウェアパッケージ内に内蔵されている。
画像視覚化ソフトウェアは、次の内容を実現している。
1.バイナリファイルとINTERFILE及びDICOMの最新のバージョンの受け付け
2.対話型の複数データ選択の実現(少なくとも2つのデータセット)
3.未加工のPETデータの表示(即ち、サイノグラム又はライノグラムの形態におけるデータ)
4.未加工データのスクロール
5.再構築ソフトウェアの動作に対するインターフェイスとしてのプルダウンメニューの包含
6.画像再構築パラメータのオンライン変更の実現(画像再構築アルゴリズム及びフィルタ)
7.少なくとも2つの異なるデータセットの同時観察
8.画像のズーミングの実行
9.画像のカラースケールの選択
10.親データベースからのデータの保存/取得
11.再構築されたデータのJPEG及びMPEGフォーマットにおけるエクスポート
12.再構築結果の印刷
13.同一画面上における異なる画像モードの比較(例えば、PETとX線)
画像分析ソフトウェアは、画像再構築ソフトウェアと同一のパッケージ内に包含されている。このソフトウェアは、次の内容を実現する。
1.画像上のおけるROI(Region of Interest)の選択(幾何学的形状又はラインプロファイル)。これらのROIは、2D又は3Dであることを要する(即ち、再構築された画像内に、いくつかのスライスを含んでいる)。
2.再構築された画像の3D空間分解能の計測
3.画像及びROIからの統計情報の抽出(例えば、最大カウント数、平均、及び偏差)
4.画像の均一性の評価
5.画像に対する数値演算の実行
6.画像のスムージング
7.高摂取病変の回復係数の計算(ファントムを使用する評価検討用)
8.ROI又はROIセグメンテーションなどのその他の技法を使用する病変寸法の計算
9.画像の定量化の評価
10.SUV値の計算
(4.8 陽電子放出乳房撮影法に対する適用)
この新しい発明によれば、陽電子放出乳房撮影法(Positron Emission Mammograpy:PEM)、即ち、乳癌の検出に対してPET技術を適用可能である。尚、このアプリケーションは、例示のために提供されるものであり、限定を意図したものではない。
(全般的な臨床要件)
PEMシステムは、次のような全般的な臨床要件を実装する必要がある。
(1)PEMシステムは、乳房及びリンパ節領域(腋窩)の両方の検査を実現する。
(2)乳房検査は、自動定位固定バイオプシーシステム又は外科的な介入をガイドする能力を有する3D断層撮影画像を生成する必要がある。
(3)腋窩検査は、その正確な位置とは無関係に、癌細胞の存在を診断可能な画像を生成する必要がある(イエス/ノー診断)。
(4)乳房画像の空間分解能は、3空間座標において2mmを下回っている必要がある。このパラメータが、本技法によって病変を特定する際の精度を決定する。
(5)腋窩の場合には、空間分解能は2〜3mmのレンジである必要がある。
(6)検出器の技術仕様は、FDGの摂取量が検出器の感度とマッチングしており、且つ、バックグラウンド雑音を上回っている限り、カメラが小さな乳房及び腋窩の腫瘍(1〜2mm)に対する感度を有するように設計する必要がある。
(7)PEM検出器は、うつ伏せの状態において患者の様々な領域の検査の実行を実現する検査テーブルと組み合わせる必要がある。
(8)乳房に対するPEM検出器のアクセスは、検査テーブル内の孔を通じて提供される。
(9)乳房検査の場合には、固定部を使用することにより、乳房を静止状態に維持する必要がある。
(10)PEMシステムは、定位固定バイオプシーシステム又はX線乳房撮影法と互換性をするように設計する必要がある。
全般的な観点において、以上の仕様は、次のような理由から、この部分的な身体PETの概念によって満足されている。
(a)乳房及び腋窩領域の寸法とマッチングした寸法を有する2つの検出プレートが、この部分的な身体PET検出器を形成可能である。
(b)2つのプレートがPET軸を中心として回転可能であり、断層撮影画像の再構築に必要ないくつかの向きにおける乳房データを取得可能である。
(性能要件)
検出感度(受け付けられる2光子イベントの割合)は、注入線量と検査時間を低減するべく、可能な限り高くする必要がある。PEMプレートが10cm離隔している際の視野(Field OF View:FOV)の中央における40cps/kBqの値が、この条件を満足している。
PEM検出器は、身体内において蓄積される活動に起因し、大きな放射線場に晒されることになる。この放射線は、画像の品質に影響を及ぼす(ランダムな一致)バックグラウンドイベントの原因である。PEMシステムは、このバックグラウンドを真のレートの20%未満のレベルに低減する必要がある。
これらの見積値は、真の一致レートが、10mCiの合計活動の場合に、PEMプレートの離隔及び乳房の摂取比率に応じて、40〜250kHzであることを示している。同一の見積値は、検出器内における合計光子レート(単一イベント)が、検出器のシールディングに応じて、2〜3MHzであることを示している。この性能は、十分に部分的な身体PETシステムの能力の範囲内にある。
PEM検出器は、小さな腫瘍(2mm)に対する3を上回る統計的有意性を有する感度を有しており、且つ、データ取得時間が1mnのレベルである必要がある。乳房の組織からの滑らかなバックグラウンド放射線を仮定した場合には、有意性は、統計的な変動が腫瘍信号をエミュレートする確率を反映している。有意性が3である場合には、この確率は、1%のレベルであり、有意性が5に等しい場合には、これは無視可能である。
(幾何学的構成)
以下の説明は、添付されている非制限的な特徴の図に基づいたものである。
図1は、乳房を検査するべく配置されたPEMシステムの概略図を示している。検査テーブルとPEMシステムは、独立したユニットである。電動システムにより、テーブルの高さを調節可能である。
検出器と検査対象である解剖学的領域の間において最良のフィットを実現するべく、PEMシステムの垂直方向の位置をテーブルに対して調節する。2つの検出プレートがPEM検出器自体を形成している。プレート間の離隔距離は、オペレータの制御下において調節可能である。安全のために、プレート間の最小離隔が組み込まれている。最大離隔は、60cmである。
2つのプレートは、コンピュータの制御下においてPEM軸を中心として回転可能であり、断層撮影画像の再構築に必要ないくつかの向きにおける乳房データを取得可能である。
PEMプレートの有効面積(結晶面積)は、17×15cmのレベルであり、この場合に、検査テーブルに対して垂直の軸に沿って最長の寸法が計測されている。
乳房に対するアクセスは、検査テーブル内の孔を通じて提供されており、患者がうつ伏せの状態で配置された際に、1つの乳房が垂れ下がるようになっている。PEMプレートとテーブル間の垂直方向の距離は、乳房とPEM装置間の最良のマッチングを実現するべく、オペレータの制御下において調節可能である。
腋窩領域(又は、前面/背面方向における乳房)を検査するには、PEM検出器を90°回転させ、1つのプレートがテーブルの下に位置し、もう1つのプレートが患者の肩(又は、背中)の上に位置した状態において、画像を生成する。第2の腋窩の検査を実現するには、検出器を補完的な位置に移動させる。
検査テーブルは、視野外からの活動を停止するための適切な形状を具備すると共に、可能な限り、シールディング材料を含んでいる必要がある。
乳房検査の場合には、固定部により、乳房を静止状態に維持可能である。固定部は、検出プレートとは独立しており、従って、PEM検出プレートの回転運動を妨げない。
固定部は、除去可能であり、乳房の解剖学的構造と最良にマッチングさせることができるように、様々な形状を使用可能である。或いは、この代わりに、調節可能な形態を有する固定部を使用することも可能であろう。
(PEMの動作仕様)
FDGの注入とFDGの拡散に伴う待機期間の後に、検査手順は、次の3つの部分から構成されている。
(1)患者の配置及び検出器のセットアップ
(2)データの取得
(3)画像の再構築及び分析
乳房検査に関係する動作手順は、次のとおりである。
(1)乳房検査のためにテーブルを準備する(可動部分により、乳房用の単一の孔を生成する)。テーブル上に患者をうつ伏せの状態で配置する。
(2)オペレータは、PEMプレートが患者の胸の近くに来るように、PEMプレートの高さを調節する。
(3)乳房が静止状態に維持されるように、乳房固定部を設置及び調節する。
(4)オペレータは、PEMプレート間の離隔を調節する。プレート間の最小の離隔が組み込まれている。
(5)コンピュータの制御画面内において、オペレータは、試験パラメータ(特に、使用するPEMプレートの角度位置とデータ取得時間)を設定する。
前述の構成においては、胸に近い乳房領域のカバレージが不良である。この困難な領域において補足的な情報を取得するべく、1つのPEMプレートを乳房に対して配置すると共に、第2のプレートを患者の背中に対して配置した状態において、検査を実行可能である。この構成においては、2つのプレート間の身体領域の画像を入手可能である。
前面/背面方向において乳房検査を実行するには、患者をうつ伏せの状態に維持し、PEM検出器を90°回転させる。次いで、PEMプレートの位置を調節する。1つのプレートを、乳房に対向する状態で、テーブルの下に配置し、第2のプレートを患者の背中の近くに配置する。
プレートの離隔を大きくし、プレートを(±15°)回転させることにより、異なる角度の向きにおいてデータを入手可能である。
腋窩検査は、補完的な乳房検査に類似している。腋窩が開き、自由に検査できるように腕が伸びた状態において、患者を仰向けの姿勢で維持する。次いで、PEM検出器を90°回転させる。次いで、PEMプレートの位置を調節する。テーブルの下に、肩に対向する状態で、1つのプレートを配置し、第2のプレートを患者の胸の近くに配置する。プレートの離隔を大きくし、プレートを回転させることにより、異なる角度の向きにおいてデータを取得可能である。
(5. 本発明の検証)
(5.1 検出器の概念の実験的な検証)
放射線センサの特徴を判定すると共に検出器モジュールの特性を計測するための設備を実装した。この設備は、Cremat CR−101D前置増幅器に基づいた個別のフロントエンド電子回路とマルチチャネルピーク検知ADCを有するVMEに基づいたデータ取得システムによって読み取られるHamamatsu S8550 APDマトリックスに対して両側部において光学的に結合された32個の個別の2×2×20mm3ピクセルから構成されたLYSO:Ceマトリックスから構成されている。
図9は、LYSO結晶マトリックス及びS8550のADP読み出しによって得られた(ADCチャネルユニット内における)エネルギースペクトルを示している。この結果は、単一のAPD読み出しによって得られたものである(LYSO:Ceの一面における光収集のみであり、もう1つの面は、500mmの厚さのテフロン(登録商標)反射器を具備している)。温度は、20℃で安定している。これらの曲線は、バックグラウンド光子のスペクトルと、22Naソースからの511keV及び137Csソースからの662keVの特徴的な光電ピークを示している。511keVのピークの計測エネルギー分解能は、13%である。
放射線センサの温度依存性を11℃〜43℃において評価した。
図10は、370VのAPDバイアス電圧における光ピーク位置の温度依存性を示している。これは、温度が15℃から30℃に増大した際に、検出器信号の振幅が40%だけ減少することを示している。18℃〜32℃の間においては、雑音が2倍に増大している。20℃において、雑音のFWHMは、5keVのレベルであり、511keVの光ピークにおける信号対雑音比が100のレベルにあることを示している。相対的に低い温度においては、雑音が格段に小さく、且つ、利得が相対的に大きいことから、これらの結果は、冷却と熱的な安定性の重要性を実証している。
2×2×20mm3の結晶の両端において光を計測することにより、LYSO:Ce内における相互作用の深さを評価した。第1の計測の組の結果は、結晶の粗度と光学的なラッピングの最適な組み合わせにおいて、相互作用の深さと結晶の両端において収集される光の非対称性の間における線形の相関性を示している。
図11は、光子ビーム座標の関数としてDoIエスティメータを示している。エラーバーは、それぞれの座標における非対称性分布のFWHMを表している。フィッティングされたライン上におけるエラーバーの水平方向の投影は、DoI計測のFWHMインターバルを定義している(約1mm)。
これらの実験結果は、この新しい発明の基礎をなしている次のような原理を立証している。
・提案されている検出器モジュールは、511kevにおいて、13%のエネルギー分解能によって光子を検出する。この値は、結晶の発光量、光の収集効率、及びAPDの利得の観点において予想された検出器モジュールの性能を確認するものである。
・これらの計測値に基づいて、結晶の中央において相互作用する511keV光子のAPD出力における予想電荷は、2つの結晶端面上における等しい光共有を仮定した場合に、平均15fcである。
・計測エネルギー分解能は、6.2節に提示されているシミュレーション結果が示しているように、コンプトン識別アルゴリズムを実装するのに十分なものになっている。
・検出器は、必要なレベルの信号振幅及び雑音を実現するべく、20℃の安定した温度において動作する必要がある。
・検出器チャネルは、個別のフロントエンド増幅器によって得られる5keVのFWHM雑音レベルを具備している。これらの結果は、開発中の統合型フロントエンドチップが類似の雑音性能を具備しているとした場合に、望ましい全体的な低雑音レベル(APD及び電子回路)を実現可能であることを示している。
・計測された信号対雑音比において、結晶の中央において相互作用する511keV光子の、最悪のケースにおける、予想時間分解能は、390ps r.m.sであり、これは、設計値を確認するものである。
・LYSO光収集システムは、線形で変化する極点において収集される光と光子衝突ポイント間における非対称性を提供している。この事実を使用することにより、1mmのレベルの分解能によってDoIを抽出している。
(5.2 PEMの性能推定)
モンテカルロシミュレーション法を使用することにより、PEMシステムの性能の評価を得た。このシミュレーションは、イベントごとに実行されており、それぞれのイベントごとに、光子と物体の相互作用を支配している基礎的な物理プロセスを確率論的な分布に従ってシミュレートしている。結晶及び関連電子回路内の信号形成のプロセスもシミュレートしている。
シミュレーションの検討においては、全体的なモンテカルロシミュレーション用のGEANT4パッケージを使用した。モジュラー型のアプリケーションも開発している。これは、ファントム内における放射性崩壊及び光子追跡のシミュレーション(PhantomFactoryモジュール)、検出器の応答(PEMsimモジュール)、フロントエンド電子回路及びDAQシステム内における信号形成のプロセス(DIGITsimモジュール)を含んでいる。
PEMsimモジュール内において、結晶の数及び寸法、結晶のラッピングに起因したデッドスペース、フロントエンド電子回路の存在、及び光学パラメータを定義している。これらの光学特性の観点において、反射器のコーティング及び光学接着剤を規定している。結晶シンチレータの完全な特徴判定には、放射スペクトル、公称発光量、及び関連する時間減衰定数が含まれている。PEMsimは、入力として、PhantomFactoryモジュールからのデータを使用している。
フロントエンド電子回路であるトリガ及びデータ取得システムは、DIGITsim内においてシミュレートしている。このモジュールは、それぞれのPEMsimヒットからの情報をパルスの形状に変換し、電子雑音を加算すると共に、信号A/D変換を実行している。デジタル化されたデータフレームからのエネルギー及び時間の再構築も実行している。次いで、再構築されたシミュレートイベントを画像再構築ソフトウェアとインターフェイスさせている。
検出感度を評価するべく、空中においてバックツーバックの511keV光子を放出する点源をFoVの中央プレーン内の検出器軸の1つに沿って配置した。図12に、感度プロファイルが示されており、この場合には、検出器ヘッド間の様々な離隔距離が考慮されている。3つの離隔距離におけるピーク感度値は、9.3%(5cm)、5.9%(10cm)、及び4.0%(15cm)であると判明している。
検出器内のコンプトン散乱に起因し、PEMの一致の70%は、検出器内において少なくとも1つのコンプトン拡散を具備している。この場合には、2つの結晶が、蓄積されたエネルギーを共有することになる。高い検出感度を実現するべく、これらのイベントを受け付けている。但し、コンプトンイベントの受け付けは、第1の相互作用が発生した結晶の識別における曖昧さに起因し、空間分解能を劣化させる可能性がある。2ヒットイベントを含むモンテカルロデータを使用することにより、第1の結晶識別用のいくつかのアルゴリズムの評価を行った。コンプトンの運動学に基づいた再構築アルゴリズムは、89.4%の効率を具備している。このような高性能が可能である理由は、良好なDoI分解能にある。
非乳房摂取よるバックグラウンドイベントの正確なモデリングを実現するシミュレーションコード内に擬人ファントムを実装した。370MBqを注入した1時間後において計測されたSUV(Standardized Uptake Value)の表に従い、このファントム内の器官又は解剖学的構造に対応するそれぞれの容積をFDG放射性トレーサー濃縮物によって充填した。この結果は、検出器ヘッドの距離と乳房のFDG摂取量に応じて、最大250kHzの真の一致カウントレートを示している。1つの検出器ヘッド当たりに1.5MHzの最大単一光子レートと、20kHzのランダム一致レートが得られた。放射線シールドは含まれていなかった。
クロスフォーメーション(クロスファントム)のスキャナの視野(FoV)内に配置された7つの点源を完全にシミュレートした。
図13は、シミュレートされたデータの再構築によって得られたこのファントムの横断中央プレーンを示している。点源に対応する活動は、約1mmの空間分解能を示す2つの再構築ピクセルに閉じ込められている。
次の表は、1mmの腫瘍の検出において、(各セクション内に定義されている)所定の統計的有意性を具備するのに必要なデータ取得時間の推定値を示している。この結果は、PEM検出器の感度の関数として示されている。この計算においては、FDG注入線量が10mCiであり、乳房内における摂取量が0.5%であり(50μCi)、且つ、病変/組織のFDG吸収比率が3であると仮定している。
Figure 2008514952
乳房検査用の機械システム構成(左)と腋窩検査用の機械システム構成(右)である。 部分的な身体PETとCT(Computer Tomography)システムの統合である(平面図)。 脳検査用のPET−CTシステム構成である(わかりやすくするべく、PET検出器ヘッドのみ示されている)。 部分的な身体PETと定位固定バイオプシーの統合である(平面図)。 検出器モジュールコンポーネント及びアセンブリの原理である。 12個のモジュールのスーパーモジュールである。 フロントエンドチップのアーキテクチャである。 トリガ及びデータ取得電子回路のアーキテクチャである。 20℃の温度において、S8550のAPD読み出しを有するLYSO結晶マトリックス内において検出された光子のエネルギースペクトルである。 光電ピークの位置の温度依存性である。 光子ビーム相互作用ポイントの関数としての2つの結晶面における光出力間の非対称性である。 検出器ヘッド間の異なる離隔距離におけるFoV中央プレーン内の軸に沿った感度プロファイルである。 クロスファントムの再構築画像の横断中央プレーンである。

Claims (20)

  1. 乳房、腋窩、頭、首、肝臓、心臓、肺、前立腺領域、及びその他の身体の四肢などの人体の一部分の検査に、或いは、特に、前記人体の様々な部分内の様々なタイプの癌の検出及びフォローアップに専用の陽電子放出断層撮影(PET)システムであって、特定の領域、器官、組織、人体の活動又は機能に対する陽電子エミッタによってマーキングされた特定の分子の親和性に基づいて、前記人体の様々な部分又は小動物の身体の内部の機能的な画像を生成するべく使用することも可能である、PETシステムにおいて、
    ・前記乳房、腋窩領域、脳、及び前立腺領域、又はその他の四肢に最適化された寸法を有する少なくとも2つの検出プレート(検出器ヘッド)と、
    ・手動又はコンピュータの制御下において前記プレートの動きを実現し、断層撮影画像の再構築に必要ないくつかの向きにおけるデータの収集を実現する電動機械手段と、
    ・前記検出器ヘッド上に物理的に配置されたフロントエンド電子回路システムと、電子クレート内において検出器外に配置されたトリガ及びデータ取得システムと、から構成された電子回路システムと、
    ・データ取得及び制御ソフトウェアと、
    ・前記検査の際に生成されたデータの再構築、視覚化、及び分析を実現する画像再構築及び分析ソフトウェアと、
    を有することを特徴とするPETシステム。
  2. 前記検出器ヘッドのそれぞれは、両端においてアバランシェフォトダイオード(APD)アレイに結合された4×8の構成において光学的に隔離された32個の高密度シンチレーション光子検出器結晶を提供するユニットから構成された特定数の検出器モジュールであって、好ましくは、1つの検出器ヘッド当たりに96個のモジュールから構成されており、前記結晶及び前記APDアレイは、プラスチックの機械アセンブリ内において収容及び密封されており、前記結晶の横方向の寸法は、所望の空間分解能によって決定され、長手方向の寸法は、必要な検出器感度によって決定されることを特徴とする、請求項1記載のPETシステム。
  3. 前記結晶は、7.4g・cm-3の密度、約27光子/keVの発光量、430nmにピークを有する放射スペクトル、40nsの時定数を有する信号、及び20×2×2mmの寸法を有するLYSO結晶であり、これらの横方向の表面は、良好な分解能を有する相互作用の深さ(DoI)の計測に必要な衝突位置を共有する光の勾配を最適化するべく、わずかに研磨されていることを特徴とする、請求項1又は2記載のPETシステム。
  4. 前記4×8のダイオードのAPDアレイは、前記結晶光を電気信号に変換し、前記ピクセルの有効サイズは、計画された結晶の横方向サイズと互換性を有していることを特徴とする、請求項1記載のPETシステム。
  5. 前記ピクセルの有効サイズは、1.6×1.6mm2であり、前記LYSOの放射ピークにおける量子効率は、約75%であり、前記APDの利得は、約50であり、暗電流は、2〜4nAのレベルであり、容量は、9pFであり、前記利得は、−2.4%/℃の温度勾配を具備しており、これは、本システムが安定した熱的条件下において動作しなければならないことを意味するものである、請求項4記載のPETシステム。
  6. 前記結晶は、250μmのラッピングによって光学的に隔離されており、このラッピングは、前記結晶に対して支持とエンクロージャを提供することにより、挿入される前記個々の結晶の容積及び寸法を定義すると共に、前記結晶光の収集を最適化するのに必要な拡散反射表面を提供していることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のPETシステム。
  7. 前記電動機械手段は、
    ・前記プレートの高さの調節を実現する垂直方向の移動と、
    ・前記プレートの位置の調節を実現する水平方向の移動と、
    ・断層撮影画像の再構築を実現する前記PET軸を中心とした前記PETプレートの回転と、
    ・前記回転軸が水平又は垂直位置のいずれかをとるように、2つの異なる構成における検査を実現する前記PETシステムの90°の回転と、
    を実現することを特徴とする、請求項1記載のPETシステム。
  8. 前記電子フロントエンドシステムは、閾値を上回るチャネルのアナログ信号を識別及び多重化するデータ駆動型の同期設計に基づいており、前記トリガ及びデータ取得装置は、デジタル化されたデータストリームを受信し、前記検出器パルスの振幅及びタイミングの演算に基づいて一致トリガを印加し、且つ、前記データをデータ取得コンピュータ内に収集することを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載のPETシステム。
  9. デッドタイムを極小化するべく、前記アーキテクチャは、パイプライン処理構造及びマルチイベントの能力を有するデランダマイザメモリを広範に使用しており、前記システムは、100MHzのクロック周波数において動作し、且つ、10MHzの前記検出器内における合計単一光子バックグラウンドレートにおいて、約95%の効率により、1秒当たりに百万イベントのデータ取得レートを維持可能であり、これらのパラメータは、前記電子回路及びデータ取得システムが予想アプリケーションにおいて前記PET感度の制限要因とならないように定義されていることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載のPETシステム。
  10. 前記フロントエンドシステムは、前記検出器モジュールとの直接的なインターフェイスを提供するフロントエンドボード(FEB)と、クロックの分配、電力の分配、バイアス電圧の調節、及び温度監視用のサービスボードと、から構成されており、それぞれのFEBは、前記アプリケーションに応じて、特定数の結晶モジュールに対応しており、且つ、それぞれのFEBは、
    ・固定レイテンシーにより、高周波数においてパイプラインモードにおいて動作する192個のチャネルを有するフロントエンド集積回路であって、この場合に、前記回路は、低雑音増幅、前記APD信号の成形、アナログパイプライン保存、パルス検出、及び出力の多重化を実行し、前記出力の多重化においては、コンプトンイベントの良好な効率を実現するチャネル識別子と共に所定の閾値を上回る2つのチャネルを選択している、フロントエンド集積回路と、
    ・パラレル/シリアルコンバータ及びラインドライバを後続させるアナログ/デジタルコンバータ(ADC)と、
    ・出力デジタル信号、制御、及びクロックライン用、低電圧及びAPDバイアス電圧の分配用、及び前記温度センサの読み取り用のコネクタと、
    を含むことを特徴とする、請求項1乃至9の何れか1項に記載のPETシステム。
  11. 前記トリガ及び前記データ取得システムは、前記フロントエンドシステムから到来するデジタル信号を受信し、前記トリガの判定を待っている間に前記データをデシリアライズしてパイプラインメモリ内に保存し、前記トリガシステムは、デジタルアルゴリズムを使用して関心の対象である2光子イベントを識別することにより、0.5nsのレベルの2光子の一致精度を判定することになる前記光子の振幅及び検出時間をパイプラインモードにおいて演算する責任を担っており、前記イベントが受け付けられた場合に、前記データ取得システムは、一時メモリ内において関連する情報を読み取り、前記トリガによって識別されている前記チャネルを選択し、前記イベントからの前記情報を、永久的な媒体内に保存するべく、前記データ取得コンピュータに対して転送することを特徴とする、請求項1乃至10の何れか1項に記載のPETシステム。
  12. 前記データ取得及び制御ソフトウェアは、
    (a)・取得の開始/停止/中断/再開、・取得プロトコル定義ツール、・緊急停止、・取得の際の前記スキャナの位置及び回転の開始/停止/定義、・リアルタイムにおける取得データの表示、・異なるフォーマットにおける取得データの保存、・補助データの読み取り及び保存、を含む取得及び制御タスク、
    (b)・ランダム補正、・正規化補正、・デッドタイム補正、・散乱補正、・減衰補正、を含むデータ補正タスク、
    (c)・前記スキャナとの通信、・診断及びエラー検出、・正規化手順、・部分的な身体PETに適合されたNEMA計測、を含む性能、診断、品質制御、及び試験タスク、
    の機能を実行する手段を具備することを特徴とする、請求項1乃至10の何れか1項に記載のPETシステム。
  13. 前記画像再構築及び分析ソフトウェアは、前記検査において生成されたデータを再構築、視覚化、及び分析する手段を具備しており、異なる位置において取得された多数の投影からの2次元又は3次元のオブジェクト表現の取得を実現することを特徴とする、請求項1乃至12の何れか1項に記載のPETシステム。
  14. 前記反復画像再構築アルゴリズムは、(1)前記活動分布の画像と、(2)前記画像マトリックスfを前記予想投影活動値pを含む前記マトリックスと関連付ける、マトリックスAの形態を有する前記システムの転送関数と、(3)前記カウントの分布を表す統計的/幾何学的モデルと、(4)極大化するべき前記目標関数と、(5)前記目標関数を極大化するべく前記オブジェクトの前記活動を変更する責任を担っている前記反復的アルゴリズムと、の5つの異なるコンポーネントを使用することを特徴とする、請求項1乃至12の何れか1項に記載のPETシステム。
  15. 前記画像視覚化ソフトウェアは、
    ・バイナリーファイルとINTERFILE及びDICOMの最新バージョンを受け付け、
    ・対話型の複数データ選択(少なくとも2つのデータセット)を実現し、
    ・未加工のPETデータ(サイノグラム又はライノグラムの形態におけるデータ)を表示し、
    ・データをスクロールし、
    ・再構築ソフトウェアの動作用のインターフェイスとしてプルダウンメニューを包含し、
    ・前記画像再構築パラメータのオンライン変更を実現し(画像再構築アルゴリズム及びフィルタ)、
    ・同時に少なくとも2つの異なるデータセットを観察し、
    ・画像のズーミングを実行し、
    ・画像のカラースケールを選択し、
    ・親データベースとの間においてデータを保存及び取得し、
    ・再構築されたデータをJPEG及びMPEGフォーマットにおいてエクスポートし、
    ・再構築結果を印刷し、
    ・同一画面上において異なる画像モードを比較する、
    ための手段を具備していることを特徴とする、請求項1乃至14の何れか1項に記載のPETシステム。
  16. 前記画像分析ソフトウェアは、
    ・前記画像上において興味ある領域(ROI)を選択し(幾何学的な形状又はラインプロファイルのいずれか)、
    ・前記再構築された画像の3D空間分解能を計測し、
    ・前記画像及びROIから統計的情報(例えば、最大カウント数、平均、及び偏差)を抽出し、
    ・画像の均一性を評価し、
    ・画像に対して数値演算を実行し、
    ・画像のスムージングを実行し、
    ・高摂取病変の回復係数を(ファントムを使用した評価検討のために)計算し、
    ・ROI又はROIセグメンテーションなどのその他の技法を使用して病変寸法を計算し、
    ・画像の定量化を評価し、
    ・SUV値を計算する、
    ための手段を具備していることを特徴とする、請求項1乃至15の何れか1項に記載のPETシステム。
  17. 最大0.10cps/Bqという高い感度と1mmのレベルの良好な分解能、並びに、個別の光子相互作用(光電的又はコンプトン)を識別することにより、前記2つのPET光子の少なくとも1つが前記検出器内のコンプトン拡散を具備しているイベントの約75%を画像の再構築において検出及び使用する能力を特徴とする、請求項1乃至15の何れか1項に記載のPETシステム。
  18. デジタルコンピュータ断層(CT)システム、又は前記PET画像とマージ可能な調査対象の前記身体の一部の画像を供給する光学画像生成システム内に、統合可能であることを特徴とする、請求項1乃至17の何れか1項に記載のPETシステム。
  19. 特に乳癌検査の場合に、定位固定バイオプシーシステムと組み合わせることができることを特徴とする、請求項1乃至18の何れか1項に記載のPETシステム。
  20. 特に乳癌の検出とリンパ節浸潤(腋窩)検出用の検査の両方に適合可能であることを特徴とする、請求項1乃至19の何れか1項に記載のPETシステム。
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